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黒海港湾の覇を競うロシアとウクライナ 表 6 ウクライナの貿易港による取扱貨物量の推移 所属水域 備考 所属地域 前年 =100 シェア (%) 貿易港合計 , , , ,

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特 集

世界経済危機のなかのNIS諸国

黒海港湾の覇を競う

ロシアとウクライナ(下)

ロシアNIS経済研究所 次長 服部 倫卓 はじめに 2009年4月号に引き続き、黒海港湾レポー トの後半をお届けする。後半はウクライナの港 湾セクターに焦点を当てる。

2.ウクライナの港湾

(1)ウクライナ港湾の全体像 概況 ウクライナの港湾セクターの中核を 成すのは、18の貿易港である(20という数字 が挙げられることもある)。これらの貿易港は、 それぞれが個別の企業であり、すべて国営企 業となっている。貿易港による取扱貨物量は、 表6のとおりである。 ただ、これらの国営貿易港の枠外で稼働し ている企業専用埠頭もあり、また漁港でも少 量ながら貨物が処理されている。2007年の場 合、ウクライナの海港による取扱貨物量は1 億5,792 万 t で あ り 、 う ち 1 億 2,707 万 t (80.5%)が貿易港で、2,697万t(17.1%) が企業専用埠頭で、388万t(2.5%)が漁港 で処理された。表7は、貿易港・企業専用埠 頭・漁港すべてを合計した貨物量の推移を示 している16) 港湾セクターの所轄官庁は運輸・通信省で ある。また、貿易港が中心となり、「ウクライ ナ港湾協会(ウクルポルト)」という業界団体 も結成されている(http://www.ukrport.org.ua)。 なお、本稿では扱わないが、大河ドニエプ ルを擁するウクライナでは、河川港の重要性 にも小さからぬものがある。参考までに、表 7にはその取扱貨物量も付記した。もっとも、 当然のことながら、河川港の場合は国内貨物 が多い。以下本稿では、港湾と言った場合に 海港だけを指すこととする。 ウクライナが港湾サービスを提供(輸出) することによって諸外国から得ている収入は、 2006年:7.4億ドル、2007年:8.5億ドル、2008 年:12.4億ドルと推移している。2008年の場 合、ウクライナのサービス輸出総額は116.9億 ドルだから、港湾がその10%強を稼ぎ出して いることになる17)。経常収支の赤字に苦しむ ウクライナにとっては、貴重な収入源と言え るだろう。 オデッサ水域・州がメイン ウクライナの港 湾の位置関係については、前回掲載の図2「黒 海・アゾフ海港湾地図」を参照していただき たい。

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表6 ウクライナの貿易港による取扱貨物量の推移 所属水域 所属地域 前年 =100 シェア (%) 貿易港合計 - - 109,037.0 112,543.5 123,737.2 132,181.4 106.8 100.0 オデッサ オデッサ水域 オデッサ州 26,846.5 28,009.6 31,368.6 34,562.2 110.2 26.1 ユージヌィ オデッサ水域 オデッサ州 20,698.6 20,764.3 21,500.1 21,697.9 100.9 16.4 イリイチョフスク オデッサ水域 オデッサ州 14,968.6 14,841.7 16,034.3 18,904.0 117.9 14.3 マリウポリ アゾフ水域 ドネツク州 14,774.4 15,829.0 17,403.3 15,961.1 91.7 12.1 ニコラエフ ニコラエフ水域 ニコラエフ州 5,556.4 6,380.8 7,591.9 9,254.5 121.9 7.0 イズマイル ドナウ水域 オデッサ州 6,653.3 6,829.8 6,874.5 6,880.8 100.1 5.2 ケルチ クリミア水域 クリミア自治共 4,417.5 4,536.1 4,911.6 4,293.0 87.4 3.2 ヘルソン ニコラエフ水域 ヘルソン州 2,716.2 2,848.7 3,855.9 4,268.0 110.7 3.2 フェオドシヤ クリミア水域 クリミア自治共 1,360.5 1,897.8 2,164.5 2,694.8 124.5 2.0 ベルジャンスク アゾフ水域 ザポロジエ州 2,111.2 2,162.2 2,501.8 2,604.0 104.1 2.0 オクチャブリスク ニコラエフ水域 ニコラエフ州 1,555.9 1,462.4 2,231.4 2,460.2 110.3 1.9 レニ ドナウ水域 オデッサ州 2,956.1 2,574.7 2,887.4 2,448.4 84.8 1.9 エフパトリヤ クリミア水域 クリミア自治共 1,830.1 1,911.6 1,479.8 2,053.0 138.7 1.6 ベルゴロドドニエストロフスキーオデッサ水域 オデッサ州 1,041.9 1,125.5 1,262.4 1,135.0 89.9 0.9 スカドフスク ニコラエフ水域 ヘルソン州 324.0 525.7 966.6 1,117.7 115.6 0.8 セヴァストポリ クリミア水域 セヴァストポリ市 309.5 351.1 367.1 392.8 107.0 0.3 ヤルタ クリミア水域 クリミア自治共 281.5 232.1 260.6 227.0 87.1 0.2 ウスチドゥナイスク ドナウ水域 オデッサ州 634.8 260.4 75.4 226.3 300.1 0.2 2005 2006 2007 2008 備  考 (1,000t) (出所)Порты Украины(各号)およびНациональный морской рейтинг Украины(http://ukrmaritimerating.com) などをもとに作成。 表7 ウクライナの港湾による取扱貨物量の推移 構成比 (%) 海港合計 91,943 98,658 120,601 126,962 131,761 138,986 140,610 157,919 169,700 100.0 輸出貨物 42,704 49,310 62,197 56,171 65,436 70,698 68,391 63,860 76,331 45.0 輸入貨物 6,840 7,404 7,605 10,955 11,675 13,331 15,231 18,784 21,145 12.5 トランジット貨物 37,351 37,120 45,715 55,147 50,004 50,556 53,198 69,167 66,308 39.1 内貿貨物 5,048 4,824 5,084 4,689 4,646 4,401 3,790 6,108 5,916 3.5 参考:河川港 7,462 7,257 8,053 9,828 12,359 13,157 16,903 18,553 14,522 - 2005 2006 2007 2008 (1,000t) 2000 2001 2002 2003 2004 (出所)Державний комітет статистики України, Транспорт і зв’язок України 2007, Київ, 2008 およびウクラ イナ統計国家委員会ウェブサイト(http://www.ukrstat.gov.ua)から作成。

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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 表8 ウクライナの港湾による取扱貨物量の地域別内訳(2007年) 輸出貨物 輸入貨物 トランジット 貨物 内貿貨物 ウクライナ全体 157,919.6 63,859.5 18,784.3 69,167.5 6,108.3 100.0 オデッサ州 93,443.6 31,193.5 10,922.4 50,000.7 1,327.0 59.2 ニコラエフ州 19,396.9 7,426.0 6,365.4 5,580.0 25.5 12.3 ドネツク州 18,543.6 14,091.2 281.1 3,450.1 721.2 11.7 クリミア自治共和国 13,203.8 3,771.4 529.8 7,437.7 1,464.9 8.4 セヴァストポリ市 6,024.8 3,972.2 49.8 1,551.5 451.3 3.8 ヘルソン州 4,802.3 1,581.8 289.8 817.3 2,113.4 3.0 ザポロジエ州 2,504.6 1,823.4 346.0 330.2 5.0 1.6 全国に占 めるシェア (%) 全貨物 (1,000t) (出所)Державний комітет статистики України, Транспорт і зв’язок України 2007, Київ, 2008. ウクライナの港湾は、地理的に言うと、① オデッサ水域、②アゾフ水域、③ニコラエフ 水域、④クリミア水域、⑤ドナウ水域という 5つの水域に大別することができる。このう ち、①に属するオデッサ州の3大港、すなわ ちオデッサ港、ユージヌィ港、イリイチョフ スク港は地理的に近接しており、これらを総 称して「大オデッサ港」と呼ぶ場合がある。 一方、行政区画別に見ると、ウクライナの 取扱貨物量の実に6割が、オデッサ州に集中 していることが分かる(表8)。ウクライナの 港湾セクターではオデッサ州の重要性が突出 して高く、とりわけ大オデッサ港の存在が傑 出している。 貨物取扱状況 前掲の表7を見ると、過去 数年、ウクライナの港で処理される貨物量が 一貫して増大してきたことが確認できる。ウ クライナおよび関係国の好景気を背景に、 2000年から2008年にかけて、貨物量は1.9倍に 拡大した。 ただし、2008年秋以降、ウクライナ経済が 急失速するのに伴い、港の稼働率も低下して いる。ウクライナ統計国家委員会によると、 2009年1~3月の取扱貨物量は3,756万tで、 前 年 同 期 比5.6 % 減 で あっ た 。 輸 出貨 物 は 22.5%増を確保しているものの、輸入貨物が 57.0%減、トランジット貨物が14.1%減となっ ている。 さて、表7のデータに戻ると、ウクライナ 国内で消費ブームが続いてきたことを反映し てか、2000年から2008年にかけて最も伸びて いるのが輸入貨物であり、3.1倍に拡大してい る。ただ、全体に占める比率が大きいのは引 き続き輸出貨物であり、またトランジット貨 物である。 2007年にウクライナの港湾で処理された貨 物の種類別内訳を整理したのが、表9である。 トランジットについては後述するとして、さ しあたり自国貨物に着目すると、やはりウク ライナの産業構造を反映して、鉱山・冶金関 連、化学品・肥料、穀物などの輸出貨物が目 立っている。 コンテナ貨物は、重量でみると全貨物量の 5%程度にすぎず、コンテナ化が進む世界的 な潮流からは遅れをとっていると言える。ロ シアと同じく、コンテナは輸入貨物に偏重し ている。

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表9 ウクライナの港湾が取り扱う貨物の種類別内訳(2007年) 輸出貨物 輸入貨物 トランジット 貨物 内貿貨物 合   計 157,919.6 63,859.5 18,784.3 69,167.5 6,108.3 液体貨物 37,890.1 7,032.2 1,565.5 29,117.3 175.1  石油 20,723.8 21.7 467.1 20,235.0 0.0  石油製品 9,686.2 3,579.6 641.4 5,290.1 175.1  食用油 1,929.2 1,368.7 418.3 142.2 0.0  酒類 1.3 0.0 0.0 1.3 0.0  化学品 4,168.2 1,429.9 38.7 2,699.6 0.0  その他 1,381.4 632.3 0.0 749.1 0.0 ドライカーゴ 74,600.8 27,231.8 9,452.1 32,888.4 5,028.5  石炭 15,962.8 2,957.6 769.1 12,214.8 21.3  コークス 482.7 417.2 45.0 14.9 5.6  鉱石 19,577.5 6,475.8 7,739.4 4,878.4 483.9  建材 9,876.8 5,148.4 146.8 101.9 4,479.7  化学品、肥料 13,797.7 4,928.7 571.9 8,297.1 0.0  砂糖 978.5 1.1 0.0 977.4 0.0  穀物 10,437.0 6,088.0 8.5 4,310.0 30.5  その他 3,486.8 1,214.0 171.4 2,093.9 7.5 梱包貨物 33,011.2 25,724.4 1,737.9 4,644.3 904.6  自動車 208.7 16.8 105.8 85.3 0.8  木材 1,112.0 1,108.6 0.0 3.4 0.0  鉄鋼 28,450.2 23,705.3 56.2 3,865.4 823.3   銑鉄 3,670.2 1,392.6 3.5 2,274.1 0.0   鋼材 12,749.4 11,536.5 26.9 1,147.1 38.9   鋼管 179.9 139.4 1.2 39.3 0.0   ブルフト 319.4 304.9 0.0 7.1 7.4   その他 11,531.3 10,331.9 24.6 397.8 777.0  非鉄金属 7.6 7.5 0.0 0.1 0.0  紙 11.0 0.0 1.1 9.9 0.0  繊維 24.8 0.0 23.5 1.3 0.0  化学品、肥料 349.6 87.1 7.6 254.9 0.0  セメント 19.3 0.8 10.3 8.2 0.0  工業製品 85.6 10.4 56.9 14.0 4.3  石油製品 1.0 0.9 0.0 0.0 0.1  食品 1,044.7 53.4 887.8 71.0 32.5   魚 117.9 0.0 100.2 0.0 17.7   野菜・果物 666.6 0.2 630.5 35.9 0.0  その他 1,696.7 733.6 588.7 330.8 43.6 コンテナ 7,754.9 1,706.1 5,590.2 458.5 0.1 フェリー貨物 4,389.4 2,095.7 406.1 1,887.6 0.0 トレイラー貨物 273.2 69.3 32.5 171.4 0.0 (1,000t) 全貨物 (出所)Державний комітет статистики України, Транспорт і зв’язок України 2007, Київ, 2008 から作成。なお、原典では、貿易港、企業専用埠頭、漁港 のデータが別々に掲載されているため、それらを合計して本表を作成した。

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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 なお、ウクライナ統計国家委員会が同国の 港湾セクターの活動状況に関して発表してい る統計資料は、なかなか充実しており、評価 できる(ウクライナ語なのがつらいところだ が)。ロシア連邦国家統計局が、同国港湾セク ターの活動振りに関し有意な資料をまったく 作成していないのとは、対照的だ。本稿では、 ロシアとウクライナの港湾覇権の争いについ て論じているわけだが、こと統計資料に関し てはウクライナの完勝である。 (2)トランジットの死活的重要性 表7で見たように、トランジット貨物が、 ウクライナ港湾による取扱貨物量の40%前後 を安定して占めており、2007年には輸出貨物 を凌いでトップに立つ一幕もあった。国際ハ ブ港湾ならともかく、ローカル色の濃いウク ライナのような国の港湾としては、特筆すべ き現象であると言えよう。ちなみに、2008年 のロシアの場合、トランジット比率は8.7%に すぎなかった18)。 それでは、ウクライナの港によるトランジ ットサービスとは、いかなるものであろうか。 表10は、2007年にウクライナの港湾が処理し た6,917万tのトランジット貨物につき、その 貨物を出した側の輸出国(左)と、受け取っ た側の輸入国(右)を整理して示したもので ある。 表10 ウクライナ港湾の扱うトランジット貨物の輸出国と輸入国(2007年) (1,000t) 輸出国 貨物量 (1,000t) シェア (%) 合    計 69,167.5 100.0 CIS諸国 65,958.1 95.4  ロシア 52,269.8 75.6  カザフスタン 11,183.7 16.2  ベラルーシ 1,851.8 2.7  モルドバ 429.2 0.6 欧州諸国 1,325.8 1.9 アジア諸国 735.3 1.1  トルコ 522.2 0.8 アフリカ諸国 43.4 0.1 米州諸国 1,104.9 1.6  ブラジル 875.0 1.3 (出所)Державний комітет статистики України, Транспорт і зв’язок України 2007, Київ, 2008から作成。 ウクライナの港で トランジット 輸入国 貨物量 (1,000t) シェア (%) 合    計 69,167.5 100.0 CIS諸国 2,765.4 4.0  ロシア 2,087.0 3.0 欧州諸国 34,941.7 50.5  イタリア 12,182.8 17.6  スイス 4,523.3 6.5  キプロス 3,816.5 5.5  ブルガリア 3,209.7 4.6  ギリシャ 2,528.1 3.7  スペイン 2,159.1 3.1  セルビア・モンテネグロ 1,354.4 2.0  ルーマニア 1,194.3 1.7  オーストリア 1,051.3 1.5 アジア諸国 20,885.7 30.2  トルコ 7,825.7 11.3  中国 5,786.9 8.4  イスラエル 1,655.7 2.4  インド 1,388.5 2.0 アフリカ諸国 5,161.4 7.5  モロッコ 1,838.7 2.7  チュニジア 1,408.8 2.0  エジプト 1,072.8 1.6 米州諸国 5,411.6 7.8  米国 2,774.6 4.0  ブラジル 1,167.6 1.7 オセアニア諸国 1.7 0.0

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これを見ると、まず貨物の出どころは、 95.4%がCIS諸国であり、とりわけロシアが圧 倒的に多いことが分かる。一方、貨物の行先 を見ると、ここではCIS諸国のシェアは4.0% であり、CIS域外が96.0%となっている。ウク ライナの地理的位置から考えて、CIS国から別 のCIS国へのトランジットは、きわめて稀であ ろう。したがって、ウクライナの港湾による トランジットとは、そのほとんどがCIS諸国の 貨物をCIS域外に輸出するオペレーションで あり、残りのわずかな部分もCIS域外→CIS諸 国というパターンであると結論付けることが できる。CIS諸国の貨物の輸出先は、中国や米 国といった遠隔市場もあるが、黒海、地中海 沿岸諸国が目立っている。 CIS諸国のうちロシアは、本稿の前半部分で 論じたように、南部水域での港湾処理能力が 質・量ともに不充分となっており、不本意な がら依然としてウクライナの港に頼らざるを えない。カザフスタン、ベラルーシ、モルド バはそもそも内陸国であるから、海への出口 をもたない。ウクライナは、これらの国々の 輸出貨物の発送作業を担うことで、港の稼働 率と収益性を維持していると言うことができ よう。 また、これらの貨物は、液体であればパイ プラインで、ドライカーゴであれば鉄道でウ クライナの港まで運ばれることが多いはずだ から、ウクライナのパイプラインや鉄道の収 入にも貢献しているはずである。 なお、港におけるトランジットというと、 国際的なハブ港湾で盛んなコンテナの「トラ ンスシップメント」(船から船への積み替え) が連想されるところである。しかし、ウクラ イナではコンテナターミナルの能力不足や法 律の未整備により、トランスシップメントの 実績はなく、ようやく関係者の間で問題意識 が芽生え始めたところにすぎない19)。現時点 でのウクライナ港湾によるトランジットとは もっぱら、陸上輸送で運ばれてきたCIS諸国の 貨物を、諸外国向けの船舶に積み込む作業に 尽きると言える。 前掲の表9には、トランジット貨物の種類 別内訳が示されている。最大の品目は石油で あり、これはオデッサ港とユージヌィ港から ロシア原油が積み出されていることによるも のである。次に多いのが石炭であり、これは 本稿の前半部分でも述べたように、ロシアの 黒海沿岸には現在のところ石炭専用ターミナ ルがないので、大量のロシア炭がウクライナ の港から輸出されているという事情による。 このほか、石油製品、化学品・肥料、鉱石、 鉄鋼、穀物といったあたりが、主要なトラン ジット品目となっている。 当然のことながら、ウクライナの政府およ び業界は、自国の港湾が今後もトランジット 貨物の取扱を維持・拡大していくことを、戦 略的課題として認識している。たとえば、2008 年に運輸・通信省が「2015年までのウクライ ナの海港発展戦略」を策定した際にも、「我が 国のトランジット・ポテンシャルを効果的に 活用すること」が、課題のひとつとして明記 された20)。また、2008年にウクライナ港湾協 会が取りまとめた提言書でも、「トランジット 国家としてのウクライナの地政学的なポテン シャルを発揮する」という目標が謳われてい る21)。 さすがにこれらの文書で「ロシア」と名指 しはされていないが、ウクライナの港湾にと ってロシアの顧客を確保し続けることは、死 活的な重要性を帯びている。一方、前回述べ たように、ロシア側にとってみれば、ウクラ イナに流れている自国貨物の奪還が悲願であ る22)。この点こそ、港湾セクターでロシアと ウクライナが繰り広げている攻防の焦点と言 える。

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図8 ウクライナ主要港の配置図

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図9 「大オデッサ港」の位置関係 (3)主要港湾の概況 ここでは、ウクライナの貿易港のうち、オ デッサ、ユージヌィ、イリイチョフスク、マ リウポリの上位4港の概況を紹介する。 各港の配置図は、図8に示したとおりであ る。また、すでに述べたように、オデッサ州 の3大港は地理的に近接しており、「大オデッ サ港」と総称される場合もあるので、その位 置関係を図9に示した。 オデッサ港 前掲の表6に見るように、ウク ライナ最大の港の地位を誇るのが、オデッサ 貿易港である。オデッサ港は、オデッサ市が 誕生したのと同じ1794年に築かれた港であり、 街と港が一体となって成長してきたという歴 史がある。 オデッサ港の主要取扱貨物を表11にまとめ た。同港はウクライナを代表する総合港なの で、取扱品目は多岐にわたる。ドライカーゴ と液体貨物がほぼ半々となっているのが特徴 であり、後者は石油・石油製品が主力である。 表11 オデッサ港の取扱貨物量 2004 2005 2006 2007 2008 ドライカーゴ 12,377 14,024 15,095 15,900 17,366 穀物 1,638 3,004 2,525 2,188 4,096 砂糖 603 796 467 968 742 鉱石、石炭 230 811 1,274 1,757 … 金属 7,106 6,202 6,556 5,805 5,994 木材 68 61 48 39 … 生鮮貨物 59 161 312 344 … コンテナ 2,264 2,851 3,688 4,474 4,046 鉱物建材 245 24 60 158 … その他 165 115 167 168 … 液体貨物 18,173 12,822 12,915 15,469 17,197 石油 10,787 7,250 8,483 10,674 10,603 石油製品 6,847 4,917 3,758 4,091 5,795 液化天然ガス 380 353 432 448 457 食用油 152 218 173 162 246 工業用油 7 85 68 93 95 総   計 30,550 26,847 28,010 31,369 34,562 (1,000t) (出所)Все о портах Украины. 2007-2008, Издательство «Порты Украины»: Одесса, 2007 および オデッサ港ウェブサイト(http://www.port.odessa.ua) から作成。 ロシア産原油が沿ドニエプル・パイプライン でオデッサ港まで運ばれ、オデッサ港でタン カーに積み込まれている。2007年の場合、主 にスルグトネフチェガス社やルクオイル社の 原油がここから輸出された。なお、オデッサ 港における石油・石油製品の積み出しでは、 ウクライナの大手財閥「プリヴァト」の傘下 企業がオペレーターとなっている模様である。 ドライカーゴでは、金属とコンテナが多い。 金属は、鉄道輸送網から考えて、ドニエプロ ペトロフスク州の鉄鋼メーカー(アルセロー ルミタル・クリヴォイログなど)の製品と思 われる。オデッサ港は、穀物輸出においても、 ウクライナ最大の規模を誇る。 ただ、オデッサ港では今般の経済危機によ る落ち込みがひときわ激しいようで、2009年 1~3月期の取扱貨物量は、前年同期比19% 減の735万tにとどまったという。とくに、コ ンテナはほぼ半減していると伝えられる23)。

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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 ユージヌィ港 ユージヌィ貿易港は、オデッ サ港から北東に30kmほどのところに位置し ている。「ユージヌィ(南の)」という名前な がら、オデッサからはむしろ北側になるので、 注意が必要である。 ユージヌィ港は、これまでのところ、化学 品・肥料の輸出およびトランジットにかなり 特化した港となっている。それは、1970年代 にこの港が建設された経緯に関係している。 本稿前半で述べたとおり、ソ連時代に、ロシ アのトリヤッチからこの地まで延びる長大な アンモニア・パイプラインが敷設され、その 終点には「オデッサ臨港工場」が建設された。 ユージヌィ港はもともと、トリヤッチから輸 送されてくるアンモニア、臨港工場で生産さ れる化学品・肥料を輸出することを主たる任 務とする港だったのである。 それでも近年では、石炭や鉱石を扱う埠頭 も整備され、総合港への脱皮を図りつつある。 2009年4月には運輸・通信省が2025年までの ユージヌィ港の発展計画を承認した。また、 表12 ユージヌィ港の取扱貨物量 2004 2005 2006 2007 2008 ばら積み貨物 11,580 14,160 13,879 … … 尿素 3,480 3,660 3,669 … … 石炭 5,694 5,165 4,751 … … ペレット 445 3,092 2,702 … … 第17埠頭の貨物* 1,884 2,370 2,255 … … 液体貨物 4,151 4,168 4,582 … … アンモニア 3,689 3,661 4,202 … … 尿素アンモニア混合 75 235 104 … … メタノール 313 273 276 … … 梱包貨物 3,138 2,155 2,539 … … 金属(圧延材) 925 387 221 … … 銑鉄 2,206 1,768 2,281 … … 総   計 18,868 20,699 20,764 21,500 21,698 (1,000t) (注)*第17埠頭は化学肥料積み出し専用埠頭で、合 弁企業「トランスインヴェストセルヴィス」がオペレ ーターを務めている。 (出所)Все о портах Украины 等から作成。 ユージヌィ港で活動している大手民間荷役会 社「トランスインヴェストセルヴィス」は、 コンテナターミナルの建設を計画している。 ユージヌィ港が主力としている化学品・肥 料の輸出およびトランジットは、対ロシア関 係に起因して、今後じり貧となっていく恐れ がある。第1に、再三述べているとおり、ロ シアが自国貨物をウクライナ港湾経由で輸出 するのを抑制しようとしているからである。 第2に、ロシアがウクライナ向けの天然ガス 価格を値上げしており、そのことはウクライ ナの化学工業の競争力低下に直結するからで ある。ユージヌィ港としては、総合港に脱皮 することで生き残りを図るしかないだろう。 ところで、ユージヌィ港のエリア内には、 「ピヴデンヌィ」という石油ターミナルがあ る。これは、有名なオデッサ~ブロディ石油 パイプラインの起点(終点?)となるターミ ナルで、ウクライナの石油パイプラインを独 占的に管理する国営企業「ウクルトランスネ フチ」の傘下にある。ピヴデンヌィは、ユー ジヌィ港の枠外で活動する企業専用埠頭とい う扱いになっており(ウクライナ最大の企業 専用埠頭である)、その貨物量は統計上、ユー ジヌィ港のそれには含まれない。 ピヴデンヌィ石油ターミナル

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図8に見るように、両者は同じ入り江のな かで隣り合っており、別扱いにするのは不自 然に思われる(前回ノヴォロシースク港につ いて指摘したのとは逆である)。2007年には 993万tの石油が、2008年には775万tの石油 が、ピヴデンヌィから輸出されたことが知ら れている24)。仮にこの数字を加えると、2007 年などは、実はオデッサ港よりもユージヌィ 港の方が貨物量が多かったということになっ てしまう。 周知のように、もともとオデッサ~ブロデ ィ石油パイプラインは、中東やカスピ海の原 油を黒海の港で揚げてそれをウクライナ国内 や中東欧市場に供給することを意図して建設 された。しかし、原油供給者が現れなかった ため、2004年秋から本来の意図とは逆方向で ロシア産原油の輸送に活用されるようになり、 現在に至っている25)。主に、TNK-BPやルクオ イルが、このルートを活用してピヴデンヌィ のターミナルから黒海~地中海方面に石油を 輸出している。 しかし、ユーシチェンコ・ウクライナ大統 領はオデッサ~ブロディ・パイプラインの順 方向での利用にあくまでもこだわりを見せて おり、最近も内閣に対して、国益を見据え同 パイプラインを早急に順方向に転換するよう に要請している26)。国家元首が自ら、貴重な 収入源であるロシア貨物のトランジットを拒 絶し、供給も需要も不確かなスキームへの転 換を唱導するというのは、考えてみれば奇妙 な構図ではある。 イリイチョフスク港 オデッサ港から南西に 20kmほどのところに、イリイチョフスク貿易 港がある。多様な貨物を扱う総合港であるが、 とくに最近は、①コンテナ、②乗用車という 時流に沿った2つの分野で、その存在感を増 している。 表13 イリイチョフスク港の取扱貨物量 2004 2005 2006 2007 2008 ジェネラルカーゴ 10,001 8,446 7,717 8,922 10,877 金属 6,830 4,622 3,486 2,568 2,970 銑鉄 20 146 235 817 1,542 コンテナ 1,308 1,753 1,986 3,560 4,510 フェリー貨物 1,439 1,442 1,454 1,510 1,154 自動車(1,000 台) 14.2 43.2 121.2 253.7 液体貨物 991 1,245 5,665 1,785 1,438 食用油 507 609 1,103 1,349 810 石油製品 439 558 305 421 586 液化天然ガス 43 71 41 15 42 ばら積み貨物 3,891 5,278 5,665 5,328 6,590 穀物 1,476 2,362 1,795 1,488 2,359 鉱石 1,792 2,281 2,757 2,649 2,457 硫黄 429 575 712 952 1,739 総   計 14,883 14,969 14,842 16,034 18,904 (1,000t) (出所)Все о портах Украины およびイリイチョフ スク港ウェブサイト(http://ilport.com.ua)から作成。 イリイチョフスク港は、ウクライナ随一の 輸入乗用車陸揚港となっているようで、この ところのウクライナの急激なモータリゼーシ ョンを反映して、その取扱量が急増していた (表13参照)。なお、イリイチョフスク港以外 では、セヴァストポリ港も自動車の輸入窓口 となっている模様である。 また、イリイチョフスク港はコンテナ処理 能力を大幅に拡大するプロジェクトに取り組 んでいる。ロシアの「国民コンテナ会社」の 子会社である「ウクルトランスコンテナ」社 が、その推進役である。2008年のイリイチョ フスク港におけるコンテナの処理量は67.1万 TEUであったが、うち54.0万TEUがウクルトラ ンスコンテナ社によるものだった。 なお、2009年1~3月期のイリイチョフス ク港の取扱貨物量は、前年同期比9.7%減の 430.4万tにとどまった。輸出貨物は増大して いるものの、輸入の激減が響いており、ウク ライナの港としては輸入の比率が大きい同港 の特徴が仇になった形である。

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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 マリウポリ港 マリウポリ貿易港は、アゾフ 海に面するドネツク州の港である。表6に見 るように、2007年までは順調に貨物が増え、 オデッサ州3大港の牙城に迫る勢いであった。 しかし、2008年の貨物量は前年比8.3%減と、 一転して不振となった。 これは、マリウポリ港の取扱品目に起因し ている。マリウポリ港は、ドンバス工業地帯 の財閥、鉄鋼メーカー御用達の港という性格 が強く、取扱品目は同地域で産出される金属 と石炭に偏重している(石炭は半分前後がロ シア炭のトランジットだが)。2008年秋以降の 鉄鋼不況で、金属の輸出が激減し、これによ りマリウポリ港の貨物量も低迷しているとい うことであると考えられる。 ちなみに、マリウポリ港のウェブサイト (http://www.marport.net)には、2008年に同港 が扱った金属輸出貨物のメーカー別内訳が掲 載されている。アゾフスターリ:35.3%、イ リイッチ記念マリウポリ冶金コンビナート: 28.0%、エナキエヴォ冶金工場:13.5%、アル チェフスク冶金コンビナート:8.8%、ISTIL: 5.5%などとなっており、地元ドネツク州を中 心とした鉄鋼大手が名を連ねている。 今後の貨物の回復も、ドンバス地域の産業、 とりわけ鉄鋼業がどれだけ早く立ち直るかに かかっていると言えよう。 表14 マリウポリ港の取扱貨物量 2004 2005 2006 2007 2008 金属 5,308 6,253 7,909 8,366 7,102 石炭 4,949 3,726 3,374 3,656 4,065 硫黄 1,638 1,213 650 1,087 828 建材、粘土 2,283 2,848 2,839 3,273 2,731 化学品、肥料 75 68 84 71 88 穀物 201 404 418 286 657 コンテナ 172 141 141 155 141 総   計 14,771 14,773 15,929 17,403 15,961 (1,000t) (出所)Все о портах Украины およびマリウポリ港 ウェブサイト(http://www.marport.net)から作成。 (4)浮沈を握るコンテナ化 言うまでもなく、世界の海運では、輸送の コンテナ化が進展している。黒海地域では、 全般的にコンテナ化が遅れていた分、近年の 成長には目覚しいものがあり、黒海のコンテ ナ輸送はここ数年、年平均40.1%と世界でも 例を見ない高成長を遂げていたとされる27)。 しかし、前半で論じたロシアの黒海港湾よ りは多少ましとはいえ、ウクライナ港湾のコ ンテナ処理能力は、不充分なレベルにとどま っている。黒海地域で生じているビジネスチ ャンスを、活かしきれていない。 現在のところ、ウクライナの港湾でコンテ ナをしかるべく処理できるところは、イリイ チョフスク港とオデッサ港にほぼ限られる。 そこで、その両港のコンテナ取扱量の推移を、 図10にまとめた。これ以外には、マリウポリ 港で少量ながらコンテナが処理されているが、 時系列データがとれないのと、2007年現在で 10,700TEUという取るに足らない規模なので、 省略する。 図11は、2007年の黒海沿岸諸国の港による コンテナ取扱量を比較したものである。現在 までのところ、圧倒的なリーダーは、ルーマ ニアのコンスタンツァ港となっている(ただ し、コンスタンツァ港の実績は2008年には 138.1万TEUへと落ち込んだので、ウクライナ との差は縮まった)。外資を導入し、コンテナ ターミナルを新たに建設した結果、コンスタ ンツァが黒海最強の港となったのである。従 来は、大型コンテナ船が停泊できるのはコン スタンツァだけだったので、ウクライナやロ シア向けの貨物も、コンスタンツァでフィー ダー船に積み替えられて、両国の港に運ばれ てきた。出所によって若干幅はあるが、コン スタンツァ港のコンテナ処理に占めるトラン スシップメント(積み替え)の比率は、80% 前後に達している模様である28)。

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図10 ウクライナの港湾によるコンテナ取扱実績 (1,000TEU) 103.4 161.7 196.7 291.1 324.0 532.8 670.6 111.2 158.9 201.4 288.3 395.6 523.9 572.1 0 500 1,000 1,500 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 イリイチョフスク港 オデッサ港 (出所)Все о портах Украины および両港ウェブサ イト(http://ilport.com.ua;http://www.port.odessa.ua) から作成。 図11 黒海沿岸諸国の港湾によるコンテナ取扱量 (2007年、1,000TEU) 184.8 342.2 523.9 532.8 1,411.4 10.7 32.5 37.8 99.7 0 500 1,000 1,500 マリウポリ (ウクライナ) ブルガス (ブルガリア) タガンログ (ロシア) ヴァルナ (ブルガリア) ポチ (グルジア) ノヴォロシースク (ロシア) オデッサ (ウクライナ) イリイチョフスク (ウクライナ) コンスタンツァ (ルーマニア) (出所)Порты Украины, 2008 №8. 表15 ウクライナ港湾のコンテナ処理能力見通し 2008 2010 2012 2014 2018 合    計 1,590 2,405 3,930 4,780 5,300 オデッサ港 740 980 1,230 1,480 2,000 イリイチョフスク港 850 1,000 1,700 1,700 1,700 ニコラエフ港 0 125 600 900 900 ユージヌィ港 0 300 400 700 700 ウクライナの潜在需要 1,302 1,861 2,501 3,190 4,682 (1,000TEU) もちろん、ウクライナも手をこまねいてい るわけではなく、コンテナターミナルの整備 を急いでいる。最大のプロジェクトは、すで に触れたイリイチョフスク港のそれである。 第1期工事はすでに完了しており、2007年11 月にオープニングセレモニーが行われた。こ れにより、イリイチョフスク港のコンテナ処 理能力は年間85万TEUに拡大した。浚渫工事 の実施により、水深13.5mが確保され、より大 型の船を受け入れられるようにもなった。最 終的には、同港のコンテナ処理能力を2019年 までに400万TEUに拡大するという野心的な 計画である29)。同プロジェクトを推進するウ クルトランスコンテナ社は、イリイチョフス ク港でCIS諸国向けのトランスシップメント を手がけることにも強い意欲を示している30)。 ただ、ロシアとウクライナが覇を競い合って いるという本稿の前提からすると、ロシア系 企業がロシアの国益に反しかねない同プロジ ェクトの担い手であるというのは、興味深い 構図だ。 このほか、オデッサ港でも民間の荷役会社 が参入してコンテナターミナルの拡張を進め ている。上述のようにユージヌィ港でもコン テナターミナルの建設が計画されているし、 ニコラエフ港、セヴァストポリ港でもプロジ ェクトがある。表15は、向こう10年間で、ウ クライナ全体のコンテナ処理能力がどう推移 していくかに関する民間シンクタンクの予測 である。ただ、その後深刻化した経済危機の 影響は考慮しなければならないだろう。 いずれにしても、今後ウクライナが官民を 挙げてコンテナ処理能力の拡大に取り組んで いくであろうことは、確実である。その際に、 規模を確保して競争力を高めるためには、ト ランスシップメントが鍵を握り、当然ロシア 貨物がその主たるターゲットとなる。一方、 ロシアとしても従属的な地位に甘んじるはず (出所)Порты Украины, 2008 №8.

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特集◆世界経済危機のなかのNIS諸国 はなく、ノヴォロシースク港の拡張、タマニ 新港の建設で、自国のコンテナ処理能力を拡 充し応じようとするだろう。黒海の港湾覇権 を争う戦いにおいて、これからの主たる戦線 となるのは、コンテナの分野である。

おわりに

以上、2回にわたり、ロシアとウクライナ の黒海港湾に関し、両国の対抗関係をひとつ の軸に、概要を整理してみた。 ロシアの黒海沿岸は、地理的・地形的条件 が、港湾の建設・運営に必ずしも有利でない。 それを克服して、この水域における港湾セク ターをさらに飛躍させるためには、連邦政府 の強いイニシアティブが求められる。現在は 経済危機によりロシア財政も苦しくなってい るところなので、財政事情の好転を待って、 タマニ新港の建設を柱に、港湾キャパシティ の質的・量的拡充を図っていくことになろう。 これに対しウクライナは、ロシアよりも有 利な地理的条件に恵まれており、黒海港湾の 覇者となりうるポテンシャルを秘めている。 大オデッサ港が、黒海のコンテナ輸送でハブ 的なポジションを占め、主役の座をコンスタ ンツァから奪う可能性も、あながち否定でき ない。ただ、本稿では省略したが、同国の場 合は、お家芸とも言える行政の混乱・腐敗、 政治家による利権争奪により、港湾セクター がもてるポテンシャルをフルに発揮できてい ないという印象が強い31)。ウクライナが港湾 立国の地位を築けるかどうかは、自分たち次 第である。 さて、本稿では、ロシアとウクライナの関 係を、対抗的なものとして描いてきた。だが、 これは軍備拡張競争のような否定的な現象で はあるまい。円滑な貿易取引に欠かせないイ ンフラの近代化を競い合っているということ なので、両国にとって有意義なのはもちろん、 諸外国にとっても歓迎すべきことであろう。 ロシアとウクライナの黒海港湾は、トータル の貨物量で同じくらいの規模だし、コンテナ 化をはじめとする技術水準も大差ない。この 絶妙なライバル関係がうまく作用し、両国の 黒海港湾が今後本格的に開花してくれること を期待したい。 本稿では、基礎的な事実関係やデータを整 理することに終始してしまい、踏み込んだ分 析にまでは至らなかった。今後も、継続的に このテーマをフォローし、研究を深めていき たいと思う。

【注】

16)本稿の前半脱稿後、黒海・アゾフ海沿岸諸国の 港湾による最新の取扱貨物量を示した資料を入 手したので、下表のとおり紹介する。出所は、 Порты Украины, 2008 №8 である。なお、トルコ の港は対象外になっている模様だ。 この資料によれば、ウクライナは2007年に初め てロシアを抜いて、黒海・アゾフ海における最大 の港湾貨物量を達成したとのことである。 一方、前回掲載した図1「ロシアとウクライナ の黒海・アゾフ海港湾による取扱貨物量比較」で は、ロシア側の貨物量に河川港であるロストフ港 をあえて加えていたため、ロシアの方が微妙に上 回っていた。 黒海・アゾフ海港湾貨物量の国別比較 前年 =100 シェア (%) 合   計 394.7 405.5 102.7 100.0 ウクライナ 141.0 158.0 112.0 39.0 ロシア 149.0 152.0 102.0 37.5 ルーマニア 57.1 57.8 101.1 14.3 グルジア 25.9 18.9 73.0 4.7 ブルガリア 21.7 18.8 86.7 4.6 (100万t) 2006 2007 17)「サービス収支」→「輸送」→「海上輸送」→ 「その他」が実質的に港湾サービスに等しいとい う解釈にもとづく。出所は、Державний комітет статистики України, Зовнішня торгівля України товарами та послугами у 2007 році, Київ, 2008 お よびウクライナ統計国家委員会ウェブサイト (http://www.ukrstat.gov.ua)。ただし、ウクライナ

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25)詳しくは、藤森信吉「ウクライナの石油パイプ ラインの概要」『ロシアNIS調査月報』2008年8月 号、86-89頁参照。 統計国家委員会の発表するサービス貿易額は、ウ クライナ中央銀行(http://www.bank.gov.ua)の発 表値とかなり乖離しており、中銀のデータによれ ば2008年のウクライナのサービス輸出総額は 179.0億ドルとされている。 26)“Ющенко требует срочно перевести Одесса – Броды в аверсный режим.”http://www.unian.net /rus/news/news-314224.html 他方、ユーシチェンコ 大統領が本件を主張するのは、私企業と癒着して いるからだとする観測もある。 18)「ロシア港湾の概要と整備計画の行方」『ロシア NIS調査月報』2009年4月号、2頁。 19)たとえば、以下の記事を参照。“Кабмин вспомнил о транзите.”http://www.maritimebusinessnews.com. ua/print_preview/3542.html 27)“Черноморский контейнерный саммит-2008,” Порты Украины, 2008 №8. 28)これらの状況については、以下を参照。С. Плаксина,“Непредсказуемый Минтранс,”Эксперт Украина, №8, 26 февраля 2007;С. Плаксина, “Время больших терминалов,”Эксперт Украина, №36, 17 сентября 2007;С. Плаксина,“Порты застряли на рейде,”Эксперт Украина, №46, 26 ноября 2007;К. Шмекер,“Контейнерные мощности и инвестиции в развитие черноморских портов,”Порты Украины, 2008 №8. 20)http://www.mintrans.gov.ua/uk/strategy/9849.html 21)http://www.ukrport.org.ua/predl.rtf 22)最近の実例としては、ウクライナの港を経由し て輸出されるロシアの穀物がここに来て急減し ているというニュースがあった。ロシア当局が、 割安な鉄道料金を適用することで、輸出穀物を自 国の港にシフトさせていることが背景にあると いう。“Транзит мимо Украины.”http://portnews.ru /comments/357/ 23)“Одесский порт в 1-м квартале 2009 г. снизил на грузооборот на 19% - до 7,4 млн. Т.”http://www. maritimebusinessnews.com.ua/print_preview/3425.html 29)同上。 30)М. Верещака,“Транзит не ждет,”Порты Украины, 2008 №9. 24)Нефтегазовая вертикаль, 2008 №3, 2009 №4. 31)「迷走するウクライナの港湾行政」『ロシアNIS 調査月報』2008年6月号、61-63参照。

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