医薬系学生 における麻疹抗体価 の推移 と今後 の課題
富 山大 学保 健 管理 セ ンター杉 谷支 所
松 井 祥 子、 四間丁 千 枝、 桑守 美 千 代、 酒 井 渉 、谷 野 幸 子 、舟 田 久 Shoko Ⅳ ratsui, chie Shikencho, ヽ lichiyo Ku、 vamori, ヽ 〜 rataru Sakai, Yukiko Tanino, Hisashi Funada:
Recent Trends of Seruln Antibody Titers against Ⅳ [easles in ⅣIedical Students
キ ー ヮー ド
麻疹 抗体価 、 医薬系学部生、感染予 防
要 旨
麻疹の感染予防対策 を目的 として、医薬系学生 1,500名を対象 に、 2003年か ら2007年までの 5年 間、罹患歴 と予防接種歴のア ンケー ト調査を行 い、
麻疹抗体価 を測定 した。 その結果、 5年 間の平均 抗体 陰性率 は HI法 にて29.7%であ った。 検査開 始 当初 の2003年の陰性 率 は13.3%であ ったが、
2007年には45.5%と3倍 以上 に上昇 し、特 に1987 年、1988年生 まれの学生 の陰性率が高か った。入 学時 ア ンケー ト調査 によれば、麻疹 ワクチ ンの接 種率 は646%で あ ったが、罹患歴 は若年 にな るに つれて減少傾向がみ られた。 自然感染 の機会の減 少 に伴 い、感染者 によるブースター効果をえない まま、成人を迎える世代が急増 したために、2007 年春 の成人麻疹にみ る outbreakが起 こった と考 え られ る。 今後 の MR.ヮ クチ ン 2回 接種 の効果 に期待す るが、感染予防 に対す る知識 の普及 も重 要 な課題 と考え られた。 │
は じめに
麻疹 は、感染力が きわめて強い疾患である。我 が国においては1978年に麻疹 ワクチ ンが定期接種 とな ってか らは、麻疹の発症が減少 し、 またワク チ ンの 1回 接種でほとん どの者が一生罹患 しない ものと考え られて きた。 しか し、1990年代 にな っ
て若年層を中心 とした成人麻疹の流行が数年 ごと に繰 り返 され るよ うにな り、2007年春 にはこれま でにない規模で、高校生や大学生を中心 とした成 人麻疹 の Outbreakが 発生 した1)2)。この背景 に は、厚生労働省調査での麻疹予防接種率が80%程 度 に しか達 していないために、成人での初感染が 起 こり得 ることや、予防接種 による麻疹流行 の減 少 の結果 として野生株 によるブースターを得 る機 会がな くなって きたことなどがあげ られている 3ゝ
我 々は医薬系学部 の大学生への感染予防対策 と して、2003年か ら大学入学時に小児 ウイルス感染 症 (麻疹、風疹、 ム ンプス、水痘)の 既往や ワク チ ン接種 についてのア ンケー ト調査 を行 うととも に、 それ ら感染症 に対す る血清抗体価測定 と抗体 陰性者に対するワクチ ン接種の勧奨を行 って きた。
その中で2007年度 に全国規模で流行 した麻疹抗体 陰性者の現状 を把握 し、今後 の課題を検討 したの で、 ここに報告す る。
対象 と方法 ―
富山大学医薬系 キ ャンパ ス (旧 富 山医科薬科
大学)の 医学部 (医学科、看護学科)、薬学部学
生 計 1,500名 (男性726名、女性774名)を 対象
に、2003年か ら2007年の 5年 間、麻疹感染症 に関
す る罹患歴 :接 種歴のア ンケー ト調査 を行 い、そ
の血清抗体価 を測定 した。測定法 は、赤血球凝集 阻止反応法 (HI法 )を 用 い、一部の検体 には酵 素免疫測定法 (EIA法 :IgG測 定)を 用 いた再 検査 を行 った。抗体陰性者 の判定基準 は HI法 で 8倍未満、EIA法 で は20未 満 とした。
ア ンケー ト調査の方法 は、入学時 に提 出す る書 類一式 として保護者 に送付 し、母子手帳等 による 確認 の後、 ワクチ ン接種歴や罹患歴 を記入す るよ うに依頼 した。入学後 に上記 4種 のウイルス感染 症 に関す る抗体価測定検査の申込書 とともに、 ア
ンケー ト用紙 を回収 した。
結果
1.麻 疹 に対する抗体陰性率の推移
2003年か ら2007年における、麻疹抗体の陰性率 の平均 は29.7%であ った。 これを検査年度別 でみ ると、 2003年は13.3%であ った陰性率 が、2006年 は35.2%、2007年は45.5%、と最近 2年 間で急激 な 上昇 を認 めた。 (図 1)。 これを出生年別で検討す ると (図 2)、 1987年および 1988年生 まれの学生 に、有意 な陰性率 の上昇 を認 めた (分散分析 p
<0̀01)。男女別 の検討 で は、特 に性差 は認 めな か った。
2.抗 体価測定法の比較 (Hl法、EIA法 ) 麻疹 の HI法 は EIA法 に比 して感度 の低 い こ とが報告 されているため4)5)、2006年および2007
600%
500%
40000
豊 300%
200%
100%
00%
200411 20054F 2006笙 F 検査 年 度
図 1 検 査年別抗体陰性率の推移
1982 1983 1984 1985 1986 生 年 度
図 2 生 年 別抗 体 陰性率 の推 移
EIA
+一 +
計
Hl
8倍 >
13 24nv
132
8倍
016倍
0 0 34 34321曽
0 2 264倍
0 1 1EIA 2.0未 満 :一 ′ 2.0… 3.9: ± ′ 4.0以上 :+
表1 麻 疹抗体 H:法 と EIA法 の比較
年 の検査 において抗体陰性 と判定 された1 3 2 検体 を無作為抽 出 し、 EIA―IgG法 にて再検査 を行 ら た。 その結果、E I A 法 にて2 0 未 満 の抗体 陰性者 は1 3 / 1 3 2 名(9.8%)、 2 . 0 以上4 . 0 未満 の判定保留者 は2 4 / 1 3 2 ( 1 8 . 2 % ) で あ り、 HI法 陰性 者 に 占め る E I A 法 陰性者 の割合 は37/132名(28.0%)で あ った
( 表 1 ) 。
ちなみに、HI法 で8倍以上 を示 した陽性者48名 を E I A 法 につ いて も検討 した ところ、全例 が陽 性 で あ った。 陽性検体 の E I A ―I g G 抗 体価 と HI
3
抗体価 には相 関が認 め ら― れ、 相 関係数 は0.5309 (p<0.0001)であ った (図 3)。
3.ア ンケー トの調査結果 と感度
入学時のア ンケー ト調査 にて、 「ワクチ ン接種 歴 あ り」 と答えた ものは、平均64.6%であ り、「罹 患歴 あ り」 と答えた ものは12.5%であ った。 また、
これ らの内訳を生年別 に示 した ものを図 4に 示 し た。 生年別 にお いて、 ヮクチ ン接種歴 は60‑70%
と大 きな差 はみ られなか ったが、 「麻疹罹患歴 な しJの 回答が若年 にな るにつれて増加す る傾向に あ った。
大学入学時のア ンケー ト調査 につ き、 ア ンケー トが どの程度正確 に麻疹 の免疫状態を反映 してい るか、を検討 した。すなわちア ンケー ト調査にて、
「 罹患歴 あ り」 もしくは 「ヮクチ ン接種歴 あ りJ を 「麻疹非感受性者」、 「罹患歴 な し」 も しくは
「ワクチ ン接種歴な し」 を 「感受性者」、その他を
「 不 明者Jと して分類 し、 それぞれの麻疹抗体 の 有無を表 2に 示 した。非感受性者中の抗体陽性者 は786/1106名 (71.1%)で あ り、罹患歴 や接種歴 があ って も明 らかに抗体陽性 と判断で きるものは
0 05 4
暉 曇 爆 く ロ
30
H I 抗体価 (2n)
図 3 麻 疹抗体陽性者 における H l 法 と E I A 法 の比較 y = 9 . 6 6 9 5 x - 1 0 . 8 3 3
R2 = 0 5309
( P < 0 . 0 0 0 1 )
瑯 叫 琳 孤 瑯 郷 剛 瑯 醐 瑯 蝸 瑯 郷 剛 鍋
麻疹 ワクチ ン機種歴 麻 疹 罹 患歴
‐ あり ‐ なし │ 1 不明
図 4 生 年度別麻疹 ワクチン接種歴 と罹患歴
表 2 ア ンケー ト調査結果 と抗体 の比較 ア ンケー ト調査
非感 受性 者 感 受性者 不 明者 計
抗 体
十
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