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札幌市中心部の歩道の路面状況と冬期歩行者転倒事故

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北海道の雪氷 No. 27(2008)

Copyright © 2008 (社)日本雪氷学会

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札幌市中心部の歩道の路面状況と冬期歩行者転倒事故

(平成 19 年度冬期)

川村文芳,金田安弘((社)北海道開発技術センター)

1. はじめに

札幌市内における冬期歩行者の転倒による救急搬送者数(以下,転倒事故者数)は,平成 4 年以降 600 人を上回り,それ以前に比べ大幅に増加している.特に平成 16 年度は 1,000 人を 超え,記録として残っている昭和 58 年以降,最高となった.転倒事故増加の背景には,高齢者 の増加やアジアからの観光客の増加などの社会的要因のほか,すべりやすい歩道路面の発生も 一因としてある.著者らは,札幌市中心部の歩道の路面状況調査を平成 18 年度から実施してい る.平成 18 年度の観測では,すべりやすい路面は 12 月に多く発生していた.すべりやすい路 面は,まとまった降雪の後,気温が日中プラス,夜間マイナスを数日繰り返すという気象条件 の下で発生していた.

本報告は,平成 19 年度冬期におけるすべりやすい路面の発生状況を把握すると共に,歩行 者による転倒事故発生との関係を考察したものである.

2. 調査の概要

札幌市中心部に位置する地下鉄バスセンター駅周辺において,歩道の路面状態及びすべりや すさの観測を実施した.概要を以下に示す.なお,分析時に使用した気象データは,札幌管区 気象台の観測値とした.

・ 観測期間:平成 19 年 12 月~平成 20 年 3 月(休日等を除く 48 日間)

・ 観測時間帯:朝の通勤時(午前 9 時~10 時)

・ 観測位置:図 1 参照

・ 観測項目:路面状態(目視による),路面のすべりやすさ(歩行時の体感による)

路面状態(7 分類):こな雪,つぶ雪,圧雪,氷板,氷膜,湿潤,乾燥

路面のすべりやすさ(4 分類):非常にすべる,すべる,ややすべる,すべらない

No.1 No.6

No.5

No.2 No.3 No.4

No.9 No.7

No.8

凡 例 歩道(日向)

歩道(日陰)

横断歩道(日向)

横断歩道(日陰)

図 1 路面状況調査観測位置

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3. 路面状況調査結果

歩道と横断歩道では路面状態及びすべりやすい日の発生状況に違いがみられた.路面状態の 発生状況を図 2 に示す.No.1 から No.6 までの歩道の観測地点では圧雪及び氷板が全体の 8 割 を占めた.近傍にロードヒーティングのある No.1 及び No.4 は氷板の割合が 2~4 割とやや多く なるが,他の歩道地点(No.2,No.3,No.5,No.6)は圧雪が 7~8 割を占め,圧倒的に多かった.

一方,No.7 から No.9 までの横断歩道の観測地点では,圧雪や氷板の割合はそれぞれ 1 割ない し 1 割未満と少なく,つぶ雪や氷膜がそれぞれ 2~3 割を占めて多かった.また,非雪氷路面(湿 潤,乾燥)も 2~3 割と多かった.

すべりやすい日の発生状況を図 3 に示す.なお,すべりやすい日の判定は,観測時に「非常 にすべる」または「すべる」と判定した日である.歩道の観測地点のうち,No.1,No.4,No.5 では,4~6 日発生していたが,そのうち 12 月に 4 日発生していた.一方,横断歩道の地点で は,7~10 日発生し,12 月だけでなく,1 月及び 2 月にも発生していた.特に No.9 は 2 月に 8 日発生した.

以上の結果から,歩道での路面状態及びすべりやすい路面の発生状況は,平成 18 年度とほぼ 同様な傾向を示すことが確認できた.また,横断歩道は歩道と異なる傾向を示すが,これは車 両が走行することや除雪の影響が大きいこと考えられる.

5 5 6 4

6 5 1 1 1

1 5 2 3

1 0 12

14 13

26

33 35 23

29 26 4

5 3

11

5 3 18

6 1 3

3 4

0 0 0

0 0 0 7

9 7

1 0 0

0 0 0 8

5 9

4 0 1

0 0 0 6

4 4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

☆歩道(No.1RH)N=48

★歩道(No.2)N=48

☆歩道(No.3)N=47

★歩道(No.4RH)N=48

★歩道(No.5)N=42

☆歩道(No.6)N=32

◇横断歩道(No.7)N=41

◆横断歩道(No.8)N=41

◇横断歩道(No.9)N=41

こな雪 つぶ雪 圧雪 氷板 氷膜 湿潤 乾燥 地点名のマーク

☆歩道(日向)

★歩道(日陰)

◇横断歩道(日向)

◆横断歩道(日陰)

RH:ロードヒーティング

図 2 路面状態の発生状況

4 1 0

4 4 0

3 3 2

1 0

0

1 0 0

1 1 1

0 0

0

0 0 0

3 3

8 0

0 0

1 0 0

0 1

0

0 2 4 6 8 10 12

☆歩道(No.1RH)N=48

★歩道(No.2)N=48

☆歩道(No.3)N=47

★歩道(No.4RH)N=48

★歩道(No.5)N=42

☆歩道(No.6)N=32

◇横断歩道(No.7)N=41

◆横断歩道(No.8)N=41

◇横断歩道(No.9)N=41

発生日数

12月 1月 2月 3月 地点名のマーク

☆歩道(日向)

★歩道(日陰)

◇横断歩道(日向)

◆横断歩道(日陰)

RH:ロードヒーティング

図 3 すべりやすい日の発生日数(非常にすべる,すべると判定された月別の日数)

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4. 冬期歩行者転倒事故との関係

(1) 札幌市における冬期歩行者の転倒事故者数と気象の関係(最近 4 冬期)

図 4 は最近 4 冬期(平成 16~19 年度)の冬期歩行者の転倒事故者数と気象との関係を示し たものである.平成 19 年度の転倒事故者数は 606 人で最近では最も少なかった.最近 4 冬期 では,転倒事故者数は減少傾向にある.また,12 月から 3 月までの月別の転倒事故件数をみる と,12 月及び 3 月は変動が大きいことがわかる.

12 月は平成 17 年度及び平成 19 年度で転倒事故者数が少なかった.平成 17 年度は平均気温 が平年より 1 ℃程度低かった.また,平成 19 年度は月の降雪量が 70 cm 程度で平年の半分し かない状況だった.3 月は,12 月と同様に平成 17 年度及び平成 19 年度で転倒事故者数が少な かった.平成 17 年度は平均気温が平年より 1 ℃程度高かった.また,平成 19 年度は平均気温 が 3 ℃高く,降雪がかなり少なかった.

一方,1 月及び 2 月は 12 月及び 3 月のような転倒事故者数の変動はみられなかった.札幌で は,12 月及び 3 月に気温が 0 ℃前後となることが多いことから,気象状況により路面状況の 変化が大きく,転倒事故件数が変動するのではないかと考えられる.

H16過去最高

※転倒事故データ:「札幌市消防局集計値」

※気象データ:「札幌管区気象台観測値」

※グラフ縦軸の白抜き数字は平年値を示す

12月

316人 155人 371人 190人

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

16年度 17年度 18年度 19年度 転倒事故者数 降雪量(cm)

-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

気温(℃)

- 1.0 137

1月

168人 159人 180人 234人

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

16年度 17年度 18年度 19年度 転倒事故者数 降雪量(cm)

-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

気温(℃)

- 4.1 1 82

2月

205人 233人 239人 226人

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

16年度 17年度 18年度 19年度 転倒事故者数 降雪量(cm)

-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

気温(℃)

-3 .5 15 4

3月

167人 78人 80人 178人

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450

16年度 17年度 18年度 19年度 転倒事故者数 降雪量(cm)

-5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

気温(℃)

0 .1

10 6

気温1℃程度 低い

降雪が平年 の半分

12月

2月 3月

1月

気温1℃程度 高い

気温3℃高く降 雪かなり少ない

12 -3月合計

1,009

68 9 87 6

60 6

0 2 00 4 00 6 00 8 00 1,0 00 1,2 00

1 6年度 1 7年度 1 8年度 1 9年度 転

倒 事 故 者 数

救急搬送者数 気温(平年)

気温 降雪量(平年)

降雪量

図 4 冬期歩行者の転倒事故者数と気象の関係

(2) 冬期歩行者転倒事故の特徴

平成 19 年度の転倒事故者数 606 人のうち,市内在住者が約 9 割を占めた.転倒場所は「道 路(歩道)」が 49 %で最も多く,次いで「道路(一般道路)」が 32 %となった.道路(歩道及 び一般道路)での転倒事故が全体の約 8 割を占めた.残る約 2 割は,多い順に「住宅」,「道路

(屋外駐車場)」,「公衆出入り場所」,「道路(その他)」,「仕事場」となった.年代は 10 代か ら 40 代までで全体の約 4 分の 1,50 代から 80 代までは全体の約 4 分の 3 を占め,50 代から多 い傾向がみられた.性別は約半数ずつ,救急車の出動場所は中央区が 30 %と最も多く占めた.

傷病の程度は,軽症が 65 %,中等症が 33 %,重症が 2 %であった.

転倒事故のうち,道路の路面状態が深く関係すると考えられる道路(歩道及び一般道路)で 発生した事故を抽出して,同様に統計を行った.道路(歩道及び一般道路)での転倒事故者数 は 492 人であったが,転倒事故の特徴は前述した全体の特徴とほぼ同様な傾向を示した.

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(3) 冬期歩行者転倒事故とすべりやすい路面との関係

図 5 は転倒事故者数と路面のすべりやすさの判定結果を示したものである.路面状況調査は 札幌市中心部を対象としたため,転倒事故者数は中央区の道路(歩道及び一般道路)で発生し たものを対象とした.図中の枠で囲んだ期間に着目すると,転倒事故者数が多いとき,すべり やすい路面が発生している傾向が伺える.12 月 17 日~20 日及び 2 月 24 日~25 日は「非常に すべる」と判定した箇所があるが,それぞれ前後より転倒事故者数が多く,特に 2 月 24 日~25 日は顕著である.このことから,すべりやすい路面は転倒事故を発生させる一因になっている と考えられる.

冬期歩行者転倒事故と路面の滑りやすさ(H19年度、中央区道路=151件)

0 2 4 6 8 10 12

12/10 12/17 12/24 12/31 1/7 1/14 1/21 1/28 2/4 2/11 2/18 2/25 3/3

(※表示している月日は月曜日)

転倒事故者数

道路での転倒事故件数 歩道(No.1)

歩道(No.2)

歩道(No.3)

歩道(No.4)

歩道(No.5)

歩道(No.6)

横断歩道(No.7)

横断歩道(No.8)

横断歩道(No.9)

すべらない ややすべる すべる 非常にすべる

※転倒事故データ:「札幌市消防局集計値」

転倒事故者数が多いとき、すべりやすい路面が発生

図 5 転倒事故者数と路面状況の関係(中央区の道路(歩道及び一般道路) )

5. まとめ

平成 18 年度に引き続き,札幌市中心部において冬期の歩道等の路面状況について調査を行 った.歩道における路面状態は圧雪や氷板が 8 割を占めて圧倒的に多く,12 月にすべりやすい 路面が発生する傾向は平成 18 年度とほぼ同様であった.一方,横断歩道は歩道とは異なる傾向 を示したが,これは車両が走行することや除雪の影響が大きいことが考えられる.冬期の歩行 者による転倒事故者数は 606 人であったが,8 割が道路(歩道及び一般道路)で発生し,その うち約 9 割が市内在住者,約 4 分の 3 が 50 代以上,約 3 割が中央区で発生していることがわか った.また,転倒事故者数が多いとき,すべりやすい路面が発生している傾向が伺えた.この ことから,すべりやすい路面は転倒事故を発生させる一因になっていると考えられる.

今後は,すべりやすい路面(つるつる路面)の発生条件及び過程の整理やすべりやすさの簡 便で定量的な測定,歩行者の違いによるすべりやすい路面の発生状況の把握,朝以外の時間帯 の路面状況の詳細な把握等に取り組んでいきたいと考えている.

(参考文献)

1) 川村文芳,金田安弘,2007:平成 18 年度冬期における札幌市中心部の歩道の路面状況につい て,北海道の雪氷 No.26,9-12

参照

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