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内閣支持率と株価収益率の因果関係分析

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Academic year: 2021

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2016617日 統計数理研究所 オープンハウス

内閣支持率と株価収益率の因果関係分析

川崎 能典 モデリング研究系 教授

概要

:

内閣支持率と株価の因果関係は,ジャーナリズムから学術まで,さ まざまなレベルで論じられることの多い論題である.本報告の目的は,

定常時系列解析における標準的な因果分析法のひとつである,グレンジ ャーの因果性検定の枠組みに乗せて,議論の出発点程度の認識を確立し ておくことにある.内閣支持率は

1978

3

月から

2015

11

月までの月次 データを取り,それに合わせる形で株価収益率

(

日経平均月次終値ベー

)

を使用する.グレンジャーの因果性検定の枠組みに基づけば,内閣 支持率から株価収益率への因果性は見られない.一方,株価収益率から 内閣支持率への因果性は統計的には有意に検出されるが,支持率の変動 の説明という観点からはごく限られた影響にとどまると言うべきである.

また,内閣発足直後は概して支持率が高いという「ハネムーン効果」を 考慮しても結論は変わらない.

1.

データの前処理

内閣支持率の欠測値は,

2

階の確率差分方程式で補間,一本の連続し た時系列を作成

補間方法に関しては他の方法を検討する余地あり

日経平均株価は定常性の検定をパスしないので,対数変換後差分を取 り,収益率に変換

定常性とは,時系列に関する時間方向でのある種の一様性.過去の 自分自身との相関関係が,どこで測るかに依存しないこと

定常性が確保されないと因果性分析ができない

ここではディッキー・フラー検定を利用

内閣支持率はディッキー・フラー検定をパスするので,水準が定常と 見なしてよい

Caninet_Approval_Rate

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

25 50 75

Caninet_Approval_Rate

Nikkei_Stock_Return

1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

-20 -10 0 10 20

Nikkei_Stock_Return

2.

グレンジャーの因果性検定

時系列

y

tを予測するのに,他の時系列

x

tの過去の値が役立つとき,時 系列

x

tから

y

tに,「グレンジャーの意味で因果性がある」と言う

予測性を議論しているに過ぎず,誤解を招くという批判もある

時系列

y

tを,自己ラグ

y

t−1

, y

t−2

, . . .

とクロスラグ

x

t−1

, x

t−2

, . . .

に線 形回帰し,

x

t−1

, x

t−2

, . . .

の係数がゼロ」

(

つまり不要

)

という帰無仮説 の検定を行う

仮説が棄却されれば,時系列

x

tから

y

tに「グレンジャーの意味で因果 性がある」と言う

2.1

内閣支持率から株価収益率へ

さまざまにラグ構造を取っても,因果性は検出されない

内閣支持率が上がったからといって,株価が上がるわけではない

ラグ

11

(

選択の理由は次の節

)

まで取った多変量自己回帰モデルに基 づいてグレンジャーの因果性検定を行うと,検定統計量の値は

F = 0.63

,その

P

値は

0.81

で,「因果性がない」という帰無仮説は棄却され ない

2.2

株価収益率から内閣支持率へ

内閣支持率の自己ラグは

10

(y

t−10

)

が有意で,クロスラグ

(

つまり株 価収益率の過去変数

)

11

(x

t−11

)

が有意なので,ラグ

11

期までの多 変量自己回帰モデルを推定

検定統計量は

F = 2.14,

その

P

値は

0.017,

すなわち

5%

有意水準で

「株価収益率は内閣支持率に影響を与えない」という帰無仮説は棄却 される

2.3

因果性

(

予測性

)

の大きさ

内閣支持率

y

tは,自身の過去の履歴である

y

t−1

y

t−10

(

と定数項

)

あれば,その変動の

73%

は説明がつく

これに

2

か月前の株価収益率

(x

t−2

)

をはじめ,

x

t−6

, x

t−9

, x

t−11を加え ると,少しだけ説明能力は向上して

74%

の変動を説明できる

「株価が上がれば,内閣支持率は上昇する」という主張は,統計的に は支持されるが,その影響度はかなり小さいと考えるべきである

2.4

ハネムーン効果

内閣発足当初の「ご祝儀」的期待感の高まりをダミー時系列で与える

ハネムーン効果は高度に有意

(t

10.3)

.因果性検定の結果は変わら ず,変動の説明割合は

78%

に上昇

このとき内閣支持率のラグ変数は

1

ヶ月前

(y

t−1

)

だけ,株価収益率の ラグ変数は

11

ヶ月前

(x

t−11

)

のみ

5%

有意.情報量規準

AIC

の値も最小

(

つまり最良モデル

)

3.

インパルス応答

株価上昇の経時的効果をインパルス応答で観察できる.下のグラフの 横軸は月単位で

24

ヶ月までを,縦軸は内閣支持率に対する効果

(% )

示す.ここでの分析はハネムーン効果を含む.

ある時点で株価が

5.8% (

つまり標準偏差にして

1

単位

)

上昇すると,

7

月後に支持率を

1.3%

ポイントから

2.5%

ポイント

(

平均的には

1.9%

イント

)

押し上げる効果があると言える.

12

ヶ月後には信頼区間は

0

をはさみ,効果は消失すると考えられる.

Minus_1_Sigma Plus_1_Sigma

Impulse_Response

0 5 10 15 20 25

-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

2.5 Minus_1_Sigma

Plus_1_Sigma

Impulse_Response

参考資料 読売新聞

2015

12

21

日朝刊

9

面「見る」欄,『内閣支持率の

「通説」検証』

(

同社世論調査部執筆構成

)

参照

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