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2 はじめに僕が競馬を始めてから あっと言う間に30 年の歳月が過ぎようとしています 四半世紀以上 文化であり スポーツであり 知的ゲームでもある競馬と共に過ごしてきました 不思議なもので 競馬のレースを思い出そうとすると その当時の状況や心象風景も同時に蘇ってきます 競馬が人生の比喩なのではない

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Academic year: 2021

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2 はじめに 僕が競馬を始めてから、あっと言う間に 30年の歳月が過ぎようとしています。四半世紀以上、文 化 で あ り、 ス ポ ー ツ で あ り、 知 的 ゲ ー ム で も あ る 競 馬 と 共 に 過 ご し て き ま し た。 不 思 議 な も の で、 競 馬 の レ ー ス を 思 い 出 そ う と す る と、 そ の 当 時 の 状 況 や 心 象 風 景 も 同 時 に 蘇 っ て き ま す。 「 競 馬 が 人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ」と寺山修司氏が述べたその意味が、少しずつ 分かるようになってきました。僕の人生はまさに競馬の中にあるということです。 はじめましての方もいらっしゃると思いますので、簡単に自己紹介をしておくと、僕が競馬を始 めたのはオグリキャップが有馬記念でラストランを飾った1990年になります。 その年の天皇賞 ・ 秋に初めて東京競馬場に足を運び、空の大きさやサラブレッドの美しさ、レースの興奮と競馬ファ ンの熱狂に心を奪われました。 有馬記念は後楽園ウインズで観戦し、 オグリキャップが第4コーナー を抜群の手応えで回ってきた瞬間の地響きがするような大歓声に、身体の震えが止まらなかったこ とを、昨日のことのように覚えています。 学生時代は競馬の研究にいそしみました。競馬の本を読むことに没頭しすぎて、気がつくと授業 が終わって大講堂にひとりポツンと残されていたこともありました。大学生活の6年間で、世の中

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3 はじめに さを体感しました。 た。週末の中央競馬だけではなく、地方競馬にも通い詰め、理論と実践の間を往復し、競馬の厳し がないことが不思議で、将来は大学で競馬について教えたいという青臭い夢を抱いたりしていまし にあるほとんど全ての競馬に関する書物には目を通したのではないでしょうか。競馬学という学問 初恋の馬はヒシアマゾンです。黒鹿毛の美しくて雄大な馬体にほれ込み、ヒシアマゾンが勝った ときには歓喜し、敗れたときには文字通り絶句しました。絶対に勝つと信じていた4歳時の有馬記 念でヒシアマゾンがまさかの敗北を喫してしまい、その後、どのようにして中山競馬場から自宅ま で帰ったのか記憶がありません。1頭の馬を追いかけ、馬券を買い、喜怒哀楽を共にすることで学 ぶことは多くありますよね。 これから僕が語ることは、およそ6年間にわたって週刊「 G a l l o p 」にて連載させてもらっ ている「超・馬券のヒント」を下地とし、大幅に編集を加えて、ひとつの物語として完成させたも のです。かなりのボリュームになってしまったのは、それだけ馬券を通して見た競馬の世界は奥が 深く、無限の広がりを持つということです。ガルシア・マルケスの「百年の孤独」のように、たく さんのエピソードや人物が登場し、話があちらこちらに飛び、大きく脱線してまた戻ってきての繰

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4 り返しになっているかもしれませんが、物語とはそういうものです。馬券を通して競馬を語りたい と思っていますし、競馬の本質を知ることは馬券にも生きてくるはずです。 ずいぶん偉そうな物言いのサブタイトルで恐縮していますが、まさか勘違いする方はいらっしゃ らないと思います。僕が皆さんに当たり馬券を直接配るなんて言うボランティア精神に溢れた話で はなく、この本を読んでもらうことを通して、皆さんに当たり馬券を手にしてもらいたいという願 いです。 かくいう僕だって、当たり馬券ばかりを手にしているわけではありません。馬券が当たりすぎて 困る日もあれば、外れすぎて泣きそうになる日もあります(笑) 。当たり馬券は氷山の一角であり、 水面下には数えきれないハズレ馬券が存在し、失敗から生まれた知恵に支えられています。本命に していた馬があっさりと負けてしまったり、応援していた馬が勝利を目前にしてハナ差で差されて しまったりと、身銭を切って買った馬券が外れてしまったところから多くを学びました。 なぜこの馬は負けてしまったのだろう?   と考え続けた末、ほぼ全ての敗北には理由があること が分かりました。たとえハナ差で負けてしまった馬にも、ハナ差で負けてしまった理由が存在する

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5 はじめに 現代の競馬は“枠順”のゲームである 世界に対する造詣の深さや、サラブレッドに対する愛情にもつながってくると僕は思います。 のです。その理由が分かるかどうか、それこそが馬券を知るということに他ならず、そして競馬の さっそく本題に入っていきましょう。 「馬券を買うとき、最も重視する要素は?」 そ う 聞 か れ た ら、 「 枠 順 」 と 僕 は 迷 わ ず 答 え ま す。 馬 の 体 調 や 仕 上 が り、 調 教 タ イ ム、 馬 場、 血 統、騎手、展開など、挙げればきりがないほどの要素によって競馬は構成されていますが、その中 でも枠順ほど勝ち負け、つまりレースの結果を決定的に左右してしまう要素はありません。古今東 西、競馬が始まってからいつもそうであったわけではなく、現代の日本競馬に限定すると、何より も枠順を重視して予想するという結論に至るのです。 たとえば2017年のオークスは典型的なレースでした。2番枠を引いたソウルスターリングが ゲートから出たなりで第1コーナーから最終コーナーまで走り、最後の直線に向くと脚を伸ばして

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6 着差以上の完勝。2着には1番枠を生かしたモズカッチャンが入りました。この2頭とは対照的に、 2番人気に推されたアドマイヤミヤビは大外枠からの発走となり、道中は外々を回され、最後は鋭 い脚を使って差して来たが届かず3着に敗れてしまったのです。僕はこのレースを観て、正直につ まらないと思ってしまいました。 そ の 原 因 は、 ス タ ー ト が 切 ら れ る 前 か ら、 す で に 大 き な ハ ン デ が 生 ま れ て い る こ と に あ り ま す。 2017年のオークスで言えば、内枠を引いた馬と外枠を引いた馬とでは、少なくとも1秒(6馬 身)ほどの差があったはずです。ゲートから同時にスタートしているように見えて実は、ソウルス ターリングよりもアドマイヤミヤビは1秒遅れ、または6馬身後ろから走り出しているぐらいの大 きな不利なのです。ソウルスターリングの方が他馬よりも一枚上の能力を有していたにもかかわら ず、6馬身も先からスタートを切れば、スポーツとしてつまらないレースにならないわけがありま せん。 ソウルスターリングや2017年のオークスにケチをつけるつもりは毛頭ありません。むしろソ ウルスターリングのような強い馬が内枠のメリットを得て、他馬が外枠の不利に苦しめられるのを 横目に、 労せず勝利してしまったことが面白みに欠けると僕は言いたいのです。最近で言うと、 アー

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7 はじめに かわらず、枠順が決まった時点で、これだけバイアスが掛かってしまうと興ざめでしょう。 うではないでしょうか。せっかく関係者たちが大舞台に向けて一生懸命に馬を仕上げてきたにもか 馬たちが最初から重いハンデを強いられるなんて、まるで富める者がより富む現代の格差社会のよ した2020年の日本ダービーもそうでしたね。強い馬がより楽に競馬を進め、それに対抗すべき モンドアイが勝った2018年のジャパンカップや2019年の天皇賞・秋、コントレイルが勝利 僕が競馬を始めた1990年代と比べ、日本の競馬は少しずつですが大きく変化をしてきました。 もちろん良くなったこともたくさんあれば、もっとこうあってもらいたいと感じるようになったこ ともあります。馬券を通して感じてきたその変化の過程を知ることは、未来の競馬において馬券を 買うヒントになるはずです。かなり大ざっぱに問題提起をしてみましたが、なぜ現代の日本競馬が、 これほどまでに枠順が結果を大きく左右する、枠順のゲームになってしまったのかを説明させてく ださい。

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はじめに … ……… 2 現代の競馬は“枠順”のゲームである … ……… 5 1章 ポジション … ……… 11 勝つために走るべきポジション、略して勝ちポジ … 12 勝つための基本ポジション=内の2、 3番手 … ……… 14 競馬における隠れた真実 … ……… 15 日本競馬のスローペース化 … ……… 19 超高速馬場化の弊害 … ……… 23 走るポジションは枠順によってほぼ規定される … … 25 勝ちポジが外に移動するケース … ……… 28 ダート競馬は芝のレースよりも勝ちポジが限定される …… 33 ダート初戦の馬やダートの不良馬場はキックバックを受けないポジション … … 35 菊花賞を後方まくり型の馬が勝つ理由 … ……… 39 前走で勝ちポジを走れずに敗れてしまった馬の巻き返しを狙え …… 41 2章 騎手 … ……… 45 武豊騎手から地方出身の騎手、そして外国人ジョッキーへ … … 46 地方出身の騎手、若手 、外国人ジョッキーの台頭 … … 48 外国人騎手だからできる定石破り … ……… 52 馬3騎手7の時代 … ……… 56 ルメール騎手の難しい馬を御す技術 … ……… 60 騎手の上手さは連対率を見る … ……… 64 J R A 騎手リーディングの推移 ……… 66 常に真剣勝負をする川田将雅騎手 … ……… 69 どの騎手から乗り替わったか … ……… 73 3章 馬場、コース … ……… 77 馬場とコースで勝ち馬は決まる … ……… 78 洋芝では欧州型の血統の馬を狙う … ……… 80 過渡期競馬の攻略法 … ……… 84 上がりが極端に掛かる馬場では逃げ馬を狙え … …… 86 トラックバイアス … ……… 88 中山競馬場と東京競馬場は全く違う競馬場 … ……… 91 「 小 回 り 」、 「 ス タ ー ト し て か ら 第 1 コ ー ナ ー ま で の 距 離 が 短 い 」、 「 4 つ の コ ー ナ ー を 回る」の3点が合わさることによって、距離以上にスタミナを問われる … … 97 特殊なコースにおいては、同じ舞台での好走歴を評価する …… 99 4章 調教 … ……… 103 厩舎の特徴を知る … ……… 104 厩舎の特徴=偏り … ……… 107 同厩舎の先輩の背中を見て育つことも … ……… 110 厳寒期における坂路調教 … ……… 113 調教で動かないのはステイヤーの証 … ……… 116 5章 ステイヤー、短距離馬 … …… 121 ステイヤーのピークは長い … ……… 122 ステイヤーは叩き2、 3戦目を狙え ……… 123 ステイヤーの馬体 … ……… 126 短距離馬はピークが短い … ……… 128 距離適性は変化する … ……… 132

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6章 リズム … ……… 137 走るリズム … ……… 138 馬具装着などでリズムが変わる … ……… 141 「馬優先主義」的、新馬戦の見かた ……… 144 7章 逃げ馬 … ……… 151 本番前に逃げてはいけない … ……… 152 逃げ馬が勝つ条件 … ……… 154 逃げ馬は最強である … ……… 158 強い逃げ馬がいるとき、2着以下は大穴を狙え … … 162 出遅れた馬の幸運 … ……… 165 距離短縮馬には伸び代がある … ……… 168 8章 バイオリズム … ……… 173 体調のバイオリズム … ……… 174 精神的に燃え尽きた馬 … ……… 176 ダービー馬が秋初戦は好発進するも2戦目が続かない理由 …… 179 生き残った者が勝者になれる … ……… 181 9章 ダメージ … ……… 187 長距離レースを使うことのメリットとデメリット … 188 レコード決着の信ぴょう性 … ……… 193 派手な追い込み勝ち後は凡走する … ……… 198 休養への入り方が休み明けの成績を決める … ……… 201 トライアルレースの見方 … ……… 203 3強対決はモンティ・ホール問題で … ……… 207 ローテーションには相性がある … ……… 212 10章 成長曲線 … ……… 217 抽選をクリアした馬を狙え … ……… 218 早い時期の重賞は早生まれを狙え … ……… 220 キャリア2、 3戦目の人気馬が飛ぶ理由 ……… 225 11章 無敗 … ……… 227 無敗の馬の弱点は弱点を見せていないこと … ……… 228 連勝が止まった馬の次走は凡走 … ……… 231 名馬は2度続けて負けない … ……… 234 12章 レースレベル … ……… 237 前半と後半を分けるだけでレースレベルが分かる … 238 鍵となるレースを見つける … ……… 241 3歳馬が強い背景 … ……… 243 13章 馬券の買い方 … ……… 247 大数の法則 … ……… 248 分散(ばらつき) ……… 251 べき乗則( p o w e r l a w ) ……… 254 大穴を当てたければバカになれ … ……… 257 競馬は無限なり、個を立てよ … ……… 261 あとがき … ……… 266 勝ちポジまとめ&ルール … ……… 268 勝ちポジシート … ……… 270

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※2001年より前は、わが国の競馬は馬の年齢表記を「数え年」で数えていましたが、 本書では2001年以前の馬も、現在使用している「満年齢」に統一しました。

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ポジション

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12 勝つために走るべきポジション、略して勝ちポジ 話は2014年の有馬記念にさかのぼります。この年の有馬記念はドラフト制という形で枠順抽 選の公開が行われました。ヤンキースの田中将大投手がジェンティルドンナを最初に引き、ジェン ティルドンナ陣営は2枠4番を選択しました。このシステムは画期的であったにもかかわらず、1 度きりで終焉を迎えることになったのは、公正競馬を謳う日本中央競馬会にとって不都合な真実が 表面化してしまったからではないでしょうか。なんて書くと誤解を招くかもしれませんが、つまり、 枠 順 の 重 要 性 を 誰 よ り も 関 係 者 は 熟 知 し て お り、 そ し て ま さ に そ の 通 り の 結 果 に 終 わ っ た こ と で、 枠順こそが現代の競馬のレースにおける勝ち負けを決してしまうことを、競馬ファンに広く知らし めてしまったのです。 なぜジェンティルドンナ陣営は2枠4番を選んだかと言うと、勝つための基本ポジションである 内 の 2、 3 番 手 を 走 る こ と が で き る か ら で す。 勝 つ た め に 走 る ポ ジ シ ョ ン、 略 し て 勝 ち ポ ジ の 概 念 を説明するためには、動物学の観点にさかのぼらなければいけません。少し長くなりますが、競馬 というスポーツを理解するためには必要なので、ぜひ引用させてください。 ウマ、シカ、アンテロープを問わず、逃走中の有蹄類にとって一番安全な場所は、一団を形

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13 第 1 章 ポジション 成して逃げている群れの中央部である。捕食者の手に掛かるのは群れの落伍者であるときには、 先頭を走る個体がやられることもある。先頭を行く個体があまりにも先行しすぎると、群れに 置いてきぼりをくった個体と同じように孤立することになり、群れの行く手で待ち伏せしてい る捕食者の餌食になりやすいからである。したがって疾駆するウマの心に湧き上がる自然な衝 動は、 群れと一緒にいようというものであるはずだ。 みんなと行けば怖くないというわけである。 これをレースの状況に合わせれば、典型的な勝ちパターンが得られる。どんなレースのフィ ル ム を 見 て も、 た い て い の 場 合、 勝 ち ウ マ は 最 後 の 直 線 に 差 し か か る ま で は 集 団 の「 中 ほ ど 」 に 位 置 し て い る こ と が わ か る は ず で あ る。 そ れ も 特 に、 3、 4 番 手 と い う の が 多 い。 そ こ が、 最後のがんばりで先頭に躍り出るための好位置なのである。ウマもそこが集団内の安全な位置 と 感 じ、 騎 手 が せ き た て な い か ぎ り、 そ の 位 置 を 保 持 し よ うとするだろう。 と こ ろ が 最 後 の 直 線 に 差 し か か っ て ゴ ー ル が 近 づ い て く る と、 騎 手 は、 必 死 で 逃 れ よ う と し て い る 自 分 の 尻 に 捕 食 者 の 鋭 い 爪 が か か っ た か の よ う な 痛 み を も た ら す 鞭 を ふ る っ て、 ウ マ を 追 い 立 て に か か る。 こ の 特 別 な 刺 激 が ウ マ

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14 をよりいっそう前へと駆り立て、仲間を追い抜いてレースに勝利させるのである。警戒心をか な ぐ り 捨 て て、 「 先 頭 」 に 立 つ 時 点 で は、 群 れ よ り も 前 に 行 き す ぎ て は 待 ち 伏 せ し て い る 捕 食 者の餌食になりかねないという懸念は、殺し屋が自分のすぐ後ろにいて現に爪をかけていると いう「確信」によって打ち払われている。背後からの攻撃に対する恐怖心の方が優り、ウマを 前へ前へと進ませるのである。 (「競馬の動物学」デズモンド・モリス著) いかがでしょうか。2014年の有馬記念におけるジェンティルドンナの走りが、脳裏に蘇って き た 方 も い る か も し れ ま せ ん。 デ ズ モ ン ド・ モ リ ス 氏 が こ こ で 述 べ た 3、 4 番 手 と い う の は 馬 群 全 体 に お け る も の で あ り、 内 と 外 で 分 け て 考 え る と、 内 の 2、 3 番 手 と い う こ と に な り ま す。 な ぜ 内 かと言うと、コーナーを回るときの距離ロスが外に比べて少ないからです。これが勝つための基本 ポジション、略して“勝ちポジ”の動物学的な起源です。 勝つための基本ポジション=内の2、 3番手 有馬記念は勝つための基本ポジションの影響を最も受けやすいレースのひとつです。なぜかと言 うと、小回りコースにおいて、コーナーを6つも回るからです。内か外のポジションを走ることに

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15 第 1 章 ポジション よる距離ロスの差は、コーナーの角度がきつければき ついほど、コーナーの数が多ければ多いほど増幅され ます。かつてディープインパクトやオルフェーヴルと いった怪物たちが引退の花道を派手に飾り、あっと驚 く逃げ切りやまくりが決まったこともありますが、有 馬記念は基本的にはマツリダゴッホやヴィクトワール ピサ、ジェンティルドンナ、ゴールドアクターが走っ た よ う な 内 の 2、 3 番 手 の ポ ジ シ ョ ン で レ ー ス が で き る馬が勝つレースなのです。 競馬における隠れた真実 「 競 馬 は 強 い 馬 が 勝 つ わ け で は な く、 勝 っ た 馬 が 強 い わ け で も な く、 勝 つ た め の ポ ジ シ ョ ン( 勝 ち ポ ジ ) を走った馬が勝つ」 ほとんどの人は賛成しないかもしれませんが、これは日本の競馬における大切な真実です。力が 勝つための基本ポジション

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16 抜 け て い る 馬 で あ れ ば、 ど こ の ポ ジ シ ョ ン を 走 ろ う と も 勝 つ こ と が で き ま す。 後 ろ か ら 行 こ う が、 大外を回そうが、脚の速さの違いでねじ伏せることができます。しかし、各馬の実力が拮抗する重 賞 レ ー ス、 特 に 頂 点 に 立 つ 馬 を 決 め る G 1 レ ー ス に は、 勝 つ た め に 走 る べ き 明 確 な ポ ジ シ ョ ン が そ れ ぞ れ に 存 在 し、 そ こ を 走 っ た 馬が勝つのです。 競 馬 に は 勝 つ た め に 走 る べ き ポ ジ シ ョ ン( 勝 ち ポ ジ ) が あ る こ と を 最 初 に 発 明 し た の は、 か つ て 府 中 2 4 0 0 m の ス ペ シ ャ リ ス ト と 呼 ば れ た 嶋 田 功 元 騎 手 で し た。 日 本 ダ ー ビ ー や ジ ャ パ ン カ ッ プ、 オ ー ク ス な ど の 大 レ ー ス が 行 わ れ る 東 京 競 馬 場 の 芝 2 4 0 0 m コ ー ス に お け る 勝 ち 方 を、 レ ー ス を 観 た り、 実 際 の レ ー ス で 試 し た り し て、 と こ と ん 研 究 し ま し た。 そ の 結 果、 1 9 7 2 年 か ら 1 9 7 4 年 に か け て、 タ ケ フ ブ キ、 ナ ス ノ チ グ サ、 ト ウ コ ウ エ ル ザ で オ ー ク ス を 3 連 覇 す る と い う 偉 業 を 成 し 遂 げ た の で す。 そ の 3 つ の レ ー ス は、 ほ と ん ど 同 じ よ う な ポ ジ シ ョ ン を 走 っ て の 勝 利 でした。しかも、 ナスノチグサの1973年には、 翌週の日本ダー 府中芝 2400m の勝ちポジ

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17 第 1 章 ポジション ビ ー ま で タ ケ ホ ー プ で 制 し て み せ た の で す。 そ う、 あ の ハイセイコーが敗れた日本ダービーでもあります。 東 京 芝 2 4 0 0 m の 具 体 的 な 勝 ち ポ ジ と は、 ス タ ー ト し て か ら 第 1、 2 コ ー ナ ー は 内 ラ チ 沿 い ピ ッ タ リ を 距 離 ロ ス の な い よ う に 回 り、 向 こ う 正 面 で 先 行 集 団 と の 差 を 詰 め て お く。 第 3 ~ 4 コ ー ナ ー は 少 し ず つ 外 に 出 し な が ら 回 り、 最 後 の 直 線 で は 馬 場 の 良 い 内 か ら 3 ~ 4 頭 目 の と ころに持ち出して追い出すというものです。 2 0 0 5 年 の ジ ャ パ ン カ ッ プ に て、 嶋 田 功 元 騎 手 が 発 明 し た 府 中 芝 2 4 0 0 m の 勝 ち ポ ジ を そ っ く り そ の ま ま トレースするように、ランフランコ・デットーリ騎手はアルカセットを導いて勝利しました。日本 の競馬を研究して府中芝2400mの勝ちポジを知っていたのか、それともジョッキーとしての天 性の勘なのか分かりませんが、 スタート直後に 14番枠から内ラチ沿いに切れ込み、 明確な意志を持っ て 勝 ち ポ ジ を 走 ら せ、 ア ル カ セ ッ ト を 勝 た せ た の だ か ら 驚 き で し た。 そ れ 以 来、 府 中 芝 2 4 0 0 府中芝 2400m の勝ちポジルート

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18 m の 勝 ち ポ ジ の こ と を「 デ ッ ト ー リ ポ ジ シ ョ ン 」 と 僕 は 呼 ぶことにしています。 近 年 の 日 本 ダ ー ビ ー に お い て は、 勝 ち ポ ジ を 走 っ た 馬 が 勝 つ と い う 傾 向 に 拍 車 が 掛 か っ て い ま す。 過 去 10年 の 日 本 ダ ー ビ ー 馬 が 走 っ た ポ ジ シ ョ ン を 見 る と、 デ ィ ー プ イ ン パ ク ト や オ ル フ ェ ー ヴ ル と い っ た 圧 倒 的 な 能 力 を 誇 る 3 冠 馬 を 除 い た ほ と ん ど 全 て の 馬たちが、前述の府中芝2400mを勝つために走るべきポジションを走っていることが分かりま す。ワンアンドオンリーの走りを思い浮かべる方もいるでしょうし、メイショウサムソンが2冠に 輝 い た レ ー ス 振 り を 思 い 出 し た 人 も い る で し ょ う。 ロ ジ ャ ー バ ロ ー ズ も コ ン ト レ イ ル も そ う で す。 2005 年 11 月 27 日(日) 5 回東京 8 日 天候 : 晴 馬場状態 : 良 10 R 第 25 回ジャパンカップ 3歳以上・オープン・G1(定量) (国際)(指定) 芝 2400m 18 頭立 着枠 馬  馬名 性齢 騎手 斤量 タイム(着差) 人気  廐舎 1 7 14 アルカセット 牡 5 デットーリ 57 2.22.1 3 [外]クマーニ 2 8 16 ハーツクライ 牡 4 ルメール 57 ハナ 2 (栗)橋口弘次 3 4 8 ゼンノロブロイ 牡 5 デザーモ 57 1 3/4 1 (美)藤沢和雄 4 3 5 リンカーン 牡 5 武豊 57 ハナ 9 (栗)音無秀孝 5 3 6 ウィジャボード 牝 4 ファロン 55 クビ 5 [外]ダンロッ 単勝 14 ¥1060 複勝 14 ¥260 / 16 ¥180 / 8 ¥110 枠連 7-8 ¥2020 馬連 14-16 ¥3310 ワイド 14-16 ¥1130 / 08-14 ¥450 / 08-16 ¥310 馬単 14-16 ¥6330 3連複 08-14-16 ¥1850 3連単 14-16-08 ¥15450

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19 第 1 章 ポジション 勝ちポジを走る馬は、まるで1頭だけ無重力状態にいるかのように、ロスも負荷もなく道中を回っ てくることができるのです。 ほとんどの日本ダービー馬たちの枠順が1枠か2枠なのも偶然ではありません。スタートしてか ら 第 1、 2 コ ー ナ ー は 内 ラ チ 沿 い ピ ッ タ リ を 距 離 ロ ス の な い よ う に 回 る た め に は、 内 枠 を 引 き 当 て ることがほぼ必須条件になるからです。勝ちポジを目指して、スタートしてから第1コーナーまで のポジション争いが激化する中、真ん中から外の枠順を引いた馬が内ラチ沿いに潜り込むことは極 めて難しいのです。日本ダービーは運の良い馬が勝つと言われてきましたが、現代においては、内 の枠順を引くことが運の良さを意味します。おそらく来年の日本ダービーも、その翌年の日本ダー ビーもその先も、内目の枠順を引いて、府中芝2400mの勝ちポジを走った馬が勝つはずです。 日本競馬のスローペース化 基本的なことから話しますと、競馬のレースがトラック状のコースで行われる以上、内と外のど ちらと問われれば、内枠を引いた馬が有利になります。外を回れば、距離ロスがあり、さらに遠心 力 に よ っ て 馬 に 負 荷 が 掛 か る。 無 理 を せ ず に 経 済 コ ー ス を 走 ら れ る 内 枠 が 圧 倒 的 に 有 利 な こ と は、 コーナーを回る競走の原理原則です。東京競馬場だろうが、シャティン競馬場だろうが、浦和競馬

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20 場 だ ろ う が、 た と え 子 ど も の 運 動 会 だ ろ う が、 こ の 原 理 原 則 は 変 わりません。 ミ ス タ ー 競 馬 と 呼 ば れ た 野 平 祐 二 氏 は 著 書「 競 馬 の 極 意 」 に て、 外を回されることの負荷について、こう記されています。 「 例 え ば 外 に 振 り 回 さ れ た 場 合、 内 か ら の 圧 力 を 大 き く 受 け る。 乗 っ て い る 人 間 に し か 分 か らない感覚だが、遠心力の原理と同じで、2頭めよりは3頭め、3頭めよりは4頭めと圧力が 大きくかかってくる。それも単純に数に比例するのではなく、2倍、4倍と圧力がかかる。馬 にとってはたまらないほどのスタミナの消費だ」 現代の日本競馬は枠順のゲームである、と僕が語るのは、もちろんそういう意味だけではありま せん。一歩踏み込んで論考を進めると、現代の日本競馬において、内枠を引いた馬が圧倒的に有利 になる理由のひとつは、レースのスローペース化にあります。瞬発力勝負に滅法強いサンデーサイ レンスの血を引く馬たちの台頭や、ヨーロッパ競馬からやってきた一流ジョッキーたちが日本の競 馬場で頻繁に乗るようになったことなど、様々な要因が重なり、スローペース化には年々拍車が掛

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21 第 1 章 ポジション かっているのです。 た と え ば、 そ の 世 代 の 頂 点 を 決 め る 日 本 ダ ー ビ ー に お け る ペ ー ス を 見 て み ま し ょ う。 僕 が 競 馬 を 始 め た 1 9 9 0 年 か ら 2 0 0 0 年、 2 0 1 0 年、 2 0 1 7 年、 そ し て 2 0 2 0 年 の 全 体 時 計 を 単 純 に 前 半 と 後 半 の1200mで等分してみると以下のようになります。 年 代 に よ っ て 馬 場 状 態 な ど は 大 き く 異 な る た め、 全 体 時 計 の 速 い 遅 い は 置 い て お き、 前 後 半 の 落 差 を 比 べ て み ま し ょ う。 1 9 9 0 年 の 日 本 ダ ー ビ ー は 後 半 よ り も 前 半 の 方 が 速 い ミ ド ル ペ ー ス、 2 0 0 0 年 は 前 後 半 で 3 秒 近 い 落 差 が あ る 超 ハ イ ペ ー ス と、 こ の あ た り ま で の 日 本 ダ ー ビ ー は 平 均 ~ ハ イ ペ ー ス に 流 れ る こ と が 多 か っ た の で す。 一 生 に 一 度 の 大 舞 台 で 脚 を 余 し て 負 け る 前半1200m 後半1200m 勝ち馬 1990年 72秒2―73秒1 アイネスフウジン 2000年 71秒7―74秒5 アグネスフライト 2010年 75秒1―71秒8 エイシンフラッシュ 2017年 75秒7―71秒2 レイデオロ 2020年 73秒5―70秒6 コントレイル コーナーでは外を回る馬の方が圧力(R)がかかる

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22 のは恥という感覚も騎手心理としてあったように思います。 そこから 20年の歳月を経て、いつの間にか、しかし確実に、スローペース化の波が押し寄せてき ました。日本ダービーだけの話ではありません。中央競馬で行われるありとあらゆるレースが総体 的にスローペースに陥ることになったのです。スタートしてから道中はスローに流れ、ラスト3ハ ロ ン の 瞬 発 力 勝 負 で 決 着 が つ く よ う な レ ー ス が 大 半 を 占 め る よ う に な り ま し た。 い わ ゆ る ス ロ ー ペース症候群と言われる現象です。 ス ロ ー ペ ー ス で は、 馬 群 の 外 々 を 回 さ れ た 馬 に 距 離 ロ ス が 生 じ て 不 利 に な っ て し ま い ま す。 ペ ー ス が 遅 く な る と、 ど の 馬 も 少 し で も 前 に 行 き た い と 思 い、 こ ぞ っ て 先 行 す る た め、 馬 群 は 団 子 状 態 に 密 集 し や す く な り ま す。 先 頭 の 馬 か ら 後 方 の 馬 ま で 馬 群 が 縦 に 長 く 伸 び る の で は な く、 先 頭 か ら 後 方 ま で の 距 離 が ぎ ゅ っ と 詰 ま っ て、 馬 群 は 横 に ふ く ら む の で す。 そ う す る と、 馬 群 の 外 を 回 ら さ れ た 馬 は 内 を 走 る 馬 に 比 べ て、 コ ー ナ ー を 回 れ ば 回 る ほ ど、 か な り 余 計 な 距 離 を 走 ら さ れ る こ と に な り ま す。 こ れ が ス ロ ー ペ ー ス に お け る、 内 枠 有 利・ 外 枠 不 利 ハイペースでは馬群は縦に長くなる

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23 第 1 章 ポジション の基本的なカラクリです。 誤 解 を 招 か な い よ う に 断 っ て お き ま す と、 ス ロ ー ペ ー ス 自 体 が 悪 い わ け で も、 つ ま ら な い わ け で も あ り ま せ ん。 確 か に ペ ー ス が 速 け れ ば、 ス タ ミ ナ が 問 わ れ、 本 当 に 力 の あ る 馬 し か 勝 て な い 激 し い レ ー ス に な り ま す。 一 方 で ス ロ ー ペ ー ス は、 馬 に は 我 慢 す る 精 神 力 が 要 求 さ れ、 ジ ョ ッ キ ー に は 馬 を 御 す 技 術 が 求 め ら れ ま す。 ス ロ ー ペ ー ス ば か り だ と面白くありませんが、ハイペースばかりでも単調すぎるのです。 僕が言いたいことは、スローペースになることで馬群が固まり、内と外を走ることの間に大きな 違いが生まれ、内のポジションを走らないと勝てないレースになってしまうと、スポーツとしては つまらない競馬になるということです。 超高速馬場化の弊害 もうひとつ 、現代の日本競馬が枠順のゲームになってしまう大きな理由のひとつとして、超がつ くほどの高速馬場化が挙げられます。高速馬場の話題になると、得てして水掛け論になってしまう スローペースでは馬群は横にふくらむ

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24 ので、できる限り口をつぐむようにしていますが、さすがに自分が好きだった日本ダービーや天皇 賞・秋、ジャパンカップというレースが単調な競馬になってしまっているのを見過ごせず、ついこ うして口に出してしまいます。 馬場が極度に高速化する (整備される) ことで問題になるのは、 馬の故障率や馬場の硬さではなく、 内外の公平性です。内枠を引いて馬場の良い内ラチ沿いを先行した馬に、外枠を引いて馬群の外を 回された馬が後ろから追いつき、追い越すのは至難の業なのです。走りやすい馬場自体に全く問題 ありませんが、そのことが内外の不公平を増長してしまうならば、スポーツとしての競馬にとって は望ましくないと僕は考えます。 走りやすい馬場を追求することをどこかで止めなければならないと思います。確かに東京競馬場 は日本の競馬の玄関口であり、そこで開催される大レースを絶好の馬場状態で行いたい気持ちは良 く分かります。見た目にも美しく、かつ安全で走りやすく、おまけにレコードタイムまで出てしま う、一見誰も文句をつけようのない馬場です。最高の馬場を維持し、さらに改良する技術は、馬場 造園課のたゆまぬ努力の賜物です。それでもどこかで立ち止まって、走りやすい馬場と公平な馬場 のバランスを取ることにシフトしていかなければならないのではないでしょうか。

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25 第 1 章 ポジション 走りやすい馬場の追求は、複雑な機能が追加されていった現在のテレビやビデオのリモコンとど こか似ています。技術や知識が高度化し、改善・改良を加えれば加えるほど、利用者にとっては使 いにくい代物になってゆく。そろそろ、僕たち日本人の得意な足し算をやめて、引き算をすること でシンプルさを求めるべきです。個人的には、わざと走りにくい馬場にするぐらいでちょうど良い のではないかと考えています。走りにくい馬場の定義は難しいのですが、手先だけでは走れない馬 場ということです。 そのことによって勝ち馬の多様性が増し、できる限りフェアなレースが行われることで、スポー ツとしてだけではなく馬券的にも面白さが広がるはずです。日本の競走馬のさらなるレベルアップ にも貢献するのではないかという思いもあります。走りやすい馬場で走るのは簡単で、それでスポ イルされてしまう馬もいるのではないでしょうか。走りにくい馬場で走ることによって馬は鍛えら れ、本当に強い馬が真のチャンピオンになるのです。 走るポジションは枠順によってほぼ規定される 現代の日本競馬はスローペース化と超高速馬場化に拍車が掛かり、馬群の内で脚を溜められた馬

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26 は直線で伸び、馬群の外々を回らされた馬は脚を失って止まってしまうレースばかりが目に付くよ うになったと話しました。そして、馬群の内側を走ることで圧倒的に有利になる馬、または外を回 らざるを得ずに勝ち目がほとんどない馬が、枠順が決まった時点で分かるようになってしまったの です。なぜならば、レース中に各馬が走るポジションは、枠順によってほぼ規定されてしまうから です。 過去 30年の日本ダービー馬の枠番について一望してみましょう。 1990年   アイネ スフウジン 12番 2006年   メイショウサムソン 2番 1991年   トウカイテイオー 20番 2007年   ウオッカ 3番 1992年   ミホノブルボン 15番 2008年   ディープスカイ 1番 1993年   ウイニングチケット 10番 2009年   ロジユニヴァース 1番 1994年   ナリタブライアン 17番 2010年   エイシンフラッシュ 1番 1995年   タヤスツヨシ 14番 2011年   オルフェーヴル 5番 1996年   フサイチコンコルド 13番 2012年   ディープブリランテ 10番 1997年   サニーブライアン 18番 2013年   キズナ 1番

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27 第 1 章 ポジション 1998年   スペシャルウィーク 5番 2014年   ワンアンドオンリー 2番 1999年   アドマイヤベガ 2番 2015年   ドゥラメンテ 14番 2000年   アグネスフライト 4番 2016年   マカヒキ 3番 2001年   ジャングルポケット 18番 2017年   レイデオロ 12番 2002年   タニノギムレット 3番 2018年   ワグネリアン 17番 2003年   ネオユニヴァース 13番 2019年   ロジャーバローズ 1番 2004年   キングカメハメハ 12番 2020年   コントレイル 5番 2005年   ディープインパクト 5番 ディープインパクトが勝った2005年前後を境にして、上と下で勝ち馬の枠番の傾向が明らか に 変 わ っ て き て い る の が 分 か り ま す ね。 1 9 9 0 年 か ら 2 0 0 4 年 ま で は 外 枠 の 2 桁 枠 番 が 多 く、 それ以降は内枠の小さい数の枠番に集中しています。2005年より以前は外枠が有利だったとい うよりも、どの枠番からでも勝負になったということでしょう。2005年以降は、内枠を引くこ とが日本ダービー馬の条件になっているようにさえ映ります。これぞまさにスローペース化と超高 速馬場化がもたらした偏りです。

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28 現代の日本競馬が枠順のゲームであるのは、再三にわたって話してきたように、勝つためのポジ ションを走ることが極めて重要だからです。走るポジションは枠順によってほぼ規定されてしまう 以 上、 枠 順 に よ っ て 勝 ち 負 け が 決 ま っ て し ま う の は 当 然 で す。 内 枠 を 引 い た 馬 は 内 を 走 り や す く、 外枠を引いた馬は外を回らされることが多い。たとえスポーツとしてはフェアではなく、つまらな い と し て も、 僕 た ち が 馬 券 を 買 う 以 上、 馬 群 の 内 の ポ ジ シ ョ ン を 走 っ た 馬 が 勝 つ レ ー ス に お い て、 内枠を引いた馬を狙わない理由はありませんね。もちろんその逆も然りです。 勝ちポジが外に移動するケース 勝 ち ポ ジ の 基 本 ポ ジ シ ョ ン は 内 の 2、 3 番 手 と 話 し ま し た が、 ど の 競 馬 場 の ど の レ ー ス も 全 て そ うであるはずはなく、外枠を引いた方が楽にレースを進められるコースやレースもあります。勝ち ポジはコース設定や馬場、レースの性格によって、前や後、内から外へと揺れ動くのです。 それは俗に言う展開とは少し違った考え方で、分かりやすく説明すると、展開が前か後ろかとい う線的な位置取りを示した概念だとすれば、 勝ちポジは前後左右 (内外) という平面的なそれを扱っ ています。だからこそ、逃げ馬が有利とか、差し馬向きといった大まかな目安ではなく、もう少し

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