論文内容要旨
KRAS
andEGFR
Amplifications Mediate Resistance to Rociletinib and Osimertinib in Acquired Afatinib-Resistant NSCLC Harboring Exon 19 Deletion/T790M inEGFR
(
EGFR T790M 遺伝 子変異を発現 した 肺腺癌細胞株 にお ける第3世 代 EGFR-TKI への獲得耐性機序の検討 )薬学研究科薬学専攻 医薬品評価薬学 中谷香織
内容要旨
【背景】本邦では肺腺癌患者の約 50%に EGFR 遺伝子変異が認められる。
この遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者に対し第 1-2 世代 EGFR-TKI(ゲ フィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ)は、有効な治療であり、70-80%
の奏効率と予後の延長が報告されている。しかし、ほとんどの症例で、1-2 年以内に耐性を獲得し、次の治療が必要となる。EGFR における T790M 遺 伝子変異の出現による耐性化が約半数を占め最も多い。これを克服するた めに、第 3 世代 EGFR-TKI のロシレチニブやオシメルチニブが開発され、
現在、オシメルチニブが臨床応用されている。しかし、その耐性機序は明 らかではない。
【目的】EGFR T790M 遺伝子変異の出現によりアファチニブ耐性を獲得し た細胞株を用いて、ロシレチニブとオシメルチニブへの耐性細胞株を樹立 し、耐性化機序を明らかにし、新たな治療戦略を検討した。
【方法】EGFR exon 19 に遺伝子変異を有する肺腺癌細胞株 PC-9 に、アフ ァチニブを低濃度より持続接触し、T790M 遺伝子変異により耐性を獲得し た AfaR 細胞を樹立した。この細胞に、ロシレチニブあるいはオシメルチ ニブを低濃度より持続接触し、ロシレチニブ耐性細胞を 2 株 (RocR1、
RocR2) 及びオシメルチニブ耐性細胞を 2 株 (OsiR1、OsiR2) を樹立した。
薬剤感受性を MTT 法で、遺伝子の発現と変異をデジタル PCR 法とダイレク トシーケンス法で、さらにタンパク質の発現や活性化シグナルを解析する ためにウエスタンブロット法を用いた。
【結果】ロシレチニブ耐性細胞(RocR1/RocR2)は、ともに EGFR exon 19 の遺伝子変異及び T790M の部分的な発現低下を認めた。さらに、RocR1 細 胞では KRAS、RocR2 細胞では EGFR の遺伝子増幅と発現亢進が確認された。
RocR1 細胞は、MEK 阻害剤であるセルメチニブとアファチニブとの併用に より下流シグナル活性が阻害され、アポトーシスの誘導と細胞増殖の抑制
が確認された。RocR2 細胞は、siRNA で EGFR 発現を抑制により細胞増殖が 抑制された。
オシメルチニブ耐性細胞(OsiR1/OsiR2)は、ともに KRAS の発現亢進が確 認された。 MEK 阻害剤の接触で下流シグナルの ERK1/2 活性は阻害された が、AKT 活性は十分に阻害されなかった。IGF1R 阻害剤の併用により阻害 され、アポトーシス誘導と細胞増殖抑制が確認された。また、オシメルチ ニブ耐性細胞の樹立過程において、培養液中のオシメルチニブ濃度を上昇 させるたびに細胞を保存し、KRAS 発現を検討した。OsiR1 細胞では、KRAS は継時的な増加を示した。OsiR2 細胞では、オシメルチニブ濃度が 0.4μM まで増加傾向を示したが、オシメルチニブ濃度を 1μM まで上昇させる過 程で減少に転じた。さらにオシメルチニブ接触を約 2 ヶ月間中断して培養 した。OsiR1 細胞は、EGFR と GRB2 の結合が解離し EGFR シグナルが部分的 に回復した。KRAS 発現に変化はなく、オシメルチニブと MEK 阻害剤の併 用により細胞増殖が抑制された。OsiR2 細胞では、KRAS 発現が徐々に低下 し、オシメルチニブ感受性が回復した。
【結語】EGFR T790M の発現によりアファチニブ耐性を獲得した肺腺癌細 胞株を用いて第3世代 EGFR-TKI への獲得耐性機序を明らかにした