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2010年12月24日

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ロシア関連メモ 083 国際公共政策研究センター 主任研究員 神野 雅人 有権者同盟について 1. はじめに ロシア関連メモ No.82(2012 年 2 月 1 日)にて既報の通り、ロシアでは議会選挙不正に抗議し 公正な選挙を求める行動が広がりを見せているが、1 月 18 日に、この運動の取り纏めを行おうと する団体「有権者同盟(Лига избирателей:The League of Voters)」(以下「同盟」)が設立され、 最近活動を活発化させている。本稿では同盟の概要について報告する。 2. 有権者同盟の概要 「有権者同盟設立宣言(以下「宣言」)と「同盟規約」」(以下「規約」)から同盟の主内容を概 観する1 (1) 発起人 。 同盟の発起人として 16 名の氏名が宣言に記載されており、ブロガー、ジャーナリスト、市民活 動家が多く、他に作家、音楽家等が含まれている。これらの人々は体制に批判的な言論や活動に よってロシア国内で一定の知名度のある人々である2。なお、現在の運動のシンボル的存在といわ れるブロガー、アレクセイ・ナヴァルヌィ3 発起人は、同盟が始めに取組むプロジェクトを決定する。当面は発起人会議が指導する形とな るが、同盟の活動が軌道に乗るにつれてその役割は、同盟の活動が宣言の精神に合致しているこ とを監視する役割に収斂していく。 氏は加わっていない。これは以下に述べるように同盟 が政治目的を持たないことを前面に打ち出しているのに対し、ナヴァルヌィ氏が政界進出の意図 を持っているためと言われている。 (2) 目的・主旨 同盟が理想とするのは「公正な国家」であり、「公正な選挙、公正なメディア、公正な警察権力、 誠実な指導者」が目的である。同盟は政治目的を一切持たず、いかなる党派、大統領候補をも支 援しない。すなわち同盟は政治に関与せず、既存政党その他党派から独立した大衆的運動によっ 1 「宣言」及び「規約」については、本稿末の資料 1、2 参照。 2 氏名、職業は稿末資料 1 宣言参照。 3 汚職追求サイト「ロスピル」(РосПил5)を開設している弁護士、ブロガー。

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て目的実現を目指そうとするものである。 (3) 参加者 宣言に賛同し規約を遵守する意思のあるロシア国民(必ずしも限定されない)は、誰でも同盟 に参加することができ、登録はネット上で行う。 (4) 活動内容 同盟の活動は独立したグループの活動の「コーディネーション」であり、同盟自体が個別活動 主体となる訳ではない。同盟はプロジェクトを提案し、アドバイスするが、グループがそれに従 うかはボランタリーベースである。すなわち同盟は、宣言の目的実現のためのプロジェクトの連 合体といえよう。現在提案されているプロジェクトとしては、①大統領選挙監視、②選挙管理委 員に不正を行わせないためのキャンペーン、③インターネット外での議論・集会・デモ企画実施、 ④公正な選挙のための文化的イベント、啓蒙活動、⑤メディアの公開性を高めるための行動、⑥ 同盟の活動のための人材と資金獲得等がある。 (5) 組織 同盟は緩やかで流動的な組織を想定しているとみられ、プロジェクトの連合体という性質もあ ることから組織形態にについて規約に詳細な既定はないが、概ね以下のように理解される。 まず、発起人会議があり、其の役割は上述のとおりである。 次に同盟全体を束ねる機関として「コーディネーション評議会」が置かれ、①同盟全体のプロ ジェクト・コーディネーション、②対外的代表、③参加者の受入及び除名決定・記録、④同盟参 加者全員の投票にかける問題決定を行う。 プロジェクトごとには「コーディネーション委員会」がおかれ、その代表者がプロジェクトの コーディネーターとなり、コーディネーション評議会メンバーとなる。また、必要に応じプロジ ェクトの「管理者」が決められ、事務局的役割や資金の管理、報告作成等を行う。 同盟全体に関わる問題は参加者全員の投票によって決定するという直接民主制が採られており、 投票はウェブ上で行われる。その問題とは①規約改正、②アピール・文書採択、③対外交渉の特 別代表指名、④コーディネーション評議会の人選⑤その他コーディネーション評議会が決定した 事項である。 なお、昨年 12 月以降のデモや集会等で、参加者が白いリボン等を掲げて行進する光景が見られ たが、規約には同盟のシンボルカラーを白とすることが規定され、白はロシア市民社会、中立性、 平和を象徴するとしている。 (6) 活動形態 個々のプロジェクトの活動は、同盟のウェブサイト及び/またはソーシャルネットワーク上で 組成することが原則とされ、ロシアで広く浸透しているネットメディアを最大限に活用しようと いう意図が明確になっている。図表 1 はその実例の1つで Facebook 上の同盟のページである。

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また、図表 2 は 2 月 4 日に予定される「公正な選挙を求める平和的行進」のコミュニティ「Мы были на Болотной площади и придем еще」(直訳は「我々はボロトナヤ広場4やその周辺にい た」)で、これがプロジェクトのなかのウェブベースで組成される活動の一例と考えられる。 図表 2:2 月 4 日抗議行動の情報ページ(Facebook) 4 2011 年 12 月 10 日に議会選挙不正に抗議する集会が開かれた場所

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3. 2 月 4 日行動について この「公正な選挙を求める平和的行進」が現在同盟の活動の中心となっており、Facebook ペー ジには連日数多くの情報が投稿されている。 モスクワ市中心部における行動には、2 月 3 日正午現在、Facebook 上で 27,000 人以上が参加 表明している。また、同盟のウェブサイトによると、モスクワ以外にもヴァルナウル、ウラジオ ストク、ヴォルゴラード、ヴォログダ、ヴォロネツ、イツェーフスク、ヨシャカル-オラ、カリ ーニングラード、コムソモルスク・アムール、クラスノヤルスク、ニッツニィ・ノヴォゴラド、 ノボシビルスク、オムスク、エイグル、ペツロザヴォヅスク、サマラ、ソチのロシア国内各地、 さらにはニューヨークでもデモ等が行われる予定とされており、2 月 4 日行動は昨年 12 月の行動 の規模を上回ものになるとみられる。 2011 年 12 月以降のロシアの大衆的運動については、運動を束ねる指導者の不在、参加者間の イデオロギー的拡散などが弱点として指摘されてきた。その点、同盟は「公正な選挙」という 1 点に集中し、さらに政治色を排除することによって幅広い市民勢力の結集を図ろうとするもので ある。また、ソーシャルネットワークなどの新しいメディアを最大限に活用して運動を進めよう とする点も、これまでのロシア史上にない、まったく新しい形態の運動体であるといえよう。2 月 4 日活動の成否及びそれ以降の展開によっては、同盟が運動の中心的推進主体となっている可 能性もあるだろう。 以上

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(資料 1) 有権者同盟設立宣言 我々は有権者同盟-不正選挙に対する民衆の持続的抵抗-設立のために結集した。 我々は政治目的を設定せず、特定の政党及び大統領候補者を支援しない。我々は公正な国家に 生きることを望む。我々は公正な裁判所、公正なメディア、公正な警察権力、そして公正な政府 と国民の誠実な指導者を求める。我々は地方から大統領に至るまで公正な選挙を求める。我々は あらゆる合法的手段を使って戦う。 我々は、我々と意見を同じくする全ての者に対し同盟への参加と公正な選挙を実現するための 戦いに加わることを求める。 有権者同盟発起人 ルステム・アダガモフ:Рустем Адагамовm, ブロガー(drugoi)5 ドミトリー・ビコフ:Дмитрий Быков, ジャーナリスト、詩人 イリヤ・ヴァルラモフ:Илья Варламов, 市民活動家、ブロガー(zyalt) ゲオルギー・ワシリエフ:Георгий Васильев, プロデューサー、作曲家、指揮者 エリザベス・グリンカ:Елизавета Глинка, 医師、市民活動家(ドクター・リサ) ドミトリー・イワノフ:Дмитрий Иванов, ビデオブロガー(kamikadze-d) タターニャ・ラゼレーヴァ:Татьяна Лазарева, テレビ ドミトリー・オレシキン:Дмитрий Орешкин, 科学者、政治家 レオニード・パルフェノフ:Леонид Парфенов, ジャーナリスト, TV プレゼンター セルゲイ・パルホネンコ:Сергей Пархоменко, ジャーナリスト、作家 オレガ・ロマノーヴァ:Ольга Романова, ジャーナリスト, 市民運活動家 エレナ・ティホノーヴァ:Елена Тихонова, 実業家、市民活動家(“Белая лента”)(white ribbon) リュドミラ・ウリツカヤ:Людмила Улицкая 作家 グレゴリー・チハルティシビリ:Григорий Чхартишвили (ボリス・アクーニン), 作家 ユーリ・シェヴチュク:Юрий Шевчук, 歌手、作曲家、詩人、プロデューサー ピョートル・シュクマトフ:Петр Шкуматов, "Синие ведерки"(Blud Bucket)運動コーディ ネーター 資料:有権者同盟ウェブサイト6 5 カッコ内は、ブロガーの場合はブログ名、活動家、作家は通称、ペンネーム。 筆者による私訳 6 http://www.ligaizbirateley.ru/declaration.php

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(資料 2) 同盟規約 1. 有権者同盟は国家に登録しない法人格なき社団とする。 2. 同盟が理想とするのは公正な国家である。同盟は公正な選挙、公正な法廷、公正なメディア、 公正な警察権力、そして政府と国民の誠実な指導者を求める。同盟は政治目的を有しない。同 盟はいかなる党派、大統領候補者の利益をも代表しない。 3. 同盟のシンボルは白いリボン、白い輪及びその他の白いキャラクターとする。白はロシア市 民社会のシンボルである。白は純潔、誠実の象徴であり、さらに平和と対話の公開性の象徴で ある。白はすべての色を混ぜたような政治情勢から中立であることを示している。 4. 同盟の原則的な活動は、独立のグループ間のコーディネートである。同盟が命令することは なく、一般的に同盟は人々が自らの場所を見出すことを援助するのみである。同盟はプロジェ クトやプロジェクトへの参加を提案するが、それは任意のものである。同盟のボランティアグ ループは相互にリソースを援助しあい、情報を提供する。 5. 同盟の評議会が宣言を採択し、同盟の設立発起人が同盟の当初プロジェクトの構成と活動内 容を決定・承認する。 6. 同盟参加者は、同盟の宣言に賛同し規約を遵守するロシア国民である。 7. 同盟への参加登録はインターネット上のウェブサイトで行う。参加者は自ら真性を証明する ために必要な情報を提供しなければならない。 8. 個人情報の開示を希望しないが同盟を援助する意思を持つ者については、別カテゴリーの同 盟友好者とする。同盟参加者は投票権を持つが、友好者は投票権を持たず、意見を述べる権利 のみを有する。 9. 同盟の運営に関する重要問題については参加者による投票によって決定する。投票は同盟の ウェブサイトにおいて電子的に行う。 10. 同盟は推奨するプロジェクトのリストを作成する。同盟の各プロジェクトは相互に関連する 一連の活動を含む。 11. ワーキンググループがプロジェクトを遂行し、同盟の活動は同盟のウェブサイト及び/また はソーシャルネットワークにおいて組成される。同盟のメンバーのワーキンググループへの参 加は、自ら参加を宣言することによる。 12. 特定の活動を行うワーキンググループのメンバーは参加者と見做される。活動参加者は自動 的に当該活動が含まれるプロジェクトの参加者となる。プロジェクト参加者は直接プロジェク トチームに登録する。 13. 活動/プロジェクト参加者は、少なくとも 1 人の中心的人物を決定し、必要な場合は管理者 を置く。

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(グループのイベントの)コミュニティーページを開設し、議題の提示、投票告示、工作員 の活動禁止等の措置を行う。 13.2.当該プロジェクトのコーディネーション委員会の代表者が活動のコーディネーターとな り、同盟のコーディネーション評議会メンバーとなる。 13.3. 管理者は寄付金を管理し、活動/プロジェクト遂行及び報告作成のために支出する。 14. 同盟全体に関わる問題は、同盟参加者全員の投票によって決定する。該当する問題は以下の とおり: 14.1. 同盟規約改正 14.2 同盟によるアピール(メッセージ)及びその他同盟が発する文書の採択 14.3 交渉のための特別代表の指名 14.4 コーディネーション評議会に個別プロジェクトに参加しない同盟全体の代表者が参加す ることの決定 15. ワーキンググループのコーディネーションについてはコーディネーション評議会が決定す る。 16. プロジェクトのコーディネーション委員会は: 16.1. プロジェクトの枠組み内で合意された活動のコーディネート 16.2. 使用するリソース及び範囲の決定 16.3. 適切かつ効率的なリソース管理 16.4. 同盟参加者に対するプロジェクトに関する情報伝達 16.5. プロジェクト内の活動の終結及び新たな活動開始の発表 17. 同盟のコーディネーション評議会は: 17.1. 同盟全体に関しプロジェクトのコーディネーション委員会と同様の機能を果たす。 17.2. 同盟外に対して同盟を代表する(特別代表が選出される場合を除く) 17.3. 同盟参加者の受入及び除名決定と記録 17.4. 同盟参加者全員の投票の対象とする問題の決定 18. 同盟の輪郭が明らかになり、コーディネーション評議会の役割が固まるにつれ、発起人会議 の同盟の運営上の役割は低下する。発起人会議は同盟の活動が宣言の理念に合致しているかど うかを監視する。活動と発起人会議の意見が合わない場合は、発起人は自らの意見を表明する 権利を有する。発起人はいかなる時にも会議メンバーから脱退することができる。 資料:有権者同盟ウェブサイト7 筆者による私訳 7 http://www.ligaizbirateley.ru/rules.php

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