『仰 山大学法学 会雑誌』 第58巻第4号 (2009年3月) 550
芦 川 日 日 日 日 日 日 日 日 川 日 日 日 日 日 日 日 日 日 日 ‖ 川 日 日 日 日 I l l 事
≡ 判例研究 ≡
国際司法裁判所 ジェノサイ ド条約適用事件 ( 先決 的抗弁判決 2 0 0 8 年 1 1 月 1 8 日)
玉 田 大
‑ .手 続
1999年7月2口. クロアチ ア共和国 (theRepublleOfCroatia.以下, クロアチ ア) は, 集 団殺害罪の防止及び処罰 に関す る条約 肌 1こ‑, ジェ ノサ イ ド条約 )の違反 に関す る紛 争 につ き,ユー ゴスラヴイア連邦共和 国 (theFederalRepublicofYugoslavla.以下,FRY) を相手取 って国際司法裁判所 (以 卜1 ICJlに提訴 した'''。管轄権 の基礎 には ジェ ノサ イ ド 条約9条 を援用 したo他方,2002年9月11円に FRYは先決的抗弁 を提起 した。2008年5 月6日,ICJは,請求訴状 の付託 粗 布で FRYが訴訟手続‑ の参加資格 を有す るか否か と い う争点 を口頭審稗で扱 うよう当事 国に求めた (1‑19項)0
クロアチ アは請求訴状 で次の請求 を行 ‑'たっ(a)FRYは, ジェノサ イ ド条約 1条.2条 (aト (d)項, 3条ra卜 (e)項,4条. 5条 に基づ くクロアチ アに対す る法的義務 に違反 した,, (b)FRYはクロアチ ア及びその市民 に対 して, 人 と財 産‑ の椙 害及 びクロアチ ア経 済 と環 境‑ の損害 について賠償 を支払 う義務 を負 う また,クロアチ アは申述書で次の 申立 を行 っ た.第 1に,FRYはジェ ノサ イ ド条約違反 につ き責任 を負 う,,(a)FRYが責任 を負 う者が クロアチ ア領域 内で ジェ ノサ イ ドを行 った:(b)上記行 為の共 同謀議 (conspired),共 犯 (Compliclt)及び教唆 (lnClted)(ジェ ノサ イ ド条約3条) を行 った。,(C)上記 行為 を防止 す る方策 を とらなか った (同 1条)
。( d )
被疑者 を訴 追 しなか った (同 1.6
条)。第2
に.条約違反の責任 の帰結 として,FRYは以 卜の義務 を負 う。(a)ジェ ノサ イ ド被疑者 (特 に ミロシェ ビッチ前 FRY 大統領)の訴追 と処罰。(b)クロアチ ア失院市民の所在情 報の提 供Dlc)文化財の返還「,(d)損 害賠償 ,,他 J)A. セ ル,ビアは先 決的抗 弁 において次の点 を̲i=張
した。第 1に,本件では裁判管轄権が ない (第 1抗弁)。 第
2
に.代替 と して.FRY形成 =(1)CaseconcernlngtheAj)PllCalu)nOftheC(nltl()77tZ'〃ln77ThePrcz,e71t10nandPumsh711e)ltOfthe CyLmeOfGenuL・lde(CTOatlaV.Lblprbla),PrellmlnaryObJeCtl()nS.Judgmentof18November2008 本件訴訟資料 (請求訴状,先決的抗弁,先決的抗弁に対する書面見解.口頭弁論記録.先決的抗 弁判決,裁判官少数意見)は全て裁判所 の/JT:式サ イ トで入 手可能であ る (http//wwwlq‑
cIJOrg/Ill,ただし,2001年3月1日にクロ7+了が提出 した申述書(CRZOO8/8,p.11判決7. 90項参照)は未公開である。なお公式文書が末IIT川のため,引用は該当パラグラフ番 号を用いる。
549 国際司法裁判所 ジェノサ イ ド条約 適用事件 (先決的抗 弁判決 2008年11月18日) 以前 の作 か 不 作為 に関す る請求は受理不能で ある (第2抗弁)。第3に,ミロシェ ビ ッチ 他の鼓判付託,失脹市民の情報提供 ,文化財返還 に関す る請求 は受理不能で あ り, ムー ト で ある (第3抗弁)(20‑22項)。
二 .判決要 旨
1.被 告の特定 (23‑34項)
セル ビア共和 国 (theRepubl∫cOfSerbla.以下,セル ビア)大統領 は国連事務総長宛 に書 簡 を送付 し (2006年6
月
3日仰 ,モ ンテ ネグロ共和 国 (theRepublicofMontenegro以 T,モ ンテ ネグ ロ)の独 立宣言 に よ り.国連 内のセ ル ビア ・モ ンテ ネ グロ (Serbia and Montenegro.以下,SM)の名前 はセ ル ビアが継続 し,国連内の権利義務 もセ ルビアが責任を有す ることを伝 えたrJまた同国はSMの締結 した国際条約上の約 束 を尊重 す ることも伝 えたD総会決議60/264(2006年6月28E]) に よ り.モ ンテ ネグロが国連新加 盟国 と して泉 認 され,ICJはボ スニア事件2、の2007本案判 決 においてセル ビア を唯一の被告 と した (77 項)Lモ ンテ ネグロはセル ビア ・モ ンテ ネグロ連 合国家 (theState unlOn OfSerbia and Montenegro)の 国際的法 人格 を継続 していない。基本原則 と して,いか なる国 も同意 な く 裁判管轄権 に服す ることはない (ナ ウル事件I.C
JRe po r t s
1992,p.260.para.53)。モ ン テネグロは本件 の裁判管轄権 に同意 を与 えない ことを明 らか に してお り,被告の地位 を得 ることはない。以上 よ り, 本件で はセ ル ビアが唯一の被告であ る,2.当事国の主張の概要 (35‑42項)
第 1に,ICJ規程35条 上の被告の訴訟参加資格 に関 して,FRYは,2000年11月1日以前 は国連加盟国で はな く,提訴時 (1999年)にICJ規程当事 国で もなか ったため, この資格 を有 さない と主張 した。他 方,クロアチアは.FRYが提訴時 に国連加 盟国であ り.仮 にそ う で なか った と して も.加盟 国 となった後 は参加 資格 を有効 に獲得 した と主張 した。第
2
に, ジェ ノサ イ ド条約9条上の管轄権 に関 して,FRYは加入通告(notificatlOnOfaccesslOn){3' の発効 日 (2001年6月10日)以 前は同条約 に拘 束されない と主張 した。 また,
同通知 には9条留併 41が付 されてお り,自国は9条 に拘 束されない と主張 したO第3に,セル ビアは, FRYの独 立宣言(1992年4月27R)以前の作為 ・不作 為 に関す る クロアチ アの請求訴状 は
(2)本件判決では,関連性 を有する先例判決 ・命令が多数引用されるため.これらについては f:記 解説中の略記一覧に示 した略記を用いる。
(3)ジェノサイ ド条約への加入に関 して同条約11条は次のように規定 している)「この条約は,剛 祭 連合の加盟国及び総会が常名するよう招請する非加盟国による署名のたれこ,1949年12月31日ま で開放 してお く。この条約は.批准されなければならず,批准書は,匡】際連合事務総長に寄託す る01950年1月1日以後は.国際連合の加盟国及び前記の招請を受けた非加盟回は.この条約に 加入することができる。加入書は,国際連合事務総長に寄託する上 なお,条約加入方式に関 し てはウイ‑ン条約法条約15条を参照。
(4)FRYのジェノサイ ド条約加入通告(2001年3月8口)には条約9条の適用を除外する留保が付 されているO同通告の全文については,PrelLminary ObJeCtlOnSOftheFederalRepublicOf Yugoslavla,pp.24‑25,para3.5を参照。
2
同 法 (58‑ 4) 548 受理不能 と主張 した。他九 クロアチアは1996抗弁判決 を援用 し. ジェノサ イ ド条約 の適 用 に時間的制限はない と主張 した。第
4
に,セル ビアは, ジュノサ イ ド罪被疑者 の訴追の 申立 (2(a))は受理不能でムー トである と主張 した。 さらに本件の犯罪 はジュノサ イ ド罪 ではな く,人道 に対す る罪等である と主張 した。他方, クロアチアは,ICTYに移送 され た者 (ミロシェビッチ を含む) に関 しては申 rLLがムー トである と認めたが,未移送の者が いると主張 したO第 5に,セル ビアは,失綜者 に関する申立 (2(b))はジェ ノサ イ ド条約 の対象外であ り.しか も1995年以降は クロアチアに協力 してお り,同申立 は受理不能でムーートであると主張 した。他方 クロアチアは同中立が ジェノサ イ ド条約の範囲内であると主 張 し,セル ビアが多 くの失綜者の情報 と書類 を持 ってお り,情報提供は条約9条上の適切 な救済であると主張 した。第6に,封 ヒ財返還の 申立 (2(C))に関 して.セル ビアは美術 品の財産請求は管轄権 に含まれないため受理不能でムー トであると主張 したO他方 クロ アチアは,集Ei]の文化的アイデ ンテ ィテ †の破壊が ジェ ノサ イ ド罪 に含 まれ るため
,
同申 立は条約の射程 に入 ると主張 した。3.国連に関するFRYの地位の略歴 (43‑51項)
1990年代前半,ユ‑ゴスラヴ イア社会主義連邦共和 国(theSoclallStFederalRepublicof Yugoslavia,以下,SFRY)は解体 し始め, クロアチア とスロヴェニアの独立宣言 (91年6 月25日),マケ ドニアの独立宣言 (91年9月17日), ボスニア ・ヘルツェゴヴ イナ (Bosnia andHerzegovina.以下,BH)の独立宣言 (92年3日6E])が続 いた。その後,BH.クロ アチ ア,スロヴェ二アの国連加盟が承認 され (92年5月22日).マケ ドニア も承認 された (93年4
月
8日)092年4月27E].SFRY議会,セル ビア国民議会及びモ ンテネグロ議会の 合同会合が宣言 を採択 し,FRYがSFRYを継続 し,
後者の国際的約束 を遵守す る と述べ たL,92年9月19日に国連安保理 は決議777を托択 し,FRYはSFRYの加盟国地位 を自動 的 に継続 し得ない とし,FRYが国連加盟 申請 をすべ きことを決完するよう国連総会に勧告 し た092年9月22日,国連総会は決議47/1においで FRYが国連加盟 申請 をすべ きであ り, 総 会活動 に参加 す べ きで ない こ とを決 定 した。92年9月29日,国連 法 律 顧 問 (Legal Counsel)がBHとクロアチアの常駐代表へ書簡を送 り,総会決議47/1は FRYの総 会活動 への参加禁止 に止 まり,国連加盟国資格 を終了 ・停止 させ ない と述べ た。ICJ は2004抗弁 判決において,「FRYの法的地位の問題 に関 して国連内で生 じた混乱 した複雑 な状態」 と 述べ,2003再審判決では 「特 別な地位」 (sttlge71erlSpOSltion)に言及 した。他九 2000年 10月27日,FRYの新大統領 コシュ トウニ ツ7 (Ko畠tunlCa)が国連加盟 申請 を行い,総会 決議55/12(2000年11月1日)によって同国が国連加盟国 として承認 された ことによ り.上 記の状態 は終了 した04.lCJの従前の裁判の関連性 (52‑56項)
本手続の核心は,ICJ規程 とジェノサ イ ド条約 に関するFRY(提 訴時)の資格 ・地位の 問題であ り, これは従前の多 くの裁判で争点 となって きた。 ボスニア事件では
,2
つの仮 保全命 令(1993年4月8日, 9月13日),1996抗弁判決,2007本案判決があ り,ボスニア再 審幸作では2003再審判決がある。またNATO事件の2004抗弁判決は,FRYの出廷資格の3
547 国際司 法裁判所 ジェ ノサ イ ド条約 適 用剰 牛 (先 決的抗 弁判 決 2008年11月18日) 欠如 に基づ く先 決 的抗 弁 を容 認 したD諸事 件 で扱 われた事 実 や法律 問題 は本件 で も生 じて い るが , これ ら裁 判 (decISIOnS)′5ノは本 件 当事 国 (クロアチ ア とセル ビア)の 間の手続 で下 された もので はな く,既 判 力 の問題 は生 じない (ICJ規 程59条 )〕これ らの裁 判が 法判 断 を 含 む限 り.裁判所 はあ らゆ る先例裁判 と同 じよ うにそれ らを扱 うO「す なわ ち, 当該裁 判 は 何 ら裁判所 を拘 束 しないが ,決定 的理 由 川1eVerypartlCularreasons)が無 い限 り,確 立 され た判例 か ら裁 判所が離 脱 す る ことはない」(カ メルー ン ・ナ イジェ リア間の陸 地 と海 洋 境 界事 件I.C
J. R
eport.bl1998.p.292.para.28)o従前 の裁 判 は,国連 とICJ規 程 に関す る FRY の地位 の問題 に言 及 してい る(l本件 で検 討 を要す るの は, 同一同 (FRY)に関す る 同一 問題 (地位 問題) であ る。「裁判所 が従前 の裁 判の結論 か ら離脱 す るため には,決定 的 理 由 (compelJingreasons)が求 め られ るであ ろ う」,,そ こで裁 判所 は次の 点 に留 意 す るO す なわ ち.上記 の事 件の手 続 中.BH
とFRY (2002年 まで) はFRYが 国連加 盟国で あ る5.管 轄権 に対 す る先決 的抗弁 (57‑119項) (1)訴訟 当事国 資格 の問題 (57‑92項 )
第 1先決的抗 弁 の 1つ 目の問題 は. 裁判手続 へ の 参加 資格 の一一股 要件 (規 程34,35条) を両 国が満 たすか 否かであ るCクロアチ ア とセ ル ビアは国家で あ る (規 程34条 1項 √71/)。 ま た,提訴 時 に クロアチ アは国連加 盟国 であ る (35条 1項 L8')。他 方,セ ル ビアが 同 1項 又 は
2項 (9)の要件 を満 たすか否か につ いて は争いが あ る (57162項 )。
この点 で, セル ビアは次 の ように主 張 した。 自国 は本件提 訴時 に国連加 盟 国 (ICJ 規 程 当事 国)で はな く,ICJは 「開放」 されてい なか った (規 程35条 1項 )。同条 は提 訴時 に適 用 され,2000年 に規 程 当事 国 にな った事 実 は関係 が ない,, また, ジ ェ ノサ イ ド条約 は規程 35条2項 の 「現 行 の諸条約 」に該 当 しない (2004抗 弁判決 )。他 九 クロアチ アは次の よ う に主張 したり 第 1に,FRYは提 訴時 点で ICJ規程 当事 国 で あ り, 規程35条 1項 に基づ く ア クセス を有す るO第2に,FRYは2000年11日 1Ejに規程 当事 国 とな ってお L'),管轄 権 行
(5)裁判所がICJ規程59条を念頭においている以上 (判決53項1,同条に従い,decisionsを 「判決」
ではな く 「裁判」と訳出する.。なお,工CJ規程̲上は,Judgmentを剛 、る条文(27,39.54,56, 57,58,60.61.63条)とdecisIOnを用いる条文 (16.17,24,31,36(6).38(lXd),39(2).41(2), 56(2),59,62条)が混在するが,邦訳 LはdecISJOnを 「判決」 と訳す例 もある(41(2).56(2凍 l。
(6) 具体的には.NATO事件におけるFRYの書面見解 (2002年12月20日)を指 している。この態 度変更の背景に関 しては,拙稿 「武力行使の合法性事件 (先決的抗弁判決2004年lZT]15R)」 岡 山大学法学会雑誌55巻1号 (2005年)2425官を参照し
(7) TCJ 規程34条l項 「同のみが,裁判所 に係属す る事件の当事者 となることがで きる」C,Only stalesmaybepartiesincasesbeforetheCourt.
(8) ICJ規程35条 1項 「妓判所は,この規程の当事国である諸国に開放する」。TheCourtshaHbe opentothestatespartleStOthepresentStatute
(9) ICJ規模35条2項 「款判所 をその他のLt=二間放する発作は,硯行諸条約の特別の規定を留保 し て,安全保障理事会がJ定める [以下略]」。)TheconditionsunderwhlChtheCourtshaltbeopen tootherstatesshall,subjecttothespecLalprovISIOnSCOntalnedlntreatiesinforce,belalddown bytheSecurltyCounc】1[ ].
4
同 法 (58‑ 4)546 任 には十 分である (マ ヴロマテ ィス事件判決)。第3に,規程35条2項 に よってICJ は開 放 され るo なお,2004抗 弁判決 は再考 ・修止 されるべ きであ る (6
3
‑64項)。上記の点 について予備 的見解 を述べ る。 第 1に.規程35条 の要件 を満 たすか否か は, 人 的管轄権 の問題, あるいは管轄権審理 に先行する問題 であ り, 同要件 を満 た さない と本案 管轄権 を有 きないD第2に, ア クセ ス欠如 と事項管轄権 欠如 の抗 弁が 同時 に提 起 された場 合,前者 を肯定 しては じめて後者 を検討 で きる (2004抗 弁判決46項)。第3に,国が裁判所 に出廷 し得 るか否か は裁判所が職権 で提起 ・審理すへ きであるが (2007本案判決122項), この判 断 を判決理 由中に明示す る義務 は軽い .第4に,規程35条 1項で はな く,2項で ア クセ スが認 め られ る場 合 もあるが.2004抗 弁判決 は規程35条2項 の裁判所 アクセ スを否認 Lた{101。 この点で, クロアチ アは2004抗弁判決の 「誤 りを訂正」す る よう裁判所 に求めて い る。本件で は, 2項判 断の前 に 1項 の検討 を行 う (65‑72項 )。
セル ビアの規程 当事 国資格 について,当事 者間に争いのない点 を2つ確認 す る。第 1に, 199212000年 に FRYが 国連加 盟国ではなか つた と判断 した2004抗弁判決 (I.CJ.Reports
2 0 0 4
,pp.310‑311,paras.78‑79)は,本件で既 判力 を話 さない ものの,関連性 を有す る。 第2に,2000年11月1口以降.FRYは規程 当事 回かつ国連加盟国であ り,現 時!.ff.で クロア チア とセル ビアは規程35条1項 Lの裁判所 ア クセ スを有す る。そ こで,規程35条要件 の充 足判断が提訴 臼基準か,それ ともそれ以降の 日を基準 とす るかが問題 となるし1‑般規則で は,裁 判所 の管 轄権 は訴訟 開始 文 書の提uHは 起 点 に判断 され る (ボ スニ ア事 件 I.CJ.Reports1996(Hj.p,613.para26;ロ ノカ ビ‑事件I.CJ.Reports1998,p.26,para.44)。 規程35条要件 も提訴時 を基準 と Lて判 断 されるL提 訴時基準 で ない と.提 訴後 に被 告が故 意 に管轄権 を除外 で きるか らであ るO ここで重視 され るの は,法的確 実性や 当事者 平等原 則の尊 重,適切 な訴訟係属 を行 った国が請求 を審理 して もらう権利 であ る (73‑80項)。
他方で,ICJ とpCIJ は リア リズム と柔軟性 を示 してお り.提訴 時 に管轄権条件 が完全 に満 た されてい な くて も,事後的 に満 た され る こ とが ある (マ ヴロマテ ィス事 件 P.C,IJ.
Senes14,No2.p.34.ドイツ人権益事件 PC.IJ SerleSA,No,6,p.14.北 カメルー ン事 何I.C.I.Rep()rts1963,p.28,ニ カラグア事件ICJ.Rrp()rts1984,PP.428‑429,para.83, ボ スニア事件I.C.I.Reports1996(E),p.614.para,26)(81182項)。
クロアチ アは この判例 を適用す る よう主張 した。他九 セ ル ビアは2点 を主張 した。 第 1に, この判例 は被告 の暇庇 には適用で きないLl第2に,訴訟参加 資格 は 「根本 的問題」
であ り,2004抗弁判決で もこの 「マ ヴロマテ (ス理論」(MavrommatlSdoctrlne)は適用 されなか ったO 第 1点 目に関 して,判例 (マ ヴロマテ ィス判決)の論 理 では,管轄権要件 を満 た さないのが原告か被告 かは重 要ではか 1,.第2点 目に関 しては, 次の2点 を指摘 す 八 る。第 1に,上記の先例 は事項 的 ・人的管轄 権 に関す る事例 であ り.裁判所 ア クセ スに関
(1012004抗弁判決によれば
,I C
J規程35条2項の 「規行の諸条約」は,I C
J規程の発効時 (1945年 10月24日)に効力を有 していた条約たけを意味 し,シェノサ イ ト条約 (1951年1月12日発効)の ように,それ以後に発効 した条約を含まないと解 されるLIC.I.Rep,フrls2004.pp318‑324,par'as, 100‑114)。D
545 国際司 法裁判所 ジェ ノサ イ ド条約 適用事 件 (先決 的抗 弁 判決 2008年11月18日) す る もので は ない。とは言 え,ア クセ ス欠如 に よって適切 な訴訟 係 属が なか った と して も, この こ とは,裁判所 が管轄 権 決定権 (th
ec o mpe ' t e n c edel ac o m♪d t e nc e )
を有 さない とい うこ とを意味 しない っ第2に,裁判 所 ア クセ ス問題 は狭義 の管轄権 審理 とは別 で あるが , ア クセ ス欠如 が管 轄権 否認 に繋が る とい う点 で管轄権 に密接 に関連 す る。従 って,適切 な 司 法運営(thesoundadminlStrationof]ustice)に依拠 す るマ ヴロマ テ ィス判 例 は本件 で も 適用 され る。なお.2004抗 弁判 決 は上記 判例 を逮捕 しなか ったが,同事件 で は.FRYが請 求継続 意思 を有 きなか った点 に 「特 別 の考慮」(partlCularconsideratios)が払 われ てお り, 提訴 時基準原則 か ら乗 離 で きなか ったか らであ るO なお,付 加 的 に次の2
点 に言 及す るO 第 1に, クロアチ アの提訴 に不注意 な点 はない。 第2に,2000年11月1日以 降, クロアチ アは 申述書 を提 出 してお り(2001年3月1□),申立 を特 定 してい るO以上 よ り,2000年11 月1E]に裁 判所 はFRYに開放 され てお り.提 訴 時か ら同 日までセ ル ビアが ジェ ノサ イ ド 条約9条 に拘 束 されていれ ば,裁判 所 は管轄権 を容認 し得 る (83‑92項 )。(2)事項 的管特権 の間蔑 (931117項 )
第 1先 決的抗弁 の2つ 目の問題 は, シェ ノサ イ ド条約9条{ll)の事 項管轄権 で あ る。 クロ ア チ ア は常 に 同 条 約 の 当 事 国 で あ り (9条 留 保 もな い),92年10月12日 に承 継 通 告 (notifLCationofsuccession)を寄託 したD他方 , セ ル ビアは, ジュ ノサ イ ド条約へ の加 入 (2001年6即 12)) 以前 (す なわ ち1999年の提 訴時) には条約 当事 国で は な く, しか も加 入 通告 は9条留 保 を含 む と主張 した。 しか し,仮 に提訴時 にFRYが ジェ ノサ イ ド条約 の 当 事 国で あれ ば, そ の後の管轄権 史書 の 失効等 は裁判所 の管轄権 に影響 を及ぼ さない (ノッ テボー ム事件 I.C
J.Ee l ) ( ) r t s
1953,p.122:ニ カラグア事件 I。CJ.Re po r t s
1986.p.28.para.36)。従 って,2001年3月6日付 の加 入通 告の法 的効果 につ い て判 断 を下す必 要 は な い。 クロアチ アは,FRYが ジェ ノサ イ ド条約 当事 国 を承継 した 主張 し,同時 にFRYの 宣 言 と書 簡 (1992年4月27日) に依拠 した。1950年 以降,SFRYは ジ ェ ノサ イ ド条約 当事 国 で あ り,SFRYを継続 す る とい うFRYの 主張 は政権 交代 (2000年 ) まで維 持 された。 こ こで, 国家水継 に関す る一般 法 の適用 を検 討す る前 に,1992年 の事 象に基づ くクロ アチ ア の代替 主張 を先 に検討す る。 クロ アチ アは,FRYの92年宣 言が 「神聖 な誓約 」であ り,依 拠 が 認 め られ る (entitledtorelyonlt)と主張 してい るた め,シェ ノサ イ ド条 約 上 のFRY の地位 に関す る92年 の宣言 ・書 簡の性 質 と効 果 を検討す る (93‑105項)∩
セ ル ビアは,以 下 の3点 を根拠 と して,1992年宣言 はジ ェ ノサ イ ド条約 の 承継通 告で は
(ll)シ1ノサ イ ド条約9条 「この条約の解帆 適用又は履rTに関する締約Lir間の紛争は,集団貯 蓄 又は等三条に列 挙された他の行為のいずれかに対する国の責任に関す るものを含め紛争当事 国
七
のいずれかの要求により国際司法裁判所に付託す る」oDISロutesbetweentheCont,actingPartlCS relatlngtOthelnterPretatlOn,applicationorfulfumentofthepresentConvention,includlngthose relatlngtOtheresponsibllttyofaStateforgenocldeorforanyoftheotheractsenumeratedln artlCleⅢ ShallbesubmlttedtothelnternzltlOnalCourtofJustlCeattherequestofanyofthe part】estothedlSPute.(12)FRYによるジLノサ イド条約加入通告は2001年3月6日十」で同年3月12Rに寄託 されたが,同 条約13条によ'(),加入通告は寄託後90E]日 (2001年6月10El)に発効す るO
∂
同 法 (58‑ 4) 544 ない と主張 した。第 1に,セル ビアは,92牛耳 言は議会臨時構 成団体の ものであ り, 国家 代表 (条約法条約7条)に よる もので はない と主張 したが.FRY 自身,同音 言が 自国に よ る もの と認めてい る,第2に,セ ル ビアは,92年有言が ジェ ノサ イ ド条約 に特 に言及 して い ない と主張 したが 一㌧ 宣言 は「SFRY が匝牒 的 に負 う」約 束 と特定 してい る。 また.「批 准 ・加 入」 は止式 な手続 を要す るが (条紬 去条約15,16射 ,「承継 ・継続」 は本質的 に確 認的 (conllrmatOry)な ものであ り.形式要件 は緩和 され る (ウイ‑ ン条約 承継 条約2条 (ど)参照)O第3に,セ ル ビアは,承継通知 ま剛 垂事 務総長への寄託 を要す る と主張 したが, 国が条約 上の義務 を負 うため には,宣 六が正式要件 をすべて満 たす必要 はない (北 海大 陸 棚事件ICJIRepwts196'9,p.25.paras.27and28)。本件で は,1992年 の宣 言 と書 簡が ジェ ノサ イ ド条約 トの義務の一方的受諾山nllateralacceptance)となるか否 かが問題 とな るが.92年 にFRY は ジェ ノサ イ ド条約 に拘 束 され る意思 を明示 してお り, 同宣言 は承継 通告の効果 を有 していたLlなijl, セル ビアは用達総会の 「署名招 請」(ジェノサ イ ド条約11 卦 がなか った と主張 したが了 同条は先行 凶の条約上の権利義務 の継続 又は承継 につ いて 何 ら言及 していない」。 また.FRY は権数の 酎 午で ジュ ノサ イ ド条約 に依拠 した主張 を展 開 した 「ボスニア事件.NATO事件, クロアナ ア事件)。以上 よ り,FRY は1992年 時点で 9条 を含むジュ ノサ イ ド条約 Lの義務 をそ け入れてお り.r1992年 の宣言 と書 簡 は, ジェノ サ イ ド条約 に関 してSFRY か ら FRl'‑ の承継通告の効果 を有 していた」O従 って,本件 提訴時 に裁判所 はシェ ノサ イ ド条約9条に基つ く管轄権 を有 してお り, この状況 は2000年 11月 1uまで続 いていた (1061‑117Ⅰ日)Ll
(3)結 論 (118‑日9項)
2000年11月1日に FRY は同連加矧 司資桁 を得 てお り (判決91項).さ らに提 訴時か ら 2000年11月1日までFRY が ジェ ノサ イ ド条約 「9条を含 む)に拘 束 されていた こ とか ら.
管轄権要件 は満 た され るLつ
6.時間的 な管轄権抗弁 ・受理可能性抗弁 (120‑130項)
第2抗弁 においてセル ビアは,FRY設立 (1992年4月27日)以前 の作 為 ・不作為 に関 し て は時 間的管轄権 が な く, またFRY に帰属 しないため請求が受理可能 で はない と主張 し た。管轄権 に関 して.1996抗 弁判 決は時 間的管轄権 を制 限す る条項 はジェ ノサ イ ド条約 に はな く,BH紛争の当初か らの関連事 実 につ き管轄権 を有す る と述べ てい る(I.(lJReports 1996IH),p.617,para34)。 ところが, 第 1に, ボスニア事件 では控 訴 時 し1993年)以降 が対象 とされてお り,本件 り992年時点が問題) とは別問題 であ るっ第2に, ボ スニア事 件 とは異 な り,本件では1992年4日27口以前 の行為のセル ビアへの帰属 の問題が時 間的管 一
轄権の問題 に密接 に関連付 け られてい る 、次 に,帰属 の問題 (受埋可能性 問題)に関 して, 云
クロアチ アは,国家形成前の行 為について1JRY は責任 を負 うと主張 し
( I L
C 国家責任 条I.CJRelwrls2006.p29,para52拙稿 「コンゴ領域における武力活動事件 (2002年新桂謝 (管
7
543 国際司法 裁判所 ジェ ノサ イ ド条約 適 用事件 (先決的抗 弁 判 決 2008年1川 18日) 文10粂 2項r■1'), セル ビア は 同条の要件 を満 た さない と反論 した。 こ こで,同条 を適 用 し 得 るか否 か を決め るには,必然 的 にSFRYの脈 体 とFRYの設 山 二至 る事 実 問題 を検討 す る必要 が生 じるが , これ は本案 に属す る問題 で あ る、)先 決的抗 弁 が 先決的側 面 と本案 の側 面 を有 す る場 合, 同抗 弁 は 「もっぱ ら先決 的 な もの」 (exclusIVelyprellminaryl で は な く
(lCJ規 則79条7項 15.), 本案段 階で審理 され る (ニ カ ラグア事 件 ICJIRef,orts1986,p 31,para.41,ロ ッカ ビー事件I.CJ.Repnrls]998.pp.27‑29lr,セ ル ビアの抗 弁 は,管 轄 権 問題 (時 間的管 轄権 ) と受理 叶能性 問題 (行 為帰 属) とい う
「2
つのイ叫 分 の問題 を構 成 してお り」. もっぱ ら先決 的 な性 質 を有 きな い07.
訴 追,情 報提供 及び文化財返 還 に関す る先 決 的抗弁( 1 31 ‑1
44項) (1)訴 追 (133‑136項)クロアチ アは, ミロシェビッチ等 の ジ1 ノサ イ ド罪被疑 者 を適切 な司法機 関 に訴追 し処
がlCTYに移送 され,妃 亡 したため, クロアチ アは この 申立が ムー トに なった こ とを認 め たが. 末移 送者 につ いて は依然紛 争が あ る と封 長したrJセル ビアは,対 象 とな る被疑者 が
ノサ イ ド条約 の解 釈 ・適用 に関す る ものであ り,裁判所 の管 轄権 に属す る。
(2)クロアチア失掠市民 に関 す る情 報提供 (137‑139項)
クロアチ アは,セ ル ビアの ジェ ノサ イ ド行為 に よって火指 した Fl国民 の所 在情報 を提 供 す る義 務 をセル ビアが 負 う と主張 した〔,セ ル ビアは, 関連 す る行 為 は シェ ノサ イ ドに相 当 (14)ILC国家責任条文10条2項 「先在す るLjiJの諦域の一部 またはその国の施政下にある韻域にお いて,新国家の樹i7Iに成功 した反乱活動印体その他の/1lJ動凹体の行為は,rllr祭法上その新Lji]家の 行為 とみなされる」。Theconductofamovement,lnSurreCtlOnalor()ther,whlChsucceedsln estabushinganewStatelnPartOftheterrlt()ryOfapre‑exIStlngState。r]naterrltOryunderIts admlnlStratlOnSha一lbeconslderedana(二tOfthenewStateunderInternationalLaw
(151 ICJ規則 (1978年)79条7項 (現1=)12005/i:改⊥1‑規則79条9項)「批判所 は,当事者の意見を聴 取 した後.判決の形式で決定 を下す、、裁判所は,この決定により.抗弁 を容認 し若 しくは却 卜す るか,又はその事件の相 見に鑑み抗弁が専 ら先決的な性質を有するものではないことを官房しな ければならか 、」。Afterheanngtheparties.theCourtshallg】veItsdecISIOnlntheform ofa Judgment,byw九lchltShalleltherupholdtheobJeCtlOn,rejectlt.OrdeclarethattheobJectlOn doesnotpossess,lntheclrCumStanCeSOfthecase.anexclusIVelyprellmlnaryCharacter
(16)ジェノサ イ ド条約 1条 「締約国は.集凹殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず, 円際法 Lの犯罪であることを確認 し, これを防止 し処罰することを約束す る」√。TheContractlng Partiesconflrm thatgenoclde.whethercommittedlntlmeOfpeaceorintlmeOfWar,lSaCrlme
・ .∴ ∴ ∴ ∴ ・.. ∴ ‑ ■. ・. ∴ がなされた地域の属する国の権限のある批判所 により.又は国際刑事故判所の管轄権 を受諾す る 締約国に関 しては管轄権 を有する国際刑事 枚判所 によ り審理 される」oPersonscharged wlth genocldeoranyoftheotheractsenumerated】nartlCleⅢ shal】betrledbyacompetentmbunal oftheStatelnthetemtoryofwhichthe;lClWasCOmrnltled.orbysuchlnternatlOnal penal trlbunalasmayhaveJurlSdlCtlOnWllhrespectlothoseContracllngPartiesWhichshallhave acceptedltSJurlSdlCti。n
β
同 法 (58‑ 4) 542 せず, また実践者 の所 在 と特 定 に関 して比 に両国 間 に協 力 及 び二 国間条約 が存在 す る と主 張 した。情報提 供義務 は ジェ ノサ イ ド条約 に 脱走 されて い ないが . クロアチ アは条約 違 反 に対す る適切 な救 済 rremedy)であ る と 主張 した。 しか し,いか な る賠償 が適切 か とい う 問題 は,裁判所 に よる条約 違 反 の認定 に依存す るため, 本 質的 に本案問題 で あ るO
(3)文化財 返遺 (140‑143項 )
クロアチ アは, ジェ ノサ イ ド行為 叫 こ奪われた文化 財 (culturalproperty)の返 還 を請 求 したが ,セ ル ビアは, 文化 財の大部 分 は蝿 に返還 済み であ り, 請求 はムー トで あ る と主 張 した02007本案 判決 で は,文化 遺産等 の破 壊 は ジェ ノサ イ ド行為 (条約2条) に該 当 し ない と判 断 され た (344項 )O クロアチ アは適切 な賠 償 か否 か は本案判 断で あ る と主張 した が, その判 断 は条約 違 反 の認定 に依 存す るため, 先 決 的抗 弁 の適切 な主題 で は ない。
(4)結 論 (144項)
以 卜よ り, セ ル ビアの第3抗 弁 を全て棄却 す る。管轄 権 を認 め た上 で,専 ら先 決性 を有 さない抗 弁 につ い ては 本案段 階 で検 討 す るし
8.主 文 (146項 )
(1) クロアチ アの開始 した手続 に対 す るセ ル ビアの参加 資格 に関す る限 り, セ ル ヒアの 提 起 した第 1先 決的抗 弁 を棄却 す る
r
l0対 7)∩賛成 ヒギンス所長,アル‑ハサ ウマ\副所氏,バ‑ゲンサール,ジンマ, トムカ,アブラア ム.キース,セプルヴ工'/‑アモ‑ル,ベ ヌーナ判事,ヴカス特任判事LL7'
k対 ランジェヴ7,シー,コロマ.パラエアラングレン.小利札 スコ トニ コ7判事.ク
(2)クロアチ アの請求 を審理 す るため の シェ ノサ イ ド条約9条上 の事項 的管轄権 に関す る限 り, セ ル ビアの提 起 した第 1先決的抗 弁 を棄却 す る
(
12
対5
)。、反対 ランシェヴァ,シー. コロマ, パラ‥アラングレン判事. クしチ ャ特任判事 (3)主文(4)に従 うこ とを条件 と して,裁 判所 は ク ロアチ アの請求 を審 理 す る管轄権 を有
す る
(
10
対 7)。反対 ランジェウ7,シー,コロマ,バラエアラングレン,小和田,スコ ト二コフ判事,ク レチャ特任判事
(4)本件 の状 況 におい て, セ ル ビアの提起 した第
2
先決 的抗弁 は もっぱ ら先 決 的 な性 質 を有 さない (11対6)D反対 シー,コロマ,パラエアラングレン, トムカ,スコ ト二コフ判事, クレナ ヤ特任判事 (51セ ル ビアの桂 起 した第3先決的抗 弁 を棄却す る (12対5)
反対 シー. コロマ,パ ラエアランクし/,スコ トニコフ判事, クレチャ特任判事 四
(171 MrBudlSlavVukas クロアチア選任「クロアチア国籍,ザグレブ大学国際法教授,元ITLOS 判事 (2002年か ら2005年 まで副所長)。
(18)Mr.MllenkoKreca‑FRY選仔。セルヒアLL]籍.ボスニア事件 とNATO事件で も特仔判事 を 務める。)ベオグラー ド大学国際法教授。
9
5 41
国際司法裁判所 ジェ ノサ イ ド条約適用利 牛 (先決的抗 弁判決2 0 0 8
年1 1
月1 8
日) 本判 決の正文 は英語 であ り,以下の少数意見が付 されているD個 別意見 (アル‑ハサ ウ ネ副所 長),共同宣言 (ランジェヴ7, シー, コロマ.パ ラ‑アラ ング レン判事),反対 意 見 (ラ ンジェヴ7判事),反対意 見 (小和 田判事),個別意見 (トムカ判事),個別意見 (ア ブラアム判事),宣言 (ヘ ヌーナ判事),反対 意見 (スコ ト二 コフ判事),個別意見 け カ ス 特任 判事).反対意見 (ク レチ ャ特 任判卦 。三 .解 説
本件 では,FRY の裁判所 ア クセ スの有無 に関連す る先例判 断朋lが数多 く引 用 されるた め,以下 の略記 を剛 、るoなれ ICJ自身 も関連す る先例 を整理 してい る (判 決
5 2‑ 5 6
項)し【略記一覧】
ボスニア事件 ジェ ノサ イ ド条約適用事件 (ボ スニア ・ヘ ルツェゴヴ イナV.ユー ゴス ラ ヴ イア)
・1 9 9 3
仮保全命令① ●ボ スニ ア事件.仮保 全措置命令( 1 9 9 3
年4
月8
H)・1 9 9 3
仮保全命 令② ボスニア事件,恨保全措 置命令( 1 9 9 3
年9
月1 3
日)・1 9 9 6
抗弁判決 ボ スニア事件,先決的抗 弁判決( 1 9 9 6
年7
月11日)・2 0 0 7
本案判 決 .ボスニア事 件,判決( 2 0 0 7
年2
月2 6
日)ボスニア再審事件
.1 9 9 6
抗 弁判決の再審請求事件 (ユ ー ゴスラヴ イア V ボ スニア ・ヘ ル ツェ ゴヴ イナ)・2 0 0 3
再審判決 ボ スニア再審事 件,再審判決( 2 0 0 3
年2
月3
日) クロアチア事件 .ジェノサ イ ド条約 適用事件 (クロアチ アV.セル ビア)・2 0 0 8
抗弁判 決 'クロアチ ア事件 ,先決的抗 弁判決( 2 0 0 8
年1 1
月1 8
u) NATO事件 ●武力行使の合法性事件 (FRY v.NA1、0 加 盟 国1 0
カ国)・1 9 9 9
仮保全命令 NATO事帆 仮保全措 置命令し 1 9 9 9
年6
月2
日)・2 0 0 4
抗弁判 決.NATO事件,先決的抗 弁判決( 2 0 0 4
年1 2別
.5
日)本判決 の推論過程 は大変複雑であ り,内容 を理解す るの は容易 で はないr2OLoその原因 は 以下の諸点 にある。第 1に,1CJが錯綜す る手続規 則 を駆 使 した点である0本判決で は, 暇庇治癒 原則 (マ ヴロマテ ィス原則),ノ ッテポーム規則,先決性否 認手織 が用 い られてお り,裁判所 の推論 は錯綜 している(,第2に.IC」が手続規則 に依拠 したのは.実体 法判 断 を回避す るためであった。す なわちICJは.FRYの裁判所 ア クセスの有無
(
10
1,117項 ),(19)ボスニア事件
(1
什)
,ボスニア再審事件 (1件), クロアチア事件 (l件),NATO事件(10 件)の計1 3
件であ り.総件名簿上は全て別個の事件である(、なお.NATO事件の うちの2
つの事 件 (対スペインと対米剛 では,仮保全請求棄却命令と同時に管轄権の明日な欠如 (ジェノサ イ ド条約9条留保)を理由に事件が打ち切 られてお り,FRYの裁判所アクセスの間差引ま直接的に は扱われていない。Cad OplnOlndlSSiderltedeM leJugeRan]eva,para.6
J( )
同 法 (58‑ 41 540 ジェノサ イ ド条約9条留保 の効果 (96項 ),国家承継 ,ジェノサ イ ド条約 の 自動承継 (101, 117項)といった争点 を全て判断回避 し,手続規則 のみ に依拠 して結論 を導 いてい る(,第3 に,ICJ が実体法判断 を回避 したのは,先例 Lの判断矛盾 に触 れ ないためであ った。 これ までの事件 (ボスニア事件 と
NATO
事 件)では,FRYの裁判所 ア クセスの有無 に関 し て,肯定判断 (1996抗弁判決,2003再審判決,2007本案判決) と否定判 断 (2004抗弁判決) に分かれていた(2日。2008抗弁判決 は,ジェ ノサ イ ド条約9条 に依拠 して裁判管轄権 を容認した ものの,先例 の判断矛盾 を解消す るこ とな く,手続規則 に依拠 した独 自の理 由付 け を 展開 した。 この ように,複雑 な手続規,qIJに依拠 した推論 を採用 したため,2008抗 弁判決 は 一見 してテ クニ カルな印象 を与 えているC,判決主文 (管轄権判断) は10対7で掛 央された が,数多 くの少数意見が付 され. その中では.本件判決が 「法 的 な有効性 と一貫性 を欠 く のみ な らず
,
法 に反 してお り,擁護 し得 ない
」 とい う厳 しい批判 も見 られ る(22101.先行判決の先例的価値
本作で は先例判断の関連性 が大 きな争点 になった。その理 由は,FRYの裁判所 ア クセ ス (及 び人的管轄権) に関 して先例判断 に矛盾が隼 じていたか らであ る。ICJ の判断 は,容 認判断 (1996抗 弁判決,2003再審判決.2007本案判決) と否認 判断 (2004抗弁判 決) に分 岐 していたし2310そのため,本件 では両 当事 凶が 自らの主張 を根拠付 けるために裁判所 の立 場の矛盾 を指摘 しつつ(24), 自らに有利 な判 断 を援 用 した′25㌧
ICJ判決 の先例的価値 に関 しては,形式論 と実質論 の間のバ ラ ンスの取 り方が重 要 とな るO形式論上 は,相対 的既判力 削 り
( I C
J規程59条) に よ り.別事件の判決 は本件 で法的 拘 束力 を有 きないこ,この点 は2008抗 弁判決 で も何度 も確認 されてお り (判 決52‑56.69, 71,76.104,123,141項),両 当事 国 も争っていない。 他方,形式論 を維持す る と.同一 論点 につ いて事件間で矛盾 した判 断が生 じるためr恥,実 質論 上は司法判断の‑貰性 が求め(21〕 なお,諸判決の捉え方についても異論が見られる,,例えば,2008抗弁判決に付 された共同宣言 によれば,2004抗弁判決の判断 (アクセ ス‑Jni認判断)に矛盾する判決は兄いだされないため,こ の判断が‑一貫 しているという。JolntDeclarationOf)udgesRanJeVa,ShJ.KoromaandParra‑ Aranguren,para4
C2‑a)JolntDeclarat10nOfjudgesRanJeVa,Shュ.KoromaandParra‑Aranguren.paral なお,1996抗 弁判決か ら本判決に至る全ての判決に関J+したのは.この4名の判事だけであるo
e23) 2004抗弁判決 と1996抗弁判決の矛盾については,拙稿 .前掲注・6)31‑34頁参照。⊃なお,FRYの 裁判所アクセスについて明示的な判断 (fl,認判断 を示 したのは2004抗弁判決だけである.1996 抗弁判決と2003再審判決は,いずれもアクセ ス間掛 二直接的には言及 していないoただL,2007 本案判決は,1996抗弁判決の (黙示的1既判事項 として間接的にアクセス容認判断を導 きllJ.し た。この点に関 しては,拙稿 「国際裁判における判決解釈 手続」岡山大学法学会雑誌56巷 3・4 号 (2007年)781‑782頁参照L,
ez41 CR2008/ll(Croatla,MrSands),p.27(p【lra17).なお.クロフォー ド (クロアチア補佐 人) が指摘するように,ICJの口頭弁論において訴訟当事国がICJ判決 (先例)を批判 し,さらに判 決の間違いを指摘することは.通常ではあ り得か 、。CR2008/ll(Croatla,Mr.Crawford),p.39 (para▲22).
L,5)原告クロアチアは,2004抗弁判決が1996抗弁判決の立場を放棄 した理由を述べていないとして, 同判決を批判 した。CR2008/ll(Croatla,MrSands),p 28(para.20)
1 1
539 国際司法裁判所 ジェ ノサ イ ド条約通 用事件 (先決的抗弁判決 2008年11月18EH
partlCularreasons)√28'があ る場合 を除いて,就判所 は確 立 した判例(settledJurisprudence) か ら離脱 しない」 とい う基準 を提示 した (53,76.104項 )。 この基準 は.陸地海洋境 界事 件 (先 決的抗弁判 決̀291)で示 された後,NATO 事件 (2004抗 弁判 決)で適用 された もの である。す なわち.FRYの裁判所 ア クセス (規 程35条2項)について,1993仮保全命 令① は
,
「一見 した ところ (prlmafacle). ジュ ノサ イ ド条約9条 は [裁判所規程35条2項 にい う]『特 別の規完
』 に該 当 し得 る」 と判 断 していたL301ため, この判 断 に依拠 しつつ,2004 抗弁判 決 は次の ように述べ ている訂本件で問題 となるの は.先例 で採用 された判断理 由 と 結論 を放棄す る理 由が存在す るか否かであ るL一 日
」(.この ように.従 来の裁判 例で は.先例 乗離基準 は単に 「放棄す る理 巾」 と解 されてい たが,2008抗 弁判決 は これ を 「決定 的」理 由 と定式化 し直 し,先例尭離 を制 限す る意図 を明 らか に してい る。他方 で,2008抗 弁判決は2004抗 弁判決か ら茄離す る 「決完的理 由」が存在す るこ とを明 示 してお らず
,
何 が 「決定 的理由」 に該 当す るのかは明 らかではない。 この点 で,2008抗 弁判決で考慮 され たのは次の2.在と考 え られる。 第 1に, ボスニア とFRYの主張の変化 である (2008抗弁判決55項 )L〕す なわ ち,[
垂l連新加盟 (2000年11月1円)以降,FRYは国 家継続の主張 を変更 し,国連加盟 国で なか った と主張 し始めた。 ただ し,2004抗弁判決が そ もそ もFRYの態度変 更 (2000年)後の判決である以上 ,この態度 変更 は 「決定 的理由」とはな り得 ない。第2に.両事件 にお ける訴訟 当事 国の態 度の相違で ある。NATO事件 で は,原告 FRYが訴訟継続意思 を有 してお らず.暇収治癒 原則の適用 を求めて いなかった のに対 して,本件 (クロアチ ア事件)で は クロアチ アが同原則の適用 を求めた とい う点 で ある (判 決89項)。 また.2004抗弁判決では,FRYの消栃 的な訴訟態度 に 「特 別の考慮」 (partlCularconsiderations)が払 われていT=とい う (同89項 )(,2008年抗 弁判決 は この点 を 明示 していないが,この 「特 別の考慮」が 「決'/t的理 由」とみ な された もの と想定 され る0
2.
裁判所アクセ ス (lCJ規程35集 1項)ICJが認める ように (52項),本件で はFRYの裁判所 ア クセス 321(規程35条 1項 )の有 無が核心 的争点 となってお り, 先例上 の判断矛盾 もこの点 に関わる。他方で,2008抗弁 判 'V?
6 )
拙稿 「国際裁判における既判力原則」国際法外交雑誌106巻4弓‑(2008年)469‑470頁参照、C277 CR2008/10(Croatia,MrMetelko‑ZgomblCJ,p.18(para2).特に,仲故判決と異なり.ICJは 自らの先例を尊重 しなければならないと許 されるoOpln10ndlSS】dentedeM.1elUgeRanJeva.para. 8I,auSSl,GllbertGUILLAUME,.Cornmentalre‑,lnHe]eneRUIZ‑FABRIetJean‑MareSOREL (白ds.),L〟mntn・alzoudesdd(・752OnSdcsjlL7・ldlrlz〃71SZTZle7・nal707Jales(Pedone,Paris.2008),p.94. 鵬 「決定的確由」について,2008抗弁判決は'‑verypartlCularreasonsl●の他に"compelllngreasons
という表硯 も用いてお り川抹54項),勧告的意見の付与拒否坪rtTである「決定的理由」(compel】⊥ng reason)との類似性を想起 させる(、
C29)ICJ ReDorls1998.p.292.para28
(30)ICr.ReDn7・tS1993,p14.par°19.
(3U Ajfa17・erelalluea/a/i(ellfclde/'C"tD/m (Ie/LifnrrgrSerblp‑M'hZle,71e'gTOl.Be/glque),eXCeptJOnS pr61imlnalreS,arretdu15decembre2004.para98.拙稿 ・前掲注 (6)224‑225頁0
1 2
同 法 (58‑ 4) 538 決はこの争点 を直接 的に根 うことを回避 したため,む しろ多 くの論点が未解決の まま残 さ れることになったo
第 1に,本件の両当事国は,鼓判所 ア クセ ス問題 を争点 とみな していなか った。両国の 書面陳述 (2001年の クロアチアの申述書,2002年のFRYの先決的抗弁,2003年の クロア チアの書面見解)は,いずれ もFRYの出訴資格 を争点 と していない(33J。そこでICJは, 口頭弁論 においてアクセス問題 に触 れるよう両当事 国に求めている (2008年5月6日付書 簡,判決16,69項)(34」,J この ようにICJが訴訟当事 国に争点 を提起す ることは訴訟指揮権
(ICJ規則61条(35)の範L#l内ではあるが. 毘例な ものであ る̀36㌧,
第2に,裁判所 ア クセス問題の性 質が問題 となるoす なわち, これ を管轄権問題 と捉 え る立場 (管轄権説 )と管轄権 に先行す る問題 と捉 える立場 (先行説)があ り,先例判断は 揺れていた
。一 一
万で,2004抗弁判決は後者の L7̲場 をと り, アクセス問題 (規程34,35条) は狭義の管轄権審理 (規程36,37条) に先行 し. さらに当事 国の同意に基礎付 け られない 卓で狭義の管轄権問題 と性質 を異 にする とい う (判決36項)。 さらに同判決は,FRYのア クセ ス欠如か ら,訴訟係属 を否定 し,「人的管轄権」 を否認 した。 これに対 して,2007本案 判決はいずれの立場 をとるのか を明 らか にせず,判断 を回避 した (136項)。本件 クロアチlCJは2007本案判決 を踏襲 し,いずれの捉 え JJも可能である と して結論 を避 けた (66Jiu、
とはいえ.2008抗弁判決 は実質的には管車害権説 を採用 している。第 1に,「ア クセ ス問題 は狭義の管轄権審理 とは明確 に区別 される」 としつつ,判断結果が管轄権否認であ る とい う点で, ア クセス審理が管轄権審理 に 「密接 に関連す る」 と述べ ている (87項 )oす なわ ち,アクセス欠如 は人的管轄権の欠如 を導 く点で,管轄権問題 と同一の帰結 を斎す。第2 に,訴訟参加資格が管轄権抗弁 として提起 される(87項)。第3に,ア クセ ス判断の基準時 は,管轄権判断 と同様 に提訴時であ る(79項 )リ以上の ように,2008年抗弁判決 は黙示的に 管轄権説 を梓用 してお り,2004抗弁判決 と立場 を異にするが,その理 由は, アクセ ス欠如 に対 して哨庇治癒原則 を適用す るためであった。後述す るように,先例上,同原則は狭義 の管轄権問題 (同意の有無) に適用 されて きたため, ア クセ ス欠如 には適用 し得ない とい (64.67,87項)
,
「雀坪への参加資格」(69,R7項∴
「手続の当事者となる資格」(57項),「アク セス権」(67項),
「批判所への適切 な山7d」(68項)とい う用語が有換的に用い られているcDISSent】ngOplnlOnOfJudgeadhueKreta,par;165
83) CR2008/ll(Croatia.MrSands),pp24‑‑25./par乙jS12‑13).
糾 CR2008/'8(thePresldent),p 13,CR2008′11(Croatta,Mr.Sands),p 31Lpara25)
(35)TCJ規則61条 1項は次の規定である
。
「裁判所は.弁論の前又は弁論中いつでも,批判所が特に 当事削 二よる陳述を希望する論朋 しくは糾 .丈は 卜J)Tに議論がJよくされたと考える論点j?し○
くはや」L.rほ 指摘することができる」L
B6) CR2008/ll(Croatla,Mr.Crawford).p 32 para.1)
C3n PrellmlnaryObJectlOnS()ItheFederalRepubllCOfYugoslavla,p23,para31.Wrltten StatementoftheRcpubllCOfCroatlaOflLS〔)bservatlOnSandSubmlSSIOnSOnthePrellmlnary obJeCtlOnSRa】sedbytheFederalRepubll=一日'ugoslavla(SerbiaandMontenegro),of29Aprl1 2003,p5,parュ21
1.7
537 国際司法裁 判所 ジェ ノサ イ ド条約 適 開事件 (先決 的抗 弁 判 決 2008年11月18口) う見解 が法廷 内で も根 強か った。 それ故,2008抗弁判決 は.蝦庇治癒 原則 の適 用 を容 易 に す るため に管轄権 説 に立脚 した もの と解 され る。
第3に, ア クセ スの有無 の判 断 を判 決 中 に明示 すべ きか 否 かが 問題 とな る。 この点で . 2008抗 弁判決 は明示 義務 を否定 した (68項)O一 見 して傍論 で あ る この論 点 は,1996抗 弁 判 決 に深 く関 わる
。
同判決 は,根 本 的問題 で あ るア クセ スの有無 につ いての判断 を一切 明 示 しなか ったか らで あるo他 九 2007本案 判決 は.1996抗 弁 判 決 の主 文 (ジェ ノサ イ ド条約 9条 に基づ く管轄権 を容認 )の 「必然 的 含意」 (necessary impllCatlOn)か ら.FRYの ア クセ ス容 認判 断 を既 判事項 と して導 き出 した (2007本案判決132項)。 この2つ の判 決 を正 当化す るため に,2008抗弁 判 決 はア クセ ス判 断 を明示 す る義務 はな い と述べ て いるので あ るo この封 二関 して,同判 決 は, 当事 国PREJで争 斤 となって い ない場 合には明示 義務 は な い と述べ るが (68項 ),ア クセ ス問題 が職 権 判 断事 項 で あ り,当事 国の 同意 の有無 に依拠 しな い もの で あ る以上 その判 断 を明示 しな くて もよい と解す るの は困 難で あ ろ う。第4に, ア クセ ス要件 (規程35条 1項 )が原 告 にだ け課 され るのか, それ と も両 当事 国 に課 され るのかが 問題 とな る07ブ ラアム判 事 (個 別意 見)し38ノは,ICJ規 程の 文言 や起 草 過 程等 を検 討 した上 で, 一 方的提 訴 の場 合 , ア クセ ス要件 (規 程35条 1項 ) は原告 にたけ課 され,被 告 には課 され ない とす る̀39)。 この説の利 点 は.ICJの先 例 矛盾 を整合 的 に説 明 し 得 る点 にあ るOす なわ ち,1996抗弁 判 決 (被告 FRYには ア クセ ス要件 が課 され ない ため 管轄権 を肯定)と2004抗 弁判 決 (原告FRYに ア クセ ス要 件が課 され るため管 轄権 を否認 )
る ように'dL',訴訟 当事 国の手続 的平等 とい う訴 訟 法 の基 本原則 を考 慮 した場 合,片務 適 用 説 を認 め るの は困難で あ ろ う。 クロアチ ア も.規 程35条 は相 可 主義 的 に適 用 され る もの で あ り, 原被 の区別 はない と主張 してい るし4㌦
第5に, ア クセ ス問題 は.訴訟係属 と管轄権 決定権 (ICJ規程36条6項 ) との関係 で 問 題 を引 き起 こす,,とい うの も, ア クセ ス欠如 の状 態 で あ る主体 がICJに提訴 した場 合,育 効 な訴訟 係属 (saisln)が な いため,ICJの管轄 権 決定権 さえ も生 じない と想 定 され るか ら で あ るo実際 に,2004抗 弁判決 で は,FRYの ア クセ ス欠如 を理 由 と して
,
「裁判所 に適 切 な訴訟 係属 が な され て い な い」 と判断 され て い るた め (46項 ), セ ル ビア は同判 決 を援 用榊 アプラアム判事 は,L]頭弁論第 1ラウン ドの終 丁時点で,規程35条 1.2項の適用に際 して原 被の相違が如何なる効果を有するのか とい})質問 を両当事国に提起 した (判決19項)oCR2008/ll
(croatia,M Abraham).pp58‑59.
0
(39J OpinionindlVlduelLedeM.lejugeAbraham,para5.13,44なお同判事によれば,規程34条は 九 片務適用ではな く,原被両国にアクセス要件が課 されるとい う,,また,規程35条の場合であっても,合意付託の場 合には.同 じように両国にアクセス要件の充足が求め られる.
(40)OplnlOn]ndlviduelledeM lelugeAbraham,para45.なお,アブラアム判事は,本件では蝦虹 治癒原則は適用可能ではない と解 してお り,規程35粂1項の片務適用のみに依拠 してアクセス容 認判断 を導こうとしている。
(41)OpiniondlSSldentedeM leJugeRan)eva.para,9 (42) CR2008/13(Croatia,MrCrawford),p,30(para25)
14
同 法 (58‑‑4) 536 し,本件 で も有効 な訴訟 係属 が な く.管 轄権 決定権 も認め られ か 、と主張 した・13・√ノこれ に 対 して,ICJ は この主張 を退 け るため に, セ ルビア と逆 の論 坤 を展 開 した。 す なわ ち, ア クセ ス判 断及 び訴訟係属 の判 断 その ものが管轄 権決定権 に よって行 われ る とい うので あ る
(86項 )。
ここで,管轄権 決定権が どの時点 で 発生す るのが 問題 となる。 この点 で ICJ は
.
「故判 所 は′削二 (always)管轄 権 決 定権 を有す る」 と言 う (86項 )。 この よ うに, 管轄権 決充 棟 は提 訴 (訴 訟係属 ) よ りも先 に発生 してお り, 裁判所 の存 在 その もの に付随 して認 め られ る根 源的 な権 限 と位 置付 け られて い るい 同様 に,2007本案判 決 で は.権 限胎越 の主 張 自体 が管轄 権 決定権 に よって否定 され てい る'4.。′これ らの判決 に よ り,ICJの管轄 権 決'a権 (規 程36条6項 ) は裁 判所 の存 在自体 に内在 す る権 限 と して,最 も先 決的 な裁判権 限 で あ り.しか も一切 制約 を受 け ない絶 対 的 な権限 と して構 践 され て い る と評 す る こ とが で きる。
以上 の よ うに,本判 決 はア クセ ス閃題 に関 して 多 くの示 唆 を残 す こ とに な ったが ,先 例 矛盾の柵 を潜 り抜 け るための説 明が 多 く, 全体 と して窮屈 な推 論 と しか言 い よ うが ない。
しか も,核 心 的問題であ るはずの ア クセ ス問 題 につ い ては判 断 を回避 して管 轄権 容 認判 断 を導 い た。 この推論 を可 能 に したのが次 に Rる暇痕 治癒 原則 であ る。
3.
喝庇 治癒 原則本件判 決 におい て,裁 判所 ア クセ ス判断 をki]避す るため に用い られ たのが昭 庇 治癒 原則 (マ ヴロマ テ ィス事件 判例 ) であ った ため. 村 牛の柁 心 は同原則 を巡 る問題 に移 行 した。
従 来, 同原則が大 きな争 点 とな った事 例 は なか ったが,2007本案判 決 に付 され た少 数意 見
影響 を 与・えた もの と考 え られ る。 他 )Jで,非か庇治癒 原 則の 内容 と適用 方法 には不 明 な点が 多 く.数 多 くの難点が指摘 され てい る。
第1に,眼底 治癒 原則 の法的性 賀が問題 となるLJ同原則 はICJ規程 及 び規則 上 に明文 で 規定 されてい ないか らで あ る,J しか も,ICJは この原則 を 「マ ヴロマ テ ィス事 件判 例」(the MaLJrOmmatlSCaseJurlSPrudence)と呼 んでお り (判 決83‑85,87,89項 ), その法 的性 質
を明 らか に してい ないo また,少数 意 見で は 「マ ヴロマ テ ィス原 則」 (theMa2,TOmmat2.LI PrlnCipLe)とい う月j語が 広 く用 い られ たが,「マ ヴロマ テ ィス理論」(doctrineMat,7・OmmatlS)
基準時 に関 して 「例外 」 に過 ぎない とい う点 を指摘 し得 る̀171。管轄権 の判 断基準 時 につ い
(431 CR2008/12(Serbia,MrVarady),p15(par°21)セルビアの立論では,裁判所 アクセスが 百 一 効な訴訟係属 (S。.sln)の前提であ り, さらに訴訟係属が管轄権決定権の前提であると位置1.Jけ ○ られている。Ibld.p16(para25),p18(par°30).DISSentlngOplnlOnOfJudgeadh(JcKreca, 八 para101,104
糾)2007本案判決における権限臓越論 と管轄権決'iE権の関係については,拙稿 ・前掲注Cz6)41頁 (特 に脚注137)参照rj
h5)SeparateOplnlOnOfJudgeTomkaし2007Lparas24136. 払6) OplnlOnlndivldueHpdeM.lp)ugeAbraham.para51
(4n 後述するように,蝦痕治癒原則とい う用語を避けた背景には,本件で 「暇庇」(7クセス欠如) 15
535 国際司法裁判所 シェ ノサ イド条約連用制 牛 (先決的抗弁判決 2008年11月18日) ては,提訴時基準が一般規 則 と して確 立 して い る (判決79項 ) (以下,提 訴時 原,qu),)この 原則か ら,提訴後の管轄権 文書の失効 が管轄権 に影響 を与 えない とい うノッテポーム規則 が導 か れ. 同規則が 「原則」 (princIPteト ヒみ な されてい る (判決95項 )o他 方
,
蝦庇 治癒 朋 tlは管轄権の判断基準時 を判決時点 とす るため,提訴時原則 と抵 触す る■RIoただ し,応 訴管轄 VorzLm j'r''rogalum)が判例̲卜認め られている よ うに,提訴時原則 は例外 (判決時 原 則) を許容 す る ものであ り, この 意味 で暇舵 治癒 「原則」 も 「例外」 と位 置 付 け られ7/ '軌。
第
2
に,暇庇治癒原則の適用要件が明 らかで はない。I C
J は.暇症 治姶原則 を 「現実 +‑̲ 義 と柔軟性」に基礎付 け (81項),その例外性 を認めつつ. さらに同原則の考慮安l
対を豊富 に提示 したが5日',その適用要件 には‑一切触 れていか 、。原告 クロアチ アに よれば,マ ヴロ マテ ィス原則 とは,4要素 (訴訟係風B ) ‖
二]
な請求の基礎 ,管轄権 の同意,裁判所 ア クセ ス)が (判決時 までの)いずれかの時点て満た されれば,管轄権 に昌之響 しない と (い う原 則 として日 t式化 された51.。 この点で,I CJ
は クロアチアの主張 に則 ってマ ヴロマテ ィス 判例 を裡解 した ように思 われるoす なわち,2008抗弁判決 によれば,提訴時 に管轄権要件 が満 た されていな くて も,判決時 までに充足 されれば判決 を下す ことが可能 となる とい う。しか も,管轄権の どの要件が未充足であ るかは問わ ない とい うのであ る (判決87項)O他 方 で
,
暇娩 治癒原則の適用要 件が クロアチ アの̲T張す るよ うに4つ に限完 されるか否か は明らかで はな く
,I C
Jは この点 を峻味 に した まま剛朋
1ほ 適用 してい る。第
3
に,治癒rり能な 「脚 庇」の範囲が問題 となる,特 に本作 では,裁判所 ア クセスの 欠 如が治癒 口」能 な哨戒 かむかが問題 となった‑ 第 1点 目に,従 来の耗判例で は,治癒可能 な 暇庇 は一時的な手続的粥
艦 に限 られてお り,裁判所ア クセ スの ように決定的 に先決的で根(規程35条1. 2項 )は管轄権問題 (規群36条) よ りも先決的であ り,職樺的判断事項 で
同宣言 が指摘す る ように
,
「当 事者は手続的暇漉 (aproceduralerror)を訂ff̲す ることは で きるが,他方 当事者 の法 的地位 とい う根本 的作 質 を変 える こ とはで きない」 と言え よ を認'起すると,Fl動的に1996抗軒別決の無効確認を導 くというtHJ糧を指摘することができる〕(48) OplniondlSSiderlLedLIM leJugeRan」eva,par°.4, (491 DisscntlngOpinionOHudgeadh()rKreca.para77.
(5()) 2()08抗弁判決では,昭碇榊宙原則の考慮馴 jJとして,「適切なLij法運営の利益」(the 】nterests t)IthesoundadlTllnlStratlOnOfJUStlCeJ(85,87.89Ifil.「司法の利益」LtheInterestsofJustice)
○
(87項),
「棚 去経析」(Jud】ClahCOnOmy日 89項)といった概念かjJli示 されているL,七
(51) CR2008/ll(CroatlabyMrCrawiord),p 34(para,8),p.37(para 15).152) CR 20O8/12 (Serbla by Mr Varady).p 19 (para.34),pp 20‑‑22 (paras.39‑44).Jolnt DeclaratlOnOHudgesRanJeVa.Shl,Koroma抑dParra‑Aranguren,para.7.0plnOndlSSldentede M.leJU営ERan」eva.para32,nlSSentlngOplnion0日udgeadh〃J・Kreta,para88.山7Ti英郎 「集
(53) DLSSentlngOplnlOnOfJudgeadh()cKreとapara.88 16
同 法
( 5 8 ‑
4)53 4
うL51‑0第2点 目に,暇 庇 治癒 原則 を,狭 義 の管轄権 (当事 国の 同意 )の暇 庇 に適 用 され る ものであ る と制 限的 に捉 える場 合, 裁判所 ア クセ スの ように 当市凶の 同意 に依拠 しない客
は提訴 時原則 が適用 され るため,暇庇治癒 原 則 を適月日ノ得 ない と考 え られ るLSG・L,実 際 に, 2004抗 弁判 決 で は,「本件 手続 の 開始 時 にセ ル ヒア ・モ ンテ ネ グロが規 程 当事 国で あ ったか 否 か とい う問題 は根 本 的問題 であ る」 (傍点
に 凹
) と述べ られ てお り (46項 ), ア クセ スに 関 して は提 訴 時原則が前提 とされ てい る.、以 上二の ように,2008抗 弁判 決が裁 判 所 ア クセ ス の 欠如 を手続 的 「暇庇」 と捉 え, 治癒 叶能 と■川断 した点 につ いて は, 多 くの問題 が残 る と 言 え よう。第4に,暇船 台癒 原則 の手続 的 な適 用要件 の問題が あ る。 従来 の先 例 で は
,
治臆 され る 暇症 は軽 微 な もの に限 られ てい るが (軒徴性 酎 牛),この輯 徴性 は再提 訴 の簡便性 とい う意 味 で説 明 されて きたO す なわ ち,訴 訟 当事 Li;lが 当初 の請求訴状 と同一 の 請求 を再 度提 起 す れ ば,容 易 に暇 庇 が 治癒 され得 る よ うな場 ITに.暇 庇 は軽 微 で あ り, 非 難 す べ きで な い (1nattaquable)と看倣 され るの で あ る。,他L.
本件 で は この手続 的基準 に関連 して, 次の 2点が 問題 となるo 第 1に,ICJ は, クロア+ アの 申述書 の提 出 を もって,新 た な請求 訴 状 の提 出 と朴 一視 したが (判 決90項 ),申述書 と請求訴状 を同一一視 し得 るか否 か は明 らかで は ないo この点 に関 して は,上記 の ように 1C.】は争点提起 に際 して訴訟 指揮 権 を行 使 して お り, この延 長線 で,新 た な請求訴状 の提 出 を求め る こ とが で きた ように思 われ るO 第2 に, よ り根 本的 な問題 は,被告 FRYの付 した ジェ ノサ イ ド条約9条留 保 と暇庇 治癒 原 則 の関係 であ るO す なわ ち, 本件 において クUアチ アが再 度 (同一 の) 請 求訴状 を提 起 Lた 場 合 を想 定 した と して も.FRYの9粂留 保 に よ り,管 轄 権 を設 定 し得 な い可 能性 が 残 るL571。す なわ ち,判 決時点 で暇庇 が 治癒 され たか 否か を判 断す る場 合,FRY の9条留 保 に よ り,同一請 求 を提起 して も管 轄権 を設定 し得 ないので あ る̀5払lしっ従 って,本件 で は暇庇 の軽微性 が認め られ ない と考 え る こと も可 能 であ るが,ICJ は,暇 庇治癒 原則 の枠 内で は な くノッテ ボーム原則 の適 用 に よって この問題 (9条留 保の法 的効 果 )を処稗 した し後述),,第5に,治癒 可 能 な期 間が 問題 とな るし、蝦漉 治癒 原則が適用 され た先 例 で は,暇庇 は短 期 間の うちに治癒 されて い るか らで あ る し例 えば1996抗 弁 判 決 で は提 訴の9日後 に恨庇 が 治癒 され てい る)。他方 ,本件 で は提 訴時 点 (1999年7月)か ら治癒 時点 (2000年 11月
1口
FRYの国連 加 盟承認 日)まで 1年 以 上‑̲が経 過 して お り,さらに同原則 の適用 は2008年 11月(判 決時) であ り,実 に提 訴 か ら9年が経 過 して い るL, この ように,長期 間の経 過 後,辛 (54) JolntI)eclaraLIOnOfJudgesRanJeva,Shl,K()mmaandParra‑Aranguren,para7
(55) OplnlOndlSSldentedeM leJugeRan」eva,para5 DISSentlngOplnlOnCIfJudgeOwadzl.par° 14,DJSSentlngOpln10nOfJudgeSkotnlk( )V.Pal・a 1.DISSentlngOplnlOnOfJudgeadhot・Kreca, para.83.
66) CR2008/8(Serbla,MrDJer】C),p 25(par;1 lot
(57) DeclaratlOndeM.IeJugeBennouna,p 2.()plnlOnLndlVlduelledeM.le)ugeAbraham,paras. 52,54
(58)DISSentlngOpmlOnOfJudgeallh()(Kreca,paras41‑42 17
533
国際司法裁判所 ジェ ノサ イ ド条約適 用事件 (先 決的抗 弁判決2 0 0 8年1 1
月1 8
日) 後的 ・遡 及的 に暇 庇 を治癒 し得 る とす る と,管 轄権審理 におけ る確 実性 と終 結性 を損 な う 恐 れが あ ろ う(59㌧第6に,本件 におけ る蝦 庇 治癒 J貞則 の適 用 は,関連 す る先例判 断 との矛盾 を抱 えてお り,
第 1点 目に,蝦 庇 治癒 原 則 を適 用 した点 で
,2 0 0 8
抗 弁 判 決 は2 0 0 4
年 抗 弁 判 決 と矛 盾 す るLbl'〔,FRYの 凶連新加 盟 に よって蝦 庇 (ア クセ ス欠如 )が事 後 的 に治癒 され るので あ れ ば,2 0 0 4
抗 弁判 決 の時 点 で も当該 暇 庇 は 治癒 可 能 だ った はず で あ る̀621。 この 間題 につ い て,2 0 0 8
抗 弁判 決 は当事国 に よる請求 の石動 二よって差 異 化 を図 ったr6JL,す なわ ち, クロ アチ ア事件 で は原告が暇庇 治癒 原則 の適用 を要 求 したの に対 して, NATO
事 件 で は同原則 の適用が 要求 され なか った とい うので あ るo特 に,NATO
事 件 で は,原告 が 訴訟継続 の意 思 を有 してい なか った とい う 「特 別 な考慮 要 田」が あ った こ とを指 摘 し (判 決8 9
項 八 二れ が先例 乗離 を正 当化す る 「決定 的理 由」であ る こ とを示 唆 して い るL, しか しなが ら,裁 判 所 ア クセ スの有無 が 当事 国 の意思 に左 右 され ない職権 探 知事 項 で あ る以 上・.,暇舵 治癒 原 則 の適 用 を当事 国の請 求 の有無 に依存 させ る こ とは困難で あ ろ う(64'。第
2
点 目に,2 0 0 7
本案判 決が蝦庇 治癒 原則 を適用 しなか った点 も問題 とな る。同判決 は,1 9 9 6
抗 弁判決 の既 判事項 と して裁判所 ア クセ スの容 認判 断 を導 き出 し,管轄 権 を容認 した ため,暇庇 治癒 原則 を適用 しなか った。 この点 で,2 0 0 7
本案判 決が暇庇 治癒 原 則で は な く 既判力 原則 に依拠 した理 由 は, 1 9 9 6
抗 弁判 決 の効 力 を維 持 す る こ とにあ った と考え られ るo 仮 に2 0 0 7
本案判決 が暇船 台癒 原則 を適 用 してい れ ば,決定 的期 日( 2 0 0 0
年1 1
月1
日) 以前 に下 された1 9 9 6
抗 弁判 決 時 点 の 「暇漉
」(裁 判所 ア クセ スの 欠如 ) を認め る こ とにな り,必 然 的 に1 9 9 6
抗 弁判 決 の無効確 認 を行 うこ とにな る川 5). この帰結 を回避す るため に,2 0 0 7
本 案 判決 は暇庇 治癒 原則の適 用 を回避 した もの と考 え られ る。第
3
点 目に,逆 に,2 0 0 8
抗弁判 決が蝦庇 治癒 原則 を適 用 して 「蝦 庇 」 を認 め た こ とは.1 9 9 6
抗 弁判決 の無効確 認 に繋 が らない のであ ろ うかUこの点 につ い てICJは何 ら言 及 して い ないが,第1に,本件 クロアチ ア事 件 とボ スニ ア事 件 を別個 の事 件 と捉 える こ とに よ り, 影響 を最 小 限 に抑 える意 凶が あ った と考 え られ るO第2
に, よ り根 本 的 な こ とは,2 0 0 8
抗 弁判 決 が 「蝦庇 」の存 在 を明示 に認定 してい ない点 であ る「′す なわ ち,同判 決 は,FRYの69) JolntDeclaratlOnOfJudgesRanJeva,Shl.KoromaandParra‑Aranguren.para8 (60l lbld,para
1 2 ,
‑
(61j lbld‑para.150
L6巧 CR2 0 0 8 / 1 2
(Serbia.Mr.Varady).p2 1
(para4
1)五 (63) この点に関 して,ICJの立論はクロアチアの主張に依拠 している。CR
2 0 0 8 / 1 3
(Croatia.Mr. 畠1mOnOVlと).p3 9
(para171.糾 JolntDeclarationofJudgesRanJeva,Shュ.KoromaandParra・Aranguren.para 15. (65) ボスニア事件の本案段階において,FRYは.Fl国の政利所 アクセスの欠如を根拠 として
1 9 9 6
抗弁判決の権限蹄越 を主張 していたo理論的にも
,2 0 0 7
本案判決が当該アクセスの欠如を (蝦症 と してl認めれば,必然的に1 9 9 6
抗弁判決の無効を認めることになるoこの瓜 二ついては,拙稿 ・ 前掲注e 6 ) 4 0
頁参照018