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歴史家・工藤光一を道しるべとして

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『クァドランテ』No.18 (2016)

歴史家・工藤光一を道しるべとして

大川 正彦

工藤光一先生が昨年1月10日に亡くなられてか ら、早くも一年の月日が経過した。

訃報に接した海外研究所所員のうち、深い親交 のあった先輩、友人、同僚にあたる方々から、本 誌前号に追悼文を寄せていただいた。

また、立石博高先生、岩崎稔先生、篠原琢先生、

そして国際基督教大学の高澤紀恵先生が呼びかけ の中心となられるかたちで、6月 21 日に、「工藤 光一さんを偲ぶ研究集会」が催され、お三方の研 究報告が行なわれた。小田中直樹「「政治」の「文 化」から「政治的なるもの」の「文化変容」へ―

工藤光一のフランス史研究に寄せて」。林田伸一

「近世史研究者から見た工藤光一の歴史学」。谷川 稔「工藤さんのお仕事をふりかえる」。―この時と 場は、三人の論者それぞれの立場から深められて ゆく、工藤光一の人と仕事の読みを通して、あら ためて工藤先生が残された事の重みを、偲ぶ会参 加者ひとりびとりが噛みしめる大切な時間となっ た。

会への出席者お一人おひとりに対して、絵里夫 人から配布された、「工藤 光一 56 年の歩み」

という冊子が手元にある。いまあらためて頁を繰 ってみると、ここには、一個の作品ともいうべき この冊子に込められたご家族の思いとともに、工 藤先生のお人柄と「静かな賢人」ぶりが眼前に立 ちあがってくる。

冊子とともに手元にあるのは、もう一冊。『近代 フランス農村世界の政治文化―噂・蜂起・祝祭』

(岩波書店、2015年 11 月19 日刊)。高澤・林田 両氏による「あとがき」によれば、エピローグだ けが書かれずに残されていたものが一書となった のだという。

それぞれの生活のなかで、政治とは? 文化と は?と自問しながら、あるいは日々の生活のなか でのさまざまな問いと押し問答をし何とかやりく りしてゆきながら、ふとしたときに、自らの足場 を確かめるために、足元を踏み固め直すためにこ そ、歴史家・工藤光一が遺したこの作品は群読さ れてよい、と、わたしは思う。群読とは、ひとび

とが、群れ集い、あるテキストのなかで自らが選 んだ一節を声に出して読み、その声たちが響き合 うその場を味わい、そしてまたそれぞれの生活場 へと還ってゆき、群れ集い読んだ経験をそこで踏 みしめる、束の間の生の実験をいう。わたしたち ひとりびとりが、それぞれの道を歩み進めてゆく さいに、一書は、きっと、ひとりびとりにとって の道しるべになってくれるにちがいない。そして、

工藤先生のもとで学ばれた方々が作成された、以 下に掲載する業績に記されている数々の作品群に 出会い、あるいは出会い直すことをつうじて、わ たくしもまた、歴史家・工藤光一を道しるべとし て、今日一日の歩みをつづけたい。

なお、今春3月刊行の『ふらんぼー』(東京外国 語大学フランス語研究室論集 FLAMBEAU)41 号 で、工藤光一教授追悼号の特集が組まれているの で、あわせてお読みいただきたい。

OKAWA MASAHIKO・東京外国語大学)

参照

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