九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
暑熱・寒冷環境を想起させる映像がヒトの体温調節 に与える影響
髙倉, 潤也
https://doi.org/10.15017/1500798
出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(芸術工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
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(様式 3)
氏
名 : 高 倉i
関也論 文 題 名 : 暑 熱 ・ 寒 冷 環 境 を 想 起 さ せ る 映 像 が ヒ ト の 体 温 調 節 に 与 え る 影 響
区 分 : 甲
論 文 内 容 の 要 旨
ヒトを含む生物にとって、恒常性を保つために環境に対して適応的な反応を行うことは必要不可 欠である。体温調節においては、中枢および末梢に存在する温度受容器により温度の情報を受容し、
それに応じた体温調節反応を行うことにより、深部体温をほぼ一定に保つことが可能となる。この ような温度制御メカニズムは、進化の過程で獲得されてきたものであり、進化の過程において存在 しなかった状況においては上手く機能しない可能性がある。たとえば、現代社会においては各種の 映像メディアを用いることにより、視覚的な情報と温度環境が一致しないという状況も起こりえる。
もし、ヒトの体温調節反応が温度だけでなく視覚的な情報にも影響されるなら、視覚的な情報と温 度環境の不一致は、恒常性の維持にも影響を与える可能性がある。本論文では、このような可能性 についての検討を行った。
第1の実験においては、気温28℃、相対湿度50%に保った人工気候室内にて、 15名の被験 者に対して、 9種類(氷山、雪景色、流氷、砂漠、火山、熱帯雨林、紅葉、せせらぎ、およびコン トロール)の映像刺激をそれぞれ10分間呈示し、その際の心臓血管系指標の計測を行った。また、
映像刺激に対する「暑いー寒い」という印象を評定してもらい、心臓血管系指標変化量の個人内変 動との相闘を求めた。その結果、「暑いー寒いJという印象の評定点と、心拍数、心拍出量、総末梢 血管抵抗の変化量との相闘が有意、拡張期血圧、平均血圧との相関が有意傾向であり、実際の温熱 環境における変化の方向と一致していた。すなわち、視覚的な情報のみによっても体温調節と類似
した心臓血管系の反応が生じ、体温調節に影響を与える可能性が示された。
さらに、上述のような心臓血管系の反応が、映像に対する印象によって生じているものであるか、
それとも、映像の色や明るさなどの物理的な特性によって直接生じているものであるかを明らかに するため、画像処理により映像の物理的特徴を数値化した上で、映像の物理的な特徴、映像に対す
る印象、心臓血管系の指標の3変数の関係を、構造方程式モデルを用いてモデル化を行った。その 結果、映像の物理的な特徴は、映像に対する印象には影響を与えるが心臓血管系反応には影響を与 えておらず、心臓血管系反応は映像に対する印象によって生じたとする仮定が最も尤度が高いとい う結果が得られた。また、循環器動態および光に対する感受性といった生理学的なメカニズムから の考察も、上記の統計的な結果を支持するものであった。
以上のような映像によって生じる心臓血管系の反応が、実際に体温調節に影響を与えるかを明ら かにするため、第2の実験を実施した。第2の実験では人工気候室内で、寒さを想起させる映像(雪 景色)、暑さを想起させる映像(砂漠)、およびコントロール)の3種類の映像刺激を呈示しながら、
気温を 28℃から 16℃へと穏やかに低下させ、心臓血管系指標に加えて、酸素摂取量、平均皮謄
{
温、直腸温の計測を実施した。その結果、暑さを想起させる映像を呈示した条件における直腸温が、コントロール条件と比較して有意に低かった。酸素摂取量には条件間の差は認められなかったが、
暑さを想起させる映像を呈示した条件における平均皮膚温が、寒さを想起させる映像を呈示した条 件およびコントロール条件と比較して有意に高い傾向が認められ、また、核心ー末梢聞の温度勾配 は、暑さを想起させる映像を呈示した条件において、他の条件と比較して有意に大きかった。以上 の結果は、寒冷潔境においては、暑さを想起させる視覚情報の呈示により、体温を維持するために 必要な放熱を抑制するための反応が妨げられたことを示唆している。
このような反応が生じた神経科学的なメカニズムが明らかではないという課題はあるものの、
( 1)暑熱・寒冷環境を想起させる映像を呈示するだけで、実際の暑熱・寒冷環境で生じる反応と