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ガラスがなければ世界は変わらなかった

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Academic year: 2021

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ユニークな光学特性を示すガラス 

巻頭言

ガラスがなければ世界は変わらなかった

野 上 正 行

(豊田理化学研究所)

 「ガラスがなければ世界は変わらなかった」と書けば我田引水と言われもしようが,レン ズの発明で地動説が確かなものになり,光ファイバーの実用化で通信革命が起こり文化も 大きく変貌したように,ガラスが世界を変えることに貢献してきたのは確かであろう.ガ ラスの鏡を作ることで自分の顔を見つめたり,巨大な望遠鏡にすることで宇宙のとてつも ない過去をも解き明かしてきた.童話の世界鏡よ鏡,鏡さま不思議なものである.

 しかし,ガラスの歴史は土器や鉄器など他の無機材料に比べてはるかに新しく,ガラス 作りに必要な高温の窯を作れるようになった

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世紀以降のことではなかろうか.ガラスの 原料である砂(石英など)を熔かした後,冷やしても水晶や石英の塊にならず,透明でさま ざまな形に成形できることに気づいたことが大きい.それからの進展はめざましく,生 活・工業用製品にいたるまで,ガラスほど重要な物質も少ない.一昔前までは大学の工学 部にガラス加工部門があり,化学実験のはじめにガラス細工実習があったように,科学の 発展にも多大な貢献をしてきた.

 ガラスの最大の特徴は,固体にして液体であるために,さまざまな形状を有する透明 性の高いものができることである.レンズはもちろん,光ファイバー用ガラスなど,すべ て透明性の追求にあった.また,ガラスにすると組成の束縛から解放されることから,さ まざまな物質をイオンやナノ結晶の状態で入れ込むことができる.例えば,遷移金属イオ ンや金ナノ粒子を入れたガラスは独特の色彩を呈し装飾品として好まれ,その技術は大事 にされてきた.時を経て今,その光学特性が並なものでないことがわかるや,レーザーや 光スイッチなどに利用され,ナノテク材料として再認識されるようになってきた.

 本特集号はそのような背景のもとに,新しい光学特性を示すガラスの研究動向を解説し たものである.「シリカを主成分にして液体を冷却固化したガラス」という既存の概念か らはみ出たガラスの新しい分野を切り開こうとするものであり,ガラスを作る側からの提 案である.読者には,こんなガラスがあるのかと思われたり,すぐにでも利用できそうだ というものもあるかもしれない.ネットワーク社会の進展,エネルギー循環社会への転換 が急がれる今,「光の利用」はキーワードになるであろうし,光を操るガラスへも,大きな 期待が寄せられている.本特集が契機となり,研究シーズとニーズのぶつかり合いが起こ ることを期待したい.

参照

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