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電気回路基礎

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(1)

電気回路基礎

新原 盛太郎 2015年7月

(2)
(3)

電気の話を進めていくときに、その他の学問でも同じですが、歴史の流れ を追っていく方法と、基本的な方程式から始まり、その理論を展開していく 方法とがあります。歴史を追っていく方法は、時代の流れをつかみ取るには 良い方法ですが、一つの理論を理解していくには難点となる場合がありま す。ここでは、基本方程式を出発点として話を進めていくことにします。勿 論この方法がもっとも良いと言っているわけではありません。例えば新しい 理論を見いだしたいような場合には、むしろ歴史を追って話をしていく方法 の方が良いように思われます。いずれにせよこの著作だけで話が完了すると 思ってはならないということは重要です。

この著書は電気回路理論に必要な基本的な事項について記述しています。

電気回路理論の根底にある基礎方程式は、

Maxwell

の方程式です。つまり 全ての電気に関する理論は、

Maxwell

の方程式に従います。

Maxwell

の方 程式がどの様な形で完成されたかについては、電磁気学にゆずり、ここでは

Maxwell

の方程式を前提として、電気回路の理論を組み立てていきます。

この本では集中定数回路理論に限定しています。その回路理論がそのほか の電気の理論すなわち分布定数回路理論と、どの様な関係にあるかを述べる ことにします。このことは実際に回路の問題に理論を適用する場合におい て、非常に重要です。なぜなら本来分布定数回路の理論を適用しなければな らない問題に対して、何も考えずに集中定数の理論を適用し、実際と理論が 合わないことばかりに注目して実験結果を疑ったり、あるいは極端な場合に は理論そのものを疑ったりするような、間違った行動を取る場合も起こり得 るからです。

第

1

章では電気回路の概要をつかむため、回路理論全体を概観する内容と なっています。電気回路理論が電気の中でどのような位置を占めているか を把握することは、これから電気回路理論を学ぶ人にとっては重要なこと です。

第

2

章では、特に集中定数において必要な定義と単位について述べていま すが、集中定数素子がどの様にして導き出されるか詳しく説明を行いまし た。これを理解すれば集中定数素子の適用限界が明確になります。

(4)

第

4

章では、電気回路における基本的な定理について述べています。どの 様な場合もそうですが、定理がどういう場合は使用できて、どういう場合は 使用することが出来ないか、その様な定理の適用限界を心得ておくことは重 要です。

第

5

章は、基本的な回路の動作を、それまで学んできた知識の応用として 解説しています。しかし応用といっても、それまでに学んだ定理などを単に 応用するのではなく、更に発展させることが出来る内容となっています。第

5

章の内容は、別の電気回路の著作では定理として扱っている場合も結構あ ります。

本著全体にわたって時変(時間的にパラメータが変化する)回路、非線形 回路については触れていません。また分布定数線路についても扱ってはいま せん。また市販されている同様なテキストでは、四端子網についての記述が ありますが、今では四端子網の理論はマイクロ波の設計において用いられる だけですので、省略しました。それらの内容について知りたい読者は別の本 を参照願います。

2012年3月 新原 盛太郎

(5)

目次

第

1

章 電気の理論と体系

1

1.1

歴史の始まり

. . . . 1

1.2

基礎方程式

. . . . 4

1.3

集中定数と分布定数

. . . . 7

1.4

問題

. . . . 12

第

2

章 集中定数

13 2.1

電気回路で使う単位

. . . . 13

2.2

集中定数素子

. . . . 20

2.3

直流特性と交流特性

. . . . 34

2.4

その他の素子

. . . . 40

2.5

極性と単位

. . . . 42

2.6

信号の表現

. . . . 44

2.7

問題

. . . . 55

第

3

章 グラフ理論

59 3.1

回路網のグラフ

. . . . 59

3.2

独立変数の数

. . . . 61

3.3

双対

(Dual) . . . . 64

第

4

章 回路理論の定理

65

(6)

4.1

キルヒホッフの法則

. . . . 65

4.2

直列・並列接続

. . . . 70

4.3

重ね合わせの原理

. . . . 83

4.4

テブナンの定理、ノートンの定理

. . . . 85

4.5

テレゲン

(Tellegen)

の定理

. . . . 86

4.6

補償定理

. . . . 89

4.7

相反定理

. . . . 92

4.8

固有周波数

. . . . 96

4.9

問題

. . . . 105

第

5

章 基本回路

109 5.1

Yー△変換

. . . . 109

5.2

ブリッジ回路

. . . . 112

5.3

ツインT

. . . . 116

5.4

直列共振

. . . . 118

5.5

並列共振

. . . . 123

5.6

減衰器

. . . . 128

5.7

問題

. . . . 131

第

6

章 問題

135 6.1

回路の問題

. . . . 135

6.2

解への路

. . . . 136

6.3

エネルギーについて

. . . . 142

付録

A

問題の解答

147 A.1

第

1

章の解答

. . . . 147

A.2

第

2

章の解答

. . . . 149

A.3

第

4

章の解答

. . . . 154

A.4

第

5

章の解答

. . . . 160

(7)

付録

B

付録(規格集)

167

B.1

公称値に対する規定

. . . . 167

B.2

抵抗の規格

. . . . 169

B.3

容量の規格

. . . . 170

B.4

コイルの規格

. . . . 170

付録

C

各種表

171 C.1

信号

. . . . 171

C.2

物性

. . . . 172

付録

D

数

175 D.1

数の表現

. . . . 175

D.2

よく用いられる数値

. . . . 177

D.3

数学定数

. . . . 178

付録

E

数学公式集

179 E.1

微分・積分

. . . . 179

E.2

ベクトル解析

. . . . 181

E.3

三角関数

. . . . 185

E.4

複素関数

. . . . 186

E.5

フーリエ解析

. . . . 189

E.6

ラプラス変換

. . . . 191

後書き

193

参考文献

195

索引

196

(8)
(9)

図目次

1.1

集中定数と分布定数

. . . . 7

1.2

電磁波の体系

. . . . 7

1.3

電圧の関係

. . . . 10

1.4

電流の関係

. . . . 11

2.1

端子電圧と枝電圧

. . . . 15

2.2

閉路電流と枝電流

. . . . 18

2.3

直流電圧源・電流源の記号

. . . . 21

2.4

電圧源 ・ 電流源のグラフ

. . . . 22

2.5

交流電圧源・電流源の記号

. . . . 22

2.6

従属電源

. . . . 24

2.7

実際の電源

. . . . 24

2.8

ありえない回路

. . . . 25

2.9

円柱

. . . . 29

2.10

平行板

. . . . 30

2.11

コイル

. . . . 32

2.12

相互インダクタンス等価回路

. . . . 38

2.13

素子の極性

. . . . 42

2.14

回路例

. . . . 44

2.15

回路例

. . . . 44

(10)

2.16

複素数表示

. . . . 51

2.17

問題

1 . . . . 55

2.18

問題2

. . . . 56

2.19

問題3

. . . . 56

2.20

問題6

. . . . 57

2.21

問題7

. . . . 57

2.22

問題8

. . . . 58

2.23

問題9

. . . . 58

3.1

グラフによる表現

. . . . 60

4.1

電流則を求めるための図

. . . . 66

4.2

電圧則を求めるための図

. . . . 67

4.3

カットセット

. . . . 68

4.4

書き直した図

. . . . 68

4.5

例題1の図

. . . . 69

4.6

例題2の図

. . . . 70

4.7

直列接続

. . . . 72

4.8

並列接続

. . . . 73

4.9

例題3の図

. . . . 75

4.10

直列接続

. . . . 77

4.11

一つにまとめた場合

. . . . 77

4.12

並列接続

. . . . 79

4.13

一つにまとめた場合

. . . . 79

4.14

並列接続(電荷が存在する場合)

. . . . 80

4.15 (a) . . . . 81

4.16 (b) . . . . 81

4.17

例題5−1の図

. . . . 84

4.18

例題5−2の図

. . . . 84

(11)

4.19

テレゲンの定理の説明図

. . . . 86

4.20

例題7の図

. . . . 88

4.21

グラフ

. . . . 88

4.22

補償定理の説明図

. . . . 90

4.23

例題8の図

. . . . 91

4.24

補償定理の説明図

. . . . 92

4.25

相反定理の説明図

. . . . 92

4.26

例題9の図

. . . . 95

4.27

固有周波数を求める図

. . . . 98

4.28

例題

11

の図

. . . . 101

4.29

例題6の図

. . . . 102

4.30

ノートンの等価回路

. . . . 103

4.31

等価回路

. . . . 103

4.32

テブナンの等価回路

. . . . 104

4.33

問題1の図

. . . . 105

4.34

問題2の図

. . . . 106

4.35

問題3の図

. . . . 106

4.36

問題4の図

. . . . 107

4.37

問題5の図

. . . . 107

4.38

問題6の図

. . . . 108

4.39

問題7の図

. . . . 108

5.1

Y−△変換の説明図

. . . . 110

5.2

例題の回路図

. . . . 111

5.3

ブリッジ回路

. . . . 112

5.4 Wheatstone bridge . . . . 113

5.5 Wien bridge . . . . 114

5.6 Maxwell bridge . . . . 115

5.7

ツインT

. . . . 116

(12)

5.8

π型回路

. . . . 117

5.9

LR回路

. . . . 118

5.10

CR回路

. . . . 118

5.11

直列共振回路

. . . . 120

5.12

直列共振回路の周波数依存性

. . . . 121

5.13

並列共振器

. . . . 124

5.14

T型減衰器

. . . . 128

5.15

π型減衰器

. . . . 128

5.16

減衰器の例

. . . . 129

5.17

問題1の図

. . . . 131

5.18

問題2の図

. . . . 131

5.19

問題3の図

. . . . 132

5.20

問題4の図

. . . . 133

6.1 RC

回路

. . . . 136

6.2

問題

. . . . 137

6.3

電流源を殺した回路

. . . . 137

6.4

電圧源を殺した回路

. . . . 138

6.5

テブナンの定理による解法

. . . . 138

6.6

テブナンの回路を用いた回路図

. . . . 139

6.7

ノートンの定理による解法

. . . . 139

6.8

ノートンの定理を用いた回路図

. . . . 140

6.9

閉路電流を示す図

. . . . 140

6.10

端子電圧を示す図

. . . . 141

A.1

問題7の図

. . . . 151

A.2

問題9の図

. . . . 152

A.3

問題10の図

. . . . 152

A.4

問題10

(a)(b)

の図

. . . . 153

(13)

A.5

問題10

(e)

の図

. . . . 153

A.6

問題1の図

. . . . 155

A.7

問題3の別図

. . . . 155

A.8

問題4の図

. . . . 158

A.9

問題7の図

. . . . 158

A.10

問題1の図

. . . . 160

A.11

問題4の図

. . . . 163

B.1

抵抗の色表示

. . . . 169

(14)
(15)

表目次

2.1

単位表

. . . . 43

2.2

素子の表現

. . . . 48

3.1 Dual . . . . 64

4.1

テレゲンの定理

. . . . 94

4.2

テレゲンの関係式

. . . . 95

B.1

E標準数の系列

. . . . 167

B.2 3

数字法

. . . . 168

B.3

許容差を表す記号

. . . . 168

B.4

色による表現

. . . . 168

B.5

抵抗器の色表示

. . . . 169

B.6

容量の種類

. . . . 170

C.1

周波数の分類

. . . . 172

C.2

物理定数表

. . . . 172

C.3

シリコン中の拡散係数

. . . . 173

D.1 SI

単位

. . . . 176

D.2

英米語の数詞

. . . . 176

D.3 Latin

数字

. . . . 177

(16)

D.4

平方根

. . . . 177

D.5

常用対数

. . . . 177

D.6

自然対数

. . . . 178

(17)

第 1 章

電気の理論と体系

ここでは電気回路理論の歴史と、理論全体の体系について述べます。電気 回路全体がどの様な歴史的発展を遂げ、理論全体がどの様に構成されている かということについて述べています。

1.1

歴史の始まり

電気の歴史は、非常に古くから始まっています。エジプトが栄えた頃か ら、琥珀と毛皮をこすり合わせることによって、電気が得られることは既に 知られていました。しかし電気回路の理論として研究されるようになったの は、近代になってからです。また電気回路理論という狭い範躊で発展を始め たのは、正に現代であって、それ以前は物理、化学の一分野として発展して きています。

電気回路の理論が発展するには、その理論的な裏付けが必要です。理論的 な観点からは、これらの理論の基礎として電磁気学が横たわっています。と 言うのも電気回路において用いられる基本的な素子は、電磁気学によって 明確な形で定義できること、電気回路において用いられている様々な定理 は、電磁気学によって裏付けられるからです。この電磁気学は最終的には

Maxwell

によって集大成されています。そこに行きつくまでには、電気磁気

(18)

に関する様々な理論の発展がなされました。これらの発展については、電気 の理論ではあまり必要がありませんので、説明は省略します。

ここで電気に関する研究の歴史的におおまかな流れについて、述べてみる ことにします。

1729

年

Stephen Gray

による電気の伝導についての発見。

1745

年

Georg Von Kleist

は、電気が制御可能であることを発見しました。

これはかの有名な

Leyden

瓶の実験の観測から導き出された結果です。

1752

年

Benjamin Franklin

は、空気中に存在する静電荷の観察、つまりあ

の有名な凧を嵐の日に舞い上がらせて確認し落雷が電気であるという 観察をしました。電流がある粒子から構成されている粒の流れから出 来ていると言う示唆を与えた論文を発表しました。

1780

年 ガルバーニによる、蛙の筋肉による電気実験。

1800

年 ボルタによって、銅と亜鉛を塩水に浸した電池が作られた。

1820

年

Hans Christian Oersted

は、電気の流れが磁石の針を動かすことに

気付き、電流の磁気的効果を発見し、その数週間後

Marie Ampere

が ワイヤに流れる電流があたかも磁石のような働きをすることを発見し ました。

シュバイガーとボッゲンドルフが、電流計を発明。

アラゴはコイルによって、鉄心が磁化されることを発見。

ビオとサバールが、電流の磁気作用に関するビオ・サバールの法則を 確立。

1821

年 ゼーベックによる、熱電気現象の発見。(2種の金属からなる回路 の2接点に温度差があると電流が流れる)

1827

年

Joseph Henry

が、一連の電磁気に関する実験を始め、電気誘導の発

見を行い、世界で最初のモーターの製作をしました。同じ年に

Georg

Simon Ohm

が、電流と電圧の関係を発見しました。彼の名前は、オー

ムの法則と呼ばれました。しかし近似式に過ぎないことなどにより、

(19)

近年ではオームの法則とは呼ばれず、電圧・電流の関係式と呼ばれて います。

1831

年

Michael Faraday

が電磁誘導の発見をしました。

1832

年 ヘンリーが、コイルの自己誘導についての実験報告をした。

1833

年 電気分解に関するファラデーの法則の発見。

1834

年 ファラディーが、自己誘導現象を発見した。

レンツが、「誘導電流は導線がその運動と逆向きに磁気力を受けるよ うな向きに生じる」という、レンツの法則を発表。

1840

年 電流の熱作用に関する、ジュールの法則。

1842

年 W.トムソン(ケルビン卿)は、静電気理論と熱伝導理論との間の 形式的類似を指摘した

1845

年 ファラディー効果(磁場の中での偏曲面の回転)や反磁性の発見。

ノイマンが、レンツの法則とオームの法則とを結合させて電磁誘導の 数学的法則を作り上げた。

1846

年 ファラディーは、光が力線の振動ではないかと言った。

1847

年 W.トムソンは、電磁気理論と弾性体理論の間の対応を示した。

1853

年 W.トムソンが、ライデン瓶の放電が振動的であることを示しそ の周期を与えた。

1855

年 マクスウエルが、「ファラディーの力線について」を発表。

1857

年 フェッダーセンが、回転鏡を用いて火花放電の写真を撮影し、電 気振動を実験的に確かめた。

1862

年 マクスウエルが、「物理的力線について」を発表。

1864

年 マクスウエルが、「電磁場の動力学的理論」を発表。

1873

年 マクスウエルが、「電気磁気理論」を発表。

1884

年 ポインティングとヘビサイドは、独立に電磁場におけるエネルギー の流れに関する法則を発見し、ポインティング・ベクトルが導入さ れた。

1888

年 ヘルツによる電磁波の発見。

1895

年 マルコーニによる無線通信機の発明。

(20)

1897

年

J. J.

トムソンによる電子の確認。

1927

年

van der Pol

による、発振器の研究。

1930

年代

PLL

回路が考案された

1938

年 ソビエト連邦の

Berstein

による、自由発振器での雑音理論確立。

1947

年 ベル研が、点接触型ゲルマニウム・トランジスタを発表

1954

年

Tellegen

が、

ideal amplifier

の概念を発表

1958

年

J.S.Kilby

による集積回路の発明

1964

年

Carlin

が

nullor

の概念を発表

1968

年

B.Gilbert

が、ギルバート回路を発表

1971

年

Widlar

が、バンド・ギャップ回路を発表

1974

年

R.H.Dennard

によるスケーリング則の発表

1.2

基礎方程式

以上述べましたように、電気の歴史は比較的新しく、回路理論として形が 出来上がるまでに様々な実験が行われ、新しい法則が生まれてきました。そ して回路理論が発達し、その中でさらに新しい理論が生まれてきています。

それまでの歴史と理論を学ぶことも大切です。しかし膨大な研究成果が生ま れてきた回路理論を取り扱うには、理論面から見て基礎方程式から話を進め て行く方がより簡潔で分かりやすいと思います。

電磁気学はいかなる理論的構成となっているかについて、簡単に述べてい きます。先に述べましたような多くの研究者による発見により様々な紆余曲 折を経て、電磁気学の集大成であるところの

Maxwell

の方程式までたどり 着くことになります。

Maxwell

の方程式は、次の四つの方程式から構成されています。これら方

程式が電気回路理論を構成するための基礎方程式です。しかしこれらの方程 式は余りにも複雑であるため、方程式まで立ち戻って回路の問題を考えるこ

(21)

とは、電気回路においては通常行われません。方程式から導かれる結果から 出発する方法が適切です。この様な進め方を取ったとしても、

Maxwell

の方 程式より前の理論までさかのぼって議論しなければならないようなことはほ とんど起こりません。

回路理論を明確な形で理解するには、どの様にして回路理論で用いる基 礎理論が導き出されるかを理解しておくことは大切です。次に回路基礎理 論の出発点となる様々な定理を導くことにします。まず基礎方程式である

Maxwell

の方程式を書き下してみます。

rotE = − ∂ B

∂ t (1.1)

rotH = J + ∂ D

∂ t (1.2)

divB = 0 (1.3)

divD = ρ (1.4)

ここで

E

:電界ベクトル

B

:磁束密度ベクトル

H

:磁界ベクトル

D

:電束密度ベクトル

J

:電流密度ベクトル

ρ

:電荷密度

rot = i ( ∂

∂ y − ∂

∂ z )

+ j ( ∂

∂ z − ∂

∂ x )

+ k ( ∂

∂ x − ∂

∂ y )

div = i ∂

∂ x + j ∂

∂ y +k ∂

∂ z

i , j , k

は

x , y , z

方向の単位ベクトル。

これらの方程式が電磁気学の基礎方程式であり、自然界に存在する基本的 な四つの力

(

万有引力、電磁気力、強い力、弱い力

)

の内の電磁気力を記述す る基礎方程式です。この基礎方程式から電気回路に関する全ての基礎定理が 導かれます。

(22)

式の数として四つしかありませんので、一見簡単そうに見えるこの方程式 は、使われている変数がベクトルですから、実際は

4 × 3 = 12

個の方程式の 数となります。これらの方程式が複雑に絡み合っているため、取り扱うこと は非常に難しくなります。

1.2.1

三つの波

(1.1)

〜

(1.4)

式を解きますと、解法自体については述べませんが、三つ

の解が得られます。その三つの解には各々名前がつけられており、

TEM

波

(Transversal Electric Magnetic Wave)

、

TE

波

(Transversal Electric Wave)

、

TM

波

(Transversal Magnetic Wave)

と呼ばれ ています。このうち一般に知 られている電圧、電流の概念を用いることが出来るのは、

TEM

波のみです。

その他の波には、電圧、電流の概念は存在しません。電圧、電流の概念が存 在しない

TE

波、

TM

波は、マイクロ波理論において用いられている波であ り、本著においては取り扱いません。電圧や電流が存在しない電気の波も存 在するのです。つまり我々は、電気の波の約3分の1しか使っていないので す。現時点で

TE

波や

TM

波は、特殊な装置のみに使われているにすぎま せん。

この著作では、

TEM

波についての理論に限定します。この波も大きく二 つに分類することが出来ます。その二つとは、集中定数理論と分布定数理論 です。分布定数理論は、集中定数理論で現れる素子が分布的に広がった形で 存在して いるとして扱わなければならない理論であり、一般的に偏微分方 程式となります。これは古典力学で言っている質点の力学と、剛体・流体・

弾性体などの力学の関係とよく似ています。漫画的に書くと、次のような関 係となります

(23)

図

1.1

集中定数と分布定数

この図では、分布定数を規則正しく並んだ質点で表現していますが、実際 には様々な並び方で表現することが出来ます。

以上の話をまとめると、次の図のようになります。

図

1.2

電磁波の体系

日常で扱う電子機器は多くの場合

TEM

波ですが、取り扱う周波数が高く なってくると、集中定数として考えることが妥当か、あるいは分布定数とし て扱う方が妥当か、なかなか見分けることが難しくなってきます。それらの 見分けかたについては、この後で考えていくことにします。

1.3

集中定数と分布定数

回路を分布的に素子が広がっているか、あるいは集中つまり一ケ所に集 まった物として扱えるかは、扱う周波数とその対象物によって決定されま す。ではどの様に見分けるか、その限界を知ることは大切です。と言うのも せっかく計算を行っても元々その理論が適用できない対象だとしたら、それ

(24)

までの苦労は水の泡になるばかりでなく、もし気がつかなければ大変な失敗 を招いてしまい、理論とは当てにならないものだと言う間違った確信を持っ てしまうようになるからです。

分布定数とはどういうものかと定義するよりも、集中定数とはどの様なも のかを定義し、それに当てはまらないものが分布定数である、とした方が分 かり易いと思います。そこで集中定数の定義について述べます。先にも述べ ましたように、集中定数は、質点の力学によく似ています。つまり集中定数 は、形や大きさもなく点で表現することが出来ます。しかしこれでは、回路 で出てくる様々な素子を区別することは出来ません。区別するための扱いに ついては、次の章を見て下さい。

集中定数であるために電気で取り扱っている定義は、次のようなものです。

一方の端子へ流れ込む信号は、同時に他方の端子より流れ出す信号 に等しい。

この定義を式で表現するために、次のような進行波を考えます。

f (t, x) = A sin[ ω (t − x/c)] (1.5)

ここで

A

:振幅

ω

:角周波数 t:時間

x

:距離

c

:光の速度

これは電磁進行波の一般形です。ここで長さ

ℓ

の素子へある時間

t

0に上 記の進行波が入った場合、入力端では

x = 0

として

f (t

0

,0) = A sin( ω t

0

) (1.6)

(25)

出力端では同じ時間

t = t

0において、

x = ℓ

としますと

f (t

0

, ℓ) = A sin[ ω (t

0

− ℓ/c)] (1.7)

となります。よって上の式の差を入力レベルで割った比を考えますと、次 のようになります。

f (t

0

, ℓ) − f (t

0

,0)

f (t

0

,0) = sin[ ω (t

0

− ℓ/c)] − sin( ω t

0

) sin( ω t

0

)

= 2 cos[ ω (t

0

− ℓ/2c)]sin( − ω ℓ/2c)

sin( ω t

0

) (1.8)

ℓ/2c

は非常に小さな値ですので、上式は次のようになります。

2 − sin( ω ℓ/2c)

tan( ω t

0

) (1.9)

この値が

1

よりも小さければ、定義より集中定数と見なされることになり ます。 ところで

t

0はある任意の時間を示しているだけですので単なる定数 であり、上の式は次の条件が満足されるとき、

1

より小さい値となります。

ω ℓ

c ≪ 1 (1.10)

ここで

θ ≪ 1

のとき

sin θ ∼ = 0

であることを用いています。

これが集中定数の条件です。この条件が満足されるとき、対象物は集中定 数回路として扱うことが出来ます。また逆にこの式を満足しない場合には、

分布定数回路として扱わねばなりません。

この様に考えていきますと、先程も述べましたように、集中定数というの は力学で言っている質点に相当することが分かります。 質点とは形も大き さもない素子のことを指していますが、この後に出てきます集中定数素子 は、まさに質点のように形や大きさを持ってはいません。つまりただの点と 言うことになります。それでは何のことか分からないので、様々な記号を 使って集中定数素子を表現していくことになります。

(26)

別の観点で眺めますと、集中定数素子は、現実には存在しない素子と言う ことになります。このことを明確に認識しておく必要があります。つまり現 実の様々な電気素子は、集中定数素子で近似することが出来ると言うこと です。

1.3.1

集中定数の意味

電圧・電流の定義は、次の章で出てきますが、取りあえずここではそれら の概念を用いて集中定数の意味について考えてみましょう。次の図を考えて みます。

図

1.3

電圧の関係

この図において端子電圧

e

1と

e

2とが同時に存在しない場合には、枝電圧

v

を定義することは出来ません。つまり枝電圧

v

が存在するためには、端子 電圧

e

1と

e

2とが同じ時間に存在する必要があります。

次の図を考えてみます。

(27)

図

1.4

電流の関係

電流

j

1と

j

2とが同じ時間に同じ値として存在しなければ、枝電流

i

は存 在することが出来ません。

以上のことから素子の枝電圧と枝電流とが存在するためには、素子の入出 力端における電圧と電流とが同時に存在する必要があります。これが素子に 対する集中定数としての条件になります。

(28)

1.4

問題

問題1

電気の基本方程式は、

Maxwell

の方程式です。この式は、どのような式か ら構成されているでしょうか。

問題2

電磁波には三つの波があります。その三つの波とは、どのような波でしょ うか。

問題3

長さ

1,000 [km]

の送電線を用いて、周波数

f = 50 [Hz]

の電気を送ると

き、集中定数、分布定数いずれの理論を用いるべきでしょうか。

(29)

第 2 章

集中定数

この章では集中定数回路を取り扱うに当たって必要となる基本的な 事柄 について述べます。この内容は、今後電気回路理論を学ぶにおいて基礎的な ことですので、充分に理解しておく必要があります。

2.1

電気回路で使う単位

この節で述べる内容は電気回路において用いられる単位とその定義につい て述べておきます。電気回路で使う単位といえば通常電圧と電流だけと考え がちですが、その他の単位も用いられる場合がありますので、これらの量に ついても充分に理解しておく必要があります。

2.1.1

電荷

これは通常

q

または

e

という記号を用いて表され、電子が持っている最小 単位の電荷量であり、クーロン

(coulomb)

という単位

C

で表され、その大き さは

q = 1.60210 × 10

−19

[

クーロン

] (2.1)

で与えられます。これは素電荷とも呼ばれます。クーロンはチャールス・

(30)

クーロンの名にちなんだものです。この単位は、次の

(2.2)

式によって定義 されています。その定義は言葉で表現すると、次のようなクーロンの法則に よって与えられます。

二つの等しい電荷を持った物体を真空中で

1 [m]

離して置いたとき、

お互いに

1 [N

:ニュートン

]

の力で反発する場合、どちらの物体も正 または負の等しい電荷量を持ち、その値を

1 [C

:クーロン

]

とする。

上の関係をクーロンの法則を表す式

(MKSA

単位系*1

)

で表現しますと、

次のように与えられます。

f = q

1

q

2

4 πε r

2

(2.2)

2.1.2

電圧

電圧はボルト

[V ]

という単位を持ち、通常

v , V

と言う記号が用いられま す。大文字の

V

は、そのほかの記号の場合もそうですが直流(時間的に変化 しない電圧)、小文字の

v

は交流(時間的に変化する電圧)に対して主に用 いられます。

電圧の定義としては、電界の距離による積分によって表されます。式で表 現しますと、次のように与えられます。

v

b

− v

a

=

∫

b a

Edℓ (2.3)

回路では電圧は二種類定義されています。それは端子電圧と枝電圧です。

*1これは長さ、質量、時間、電流を各々メータ、キログラム、秒、アンペアで表現した単位 です。MKSA単位系を用いることによって、全ての物理量を表現することが出来ます。

(31)

端子電圧:

node voltage

(2.3)

式の

v

aをある基準点の電圧とし、その値をゼロとして

v

bの値を示

す電圧を端子電圧と呼びます。通常電気の場合、基準電圧として地球上での 値をゼロとして取ります。回路図を描く場合、基準点としては、素子が最も 集中する点を基準点とする場合が多いようです。

枝電圧:

branch voltage

枝電圧とは、素子の両端の差電圧を指しています。

端子電圧と枝電圧の関係

端子電圧と枝電圧とは、密接な関係があります。回路における端子電圧が 決まれば、その回路における枝電圧も一意に決められます。また逆に、枝電 圧が決まると端子電圧も一意に決められます。そのことを次の図に示してお きます。

図

2.1

端子電圧と枝電圧

(32)

この図から次の関係式が得られます。

v

1

= e

2

− e

1

v

2

= e

3

− e

2

v

3

= e

1

− e

3

v

4

= e

1

− e

4

v

5

= e

4

− e

3

端子電圧には四個の独立変数がありますが、このうち一つは回路の基準点 でなければならないので、独立な変数は三つとなります。例えば

e

4

= 0

と して記述することが出来ます。端子電圧を枝電圧で記述することが出来ま す。この例の場合、次の式が得られます。

e

1

= v

4

e

2

= v

4

− v

1

e

3

= − v

5

e

4

= 0

このことから枝電圧と端子電圧の変数は、お互いに変換することが出来る と言うことが分かります。

また大切なことは、この二つの電圧は対等な立場として考えることが必要 だと言うことです。

2.1.3

電流

電流の単位はアンペア

[A]

と呼ばれ、 通常

i , I

と言う記号が用いられま す。電圧の場合と同じように、大文字の

I

は直流(時間的に変化しない電 流)、小文字の

i

は交流(時間的に変化する電流)に対して主に用いられます。

電荷の移動に伴う電流は、電荷の時間変化によって定義され、式で書きま すと次のようになります。

i = dq

dt (2.4)

(33)

言葉で言えば

電流とは単位時間にある場所を通過する電荷量。

となります。

この言葉に対して電流密度という言葉があります。 電流密度とは、単位 面積当たりの電流寮を指しており電流を面積で割った値となります。

回路では、電流は二つあります。それは閉路電流と枝電流です。

閉路電流:

loop current

二次元回路の場合には、網目電流:

mesh current

と 呼ばれることもあり ます。

閉路電流とは、ある端子から出発して、任意の枝を通り元の端子に戻って くる電流のことを示しています。

枝電流:

branch current

枝電流とは、各素子に流れる電流のことを指しています。

閉路電流と枝電流との関係

閉路電流と枝電流とは、密接な関係があります。回路における閉路電流が 決まれば、その回路における枝電流も決まりますし、逆に回路における枝電 流が決まれば、その回路における閉路電流も決まります。そのことを次に図 に示しておきます。

(34)

図

2.2

閉路電流と枝電流

この図から次の関係式が得られます。

i

1

= j

5

− j

3

+ j

4

i

2

= j

3

+ j

1

+ j

2 逆に枝電流は閉路電流によって決められます。

j

1

= i

2

j

2

= i

2

j

3

= i

2

− i

1

j

4

= i

1

j

5

= i

1

このように、閉路電流と枝電流とはお互いに一対一で変換する事が出来る と言うことが分かります。

また大切なことは、この二つの電流は対等な立場として考えることが必要 だと言うことです。つまり閉路電流は、計算上の仮想電流ではなく、実体を 持った電流であることです。

2.1.4

電力

電力を

p

と表現しますと、電力は次のように定義されます。

p = v × i (2.5)

(35)

電力の単位は、ワット

[W ]

で表されます。

電力は、電圧や電流よりも広い概念で、

TEM

波以外の電圧や電流の概念 が存在しない、

TE

波や

TM

波においても用いることが出来ます。

2.1.5

重要な注意事項

ここで電圧と電流に関わる重要な注意事項を述べておきます。

世間一般には電圧と電流とは、密接に関わっていると思われています。し かし電圧と電流とは、お互い関係が無い独立したパラメータと言うことに注 意しなければいけません。つまり電気回路理論では、電圧は電圧だけ、電流 は電流だけで考える必要があります。電圧と電流との関係は、モノ(物質)

が存在して発生します。しかもその関係は、一般的には非常に複雑な関係と なります。例えば、次のような例を考えてみて下さい。

1.

容量だけで出来た回路に直流の電圧が印可され、十分に時間が経過し ているときの回路の状態。

2.

乾燥したところで、手を金属に近づけたとき火花が飛んで来ますが、

火花が発生する前の状態。

3.

超伝導状態での電流。

これらの例では、電圧(あるいは電荷)だけ、もしくは電流だけしか存在 していません。よって電圧は電圧だけ、電流は電流だけで取り扱うことが出 来る理論が必要になります。このことに関しては、これから順に詳しく説明 をしていきます。

例題

10 [A]

の電流が断面積

4 [mm

2

]

の円柱に流れているとき、この電流が

100 [V ]

の電圧源によって供給されているとするならば、電圧源によって何 ワットの電力が供給されていますか。さらにこの電流によって断面積を通過 する電子の数は、単位時間当たり何個であるか求めて下さい。

(36)

<

解答

>

電力 :

10 × 100 = 1, 000 [W ]

通過する電子の数は、素電荷が

1.6 × 10

−19

[

クーロン

]

ですので

10/(1.6 × 10

−19

) = 6.25 × 10

19となり、

1

秒あたり

6.25 × 10

19個の電子が通過してい ることになります。

2.2

集中定数素子

ここでは具体的に集中定数素子について考えていきます。まず始めに電源 を取り上げ、次に抵抗、容量、コイルを考えます。さらに特殊な変成器につ いても、簡単に述べておきます。

2.2.1

電源

今まで電圧、電流というパラメータを深く考えずに使ってきましたが、電 気回路において用いられている素子は、電力を供給しなければ何の役にも立 ちません。そのための装置が電源です。電気回路理論での電源は、大きく分 けて二種類考える必要があります。独立電源と呼ばれる電源で、その一つは 電圧源です。もう一つは電流源です。

更に特殊な電源として、従属電源が考案されています。 従属電源には、4 種類の電源があります。

電圧源も電流源も共に時間的に変化しない直流電源と、時間的に変化する 交流電源とが考えられます。

直流電源

直流電源は、電圧源、電流源という二種類が存在します。電圧源、電流源 は、次の様に定義されます。

電圧源 外部に何を接続しても常に一定の電圧を供給する。

電流源 外部に何を接続しても常に一定の電流を供給する。

(37)

と定義されます。

図

2.3

一番左側に示しますように、直流の電圧源の場合には記号そのもの に向きが含まれていますので、その様な矢印は一般に用いられることはあり ません。

図

2.3

の左二つの記号は、独立電圧源と呼ばれる電圧源です。図

2.3

の右 一つは、独立電流源の記号です。この他にも、いくつか別の記号が用いられ ることがあります。

図

2.3

直流電圧源・電流源の記号

電圧源や電流源は、集中定数素子であり、仮想の素子であることを忘れて はいけません。

電圧源は、どのような素子を接続しても一定の電圧を供給します。電流源 は、どのような素子を接続しても一定の電流を流し続けます。このことから 電圧源の短絡、電流源の開放という状態は、存在することが出来ません。

電圧源の場合電流は任意の値を取り、電流源の場合電圧は任意の値を取る ことが出来ます。よって電圧源・電流源共に任意の抵抗値を示すことになり ます。

電圧の値もある値を取り、電流の値もある値となるような電源も考えられ ますが、そのようにすると電気理論上の素子としては、何の役にも立たなく なってしまいます。もし電圧と電流が決まった電源であるならば、接続でき る素子は電源によって値が決まった素子だけということになってしまうから です。

上の定義を

I − V

平面に描きますと分かりやすくなります。図

2.4

で左の 直線が電圧源、右側が電流源を示しています。この図から分かりますように 電圧源は交流の場合には、インピーダンスがゼロ(アドミタンスは無限大)、

(38)

電流源は交流の場合には、インピーダンスが無限大(アドミタンスがゼロ)

です。

図

2.4

電圧源 ・ 電流源のグラフ

交流電源

直流電源とは別に交流電源を考える必要があります。交流電源には、様々 な種類の電源が考えられています。

交流電源は、次の性質を持っています。

交流電圧源 インピーダンスはゼロ 交流電流源 インピーダンスは無限大

交流電源として、次のような記号が使われます。

図

2.5

交流電圧源・電流源の記号

交流電源には、次のような電源が考えられています。

正弦波信号源 正弦波信号を発生する。

(39)

パルス信号源 パルス信号を発生する

FM

信号源

FM

信号を発生する

PWL

信号源 折れ線の変化をする

指数関数発生器 指数関数で立ち上がり、指数関数で降下する 雑音源 ランダムな信号を発生する

2.2.2

従属電源

電源には、以上の他に従属電源と呼ばれる特殊な電源が存在します。この 従属電源は、直流においてもまた交流においても同じ回路素子を用いて記 述することが出来ます。これらの従属電源には、次の四つが考えられてい ます。

電圧制御電圧源 入力開放、出力は入力電圧の値に応じて変化する電圧源 電圧制御電流源 入力開放、出力は入力電圧の値に応じて変化する電流源 電流制御電圧源 入力短絡、出力は入力電流の値に応じて変化する電圧源 電流制御電流源 入力短絡、出力は入力電流の値に応じて変化する電流源

(40)

図

2.6

従属電源

現実の電源

 ここで現実に存在している電源について考えてみます。上で述べた独立 電源は、いずれも現実には存在しない理想的な素子を表しています。例えば 実際の電圧源では無限大の電流を引き出すことは出来ませんし、実際の電流 源では無限大の電圧を引き出すことは出来ないからです。現実の電源に対し て、例えば電圧源では電圧源に直列に、電流源に対しては電流源に並列に抵 抗を挿入することによって近似的に表現することが出来ます。

図

2.7

実際の電源

(41)

電源の特性

電圧源、電流源の上記の性質より、図

2.8

のような電圧源のみの並列接続、

電流源のみの直列接続は存在しません。電圧源の並列接続を考えますと、接 続後の電圧が決められないからです。また電流源の直列接続では、どの様な 電流が流れるかと言うことを決められないためです。

図

2.8

ありえない回路

電圧源の開放状態は、その両端の電圧が電圧源の値を示すだけで何の問題 もありません。しかし電圧源の両端を短絡した場合を考えてみますと、何処 にも電圧源の値を示すことは出来なくなります。このように電圧源を短絡状 態とすることは出来ませんが、電圧源を短絡するための線で置き換えること は出来ます。このような状態のことを電圧源を殺すと呼んでいます。

同様に電流源の短絡状態は、短絡した線を電流源が示す電流が流れるだけ で、何の問題もありません。しかし電流源の開放を考えてみます。このとき 電流は流れることが出来ません。このように電流源を開放状態で置き換える ことを電流源を殺すと呼んでいます。

例題

2 [V ]

と

5 [V ]

の電圧源が直列に接続されているとき、全体の電圧はいくら になるでしょうか。また

10 [A]

と

20 [A]

の電流源が並列に接続されている 場合の全体の電流は、いくらになるでしょう。

(42)

<解答>

電圧源:

2 + 5 = 7[V ]

電流源:

10 + 20 = 30[A]

2.2.3

抵抗・容量・コイル

次に、電源以外の素子について説明していきます。これらの素子も電源の 場合と同じように、現実に存在する素子と回路で用いられている素子とが 同じ名前を使っていますので、注意する必要があります。理論の出発点とし

て、

Maxwell

の方程式から出発します。

Maxwell

の方程式は、その結論を得

るまでに幾多の現象を整理統合し永年の年月を経て完成されたものです。

先に述べましたように、

Maxwell

の方程式は、次の四つの式から成立して います。

rotE = − ∂ B

∂ t rotH = J + ∂ D

∂ t divB = 0 divD = ρ

ここで

E

:電界ベクトル

B

:磁束密度ベクトル

H

:磁界ベクトル

D

:電束密度ベクトル

J

:電流密度ベクトル

ρ

:電荷密度

(43)

rot = i ( ∂

∂ y −

∂

∂ z )

+ j ( ∂

∂ z −

∂

∂ x )

+ k ( ∂

∂ x −

∂

∂ y )

div = i ∂

∂ x + j ∂

∂ y +k ∂

∂ z

i , j , k

は、

x , y , z

方向の単位ベクトル。

Maxwell

の方程式だけでは、現実の世界を表現するには不足です。なぜな

ら

Maxwell

の方程式には、物質の性質を表現するパラメータは含まれてい

ないからです。これらのパラメータと

Maxwell

方程式でのパラメータを結 びつけるものとして、次の三つの式が存在します。

J = σ E (2.6)

D = ε E (2.7)

B = µ H (2.8)

ここで

σ , ε , µ

は、全てテンソル量と呼ばれる量です。各々導体、誘電 体、磁性体の性質を表しており導伝率、誘電率、透磁率と呼ばれています。

多くの応用において、これらを定数として扱って問題無い場合が多いようで す。この本では、その様な仮定の場合について扱います。

集中定数理論は、これら

(2.6)

〜

(2.8)

式の一つが支配的で、他はゼロとし て良い場合に適用できる理論です。よってこれらの方程式の一つを取り扱 い、そのほかの方程式は全く考慮しない場合についての関係式を導く必要が あります。この取扱いについて、以下に示すことにします。

これまでの説明から分かりますように、集中定数素子は現実には存在しな い素子です。付けられた名前が、電気回路理論ではない現実の場合において も用いられているため、電気回路を学ぶ人は、時々混乱しているようです。

それでは集中定数素子の各々について、導いていくことにしましょう。こ の中でベクトル計算を用いています。ベクトル計算になれていない方は、途 中を読み飛ばして結果だけを見て下さい。

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