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Ⅱ 灘j蕊溌麟

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(1)

灘j蕊溌麟

退院後生活環境相談員の現状と課題〜文献研究を中心に〜

岡田洋一* ・中條大輔*'**

1. はじめに

日本における精神科病院の入院患者数は「過去15年で329万人から28.9万人と約4万人減少」しているが,

入院形態別に見ると 「措置入院,任意入院は減少し医療保護入院は増加」 している (2014年は前年比4,756 人減少) (厚生労働省2018)。

(単位:人)

350,000 300,000 250,000 200,000

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図1 精神病床における入院患者数の推移(入院形態別内訳) (厚生労働省2018より転載)

また,平均在院日数(2014年OECD統計) もベルギー10.1日, フランス58日, ドイツ24.2日, イタリア 13.9日, スイス29.4日, イギリス42.3日,韓国124.9日という中で日本は285日となっている。韓国の2倍,

イギリスの6.7倍, フランスの49倍という数字は異常と言わざるを得ない。 2017年では日本の平均在院日 数は267.7日 (厚生労働省2018) と2014年に比べればわずかに減少しているが国際的な比較においては現 在もなお長期入院となっている。

キーワード:退院後生活環境相談員,精神保健福祉士,精神障害者医療保護入院地域連携文献研究

*鹿児島国際大学

**一般社団法人鹿児島県精神保健福祉士協会

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(2)

地域総合研究第47巻第1号(2019年)

表1 精神病床数と平均在院日数推移(諸外国との比較) (厚生労働省2018より転載)

※各国により定義が異なる 資料:OECDHealthData2015

鹿児島県においては360.2日 (厚生労働省2018) と, 日本の中においても更に多い日数を記録している。

これは,退院支援において医療的側面が強調ざれ社会的側面のアプローチが十分ではないことの反映だと 考えられる。今回,精神保健福祉士を中心とした国家資格を持つ職種を「退院後生活環境相談員」として 設置することが定められた。退院後生活環境相談員の責務・役割として「(1)退院後生活環境相談員は,

医療保護入院者が可能な限り早期に退院できるよう,個々の医療保護入院者の退院支援のための取組にお いて中心的役割を果たすことが求められること。 (2)退院に向けた取組に当たっては,医師の指導を受け つつ,多職種連携のための調整を図ることに努めるとともに,行政機関を含む院外の機関との調整に努め ること。」 (厚労省2014) としている。しかし,精神保健福祉士は民間病院に勤める就業者であり,民間病 院の経営は大きく入院治療に依存している。退院後生活環境相談員として地域への退院を推進すると共 に,経営的な視点も求められ,多忙な業務の中で,現場の精神保健福祉士は葛藤し続けている。我が国で 退院後生活環境相談員に関する課題と展望について,文献研究を中心に検討し,明らかにしていく。

2退院生活環境相談員とは 2.1.改正精神保健福祉法の概要

現行の精神保健福祉法は, 1995 (平成7)年に精神保健法が改正される形で施行された。その目的は第1 条に示され, 「この法律は,精神障害者の医療及び保護を行い,障害者の日常生活及び社会生活を総合的 に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号) と相まってその社会復帰の促進及びその自立と社 会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い,並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の 保持及び増進に努めることによって,精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目 的とする(精神保健福祉研究会2016:57)」とされている。また,第3条には「国民は,精神的健康の保持 及び増進に努めるとともに,精神障害者に対する理解を深め,及び精神障害者がその障害を克服して社会 復帰をし, 自立と社会経済活動への参加をしようとする努力に対し,協力するように努めなければならな い。 (精神保健福祉研究会2016:62‑63)」とし,国民の精神保健医療福祉に関わる義務を示している。こ こから,精神保健福祉法の目的は,精神保健医療福祉に関わる全ての国民のメンタルヘルスの回復と向上 であることが分かる。

退院後生活環境相談員が定められた改正は2013 (平成25)年に行われた。改正の概要は下記の通りであ る(厚生労働省2015:3)。

2012年 精神病床数(床/千人)

2014年 平均在院日数(日)

ベルギー 1.7 10.1

フランス 5.8

ドイツ 1.3 24.2

イタリア 0.1 13.9

日本 2.7 285.0

韓国 09 124.9

スイス 29.4

イギリス 42.3

(3)

(1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定

厚生労働大臣が,精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとする。

(2)保護者制度の廃止

主に家族がなる保護者には,精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されているが,家族の高齢化 等に伴い,負担が大きくなっている等の理由から,保護者に関する規定を削除する。

(3)医療保護入院の見直し

l)医療保護入院における保護者の同意要件を外し,家族等(*)のうちのいずれかの者の同意を要件と する。

*配偶者,親権者,扶養義務者,後見人又は保佐人。該当者がいない場合等は,市町村長が同意の判 断を行う。

2)精神科病院の管理者に,

・医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)の設置

・地域援助事業者(入院者本人や家族からの相談に応じ必要な情報提供等を行う相談支援事業者等)

との連携

・退院促進のための体制整備を義務付ける。

(4)精神医療審査会に関する見直し

1)精神医療審査会の委員として, 「精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者」を規定する。

2)精神医療審査会に対し,退院等の請求をできる者として,入院者本人とともに,家族等を規定する。

本改正の最大の目的は,未だ解決しない社会的入院の解消とともに, これ以上長期入院者を増やさない ための処置を講じ,精神医療保健福祉に係る地域移行をより円滑にすることである。そのため, (3)‑2)と して,退院支援のコーディネーターとしての「退院後生活環境相談員」を創設し,その主たる担い手に精 神保健福祉士を挙げた。また,本改正において, (3)‑1)で示された通り, これまでの精神保健医療福祉の 長い経過の中で過度な責任を取らされ続けた保護者に関する規定がなくなった。しかし,実際には同意者

としての保護者が家族等となったわけで,同意の重みを引き続き家族は背負うこととなった。

2.2.退院後生活環境相談員の概要

このとき,退院後生活環境相談員に関しては,下記のような定義と役割設定がなきれている(厚生労働 省2015:5‑6)。

(1)退院後生活環境相談員の責務・役割

1)退院後生活環境相談員は,医療保護入院者が可能な限り早期に退院できるよう,個々の医療保護入院 者の退院支援のための取組において中心的役割を果たすことが求められること。

2)退院に向けた取組に当たっては,医師の指導を受けつつ,多職種連携のための調整を図ることに努め るとともに,行政機関を含む院外の機関との調整に努めること。

3)医療保護入院者の支援に当たっては, 当該医療保護入院者の意向に十分配盧するとともに,個人情報 保護について遺漏なきよう十分留意すること。

4)以上の責務・役割を果たすため,退院後生活環境相談員は,その業務に必要な技術及び知識を得て,

その資質の向上を図ること。

(4)

地域総合研究第47巻第1号(2019年)

(2)選任及び配置

1)退院に向けた相談を行うに当たっては,退院後生活環境相談員と医療保護入院者及びその家族等との 間の信頼関係が構築されることが重要であることから,その選任に当たっては,医療保護入院者及び 家族等の意向に配慮すること。

2)配置の目安としては,退院後生活環境相談員1人につき,概ね50人以下の医療保護入院者を担当する こと (常勤換算としての目安) とし,医療保護入院者1人につき1人の退院後生活環境相談員を入院後 7日以内に選任すること。兼務の場合等については, この目安を踏まえ,担当する医療保護入院者の 人数を決めること。

(3)退院後生活環境相談員として有するべき資格 l)精神保健福祉士

2)看護職員(保健師を含む。),作業療法士,社会福祉士として,精神障害者に関する業務に従事した経 験を有する者

3)3年以上精神障害者及びその家族等との退院後の生活環境についての相談及び指導に関する業務に従 事した経験を有する者であって,かつ,厚生労働大臣が定める研修を修了した者(ただし,平成29年 3月3旧までの問については,研修を修了していなくても,前段の要件を満たしていれば,資格を有 することとしてよいこととする。)

(4)業務内容 1)入院時の業務

医療保護入院者及びその家族等に対して以下についての説明を行うこと。

・退院後生活環境相談員として選任されたこと及びその役割

・本人及び家族等の退院促進の措置への関わり (地域援助事業者の紹介を受けることができること。

また,本人においては,医療保護入院者退院支援委員会への出席及び退院後の生活環境に関わる者 に委員会への出席の要請を行うことができること等)

2)退院に向けた相談支援業務

ア医療保護入院者及びその家族等からの相談に応じるほか,退院に向けた意欲の喚起や具体的な取組 の工程の相談等を積極的に行い,退院促進に努めること。

イ医療保護入院者及びその家族等と相談を行った場合には, 当該相談内容について相談記録又は看護 記録等に記録をすること。

ウ退院に向けた相談支援を行うに当たっては,主治医の指導を受けるとともに,その他当該医療保護 入院者の治療に関わる者との連携を図ること。

3)地域援助事業者等の紹介に関する業務

ア医療保護入院者及びその家族等から地域援助事業者の紹介の希望があった場合や, 当該医療保護入 院者との相談の内容から地域援助事業者を紹介すべき場合等に,必要に応じて地域援助事業者を紹 介するよう努めること。

イ地域援助事業者等の地域資源の情報を把握し,収集した情報を整理するよう努めること。

ウ地域援助事業者に限らず, 当該医療保護入院者の退院後の生活環境又は療養環境に関わる者の紹介 や, これらの者との連絡調整を行い,退院後の環境調整に努めること。

4)医療保護入院者退院支援委員会に関する業務

ア医療保護入院者退院支援委員会の開催に当たって, 開催に向けた調整や運営の中心的役割を果たす

(5)

こととし,充実した審議が行われるよう努めること。

イ医療保護入院者退院支援委員会の記録の作成にも積極的に関わることが望ましいこと。

5)退院調整に関する業務

医療保護入院者の退院に向け,居住の場の確保等の退院後の環境に係る調整を行うとともに,適宜地 域援助事業者等と連携する等, 円滑な地域生活への移行を図ること。

6)その他

定期病状報告の退院に向けた取組欄については,その相談状況等を踏まえて退院後生活環境相談員が 記載することが望ましいこと。

(5)その他

1)医療保護入院者が退院する場合において,引き続き任意入院により当該病院に入院するときには,当 該医療保護入院者が地域生活へ移行するまでは,継続して退院促進のための取組を行うことが望まし いこと。

2)医療保護入院者の退院促進に当たっての退院後生活環境相談員の役割の重要性に鑑み,施行後の選任 状況等を踏まえて,退院後生活環境相談員として有するべき資格等の見直しを図ることも考えられる ため,留意されたいこと。

これらの規定により,精神科病院は医療保護入院者に係る退院支援のコーディネーションを明確な意図 を持って行い,且つ地域とのつながりと持ち,当事者とその家族への説明責任が明確化することとなった。

これまでの本人と家族が不在の中で行われる傾向にあった退院支援ではなく, 当事者とその家族に寄り添 い,早期の退院に向けた明確な取り組みがなされる必要性が示された。

2.3.措置入院に関する改正案の概要

また,退院後生活環境相談員は2016 (平成28)年の相模原障害者施設殺傷事件に端を発した措置入院制 度の改正案の中にも登場している。以下,その改正案の概要を示す(厚生労働省2018)。

(1)改正の趣旨

1)医療の役割を明確にすること−医療の役割は,治療,健康維持推進を図るもので,犯罪防止は直接 的にはその役割ではない。

2)精神疾患の患者に対する医療の充実を図ること一措置入院者が退院後に継続的な医療等の支援を確 実に受けられ,社会復帰につながるよう,地方公共団体が退院後支援を行う仕組みを整備する。

3)精神保健指定医の指定の不正取得の再発防止一指定医に関する制度の見直しを行う。

(2)改正の概要

改正の趣旨を踏まえ,以下の措置を講ずる。

l)国及び地方公共団体が配慮すべき事項等の明確化

国及び地方公共団体の義務として,精神障害者に対する医療は病状の改善など精神的健康の保持増進 を目的とすることを認識するとともに,精神障害者の人権を尊重し,地域移行の促進に十分配慮すべき ことを明記する。

2)措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備

措置入院者が退院後に社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な医

(6)

地域総合研究第47巻第1号(2019年)

療その他の援助を適切かつ円滑に受けることができるよう,以下のような退院後支援の仕組みを整備す る。

①措置を行った都道府県・政令市が,患者の措置入院中から,通院先の医療機関等と協議の上,退院 後支援計画を作成することとする。 (患者の帰住先の保健所設置自治体が別にある場合は, 当該自 治体と共同して作成)

②退院後は,患者の帰住先の保健所設置自治体が,退院後支援計画に基づき相談指導を行うこととす

る。

③退院後支援計画の対象者が計画の期間中に他の自治体に居住地を移転した場合,移転元の自治体か ら移転先の自治体に対して,退院後支援計画の内容等を通知することとする。

④措置入院先病院は,患者等からの退院後の生活環境の相談に応じる「退院後生活環境相談員」を選 任することとする。

(3)精神障害者支援地域協議会の設置

保健所設置自治体は,措置入院者が退院後に継続的な医療等の支援を確実に受けられるよう,精神障 害者支援地域協議会を設置し, (1)精神科医療の役割も含め,精神障害者の支援体制に関して関係行政 機関等と協議するとともに, (2)退院後支援計画の作成や実施に係る連絡調整を行う。

(4)精神保健指定医制度の見直し

指定医の指定の不正取得の再発防止を図り,その資質を担保するため,指定医の指定・更新要件の見 直しや, 申請者が精神科医療の実務を行うに当たり指導する指導医の役割の明確化等を行う。

(5)医療保護入院の入院手続等の見直し

患者の家族等がいない場合等に加え,家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合にも,市町村 長の同意により医療保護入院を行うことを可能とする等,適切な医療の提供を確保する。

これらを概観すると, これまでの措置入院のしくみでは医療が途切れてしまうという問題点に対して改 善を行うと共に,退院支援に係るコーディネーターとしての役割をこれまで以上に求められている現状に ある。

他方,措置入院者の退院後の継続的な支援について一定程度の強制力も見られ,退院後のいわゆる触法 精神障害者の人権の侵害に当たるのではないかとの議論も起こっている現状にある。ここでも,退院後生 活環境相談員は退院支援のコーディネーターとしての役割と共に, 当事者とその家族,そして地域を繋ぐ、

役割を強く担うこととなる。

2.4.退院後生活環境相談員に求められるもの

これらの法改正,および法改正案を概観すると,退院後生活環境相談員は,当事者とその家族を主体と した退院支援チームの丁寧なコーディネーションを行うことを求められている。

他方,上記の通り, 日本における精神科病院は民間病院を中心としており,退院支援をより丁寧に行う ことで,時間,立場,就業者としての視点, ソーシャルワーカーとしての視点など様々な場面で葛藤して いる現状にある。このような現状の中で,退院後生活環境相談員として新たな役割を担うこととなった精 神保健福祉士について,今後どのような課題や展開が求められているかを検討していく。

(7)

3.研究方法

退院後生活環境相談員に係る文献を収集し,文献研究を行う。選定の方法については,研究を共同で行 う研究者問で十分な議論を行い, CiniiArticlesおよび医中誌といった文献検察ソフトにより, 「退院後生 活環境相談員」をキーワードとして検索を行った。なお, キーワードについては,その他の「現状」等の キーワードを追加して検索を行った結果, ほぼ検索にかかることがなかったため, 「退院後生活環境相談 員」単独でのキーワード検索とした。

4.結果

上記検索ソフトにおける検索の結果, CinnArticlesでは7件,医中誌では15件の文献が検索された。加 えて, 2件の論文については,精神保健福祉士協会の協会誌である『精神保健福祉』に組まれた特集から 抜粋し,今回の検討に加えた。この中で,実習教育に係る内容などの明らかに今回の研究テーマと合致し ないもの,及び,検索ソフトで重複したもの,文献閲覧の際に特定のパスワードを必要としたもの,学会 発表用の抄録の内容のうち,特に後日論文としてまとめられているもの等を勘案し,今回の文献研究の対 象となり得る論文は,合計で14件となった(後述の表2を参照)。

このうち,主に精神保健福祉士の現状について書かれていたものが3件,退院後生活環境相談員の課題 について書かれたものが9件,制度設計に係る内容のものが2件であった。

ここで主に退院後生活環境相談員の在り方と制度の在り方を重ねて論考するものが2件あった。一つは 平田(2018)の措置入院への退院後生活環境相談員の導入に係る論考, もう一つは古屋(2014)の地域支 援事業に係る地域医療福祉連携パスの導入に係る退院後生活環境相談員制度との重なりからみたソーシャ

ルワーカーの持つコーディネーションという専門性に関する論考である。退院後生活環境相談員の役割は 上記の通り,医療保護入院者の早期の地域移行に係る一続きの支援をコーデイネーシヨンすることだが,

この点と今後の制度設計の在り方を重ねて論考しているという点で共通している。特に措置入院者への退 院後生活環境相談員の導入については, まだ検討段階ではあるが,その専門性を考えれば, 当然精神保健 福祉士が担うべき内容となろう。この2本の論文はいずれも退院後生活環境相談員の専門性はコーディ

ネーションであることを挙げ,その必要性を説いている。ここに退院後生活環境相談員の専門性と精神保 健福祉士の持つ専門性の重なりが見える。

現状に関する3本の論文く田中・原田・白石ほか(2017),原田・榎本・薬師寺ほか(2016),澤野2016>

については,現状として精神保健福祉士が足りず,退院後生活環境相談員としての業務に追われて,本来 業務でもある退院支援への取り組みが疎かになってしまうというパラドキシカルな葛藤を抱えている。ま た,当事者とその家族の高齢化によって自己決定という価値と倫理に沿った形での業務実践が叶わず葛藤 する様子などが記載されている。

そしてこれは,課題としても残りの9件の文献内にも散見される。特にその在り方を論じる中で,退院 後生活環境相談員の医療チーム全体のマネジメント, コーディネーションといった役割設定は,精神保健 福祉士の専門性そのものであるという論考が多い中,小成・北館(2014)は看護師による退院後生活環境 相談員としての役割期待について対談している。その中で生活を24時間支える看護師だからこそ見える生 活課題へのアプローチに基づくマネジメント, コーディネーションも求められているのではないかという 問題提起を行っている。職種の差こそあれ,医療保護入院になるほどの病状の悪化とそれを身近に見つめ てきた家族の疲弊について,寄り添い,本人主体に退院支援を進めるべきである点を重要視する姿勢は共 通する。

(8)

地域総合研究第47巻第1号(2019年)

表2文献検索結果一覧

薪者名 鈴文名 概尊簿

1平田豊明

【非自発入院制度の現状と課題一精神保健栖祉法,措匠入院,お よび臨床倫理をめぐゐて−1措匠入院制度の検証相模原事 件を通して

・退院後生活顔境相談員の導入などが措置入院にも適応され る方向で法改正調整が進んでいる。

・関係機関との退院についての合意を形成できない場合の課 題も残される

・地域の保健所職員の増員と、過重労働の回避が求められ ろ、

2 田中未来 原田健一 白石貴裕 永山格 桂木正一 小林幹穗

当院における退院後生活環境相談員(錆神保健福祉士)の今後 の在り方について医療保漉入院患者と医療保砺入院者退院 支援委員会対象患者の統計調査を通して

・患者と家族の高齢化により、双方の自己決定ができにくい 中での退院支援に葛藤を感じている

・価値と倫理に基づく、 PSWの専門性を活かした支援を行って いく必要性を再昭職

3 原田郁大 榎本哲郎 山本啓太 浦野隆 休蕊幹子

急性期中心の梢神科病棟における退院後生活環境相談員業務 の成果

・相談員を増員し、業務を効率化することで、一人ひとりの 患者へ丁寧に支援を行うためには、担当患者数が過剰になら ないようにしなければならない。

4 澤野文彦 久野満津代 大畑志保

退院後生活環境相談員のアセスメントと介入ポイント

・精神科救急医療において、退院後生活環境相譲員の役割 は、入院早期からの介入と、アセスメントを行い、人となり をチームに伝えることである

・面接を繰り返し本人の意向を聞き、一緒に動き、入院前に 課題となった生活環境を整えることが求められる。

・精神保健福祉士の専門性である「生活者の視点」 、 「本人 主体」 、 「自己決定の原則」 、 「人と状況の全体関連性」で とらえてゆくことの重要性

5澤野文彦

【精神保健福祉法改正を現場から検証する一法改正をチャンス に転換できているか?1 医療保謹入院者の早期退院に向けた 退院後生活環境泪醗員のかかわりと地域援助事業者の紹介状 況、および医療保護入院者退院支援委員会の開催とその意義 について

・実践することでマンパワーの不足が明らかとなった

・各病院ごとに取り組みに違いがあり、 これは退院後生活環 境相践員の質が保証されていないためである。定期的な研修 制度をの砿立、更新などで質の保証が求められる

・本人を生活者として捉え、速やかに地域に戻す使命を帯び ていることを自覚し、努力し続ける姿勢が求められる

6 原田郁大 榎本哲郎 薬師寺あかり 山本啓太 佃宏美 金久保正光 浦野隆 佐藤啓子

退院後生活環境相凝員導入により、医療保護入院者の入院日 数は短繕したのか?

・退院後生活環境相淡員の導入が医療保襲入院の減少に結び つかなった。 PSWの介入数が増え、事務作業や超瀬業務が煩雑 化し、本当にソーシャルワークが必要な患者への介入が密に 出来にくくなった影響があると考えられる。大幅なPSWの増員 が求められている

寺0小成祐介

北舘有紀子

【法・制度の改革からみる精神科看護師の将来像1 改正精神 保健福祉法と地域移行支授退院後生活環境相峻員を看護職 が担う意味

・君護師の養成腺程の中で数え込まれる問題解決型思考の変 化の必密性を説く必

・看議師が退院後生活環境相談貝を務めることで、 日常的で 密な関わりの中で支援を行うことができる.

8古里龍太

【相践支援とケアマネジメント】 (第5章)相麟支援事業の関 連領域連携をどうはかるか相談支援事業と糟神科病院に よる地域医療福祉連携パス病院・地域を統合する地域移行 支授方策のツールとして

・これまで退院促進・地域移行支援が打ち出されても、一向 に作業が進まないのは、病院と地域の間に埋めようのない乖 離の谷があるからであるが、 「地域医療福祉連携パス」を導 入することで、それぞれの専門職の担うべき役割が明確にな り、可視化され、 =一ディネーションが進む。このコーディ ネーションは医疲保謹入院における退院後生活環境相談貝の 得劃ル*、雷たみ‐

9柏木一恵

【精神保健福祉法改正を現堤から検証する‑法改正をチャンス に転換できているか?】 糟神保健福祉法改正を精神保健福祉 士の立場で総括する

・退院後生活環境相談員の業務は、本来的には糟神保健福祉 士の業務である.

・地域で暮らすことが当たり前であることを樫々な職種で当 たり前に共有できる二とが重要

・地域事業者との協働が重要である

10木太直人 【改正糖神保健福祉法を現場から検証する一法改正をチャンス に転換するために】精神保健福祉法改正と協会の動き

・制度設計の在り方と、退院後生活環境相鮫員の制度の紹 介。精神保健福祉士協会が法改正全体にどう取り組んだかを 記載している

11柏木一恵 精神保健福祉士の立塙から.精神保健福耕差改正菱考える(特集箱 神保健福祉法改正)

・地域に入院者を押し出す役割を担う医療機関の応Wと、地域で彼らを 支える地域援助事業者である馬W、院内多職種チームと地域支援チー ムがつながることがまず必要

・本人の思いに寄り添い、本人や家族が孤立しないよう、本人が当たり 前に地域で蕪らすことを望めるような支扱が馬Wの最も重要な役割であ り、そのような支掻を可能にする馬Wの質の担保と十分な人員を確保で きる体制整附が必要

12木太直人 法改正の現状と問題点;箱神保健福祉士の立場から(特集精神保 健福祉法改正後の現状と問題点)

・退院後生活環境相淡員の役割については、病院における精神保健 福祉士の本来業務として位置付けられるべきものである

・精神保健福祉士は生活者の視点で、とくに非自発的入院に至る患者 の疾病と生活障害の関係性や状況などについて、情報収集やアセスメ ン卜を行うことが重唇となる。また、入院時から支援者として出会い、地 域移行に向けて入院期間を意識した早期かつ定期的な院内・地域支 援チームでの生活支援調整や提供を行うことは、精神保健福祉士が本 来担うべき業務である.

・退院支援番員会の運営を中心的に担い、入院継綴の必要性をチーム で定期的に見直す機会として有効に繊能させるために、箱神保健福祉 士のコーディネート能力が求められる

13

戸石輝・佐野 美和子・林実 香他

退院後生活環境相談員秦務が精神保健福祉士の実躍や業務に 及ぼす影響

・ 11名の精神保健福祉士へのインタビュー調査のよる実践 や業務への影轡を考察している

【制度によって変化したPSW業務】 、 【制度によって変化し ないPSW業務・実践】 、 【PSWと相淡員の違い】 、 【PSWとして の責務の実現】 、 【当事者聿体の支按の展開】 、 【院内連携 への影響】 、 【地域連携への影響】 という7つのカテゴリー を生み出し、退院後生活環境相談員業務に伴レ、本来のPSW業務 が形がい化していないか、その形がい化に抗う背PSWの状況 相談員とPSWの違いを活かしてその責務を全うしようとする姿 勢、当事者主体の実践への努力、法改正に伴う院内外との ネットワーキングへの実践などが行われていることを明らか にしつつ、以前からもそのような動きはしていたのではとい う気付きも記されている。また、法改正以前からの取り組み が法改正後の動きにも影響を与えている二とも示唆された。

14

増田喜値・岩 尾貴・尾形 多佳士他

退院後生活環境相麟員の現状と課題退院後生活環境相談員 へのフォーカスグループインタビュー調査から

・8名の退院後生活環境相談員へのフォーカスグルーブインタ ビューを実施した

・法改正が入院早期から退院を意識するきっかけとなってい ること、法改正をチャンスとして他職種への働きかけを行っ ている様子などが明らかとなった。これらを「早期からかか わる意臓」 、 「地域とつながる実践」 、 「院内他職種や地域 連携促進に向けての仕かけ」などのキーワードとしてまとめ

・他方、対象者が入院形態で限定されること、書類作成の増 加、担当人数に実態が見合っていないこと、避任された担当 者の質の担保、連携に関する地域援助事業者とのズレなどの 課題が挙げられた

・退院後生活環境相談員と地域援助事業者の間に共通する思 いと意思のすれ違いが生じていることも判明した

(9)

制度上の過重労働になり得るシステムの中で,精神保健福祉士は,本来業務であるマネジメント, コー ディネーション, 自己決定や寄り添う支援といった精神保健福祉士の価値と倫理に基づく業務遂行を試み ながら,結果として, システムに中で忙殺され,パラドキシカルな現状の中で,葛藤し,その役割を担い 続けている状況がここからわかる。

5. まとめ

精神保健福祉士倫理綱領(2018年6月17日改定)には「われわれ精神保健福祉士は,個人としての尊厳 を尊び,人と環境の関係を捉える視点を持ち,共生社会の実現をめざし,社会福祉学を基盤とする精神保 健福祉士の価値・理論・実践をもって精神保健福祉の向上に努めるとともに, クライエントの社会的復権・

権利擁護と福祉のための専門的・社会的活動を行う専門職としての資質の向上に努め,誠実に倫理綱領に 基づく責務を担う。」 (公益社団法人日本精神保健福祉士協会2018) と前文に記載されている。戦後日本の 精神障害者の歴史は精神科病院の中での生活の歴史でもあった。先進国と言われている多くの国が精神障 害者の暮らしの場所を地域に移行することに成功してきた。日本でも1987年に精神保健法が成立し1995年 には現在の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に改正され地域移行が確実に進みつつある。しか し,医療保護入院という非自発的入院が入院患者の半分近くを占めている現状は改善されていない。平均 在院日数も減少傾向にはあるが精神科病院で年を重ねて死亡退院している患者もいる。

クライエントの社会的復権・権利擁護とは多くの入院患者ができるだけ早く地域で人間らしく暮らして いくことができる支援の実践である。退院後生活環境相談員の制度をこのような状況の変化を生み出す きっかけにしていこうとする意図を持って書かれた論文がほとんどであった。ソーシャルワーカーが活用 してきた地域医療福祉連携パスがコーディネーションと結びついていくという考察は精神保健福祉士の仕 事と退院後環境相談員の仕事が重なり合うものだという事を強調していた。また現場では患者と家族の高 齢化により 「双方の自己決定ができにくい」状況の中で価値と倫理に基づく実践を求めていこうとして葛 藤している状況が報告されていた。さらに,病院の中での他職種との連携の困難,地域と病院との連携の 問題について提起している論文が目についた。退院後生活環境相談員という制度が導入されても医療保護 入院者の入院日数が短縮できていないという報告もあった。この業務が今までの業務と重なり業務量が増

えていき丁寧な対応が困難になっているという弊害も生まれている。

今後の課題として①病院内でのクライエントの社会復帰を共通目標としたカンファレンスとプランニン グ②精神保健福祉士の業務と退院後生活環境相談員の業務の重なりと重ならない部分の明確化③地域との 連携の在り方を病院全体で検討していく④退院後生活環境相談員・精神保健福祉士としての研修とスー パービジョン制度の確立⑤クライエントと同意者への徹底した支援⑦現在モデル事業として展開され始め ている措置入院患者の措置解除後の支援と退院後生活環境相談員の役割についての継続した検討⑧精神保 健福祉士・退院後生活環境相談員そしてスタッフの増員の問題があげられる。これらの問題についての検 討がクライエントの地域生活支援の実現に向かっていくことになると考えている。

6.謝辞

本研究は平成29.30年度鹿児島国際大学附置地域総合研究所清水基金プロジェクト研究の研究助成を受 けて実施したものである。

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地域総合研究第47巻第1号(2019年)

文献

1. 古屋龍太(2014) 「【相談支援とケアマネジメント】 (第5章)相談支援事業の関連領域連携をどうはかるか 相談支援事業と精神科病院による地域医療福祉連携パス病院・地域を統合する地域移行支援方策のツールとし て」, 『精神科臨床サービス』, 14巻2号, 234‑237

2. 原田郁大・榎本哲郎・薬師寺あかり他(2016) 「退院後生活環境相談員導入により,医療保護入院者の入院 日数は短縮したのか?」, 『精神神経学雑誌』, 2016特別号, 645

3. 原田郁大・榎本哲郎・山本啓太他(2018) 「精神科急性期病棟における退院後生活環境相談員業務の成果と 退院支援について」, 「医療』, 72巻1号, 4−8

4. 平田豊明(2018) 「【非自発入院制度の現状と課題一精神保健福祉法,措置入院,および臨床倫理をめぐって一】

措置入院制度の検証相模原事件を通して」, 『精神神経学雑誌』, 120巻8号, 664‑671

5. 柏木一惠(2014) 「精神保健福祉士の立場から,精神保健福祉法改正を考える(特集精神保健福祉法改正)」 『日 本精神科病院協会雑誌』33(11), 1122‑1127

6. 柏木一惠(2016) 「【精神保健福祉法改正を現場から検証する−法改正をチャンスに転換できているか?】精神保 健福祉法改正を精神保健福祉士の立場で総括する」, 『精神保健福祉』, 47巻4号, 272‑277

7. 木太直人(2013) 「法改正の現状と問題点:精神保健福祉士の立場から(特集精神保健福祉法改正後の現状と問 題点)」 『日本精神科病院協会雑誌』32(12), 1261‑1266

8. 木太直人(2015) 「【改正精神保健福祉法を現場から検証する−法改正をチャンスに転換するために】精神保健福 祉法改正と協会の動き」, 「精神保健福祉j, 46巻1号, 9‑12

9. 公益社団法人日本精神保健福祉士協会退院促進委員会(2016) 『精神保健福祉士のための退院後生活環境相談員 ガイドライン』, http://wwwjapsw.or.jp/ugoki/hokokusyo/20160630‑guidelineO2/all.pdf (2018.12.17)

10.公益社団法人日本精神保健福祉士協会(2018) 「精神保健福祉士の倫理綱領」,

http://wwwjapsw.orjp/syokai/rinri/japsw.htm(2019.7.27)

11.厚生労働省(2015) 「平成26年度精神障害者保健福祉等サービス提供体制整備促進事業に関する研修退院後生 活環境相談員養成研修テキスト」,

https://www.mhlw.go.jp/file/06‑SeisakUjouhou‑12200000‑Shakaiengokyokushougaihoke血kushibu/0000096969.

pdf (2018.12.17)

12.厚生労働省(2017) 『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の概要』,

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193‑16.pdf (2018.12.17) 13.厚生労働省(2018) 『平成29年(2017)医療施設(動態)調査・病院報告の概況」

https://wwwmhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/17/dl/09gaikyo29.pdf (2019.7.27) 14.厚生労働省(2018) 『最近の精神保健医療福祉施策の動向について」

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000462293.pdf (2019.7.27)

15.増田喜信・岩尾貴・尾形多佳士他(2019) 「退院後生活環境相談員の現状と課題退院後生活環境相談員 へのフォーカスグループインタビュー調査から」, 『精神保健福祉』, 50巻1号, 39

16.小成祐介・北舘有紀子(2014) 「【法・制度の改革からみる精神科看護師の将来像】改正精神保健福祉法と地域 移行支援退院後生活環境相談員を看護職が担う意味」 『精神科看護』, 41巻12号, 22‑29

17.澤野文彦(2016) 「【精神保健福祉法改正を現場から検証する−法改正をチャンスに転換できているか?】医療保 護入院者の早期退院に向けた退院後生活環境相談員のかかわりと地域援助事業者の紹介状況,および医療保護入 院者退院支援委員会の開催とその意義について」, 『精神保健福祉』, 47巻4号, 287‑290

18.澤野文彦・久野満津代・大畑志保(2017) 「退院後生活環境相談員のアセスメントと介入ポイント」, 「日本精 神科救急学会学術総会プログラム・抄録集25回』, 84

19.精神保健福祉研究会(2016) 「四訂精神保健福祉法詳解』, 中央法規出版

20. 田中未来・原田健一・白石貴裕他(2017) 「当院における退院後生活環境相談員(精神保健福祉士)の今後 の在り方について医療保護入院患者と医療保護入院者退院支援委員会対象患者の統計調査を通して」, 『精神医 療』, 63号, 33

21.戸石輝・佐野美和子・林実香他(2019) 「退院後生活環境相談員業務が精神保健福祉士の実践や業務に及 ぼす影響」, 『精神保健福祉』, 50巻1号, 38

参照

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