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雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

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(1)

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養 成教育の課題 : 教育相談における生徒のプライバ シー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマ を題材に

著者 渡部 晃正, 森田 健宏

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 16

ページ 25‑32

発行年 2016‑03

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010101/

(2)

1.問題の所在

 現代の学校教育において教職員は、児童・生 徒指導、教育相談や保護者支援、地域連携、他 の専門機関との連携などを通してさまざまな 人々との関わりがあり、それぞれに対して「教 育の専門職」の立場から、指導や助言、意見の 交換、協働的な活動が求められている。したがっ て、大学の教職課程において、学生の「実践的 指導力」

1)

の基礎を養うことは、次世代の学校 教育の発展に資することにつながると考えられ る。そのためには、教職課程を担当する教員は、

児童・生徒を取り巻く文化的・社会的環境の変 化と時代のニーズを適確にとらえながら、実践

的指導につながるような知見を学生たちに提供 していかなければならない。そして、今後の教 職課程における実践的指導力の基礎の育成を鑑 み、教職課程を担当する教員は、学生が実際の 教育場面において生起されるさまざまな問題を 予見し、総合的に解決するための方法を理解で きるような教員養成教育のあり方を新たに構築 していかなければならないといえる。同時に、

教員は、履修した教職に関する授業科目の各専 門分野から必要な情報を抽出、援用して教育実 践に役立てることができるよう、教職を目指す 学生に対して、たしかな知識の獲得と活用を求 めていく必要がある。

 これらを具体化させるためには、教職課程で は、その内容・方法を検討するだけではなく、

教職に関する授業科目間や学習内容間の連携と

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養成教育の課題

─教育相談における生徒のプライバシー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマを題材に─

渡部 晃正

1)

  森田 健宏

2)

Some Issues in Pre-service Teacher Education in Japan:

Focusing on Developing Practical Skills for School Counseling Terumasa WATANABE Takehiro MORITA

1)東京家政大学家政学部児童学科教育社会学研究室

2)関西外国語大学英語キャリア学部英語キャリア学科 要旨

 本稿は、教職課程を履修する学生の実践的指導力の基礎を養うための教職に関する授業科目間や学習内容間の連携の必要 性を探るため、教育相談におけるジレンマを伴う状況を設定し、どのような知見を根拠に解決方法を考えるのかについて、

教職課程を受講する学生を対象とした質問紙調査により検討したものである。その結果、学生の回答傾向から、教育支援と してのあり方や対処の仕方について確たる論拠にもとづく理解に達しているとは言い難い現状が明らかとなった。したがっ て、大学における教員養成教育では、教職を目指す学生が実際の教育場面において生起されるさまざまな問題を予見し、総 合的に解決するための筋道を理解できるよう、今後、教職に関する授業科目間や学習内容間の連携を進めていくことが重要 であると指摘することができる。

キーワード:教員養成教育、実践的指導力、教育相談、教職に関する授業科目間の連携

(3)

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養成教育の課題 ─教育相談における生徒のプライバシー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマを題材に─

いう視点もより重要になると考えられる。例え ば、文部科学省の『生徒指導提要』

2)

によれば、

教職に関する科目のうち、「生徒指導」と「教 育相談」とは内容が重複し、かつ相補的、連動 的であるとされているため、比較的連携を意識 しやすいとされる。実際の教育現場において、

生徒の問題行動が認められる場合、その対応に あたって中心となる内容は「生徒指導」であり、

さらに、個別の相談においては「教育相談」に 示される内容をもとに解決にあたることが求め られるであろう。しかし、その指導や相談にお いて判断の基準や根拠とするものには、「教育 制度論」や「教育法規」などの科目に含まれる 法令等の知識が必要となる。さらには、生徒の 発達状況を考慮するのであれば「教育心理学」

なども関連するであろう。このように、学校に おける教育実践においては、教職に関する授業 科目の教育内容がさまざまな形で関連し合って くることが理解できる。そもそも、このような 教職に関する授業科目間の連携の必要性につい ては、教職課程の指導に携わっている大学教員 であれば、これまでにも意識されてきていると 思われるが(例:中西・内藤・原野 1991

3)

、 大島 2011

4)

)、実際、組織的、体系的に取り組 まれる例は、杉浦(2015)

5)

などに見られる他、

未だ少ないものといえる。

 このような考えをもとに、本研究では教職に 関する授業科目のうち、筆者らの専門分野であ る「教育相談」「教育制度論」の2分野を、連 携研究の試みの起点となることを企図し、教育 実践事例に対して両科目の視点から検討するこ とを試みたい。具体的には、上記の2分野から 知見を引用して検討できる題材として、「教育 相談場面において生徒から秘密保護の要請が あった事例」を材料とし、そのことについて「親 権者である保護者へ法的に説明責任が伴う可能 性がある」というジレンマを伴う状況を設定し て、どのような知見を根拠に解決方法を考える のかを、教職課程受講生を対象とした質問紙調 査により検討することとした。

2.方法

調査対象:教職課程を受講する大学生367名 材料:調査用質問紙 1部

 質問内容は、 「進路」「いじめ」「男女交際」「学 習」「金銭貸借」の5事例について生徒が悩ん でおり、教員との相談場面において、「このこ とは親には知られたくない」と願われた場合、

どのように対応しようと思うかを、以下2つの 形式の選択肢から回答してもらった。

<解決方法> 以下から1つを選んで,【  】内に数字で記入してください。

       「5.その他」を選んだ場合、その内容を(  )内に記述してください。

  1.生徒の意思にかかわらず、こちらから保護者に連絡する。

  2.保護者から関連する内容について問合せがあれば説明する。

  3.生徒の意思を尊重し、秘密を保持して保護者には伝えない。

  4.とりあえず管理職の先生に伝え、指示を仰ぐことにする。

  5.その他(      )   【  】

<シミュレーション>A〜Eのすべてについて、それぞれ現在の自分はどうか、○・×で回答してください。

  A.[ ]この問題を解決するための道筋を具体的にイメージできる。

  B.[ ]この問題で最初に誰に相談すべきかを決めることができる。

  C.[ ]この問題で当事者の生徒の気持ちを深く想像できる。

  D.[ ]この問題で保護者への説明内容や方法を想像できる。

  E.[ ]このような問題が起きたら、解決方法が想像できず、困ってしまうだろう。

(4)

手続き:調査は集団で実施し、

質問紙により回答を求めた。そ の際、回答を望まない学生は無 回答で提出して良いこと、無記 名形式のため個人のデータは明 らかにされないことなどの説明 を行っている。その結果、無回 答もしくは回答の不備が4件あ り、363件が分析対象となった。

3.結果

 本調査の5つの事例の内容お よび集計・分析結果は図1の通 りである。

4.考察

(1)各事例の分析

 以上の結果より、特徴的な点 について検討する。まず、「解 決方法」についての選択肢の回 答傾向を中心にみると、「生徒 の秘密保護の要請を支持する」

という割合が最も高かったの が、 【事例3(男女交際)】であっ た。次いで、 【事例2(いじめ)】

である。これらについては、 「シ ミュレーション」の回答傾向で も、「E.解決方法が想像でき ず困ってしまう」に○の回答で あ っ た 者 が 多 い( 事 例 2:

49.3 %、事例3:57.9 %)。と くに、事例2は、いじめの早期 発見と解決に関連する内容であ り、既に法令や通知などで早期 介入の必要性が指摘され、学生 にとっては学習していなければ

注)想定力平均得点‥‥シミュレーションA~Dの「○」回答の         合計数の平均

14.0% 1 13.2%

1.7%

57.3%

13.8%

21.2%

16.3%

8.5%

47.9%

6.1%

11.3%

22.6%

17.9%

43.5%

4.7%

55.1%

16.8%

1.4%

20.4%

6.3%

2 3 4 5

1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5

図1.事例内容と結果

(5)

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養成教育の課題 ─教育相談における生徒のプライバシー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマを題材に─

ならない内容である。しかしな がら、「解決方法が想像できず 困ってしまう」という回答が多 いことは、本課題の設定上では あるが、回答する学生はジレン マに陥っていることが考えら れ、もっともよりどころにすべ き学習内容に到達できていない 点に留意しなければならない。

 一方、「生徒の意思に関係な く保護者に連絡する」と最も多 く回答したものは【事例4(学 習)】であり、さらに、このシミュ

レーションの回答傾向では、「解決の道筋が具 体的にイメージできる」という回答が 62.3 % に達している。しかし、他の事例の回答傾向を 含め個人内比較により検討すると、本事例以外 すべてに「解決の道筋が具体的にイメージでき る」としなかったものが多く見られる(46.2%)。

このことから「保護者への連絡」が、学習困難 な状況からというよりも隠蔽などに対する懲戒 的な意味合いであることが想像できる。このよ うに、教育相談場面において、生徒からの秘密 保護の願いを受け入れるような回答の背景に は、学生自身の価値観や情意的な判断といった ものが含まれていると考えられる。

 次に、「解決方法」「シミュレーション」の選 択を総合的に考える方法として、以下のような 方法を検討した。まず、「解決方法」の【1】

を○と回答したものについて、生徒の秘密保護 要請についての「要請拒否型」、【3】を「要請 容認型」として設定した。次に、何らかの形で 問題解決がシミュレーションできることを示す

「シミュレーション」の【A】〜【D】の4項目 に○と回答した合計得点を「想定力得点」とし た。そこで、「要請拒否型」、「要請容認型」そ

れぞれの「想定力得点」を平均してt 検定によ り比較したところ、事例1のみに1%水準で有 意差が認められた。このことから、【事例1】

については、「要請拒否型」すなわち、秘密保 護をすべきでないと考えた者が、「要請容認型」

よりも、この場合の指導展開を具体的に考えら れることがわかった。それ以外の事例について は上記の間で有意差はなく、平均得点の高低か らシミュレーションのしやすさのみを判断でき る。したがって、 【事例1】進路指導については、

相対的に平均得点を見て考えるならば、「要請 容認型」の選択をした学生は、その後の対応方 法が具体的にイメージできがたい状況になりえ ることが考えられた。以上、データにもとづき 特徴的な点についての分析を行った。

(2)各事例における教育支援のあり方

 ところで、本研究で使用したこれらの事例の 多くは、教育現場における実際の現職教員によ る現実的な判断では、ジレンマに陥ることも無 く、法令等や各学校のルールによって対処する 方法が決まっているものがむしろ多い。そこで、

事例ごとに基本的な対応のあり方と「教育相談」

注)想定力平均得点‥‥シミュレーションA~Dの「○」回答の         合計数の平均

1 2 3 4 5 40.2%

18.5%

6.6%

31.4%

3.3%

図1.事例内容と結果 続き

(6)

「教育制度論」それぞれにおける指導すべき内 容について考えてみたい。

 まず、【事例1:進路】では、教員は、進路 指導の三者面談を通して生徒と保護者との考え の違いの把握し、調整役に徹することが求めら れる。この事例のように保護者と生徒との進路 希望の違いが生じてしまうことで、進路指導が 円滑に進まないことはよくあることである。し かし、一方の立場に過剰な共感をする姿勢を示 すことで、後の相談過程で客観的、中立的に指 導することが難しくなるケースも多い。この場 合、解決に向けた見通しを立てる考え方を持ち、

そのなかで発話されること、あるいは適用され るルールを想定するという考え方が学生たちの なかに育つように指導することが必要であると いえる。

 次に、【事例2:いじめ】については、いじ め防止対策推進法の「いじめの早期発見のため の措置(第16条)」において、相談体制を整備 するにあたって家庭(保護者)との連携が求め られていることから、このケースの場合、躊躇 することなく他の教職員と連携し、組織として 早期の対応が求められる。したがって、問題解 決の道筋が具体的にイメージできない学生は、

当該生徒に対する冷やかしや中傷がエスカレー トし、深刻化する可能性を予見できていないと 考えられる。

 【事例3:男女交際】は、子どもから大人へ 移行する思春期の発達過程における問題であ り、家庭の果たす役割が大きいということを鑑 み、保護者と連携し、適切な指導を行うことが 求められる。とくに、このような事例は、学校 で生じるさまざまな問題の深刻さを相対的に捉 えた結果、軽視されることも多い。あるいは、

わが国におけるこれまでの性に対する理解や教 育の経緯から、教員も含め、周りの大人ですら

通俗的な理解のレベルにとどまってしまうこと もありえる。この点から、教職課程における学 生の教育に当たっては、教職に関する授業科目 のなからから十分な正しい知識を引き出し、積 極的な指導を考えられるように導かなければな らない。

 【事例4:学習】については、学業不振の原 因を探る過程において、他の教員や保護者の協 力が不可欠となる場合もあり、連携して学業指 導を行う必要がある。この事例にある中学生の 場合、自分の学習状況を客観的に理解できる など、「メタ認知」が可能な世代にあり、自覚 できているなかでの故意の行動である。このこ とから、事実隠蔽や隠滅に相当する行動には毅 然とした対応が必要になる一方、学習が思うよ うにいかない状況については、共感的な関わり を踏まえた指導が必要であることを学生たちは 学ばなければならないと考えられる。

 【事例5:金銭貸借】では、事実関係を把握し、

行動の背景を理解しながら適切な社会性指導を 行うことが求められる。とりわけ、金銭の問題 は大人社会でもトラブルになることが多く、訴 訟問題に発展するなど、事態が拡大することも 十分にありえる。そこで、この事例については、

保護者に対して、事実関係、行動に至った経緯、

そして指導内容について十分に説明し、学校と しての指導方針と体制について理解を求める必 要がある。また、その過程で、いじめ等人間関 係の問題が発覚することもありえる。このこと に留意し、教職課程の学生は、積極的に早急な 対応というものを想起しなければならないとい える。

 調査では、<解決方法>として「4.とりあ

えず管理職の先生に伝え、指示を仰ぐことにす

る」とういう選択肢を設定している。結果を見

ると、事例1、2、3では、もっとも多くの学

(7)

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養成教育の課題 ─教育相談における生徒のプライバシー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマを題材に─

生がこの解決方法を選択し、事例4と5では、

2番目に多くの学生が選択していることがわか る。これは、ジレンマ状況のなか、自ら適切な 判断を下せないがゆえに、「とりあえず」管理 職に頼るというのが無難な選択だろうという、

学生の姿勢の表れなのかもしれない。しかしな がら、実際、管理職等へ報告・相談することは、

現職教員にとって職務上きわめて重要なことで ある。例えば、文部科学省の『中学校学習指導 要領解説・特別活動編』

6)

第4章1節では、「教 育相談は、一人一人の生徒の教育上の問題につ いて、本人又はその親などに、その望ましい在 り方を助言することである。その方法として、

1対1の相談活動に限定することなく、すべて の教員が生徒に接するあらゆる機会をとらえ、

あらゆる教育活動の実践のなかに生かし、教育 的配慮をすることが大切である」 (点線は、筆者)

と示されている。ここでは、現職教員は、単独 で児童・生徒に対応するだけでなく、学年主任、

管理職、教育相談担当教員などに報告・相談を するといった、協働することが求められており、

教職課程で学ぶ学生たちも、このことを理解し ておく必要があるといえる。近年、高い専門性 を有したスクールカウンセラーやスクールソー シャルワーカーの全校配置や「チーム学校」と しての校内組織づくり(学内連携)への期待が 高まっている。その反面、2005(平成 17)年 4月に個人情報保護法が全面施行された頃よ り、厳格に法を適用した結果、教職員間での情 報の共有化が妨げられるといった負の側面が顕 在化しているという指摘もあり

7)

、教育現場に おいて、教職員が連携しながら対応する際には、

より慎重さが求められるようになっていること も、教職課程の教員は、学生たちに教えていか なければならないといえる。

 以上、各事例について、「教育相談」と「教

育制度論」のそれぞれの学習内容から学生が想 起しなければならないこと、さらには、教職課 程担当教員として指導すべきことをもとに検討 してきたが、学生の回答傾向から、やはり、教 育支援としてのあり方や確たる論拠にもとづく 理解に至っていると判断しがたいことも多くあ り、本研究が教職に関する授業科目間の連携の 検討が必要である根拠の1つになりうるものと 思われる。具体的には、「教育制度論」や「教 育法規」などの学習内容が想起できるようであ れば、守秘義務(地方公務員法第 34 条)の適 用範囲などの知識を回答に反映できるようにな ると考えられる。一方、『生徒指導提要』

8)

を はじめ「教育相談」に関する内容をもとに、青 年期の心理を理解し、共感する姿勢を重要視す るなかで、生徒からの相談への対処方法を法令 のみにしたがって判断することを躊躇する考え 方もありえる。当然、そこには上記に示した原 則論では対処しきれない現実があることも、教 職に関する授業科目を担当する教員は、学生た ちに示していかなければならない。しかしなが ら、教員養成教育では、まず、原則論に基づい て各論の学習が成り立っていることを学生たち に伝えなければならないといえる。そして、そ のことを踏まえた上で、学生たちは、教職の根 幹となる教育の意義や教職の使命を考究し、当 該生徒との信頼関係を保ちながら問題の解決を 図れるような実践的指導力の基礎を培うことが 求められる。そこで、さまざまな教育実践事例 をもとに、教職に関する授業科目の各科目担当 教員が指導内容についてどのように参与し、そ れをどのように教えていくべきか協議すること が有効になると思われる。

5.まとめと今後の課題

 最後に、実践的指導力の基礎の育成という観

(8)

点から、教育現場における原則的な考え方と現 状の問題点を詳述し、今後の教員養成教育に向 けた課題としての教職に関する授業科目間や学 習内容間の連携について述べることにする。

 本論文で取りあげた教育相談におけるジレン マ状況では、教職課程で学ぶ学生たちは、まず、

原則的な考え方として、保護者に対して説明責 任のあること、学校教育は、法令等を根拠に行 われていること、また、教員の服務のあり方に ついても法令等にもとづいていることを理解し ていなければならない。文部科学省の『生徒指 導提要』

9)

では、「教育を委ねられた者として、

教育を委ねた者に教育現場の運営について説明 する責任があるということです。学校運営に携 わる者が負う制度的責任ということもできま す」とあるように、教員が説明責任を負ってい ることが明確に示されている。

 一方、本稿で題材として取り上げた生徒の秘 密保護の要請から、生徒のプライバシー保護と いう観点も見過ごすことはできない。「教育制 度論」や「教育関連法規」で学習する内容とし て、憲法第 13 条では、個人の尊重が謳われ、

教育基本法前文では、個人の尊厳を重んじるこ とが示されていることを考慮すると、現職教員 には生徒の人格を尊重しながら慎重な対応が求 められることになる。同時に、「教育相談」で の学習において、教員は、生徒のプライバシー 等に配慮しつつ、生徒の悩み相談に応じ、気軽 な話し相手になることで、生徒のストレスを和 らげ、心の居場所としての学校づくりにつとめ なければならないことも、学生たちは事前に 知っておく必要があるといえる。

 ところで、若井(2015)

10)

によれば、「我が 国の学校教育法(同法施行例、同法施行規則を 含む)においては、出席停止措置を行う場合の 保護者への説明手続き(学校教育法第 35 条2

項、49 条等)を別とすれば、児童生徒が、あ るいは保護者らが、要望・要請等がある場合に どのような手続きルートを活用すべきかについ て、明文化されてこなかった」と述べ、要望・

要請(相談)に関する手続き規定の未整備を指 摘している。実際の児童・生徒への対応では、

原則論に従いながらも、各教育委員会と所管学 校の、あるいは学校単独の判断に委ねられてい る現状がある。つまり、学生は、教員となった 時、着任した学校全体の指導方針・対応方法を 確認しなければならないことも、合わせて知っ ておかなければならないである。

 本研究で示した調査結果からも明らかなよう に、教職課程では、教育現場における原則的対 応のあり方と現状を踏まえた上で、学生一人一 人が問題を解決するための方法を総合的に理解 できるような実践的指導力の基礎を養うことが 重要であるといえる。そのためには、今後、教 員養成教育において提供される教職に関する授 業科目間や学習内容間の連携を進めていくこと が不可欠となってくるのである。

文献

1) 中央教育審議会(2012)『教職生活の全体 を通じた教員の資質能力の総合的な向上方 策について(最終報告)』。(http : //www.

mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/

chukyo 3/siryo/attach/1325920.htm 平成 27年9月25日最終確認)

2) 文部科学省(2010) 『生徒指導提要 第5章- 第 8 章 』。(http : // www.mext.go.jp/b_

menu/houdou/22/04/__icsFiles/afieldfi le/2011/07/08/1294538_03.pdf 平成27年9 月25日最終確認)

3) 中西信男・内藤勇次・原野広太郎(1991) 「教

職課程としての教育心理学はどうあるべき

(9)

教職課程学生の実践的指導力の育成へ向けた教員養成教育の課題 ─教育相談における生徒のプライバシー保護の要請と保護者への説明責任とのジレンマを題材に─

か」日本教育心理学会編『教育心理学年報 Vol.30』,pp.9-11。

4) 大島英樹(2011)「教職に関する科目とし ての「教職実践演習」の意味:「総合演習」

との対比において」『立正大学心理学研究 所紀要(9)』,pp.27-38。

5) 杉浦健(2015)「近畿大学の教職課程にお ける学内連携の構築プロセス」全国私立大 学教職課程研究連絡協議会編『教師教育研 究(28)』,pp .43-47。

6) 文部科学省(2008)『中学校学習指導要領 解説 特別活動編』。 (http : //www.mext.

go.jp/component/a_menu/education/

micro_detail/__icsFiles/afieldfile/

2011/01/05/1234912_014.pdf 平 成 27 年 9 月25日最終確認)。

7) 坂田仰(2015)『学校現場における教育法 規実践学【上巻】』教育開発研究所。

8)前掲書2)

9)前掲書2)

10) 若井彌一(2015)「生徒指導に関する主要 法令と運用課題」日本生徒指導学会編『現 代生徒指導論』学事出版,pp. 108-113。

Abstract

In this article, the authors argue that pre-service teacher education needs to place more emphasis on developing practical skills. There is ambiguity concerning teachers’ obligations when handling student privacy and confidentiality in school counseling. This fundamental dilemma is experi- enced by those who try to help students. Teachers must exercise their own judgement about whether disclosing students’ private information to their colleagues or to the students’ parents is in the students’ best interests. However, teachers must obey the law and provide appropriate information to others who share their concern and responsibility for the troubled student. The results of a questionnaire survey on teachers’ dilemmas in a variety of situations in school coun- seling, revealed that pre-service teachers who took university-level teacher training courses possessed only a smattering of subject-based knowledge. Therefore, it is necessary to integrate practical skills development into the pre-service teacher training curriculum. Coordination among teacher training programs in colleges and universities, will help pre-service teachers develop basic practical skills.

Keywords : Pre-service Teacher Education, Developing Practical Skills for Teachers, School

Counseling, Coordination Among Pre-service Teacher Training Programs

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