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スペースデブリ問題の現状と世界の取り組みについて

宇宙航空研究開発機構 (ISO/SC14国際標準検討委員会 デブリ検討分科会主査) 加藤 明 1.はじめに 人類の宇宙活動の歴史が始まって約60年の 間に地球周回軌道に残された不要な人工物体 は「宇宙のごみ」(世界的 にはSpace Debrisと 呼ばれている。以下「デブリ」と呼ぶ)とし て知られ、地上から観測可能でかつ発生源が 明確なものだけで2万個近く、数センチや数 ミリの物も含めれば数千万個から1億個にも なる。 地上の「ごみ」には、ちり(塵)のように 小さなものから、粗大ごみ、投棄車両、有害 廃棄物、爆発性の危険物などいろいろなもの があるように、デブリにも微小な塵、放出さ れたボルト・ナットやベルト等の部品類、用 済みとなったロケットの機体、運用を終了し た「人工衛星」(以下「衛星」)、それらが爆 発した時に発生した多量の破片などがあり、 大きさも1㎜以下の微小なものから大型ト ラックくらいのものまで様々である。加えて、 原子炉衛星に含まれる放射性物質、爆発事故 の可能性のある燃料を搭載したままのロケッ トの残骸などの危険物もある。 ただし、デブリは地上のごみと異なって、 ①超高速(秒速7㎞以上)で周回しているの で衛星や宇宙ステーションに衝突すると危険 であること、②地上から良く見えないので衝 突を回避することも容易ではないこと、③簡 単には除去できないこと、などの問題がある。 本稿では、①デブリ問題の背景としてデブ リの分布状態と宇宙活動に対する脅威につい て、②デブリへの対策に向けての我が国及び 世界の動き、③国連における「宇宙活動の長 期持続性の検討」の進捗について、④まとめ として今後予想される変化について述べる。 2.デブリ問題の背景 デブリの分布状態と一般の衛星に対する衝 突の脅威について紹介しよう。 地球軌道を周回する軌道上の宇宙物体の情 報は、専ら米国戦略司令部(USSTRATCOM) が地上観測を行って軌道要素や発生源を特定 して世界に公開しているデータベースから知 ることができる。そこに公開されている物体 のサイズは低軌道で10㎝以上、静止軌道では 50∼100㎝と言われている。図1に各年の宇宙 物体の増加数と消滅数を示す。これは地上か ら観測できて継続的に追尾可能で、発生源が 明確な物体に限られる。増加数には新たに打 上げられた衛星、打上げられた後に軌道に残 留するロケット機体(H-ⅡAでは第二段機体)、 軌道に放出された部品類、破砕事故が発生し た場合の破片類などが含まれる。消滅数には、 大気抵抗等の自然力で落下した物体、コント ロールされて大気圏に再突入した物体、他天 体に向けて地球軌道を離脱した探査機などが 含まれる(厳密には他の衛星と結合した物体 も含まれる)。この増減から残留物の累積数 を求めるとNASAが随所で発表しているよう に、2014年10月現在で17,000個以上(軍事衛 星等非公開衛星を含めれば20,000個を超える) が登録されている。特に2007年に中国が行っ た衛星破壊実験で発生して今も残存している

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約3,000個の破片や2009年2月に米国衛星(イ リジウム)とロシアの衛星(コスモス)が衝 突して発生した約1,600個の残存破片が軌道環 境の悪化を加速している。 図2は高度40,000㎞までの軌道上物体(運用 中の衛星、ロケットの残骸、それらの破片) の分布状況を定性的に示す。高度36,000㎞付 近の静止衛星群、高度20,000㎞付近の測位衛 星群、高度2,000㎞以下の低軌道衛星群が目立 つが、定量的には高度2,000㎞以下に圧倒的に 多数の物体が集中している。 デブリのサイズ毎の衝突頻度を知るため に、図3にデブリのサイズ毎に単位面積(㎡)・ 単位時間(年間)当たりの衝突数を高度に沿っ て示した。厳密に言えばデブリのフラックス を示した図である。デブリが衝突した場合の 被害は、例えば、衛星の構体パネルを貫通す るデブリのサイズは0.2㎜程度、0.5㎜のアル ミ板を貫通するのは1.0㎜程度である。デブリ の衝突は相対速度10㎞/sec程度になることが 多いが、衝突したデブリと被災したパネルか ら液化した高エネルギの雲塊(クラウド)状 の飛散物が噴出して背後の機器を破壊した り、1㎝以上のデブリであれば衛星全体を破 砕させる場合がある。衛星の健全な運用を保 証するためには何らかの防護策が必要であ る。更に、10㎝以上の物体は衛星に衝突すれ ば完全な破砕現象を招き多量の破片を飛散さ せる。そのような事故の発生確率は、図3よ り単位㎡あたり年間10−5回となるが、軌道上 に存在する衛星やロケットの残骸は5,000個を 超えることから、その平均断面積を10㎡と仮 定すれば数年で1回の衝突が起きてもおかし くない。このうち運用中の衛星は1,000機程度 と言われており、これらが全て衝突回避機能 を持っているとしても軌道環境の悪化は避け られない状況である。 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 登録物体数 ‐1,500 ‐1,000 ‐500 0 1957 1959 1961 1963 1965 1967 1969 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 西 暦 破片類 ロケット機体 衛星 落下破片類 落下ロケット機体 地球圏外脱出 落下衛星 図1 宇宙物体の発生・消滅状況の経緯 注: 原則として発生年は発見した年である。ただし2007年の中国破壊実験、2009年の米ロ衛星衝突に関して は観測年によらず、それぞれの発生年に反映した。 (Space Track 2014年8月末)

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直径1 m 直径0.1 mm 直径1 mm (0.5 mmのアルミ 板貫通) 直径1 cm (シャトルカー ゴベイ損傷) 直径10 cm 時期:2011年 期間:1年間 軌道傾斜角度:98度 面積:1m2 衝突物:メテオロイドとデブリ 316 回/年 0.3 回/年 6x10-5回/年 10-5回/年 3x10-6回/年 直径0.2 mm(外部露出 電源ケーブル破損ハニ カムパネル貫通) 高度(km) 高度1,000kmの 衝突率@1m2 1,000 100 1 10 0.1 10-2 10-3 10-4 10-5 10-6 10-7 10-8 単位面積当たり年間衝突数 (回/m 2/ 年) 65 回/年 図3 米国モデル(DAS)による軌道高度とデブリ等衝突回数(単位面積、傾斜角度98度) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 近地点高度 (㎞) 遠地点高度(㎞) 衛星(3,481個) ロケット機体(1,643個) 破片類(10,876個) 静止軌道帯 静止衛星を打上げた ロケット群 ロシアのモルニア衛星 及び打上げロケット 低軌道衛星及びその 打上げロケット 測位衛星群 図2 軌道上物体の分布状況(遠地点高度40,000㎞未満) (Space Track 2014年8月末)

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対策 ①爆破行為の禁止 ②爆発事故の防止 (残留推薬排出) ③衝突被害防止 対策 ①部品を放出しない 対策:運用終了後、 ①静止衛星は高く移動 ②低軌道衛星・ロケットは 25年で落とす。(落下の 際には地上安全保証) (百分率は地上か ら観測出来ている 物体の数量割合) 衛星 (運用中及び廃棄後) 20% 放出部品 5% 破砕破片 64% 廃棄ロケット 11% ここに示した対策が世界のデブリ低減 Guideline・規格の基本になっている。 図4 デブリ発生原因と主な発生防止対策 (データ源泉: 数量割合はESAの2011年2月の国連COPUOS/STSCへの報告) 3.デブリ対策に向けての我が国及び世界の 動き 欧州宇宙機関(ESA)ではデブリの発生源 の内訳を図4のように分類している。図中に 注記を加えたが、デブリ問題への対策にはこ れらの発生源に対応した防止策を講ずること が効果的である。世界のデブリ低減標準/ガ イドラインはレベルに相違はあるが概ねこの ような考えで表1に示す対策を推奨している。 デブリ対策規制は、1995年にNASAが安全 標準「NSS1740.14:軌道上デブリの抑制のた めのガイドラインと評価手順」を制定したの が 最 初 で、翌 年 に は 当 時 の NASDA(現: JAXA)が「スペースデブリ発生防止標準」 を制定した。NASAの標準はサイエンティス トが起草したもので要求文書ではないことも あって実行面で疑問が待たれる部分もあっ た。JAXAは基本的技術要求に加え、これを 遵守するための対策計画の文書化や審査要求 を含む管理標準として制定した。技術的要求 内容はNASAとほぼ同等であるが検証不可能 な推奨事項は避けている。 JAXAは、この取り組みを世界共通のもの とすべく、先進国政府系宇宙機関で構成する IADC(世界機関間スペースデブリ調整委員 会)に先進国宇宙機関共通のデブリ対策規格 の整備を提案し、約3年の活動を経て2001年 に「IADCスペースデブリ低減ガイドライン」 を制定するに至った。この制定までに要した 数年の間に米国はNASAとDoDに適用する「米 国政府標準手順」を発行し、フランスCNES も同様の標準書を作成するなど先進国で自主 規制を設ける動きが生まれた。国連宇宙平和 利用委員会(UNCOPUOS)ではそれまでデブ リ対策の規制化に関しては具体的な進展が無 かったが、IADCガイドラインの制定の見通 しがたつと、これを国連でエンドースして同 種の文書を国連ガイドラインとして作成する ことで合意した。これが2007年の国連総会で 「デブリ低減ガイドライン」として決議され た。これにはIADCガイドラインの定量的要 求は極力排除した上位の概念的部分が提言さ れており、詳細についてはIADCガイドライ ンを参考文書として呼び出している。

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ISO(世界標準化機構)においても、国境 を越えた国際企業を含む産業界にこの流れを 浸透させるため、国連ガイドラインの制定の 前から独自のデブリ対策規格の制定を目論ん でいたが、国連ガイドラインの制定で勢いを 得てデブリ専門の分科会を設け、ISO-24113 「デブリ低減要求」を核として制定し、現在 も種々のデブリ対策規格を制定中である。 時間的にはこれと並行して欧州では「デブ リ低減に向けた欧州行動規範」を制定した。 これはIADCガイドラインより更に厳しく、各 要求に定量的要求を課している。固体モータ のスラグの直径(1㎜以下)、爆発事故発生確 率(0.001以下)、廃棄処置の成功確率(0.9以上) 等である。 しかしESAはこの欧州行動規範には署名し たものの、その実現性に疑問があるとの判断 で、より現実的な要求にとどめた独自の指針 を発行している。欧州技術者の言を借りれば、 もはや当該欧州行動規範は死文化していると のことである。現在、欧州全体としてはECSS (欧州宇宙標準協会)がISO-24113を呼び出す 形で制定した規格を適用している。 NASA は NPR 8715.6A(2008 年 A 改 訂)と STD-8719.14(2011年A改訂)を制定し、要求 内容を厳しく見直し、その適用方法について 指針を示した。固体モータスラグの件以外は 欧州行動規範と同レベルの要求である。 フ ラ ン ス は 2008年6月3日「宇宙法Sapce Act」を制定した。この下位文書として「技 術規則Technical Regulation」が制定されてお り品質保証面、安全面と並べてデブリ面の規 制についても言及されている。 以上を含めた世界のデブリ関連の規制化の 動向を図5に示す。 表1 主なデブリ対策 大区分 中区分 要求内容 部 品 放 出 部品類放出抑制 分離後周回軌道に残る恐れのある締結具等は重大な問題が無い限り放出しない。(複数衛星打上げ時の支持構造体は免責) 固体モータ・火工品物 固形燃焼生成物の放出を避けるように設計・運用する。 軌 道 上 破 砕 破壊行為禁止 軌道上で衛星・ロケットを破壊しない。 運用中の事故 運用中の破砕発生事故を防止する。異常検知モニタを設けて、検知した時には速やかな対策を講ずる。 残留推薬放出等 (残留推進薬の排出、バッテリの充電回路の遮断、高圧機器の排気ある衛星・ロケットの残留エネルギを排除する。 いは強度確保、ホイールなど高速回転機構の停止保証) 衝 突 大型物体衝突回避 他の宇宙物体と衝突する可能性を検知し、衝突を回避する。 ロケット打上げ時には有人システムと衝突しないよう時刻を調整する。 小型物体衝突対策 デブリと衝突して宇宙機の廃棄処置が不可能になる被害の発生率を評価する。 運 用 終 了 後 の 処 置 静 止 リオービット距離 静止高度の上下200㎞以内の保護軌道域を保全するため、運用を終了する衛星等は、高度を上げて退避させる。 低 中 高 度 軌 道 軌道滞在期間短縮 高度2,000㎞以下の軌道域を保全するため、運用終了後は軌道寿命の短 縮、自然落下、高度2,000㎞以上の高度への移動、再突入、回収等の処 分により有用な軌道との干渉を避ける。 墓場軌道への移動 軌道上回収 再突入時地上被害 落下危険度(傷害予測数)を打上げ前に予測し、技術の現状を踏まえつつ最大限の努力を払う。

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4.国連における宇宙活動の長期持続性の検 討について 純粋にデブリ問題に焦点を当てた国際的活 動は以上でほぼ終了し、今やデブリ問題は安 全保障の問題とリンクして議論されている。 衝突被害の防止策を中心として安全保障の強 化に結びつける方向が、欧米を中心とした「宇 宙活動に関する国際行動規範」や、ロシアを中 心とした「透明性・信頼性醸成手段の構築」の議 論の中で行われている。これらは軍縮会議の 流れで行われているものである。これと並行 して国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS) では「宇宙活動の長期持続性の検討」が行わ れている。COPUOSは宇宙の平和利用の議論 を行うところなので安全保障の議論を表だっ て行うことはできない。そこで軌道環境の保 護の観点で衝突被害を防止するための方策を 強く打ち出し、安全保障の議論とリンクさせ ようとの意思が見られる。その検討の体制を 図6に示す。全体を調整する「長期的持続性 検討WG(略称)」の下に「地上の持続的発展」、 「デブリ、宇宙運用、宇宙状況監視ツール」、「宇 宙天気」、「規制体制、新規参入者対応」を扱 う4つの専門家会合が設けられている。当初 の計画では2014年春にベスト・プラクティス・ ガイドラインと報告書が完成する予定であっ たが、作業遅れや新たな問題提起などのため に2年遅れが決定されている。 この「宇宙活動の長期持続性の検討」の背 景は幾つかあろうが、中国の破壊実験が2007 年1月11日という特別な時期に、すなわち国 連デブリ低減ガイドラインがCOPUOS科学技 術小委員会にて最終調整される直前に実施さ れたことでフランスなどが危機感を強めたこ とが一つの契機となったと言われている。当 該ガイドラインは各国の自主管理による性善 説を前提とするものであったが、それでは限 界があることが明確になったと言える。当該 NASA 標準 米国政府 標準 NASDA 標準 仏CNES 標準 露宇宙庁 標準 先進国 デブリ調 整会議 (IADC)ガ イドライン 同解説 書 対先進国標準作 成プロジェクト ESA ハンドブック 国連 COPUOS 宇宙活動 の長期 持続性の 検討 ISO デブリ 対策規格 ISO‐24113 デブリ 低減要求 先進国 政府系 宇宙機関 の合意 世界宇宙 商業活動 への啓蒙 国連 宇宙空 間平和 利用 委員会 ガイド ライン 各国政府 の合意 1996年 2002年 2007年 将来 日米標準化→ 各国への普及→ 先進国政府機関合意→ 国連への発展→ 世界産業界への徹底(ISO)→ 法制化 → 厳しい規格による差別化、宇宙産業の寡占化への警戒 → 安全保障とのリンク 主旨の徹底 米国 日本 フランス ロシア 欧州全域 宇宙活 動に関 する国 際行動 規範 仏国 宇宙活 動法 環境 悪化 ESA理事長室 デブリ低減要求

世界のデブリ規制の流れ

大型デブリ 5,000個 大型デブリ 10,000個 更なる増加 ECSS‐U‐AS‐10C 「宇宙持続性」 (=ISO‐24113) 技術 規則 2011年 1995年 2004年 2008年 デブリ低減 の欧州行動 規範 1999年 2000年 図5 世界のデブリ関連規格化の動向

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ガイドラインを各国自主管理に任せずに、具 体的行動指針を示し、その遵守を徹底させる 必要が生じたのであろう。 最新の進捗状況報告は国連のウェブサイト で公開されている2014年6月のCOPUOS本会 議にWG議長が提出した報告書※である。これ をベースに紹介する。そこには33件のガイド ラインが列挙されている。これらはWG議長 が専門家会合の仕切りを外してシャッフルし て独自の見解で再整理した順番になってい る。それぞれの専門家会合の報告書は議長や 参加した専門家の見識で纏められているの で、様々なレベルのガイドラインが混在して いる。幾つかは国家に対する法的規制体系の 整備を推奨するものであり、その整備に際し ての注意事項も同じレベルで記載されてい る。途上国支援とその際の配慮事項について も同レベルである。本来中心となるべき設計・ 運用プロセス上の推奨事項(ベストプラク ティスと呼ばれている)は、衝突回避、宇宙 天気(放射線など)、再突入注意報に集中し ている。既に文書化されている国際法や勧告 については触れないことになっていたが、 ITU(国際電気通信連合)勧告や国連の打上 げ物体登録条約等にも言及されている。ガイ ドラインの詳細は国連のサイトを見ていただ くこととし、ここでは筆者の見解で図7のよ うに整理したので参考にされたい。地上の持 続的発展や国際協力などに多くの詳細なガイ ドライン案が提示されているのは、参加国の 多くが、先進国と同等の便益を享受したり、 そこから支援を受けて自国の宇宙活動を活発 にしたいという意思の表れであろう。 この検討の成果が国連の決議となれば、各 国の宇宙活動に対する法的管理体系がより強 く求められることになり、国際協力としての 途上国援助の技術移転要請が活発に行われる ようになるかもしれない(知的財産権の保護、 不拡散減速の維持などの弊害は起きないよう に記述が配慮されている)。また、衝突回避 等を目的とした宇宙物体情報等の共有・配布 が求められる。衝突防止がクローズアップさ れれば衝突事故などで軌道環境を悪化させた 場合の責任がより大きく意識されることにな ろう(国際法上の罰則などはない)。

※ “Proposal by the Chair of the Working Group on the Long-term Sustainability of Outer Space Activities for the consolidation of the set of draft guidelines on the long-term sustainability of outer space activities” A/ AC.105/2014/CRP.5, Committee on the Peaceful Uses of Outer Space , Fifty-seventh session, Vienna, 11-20 June 2014(http://www.oosa.unvienna.org/pdf/limited/l/ AC105_2014_CRP05E.pdf) 図6 国連における宇宙活動の長期持続性の検討の体制 国連/宇宙空間平和利用委員会 (UN/COPUOS) 科学技術小委員会(STSC) 長期的持続性検討WG 地上の持続的発展の ための宇宙利用 デブリ/宇宙運用/ 宇宙状況監視ツール 宇宙天気予報 規制体制/ 新規参入者 法律小委員(LSC)

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5.まとめ 前項で触れたように、長期持続性の検討結 果で大きく影響を受けるのは国レベルの活動 である。宇宙活動の法制化、対同盟国及び途 上国との外交面、情報管理などで対応が求め られる。宇宙活動の実行組織としても、宇宙 物体登録条約等国際約束への遵守や、衝突回 避や再突入安全等技術的に完全には対応でき にくい分野の技術力の向上、軌道情報の開示 などに配慮が必要になろう。 この長期的持続性の議論に加えて「宇宙活 動に関する国際行動規範」及び「透明性・信 頼性醸成手段の構築」の決議が加われば、宇 宙戦略、宇宙計画の開示、衛星のミッション 目的の開示、打上げ施設・追跡施設などの公 開、環境に負の影響を与える事態を招いた場 合はその説明あるいは影響を受ける国からの 求めに応じて協議の場を持つ必要が出てく る。 いずれにせよ、国際紛争を透明性と信頼性 の確保で回避しようという世界の潮流には、 大学や産業界を含めて、国全体として協調が 求められる。一方では技術情報開示に伴う知 的財産権や機密の保持など守りの体制も必要 になる。 図7 国連における宇宙活動の長期持続性の検討の暫定結果の整理図(筆者私見) 国際協力・協調 基本理念 (1) 国際協力推進 各国の努力 途上国支援 (1) 能力開発、データ提供 (2) 支援の際の配慮事項 社会への周知・啓蒙 (1) 宇宙活動便益の周知 (2) 国際的既存規格等の採用 推奨される最善の手法 宇宙物体登録と調整窓口 (1) 宇宙物体登録 (2) 衝突回避に向けた調整窓口指名 宇宙物体観測 (1) 宇宙物体観測 (2) データ共有 リスク評価 (1) 再突入リスク低減 (2) 接近解析による衝突回避 宇宙天気 (1) モデル整備 (2) データ取得 既存規定順守 (1) 電波干渉(ITU勧告等) (2) 宇宙物体登録 (3) デブリ低減ガイドライン (4) ハーグ行動規範 各国規制体系の整備 (1) 長期持続性に配慮した各国規制体系の整備 (2) 各国規制体系の整備に際しての注意事項 (3) 規制体系整備の際の関係組織の調整 (4) 経験・知識の共有 (5) 研究の促進

参照

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