JRIA20 技術系教育
平成20年度
技術系教育問題検討委員会調査研究報告書
(概要版)
-人材の確保と育成に向けて-
平成21年3月
社団法人 研究産業協会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
はしがき
イノベーションの創出に向けては、その起点となる研究開発の重要性は増しているが、
それを実行するのは人であり、人材は非常に重要である。特に近年は技術の進歩が早く、
グローバル競争も激化している中で、優秀な人材の確保が強く求められている。
しかしながら、大学工学部の志願者数減少などの科学技術(理工系)離れが見られ、少 子化問題と合わせて、企業においては優秀な人材を量的に確保することが難しくなってき ている。また、質の面においても様々な問題が指摘されていて、将来に向けての懸念材料 となっている。
こうした状況から、昨年度の報告書において以下の3つの取り組みの必要性を述べた。
① 学生・生徒たちに夢を与え、将来へ向けてのモチベーションを向上させる
② 産業界などに対する理解や職業観を醸成する
③ 受身ではなく、自ら進んで考えるような訓練をさせる
これらのことを実現させるためには、教育の場においてキャリア教育などの産学連携によ る人材育成が必要かつ有効であると思われるが、我が国においてはキャリア教育などの産 学連携による人材育成は、欧米各国に比べてあまり普及しておらず、認知もあまりされて いないという指摘がある。
このため、昨年度の調査においては、スウェーデンへの訪問調査、講演会、文献調査な どにより海外の情勢を調査すると共に、我が国の現状についても調べ、課題や今後の方向 性についてまとめた。
本年度は、こうした検討をさらに進めるため、実際の教育現場における取り組み状況を 調査することを調査の柱とし、国内各地への訪問調査を行った。また、海外における実態 をより詳しく調査する目的で、OECDのPISA(学習到達度)テストにおいて、学力 世界一の座にあるフィンランドを訪問した。
さらに、様々な角度からこの問題を検討する目的で、政府関係者や教育関係者を交えた ワークショップや委員会を開催した。
こうした調査を通じて、現状の我が国における課題や、キャリア教育などの産学連携に よる人材育成をより発展させるための方向性は、ある程度見えてきたと考える。本調査に ご協力いただいた方々には、この紙面を借りてあらためて御礼を申し上げたい。
本報告書が今後の技術系人材の確保および育成に向けての一助となれば幸いである。
2009年3月 技術系教育問題検討委員会 委員長 東京ガス(株) 小沼良直
技術系教育問題検討委員会名簿
<委 員>
小沼 良直 委員長 / 東京ガス(株) 技術開発本部 技術戦略部 知的財産室 主幹
*2008年9月末まで(社) 研究産業協会 調査研究部長
大図 健弘 日本電気(株)中央研究所 研究企画部 オフィスサポートセンタ センタ長
大塚 好恭 (株)住化分析センター 顧問
小林 信一 筑波大学 ビジネス科学研究科 教授
佐久田 昌治 (株)日本総合研究所 理事
住友 秀彦 北海道大学 大学院理学研究員 特任教授
<事務局>
舩津 貞二郎 (社) 研究産業協会 専務理事
松井 功 (社) 研究産業協会 調査研究部長
酒井 綾子 (社) 研究産業協会
石塚 美香 (社) 研究産業協会
※所属・役職は2009年3月時点のもの
(社)研究産業協会 平成 20 年度報告書
平成 20 年度 技術系教育問題検討委員会調査研究報告書概要
背景と目的
日本企業が欧米の国々と肩を並べるフロントランナーへと成長したこと、またグローバ ル競争が激化してきたことにより、産業界においてはこれまで以上に高度な技術系人材が 求められるようになってきている。特にイノベーション創出に向けては、その起点となる 研究開発人材において、優秀な人材の確保が強く求められている。
しかしながら、その一方で、大学工学部の志願者数減少などの科学技術(理工系)離れ が見られ、質の面においても若手技術系人材の資質低下や基礎学力低下の問題も指摘され ている。
これらの問題は産業界にとって非常に重要な問題であるが、これらの問題点の解決に向 けては、企業への入社後に対応できることには限界があり、特に進路選択については教育 の問題がほとんどであるといえる。しかしながら、これらの問題に取り組むには、教育界 だけで対応することには限界があり、産業界の協力が不可欠であると考える。
こうした産学連携による人材育成については、我が国においても様々な取り組みが行わ れているが、まだまだ十分とはいえないと思われる。また、海外(特に欧米)の国々にお いては、産学連携による人材育成が盛んに取り組んでいる例が見られる。
昨年度の調査では、こうした状況を踏まえて、技術系教育の問題について、特に産業界 との関わり・産業界による教育支援という観点から、キャリア教育などの産学連携による 人材育成を中心に、我が国における課題や目指すべき方向性を模索する目的で、海外にお ける取り組みも含めて調査を行ったが、今年度はこうした調査をさらに深めるため、実際 の教育現場における取組みを調べることを柱とし、現場実態を踏まえた課題の洗い出しや 今後の方向性を探ることを目的に調査を実施した。
因みに、昨年度整理した課題と教育において求められるものは、以下のとおりである。
(1)課題
① 科学技術(理工系)離れの問題
統計データに示されるように、工学部志望者の減少や OECD による 2006 年 PISA テストで の意識調査において、理科に対する全体的な関心が我が国は 57 カ国中最下位であったこと などに、科学技術(理工系)離れの傾向がはっきりと表れている。
② 資質低下、基礎学力低下の問題
これまでに当協会が行った調査や、文部科学省などが行った調査においては、課題設定 能力、積極性、打たれ強さなどの資質面において低下傾向が見られる。また、技術者の基 本である基礎学力についても、以前に比べて落ちてきているとみる企業は多い。
③ 離職率の増加、働くことに対する意欲の低下の問題
平成 18 年版「国民生活白書」によると、入社 3 年以内の離職率は 2002 年においては大 卒で約 35%、高卒で約 49%となっている。1992 年では大卒約 27%、高卒約 40%であり、
年による多少のバラつきはあるものの、長期的には増加傾向となっている。
(2)教育において求められるもの
・学生・生徒たちに夢を与え、将来へ向けてのモチベーションを向上させる
・産業界などに対する理解や職業観を醸成する
・受け身ではなく、自ら進んで考えるような訓練をさせる
これらのことを実現するためには、以下の取り組みが必要と考える。
・職業に関する情報提供、キャリアガイダンスの強化
・職場体験やプロによる出前授業などによる「本物と触れ合う場」の提供
・こうした中から学生・生徒たちが自ら学び、自分の将来や学ぶ意義を考えるようにする これらの取り組みを行うにあたっては、教育界だけでできることには限界があり、産業 界の積極的な協力・支援が不可欠である。なお、これらは「キャリア教育」と呼ばれる教 育体系そのものであるが、我が国においては欧米各国に比べてまだまだ取り組みが遅れて おり、キャリア教育の強化・充実が望まれる。
昨年度整理した今後の方向性
①キャリア教育など産学連携による人材育成の必要性に対する PR 強化
人材の問題に関して危機感を持つ者は多くいるが、キャリア教育などの必要性に対する 認識は、産業界・教育界含めて全体的にまだまだ低いため、PR活動の強化が必要がある。
②産業界・教育界連携による地域レベルでの取り組みの推進
キャリア教育のさらなる普及を促進するためには、地域レベルで実績を重ね、その成果 が他の地域へも徐々に広がっていくことが現実的であると思われるが、推進に向けては、
産業界側のより一層の協力が不可欠である。産業界側が協力できる内容としては、以下の ものがあげられる。
〔企業が教育において協力できる内容の例〕
○産業技術に関する授業や研修への協力
・インターンシップ、工場見学受入、出前授業、教員向け研修、教材開発への協力 等
○進路指導への協力
・ジョブガイダンスへの協力、ジョブシャドウイングへの協力 等
○技術と触れ合い、技術を用いて課題を解決する機会への協力
・ロボコン、技能オリンピック、○○教室等各種イベントへの協力、企業博物館での展 示や体験学習を通じての触れ合い 等
③産業界側の受入体制の強化
・キャリア教育などの産学連携による人材育成の必要性についての認識を広げる。
・協力する者が評価面などで不利益とならないように配慮する。
・インターンシップなどについても、長期受入が可能な体制を築く。
・こうした取り組みが企業価値評価の向上につながるように、意識改革に努める。
④教育界側の実施体制の強化
・キャリア教育の必要性の認識の拡大。
・キャリア・カウンセラーの増加など、キャリア教育を実施できる教員の拡大。
・教育時間枠の確保。
⑤仲介機能の強化
産業界・教育界共に窓口となる組織の整備が必要である。なお、産業界においては業界 団体などにその機能を持たせることが望ましいと考えられる。
⑥産業界における技術系人材の処遇に対する配慮・改善
将来を担う若手人材に技術者の仕事を選択してもらうためには、産業界に入ることに対 して夢や希望が持てることが必要であり、産業界における技術者の処遇へのより一層の配 慮や改善が必要であると考える。
今年度の活動
(1)調査の進め方
調査を行った内容は以下の通りである。
①国内訪問調査の実施(シンポジウムへの参加も含む)
国内における教育現場の現状を調べることを目的とし、以下のように調査を行った。
訪問先 訪問日 調査内容
(株)キャリアリンク 2008 年5月13日 大阪・神戸地区のキャリア教育の現状 NPO法人アスクネット 2008 年5月14日 名古屋・東海地区のキャリア教育の現状
砧中学校 2008 年7月3日 学校現場の見学(キャリア教育の一環としての職 場訪問事前準備授業)
(株)ソシ オ エ ンジ ン ・ア ソ
シエイツ 2008 年7月14日 東京地区のキャリア教育の現状 NPO法人未来図書館 2008 年8月7日 岩手県のキャリア教育の現状
②海外訪問調査(フィンランドへの訪問)
OECDのPISA(学習到達度)テストにおいて学力世界一の座にあるフィンランド の現状を調べる目的で、以下のように調査を行った。
○ フィンランドの教育制度
国家教育委員会(Finnish National Board of Education)
労働組合(Trade Union of Education in Finland (OAJ))
地方自治体協会(Association of Finnish Local And Region Authorities)
日本大使館 学校現場
基礎(小中)学校(Hiidenkiven peruskoulu)
高等学校
職業学校(Helsinki City College of Social and Health Care)
大学
ポリテクニック(Helsinki Metropolia University of Applied Sciences)
フィンランド技術産業協会(Technology Industries of Finland)
(2)ワークショップの開催
議論を深める目的で、政府関係者や教育関係者を交えたワークショップを開催した。
13:05~13:25 趣旨説明・問題意識の提示 研究産業協会 小沼良直 調査研究部長 13:25~15:05 各パネリストからのショートプレゼンテーション
※各発表者20分 〔パネリスト〕
・文部科学省 藤田晃之 国立教育政策研究所 総括調査官
・経済産業省 下村貴裕 産業人材政策局 室長補佐
・筑波大学 小林信一 ビジネス科学研究科 教授
・NPO法人アスクネット 毛受芳高 代表理事
・東京都教育庁 地域教育支援部 梶野光信 係長
<休憩>
15:20~17:00 参加者全員によるディスカッション
(3)委員会の開催
開催日 主な内容
準備委員会 2008 年4月7日 今年度の活動の方向性に関する議論 第1回委員会
*技術系人材委員会と合同 2008 年5月14日 今年度の委員会の活動方針
第2回委員会 2008 年11月20日
国内、海外訪問調査結果の紹介 産学連携教育に関する議論
*経済産業省や教育関係者も同席 第3回委員会 2009 年3月2日 まとめの議論
今年度のまとめ
(1)国内訪問調査、ワークショップや委員会での議論・検討より
① キャリア教育など産学連携による人材育成への取り組み
・キャリア教育など産学連携による人材育成は広がってきているが、まだまだ歴史が 浅く、発展途上の段階であり、試行錯誤の時期である。
② キャリア教育など産学連携による人材育成の効果
・実際に実施したところでは、効果を感じている
③ キャリア教育など産学連携教育を実施する上での苦労・問題点・課題 実施にあたっては、以下のような問題点・課題がある。
〔推進に向けての理解不足〕
・教員:キャリア教育の概念・必要性や企業に対する理解不足。
・企業:キャリア教育の概念・必要性や学校に対する理解不足。
・親 :キャリア教育の概念・必要性や企業に対する理解不足。
⇒キャリア教育への理解と共に、産業界・教育界相互の理解が必要。
〔推進に向けての支援体制不足〕
・資金不足:キャリア教育の実施には資金が必要。
・人材不足:中心となって推進する教員、カウンセラーやコーディネーターの不足。
・連携不足:支援するためのネットワークが整備されていない地区も多い。
〔教育制度そのものの問題〕
・今の教育制度においては受験対策が最優先となり、その他は二の次となる。この ため、受験生を多く抱える中学・高校ではキャリア教育を実施しにくい。
④ 科学技術(理工系離れ)関係
・子供たちの興味・関心をひくような授業内容の工夫が必要
・企業における技術者の処遇も問題である。
⑤ キャリア教育など産学連携による人材育成の推進に向けて
・3年間でだいぶ空気が変わってきており、実施した地域ではだいぶ理解されるよう になってきているが、さらに展開するのは非常に大変である。
⑥ 最近の子供たちに関する問題
・マニュアル化、一律化の傾向があり、自主性、主体性に問題が見られる。このため、
自主性、主体性を育て、自ら考えさせるような取り組みが必要。
・自分の将来についてあまり考えていないような様子が見られる。
⑦ 受身ではなく、生徒たちに考えさせる教育の推進に向けて
・必要性は認識されているが、暗記型の受験勉強が優先されてしまう。
・少人数でやるなどの工夫が必要であるが、予算面での制約の問題がある。
(2)海外(フィンランド)訪問調査より 教育制度全体
① 教育に対する姿勢・思い入れ
・森林と人材が国の2大資源という考え方。人口約530万人の小国で少ない人材を 大事に育てたいという国家の強い意志がある。
・学費は全て無料。貧しくても教育を受けられる国にしたいという国の思いがある。
・どの地域でも質の高い教育を受けられるように、という機会平等の考え方がある。
② 質が高く尊敬される教師
・修士卒が必須条件。教師になるのは簡単ではなく、教師の質が高い。
・給与は学歴に比べて高くないが、昔から教師は尊敬され、憧れの職業である。
③ 教育政策への反映のしやすさ
・小国であるため、新たな政策を展開するのはさほど困難ではない。
・議員の中に教員経験者が多く、教育に対する理解が得やすい。
・政権が代わっても教育政策はほとんど変化がない。
・教員組合も政策協議に参加する。
④ 進路選択に関して
・昔は高校→大学へ行くことが人気であったが、最近は職業学校の方が人気がある。
その理由は、職業学校の方が仕事に就くのに有利であるからである。
・大学は定員が少なく、入るのは楽ではない。
・女性の方が高学歴であり、女性の社会進出が進んでいる。
・成人教育も盛んで、再教育・転職は容易であり、やり直しのきく社会である。
・理工系離れの問題は日本だけの問題ではなく、フィンランドでもある。ヨーロッパ の中ではスウェーデン、フランス、イギリスといった国々でも同様である。
学校現場から感じられること ① 生徒たちへの手厚いサポート
・授業についていけない者へは補習などできちんとフォローする。国は教育に費用を かけており、貴重な人材をしっかり育てたいという考えがある。
・授業は少人数であり、教師の目が届きやすい。
・カウンセラーの設置など、サポート体制も整っている。
② 考えさせる授業
・自分で考えることは日本より多い、と現地の生徒たちは感じている。
・プレゼンを多くさせるなど、考えさせ、きちんと理解させる工夫をしている。
・Open Mind や課題解決能力を養うように学校側も意識している。
③ 自主性の尊重
・のびのびした雰囲気があり、生徒たちの自主性を重んじる姿勢が見られる。
・高校や日本での中学校に相当する学年から授業は選択性となる。
④ 授業内容
・遅くとも義務教育の3年目から外国語の授業がスタートし、義務教育9年目で最大 4ヵ国語まで学べるなど、語学の学習には力を入れている。
・職業学校の内容は実際に仕事に就くことを想定していて、極めて実践的である。
・ポリテクニックの内容はより実務的である。また、就職に向けての対策が非常に充 実している。
・工科大学でも就職に向けての対策はいろいろと行っているが、一般的に大学での学 習内容はより理論寄りである。
キャリア教育など産学連携による人材育成 ① 学校側の取り組み
・義務教育において全ての生徒たちに7~9年生(日本における中学1~3年生)の 間に1~3週間の職場体験をすることが義務付けられている。職場体験はや企業の 人から仕事について聴くことは非常に重要と考えられている。
・職業学校においては、実践的な教育に企業がかなりの協力をしている。
・ポリテクニックや工科大学では、企業から研究テーマをもらう場合も多くある。
・学生の多くは夏休みに企業で働く者が多く、企業の社員の夏季休暇の穴埋めにもな っている。
② 企業側の取り組み
・「①学校側の取り組み」などで書いたように様々な形で教育に協力している。
・職業学校を独自に持っている企業もある。
・教師たちは他の職業を経験していない者が多いため、企業の仕事内容や職場環境な どをよく理解していない者が多い。このため、技術産業協会では教師たちに企業を 知ってもらうために企業訪問、企業での研修等をアレンジしている。
・技術産業協会では子供たちの進路選択に大きな影響を与える親たちにも企業訪問を アレンジしている。
③ 産学連携による人材育成を広げていくにあたっての課題 ・学校側、企業側ともにお互いに対する理解が必要である。
・技術協会では活動を広げるための人員不足を感じている。
今後に向けての方向性の検討
今後の方向性については、以下のようにまとめた。
●キャリア教育の推進に向けて
(1)キャリア教育に対する理解の促進
キャリア教育は、日本においてはまだ歴史が浅く、このためキャリア教育を自ら体験 している者がまだまだ少ない。このため、キャリア教育の目的・内容・効果等について は、まだまだ理解が得られていないのが現状であり、発展させるための阻害要因にもな っている。キャリア教育に対する理解を促進するために、以下のような取り組みが必要 と考える。
① 国民レベルでの理解促進
政府全体として、国民全体に対してキャリア教育の必要性や効果等に関するPRを 強化する必要があると考える。具体的には以下のような方策が考えられる。
・科学技術基本計画や各省庁の政策に「キャリア教育」を随所に入れる。
・実際の体験例などをテレビ・新聞などのマスコミを通じてPRする。
② 教員向け研修の強化
教員においても理解度が必ずしも高くはないようであるため、教育界においては、
以下のような取り組みを推進すべきと考える。
・キャリア教育そのものに対する理解度を高めるための研修を広く行う。
・フィンランドで見られたような教員を対象とした企業訪問・企業での研修を進め、
他の職業や企業に対する理解を深めてもらう。
③ 産業界における認知度向上
産業界においてもキャリア教育に対する認知度が高くないため、以下のようなPR 活動を行う必要があると考える。
・業界団体へのPRを強化し、業界全体としての取り組みを促す。
・経団連や経済同友会など経営トップが集まる機構に対するPRを強化する。
④ 親たちへの情報提供
子供たちの進路選択においては、親の影響力が大きいため、フィンランドでも見ら れたように親たちに対するPR活動(企業訪問・企業見学会など)を行い、企業に対 する理解を深めてもらう取り組みをすべきと考える。
(2)キャリア教育を担う人材の確保・育成
キャリア教育の推進に向けては、それを担う人材の不足の問題が指摘されているため、
以下のように人材の確保および育成を強化する取り組みを行うべきと考える。
① 教員志望者への教育
・前述の教員向け研修の強化に加えて、大学での教員志望者に向けてもキャリア教育 に関するカリキュラムを導入または強化する。
② キャリア・カウンセラーの養成
・我が国においては、各学校に配置されるべきキャリア・カウンセラーの数も多いと は言えないため、国としてキャリア・カウンセラーを増やすための取り組みを行う。
③ 地域教育コーディネーターの養成
・各地域にて学校と企業の橋渡しを行っている地域教育コーディネーターについても 人員不足が指摘されているため、今年度経済産業省が取り組んでいるような地域教 育コーディネーターを養成するためのプログラムを強化する。
(3)キャリア教育を推進するためのネットワークの強化
キャリア教育を実施するためには、多くの組織の連携が必要であるため、以下のよう にネットワークを強化することが有効と思われる。
① 地域レベルでのネットワークの強化
・地域レベルで学校・企業・PTA・行政間のネットワークを強化する。
② 地域間の情報交換の推進
・他地域での取り組み事例が互いに参考になると思われることから、セミナー開催な どによる地域間の情報交換をより一層推進する。
③ 仲介機能の強化
・学校側、企業側共に窓口となる仲介機能を設置または強化することが望ましい。
・企業ではまだまだキャリア教育に対する認知度が低く、個々の企業ごとに調整する ことは多大な労苦が伴うため、業界団体が仲介組織となることも考えられる。
●ヒューマン・スキルの向上に向けた取り組みの強化
① 生徒たちに考えさせる授業(参加型授業)の拡大
・フィンランドにおいては、受身ではなく生徒自身に考えさせる授業を多く行ってい るが、自ら考えて動ける人材が求められており、我が国においても生徒たちに考え させる授業(参加型授業)を拡大すべきと考える。
・ただし、このような参加型授業を進めていくには、少人数のクラスであることが望 ましいため、教員の増強も必要となる。
・また、参加型授業を行うためには、教員に高いスキルが求められるため、教員の育 成も必要となる。
② PBL(Project Based Learning)の拡大
・ヒューマン・スキルの向上に向けては、PBL(Project Based Learning)も有効と 思われる。PBLは、ある課題(プロジェクト)に対してチームで取り組むもので、
実際の仕事の進め方に近く、様々な能力の育成につながる。経済産業省が実施して いる「社会人基礎力事業」もこの手法を用いており、今後の拡大が望まれる。
※「社会人基礎力事業」においては、多くの企業が協力している。
●科学技術(理工系)離れを意識した対策
生徒たちに考えさせ、興味・関心を持たせる理科授業の推進
科学技術に興味を持たせるためには、理科の授業が面白いかどうかが大きな影響を
与えるが、技術の高度化・ブラックボックス化に伴い仕組みを教えることが難しくな り、実験の答が教科書に書いてあるなどでうまくいっていない面がある。しかしなが ら、改善していく努力はすべきである。以下にそれらについて述べる。
① 生徒たちに考えさせる授業(参加型授業)の推進
生徒たちに考えさせる授業(参加型授業)の重要性は既に述べてきたが、特に理科 においては「なぜ?」とか「どうなっているの?」と考えさせることが興味・関心に つながる。このため、生徒たちに考えさせることは非常に重要である。
フィンランドでは既にこのような授業を行っており、理科においても“Teaching”
よりも“Learning”の方がより重要であると考えられている。
我が国においても、このような考えさせる授業(参加型授業)をより一層推進して いくべきと考える。
② 産業界による理科授業への協力
企業による出前授業など、産業界が理科授業に協力できることは多くあると考える。
出前授業などで産業界が理科授業に協力することで、以下の効果が期待できる。
・新たな刺激を生徒たちに与えることができ、興味・関心が増す。
・学習している内容と社会の関連性を知ることができる。
・社会人の仕事や生き方にも触れることができる。
現在、文部科学省や経済産業省などが理科実験に関するプロジェクトを進めているが、
こうした企業との連携によるものが多い。このような産業界による理科授業への協力を より推進していくことが有効かつ必要と考える。
●産業界の技術者の処遇に対する配慮
昨年度の報告書でも触れたが、理工系へ進む人材を増やすためには、産業界において 技術者が幸せな人生を送れることが魅力度のアップにつながる。生涯賃金やポストなど の処遇面でのより一層の配慮が望まれる。