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植生における水循環

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Academic year: 2021

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(1)

降水が植生を介して大気や河川に移動する順番で解説します

( 1 )遮断蒸発

( 2 )浸透・流出・土壌浸食

( 3 )水ポテンシャルと根系における吸水

( 4 )通導組織による水の移動

( 5 )気孔コンダクタンスと蒸散

植生における水循環

主なネタ本→

(2)

はじめに: 地球システム・生態システムにおける水循環の重要性

1

) 水蒸気と雲は、主要な温室効果物質である。

2

) 地表面から大気への乱流によるエネルギー輸送(潜熱熱+

顕熱)において、その約

77

%を潜熱による輸送が占める。

3

) 植生分布は降水量の多寡により強く規定されるなど、水循 環は生物地球化学過程も大きく制御する。

4

) 現在、人は普通にアクセスできる淡水のうちの半分を利用 している

地球放射の大 気中の減衰

(3)

遮断蒸発( Canopy Interception )

樹冠には、典型的には、針葉樹林では降水の

15

%程 度を蓄え、広葉樹林では降水の

5

10%

を蓄えるこ とができる。

遮断蒸発の割合は、針葉樹・広葉樹の別の他に、葉量

・樹形・樹皮テクスチャ・樹冠構造・雨の降り方など に応じて異なる。

例えば、樹冠構造が入り組んで、乱流の発生しやすい 植生では、一般に遮断蒸発量が高くなるが、このよう な条件における遮断蒸発速度は、正味放射量や飽差と 強く相関せず、また昼夜の差も小さい。

樹冠に遮断される降雪の割合は、降雨のそれの倍にも 達することがしばしばである。ツンドラのように雪面 が常に直射に晒される場所、または大陸性の亜寒帯林 のように降水量と風速の低い場所では、それぞれ約

30%

と約

50%

の冬期降水が昇華によって失われる。

実測例:様々なユーカリ属における葉面積と樹冠 に貯蔵可能な水量との関係

図:加藤知道監訳「生態系生態学第

2

版」森北出版

(4)

遮断蒸発の扱い例:

LPJ-DGVM モデル (Gerten ら 2004 による水文過程改良版 ) の場合

E I = min(α*E q , I sc )

E I 遮断による一日の蒸発量 (mm/day) α Priestley-Taylor 係数 (1.32)

E q Priestley-Taylor 式により算出される平衡蒸発散量 (mm/day) I sc 遮断蒸発貯留量( mm/day )

I sc = P × LAI × i × f v

P 一日の降水量 (雨と雪は区別しない , mm/day ) LAI 葉面積指数 (m 2 /m 2 )

i 植生タイプごとのパラメーター(右の表を参照)

f v 植被率(フェノロジーの効果込み , 0.0~1.0 )

Priestley-Taylor

式から算出される水制約の無い時の蒸発量

樹冠に貯留できる最大水量。これから溢れた降水のみが地表に到達する 針葉と広葉とで

3

もの差があるが、こ れは

Biome

ごとの雨 の降り方の違いの効 果も暗に表現してい るため

Gerten et al. (2004) J. Hydrol. 286

(5)

「森林伐採に伴う土壌流出は、人類の歴史において繰り返し文明を崩壊させて

きた」

“ ”

ジャレド・ダイアモンド 文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの より

地表面の状態は、地中への水の入りやすさに影響する

浸透できなかった降水の一部は地表流出し、しばしば土壌浸食を起こす

地表面から地中までの水の流れと土壌浸食( Infiltration )

米国南部:不適切な耕作が土壌浸食をもたらした例

出典:片岡夏実訳「土の文明史」築地書館

植被は、地表面における保水力維 持と、土壌への有機物の投入を通 じて、一般に降水の土壌への浸透 を促進する。

土壌生物による土壌の団粒構造や パイプ構造の形成を促進すること で、土壌の透水性と保水力を高く する。

(6)

森林は、遮断蒸発と蒸散のために、河川流出量を減少させる。

しかし、森林は、降水時に地表流となって一時に流出する水量を抑え、土壌に保水 した水を中間流や地下水流として徐々に河川に流出させるために、河川流量を平滑 化させる。

図の出典:藤森隆郎「森林生態学」全国林業改良普及協会

時間

(7)

図の出典:塚本良則「森林水文学」文永堂出版

日本中部と同緯度のアメリカ南部アパラチャ山 系にある

Coweeta

試験地で行われた流域実験 の結果。

7

年間の平均値。

5

月初旬から

10

月 中旬までが蒸散期間。降雨は年間を通じてほぼ 一定。

実際のハイドログラフ

蒸散が最大の時期と流出量 が増加する時期との間に明 らかなギャップがある

(8)

森林の下層植生バイオマス・リタ ー量と土壌への浸透能力との関係

間伐の遅れたヒノキ林では、土壌の浸透能力が大幅に低 下し、土壌流出量が高くなる。

土地利用の放棄が土壌浸食を生じさせるという、

過去に例を見ないタイプの土壌流出が現在日本で進行している

様々な森林における土壌浸食量

地表面が下層植生や枯死物で厚く覆われ ているほど、土壌への浸透能力は高まる

ヒノキ林ではリター 層が著しく発達しに くい

余談:放棄人工林における土壌流出

(9)

放棄された人工林がもたらす問題

保水力低下と 土壌流出

台風や豪雨によ る崩壊リスク

放棄された人工林

東海豪雨による森林崩 壊(沢抜け)の例

間伐している人工

2122調

日本の森林は

40

%以上が人工林であるが、間伐が間伐対象林齢の 森林の半数程度しか実施されていない。放棄人工林は、いずれ広葉 樹から成る自然林に遷移するが、その過程で公益上の諸問題が生じ る

(10)

CREST 課題 「荒廃人工林の管理による流量増加と河川環境の 改善を図る革新的な技術の開発」の成果

様々な野外操作実験により、林床植生やリターの量と、降水の土壌浸透能

力・土壌流出量との定量的関係が明らかになっている。

(11)

強度の間伐を行う事が放置人工林対策になる

強度間伐後の下層植生の回復 間伐後の林床照度変化

強度の間伐により林床が明るくなり、下層植生が回復する。これに伴って、林床の最大浸

透速度が増大し(保水力の増加)、土壌流出速度が低下する(土壌流出の阻止)。そのよ

うな森林は徐々に温帯広葉樹林へ戻り、やがてメンテナンスフリーとなると期待される

(12)

土壌流出の広域シミュレーション Revised USLE* (RUSLE)

による土壌移動速度

= R×L×S×K×C×P

R :表層流出量の関数 L :斜面長の関数

S :斜面傾斜の関数

K :土壌の流れやすさの関数 C :植被による関数

P :管理の関数

*

土壌流出量の代表的な経験モデル

USLE

the Universal Soil Loss Equation

)の改訂版

出典:佐藤ら

(2018)

日本土壌肥料学雑誌

89

USLE

を組み込んだ

VISIT

モデルによる、現在の土壌流出量の分布

(13)

出典:

Ito (2007) GRL34

気候変動

土地利用変化

気候変動のみ

MIRIC@A1B

シナリオ)

土地利用変化のみ

21

世紀中の変化のシミュレーション

RUSLE

を使用した全球シミュレーション例:

表土流出に伴う炭素流出量@現在気候

アジアモンスーン域のように総水量の増大が 予測される地域にて、顕著な増大が予測され ている

温帯域においては、現在も生じている植生回 復トレンドが持続し、それが減少トレンドを 生じさせている?

(14)

表の出典

:

佐藤・安成

(2014)

渡邊ほか編「臨床環境学」

2

章、名古屋大学出版会

値の出典

:

久馬

(2005)

「土とはなんだろうか?」、 京都大学学術出版会

ある推定によれば、世界の陸地に おいて 1 ha あたり土壌生成速度は 平均 570 kg/

*

これは厚さにすると、概ね 0.057

mm/

これを遙かに上回る速度で、土壌 の流出が生じている。その主な理 由は、人の土地利用と考えられる

現在、人の土地利用が土壌流出 量を大幅に増大させている

*

(15)

土壌ー植物ー大気間の水の流れ

水は、水ポテンシャル

(ψt)

が、高い方から低い方へ向かって移動 す る

Ψt = Ψp + Ψm + Ψo + Ψg

Ψt :

合計水ポテンシャル。地面直上に置いた純水を

Ψt=0

と定義 する

Ψp :

水力(

Hydrostatic pressure

)ポテンシャル

Ψm :

基質(

Matrix

)ポテンシャル

Ψo :

浸透(

Osmetic

)ポテンシャル

Ψg :

重力(

Gravity

)ポテンシャル 土壌ー植物ー大気間の水

ポテンシャル勾配

(図中の値は、おおよその範囲)

土壌から葉への吸水速度=

基質ポテンシャルと重力ポテンシャルで決まる。

-6kPa

より弱い張力で保持されている土壌水は、重力ポテンシャルで速や

かに排水される。

-150kPa

の毛管連絡切断点より強い張力で保持されて いる土壌水(難有効水)は、植物は根の周辺のみから吸水できる

細胞質の溶質のモル濃度で決まる浸透ポテンシャル(マイナス値)と、細胞 壁が水を押し出そうとする圧ポテンシャル(プラス値)の和で決定される

重力ポテンシャル

=

樹高

(m) ×

重力加速度

(

9.8 N/Kg)

= 樹高

(m) ×9.8 kPa

(16)

図の出典:

森林立地学会編「森のバランス」

葉の含水率と水ポテンシャル

水ポテンシャルが

0

のときの 細胞内の水分量を

1

とした時の 相対値

圧ポテンシャルが

0

となる相対含水率より もさらに含水率が低下すると原形質分離が 起きる

水ポテンシャル(実線)は

、圧ポテンシャルの分だけ

、浸透ポテンシャル(破 線)よりも高い(吸水力が 低い)

写真の出典:

Wikipedia”

原形質分離

(17)

図の作成:大槻恭一

吸引圧 h(cmH 2 O) の常用対数 pF=log 10 h

33 c m H

2

O

1000 c m H

2

O 15900cm H

2

O

植物の生長や水の移動において 重要な土壌状態を示す値

土壌含水率の低下ととも

に基質ポテンシャルは高

まる

(18)

水分定数は土壌の種類に強く依存する

図の作成:大槻恭一

土壌の種類ごとの圃場容水量 (Field Capacity) と萎れ点( Wilting

point )

土壌含水率 大 小

圃場容水量:水頭が

-0.033MPa

(約

- 0.33mH

2

O

pF=2.5

永久萎れ点:

-1.5MPa

(約

-

150mH

2

O

pF=4.2

(19)

表の作成:大槻恭一

水ポテンシャルは様々な単位で表される

吸引圧

(cm)

は、符号を入れ替えて

hPa

と読み替えても、大 体合う。ので、ザックリと、-

10

(g)

hPa

(20)

表の作成:大槻恭一

空気侵入ポテンシ ャル(

ψ

m の最大 値。

Ψ

m がこの値 の時に、土壌空隙 は全て水で満たさ れている)

Ψ

m

=-33cm

となる体 積容水率

(

圃場容水

)

Ψ

m

=-1500cm

となる体積容 水率

(

成長阻害水分点

)

水力コンダクタン

体積容水率 θ とマトリックス

ポテンシャル ψ m との関係

(21)

ところで、先の表では

ψ

m

-33kPa

のシルト質土の含水率

θ

-33

0.33m

3

m

-3 であり 上の結果と一致しない。表中の値は、土性別の土壌について測定された平均値であり

、パラメーターの平均値を用いて推定した含水率とは必ずしも一致しない。

作成:大槻恭一

先の表のシルト質壌土のパラメーターを用いて、マトリックスポテンシャル

ψ

m

- 33kPa

-10kPa

における体積含水率

θ

を求めよ。なお、飽和含水率

θ

s

0.5m

3

m

-3 とする。

例題

手順

1

θ

ψ

m の関係式を変形 手順

3

)手順

1

の式に、各パラメーター値を代入

手順

2

)シルト質壌土の

ψ

e の単位を変換

−0.21 m × 9.8 = − 2.058 kPa

(22)

土壌に入った水は、圃場容水量

(Field capacity;

重力と基質ポテンシャルが釣り合った状 態

)

に達するまで、または母岩や凍結層に達するまで、下方に移動する。

その際の移動速度は、 水力コンダクタンス(

Hydraulic conductance

)に規定される。

K

sat :飽和時の水力コンダクタンス

Z

  :深さ(深いほど大きな正の値)

F

  :正の値を持つ定数

粒子の粗い土壌ほど、圃場容水量は低く、また水力コンダクタンスは高い。また、水力コン ダクタンスは、土壌深度と共に急速に低下する(下式のようにモデル化される)。

Js = ΔΨt ×K / l

l :

経路長

K :

水力

conductance

土壌中の水の移動速度(

Js

)は、水ポテンシ ャルの勾配と、水力コンダクタンスで決まる

また、水力コンダクタンスは、土壌の乾燥と共に急速に小さくなる。これは

matrix potential

が強くなるのと、土壌中の水の流路が大幅に伸びるため。

土壌には通水抵抗があるため水ポテンシャル勾配の解消には時間がかかる

(23)

シベリアのカラマツにおける、吸水速度と蒸散速 度の時系列変化。明け方は、幹に蓄えた水で蒸散 を行い、失われた水は夜間に recharge される。

木本の幹には、多くの場合、 5 ~ 10 日分の蒸散 量に相当する水が含まれている。

植物体には通水抵抗があるため水ポテンシャル勾配の解消には時間がかかる

根の中の通水経路には、細胞壁や細胞 間隙を通るアポプラスト経路と細胞内 を通るシンプラスト経路があるが、根 内には菌類等の侵入を抑えるカスパリ ー線があるため、アポプラスト経路で あっても

1

度は細胞内を通過する

図:加藤知道監訳「生態系生態学第

2

版」森北出版

(24)

図の出典:

Lee et al. (2005) PNAS 102

Hydraulic Redistribution

根系を介した土壌水の再配分のこと。土壌深部 から土壌浅部への、土壌水の持ち上げのみ現す 際には Hydraulic Lift とも呼称される。

これらは気孔が閉じているとき、根系が 2 形性

(例えば、直根と側根の組み合わせなど)、土 壌粒子が細かくて水が浸透しにくい、などの条 件下で発生しやすい。

Hydraulic lift で再配分される土壌水量は、蒸散 量の 14 ~ 33 %という報告もあり、無視できな い。土壌浅部は深部よりも栄養塩量も土壌生物 量も多いため、 Hydraulic lift は生態系全体の 生産性を増加させることに寄与するようである

直根

側根 降雨があったタイミング

(25)

図の出典:

Lee et al. (2005) PNAS 102(49)

アマゾン盆地における影響評価 蒸発散速度 地表気温

全球における影響結果

蒸発散速度 地表気温

年平均緯度帯ごと 季節変化

Hydraulic Redistribution は、全球水循環に大きな影響を与えてい る可能性が指摘されている

大気循環モデル

CAM2

と陸面過程モデル

CLM

との結合モデルを用いた影響評価シミュレーショ ン

しかし、このメカニズムを取り込んだ動

的全球植生モデルは、多分存在しない

(26)

根の鉛直分布

(土壌含水率の鉛直分布と相互作用がある)

生活型ごと

Biome

ごと

隣接した草地と灌木地帯間 における、水ポテンシャル の鉛直分布。草本よりも木 は、より深くに根を伸ばす ため。土壌の深いところま で乾燥させる

草本よりも木本、木本よりも灌木で、深い根を持つ傾向あり。

ただし、同じ生活型や Biome であっても、膨大な多様性があ

る 広域植生モデルにおいては、草本と木本間のみに鉛直方向の

水競争を仮定することが一般的。

(27)

Root Depth に関するメタ解析の結果 (Fan et al. 2017)

図の出典:

Fan et al. (2017) PNAS 114 (40)

A. 年降水量

B. 土壌テクスチャ C. 土壌の厚さ

D. 植物の生活型 E. 植物の分類群

F. 地下水位

影響あり

顕著な影響あ

2200

以上の観察データを用 いたメタ解析の結果。メタ解 析とは、複数の研究結果を統 合した、より総合的な見地か ら分析のこと。

(28)

図の出典:

Fan et al. (2017) PNAS 114 (40)

種群に関わらず、

Root depth

は、年降水量ではなく、地下 水位によって制御されていることが分かった

最も顕著な影響を与えた地下水位について、更なる解析を行 うために、種群(

genera

)ごとに、

root depth

と年降水 量との相関、

root depth

と地下水位深との相関を、それぞ れプロットした。

根系の深さは、環境条件に応じた表現型可塑性の 程度がとても大きい。

幾つかの DGVM では、土壌乾燥度に応じて、地 上部と地下部の NPP 配分比率を変えてやることで

、この表現型可塑性を表現している。

(29)

図の出典:

Fan et al. (2017) PNAS 114 (40)

先のメタ解析と

Consistent

な観測事例。

同じ気候区に生育している 同じ種であっても、地下水 面の深さに応じて根の深さ が異なる

シベリアニレ

Plains cottonwood (

ポプラの一種

)

地下水位の位置

(30)

図の出典:

Fan et al. (2017) PNAS 114 (40)

地下水位が、ある程度浅い(

5

m程度まで)

場合に、根深と地下水位の関係は、最も顕著 に生じる

(31)

Fisher et al. (2018) GCB 24

← パッチ間で異なる水資 源プールを持つ

ED2, LPJ-Guess

な ど)

水資源を巡る競争の植生モデルにおける表 現

← 半乾燥帯などでは、木本は広い根系を持ち、広 い面積から土壌水を集めることがあるが、このよ うな機構を扱う広域植生モデルは無い

← 全てのパッチが同一の 水資源プールを共有

CLM, SEIB

など)

実際の状況は、これらの中間。

パッチやギャップの大きさ、

根系の水平分布に応じて、適 切なサイズが決まるはず

他方、殆どの植生モデルが土壌水の鉛直方向の

競争は考慮する(でも、きちんと検証してな

い)

(32)

幹における水の流れ

樹木は根から水分と養分を吸収し、幹を上昇して樹冠部に達し、葉で 太陽光線を受けて光合成を行う。この光合成産物が木部と樹皮部の間 の形成層に送られ、ここで細胞分裂が生じ、樹木は成長する。

初め未着色である年輪はある程度古く なると着色される。未着色の部分を辺 材といい、着色された部分を心材とい う。

辺材の細胞は生きていて、水分を通し たり養分を貯蔵したりしているが、心 材の細胞は既に死んでおり、幹の機械 強度を保つ以外の機能は喪失している。

心材には、耐朽性を保つための物質が 蓄積されている。

きれいな正相関を持つ。

傾きは、種や環境によって異なる

北米に分布する3つの針葉 樹種において観察された、

辺材断面積と葉面積との間 の相関

心材と辺材

(33)

幹内の通導組織の水中は、水の凝集力と壁面への付着力に よって維持される。

よって、水コンダクタンス(通導性)とキャビテーション

(通導組織の水中が切れてしまうこと)のリスクとの間に は、正のトレードオフが生じる。

寒冷地の木本は、凍結によるキャビテーションのリスクに 晒されるため、細い導管を多数持つ種が多く、また導管の

refill

が出来る種もある。

← キャビテーションが生じる植物体の水ポテンシ ャル(横軸)と、生育地の土壌における最低水ポ テンシャル(縦軸)との関係。正の相関がある。

通導組織の導水性とキャビテーション

(34)

気孔と蒸散

気孔は広葉の場合は葉の裏側に分布する。葉面の気孔以 外の部位は、クチクラという不透水層で覆われている。

したがって、顕熱の交換は葉の両面で生じるが、樹幹が 乾燥している時の潜熱の交換は、ほぼ葉の裏面でのみ生 じる。

図:熊谷朝臣

気孔の数は、

1 cm

2 あたり約一万個。気孔面積の葉面積 に対する比率は

0.3

3%

を占めるにすぎない。水の蒸 散は、この面積比に比例するわけでは無く、一種のオア シス効果(水面の点在効果)により、葉面全体が濡れて いる時の

10%

程度の効率で、蒸発が生じる。

植物が気孔を開く理由は

CO

2 の取り込み。気孔からの 水蒸気の放出は、一般にコストと考えられている

*

。 従って、その開口度は、植物の水ポテンシャルに応じて 制御される。

葉肉細胞間隙。その葉内におけ る体積割合は、種や葉によって 異なり

20

80

*

葉を冷やす事で、葉の温度を光合成に適した範囲に収める機能を持つとの指摘もあるようです

(35)

気孔コンダクタンス

気孔のガスの通りやすさを気孔コンダクタンスと呼ぶ。

気孔コンダクタンスの逆数が気孔抵抗である G cG h がゴッチャに扱われている気がす るので注意。水蒸気は CO 2 よりも分子量が 小さく、より拡散しやすいので、以下の関 係が成り立つ。

G h = 1.56×G c

光合成速度 A と気孔コンダクタンス G c の間 には次の関係が成り立つ。

A = G c × (C a - C i )

また、蒸散速度 E と気孔コンダクタンス G h の間には次の関係が成り立つ。

E = G h × (H i - H s )

記号 説明 よく使われる単

G

c 気孔コンダクタンス

CO

2

mol CO

2

m

-2

s

-1

G

h 気孔コンダクタンス

(

蒸気

)

mol H

2

Om

-2

s

-1

C

s 葉表面の

CO

2濃度

μmol mol

-1

C

i 細胞間隙の

CO

2濃度

μmol mol

-1

H

s 葉表面における水蒸気濃

mmol mol

-1

H

i 細胞間隙の水蒸気濃度

mmol mol

-1

A

光合成速度

μmol CO

2

m

-2

s

-1

E

蒸散速度

mmol CO

2

m

-2

s

-1

葉内は湿度

100%

と仮定できるので、

H

i は葉温から算出できる。

CO

2 濃度は、

ppmv

がそのまま使える

(36)

図:

熊谷朝臣

大気

200 ”Mr. WaterVapor”

1 分子の CO 2 を取り込むために、例えば 200 分子 * もの水分子が、葉から流出する

1 ”Mr. CO

2

*

以下の環境条件下の概算値 気温

30℃

、相対湿度

60%

、 大気中

CO

2 濃度

400PPM

気孔内

CO

2 分圧が大気の

70%

水蒸気と

CO

2 の拡散係数比は

1.56

とした

葉内

実習:上の

200

分子の根拠を示せ。な お、

30℃

の飽和水蒸気圧は約

40hPa

、大気圧は、海抜

0m

付近で約

1000hPa

である

(37)

気孔コンダクタンスについての経験的知見

葉面からの蒸散速度は、飽差と風速、そして気孔コンダクタンスにより制御されている。

気孔コンダクタンスには、次の経験的知見が得られている。

(1) 暗黒下ではほぼゼロ。光強度と共に上昇し、やがて飽和する。

(2) 空気が乾燥すると下がる。

(3) CO 2 濃度が上がると下がる。

(4) 土壌水分が不足すると下がる。

(5) 葉の水ポテンシャルが下がると下がる。

(6) 夜がくると(明るくても)下がる種もいる。

このように気孔コンダクタンスの反応は複雑で、制御の生理メカニ

ズムも完全には分かっていない事もあり、半経験的モデルにより扱

われる

(38)

現在広く利用される気孔コンダクタンスモデルの構造

Jarvis 型 BWB 型

Leuning 型

g

気孔コンダクタンス

g

max 最大の気孔コンダクタン

g

min 最低の気孔コンダクタン

k

n 経験的な定数

Γ CO

2補償点 大気の乾燥度を表す変数として、相対湿度と

飽差の

2

種類が混在している。

Jarvis

型モデルは、光合成速度を必要としない(観測し

た気象要素と

CO

2 濃度のみの関数)ため、観測系の研究 者に人気

BWB

型モデルは、光合成速度の関数とするこ とで、より実際の生理機構を反映させた。こ れはシンプルながらも実測値と良く合うため に、多用されている。

Leuning

型モデルは、相対湿度の代わりに飽差を用いる。これは、実

際の気孔コンダクタンスが相対湿度では無くて飽差に依存している ため。ついでに、

CO

2 補償点を考慮に入れ、低

CO

2 濃度下の挙動を 正確に表現した。

g = g

max

× f

1

(

光強度

) × f

2

(

飽差

) × f

3

(

大気中

CO

2 濃度

) × f

4

(

気温

) × ‥

) / 1

( ) CO

(

2 3

2

min

k k

g

g

大気中 濃度 飽差

光合成速度

 

濃度 大気中

相対湿度 光合成速度

2 1

min

CO

 

g k

g

(39)

Big leaf

モデル

Ball 型モデルの検証例

出典:

Ball et al. (1987)

様々な環境条件下における光合成速度

(A

、横軸

)

と気孔コンダクタンス

(g

、縦

)

との関係

h

s

:

相対湿度

c

s

: CO

2 濃度

Ball

型関数の出力(横軸)と

気孔コンダクタンス(縦軸)との関

(40)

大気乾燥度の変化予測 * は、飽差と相対湿度とで大きく異なる

20 世紀末 21 世紀末

20 世紀末 21 世紀末

相 対 湿 度 飽 差

東経 20 度 南北縦断ライン

21 20

東経 20 度 南北縦断ライン

21 20

* IPCC-AR4 A1B CO2MIROC-AGCM 10

このような、「飽差が増大しても、相対湿度は殆ど変化

しない」という予測は、多くの GCM から得られている

(41)

4 2. 4 h P a

@30 ℃ RH 70%

@35℃

相対湿度

70%

56 .2 h P a

大気中の

CO

2 分子数が変わらなけれ ば、

VPD

は上昇、

RH

は下降、しか し変化の割合は前者の方が大

VP=

29.7 VPD=

12.7

VP=

39.3

飽差

=

16.9

飽和水蒸気圧は気温と共に上昇

飽差と相対湿度の挙動が異なる理由の一つ

飽 和 水 蒸 気 圧 (h P a)

気温 (ºC) VP=

29.7 VPD=

26.5

@35℃

RH 52%

実際には、高い

VPD

は高い蒸発散 効率をもたらすので、

RH

は比較的 安定する(しかし

VPD

の拡大分は 全て埋まらない)。

短縮形一覧(これら は業界で一般的で す)

VP:

水蒸気圧

Vapor Pressure

VPD

:飽差

(Vapor Pressure Deficit)

RH

:相対湿度

(Relative Humidity)

(42)

相対湿度を用いた気孔コンダクタン スモデルは、現在においても多くの 気候モデルや地球システムモデルで 利用されている

Land Surface Model GCM Nation

CLM4 NCAR-CCSM4.0 USA

CLM3 NCAR-CCSM3.0 USA

LSM NCAR-PCM1 USA

Friend and Kiang GISS-ER USA

LM2 GFDL-CM2.0 USA

LM2 GFDL-CM2.1 USA

MOSES-2 UKMO-HadGEM1 UK

MOSES-2 UKMO-HadGEM3 UK

CTEM-CLASS2.7 CCCMA-CGCM3.1 Canada

BCC-AVIM BCC-CM1 China

CLM3 FGOALS-s2 China

ISBA BCCR-BCM2.0 Norway

ISBA CNRM-CM3 France

ORCHIDEE IPSL-CM4 France

JSBACH/BETHY ECHAM5/MPI-OM Germany Roeckner et al. MIUB-ECHO-G Germany/

Korea Based on SiB MRI-CGCM2.3.2 Japan MATSIRO MIROC3.2(hires) Japan MATSIRO MIROC3.2(medres) Japan Gordon et al. CSIRO-MK3.0 Australia Gordon et al. CSIRO-MK3.5 Australia

Sim-CYCLE(VISIT) Japan

SEIB-DGVM Japan

ED USA

NOAH-GEM USA

IBIS USA

IBIS-2 USA

SiB2.5 (SiB3?) USA

VISA USA

作成: 高橋厚裕

(G C M

E S M )

(L S M )

飽差

(Leuning type model)

相対湿度

(BWB type model)

Stomata conductance

is a function of

(43)

SEIB-DGVM を用いた感度分析@アフリカ大陸

今世紀末にかけて、全体に植物生産力が強まるという予測。

気孔コンダクタンスモデル間の差は、地図上では目立たないが、、

MIROC-GCM

出力

@IAR4-A1B

シナリオ

*

飽差の関数

( Leuning モデ ル)

相対湿度の関数

( BWB モデル)

20

世紀末の気候条件におい て、大陸全体の

GPP

が大体 一致するようにパラメーター を推定

State at the end of

S at o et a l. (2 01 5) J G R -B io ge . 1 20 (5 )

(44)

21

世紀中

GPP

変化量の、モデル間の 差分

(Leuning

モデル –

BWB

モデル

)

いずれの気孔コンダクタンスモデルの 元でも上昇したが、

Leuning

モデルは

BWB

モデルよりも上昇幅が大きかっ た

Leuning

モデルは

BWB

モデル に比べ、特にサヘル域において 生産性の増加量が目立った

GPP

の今世紀中の変化(大陸平均)

なぜ、このような差が生じたのだろ う、、、

(KgC m-2 yr-1) (KgC m-2 yr-1)

Leuning

モデル

BWB

モデル

(45)

大陸全体の平均値 21 世紀中の変化

飽差 (VPD) モデル 相対湿度 (RH) モデル

年 GPP +17.5 % +16.6 %

年蒸散量 -3.2 % -1.6 %

展葉期間 (LAI>0.1) +3.4 日 +2.2 日

いずれの気孔コンダクタンスモデルの元でも、変動気候 条件のもとにおいて、 GPP は増加し蒸散量は低下した

植物生産力が主に降水量によって制限されているアフリカ大陸において、飽差モデルの

「より賢い」水利用が、高い植物生産性を示したと解釈できる

成長期間の、あるスナップショットだけを見ると、温暖化条件でより気孔を開放する

RH

モデルの方が、光合成 速度も高かったりする。しかしこれは水資源を、より多く消費することで、土壌含水率を低下させて、展葉期間 を短くしてしまう。

(46)

Big leaf

モデル

光合成速度と気孔コンダクタンスとの連立

SEIB-DGVM

の場合。

細胞間隙

CO

2濃度が平衡に達するまで、反復計算。

光合成速度は気孔コンダクタンスの関数で、同時に気孔コンダクタンスは光合成速度の関数

Jarvis

型モデルを除いて)。そこで、繰り返し計算を行うことで、両者を収束させる必要があ

る。

CLM4.5

の場合 蒸散量に応じて葉温を制御している ため、細胞間隙

CO

2濃度と葉温の両 者が平衡に達するまで、反復計算。

葉温(

T

i )を収束させる ループ

細胞間隙

CO2

濃度

c

i )を収束させる ループ

光合成に関する各種パラ メーターは葉温(

C

i )の 関数で与えられている

出典:Bonan et al. (2014) Geosci. Model Dev. 7

これら正負の効果 の合計は通常負

(47)

土壌の乾燥による光合成速度のダウンレギュレーション

土壌が乾燥すると、植物の水ポテンシャルが低下し

、これにより気孔コンダクタンスの低下、続いて

CO

2 不足による光合成速度の減速が生じる。

しかし、

Jarvis

型を除いて、気孔コンダクタンス モデル土壌含水率を制御因子として考慮しないため

、土壌含水率による光合成速度の

down regulation

が別途必要になる。

図:加藤知道監訳「生態系生態学第

2

版」森北出版 有効土壌含水率

(萎れ点で

0

、圃場容水量で

1

c w a te r

SEIB-DGVM

では以下の関数を光飽和光合成速度に乗して

stat water

(48)

図の出典:彦坂幸毅著「植物の光合成・

物質生産の測定とモデリング」共立出版

葉肉抵抗 気孔全開状態の気孔抵抗とほぼ同等とのこと。明示的に 扱われている広域植生モデルの例を知らない。光合成 のパラメーターに吸収させている?

境界層抵抗

コンダクタンスで 3mol m 2 s -1 とか値が大いので、通常 無視される (

林内など、あまり空気が動かない環境下では、結構影響 が大きいかも

)

気孔抵抗

CO 2 取り込みの最大の障害。光合成速度をパラメーター に持つ気孔コンダクタンスモデルを用いる場合には、

光合成モデルと連立させる必要がある。

CO 2 取り込みに関わる 3 つの抵抗

実は気孔抵抗だ けではありませ

(49)

気孔コンダクタンスモデルは、実は今も発展途上 である

Leuning

経験的なパラメーター

最適理論型モデルは、「気孔コンダクタンスは、失われる水蒸気あたりの 光 合成量を最大にするように制御されている」という仮定の下で、解を得てい る。

最適理論型

炭素量に換算した

単位蒸散量あたりのコスト

最適理論モデルのパラメーターは1つ。しかも、その値の上限・下限も理論的 に得られる。また、このモデルは高 CO 2 においても的確に挙動することが確 認されている

この他にも葉の水ポテン シャルをパラメーターと して取り入れた気孔コン ダクタンスモデルも存在 するらしい

) / 1

( ) CO

( 2 3

2

min k k

g

g

大気中 濃度 飽差

光合成速度

 

 

 

 

飽差

濃度 大気中

濃度 気孔内部の

光合成速度

1.6 1 CO

CO

2 2

g

(50)

グローバルな水循環

図の出典:加藤知道監訳「生態系生態学」

土壌中に存在し植物がアクセス可能な水は、地球 上の水のわずかに

0.01%

。これが陸上生物を支 えている。

陸は地球表面の約

30%

を覆っているが、そこか らの蒸発散は、グローバルな蒸発の

15%

を占め ている。→陸面の蒸発効率は海面の約半分。

大気に常時存在する水量は、蒸発と蒸散によって 年間に循環する水の総量の

2.6%

。よって大気中 の水の回転率は、約

10

日。←数時間から数週間 オーダーで生じる蒸発散と大気循環が、その時空 間変動を支配する。

土壌水分の平均回転率は約

2

ヶ月(ただし地域差 が大きい)。←

Seasonal

な時間スケールで生じ る降水と蒸発散とが、その時空間変動を支配する

参照

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