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〈論 説 〉
米国 の半 導体産業
新 井 光 吉
は じめ に
周 知 の よ うに半 導 体 産 業 は1948年 の米 ベ ル研 究 所 に よ る トラ ンジ ス タの発 明 を以 て 嗜矢 とされ て い る。そ のた め もあ って以 後,米 国 の半導 体 産業 が59年 のTI(テ キサスイ ンスッルメンツ)やFC(フ ェアチ ャイル ド)に よ るIC(集 積回路) 開発 を経 て70年 代 末 に至 るま で圧 倒 的 な技 術 的 優 位 と世 界 的 な 市場 支 配 を維 持 す る こ とに もな ったの で あ る。
米 国半 導 体 産業 史 を振 り返 って見 る と,第1期 は トラ ンジス タ時 代 で あ った が,そ の技 術 が単 に真 空管 の代 替機 能 を持 っ にす ぎなか った ので,電 子産 業 全 般 へ の イ ンパ ク トはそ れ ほ ど大 き くなか った。 と い うの も,ト ラ ンジス タは真 空 管 と同 じ機 能 を よ り効 果 的 に果 たす が,装 着 され た機 器 を根 本 的 に変 革 す る
もの とは いえ な か った か らで あ る。 しか も小 型 化 ・高 品 質 ・信 頼 性 を重 視 す る 軍 用研 究 開発 計 画 に よ り製 品 設計 の方 向 が規 定 さ れ,政 府調 達(軍 需 ・宇宙)に
よ り有 利 な初 期市 場 が提 供 され るな ど政 策 的 な影 響 も極 めて 濃厚 だ った。 もち ろ ん,米 国 の半 導 体 産 業 は政 府 調 達 に よ る直 接 的 な 刺 激 を与 え られ る と同時 に,米 国市 場 に特 有 な要 因 によ って も重 大 な影 響 を受 けた ので あ る。例 え ば, AT&TやIBMな ど巨大企 業 の半 導体 市場 参 入 に対 す る反 トラス ト規 制,豊 富 な ベ ンチ ャー キ ャ ピタル の存 在,技 術 者 の頻 繁 な転 職yト ラ ンジ ス タやIC 技 術 の寛 大 な公 開 な どの要 因 が旺 盛 な新 規 参 入 や 熾烈 な企 業 間 競争 とい う特 徴
を持 っ独 特 な市 場 環境 を創 出 した の で あ る。
第2期 はICの 誕 生 に よ り電 気 機 械 機 能 の多 くが電 子 回 路 で 代替 可 能 とな っ
2商 経 論 叢 第31巻 第1号 {241)
た 時 期 で あ る。 特 に コ ン ピ ュ ー タ 産 業 がIC市 場 の 成 長 を 牽 引 す る原 動 力 と な っ た。 と い う の も,IC設 計 技 術 の 向 上 が 基 本 ロ ジ ッ クICや コ ン ピ ュ ー タ ・ サ ブ シ ス テ ム の 単 一 チ ップ化 を 可 能 に し,ICの 生 産 増 加 と価 格 低 下 を 促 して,
メ イ ン フ レー ム や ミニ コ ンの市 場 を 急 成 長 させ た か らで あ る。
第3期 は バ イ ポ ー ラICか らMOS(金 属酸 化膜半 導体)ICへ の 転 換 とLSI(大 規模 集積 回路)やMPU(マ イ クロプ ロセ ッサ ー)の 出 現 に よ ってIC市 場 に 大 き な 変 化 が 見 られ た 時 期 で あ る。 特 にLSIはIC製 品 の 性 格 を 根 本 的 に 変 化 さ せ る こ と に な っ た。 つ ま り,高 集 積 化 は以 前 に は電 子 シ ス テ ム の 基 本 的 な 機 能 と考 え られ て い た もの を チ ッ プ に 組 み込 め る よ う に した の で あ る。 そ の 典 型 的 な例 が71年 に イ ンテ ル に よ って 発 明 され たMPUで あ る。 と い うの も,MPUは コ ス ト削 減 や 性 能 向 上 を 目的 と した代 替 用 途 を 超 え る新 た な 発 展 段 階 を も た ら し た か らだ 。LSIはICメ モ リ,民 生 用 機 器,電 気 通 信 機 マ イ コ ン(MPU)応 用 機 器 な ど の新 しい 市場 を 創 出 す る と同 時 に,企 業 の新 規 参 入 を 促 して 市場 競 争
を 更 に 激 化 さ せ た の で あ る。
こ の よ う に 半導 体 産 業 は 技 術 進 歩 や 市 場 動 向(需 要構 造)の 変 化 とそ の 背 景 に あ る経 済 ・社 会 構 造 に よ って 大 き く左 右 さ れ な が ら発 展 して き た とい え よ う。
そ こで,本 稿 は 国 際 的 な 比 較 を 踏 ま え な が ら米 国 半 導 体 産 業 の発 展 過 程 を 分 析 し,技 術 や 需 要 構 造 の 変 化 が 米 国 の半 導 体 産 業 や 企 業 の盛 衰 に い か な る影 響 を 及 ぼ して き た か を 検 討 した い。
1国 際比較
米 国 の電 子産 業 は第2次 大 戦 前 に は英 独 の企 業 に対 して必 ず し も技 術 的 な優 位 を 占め て い た訳 で は なか った。 欧 州企 業 は50年 代 まで電 子 産 業 の最 先 端 分 野 にお いて 国 際 競争 力 を維 持 して い た が,遅 くと も60年 代 半 ば 頃 まで に は米 企 業 に圧倒 され るよ うにな った。つ ま り,欧 州 の半 導 体 産業 は60年 代 末 に は大 き く後 退 し,70年 代 に入 ってか ら も再 生 の 光 明 さえ見 出 し得 な か った の で あ る。
(240) 米国の半導体産業3
[1]ト ラ ン ジ ス タ 時 代
周 知 の如 く半 導 体 産 業 は47年12月 に ベ ル 研 究 所 の トラ ン ジ ス タ発 明 に よ っ て 誕 生 した。 む ろ ん,ト ラ ン ジ ス タの 発 明 ま で は 増 幅 機 能 を 持 っ 三 極 管 が 主 に ラ ジ オ 向 け に大 量 生 産 さ れ て い た が,嵩 張 る上 に信 頼 性 も乏 し く電 力 を浪 費 し た の で,そ の 用 途 は ご く限 られ た もの だ っ た。 トラ ン ジ ス タ は ベ ル 研 で 増 幅 メ カ ニ ズ ム の研 究 に 従 事 して い た 研 究 チ ー ム に よ っ て 偶 然 に発 明 さ れ た 。 米 国 の 半 導 体 研 究 は戦 後,政 府 や 大 企 業 が レ ー ダ ー 用 の ゲ ル マ ニ ウ ム や シ リ コ ンを 開 発 す る大 学 の研 究 プ ロ ジ ェ ク トに 資 金 援 助 を 行 な っ た こ と か ら大 い に 促 進 さ れ た 。 一 方,欧 州 の 半導 体 産 業 は政 府 の研 究 助 成 もな く,む しろ 戦 災 復 興 を 緊 急 の 課 題 と して い た 。 しか し,戦 後 の電 子 技 術 が 依 然 と して 欧 州 企 業 の 得 意 とす る電 子 管 技 術 に立 脚 して い た こ と も あ って,英 仏 両 国 は トラ ン ジ ス タ研 究 で も 高 度 な水 準 を維 持 す る こ と が で き た 。 現 に フ ィ リ ッ プ ス社 は ベ ル研 の 発 表 後 わ ず か1週 間 で 実 用 可 能 な ト ラ ン ジ ス タ を 試 作 す る こ と が で き た。 トム ソ ン ・
ヒ ュ ー ス ト ンやGECやSTL(ITT)も ほ ん の 僅 か な遅 れ で 試 作 に成 功 して い る (1}
の で あ る。
そ ん な訳 で,50年 代 初 頭 ま で,世 界 の 半 導 体 産 業 は技 術 と競 争 力 の両 面 に お け る米 欧 の 拮 抗 と 日本 の 著 しい 後 進 性 と い う図 式 に よ っ て 特 徴 付 け られ て い た と い っ て よ い。 そ して,50年 代 の トラ ン ジ ス タ期 に は 日米 欧 の 各 国 で,垂 直 統
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合 型 電 子 管 メ ー カ ー が 主 要 な半 導 体 デバ イ ス の 生 産 者 と な っ た。 と い うの も, 電 子 管 メ ー カ ー は い ず れ の 国 で も半 導 体 産 業 に お け る技 術 的 な 主 導 権 を 握 って
い た か らで あ る。 この 時 期 に は,米 企 業 は非 常 に 革 新 的 だ っ た が,欧 州 企 業 も 技 術 面 で は これ と ほ と ん ど遜 色 が な か っ た。 しか しな が ら,需 要 構 造 や 政 策 の 相 違 が50年 代 後 半 以 降 欧 米 電 子 産 業 の 発 展 に 大 き な 影 を 落 とす こ と に な っ
た。 欧 州 の 半 導 体 産 業 は50年 代 末 に な って も民 生 用 機 器 市 場 に基 盤 を 置 く電 子 管 メ ー カ ー に よ っ て 支 配 さ れ て い た 。 欧 州 電 子 管 メ ー カ ー は ゲ ル マ ニ ウ ム ア ロ イ型 トラ ン ジ ス タや シ リ コ ン整 流 器 を 生 産 し,ポ ス トア ロ イ 拡 散 型 トラ ン ジ ス タや メ サ 型 トラ ン ジ ス タ の 開 発 に も成 功 す る な ど技 術 的 に も強 力 だ った の で あ る。一 方,米 国 の半 導 体 産 業 は50年 代 後 半 に大 き く変 貌 を 遂 げ た 。 とい う の
4商 経 論 叢 第31巻 第1号 (239)
は,軍 需 が 政 府 調 達 と コ ン ピ ュ ー タ と い う2つ の新 しい 半 導 体 デ バ イ ス 市場 を 作 り 出 した か らで あ る。 これ らの 市 場 は トラ ン ジ ス タへ の シ リコ ン利 用 や 単 一 半 導 体 デ バ イ ス に よ る回 路 組 立 な ど の 新 技 術 の 導 入 を 促 し,TIの よ う な 新 し
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い 半 導 体 メ ー カ ー の市 場 参 入 を 可 能 に した の で あ る。
と こ ろ で,47年 に ベ ル 研 で 発 明 さ れ た ゲ ル マ ニ ウ ム点 接 触 型 トラ ン ジ ス タ は,51年 か ら ウ エ ス タ ン エ レ ク ト リ ッ ク(WE)社 か ら外 販 され 始 め た 。 だ が, 点 接 触 型 は信 頼 性 に乏 し く製 造 も困 難 で,高 周 波 数 帯 域 に 対 応 で き な か った 。 も ち ろん,点 接 触 型 に続 い て,単 結 晶 成 長 法 や 成 長 接 合 型,ア ロ イ法 と ア ロ イ 接 合 型,射 出 エ ッチ ン グ法 と表 面 絶 縁 型 な ど の 革 新 的 技 術 が 次 々 と現 れ た。 こ の うち ゲ ル マ ニ ウ ム成 長 接 合 型 は低 周 波 帯 域 用 で,初 期 の トラ ン ジ ス タ ラ ジオ 受 信 機 に 使 用 さ れ た。 ま たsシ リコ ン成 長 接 合 型 は 高 い周 波 数 帯 域 と高 い温 度 で も機 能 し得 る特 性 を持 っ て い た。 さ ら に,ア ロ イ 型 は成 長 型 よ り も高 い 周 波 数 帯 域 と大 き な電 流 の 下 で 機 能 で き,安 価 で 大 量 生 産 が 可能 だ った の で,補 聴 器 や ラ ジ オ 受 信 機 や 第2世 代 コ ン ピ ュ ー タ に利 用 され た の で あ る。
次 い で55〜56年 に は,酸 化 膜 法,拡 散 法,拡 散 型 トラ ン ジ ス タ と い う3っ の 画 期 的 な 半 導 体 技 術 が 出 現 した。 酸 化 膜 拡 散 法 は 半 導 体 の バ ッチ生 産 を 可 能 に し,生 産 コ ス トの 劇 的 低 下 と 半導 体 デ バ イ ス の 信 頼 性 向 上 を 実 現 した 。 しか も, 酸 化 膜 拡 散 法 は ド リフ ト型,メ サ型,ポ ス トア ロ イ拡 散 型 な ど の ト ラ ン ジ ス タ
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開 発 や プ レー ナ 法 な ど の製 造 技 術 を 革 新 す る基 礎 と も な った の で あ る。
と は い え,50年 代 ま で ト ラ ン ジ ス タ は ダ イ オ ー ドや 整 流 器 ほ ど に は重 要 な デ バ イ ス と は い え な か っ た。例 え ば,米 国 の トラ ン ジ ス タ売 上 高 は60年 ま で ダ イ オ ー ドや 整 流 器 の売 上 高 に は と うて い及 ば な か っ た。 ま た,西 独,英 国,フ ラ ンス の ト ラ ン ジ ス タ貿 易 収 支 は赤 字 だ った が,50年 代 に は さ ほ ど深 刻 な 問 題 と は看 倣 さ れ な か っ た。 欧 州 の 半 導 体 メ ー カ ー は トラ ン ジ ス タ時 代 に は 米 国 に対 し て ほ と ん ど 後 れ を 取 っ て お ら ず,60年 代 初 頭 ま で 特 定 分 野 の 製 品 や 製 法 で は む しろ 優 位 に 立 って い た と い う。 しか も,欧 州 最 大 の フ ィ リ ッ プ ス や シ ー メ ン ス は50年 代 後 半 に半 導 体 を 最 終 電 子 機 器 の 競 争 力 を 高 め る有 力 な 手 段 と看 倣 し,生 産 工 程 の 効 率 化 に 取 り組 ん だ 。 例 え ばyフ ィ リ ッ プ ス は社 内 向 け 及 び コ
0238) 米国の半導体産業5
ン ピ ュ ー タ向 け ゲ ル マ ニ ウ ム ア ロ イ型 の効 率 的 生 産 方 法 に よ り価 格 や 性 能 面 で
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優位 に立 ち,欧 州 市 場 で 大 きな成 功 を収 め た。60年 代 初 頭 まで 欧州 諸 国 は半 導 体 を域 内 で ほぼ 自給 で き,対 米 輸入 や米 子会 社 の現地 生 産 は極 あて限 られ て い た ので あ る。
[2]IC時 代
1960年 代 にICが 量 産 さ れ始 め る と,米 国 の 半 導 体 産 業 は劇 的 な構 造 的 変 化 を 遂 げ た 。 垂 直 統 合 型 企 業 が 市 場 か ら撤 退 を 強 い られ る一 方 で,新 しい 半 導 体 専 業 企 業 がIC事 業 に 陸 続 と して 参 入 した 。 しか も,米 企 業 は こ れ と ほ ぼ 並 行 して 欧 州 諸 国 に 対 し てICの 輸 出 や 直 接 投 資 を 積 極 的 に 実 施 し始 め た の で あ る。
こ の よ う な 激 変 を 惹 起 し た の は60年 頃 に お け る シ リコ ン プ レー ナIC法 の 導 入 で あ った 。 ま た,ICが 電 子 シ ス テ ム の サ ブ シ ス テ ム と して電 子 機 器 の デ ザ イ ン と密 接 な 関 連 を 持 っ よ う に な っ た た め,電 子 機 器 メ ー カ ー は川 上 へ の 多 角 化 を 目 的 と してIC生 産 に 続 々 と参 入 す る に 至 っ た 。 半導 体 の 技 術 革 新 が 益 々 累 積 的 と な る一 方 で,従 来 の 技 術 体 系 で 成 功 した 企 業(欧 州 の フ ィ リップ スや
シー メ ンス,米 国 のGEやRCA)は 決 してIC技 術 を 迅 速 に 導 入 しよ う と は しな か った 。 む ろ ん,欧 州 の 企 業 が シ リ コ ン プ レー ナIC技 術 へ の 転 換 や デ ジ タ ル ICの 量 産 化 に 遅 れ た の は,国 内 半 導 体 市 場 の 特 殊 な 構 造 に も由 来 して い た 。欧 州 の 半 導 体 需 要 は民 生 用 が 巾 心 で,当 初 は個 別 半 導 体 デ バ イ ス,次 いで リニ ア ICが 支 配 的 な 地 位 を 占 め た 。 そ の 結 果,欧 州 メ ー カ ー は デ ジ タ ルICよ り も個
(s)
別 半 導 体 デ バ イ ス や リニ アICを 重 視 す る傾 向 を 次 第 に 強 め て い った の で あ る。
これ に対 して 米 国 市 場 で は,コ ン ピ ュ ー タが デ ジ タ ルICの,軍 需 が シ リコ ンICの 発 展 を 強 力 に 牽 引 す る こ と に な っ た。 米 国 の 半 導 体 や コ ン ピ ュ ー タ産 業 は 政 策 的 支 援 に よ っ て 発 展 し,政 府 調 達 と コ ン ピ ュ ー タ が 国 内 半 導 体 需 要 の
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中心 とな った ので あ る。っ ま り,米 国政 府(軍 とNASA)は 政 府 調達 や研 究 開発 援 助 を通 じてIC開 発 を助 成 し,日 本 政府 も関税 障 壁 や外 資 規 制 に よ って 国内 市場 を保 護 したが,欧 州 諸 国 の政府 は国 内半 導 体 産 業 の支 援 や保 護 に は甚 だ消
6商 経 論 叢 第31巻 第1号 (237)
極 的 だ っ た と い っ て よ い。 こ う して70年 代 のLSI期 に は,米 半 導 体 専 業 メ ー カ ー が 急 成 長 す る デ ジ タ ルIC市 場 を 完 全 に 支 配 す る に 至 っ た の で あ る。
欧 州 で はIC時 代 に な って も,電 子 管 メ ー カ ー が 半 導 体 産 業 を 支 配 し続 け た の で,シ リコ ン プ レー ナIC技 術 の 導 入 に 著 し く立 ち後 れ た 。そ の た あ,60年 代 に欧 州 で コ ン ピ ュ ー タや デ ジ タ ルIC市 場 が 急 成 長 す る と,米 企 業 が 輸 出 や 現 地 子 会 社 を 通 じて 欧 州 市 場 を 支 配 す る こ と に な っ た。 こ う して 欧 州 の 半 導 体 メ ー カ ー は最 も急 速 に 成 長 す る デ ジ タ ルIC市 場 か ら排 除 さ れ,民 生 用 及 び産 業 用 向 け の 個 別 半 導 体 デ バ イ スや リニ アICを 生産 す る こ と に 僅 か な 活 路 を 見
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出 す のみ で あ った ので あ る。 む ろん,日 本 の総 合電 機 メ ーカ ー もまた シ リコ ン プ レー ナIC技 術 へ の転 換 に遅 れ,60年 代 を通 じてIC生 産 で米 企 業 に大 き く 水 を あ け られ るに至 った。 しか しなが ら,日 本 政 府 は米 企 業 に対 して強 力 な国
内 市場保 護 政 策 を実施 した。 そ の結 果,日 本企 業 はや が て電 卓 や コ ン ピュー タ の需 要増 大 と産 業政 策 に支 え られ なが ら,MOS・LSI分 野 を中心 に急 速 に台頭 す る ことが で きたの で あ る。
LSI期 に入 ると,リ ニア機能 の デ ジ タル化,コ ン ピュー タ と電 気 通 信 機器 や 民 生 用 電 子 機 器 との接 近 な どが 急 速 に進 展 し,日 米 欧 の 半導 体 需 要 は70年 代 末 まで に非 常 に類似 的 な構 造 に な った。欧 州 で も80年 代 初 頭 に は,最 終電 子 機 器 メ ー カ ーが 最 終 製 品 の競 争 力 を強 化 す るた め にLSI生 産 に相 次 い で参 入 し
た。 この参 入 は欧州 諸 国 の国 内半 導 体 産業 育 成 計 画 によ って助長 され たが,超 LSI期 に入 った80年 代 初 頭 にお い て も,欧 州 企 業 は カ ス タム や セ ミカ ス タ ム 及 び特 定 用 途LSIな どニ ッチ市 場 を除 け ば,ほ とん ど競 争 力 を持 ち得 なか った ので あ る。 む ろん,欧 州 企 業 の不 振 は参 入 の遅 れ と同時 に,LSIの 技 術 的特 性 に 由来 して い た。LSI技 術 は複 雑 で応 用 分 野 が広 く,技 術 向 上 も累 積 的 だ った ので,参 入 の遅 れ は致 命 的 だ ったか らで あ る。政府 の役 割 は米 国 で はLSI期 に 低下 した が,欧 州 や 日本 で はむ しろ逆 に増 大 した。日本政 府 は70年 代 を通 じて 国 内半 導 体 市場 を強 力 に保 護 し続 けたが,欧 州 諸 国 の政 府 は ドイ ッを除 き,日 本 よ り も対 応 が鈍 ぐ一貫性 の な い官 僚 的 な政 策 に終 始 した。 それ結 果,日 本 は 半導 体 産 業 の国 際競 争 力 を改 善 す るの に成 功 したが,欧 州 諸 国 は ドイ ッの部分
0235} 米国の半導体産業7
的 な成 功 を除 けば,概 して失 敗 に終 わ った。 こ う して,80年 代初 頭 に世 界 の LSI市 場 で米 企 業 の覇権 に挑 戦 し得 る地 位 に立 った の は欧州 企 業 で はな く,日
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本 企 業 と な った の で あ る。
Hト ラ ン ジ ス タ 時 代,1947〜1961年
トラ ン ジ ス タ時 代 は47年 の トラ ン ジ ス タの 発 明 か ら59〜61年 の プ レ ー ナ法 とICの 登 場 まで の 時 期 を 指 して い る。 次 に,こ の 時 期 に お け る米 国 半導 体 産 業 の 特 徴 を 見 て お こ う。
[1]発 展 要 因 (1)ト ラ ンジスタ開発
47年12月23日,ベ ル研 の バ ー デ ィー ン と ブ ラ ッ テ ンが 点 接 触 型 トラ ン ジ ス タ を 発 明 し,音 声 信 号 の増 幅 作 用 を 確 認 した。 しか し,こ の 発 明 は 公 表 され ず に7カ 月 間 近 く も秘 密 に さ れ た 。 と い うの も,ベ ル 研 は特 許 出 願 準 備 中 に 他 の 誰 か が トラ ン ジ ス タを 発 明 して しま うか も知 れ な い と懸 念 し,ま た 公 知 に な る 前 に こ の発 明 を 軍 の 手 に 渡 した くな い と考 え,さ らに 実 用 的 な トラ ン ジ ス タ を 開 発 して電 子 装 置 に 応 用 で き る ま で に も っ て 行 く時 間 を稼 こ う と 目論 ん で い た か らで あ る。 現 に 発 表 の 時 点 で は,ト ラ ン ジ ス タ は ま だ 実 験 室 段 階 の 代 物 で あ
り,実 際 に 役 に立 つ 装 置 が 作 られ た の は そ れ か ら何 年 も後 の こ とで あ っ た。
例 え ば,WE社 が ご く初 歩 的 な トラ ン ジ ス タ の 生 産 を 始 め た の は51年10月 の こ とで あ る。 ま た,電 話 シ ス テ ム が52年 以 降 に,通 信 分 野 以 外 で は補 聴 器
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(ソ ノ トー ン社)が53年 に トラ ン ジ ス タを 初 あ て 利 用 す る に 至 っ た 。 そ の 結 果, レ イ セ オ ン社 が53年3月 に 月 産1万 個 の 補 聴 器 用 トラ ン ジ ス タ を製 造 す る ま で に な っ た。 しか しな が ら,ト ラ ン ジ ス タ式 の 価 格 は初 期 に は 真 空 管 式 の3倍 か ら4倍 に も達 して い た 。 と い う の も,ト ラ ン ジ ス タ の 価 格 が 真 空 管 の8倍, 1個9ド ル と か な り高 価 だ っ た か ら で あ る。54年10月 に はTIやIDEが 初 め て ト ラ ン ジ ス タ ラ ジ オ を 量 産 した が,価 格 が49ド ル95セ ン トと相 当 に割 高 だ っ た た め に結 局 ビ ジ ネ ス と して は失 敗 に終 わ っ た。
8商 経 論 叢 第31巻 第1号 (235)
こ う した 開 発 の 遅 れ は トラ ン ジ ス タ が 製 造 面 で 困 難 を 抱 え,信 頼 性 に も乏 し く,2つ と して 同 じ特 性 を持 っ も の を 生 産 し得 な か っ た か らで あ る。既 に48年 1月 に ベ ル 研 の シ ョ ッ ク レー が 理 論 的 に解 明 して い た 接 合 型 ト ラ ン ジ ス タ も, WEの 生 産 開 始 ま で に は 数 年 の 準 備 期 間 を要 し,し か も僅 か 月 産100個 程 度 の 生 産 規 模 を維 持 す る の に 汲 汲 と して い た。 そ こ で,ベ ル 研 も トラ ン ジ ス タの 基 礎 研 究 よ り もむ しろ 開 発 に力 点 を 置 くよ う に な っ た。 まず,ト ラ ン ジ ス タ用 に 新 材 料 を 開 発 す る研 究 が 開 始 され た 。 戦 前 か ら使 わ れ て き た シ リコ ン試 料 は多 結 晶 シ リ コ ンで あ っ た こ と か ら,結 晶 間 の 境 目部 分 が 正 孔 や 電 子 を補 捉 し,電 流 を 半 導 体 に流 して も100万 分 の1秒 もた た な い う ち に 消 え て しま う と い う欠 点 を 抱 え て い た。 こ の 欠 陥 の 故 に接 合 型 トラ ン ジ ス タ は シ リコ ンで は作 る こ と が で き な か っ た。
そ こ で,溶 融 温 度 の 低 い ゲ ル マ ニ ウ ム(摂 氏1937.4度)が 新 しい材 料 と して 選 ば れ,48年 に ベ ル 研 がr結 晶 引上 げ 法 」 に よ って 初 め て ゲ ル マ ニ ウ ム単 結 晶 を 製 造 す る こ と に成 功 した(第1表)。 ゲ ル マ ニ ウ ム単 結 晶 は正 孔 や電 子 を 蒸 発 さ せ る こ と な く,電 流 が トラ ン ジ ス タ と して の 機 能 を 果 た す の に 十分 な 時 間 だ け
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流 れ る の を 可能 に した か らで あ る。
ゲ ル マ ニ ュ ウ ム の 構 造 上 及 び純 度 に関 す る 問 題 点 は48年 の 単 結 晶 成 長 法 と 51年 の 区 域 製 錬 法 に よ って 解 決 さ れ,51年 に は 接 合 型 トラ ン ジ ス タが 試 作 さ れ る に 至 った 。 一 方,シ リコ ン は困 難 な 問 題 を 抱 え て い た が,ゲ ル マ ニ ウ ム の 如 き希 少 な元 素 と は違 って,砂 と い う形 で 地 球 上 に 無 尽 蔵 に存 在 す る と い う利
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点 を 持 って い た 。ゲ ル マ ニ ウ ム は52年 価 格 で キ ロi当た り約300ド ル に達 し,不 純 物 を 取 り除 く と金 よ り も高 価 で あ った と い う(た だ し トラ ンジスタ1個 当 た りゲ
ル マエ ウム消費 量 は0.002グ ラム にす ぎな い)。 だ か ら,53年 当 時 に は最 も良 質 の ト ラ ン ジ ス タ は1個8ド ル と,真 空 管 の10倍 以 上 の 価 格 だ っ た。
も ち ろ ん,シ リ コ ン は 価 格 の み な ら ず 技 術 的 に も優 れ た ト ラ ン ジ ス タ の 特 性 を 持 って い た 。 と い うの も,シ リコ ンの み が 集 積 回 路 に適 した 表 面 の 化 学 的 特 性 を 具 え て い た か らで あ る。 だ が,シ リコ ンは 融 点 が 摂 氏1410度 と高 い の で, ゲ ル マ ニ ウ ム の よ う に グ ラ フ ァイ トの ル ツ ボ で 溶 か す と シ リコ ンカ ー バ イ ドが
X234} 米国の半導体産業9
第1表 半 導体及 びIC技 術 開発の歴 史 年
1948 1950
1951
1952
1953 1954
1955 195s 1957 1960
1961
1962
1963
1964
・・:
1970 1971 1972 1973 1976
ゲ ル マ ニ ウ ム 点 接 触 型 ト ラ ン ジ ス タ の 発 明(ベ ル 研)
ゲ ル マ ニ ウ ム単 結 晶 引 上 げ 法(WE)(公 表,最 初 の 実 験 成 功 は48年)ゾ ー ン 精 製 法(WE)
ゲ ル マ ニ ウ ム 点 接 触 型 トラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(WE) ゲ ル マ ニ ウ ム 成 長 接 合 型 ト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(WE)
ア ロ イ 法(GE)
ア ロ イ接 合 型 ト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(GE,RCA) ジ ェ ッ トエ ッ チ ン グ 法(フ ィ ル コ)
表 面 障 壁 型 ト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(フ ィ ル コ) シ リ コ ン接 合 型 トラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(TI) 酸 化 膜 拡 散 法(WE)
拡 散 型 ト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(WE,TI)
ト ン ネ ル(エ サ キ)ダ イ オ ー ドの 商 用 生 産(ソ ニ ー) 7aレ ー ナ 法(FC)
1プ レ ー ナ ・ トラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(FC) エ ピ タ キ シ ャ ル 法(WE)
エ ピ タ キ シ ャ ル ・ ト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(WE) ICの 商 用 生 産(TI)(キ ル ビ ー に よ る実 用 化 は58年) RTL・IC商 用 生 産(FC)
MOSト ラ ン ジ ス タ の 商 用 生 産(FC) DTL・IC(シ グ ネ テ ィ ッ ク ス) CMOSト ラ ン ジ ス タ 商 用 生 産(RCA) ECL・IC商 用 生 産(モ ト ロ ー ラ) TTL・IC商 用 生 産(シ ル バ ニ ア,TI) CMOS・IC商 用 生 産(RCA)
1KMOSRAM商 用 生 産(イ ン テ ル,ア ドバ ン ス ト, MPU商 用 生 産(イ ンテ ル)
バ イ ポ ー ラRAM商 用 生 産 4KMOSRAM商 用 生 産 16KMOSRAM商 用 生 産
メ モ リ ・ シ ス テ ム ズ)
(資 料)Tilton,⑫cit.PP.16‑17;WilsonEganandAshton,ap.C2t.,pp.40‑41よ り 作 成 。
10商 経 論 叢 第31巻 第1号 0233)
で き て しま う。 そ の た め 石 英(二 酸 化 シ リコ ン)の ル ッ ボ が 使 わ れ た が,そ の 壁 か ら酸 素 が 溶 け 出 して シ リ コ ン に 入 り込 み 電 気 的 活 性 を 持 っ 化 合 物 を 作 る の で,電 気 抵 抗 が 大 幅 に変 化 し電 子 部 品 と して は 全 く使 え な く な る の で あ る。 し か し,こ れ は53年 に ル ツ ボ を 使 用 しな い フ ロ ー テ ィ ン グ ゾ ー ン法 と い う シ リ コ ン製 錬 法 に よ って 解 決 され た。 ま た,52年 に は シ リコ ンや ゲ ル マ ユ ウ ム の結 晶 に ドー ピ ン グす る新 しい 方 法 で あ る ガ ス(不 純 物)拡 散 法 が 発 明 さ れ,結 晶 引 上 げ法 に取 って代 わ り半導体 製 造 の基 本 的 方法 とな ったの で 誘2。
そ れ ま で 半 導 体 技 術 の 開 発 は専 らベ ル 研 の 手 に よ って 行 な わ れ て き た が,53 年 に接 合 型 トラ ン ジ ス タ開 発 の 衝 に 当 た って い た 所 員 の テ ィ ー ル が 突 然 ベ ル 研
を 辞 め てTIに 移 り,新 設 の研 究 所 長 に就 任 した。 こ う してTIは54年 に は シ リ コ ン ト ラ ン ジ ス タ の 生 産 を 開 始 し,半 導 体 事 業 へ の 参 入 に 成 功 した の で あ
(14)
る。 シ ョ ッ ク レー も ま た 同 年 に 自分 の 会 社 を 始 め る た め に や は り ベ ル研 を 去 っ て い る。 しか し,そ の 一 方 で は ベ ル研 で も同 じ54年 に フ ロ ッ シ ュ と デ リ ッ クが 重 要 な 現 代 半 導 体 技 術 の1っ で あ り,IC産 業 の 基 礎 と も な っ た シ リ コ ン酸 化
(15)
膜 技 術 を発見 して い るので あ る。
(2)反 トラス ト政 策
米 国 電 子 技 術 史 上 に お い て,AT&T(ア メ リカ電話電 信会 社)の ベ ル研 究 所 ほ ど重 要 な 役 割 を 果 た した 研 究 機 関 は存 在 しな い と い って よ い 。例 え ば,半 導 体, レー ザ ー,コ ン ピ ュ ー タな ど の ハ イ テ ク産 業 に お け る米 国 の 優 位 が ベ ル 研 究 所 の研 究 業 績 と人 材 に 基 礎 を 置 い て い た こ と を 想 起 す る だ け で も思 い 半 ば に過 ぎ よ う。ベ ル 研 究 所 は第2次 大 戦 中 に は 陸 海 軍 や 国 防 研 究 委 員 会 の た め に 約2,000 の 研 究 開 発 計 画 に従 事 しyレ ー ダ ー や 通 信 シ ス テ ム を 開 発 し た と い う。 しか も ベ ル 研 究 所 はWE社(AT&Tの 製造 部 門)と 共 に49〜59年 の10年 間 に 政 府 研 究 費 の48%を 供 与 さ れ た と い う実 績 を も っ て い る の で あ る 。
と こ ろ で,戦 後 の 反 トラ ス ト政 策 は ベ ル 研 究 所 で 開 発 さ れ た 技 術 の 商 業 化 に 大 き な影 響 を 与 え た 。 と い うの も,AT&Tは49年 に 司 法 省 の 反 トラ ス ト提 訴
に 直 面 した た あ,以 後56年 ま で 新 技 術 の 特 許 利 用 権 を 他 社 に 寛 大 に 開 放 す る
0232) 米 国 の 半導 体 産 業11
政策 を取 ったか らで あ る。 しか も,56年 の 同意 審決 に従 ってAT&TとWE
の分離 解 体 を免 除 され る代 わ りに,傘 下 のWEも 含 あ て既存 の全特 許 を国 内企 業 に対 して開 放 し,将 来 に取 得 す る特 許 も合 理 的 な価 格 で 供与 す る ことを義務 付 け られ た ので あ る。 こ う してAT&Tは 分 割 を免 れ た もの の,電 気 通 信 や国 防 ・宇 宙 を 除 く分野 へ の参入 を禁 止 され,電 気 通 信 にお け る独 占的 地位 を テ コ
と して関連 市 場 で独 占的地 位 を築 い た り,ベ ル研 究 所 で 開発 され た技術 を特 許
Cis)
有 効 期 間 中 に独 占す る こ と も阻止 され る こ とにな った。
研 究 開発 面 にお け るベ ル研 の重 要 性 は トラ ン ジス タ開 発 か らIC開 発 まで の 期 間 に半 導 体分 野 で339以 上 の特許(全 米半導体特許 の25%以 上)を 取 得 した点 を想 起 す るだ けで も思 い半 ば に過 ぎ るで あ ろ う。 しか も,ベ ル研 の重 要 性 は技 術 開発 にお け る主導 力 のみ な らずWEと の一 体 的 な関係 に もあ った。即 ち,ベ ル研 はWEか らの フ ィー ドバ ックを通 じて 製 品 や生 産 技 術 を開 発 し改 善 して 半 導 体 デバ イ スの 生 産 コ ス トを 劇 的 に削 減 す る こ とが で きた の で あ る。 む ろ ん,ベ ル研 の研 究成 果 は早 急 に他 の企業 へ と普 及 し,米 国 電 子産 業 全般 の発 展 を促 進 した。とい うの もTベ ル研 は56年 に反 トラ ス ト訴 訟 の同意 審 決 に よ って
トラ ンジス タに関 す る全特 許 権 を開 放 させ られ たか らで あ る。また,既 に51年 に は審 決 を免 れ よ うと して,ベ ル研 は半導 体 産 業 へ の参 入 を望 む す べて の企 業 に対 して情報 提 供 を開始 した。 この よ うに反 トラス ト政策 に よ って,ベ ル研 は 基 本 技 術 を広 く公 開 す る こ とを義 務 付 け られ,国 内研 究基 盤 の多様 化 と技術 の
(17>
革 新 を 促 す 競 争 圧 力 や 誘 引 を 作 り出 す こ と に な っ た の で あ る。 も ち ろ ん,ベ ル 研 は48年 ま で に トラ ン ジ ス タ研 究 に 投 入 し た100万 ドル を レイ セ オ ンやTI
(1g)
な ど に対 す る ライセ ンス売 却 に よ って56年 まで に回 収 して い る。
この よ うにAT&Tが 重 要 特 許 の所 有 を背 景 に寛 大 な特 許 供 与慣 行 を築 き 上 げ た ため に,こ の慣 行 が そ の後 も長 く半導 体 業 界全 体 を支配 す る伝 統 とな っ た。 しか も,他 の メ ーカ ー も競 争 企業 の特 許侵 害 を助 長 し,司 法 省 の反 トラス ト訴 訟 を惹起 す るか も知 れ な い とい う懸 念 か ら,AT&Tの 寛大 な特許 供 与 政 策 か らあ ま り逸 脱 す る こ とが で きなか った。 もち ろん,特 許 供与 契 約 は一 般 に 企業 別 に交 渉 され ク ロス ライ セ ンス条項 を含 む の で,交 換 特 許 を ほ とん ど所 有
12 商 経 論 叢 第31巻 第1号 0231)
第2衷 米企業 の半 導体特 許数1952‑68年
企 業 19521953 1954195519561957 19581959igsa1961196219631964196519661967 198 1958‑68 ベ ル 研(WE) 34 47 3fi 27 48 34 51 72 67 fi7 55 54 41 64 59 41 38 835
〈電 子管企 業〉 、
RCA 14 19 16 io 44 45 57 4s 34 33 33 27 41 58 75 fi3 53 668 ゼ ネ ラル ェ レ ク トリッ ク 5 7 s 11 25 13 35 34 26 3s 42 35 38 8fi 7s s4 41 580
ウエスチ ングハ ウス(WH) 2 6 2 4 9 7 2t 25 30 21 23 18 23 78 54 46 41 410 シ ル バ ニ ア 1 4 6 1 11 14 19 9 13 7 13 10 9 14 7 12 8 158
ブ イ ル コ ・ フ オ ー ド 0 0 0 1 3 4 7 13 14 13 14 9 8 12 17 9 6 130
レ イ セ オ ン 0 1 0 1 7 3 10 8 6 6 4 7 3 5 6 4 1 72
タ ン グ ・ ソ ー ノレ 0 Q 0 1 0 0 3 1 0 2 5 1 2 5 2 4 0 26
CBS 0 0 0 2 2 0 1 1 0 0 1 0 0 1 1 0 0 9
小 計 22 37 30 31 101 8fi153 137 123 118 135 XO7 124 259 238 202 154 2,053
〈新 規参入 企業〉
r 1 1 0 1 4 6 15 22 25 37 96 53 47 5s 70 4fi 41 521
TI 0 0 0 0 0 2 9 8 22 13 20 24 16 43 35 52 42 286
モ ト ロ ー ラ 0 1 3 2 5 11 8 8 9 1Q 10 6 8 26 25 39 52 190
ヒ ュ ー ズ 0 0 5 3 9 12 18 ll 3 9 to 7 9 19 16 lfi 13 iso
ハ ネ ウ ェ ル 0 0 0 Q 1 2 5117 13 12 38 lfi 15 11 1819 3 Aso
ス ペ リ ー ラ ン ド 0 0 0 1 0 」 」
1
7 7 6 13 9 11 35 1811517 1139
GM 0 0 0 0 0 Q s 5 8 12 3 5 8 26
…
311613 133
ITT 2 2 0 4 4 2 11 15 10 61 18 4 s 7 5 96 111
ク レ バ イ ト ベ ン デ ッ ク ス
0 0
0 1
3 1
3 0
2 0
1 3
3 2
3 4
7'714 7i90i
11217 513
to 15
312il
li161615 1
78 77 トン プ ソ ン ・ラモ ・0
ウ ー ル ド リ ッ ジi
111
i 0 0 1 3 7
E 3・18旨11
1
{
112 4101DO
II so
フ ェ ア チ ャ イ ル ドiOI
olo
0 0 0 0 0 13412 36 1101101 11150 52
ス プ ラー グio σ0 0 2 2 2 8 2 14 35 6
61
5161 52その他17社 1 31 1 10 7 is …22 15 12.21 97 30 133巴23
221
小 計 4 813 15 37 54 1031137齢1 156250…、 1s71so 298 286
T
1
2361184 2,240
1 合 計 6Q 927gi73
f
18fi 174 307
3
346騨 竺40328,325 621 583 4791372
4
5,12&
1
ヒ
憎
シ ェ ア(%) 1
l
i i 1ベ ル 研
1
旨565146137
26120
17 20121'201211 1613 io」
1 10
i
9i10 16'
犀 子管企業 3714038'42 54i49 50
1
4α38i3431 333$ 42141 42401 40
1
1新規参入企業i
7916…21
f
20i31: 33 40、41;46157
「
5149 48{49i49「5・ 44
(資 料)Tilton,⑫,cit.,P.57.
(230) 米 国 の半 導 体産 業13
しな い 企 業 は売 上 高 の1〜6%の 使 用 料 を 支 払 わ ね ば な らな か った 。第2表 の如 く50年 代 に は ベ ル 研(WE)が 最 大 の 半 導 体 特 許 取 得 数 を 誇 っ て い た が,50年 代 半 ば に は フ ィル コ が ジ ェ ッ トエ ッ チ ン グ技 術 と そ れ に基 づ く ダ イ オ ー ドや ト
ラ ン ジ ス タの 開 発 で 台 頭 した。 そ して 同 社 は他 社 に 特 許 の 供 与 と 自動 生 産 設 備 の 販 売 を積 極 的 に行 な っ た。 だ が,フ ィル コ の特 許 は 間 もな く メ サ 型 や 拡 散 技 術 に よ って 陳 腐 化 さ れ,特 許 供 与 を 受 け た の は ご く少 数 の 企 業 に限 られ て い た
(19) と い う。
60年 代 に な る と,TIとFCが 多 くの 企 業 に 特 許 を 供 与 す る よ うに な った 。 と い うの も,TIはIC,FCは プ レ ー ナ 法 に 関 す る重 要 な 特 許 を 所 有 して い た か ら で あ る。ICの 生 産 に は両 社 の 特 許 技 術 が 必 要 不 可 欠 で あ っ た が,66年 にTIと FCが 相 互 の 特 許 に っ い て 認 あ 合 う こ と で 同 意 した た め,一 方 か らの 特 許 供 与 を受 け た 企 業 は他 方 か ら特 許 侵 害 で 訴 え られ る恐 れ が な くな っ た。 特 にFCは 他 社 に特 許 契 約 を 結 ぶ よ う積 極 的 に 勧 誘 し,売 上 高 の 最 大 限6%の 使 用 料 を 求 め,そ の代 わ り に十 分 な技 術 援 助 を 提 供 した の で あ る。一 方,TIは 特 許 供 与 に は む し ろ 消 極 的 で,自 社 の 海 外 子 会 社 以 外 に 対 す る技 術 移 転 に は 全 く無 関 心
(zo) だ っ た と い わ れ る 。
(3>ベ ル研の貢献
AT&Tは 特 許 を半 導 体産 業 へ の参 入 障壁 と して は使 わず,WEを 通 じて全 て の企 業 に合理 的 な条 件 で特 許 を供 与 した。 ベ ル研 も様 々 な方 法 を通 じて研 究 成 果 を迅 速 に公 開 す る方 針 を貫 いた。 ベ ル研 は所 内施 設 訪 問,半 導 体 製 造設 備 視 察,及 び所 員 との討 論 な どの た め に 内外 の科 学 者 や技 術 者 を頻 繁 に招 待 し た。 む ろん,招 待 の対 象 は特 許 契約 企 業 に限定 され て はい なか った とい う。 ま た,ベ ル研 は50年 代 に半導 体 技 術 に関 す る シ ンポ ジ ウム を頻繁 に開 催 して そ の普 及 に努 め た。51年 初 頭 に開 か れ た トラ ンジ ス タに関 す る第1回 シ ンポ ジウ ムは軍 関係 者 と政府 職 員 に限定 され て い た。 第2回 目 は51年 後 半 に政府 機 関, 大 学,80以 上 の工 業 会社 の代 表 を集 めて 開催 され た。52年4月 に もWEと 特 許 契 約 を交 わ した企 業 を対 象 に トラ ンジス タに関 す る物 理 学 や技 術 にっ いて8
14商 経 論 叢 第31巻 第1号 0229)
第1図 ベル研 の系 譜 を引 く半 導体企業, ベル研
「
1952‑fi7年
ト ラ ン ジ ト ロ ン,1952年
ソ リ ッ ド ス テ ー ト
1958年
ア メ リ カ ン パ ワ ー‑
1967年
頚 脚 ﹁
リニ95クロー
一1‑一̲̲̲1
一
シ ョ ッ ク レ ー 。 ト ラ ン ジ ス タ
(資 料)
フ ェ ア チ ィ ル ド 1957年
⊥
「 一… 一 』 「
リ ー ム ・ セ ミ ア メ ル コ シ グ ネ テ ゼ ネ ラ ル ・マ イ ク ロ モ レ ク ト ロ
コ ン ダ ク タ ィ ッ ク ス エ レク トロ ニ ク ス
1959年1962年1961年1963年1962年
翻 ぬ イド・ ⊥‑
1964年 「 ■
1 ア メ リ カ ン ・ マ イ エ レ ク ト ロ ニ ッ
イ ン タ ー シ ル ク ロ シ ス テ ム ズ ク ・ ア レ ー ズ 1967年1966年1967年
Tilton,op.cif.,p.79.
日間 の シ ンポ ジウムが 開 か れ た。 しか し,最 も重 要 で あ った の は シ リコ ン拡 散 酸 化 物 被 膜 な どWEの 主 要 技 術 特 許65件 に 関 す る56年 の シ ンポ ジ ウ ム で あ った。 とい うの も,シ リコ ン拡 散 と酸 化物 被 膜 の2つ の技 術 が 半導体 構 成 部 品 の大 量 生 産 を 可能 に し,生 産 コ ス トの低下 と性 能 や信 頼性 の 向上 を実現 した 結果,半 導体 産 業 は急成 長 期 に入 る こ とが で き るよ うに な った か らで あ る。 む ろん,ベ ル研 の基 本 特 許 や ノ ウハ ウの開 放 も50年 代 後 半 に 半導 体 産 業 を大 き く躍 進 させ る原 動 力 とな った。ベ ル研 は56年 以 降 新 しい 半導 体 技 術 の普 及 を 進 め る方 法 と して シ ンポ ジ ウム よ り もむ しろ特 許 契約 企 業 に よ る見学 を重視 す るよ うに な った。 例 え ば,新 しい エ ピタキ シ ャル技 術 の移 転 に は59年 末 と60
(21)
年 の工 場 見学 が積 極 的 に活 用 され た の で あ る。
ベ ル研 究 所 員 の離 職 率 が高 か った こ と も,50年 代 の半導 体 市場 へ の新 規参 入 を人材 面 か ら助 長 した。 ベ ル研 の系 譜 を引 く企 業 は テ ィル トンに よれ ば第1図
0228) 米 国 の半 導 体 産業15
の よ う に約20年 闇 に15社 に達 す る と い う。 これ は特 に 「孫 会 社 」 のFCが 多 数 の 新 設 企 業 を 続 々 と輩 出 さ せ た こ と に よ る。 む ろ ん,こ の ス ピ ンオ フ は半 導 体 業 界 で は 日常 茶 飯 事 で,ヒ ュ ー ズ,RCA,シ ル バ ニ ア,TI,モ トロ ー ラな ど も ま た ス ピ ン オ フ を通 じた 新 企 業 の 輩 出 を 経 験 す る こ と に な っ た の で あ る。 特 に ベ ル研 を 辞 め た 研 究 員 はTIや シ ル バ ニ ア が トラ ン ジ ス タ事 業 を 軌 道 に乗 せ るた め に大 い に活 躍 した。67年 に は 多 くのFCの 幹 部 社 員 が 辞 職 して 経 営 不 振
(22)
の ナ シ ョナ ル ・セ ミコ ン ダ ク タ ー の 再 建 に 当 た っ た の で あ る。 この よ うに ベ ル 研 は特 許 開 放,シ ン ポ ジ ウ ム開 催,研 究 員 の転 職 な ど を 通 じて 技 術 を広 く普 及 させ,米 国 電 子 産 業 の 発 展 を 加 速 さ せ た の で あ る。 実 際 米 国 の半 導 体 生 産 は 52〜59年 に約2,000万 ドル か ら3億9,000万 ドル へ と激 増 して い る。 この 間 に 半 導 体 企 業 数 も5社 か ら34社 に 増 加 し,59年 の 半 導 体 生 産 の63%が50年 代
(23)
に新 規 参 入 した 企 業 に よ っ て 占 め られ る に至 っ た。60年 ま で に 半導 体 生 産 に参 入 した 企 業 は 大 手 電 子 管 企 業(RCA,GE,WHな ど)で あ っ た が,や が てTI,モ
トロ ー ラ,ヒ ュ ー ズ,FCな ど の よ うな 独 立系 企 業 が ベ ンチ ャ ー キ ャ ピ タ ル の 支 援 を受 け な が ら,売 上 と製 品 ・製 造 特 許 の 両 者 で 主 導 権 を 握 る よ う に な った
(24) の で あ る 。
(4)軍 需
周 知 の 如 く ア メ リカ の 半 導 体 技 術 は50年 代 か ら60年 代 にか け て 軍 需 に よ っ て 大 き な 影 響 を 被 っ た。 日欧 で は民 生 用 向 け ゲ ル マ ニ ウ ム ・ トラ ン ジ ス タが 需 要 の 中 心 で あ った の に対 して,ア メ リカ で は小 型 化 ・高 性 能 ・高 信 頼 性 と い っ た 軍 需 用 途 に適 合 的 な シ リコ ン ・ トラ ン ジ ス タ が 支 配 的 に な っ た の で あ る。 し か も真 空 管 時 代 に電 子 部 品 を 支 配 して い た大 手 電 子 機 器 企 業 は トラ ン ジ ス タや ICの 時 代 に な る と ほ と ん ど が 撤 退 し,代 わ っ て 新 規 参 入 企 業 が 半 導 市 場 を 支
(25}
配 す るに至 った。
む ろん,半 導 体 研 究開 発 に対 して は強力 な政府 助 成 が実 施 され た。 例 え ば, 生産 準 備 契約 に基 づ き,試 験 用生 産 ライ ンの建設 資金 が民 間企 業 に供 与 され, 投 資 リス クの軽 減 と生産 技 術 の向上 に大 きな成 果 を上 げ た。 政 府助 成 の最 も著
16商 経 論 叢 第31巻 第1号 0227)
年 )5556575859606162636465666768料
1919191919191919191919191919債
第3表
半
生 産 額
(百 万 ド ル) 40 90 151 210 396 542 5fi5
×75 610 67fi 884 1,123 1,107 1,159
Tilton,op.c∫̀,PP.90‑91よ り 作 成 。
導 体
国防宇宙の占 生 産 額 め る割 合(%) (百 万 ドル)
38 36 36 39 45 48 39
39 4
35 16
2$ 41
28 79
27 148
27 228
25 312
米 国 の 半 導 体 ・ICの 政 府 購 入(国 防 ・宇 宙) IC
平 均 価 格 国防 宇宙 の 占 (ド ル)め る割合(%)
50.00 31.00
i 5.33 5.05 3.32 2.33
goo 94 85 72 53 43 37
名 な 例 は58年,国 防 総 省 に よ る モ ト ロ ー ラ やTIを 含 む 半 導 体12社 と の 4,000万 ドル の トラ ン ジ ス タ生 産 契 約 で あ っ た。 こ の場 合,」r二学 的 設 計 ・開 発 コ ス ト(56年 にx,400万 ドル)は 政 府 負 担,工 場 ・設 備 資 金 は メ ー一カ ー 負 担 と さ れ た。そ こ で,企 業 側 は製 品 の 一 部 を 割 増 価 格 で 購 入 す る政 府 保 証 と 引 き換 え に, 政 府 調 達i予定 数 量 の10〜12倍 の トラ ン ジ ス タ を 製 造 し得 る生 産 設 備 の 建 設 に 同 意 した 。因 に 国 防 総 省 調 査 に よ れ ば,直 接 ・間 接 の 政 府 半導 体 開 発 助 成 は58
〜59年 に 半導 体 産 業 のR&D総 額 の23〜25%に 達 す る もの と推 定 さ れ て い る。(26)
と ころ で,国 防 総 省 は50年 代 初 頭 か ら次 世 代 防 衛 兵 器(ミ サ イ ル ・システム) 用 半 導 体 の小 型 化 と信 頼 性 向 上 に取 り組 ん で い た。 そ こで,58年 にTIがICを 開 発 す る と,国 防 資 金 はIC開 発 に 重 点 的 に 振 り 向 け ら れ る こ と に な っ た 。IC
の 開 発 そ の もの は 直 接 的 な 政 府 助 成 な しに行 な わ れ た が,59年6月,空 軍 が 国
(27)
防用IC開 発 の た め に100万 ドル以 上 の援 助 をTIに 供 与 した ので あ る。 この政 府助 成 が 半導 体 生 成 期 の技 術 進 歩 を促 進 し,参 入 障壁 を 引 き下 げ る一 方 で,割
0226) 米 国 の半 導 体 産業17
第4表 米 国IC市 場 の構成(単 位:%)
1
1962 1965 19s9 1974 1978
政 府 goo 55 36 20 10
コ ン ピ ュ ー タ 0 35 44 36 37
産 業 用 0 9 is 30 37
民 生 用 0 1 4 15 15
(資 料)Borrus,op.cat.,p.73
増 価 格 で の軍 需 調 達 が牽 引 力 とな って最 先 端ICの 商業 的利 用 と市 場 開 拓 を可 能 に した。 ま た軍 需 向 け生 産 が増大 す るにっ れ て,習 熟 曲 線効 果 か ら単位 コス トが下 落 し,数 年 の 内 にIC価 格 は産 業 用 市場,次 いで民 生 用 市場 に も浸 透 し 得 るに十分 な水 準 まで低下 した ので あ る。
一 方,国 防需 要 は半 導 体 の産 業 構造 に も大 きな影 響 を与 え た。例 えば,59年 に は半 導 体 売 上 高 の63%,軍 需用 売 上 高 の69%が 新 規 参 入 企 業 に よ って 占 あ られ た。特 にTIやFCの よ うな 半導 体 専業 企 業 に と って,軍 需 用売 上 は初期 の 製 品 開発 と市場 で の生 き残 りの た め に非常 に重要 な役 割 を果 た した。 とい うの も軍 需 は第3表 の如 く民 需 分 野 で トラ ンジス タ と競争 す るに はICが あ ま りに
(28)
も高 す ぎ た 時 期 に大 き な市 場 を 提 供 した か らで あ る(第4表)。63〜65年 に 国 防 総 省 とNASA(国 家航空 宇宙局)はICを 大 量 に 使 用 す る14の 調 達 契 約(最 も著 名 なの は ミニ ッ トマ ン巡 航 ミサ イ ル シ ステ ム とア ポ ロ宇 宙船 誘 導 コ ンピュ ー タ)を 行 な っ た 。 特 にIC開 発 を 先 導 した 新 規 企 業2社,TI(ミ ニ ッ トマ ンII)とFC(ア ポロ) は各 々主 要 な 下 請 契 約 者 と な っ た。 ま た 国 防 ・宇 宙 へ のIC利 用 が 急 増 す る に 伴 っ て,モ トロ ー ラの よ うな 中 堅 企 業 もIC生 産 を拡 大 し,WH(ウ ェスチ ングハ ウス)やRCAの よ う な既 存 企 業 もIC生 産 の経 験 を積 む こ とが で き た の で あ る。
同 様 に 技 術 の 企 業 間 普 及 が 促 進 さ れ た点 も重 要 で あ る。 例 え ば,ト ラ ン ジ ス タ や,ICの 場 合 の よ う に 国 防 総 省 資 金 に よ っ て 開 発 さ れ た 製 品 や 製 造 方 法 は, 国 防 総 省 が 無 料 使 用 の包 括 的 特 許 を 取 得 した 。 この 包 括 特 許 は 政 府 自身,政 府 契 約 の履 行 に 関 係 す る政 府 契 約 者 な い し下 請 契 約 者,政 府 資 金 の提 供 を 受 け る 計 画 と関 係 す る者,に 対 して 特 許 の 自 由 使 用 を 規 定 して い た 。 っ ま り国 防 研 究
18商 経 論 叢 第31巻 第1号
第5表 米 国 の電子部 品売 上高 (単位:100万 ドル)
CI 500143378448422490125977692312214061234557717604
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ー 621015646390238735125120090307072505540257123323344434333554444ー
管信受 292127221064911472044462109780198564065443333332223212222211111
年 890123456789012345678556666666666777777777999999999999999999999111111111111111111111
(資 料)『 電rr業 年 鑑197574頁,『 電 子 .E業 年 鑑1980』185頁 。
0225)
開 発 計 画 は 国 防 契 約 企 業 の 間 の 特 許 プー ル の如 き機 能 を持 って いた といえ
(29}
よ う 。
[2]半 導 体 メ ー カ ー 41)竃 子 管
電 子 部 品 の う ち能 動 部 品 は電 子 管 (受信管,ブ ラウン管,出 力 ・特殊管),ト ラ ンジス タ ・個別 半 導 体,ICと い う3 世 代 の技 術 発展 を辿 って きた。電 子 管
は今世 紀 初 頭 に発 明 され,1920年 に よ うや く商業 生 産 され るに至 った。 電子 管 は唯一 利 用 可能 な重 要能 動 電 子 部 品 と して君 臨 し,最 終 電 子機 器 の開 発 や 性 能 を技 術 面 か ら左 右 し続 けた。 そ こ で,電 子 管 を改善 す るため に必死 の努
(30)
力 が積 み重 ね られ て きた。 だ が,電 子 管 は能 力 の増 大 と共 に以下 の如 き致命 的 な限界 に逢 着 した。 第1に,非 効 率 性 が 増大 した。起 動 の ため には加 熱 を 要 す るの で}電 力消 費 が増 大 す るのみ な らず,他 の部 品 を熱 の被害 か ら守 る必 要 性 が増 大 した。 第2に,真 空 管 が 機器 の信 頼性 を制 約 す るよ うにな った。 真 空 管 は燃 え尽 きて交 換 を要 す るので,初 期 の電 話 交 換 機 の よ うに数 千 本 の真 空 管 を使 う機 器 で は困 難 な問 題 を抱 え る こ とに な った。 第3に,真 空 管 の デ ザ イ ンと構 造 が大 き さ と コ ス トの削 減 を妨 げ た。 最 後 に,真 空 管 は脆 く,衝 撃 に よ って簡 単 に壊 れ る恐 れが あ った。 こ う した欠 陥,特 に効 率性 と信 頼性 の限 界 の ため に電 子 管 に代 わ る もの を発 明 しよ う とい う研 究 が 助 長 され る ことに な っ た ので あ る。 それ は第2次 大戦 前 に始 ま ったが,戦 後 に トラ ンジ ス タの開 発 と
(224) 米 国 の半 導 体産 業19
い う形 で 実 現 を み る こ と に な 喫.ト ラ ン ジ ス タの 売 上 高 は第5表 の よ う に63 年 に受 信 管 を超 え るが,69年 にICに 凌 駕 さ れ,78年 に はICの 僅 か14%に す
ぎ な くな る の で あ る。
(2)ト ラ ンジス タ
トラ ン ジ ス タ 出 現 後 の 半 導 体 企 業 は以 下 の3っ の タ イ プ か らな る と い う。 第 1はAT&T(研 究部 門 のベ ル研 と製造部 門 のWEを 含 む)で,ト ラ ン ジ ス タの 発 明 や 製 品 ・製 造 技 術 の 革 新 に お い て 圧 倒 的 な 優 位 に 立 っ て い た 。 第2は 電 子 管 メ ー カ ー で,50年 代 初 期 に はGE,RCA,シ ル バ ニ ア の3大 メ ー カ ー が 国 内 電 子 管 生 産 の70〜80%を 占 め,フ ィル コ,CBS,レ イ セ オ ン,タ ン グ ・ソー ル ・ WHな ど の 企 業 が こ れ に続 い て い た 。第3は 電 子 管 生 産 に固 執 す べ き何 の 既 得 権 も持 た ぬ 新 規 参 入 企 業 で,次 の3つ の 小 グ ル ー プ か ら な っ て い た 。1つ は
ヒュ ー ズ,モ トロ ー ラ,IBMの よ うに 多 角 的 経 営 の 大 企 業 で あ る。 も う1つ は 他 の電 子 部 門 や 産 業 に従 事 して い た 中 小 企 業 で あ る。 例 え ば,TIは49年 に半 導 体 へ の 参 入 を 試 み た時,年 商600万 ドル 未 満 の 小 規 模 な地 中 探 査 サ ー ビ ス会 社 に す ぎ な か っ た 。 最 後 は半 導 体 の 生 産 を 目的 に創 業 さ れ た 企 業 で,そ の 多 く は ベ ル 研 や 既 存 の 半 導 体 企 業 を 去 っ た 技 術 者 達 に よ っ て 設 立 さ れ た も の で あ (32)
。な お,電 子 管 メ ー カ ・社 は54年 ま で にす べ て トラ ン ジ ス タの 生 産 を 開 始 した が,特 にGE,レ イ セ オ ン,RCAの3社 は商 業 生 産 開 始 の51年 に まで 遡 る こ と が で き る。 新 規 参 入 企 業 も55年 ま で に は陸 続 と して 参 入 を 果 た して い る。
因 に,参 入 時 期(51〜77年)が 明 らか な90社 に つ い て 見 る と,参 入 の ピー ク は 52〜53年,59〜63年,68〜72年 の3つ の 時 期 に集 中 して お り,72年 以 降 の 参
(33)
入 は 激 減 して い る。
ま ず,3つ の タイ プ の 企 業 の 半 導 体 特 許 取 得 数 を 見 る と,前 掲 第2表 の よ う に ベ ル 研 が52〜68年 で は16%を 占 有 し て ト ッ プ に 立 っ て い た 。 電 子 管 メ ー カ ー も上 位 を 占 め(RCAの2位,GEの3位,WHの5位),8社 全 体 で は40%に 達
して い る。 もち ろ ん,電 子 管 メ ー カ ー の シ ェ ア は56年 の54%を ピー ク に60年 代 に は31〜42%へ と低 下 した 。 一 方,新 規 参 入 企 業 は44%を 占 あ,特 にIBM,
20商 経 論 叢 第31巻 第1号
第6表 米 国 の企 業別半 導体技 術革新(単 位%)
(223)
企 業 全技術革新 製法革新 製品革新
ベル研 及 びWE 36 56 「 29
電 子 管 企 業 GE
フ ィ ル コ ・ フ オ ー ド RCA
17 7 3
22 11 0
13 8 4
小 計 27 33
‑一 一一 十 一
〇 11
0
25
i17
21 8 新 規 参 入 企 業
TT
フ ェ ア チ ャ イ ル ド IBM
i3 17 z
小 計 37 11 46
合 計 loo
10L
lOQ(資 料)Tilton,op.c鉱,P.60.
(注)1951‑6$年 の 技 術 革 新 。
第7表 主 要 米 企 業 の 半 導 体 市 場 シ ェ ア195T‑66年
企 業 1957
WE 」
〈電子 管企業 〉
GE 9
r fi
レ イ セ オ ン 」
シ ル バ ニ・ア 4
フ ィ ノレ コ ・ フ ォ ー ド 3
ウ エ ス チ ン グ ハ ウ ス(WH) 2
その他 2
小 計 31
〈新規参 入企 業〉
TI 20
ト ラ ン ジ ト ロ ン 12
ヒ ュ ー ズ 11
モ ト ロ ー ラ (b)
フ ェ ア チ ャ イ ル ド (b}
ト ン プ ソ ン ・ラ モ ・ウ ー ル ド リ ジ (b)
ゼ ネ ラ ル イ ン ス ッ ル メ ン ト (b)
デ ル コ ・ ラ ジ オ (b)
'そ
の 他 21
小 計 64
合 計 100
(資 料)Tiltonop.c盛̀.,p.66.
0
96︻1 5RU7・4晶Oeρ0ハb1153209555励切励16 06
(単 位1%) 1963119fifi
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