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(1)

「インターネ ッ ト市場の市場特性 」

‑ マ イクロ ソフ ト社 を中心 に新市場 の展 開 を知 る‑

今野 克義 論文

目 次

は じめに

第1章 インターネ ッ ト市場概観 a) ソフ トウェア産業 b)ハ ー ドウェア産業 C)イ ンフラ産業

2

幸 イ ンターネ ッ トの業界標準 (デ フ ァク トスタンダー ド)

a )www( wo r l dWi d eWe b )

b) TCPnP

c)サ ンマ イクロシステムズ社 とJAVA

d) ネ ッ トスケープコ ミュニケーシ ョンズ社 とイ ンターネ ッ ト閲覧用 ブラウザー

第3章 マイクロソフ ト社

第4章 イ ンターネ ッ ト市場の市場特性

おわ りに

追肥 マイクロソフ ト社 の独 占禁止法違反疑惑同席 について

(2)

は じめに

本論文では コンピュー タネ ッ トワーク、 と りわけイ ンターネ ッ ト産業 の基幹分野 のひ とつであるソフ トウェア産業 に焦点 を当てる。 イ ンターネ ッ ト産業 は1995年 アメ リカ合 衆 国で商用 化が実施 lされて以来瞬 く間 に全世界へ と広が りを見せ、そのネ ッ トワーク が張 り巡 らされている。このイ ンターネ ッ トの広が りは止 まることを知 らず、ビジネス、

趣味、あるいは教育機関 な ど、多種多様 な場で利用 されて来 てい る。 日本で は97年末 に インターネ ッ ト人 口は1500万 を超 え2、 さらなる増加が見込 まれている

さて、 インターネ ッ トとい うひ とつの分野 を考 える とき、その主 たる ものは ソフ トウ ェア産業、ハ ー ドウェア産業、 イ ンフラ産業の3つ にに大別 で きる。 自動車 に例 える と 理解 し易 い。 まず ソフ トウェア産業が ガソリンス タン ド等、そ してハー ドウェア産業が 自動車 メーカー、 イ ンフラ産業が道路整備事業 とい うことである。少 な くともあるひ と つのシステムを考察す る際の基本的な要素 を見 ればこの ようになろ う。

ところで、 イ ンターネ ッ ト産業 は換言すれば現代 の コンピュー タ産業 を象徴 す る分野 で もある。一般 的には ウイン ドウズ95の発売か ら始 まった とされ るパ ソコンブームは約 3年近 く経 た現在 、 イ ンター ネ ッ トブームへ と変貌 を遂 げてい る。 ネ ッ ト社会、soH03 等 の様 々な新 しい概念が相次いで現 れてい るが、それ ら全 ての概念 はネ ッ トワー クで相 互接続 された コンピュー タか ら発生 してい る と言 える。 ネ ッ トワー ク化 された コンピュ ータは小規模 な

LAN

か ら始 ま り、地域 的 なつ なが り、国内的な規模 でのつ なが り、そ し て国境 を越 えたグローバ ルなつ なが りへ と進化 して きてい る。 この現在進行 中の大 きな 流れは単 なるコンピュー タ同士 の物理的 ネ ッ トワークに終 わ らず、その利用価値 も しく は付加価値が模索 され、そ して新 たなるメデ ィア としての分野 を確立 しつつあ ると言 え よう

では、 この イ ンターネ ッ ト市場 におけるソフ トウェア ビジネスは どの ように展 開 され ているのであろ うか。 イ ンターネ ッ ト市場 は全世界 で2億人 を超 える一般 の個人ユ ーザ ー と4それ を取 り巻 く企業 で構成 されてい る。特 に個 人ユ ーザ ーは趣味 や仕事 な ど、多 様 な場面 でイ ンターネ ッ トを利用 し、その利用者数 も増加 の一途 をた どってい る。博報 堂の調査5によれば、大学生 の4人 に1人、中学生 で は5人 に1人の割合 に まで電子 メー ルが普及 していることになる。大学生 は勿論 の こと、中学生 にまで及ぶ イ ンターネ ッ ト 網利用 の普及が現実の もの となって きているのである。

1http://www.W3C.org/ を参照。

2電通総研 (http://www.dihs.cojp/)の公 開資料 による

3smallOfficeHomeOfficeの略称。

4電通総研 (http:〟www.dihs.co.jp/)の公 開資料 による。

5日本経済新聞朝刊平成10年7月28日、11面 に掲載。

(3)

さて、 この ようにイ ンターネ ッ ト市場 は、基本的 に個人ユーザ を中心 とした市場 とな っているのであるが、それ をビジネスチ ャンス と捉 え、その市場 に参入 して くる企業 は 少 な くない。マイクロソフ ト社、サ ンマ イクロシステムズ社、IBM社、ネ ッ トスケープ コミュニケーシ ョンズ社 などの代表的な企業以外 に も、実 に多 くの企業が ひ しめ き合 っ ている。

ここで、ひとつの疑問が生 じる。 インターネ ッ トとい う新 しい市場 に既存企業はどの ように して参入 して くるのだろうか。元来全 くあ り得 なかった新たな形態の市場 だけに、

その参入方法 は各社 ともまちまちである。A.D.チ ャン ドラー6によれば、新市場 に新製 品を投入す る事が多角化 と定義 されている。 この多角化 とい う概念の典型的な例がイ ン ターネ ッ ト市場であると思われる。マ イクロソフ ト社7の ようにPC市場 で養 った技術 を 応用 して参入す るケース もあれば、サ ンマ イクロシステムズ社8の ようにワークステー シ ョン企業で培 った技術 を応用 して くるケース もある。 また、 ネ ッ トスケープコミュニ ケー シ ョンズ社9の ように新規 に事業 を起 こ して参入す るケース もある。 もちろんIBM 社10の ロー タス社 買収 に見 られるような企業 のM&A (合併 ・買収) によって企業基盤 を強化 して参入す る例 もある。いずれに して も市場へ参入する企業 は どれ も多角化戦略 として新規 にビジネスを興すわけであるか ら、各社 とも業界標準いわゆるデ ファク ト ・ ス ンタンダー ドを当然のごとく追求す るのである。11

こうした状況の中で、筆者はマ イクロソフ ト社 を中心 に、今 日の インターネ ッ ト市場 におけるデファク トス タンダー ド奪取への企業戦略 を分析 し、論 じてみ ようと思 う。そ うすることによって、今 この新 しいインターネ ッ ト市場で何が起 きているのか、 また今 後 どの ような方向へ進展 しようとしているのかが、少 なか らず見 て取れる と確信す るか

らである。

さて、筆者 はコンピュータネ ッ トワークを運営す る管理者の一月 として大学 のネ ッ ト

6A.D.チ ャン ドラー著 「スケールアン ドスコープ」p30‑p39、p522等 (1993年有斐閣刊) で論 じられている。近代 産業企業 の持続 的 な成長 には水平結合、垂直結合、対外進 出、

多角化の4つの要素があると している。特 に新市場 に新製 品を投入す る際 「多角化」 と い う概念が与 えられ、企業の成長 に最 も効果的な部分であるとしている。

7マイクロソフ ト社 について、本論文内で特 に表記がなければ米国の本社 を意味する。

8サ ンマ イクロシステムズ社 について、本論文内で特 に表記が なければ米国の本社 を意 味す る。 また、正式 な表記はsunMicroSystemsCorporationである。

9同社 は米国本社以外 に海外拠点 を持 たないが、海外 の提携先企業 は多数ある。 日本で はソフ トバ ンク社であるが、本論文内では特 に表記がない限 り米国の本社 を意味す る。

10IBM社 について、本論文内で特 に表記がなければ米国の本社 を意味する。

11ここでの業界標準、す なわち標準化 ・平準化 とい う表記 については、衣笠洋輔著 「日 本企業の成長戦略」 (1985年 日本経済新聞社)での概念 に準拠す ることとす る。

(4)

ワーク運用 に携 わっている.その経験か ら、現在進行 している世界的規模でのコンピュ ータ ・ネ ッ トワークのグローバルな様 々な流れを肌で感 じ取 っているつ もりである。そ の中で も、今 回はソフ トウェア産業 を中心 に本論 を進めたい。 ソフ トウェア産業 におい ては実 に多種多様 な企業戦略 を垣間見 ることがで きる。後 に述べ るようにほぼ独 占的な シェアを誇 る企業か ら、価格切 り札 となる商品を揃 える企業 まで、あ らゆるケースが混 在 している。本論 は筆者 にとっての問題提起、そ して今後 の課選 となる国際経営的な観 点 を見出す こととなるであろう。

なお、本論文 を執筆す るに当た り、本学衣笠洋輔教授 、同榎本誠教授、同アサモア ・ テ ィオフィラス助教授 か ら貴重 な助言 ・指導 を頂いた。 この場 をお借 りして感謝の意 を 表 したい。

1

章 コンピュータネッ トワーク市場概観

まず、今後の議論 を進める際の指針お よび定義 として、 コンピュー タネ ッ トワーク市 場 を概観 してお きたい。

コンピュー タネ ッ トワーク市場 は以下 に挙 げるように大 まか に3つの産業 に分 けるこ とがで きる。

a)ソフ トウェア産業

第一 に本論で中心的テーマ となるソフ トウェア産業である。 ソフ トウェア産業は近年 のインターネ ッ ト普及の波 に同調 したかたちで、急激 な市場拡大 を図っている。いわゆ る

WW

W に代表 されるような、これ までは企業ユ ース中心だったネッ トワークを一般の 消費者 にも拡大するような流れの一環であるO

周知の通 りパーソナルコンピュータ市場 (以後、pc市場 と表記す る)のオペ レーシ ョ ンシステム分野 (以後、osと表記す る)では米国マ イクロソフ トが世界市場の約8割 を 独 占 している。 この状況 に対 して各社 は敢 えて競合戦略 を採 ることな く、そのOS上で 稼働 するソフ トウェアの開発 ・販売へ と主力 を注いでいる。巨人 と呼ばれるIBMで さえ os事業は大幅な規模の縮小12を行い、ネ ッ トワーク関連 ソフ トウェアなどへの集中投資

を行 う方向性 を示 している。

この ような新 しい市場 としての 「インターネ ッ ト分野」‑の各社の取 り組み姿勢 は非

12IBM社ではウイン ドウズの対抗osとしてOS2シリーズをリリース している。GUIイン ターフェイスによるオペ レーティング環境 を提供 しているに もかかわ らず、対応す るア プリケーシ ョンソフ トが少 ないことか ら市場では受け入れ られていない。

(5)

常 に重要である。即 ちすで に

O

S分野ではマ イクロソフ トに先 を越 され、同一市場 では 自社の規格 をアピールす ることがで きない。逆 に言 えば業界標準、つ ま りデファク トス タンダー ド足 り得 てないのである。従 って新 しい多角化分野であるインターネ ッ ト市場 に各社 とも意気込み を見せているのである。

O

S以外 の ソフ トウェアと しては近年急速 な成長 を見せ ているグループウェアが挙 げ られる。当然の ごとくマ イクロソフ ト社 もエ クスチェンジサーバやバ ックオフィス製品 で独走 を試みているが、必ず しもマ イクロソフ トの独走 には至 っていない。 この分野で はロー タス社 (IBMと協力関係)のノーツ も数多 く受け入れ られている。 ロータス社の 場合 は従来のネ ッ トワークである閉 ざされたLAN、す なわち小規模 なネ ッ トワーク時代 か ら受 け継がれて きたユーザー及び資産 をバ ックに現在で も健闘 していると言 える。

b)ハー ドウェア産業

次 にハー ドウェア産業である。言 うまで もな くこれはコンピュー タ本体 とその周辺機 器 を製造する産業である。ハ ー ドウェア産業は、いわゆる典型的 なコス ト比較優位 をも た らす製品であ り、生産立地の転換13が早い商品群である。最近では米国インテル社の 価格切 り下げ14問題、 コンパ ック社の経常利益減な どに見 られるように非常 に競争の激

しい産業である。

ハー ドウェアはMPU、 メモ リー、ハー ドデ ィスクなど多岐 にわたる部品群か ら構成 さ れている。MPUでは米国インテル社の独 占状態が、メモ リーでは 日本の東芝、松下、沖、

韓国の現代 、サムス ン、米国のマ イクロン、 ドイツのシーメ ンス らの競争状態、ハー ド デ ィス クではシンガポールのカンタム、米国IBM、シーゲー トらの寡 占状態 となってい る。いずれの部品 もコンピュー タを構成す る上で基本的に必要 となる ものである。 これ らの企業が製造 した各部品群 はコンピュー タを製品化す るメーカー‑ と納入 される。す なわち トヨタが関連会社か ら部品 を購入 し自動車 を組み上げるの と同 じメカニズムであ る。世界的な企業 として コンパ ック、IBM、 日本では東芝やNEC、富士通等がそれにあ たる。いずれの企業 も大量生産、いわゆる規模 の経済 を前提 とした戦略で市場へのアプ ローチを行 っている。

13衣笠洋輔著 「日本企業の成長戦略」 (1985年 日本経済新聞社)

14cpU市場ではAMD社、サ イ リックス社、そ してIDT社 らが イ ンテル社のペ ンテ ィア ム互換cpUを相次いで投入 している。 これによってCPU市場 は価格主導型の時代 に突入 してい る。 イ ンテル社 は他社の競合製品が ないペ ンテ ィアム2を中心 に市場での優位 を 図ろうとしているが、価格が高 く伸 び悩 んでいる。逆 に互換cpU他社は高性能 ・低価格 で市場 に浸透 し始め、AMD社のK6シリーズはIBM社、コンパ ック社 に採用 されるなど、

積極的に進出を図っている。

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さて、ここで注 目したいのは各 メーカが互いに同 じ土俵の上で競争 している点である。

コンピュータは店頭 に並ぶ際 には色 や形 こそ違 うが、その中身はIBMが提唱 したAT互 換機 とい う共通規格15に則 って製造 されている。す なわち、電気 回路的 に同 じ処理が滞 りな く行 われるよう設計せ ざるを得 ないのである。70年代 か ら80年代 頃 までに行 われて きたような各社の独 自規格 では競合他社 の製品 との互換性が全 く無い。 コンピュー タを 使用す るユ ーザーにとってはその ような製品の必要性 はほ とん ど無いのである。 これ と は逆 に、共通規格 による製品はユーザーか らの支持が高 く、市場 は全 くと言 って良いほ ど共通規格 の製品を選択す るのである。

それでは、この共通規格 には どの ような特性があるのだろ うか。市場では、同 じ性能 で、同 じ品質 ならば、 よ り安価 な製品を購入する傾向がある。す なわち共通規格 に準 じ た各製品は典型的な価格切 り札商品であることがわかる。 この価格切 り札製品、つ ま り

「コス トの国際的比較優位」 を確立す る商品 と して論 じることが可能 となる。 コス ト問 題 については様 々な視点か ら考察す ることが可能 となるのだが、 よ り一般化 した方法論 で考 えれば、人件費の安価 な地域への 「生産立地転換のモデルサ イクル」 に当てはめる ことが出来 ると思われる。

例 えば、典型的な価格切 り札商品であるコンピュー タ本体 について検証 してみ よう。

先 にも挙 げたコンパ ック社 を対象 としてみる。 コンパ ック社 は、今ではコンピュー タ業 界の伝説 となっているいわゆる 「コンパ ックシ ョック」 を仕掛 けた張本人である。90年 にコンパ ックは、それ まで高値 の まま推移 して きた コンピュー タの市場価格 を一気 に押 し下げ、94年 には世界 シェア1位 を獲得す るとい う衝撃的な結果 を成 し遂 げた。 コンピ ュータ本体 を構成す る各部品には徹底 して共通規格の汎用品を用い、その上で組立作業 を人件費の安価 な東南 アジア、メキシコ16等 に順次転換 して行 った。同 じ技術で競合他 社 と競争す るわけであるか ら、当然製造 コス トのかか らない地域へ と転換 してい くので ある。世界 シェアで トップの地位 を確立 したコンパ ック社 は95年秋 の ウ イン ドウズ95 の発売 とともに、更 なるシェア拡大 を狙 う戟略 を打 ち出 した。それは、製品 ラインア ッ プを広範囲 に設定 し、初心者か ら上級者 まで、あ らゆる市場 のニーズに即応で きる体制 をとることであった。生産設備 も充実 し、年 間500万台が出荷可能 な体制 も確立 し、業 績 も伸 びつつあった。

しか し、97年 になって異変が起 き始める。安価 なコンピュータで市場 を席巻 したコン パ ック社であったが、それ を上回るほ どの安価 なコンピュー タが続々 と登場 し始めたの

15IBM/AT互換機 と呼 ばれる規格。IBM社が提唱 ・普及 させたハー ドウェアの構成 を共 通の規格 にす るとい うもの。1997年末の米国クエス トリサーチ杜 によれば全世界のお よ そ8割が この規格 に準拠 したpcである。

16この場合 メキシコはNAFrA (北 アメ リカ自由貿易協定) による影響が大 きい もの と 考 えられるので、単純 にコス ト比較優位 で語 ることは難 しいか もしれない。

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である。いわゆる1000ドルPCと呼 ばれる製 品群であ る。 コ ンパ ックが得意 としていた コンピュー タ群 は家庭 や オ フィスで使 われ る汎用 的pc製 品であ り、 その機 能 は ワー プ ロ機能か らネ ッ トワーク接続 に至 るまで、 よ り広範囲で利用 で きる ような もので なけれ ばな らなかった。 しか しなが ら、競合他社 がバ ン ドル ソフ ト、いわゆる製 品 に付録 とし て付加 したソフ トで差別化 を図る中で、 コンパ ック社 は必 要最小 限 な ものだけを選択 し て、それ を価格 に反映 させ て きたのである。 ところが97年 に本格化す るインターネ ッ ト ブームは、 コンパ ック社 の低価格戦略 を も凌駕 した領域‑ と向か うこととなる。

1000ドルPCは別名 「ネ ッ ト

p c

」 とも呼 ばれ、 ネ ッ トワー ク接続 に焦点 を当てた製 品 である。当然 ワープロな どの機能は凝縮 ・削除 され、ネ ッ トワーク機 能 に特化 してい る。

従 って部品点数が減 ることによって価格が抑 え られ、従来市場 に出回 っていた1500ドル か ら3000ドルのPCは直接 的 にこの打撃 を被 るこ ととなった。結局97年 はこの煽 りを受 けて コンパ ック社 の業績 が低迷す るのである。 コンピュー タの出荷台数、売 り上 げ台数 自体 は、同社 の必死 の努力 によ り増加す るのではあるが、純利益 は減少す る とい う、典 型的 な増収減益状態‑ と転落 したのである。それ までの増産 に次 ぐ増産で規模 の経済 を 十二分 に証 明 して きた コ ンパ ック社であるが市場低迷 の影響 もあ り、在庫 の山 を抱 える ようになっている。17

さて、 コンピュー タを組み立 て、出荷す るメーカーは コンパ ック社、IBM社 な ど大量 生産 を前提 とした形態 だけに止 まらない。 ここで台頭 して くるのが90年代 に隆盛 した、

いわゆる直販 メーカーである。世界 的 な企業 と してDELL社 、マ イクロン社 、ゲー トウ ェイ2000社 らが挙 げ られる。 これ らの直販 メーカーの戦略 はほぼ一貫性 を持 った もので ある。本章 の冒頭 で も触 れたが 、 コンピュー タ本体 はAT互換機 とい う共通規格 に則 っ て製造 ・販売 されている。 また各部 品 について も同様 に共通規格 に即 して製造 されてい るので、後 は組立 さえ出来れば基本的 には コンピュー タ ・ハ ー ドウェア市場 に参入で き ることになる。 この利点 を生 か して生 まれたのが直販系 の メーカーである。彼 らが ター ゲ ッ トとす るユ ーザーは、家庭 か らオフィス まで広範 に及 び、 コンパ ック社 らの従来型 大手 メーカー と完全 に競合す るのである。 しか し、販売 チ ャネルは新 聞、雑誌等 の特定 メデ ィアに集 中 し、基本 的には量販店や代 理店契約 を結 んだ店頭販売 は行 わない。つ ま りこれが何 を意味す るか と言 えば、刻 々 と技術革新が反映 される今 日の コンピュー タ市 場 に即応 で きる体制 と、ユ ーザへ の的確 なアプローチ、そ して何 よ りも在庫 の山 を抱 え

ない とい うメリッ トがある。

直販 メーカーはユ ーザか らの注文 を電話 、 ファックス、あるい はイ ンター ネ ッ ト経 由 で受 ける。 その後1週 間 ない し2週 間で製品 を組 み上 げ、ユ ーザへ と送 る。97年 の1000

ドルPC登場以来、大手 メーカーが次 々 と業績 を下方修正す る中で、直販 メー カーは業

17同業各社 もこの流 れ と同 じくHP、IBM等 も業績 が低迷 してい る。各社 は利益 率 の高 いサーバ製品、あるいはsE事業 に集 中投資す る傾 向が見 え始めて きた。

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溝 を着実 に伸 ば した。例 えばDELL社 を例 に挙 げる とわか り易い と思 われる。DELL社 は前述の通 り直販形態 をとっていて、受注後 に組み立てを開始 し、出荷 を行 う。す なわ ち、ある一定量の部品 しか在庫 に持 たないのである。 このことは大手 メーカーが需要 を 見込 んで大量生産する方法 とは正反対のシステムであ り、 しか も各顧客の多様 なニーズ に即応 で きる柔軟性 を兼 ね備 えている と言 える。DELL社 のイ ンターネ ッ トホームペー ジに見 られる発注書 には各種 オプシ ョン類の欄が設け られてお り、cDRや増設 メモ リー、

zIP等各種 の本体組み込みの オプシ ョン製品 も選択で きるようになってい る。ユ ーザー によっては店頭 に並 んでいる製品に飽 きた らず、更 なる追加機能 を求める場合があるた め、いわば最初か らユーザーに とって思いの ままの製品を製造 し、ユ ーザーはコンピュ ー タが届 いたその 日か ら各機能 を利用で きるとい う大 きな利点がある。 また、 メーカー サイ ドとして も需要 を見込 んで生産す るとい うリスクが減 ることが当然大 きなメリッ ト となる。

では、大手 メーカー系 と隆盛著 しい直販系の間には どの ような問題がその根底 に存在 しているのだろ うか。 これ まで繰 り返 し述べて きたように、両者の扱 っている製品群 は 汎用品、す なわち市場で標準化 ・平準化 された製品である。 この標準化 ・平準化 された 製品の特徴 は、pLCモデル18では価格主導型、あるいは価格切 り札型の製品 となる。す なわちこれ ら製品群は市場での価格 を少 しで も下げることによって競争力 を持 たなけれ ば市場では生 き残れない事 を意味す る。従 って生産拠点は、 よ りコス ト優位 の得 られる 地域へ と転換 してい くのである。事実、両者は東南 アジアを中心 とした地域‑組立工場 を次 々 と展開 し、台湾か ら韓国‑、そ してマ レーシア、フ ィリピン‑ と生産立地 を転換 している。 19

市場で平準化 ・標準化 された製品群は、典型的 な価格切 り札製品 として低 コス トこそ が企業 に とっての最重要課題であ り、 また生 き延 びるための唯一無二の選択肢 となる。

本項で論 じて きた ようにコンピュー タ産業の中のハー ドウェア産業 は、今 日典型的な価 格切 り札商品 とな りつつあ り、 よ りリスクの低い戦略への転換が求め られつつある。 な かで も直販 システムは大手 メーカー も順次取 り入れてお り20、今後のハー ドウェア販売 その ものの変化 を もた らすのか もしれない。いずれに して も、ハー ドウェア産業 に共通

して言えることは価格主導型の構図に支配 されているとい うことである。

18RoductLifeCircleの略称.

1997年末頃か らのアジア危機 によって主要 な生産拠点が韓国に逆戻 りするとい う現象 も 起 きている。ゲー トウェイ20(氾社 はデ ィスプ レイの生産拠点 をマ レーシアか ら韓国に移 管 した。

20例 えば東芝 ダイレク ト、NECパ ッカー ドベル、IBMダイ レク トなどである。

(9)

C)インフラ産業

最後 にインフラス トラクチ ャー産業 (以後、 インフラ産業 と表記す る)がある。 これ はインターネ ッ トを普及 させ るにあた り当然必要 となる光 ファイバ ー網、デー タ通信専 用線 な どの敷設 ・運用サー ビス を行 う産業である。 日本 ではⅠIJ社やKDD社 、米国では psI杜、AT&T社 などがある。

インフラ産業は基本的 には、電話会社あるいは電力会社 などの、いわゆる基本基盤が 既 に整 った企業 に集約 され気味である。 とい うの も、 インターネ ッ トは周知の ようにデ ータ網 を介 して成 り立つか らである。特 に一般ユ ーザが家庭 などか らインターネ ッ トに 接続す る際には、必ず と言 っていいほ ど電話回線 を用いる。企業側か ら考 えてみて も同 様 な説明が成 り立つわけであるか ら、換言すればインターネ ッ トは電話 回線 の延長線上 にあるともいえる。 もちろん米国を始め 日本 な どで も実用化 され始めているケーブルテ レビ網 を利用 したインターネッ ト接続 も基本的には同 じ仕組みである。 なお、 この議論 については稿 を改めて論 じるつ もりである。

さて、この ようにインフラ産業は基本的には電話 回線 を通 じて発展 しているとい う考 え方 を提示 したが、 もう一つ異 なった視点か ら考察す ることも可能である。それは、 イ ンターネ ッ トサービスプロバ イダー (以後ISPと表記する。)に見 られるような 「ソフ ト

ビジネスである。ISPはインフラ産業であ りなが ら自社 では電話回線 な どを一切持 たず、

それ以外 の顧客管理 などを専 門 とす る会社である。ISPの特徴 は 自社 インフラを持 たず、

他 社 か ら借 りた イ ン フ ラ網 で ビ ジ ネ ス を行 う とい う点 で あ る 。 例 え ば 日本 の BEKKOAMEインターネ ッ ト (第2種電気通信事業)は約14万人 とい う顧客 を抱 えなが ら自社回線 を持 っていない。所有 しているのは顧客か らのアクセスに答 えるモデム程度 である。顧客か らの インターネ ッ ト接続 に対 しては一括 して 日本高速通信 (第1種電気 通信事業。通称 テ レウェイ) に委託 してサービス をお こなう。 自社では顧客管理 しか行 わないのである。BEKKOAMEに止 まらず同業他社 も同様 の戦略 を始めているが、ISPの 8割が採算割れ とい う現状 を考 えると、 これか らlSP淘汰の時代 が訪れると思われる。実 際ISP各社 は料金値上げを相次 いで実施 してお り、高 品質 ・高信頼性 をうたい始めてい るように、低価格だけでは競争で きない時代 にな りつつある。

そ して、 もう一つ考察 を加 えておかなければな らないのが ネ ッ トワーク産業 の中のハ ー ドウェア産業である。 これはネッ トワークとい うシステム基盤 を確立す るための機器 類 と考 えることがで きる。例 えば米国シス コシステムズ社がある。 シス コシステムズ社 はネ ッ トワーク機器、特 にルー タの世界 シェアナ ンバーワン企業である。同社 は徹底 し て得意市場、す なわちネ ッ トワーク機器市場 に集 中投資 し高い技術力、信頼性 を武器 に 業績 を伸 ば している。米国の調査機関であるデータクエス ト社が最 も投資効率の良い企 業ベス ト100に入れている超優良企業である。いわば、 この市場 におけるマイクロソフ

ト社 ともいえるほ どである。他 に も米国ブラ ックボ ックス社、米国3COM社、アライ ド

(10)

テ レシス杜 などがある。

この ようにインフラ産業 は大 まかに分ける と従来か らの電話会社系 とⅠSP系 と、 もう ひとつネ ッ トワーク機器設備会社 らに分類で きる。す なわち 「マルチメデ ィア」 とい う 言葉 とともに主張 された<通信 と放送の融合>の ように、 イ ンフラ産業 もイ ンターネ ッ

トの波 に乗 って同様 の展開を図っていると言 うことがで きるのである0

この ように3つの産業 として ソフ トウェア産業、ハー ドウェア産業 、そ してイ ンフラ 産業 と大別 して現況 を概観 して きた。 むろん上記分類 に属 さない産業、あるいは企業 も あるが、 インターネ ッ ト市場 を概 観すれば基本的にはこの3つ になる。 この点 について は米国IDC社、同デー タクエス ト社の見解 も一致 しているので、本論文で もその見解 を 基本 に したい と思 う。

2

章 インターネッ トの業界標準 (デファク トスタンダー ド)

本章ではソフ トウェア技術 を念頭 に置いたインターネッ トの業界標準規格 ・技術 (チ ファク トス タンダー ド) について考察 したい。 インターネ ッ トとは国際的なつなが りを 示す ものであ り、当然 ここでの議論 は国際的な標準規格 ・技術 に関す るものである事 を 前提 としてお きたい。 さて、イ ンターネ ッ トの業界標準規格 はwww、TCP/IP、そ して 近年めざま しい発展 を遂 げているJAVAが考 えられる。

a) www (worldWideWeb)

インターネ ッ トでは、その歴史的発展過程で画期的なシステムであるWWWを生み出 す こととなった。 これは一部の専 門家の ツールで しかなかった電子媒体 をHTTP21に置 き換 えてほとん ど全 ての人が容易 に情報 を入手で きるシステムのことであ り、今 日のイ ンターネ ッ ト産業 を支 えている中心的技術である。WWWはその簡易性、情報入手性の 壁が非常 に低 く、情報 を欲 している人であれば誰で も容易 にアクセスで きるようになっ ている。通称 「ホームページ」 と呼ばれるほど、現在ではよ り一般化 された情報 ツール と して活躍 してい る。WWWの特徴 はHTML22基本言語 を元 に して情報 をHTTP経 由で 送信 で きるとい うメリッ トを持 っている。 これは伝達路 さえ確保 されていれば情報が伝 わるとい う事 を意味する。そ して、何 よ りもwww 閲覧 ソフ トウェアであるブラウザー がその情報 を もとに、ユーザーへ情報 を閲覧で きる形 にデコー ドして提供す る。 この流

21HyperTextTransferProtocolの略称。通信 プロ トコルの一種。

22HyperTextMarkUpLanguageの略称。HTTP上 にテキス トデータを乗せ る際の標準的 ファイルシステム。

(11)

れ こそが一連 のホームペ ー ジ閲覧 シス テムであ り、 これほ どまで に普及 したイ ンターネ ッ トを代表す る画期的なシステムである。

す なわち

www

とはインターネ ッ トのある一部分 の システムであ るに も関わ らず、あ たか もひとつのデ ファク トス タンダー ドと見 なされてい るのである。

b )TC叩P ( Tr a n s mi s s i o nCo n t r o l P r o t o c o l /I n t e me t P r o t o c o l )

www

が ひ とつの システム としてデ ファク トス タンダー ドとなった過程 で不可欠 な技 術 として

TCP nP

がある。 この通信 プロ トコルはイ ンターネ ッ トを構成す る重要 な役割 を 果 た してい る。 イ ンターネ ッ トとはお互いのネ ッ トワーク同士 を結ぶ大 きな輪 であるの だが、その輪 の中には大型汎用機 もあれば ワークステーシ ョン、 もちろんパ ーソナル コ ンピュー タ、そ して近年で は更 にゲーム機23、 イ ンターネ ッ トテ レビな どもこの中に含 まれる。 この複雑 な環境 をひ とつの通信規則 で接続す るのが

TCP / I P

であ る。 このプロ ト コル は基本 的 に全 ての機器 上 で エ ミュ レー トで きる よ うに規 格 化 され て い る。元 来

TCP / I P

は ワークステーシ ョンで用 い られて きた技術 であったが、 イ ンターネ ッ トの広が りと共 に一般化 して きた。そ して、非 閉鎖的 な規格が受 け入 れ られ、今 日で はイ ンター ネ ッ ト‑接続 してい るほぼ全 ての機器 に採用 されてい るプロ トコルのひ とつである。

C)サ ンマ イクロシステムズ社 とJAVA

JAVAは米 国サ ンマ イクロシステムズ社が開発 した コンピュー タ言語 で ある。サ ンマ イクロシステムズ杜 はワークステーシ ョン市場 で圧倒 的 なシェアを誇 っている企業 であ る。その歴史的 な経緯か らサ ンマ イクロシス テムズ社 には豊富 なコンピュー タネ ッ トワ ーク技術 があ り、特 に

TCI / I P 、WW

W サ ーバ ー関連 の技術 では米 国IBM社 、米国 ヒュー レッ ト ・パ ッカー ド社 を凌 ぐとさえ言 われている。 さて、サ ンマ イクロシステムズ社 が ワークステー シ ョン市場 で蓄積 したネ ッ トワー クコンピューテ ィング技術 は

、www

の 普及 と共 に一躍脚光 を浴 びるようになる

。WW

W の普及 は ワークステーシ ョン市場 のみ ならず

p

c市場 にまで波及 し、 イ ンターネ ッ トをよ り確 固たる もの に しようと している。

なかで も後で論 じる ように、ブラウザ市場 では激 しい シェア争 いが展 開 されてお り、サ ンマ イクロシステムズ社 として もその状況 に同調す るのは困難である0

さて、そ う した中で脚光 を浴 びるのがJAVAで あ る。JAVAの特徴 はハ ー ドウェアに 依存 しない非常 に汎用性 に富 んだ言語 であ る とい うこ とである。JAVAは従来 のプログ ラム ように、 コンピュー タのハ ー ド側 で直接展 開 ・処理 され るわけで はない。つ ま り、

既存 の コンピュー タの常識 であったハ ー ドウェア中心 の システム構築 を必要 としないの

23セガエ ンタープライズ社がマ イクロ ソフ ト社 と共同で開発 した、 ドリームキ ャス トに 標準搭載 される予定である。

(12)

である。

この、ハ ー ドウェアに依拠 しない ソフ トウェアは、 イ ンターネ ッ トブラウザー を利用 す ることによって可能 となる。JAVAはネ ッ トスケープナ ビゲー ター、 イ ンターネ ッ ト エ クス プローラな どの インターネ ッ トブラウザー上 で プラグイ ンソフ トと して起動 で き るのである。そ してJAVAは各 ブラウザ上で情報 を展 開 して、 ほ とん どの クライア ン ト マ シン上で滞 りな く稼働 す るのである。

そ して、 もうひ とつ の基本 コ ンセ プ トとなってい るのが分散処理 とい う概念 である。

分散処理 とい うは、近年 の クライア ン トパ ソコンの性能向上 によ り可能 となった システ ムである。従来 の一元処理では、 ネ ッ トワークの中枢 にあ る特定の高性 能 コンピュー タ が クライア ン ト側 か らの要求 に応 じて情報 を処理 していた。 ところが クライア ン トパ ソ コンの性 能向上 によ り、従来 の ように中枢 にあるコンピュー タ (サ ーバ)で処理 を行 う のではな く、 クライア ン トマ シン側 で直接情報 を処理 して しまうのである。数年前 まで はTSS(タイム ・シェア リング ・システム)が主流であ ったが、近年では分散処理 (ど ア ・ツー ・ピア)が可能 となって きた。

この ようにJAVAはイ ンターネ ッ トブラウザ とい うひとつの ソフ トウェア上 で作動す る。 この ことは重要 な意味 を持つ。す なわち、ハ ー ドウェア上で絶対 的な地位 を占めて いたosの必要性 が、少 な くともイ ンターネ ッ トとい う舞 台で は重要性 が薄れ る とい う ことを意味す るか らである。例 えば家電製品であ る冷蔵庫 や クー ラーに もJAVAは搭載 可 能 で あ り、離 れ た ところか らで も管 理 で きる。 つ ま り、物 理 的 な ネ ッ トワー クに JAVAとい う言語 が用意 されて さえすれ ば特別 なこ とをせず とも一元管理が出来 て しま うとい うことなのである。 これは、マ イクロソフ ト社 にとっては致命 的な流 れ とな りう る事態である。

ともあれ、JAVAはイ ンターネ ッ トでは絶対 的 な普及優位性 を持 つ。実際サ ンマ イク ロシステムズ社 は米国 オラクル社 と共同でJAVAステー シ ョンとい う製品 を開発 し市場 に放 とうとしてい る。パ ソコンで イ ンターネ ッ トさえ出来 て しまえば、情報共有 、情報 発信 、そ して情報管理 な ど、考 え得 るほ とん どの こ とが可能 となる。 また同時 にハ ー ド

ウェアの相互互換性 も不 要 とな り、新 たなるス タンダー ドの登場 も可能 となるか もしれ ない。 この ようにJAVAは単 なるイ ンター ネ ッ トの一言語 と して存在 す るので はな く、

イ ンターネ ッ トを取 り巻 く企業のあ り方 を根本的 に変 えて しまう要素 を学 んでい るので ある。24

24言及す るな らば、JAVAはネ ッ トワー ク上 に直接 プログラムを乗せ ることになるので 当然 トラフィック(情報量)が増大す る。従 って頑強で大容量 なネ ッ トワー ク回線 が必 要

となることも指摘 してお きたい。

(13)

d)ネ ッ トスケープコミュニケーシ ョンズ社 とイ ンターネ ッ ト閲覧用 ブラウザ

米国 ネ ッ トスケープコ ミュニケーシ ョンズ社 はイ ンターネ ッ ト関係企業 の中で も最 も 成功 し、急成長 した会社である。 同社 は94年4月に設立 、元 シ リコングラフィ ックス杜 社長 ジム ・クラー クが中心 とな り、イ リノイ大学 国立ス‑ハ‑ コンピュー タ応用 セ ンタ

( NCS A)

でモザ イクを開発 したマークア ン ドリーセ ンらを技術 ス タ ッフに採用 しては じ まった企業である。 ネ ッ トスケープ社 は93年 に爆発 的 に普及 したモザ イクを拡張す る形 で、イ ンターネ ッ トの世界 にブラウザの基礎 を築 くこととなる。

ネ ッ トスケープ社 はモザ イクの例 にな らって、ネ ッ トスケープ ・ナ ビゲ ー タ (以後 ナ ビゲ ー タと表記す る。) をイ ンター ネ ッ トか ら無料 で ダウ ンロー ドで きる ように した。

ナ ビゲー タは、パ ソコンシ ョップや通信販売で売 られ る商 品で もあったが、紙 のマニ ュ アルで な くオ ンライ ンマニ ュアル (ソフ トコピー) だけを準備 して、 ソフ トウェア本体 は、ダウンロー ド可能 な人 には無料で配布す る とい う画期 的 なビジネス手法 を選択 した。

むろん新 しいブラウザー を必要 としていた世界 のユ ーザ ー らは一斉 に入手 し、瞬 く間 に ナ ビゲー タは普及 した。 もちろん、無料 で入手 したナ ビゲー タは期 限付 きで利用 で きる もので あ り、「気 に入 った らお金 を払 って下 さい」 とい うよう試用版 の形式 を採 ってい た。その後、爆発 的な普及 を見せ るナ ビゲー タは利用者 に受 け入れ られ、 ネ ッ トスケー プ社 には巨額の利用料が流れ込 むこととなる。

さて、 ネ ッ トスケープ社 では、ナ ビゲー タを出す と同時 に、 これ に対応す る情報サ ー バ

( WWW)

用 の ソフ トウェア も開発 した。 この ソフ トウェアのほ うは個 人ユ ーザーが 使 うもので はな く、企業 の ような組織が使 うものであ り、市場で多 くのユ ーザ ーがナ ビ ゲー タを利用 してい ることを考 える と、企業 と しては どう して も導入 しなけれ ばな らな い とい う構 図になっていた。 ネ ッ トスケープ杜で は、 この ソフ トは配布時点か ら有料 で 販売 してい る。つ ま り、 こ うしたクライア ン ト側 とサ ーバ側で交信 しあ うソフ トウェア では、 クライア ン ト側 は出来 るだけ多 く配布 してユ ーザー を増 やせ ば、サ ーバ側 ソフ ト ウェアに対す る需要が増 えて、後者が相乗 的 に売 れ るようになる、 とい う図式が成 り立 つのである。

ネ ッ トスケープ社 の快進撃 は続 き、97年3月現在 で は全世界 の ブラウザ市場 の9割 を 抱 えるようになった。同社では相次いでバ ージ ョンア ップを行 い、フ レーム機 能の追加 、 そ して

J AVA

の標準サポー トな ど新 しい技術 を次 々 と発表 していった。

さて、 こう した状況 の中でマ イクロソフ ト社が イ ンター ネ ッ ト閲覧 ソフ ト、ブラウザ ー市場 に突然参入 して きた。マ イクロソフ トは95年秋発売 の ウ イン ドウズ95にイ ンタ ーネ ッ トエ クスプローラを標準搭載25していたが、それは非常 に粗雑 な作 りで、お よそ ネ ッ トスケープ社 のブラウザーに匹敵す る ような もので はなか った。 あ くまで も、取 っ

25イ ンターネ ッ ト ・エ クスプローラ1.0。モザ イクの初期版程度 の レベルであった。

(14)

て付 けた機 能 としか考 えていなかった ようである。 だが、こうしたブラウザーの爆発的 な広が りを受けてマイクロソフ ト社 の戦略 も一変す る。 ウイン ドウズ95に標準搭載 して いたイ ンターネ ッ トエ クス プローラのバージ ョンをバ ージ ョン3.0へ ア ップグ レー ドし たのである26。バージ ョン3.0はナ ビゲータと同等の機能 を持 ち、 ウ イン ドウズ95との 親和性 において更 に改善 されていた。 しか も、バ ージ ョン3.0は製品版 の完全無料配布 となってお り、ネ ッ トスケープ社 の試用版形式の場合 とは根本的に異 なっていた。マ イ クロソフ ト社 は雑誌、店頭、イ ンターネ ッ トなどあ らゆるメデ ィアを駆使 して普及に努 め、98年春 にはインターネ ッ トブラウザー市場 の7割強 を獲得す るにまで至 ってい る。

こうしたなかで、ネ ッ トスケープ社 は収益 の根元 を絶たれ、企業存亡の危機 に瀕 してい る。

この間題 についてはアメリカにおける独 占禁止法 とい う問題 を学 んでお り、本論 の中 心的論題 とは一線 を画 した問題である。従 って、追記 とい う形で考察 を試みてお く。

第3章 マイクロソフ ト社

マイクロソフ ト社 については既 に各方面での調査、研究が なされているので、 ここで はインターネ ッ ト市場 を中心 に論 じてみたい。とりわけインターネ ッ ト市場のなかで も、

マイクロソフ ト社の

WW

W ブラウザーであるインターネッ ト・エ クスプローラ (以後 陀) に焦点 をあてることにす る。前章で述べ たように、インターネ ッ トには基本 的なプロ ト コル としてTCP/IP、HTTPな どがあ り、それ らのプロ トコルを介 して世界 中のあ らゆる ネ ッ トワークが相互接続 して情報のや り取 りをすることが出来 る。す なわち物理的なネ ッ トワーク線 を通 して各 メデ ィアが効力 を発す るとい う基盤が確立 されているとい うこ とである。そ うしたインフラがあってこそ初めて ビジネスの場が存在 しているといえる。

この ような環境 の中で、マイクロソフ ト社 も幅広 い製品群で戦略的経営 を行 っている。

周知 の ようにPC市場 のOSでは全世界の8割以上のシェアを持つ ガリバ ー と して、ある いはネ ッ トワーク市場では豊富 な資金 をもとに積極 的な販促活動でシェアア ップを狙 っ ている。では、 まずマ イクロソフ ト社 はこのネ ッ トワーク市場 にどの ようにアプローチ

したのかを考察 してみ よう。

マ イクロソフ ト社 は創業以来pc市場 に焦点 を当てた製品 を提供 し続 けている。 この 市場 はIBM/AT互換機市場 としてエ ン ドユーザーの利用す る環境が主である。 その市揚 においてマイクロソフ ト社はBASIC、MS‑DOSと次々 とヒッ ト製品を連発 し、OS分野で は他社の追随を許 さないほ どの確固たる地位 を築いた。それ と同時 にアプリケーシ ョン

26俗 にウイン ドウズ96と呼 ばれる もので、ダイヤルア ップ機能、 インターネ ッ ト・エ ク スプローラ3.0を標準搭載 した。

(15)

事業 に も参入 し、特 に米国ではロー タス1‑2‑3の牙城 とされた表計算 ソフ トを5年27掛 け て追い越 し、 ワープロソフ トの ワー ドパー フェク トも短い期 間で追い抜いている。同社 のアプリケーシ ョン開発 については、松下電器のように2番手商法 と邦冷 されることがあ るが、確かに手法的には類似 していると考 えることも出来 る。 ただ し、そ うした戦略の 背景にあるのがパ ッケージング商法であることもここで言及 しておかなければならない。

パ ッケージングとは具体的には 「マ イクロソフ トオフィス」 に見 られる統合 ソフ ト形 態である。 これはワープロ、表計算、データベースな ど、それ までは個別 に開発 ・販売 されていた ものに統一性 を持 たせ た仕様 と して、ひとつのパ ッケージとして提供す るこ とを言 う。消費者 とすれば、価格面での魅力、そ して統合 された共通 フォーマ ッ トによ る利便性 の向上 などメリッ トが多い と言 えよう。今 日ではマイクロソフ トの 「マ イクロ ソフ トオフィス」 シリーズ、 ロー タスの 「スーパーオフィス」 シリーズ、そ して 日本で はジャス トシステムの 「一太郎 オフィス」等が販売 され、売 り上 げを伸 ば している。 な お、周知の ように現在では、マ イクロソフ トの製品が圧倒 的なシェアを誇 る分野 となっ ている28。

こうしてパ ッケージングのノウハ ウが蓄積 されるに したが って、各 クライアン トソフ ト29の配布可能性が高 まることとなる。当初 はワープロ、表計算 、データベースな どの 各種機 能 を満載 したパ ッケージングシフ トは、個別販売 されている製品 との差別化 を図 るために用意 されていたのであるが、各社が同様 の手法で乗 り込 んで きたことか ら、マ イクロソフ トにとっては魅力的な製品 とは言 えな くなって きたのである。そこでマ イク ロソフ トは電子 メールソフ ト、次いで インターネ ッ ト閲覧 ソフ ト、そ して百科事典 まで バ ン ドル30するようになった。具体的な例 で言 えば、インターネ ッ トエ クスプローラ及 び小学館電子百科事典、そ してアウ トル ックが、オフィス97にバ ン ドル31されている。

27 「私がマ イクロソフ トで学んだこと」参照 (ジュリー ビック著、三浦明美訳、1997年、

アスキー、p40)

28むろんこの際の重要なポイン トとして、いわゆる 「乗 り換 え版」、「アップグ レー ド版」

「アカデ ミック版」等 の特典付 き販売 も考 えられる。す なわち消費者 の新規獲得 と、継 続ユーザ に対す る囲い込み商法が見て取れる。囲い込み商法 については稿 を改めて論ず る予定である。

29例 えばマイクロソフ トオフ ィスでは電子 メール ソフ トのアウ トル ック、スーパーオフ ィスでは電子 メールソフ トのノーツなどが典型例 である。 また、近年では後で論ず るよ うにイ ンターネッ ト閲覧 ソフ トも重要な構成材科 となる。

30同一パ ッケージ内に収録す ること、 または付属 させ ること。

31日本市場でのパ ッケージ内容。他 にもいわゆるお試 し版 として数多 くの ソフ トがバ ン ドルされている。

(16)

こう した戦略が上記の ように差別化のためである32とす る見解がある一方 で、 ソフ トウ ェアの高 シェアを武器 に した典型的な囲い込み33である とす る見方 もある。

この ように、マ イクロソフ トを中心 としたアプ リケーシ ョン販売の典型的な例 か らは、

高 シェアカ を武器 に した新型 ソフ トウェアの普及可能性 を持 ってい ることが わか る。す なわちパ ッケージングソフ トと しての基幹 アプ リケーシ ョンこそが、 ネ ッ トワー ク市場

‑の大 きな足掛 か りを掴 む もの とも言 えるのである。 この論理 か らインターネ ッ ト閲覧 用 ブラウザ について、その普及過程 を論 じることが可能 となる。

マ イクロソフ ト社 は、前述 の通 り、 イ ンター ネ ッ ト関係 の ソフ トウェア分野への進 出 が遅れていた。先 を行 くネ ッ トスケープコミュニケーシ ョンズ社 にその市場 は支配 され、

もはや挽 回の余地 は無 いか に見 えた。 しか しなが ら将来 の ことを考 えると、イ ンターネ ッ トは無視 で きない どころか、 む しろ ビジネスの中核 になる と確信 したマ イクロソフ ト 社 は

、9 5

年 か らブラウザーや

WW

W サ ーバ ・ソフ トウェアの開発 に力 を入れは じめ。同 社 では、 ビル ・ゲ イツ会長 の 「打倒 ネ ッ トスケープ」大号令 の もとに、豊富 な資金力 と 技術力 を背景 に急 ピッチで 開発 を進 め る。 その結果 、翌96年 には早 くもイ ンター ネ ッ ト ・エ クスプ ロー ラ3.0とい う名 の本格的 なブラウザ を製 品化 したのであ る。 しか もま った く無料 での配布であった。 ネ ッ トスケープ社が期 間限定付 きの試用版 を配布 してい たこの時期 に、マ イクロソフ ト社 は徹底 した無料 化でその普及 を図 ったのである。 それ も簡単 に誰で もが同社 のホームペ ー ジか らダウンロー ドで きるだけではな く、 イ ンター ネ ッ ト関係 の雑誌 やパ ソコン雑誌 の付録 につける

CD‑ ROM

にまで イ ンター ネ ッ トエ クス プローラは無料 で収録 されていた。 この結果、96年 までは、ブラウザの世界で ネ ッ トス ケープ社が圧倒 的 なシェアを持 っていたのだが、ほ どな くして、ナ ビゲー タとイ ンター ネ ッ トエ クス プロー ラは世界規模 の この市場 で括抗す る2大勢力 になる。 また、 これだ けに止 まらず、 ウイン ドウズ

9 5

34に も標準搭載す ることによって

、OS

を武器 に した圧 倒的 なシェアア ップを図ったのである。

勿論 、その間 に も同社 はマ イクロソフ トオフィス にインターネッ トエ クスプローラを バ ン ドル した り、その他 のマ イクロソフ ト社製品 に も必ず イ ンターネ ッ トエ クスプロー ラを搭載す る ようになった。 こう した同社 の戦略が ネ ッ トスケープコ ミュニケーシ ョン ズ社 の市場 における牙城 を崩 してい くこととなったのである。

32 「ビルゲ イツ未来 を語 る

33この部分 については追記 とい う形で独 占禁止法問題 について触れている。

34

2 6

に同 じ

。OS R2

以降の ウイン ドウズ

9 5

に標準搭載 ざれた。 また、以降の

OSR2 . 5

os R2 . 6

ではバ グフィックス (不具合修正) も施 され、 ウ イン ドウズ

9 5

最終版 の

OS R2 . 7

(日本では98年春以降)ではイ ンターネ ッ トエ クスプローラ4.0が搭載 される ようになっ た。

(17)

では、マ イクロソフ ト社 はブラウザーのシェアア ップだけで満足 しているのだろうか。

前章でサ ンマ イクロシステムズ社 の

J AVA

を取 り挙 げた

。J AVA

はプラ ッ トフ ォームを 全 く問わないネ ッ トワーク言語である。す なわちナ ビゲー タであろ うが イ ンターネ ッ ト エ クスプローラであろうが、ブラウザーは何で も良いのである。少 な くとも

J AVA

とい

う言語 だけが展開で きる土台 さえあれば問題 ないのである。実際、イ ンターネ ッ トの世 界では

J AVA

が標準 の言語 となってお り、多 くのサ イ トで用い られるようなって きてい る。以前か らC言語、あるいはC十+言語 を活用 している人間にとっては、非常 に馴染み やすい言語体系 となってお り、導入 にさほ ど時間は必要 ない。 また、ブラウザ開発各社 は増大す る利用者 のニーズ に合わせ、 プラグイン35あるいは標準 で

J AVA

をサ ポー トす る必要性 に迫 られているのが現状である。

こう した背景 のなかで、マ イクロソフ ト社 には利益 の源であるOS事業が直接 的な打 撃 を受 ける可能性が明 らか になって くる と思 われ る。つ ま り

、J AVA

の普及 はマ イクロ ソフ ト社の存亡危機 に関わる重大 な問題‑ と発展す る可能性 を学 んでいるのである。大 幅 なシェアア ップを達成 したマイクロソフ ト社 にとって

J AVA

の標準サポー トは、一機 能 として当然 のサー ビスであった。 ところが

J AVA

の標準サポー トは、同社 の基幹事業 その ものを揺 るがす危険性 を生 じ始めるのである。 この危機意識 か らかマ イクロソフ ト 社は、ActiveX36とい うネ ッ トワーク言語で対抗 しようとしている。ActiveXは同社が中 心 となって開発 ・普及 させて きた

、p

c向けの基本言語であるVisual

BAS I C

を土台 に構成 されている ものである。 これは先程の

J AVA

とは異 な り

、p

c市場で プログラムを開発 し て きた人間に優位 な言語体系 と言 える。

いずれに して も、 ネ ッ トワーク言語市場 はサ ンマ イクロシステムズ社 の

J AVA

、マイ クロソフ ト社のActiveXが真 っ向か ら争 う姿勢 を見せ始めている。 むろん両陣営が 自社 の規格 を業界標準 にさせ るため、同業他社 と技術提携37を行い普及 を促 していることは 周知の事実である。この点 については今後の研究課題 として十分意義のある問題であ り、

引 き続 きその推移 を注 目し、両社 の企業戦略 を明確 に したい と考 えている。

さて、この棟 にマ イクロソフ ト社 にとってインターネ ッ ト市場での優位性 はまだ不十 分であることが明 らか となった。一般的にはマ イクロソフ ト社優位 とされるインターネ ッ ト市場 は、今後の技術 開発 、市場 における戦略いかんで、簡単 に砂上 の楼閣 と化す こ とも十分あ り得 るのである。98年6月か ら8月 にか けて世界 的 に発売 されるウ イン ドウ

35pluginすなわち修正版の追加 ソフ トウェアとして提供 されているもの。

36インターネ ッ トエ クスプローラ3.0の発表 とほぼ同時 に公 開 された。同社 の発表 によ れば96年3月である。

37例 えばサ ンマ イクロシステムズ社は

HP

社、オラクル社 などと

J AVA

のライセ ンス使用 契約 を結 んでいる。一方のマ イクロソフ ト社 もゲーム機大手 のセガエ ンタープライゼス 社、compaq社 らと提携 している。

(18)

ズ98は上記ActiveXテクノロジーを数多 く包含 していることが明 白であるのだが、 ここ か らもマ イクロソフ ト社 にとってのインターネッ ト戦略 を垣間見 ることが出来 る と思わ れる。業界標準奪取 に関 しての結論 は未だ先 のこととなるだろ うが、特 にマイクロソフ ト社のインターネ ッ ト市場への戦略 は、変化の激 しいこの分野 におけるビジネスの難 し さと厳 しさを如実 に表す もの となると思われるのである。

第4章 インターネッ ト市場の市場特性

本章ではこれ まで論 じて きた内容 を踏 まえて、インターネ ッ ト ・ソフ トウェア産業の 市場特性ついて、新市場へのアプローチ とい う観点 を中心 として論 を進めたい。 また、

ここではマイクロソフ ト社 を中心 としたソフ トウェアの部分 について明 らか にす る試み を核 として議論することとす る。

まず、インターネ ッ ト市場 における事実 として既 に存在す る、あるいはその歴史的経 緯か ら各種 プロ トコルに見 られる、標準化 された技術 に注 目 してお きたい。第2章で も 論 じた ように、インターネ ッ ト市場のインフラとして

TCP / l P

HTT P

があることは既 に 論 じた。す なわちこう した標準化技術が既 に存在 し、利用者が当然の もの として利用 し ている現状 を踏 まえる と、殆 ど変革の必要が無 く、 ま して新 しい標準化技術 を開発 して も、企業 としては利益が生み出せ ない状況 となっている38。 これはイ ンターネ ッ ト市場 における普遍的な、基盤的な もの と考 えることが出来 る。 こう した定着度 もしくは浸透 性 は、例 えば

UNI X

の ように特定 の研究機関39な どか ら生 まれ、 クチ コミの ように広が

って、やがては業界標準 になって しまった もの と同様 であると言 える0

そ して、その ような標準化技術 によって誕生 したのが、新市場 としてのイ ンターネ ッ ト市場である。 イ ンターネ ッ ト市場 は土台 となる技術 は既 にあ り、その上で展開 される アプリケーシ ョンソフ トウェアこそが企業の多角化戦略の舞台 となる。本論でこれ まで 論 じて きたように、 まずネ ッ トスケープコミュニケーシ ョンズ社がブラウザー事業で成 功 し、次いでサ ンマイクロシステムズ社、そ してマイクロソフ ト社が追 った。すなわち、

ある種ベ ンチ ャーが先 を行 き,既存の大企業がその次 を行 くとい う典型的な構 図が理解 で きると思 う。

ところが、インターネ ッ ト市場の特性 は

、p

c関連、 ワークステーシ ョン関連の企業 を

38

TCP / I P

はイ ンターネ ッ トに接続 されている世界中のコンピュータに必ず搭載 されてい る。 また

、HTT P

がなければイ ンターネ ッ トの閲覧 をす ることが出来 ない。す なわちこ うした根元的 な標準化技術 が100%利用 されている と言 うことである。 また、パ フォー マ ンスの観点か ら見て も全 く問題 ない。従 ってこれを変 えようと言 う動 きは全 くない。

39

UNI X

の場合

、AT&T

ベル研究所 とカリフォルニア大学バークレイ校の

2

種類が標準 と なっている。

(19)

問わず参入 し易い点 にある。特 に既存の事業領域か らの技術 を応用 して参入す るケース もあ り、時 として多角化足 り得 な くなって しまうこともある。 しか しなが ら、インター ネッ ト市場 とい う新市場 と、そ してそこ‑投入 される製品群が新製品であることを考 え 合わせ ると、多角化 とい う概念 に相当す るもの と考 えられ よう。

この事業の多角化の特徴 と して、マ イクロソフ ト社の戦略 を挙 げて考察 した。マ イク ロソフ ト社 は既存 の

O

S事業の延長線上で、そ してパ ッケージソフ トの一部 として、あ るいは雑誌 ・メデ ィア ・イ ンター ネッ トなど、同社が出来 る最大のチ ャネル を通 してイ ンターネ ッ トエ クスプローラの普及 に努めた。結果多 くの シェアを抱 えたネ ッ トスケー プコミュニケーシ ョンズ社 を凌駕す るようになる。 ところが、今度 はサ ンマ イクロシス テムズ社のJAVAの恐怖が忍 び寄 って来ていることに気付 く。 この各社入 り乱れた標準 化奪取への戦略 は、正 に 日進月歩以上の速度 で進行 してい る。特 に企業間のM&A (令 併 ・買収)、そ して業務提携 な どは世界 的規模 で進め られてお り、見逃せ ない要素であ る。ただ し、ひとつの共通点 として、 リーダーシ ップを持つのは必ず アメ リカの企業で あることを確認 してお く必要があるであろ う。いずれに して も、 この新市場 に関す る各 企業の取 り組みは、如何 に業界標準 を奪取す るかをその命題 としていると言 える。

さて、最後にここまで議論 して きて明 らか となった次の2点 を挙げて確認 してお きたい

・インターネ ッ ト市場 は事業の多角化領域 として設定 し得 る ものである。

・インターネ ッ ト市場 には既 に標準化 された技術 (プロ トコル)があ り、それを基盤 と したアプリケーシ ョンソフ トウェアの開発 ・普及が各社の基本戦略 となる。

おわ りに

本論考では筆者が 日頃か ら触 れているインターネ ッ トをめ ぐる各種企業の動 向 と市場 における戦略の背景 を筆者 な りに論 じてみた。特 にマイクロソフ ト社 については 日頃か ら興味 を持 ってお り、今回こうして客観的に対象化出来た ことは、筆者 にとって今後 の 研究 の糧 とな りそ うである。 しか しなが ら、JAVAに代 表 されるように、既存 の概念 と は全 く異 なるものが出現す ることによって、事態は よ り複雑化 して行 くことも十分考 え られる。そ う した中にあって経営学 とい う視点 とネ ッ トワーク技術 とい う両面か ら状況 を把握す ることによって、インターネ ッ ト市場 をよ り立体的に考察で きるようになれば と考 えている。

また、この小論 の中で同時 に新 しい問題 も数多 く発見で きたことも事実である。今後 はこれ らの論 じきれなかった問題 を課題 として更 なる研究 を続 けて行 きたい と考 えてい る。

(20)

追記 マイクロソフ ト社の独占禁止法問題に関 して

ここでは、 これ までの米国司法省 (以後、司法省) とマ イクロソフ トの係争 を取 り上 げてみたい。

98年5月18日、司法省 はマ イクロソフ トに対 し、オペ レーテ ィングシステム

( OS )

の 支配力 を不当 に利用 してインターネ ッ トの世界 を支配 しようとした とい う疑いで、広範 囲な反 トラス ト法訴訟 を行 った。 さらに司法省 の提訴 に伴い、米国の20の州 とワシン ト

ンD ・Cも、同時 にマ イクロソフ トを反 トラス ト法違反の疑いで提訴 した。 こち らの訴 訟 は、Webブラウザのみ を問題 にす るのではな く、マイクロソフ トオフィスのパ ッケー ジ内容 に関 して も目を向けている。

提訴 を行 った司法省のジャネ ッ ト長官は、記者会見の席で 「次 のマ イクロソフ トのた めに市場がオープンであることを保証 したい」 と語 った。つ ま り司法省 は、マ イクロソ フ トの行為 は排他 的であ り、市場 の 自由な競争 を阻害 し、次世代 に登場す るか もしれな い企業の成長 を妨 げている と主張 している。司法省がマイクロソフ トに対 して具体 的に 要請 した事項は次の とお りである。

まず司法省 は、 ウイン ドウズのライセ ンス条件 として、マ イクロソフ トが インターネ ッ トエ クスプローラのバ ン ドル をpcベ ンダーに対 して強要す ることを禁止す るように 求めている。 さらに司法省 は、NetscapeCommunicator(Navigator)などの他社製Webブ ラウザ を、Windows(ウイン ドウズ)98にバ ン ドルす ることも要請 している。 これが受 け入れ られない場合、ウイン ドウズ98へのインターネ ッ トエ クスプローラのバ ン ドルは 認 め られない と司法省 は述べ ている。司法省 は先 の提訴 よ り一貫 して

、O

SとWebブラ ウザは別の ものであると主張 している

。O

Sの支配力 をバ ックに、Webブラウザ市場の支 配 を目論 む行為 は許 されない とい う同省の考えを明確 な形で提示 した0

さらに司法省 はマ イクロソフ トに対 し

、o

Sが起動す る ときに現 れる一連の画面 (起 動後 の初期画面 も含 む) に関 して も、各pcベ ンダーが 自由に設定で きるように要請 し ている。司法省が問題 としている画面 は、 インターネ ッ トエ クス プロー ラ4.0のアクテ ィブチ ャンネルな どである。初期状態で どのチ ャンネルを掲載するかはマイクロソフ ト のみが決定で きるとなる と、インターネ ッ トへの入 り口が事実上マ イクロソフ トに支配

されて しまう。司法省が問題 としているのは、 まさにその点である。Webを通 じた通信 販売、いわゆるエ レク トロニ ックコマースの世界 は、今後 さらに拡大 を続 けてい くと考 え られてい る。その市場 の支配権 を、既存 の

O

Sの支配力 を利用 して得 ようとす るマ イ クロソフ トの行為 は、公平性 を著 しく欠いている、 と司法省 は考 えているのである。

マイクロソフ トと司法省 は、 これ まで に も何度かつば迫 り合いを くり返 している。最 初 の衝突 は、93年 に米連邦取引委員会 による 「マ イクロソフ トの

O

S市場 の独 占に関す る調査」 を受け、司法省が調査 を開始 したことに始 まる。 この時は、マイクロソフ トが pcベ ンダーに課 した契約の変更 な どを受 け入れることによ り、司法省 は調査 を中止 し、

参照

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