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序 文
宮 城 辰 男
南島文化研究所は、これまで「地域研究」の一環として、離島の総合的調査を実施してき た。今回の「伊平屋・伊是名調査報告書」は、その研究シリーズのM5にあたる。
この報告書は、1982年から1983年にまたがって、3回にわたって実施された総合調査のまと めである。総合的な調査といっても、統一テーマに基づく共同研究ではない。個々の調査員が それぞれのテーマを設定し、独自の方法で調査し、その結果をまとめたものである。したがっ て、報告書の内容も多岐にわたっていて、必ずしも統一のとれたものとはなっていない。だが、
島の人びとの過去、現在の生活について、その暗闇部分の一部に光をあて、事実を明らかにし
たことは評価されてよいであろう。
この報告書から読承とることはできないが、われわれは現地調査を通して多くのパイ・プロ ダクトがあったことをここに記しておかなければならない。たとえば、昼食時間とか夕食後に 調査員の間でかわされた自由な討議は、学際間の共通の問題を各分野から追求するよい機会で あった。その時に提起されたユニークな着想とか、アイディアは、今後の学際的な調査研究に
生かされることが期待される。
さて、最近やっと「地方の時代」が日本にも定着しつつある。それだけに、「地域研究」の 重要性が一層強調されなければならないであろう。地域研究には、個々の分野を個別的にすす めていくという方法もあろうが、南島文化研究所は、これまで一つの島または集落をあらゆる 面から総合的に調査するという方法をとってきた。それは、「地域」を人間の生活している場 所として、トータルにとらえようという視点である。人間の生活は部分としては存在しない。
トータルとして存在するのである。人間が存在するところどこでも信仰、祭り、歌、風俗、習 慣、物語、ロマン等がある。人間のさまざまな生きざまがある。
しかも、各地域には、山村であろうと、農村であろうと、離島であろうと、その地域それぞ れの顔があり、個性がある。島は実に多様なのである。「地域」の研究は、ある意味で、そこ に住んでいる人びとが、その「地域空間」のなかで、他とかかわりながら、どのような生活を してきたか、またしているか、つまり、広い意味における生活文化がどう変化してきたかを探 求する分野である、ということもできよう。
ともあれ、離島はいま大きく変貌しつつある。復帰後の10年をとってみても、その変化は著 しい。そのような変化の過程にあって、離島は現在短期的には解決の困難な多くの問題をかか えている。とくに、農業後継者の問題、老人問題、結婚問題などは当面その解決の緒さえゑい
だしにくい。
本報告書は、伊平屋・伊是名がかかえているこれらすべての問題を網羅したわけではない。
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その一部分に光を当てたにすぎない。そういう意味では総合調査としては不十分だといえよ う。だが、少なくとも前に述べた「地域研究」への視点は全体をとうして貫かれていることに 留意されたい。なお、今回積承残した部分も多いが、これらの問題については、今後の調査研 究にゆだねたい。
最後に本調査の実施にあたって、伊平屋、伊是名の多くの方々から心温まる御協力をいただ いた。とくに、シンポジウム「伊平屋村の地域づくりを考える」の開催にあたっては、同村社 会教育主事西銘真助氏に多大な御骨折りをいただいた。記して感謝の意を表したい。: