• 検索結果がありません。

津波避難シミュレーションモデルの開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "津波避難シミュレーションモデルの開発"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

津 波 避 難 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル の 開 発

野 澤 征 司 ・ 渡 辺 公 次 郎 ・ 近 藤 光 男

Development of Evacuation Simulation Model for Tsunami Disaster Seiji NOZAWA, Kojiro WATANABE and Akio KONDO

Abstracts : The purpose of this study is to develop Tsunami evacuation simulation model by multi-agent systems. We show the concept and the process of the model in this paper. In this model, an agent is the evacuee, and an environment is the urban area. Evacuee has an age, an evacuation speed, a congestion condition, a consciousness of disaster prevention and a fatigue as attribute data. In the simulation, evacuee goes through the nearest crossing point from his house firstly, and then, he goes to goal as he is choosing the crossing point in the order near the goal. We use a KK-MAS as a programming tool. Study area is the Tomoura historical urban area in Tokushima.

Keywords : 津波避難(Tsunami evacuation),シミュレーションモデル(Simulation model),

マルチエージェントシステム(

Multi-agent systems)

1.はじめに

我が国には,防災上問題となりうる要素を含ん でいる市街地が多数存在している.今後30年以

内に

50%という高い確率で発生すると予測され

ている南海地震などの大規模災害に備えるために も,このような地域において防災性能を向上させ ることは重要課題となっている.市街地の防災性 能を向上させる整備には,施設整備などのハード 面の整備,防災訓練などのソフト的な施策が挙げ られる.

しかし,ハード面での整備にはある程度の限界 がある上に,阪神大震災の教訓から,「自助7割,

共助

2

割,公助

1

割」と言われていることからも,

野 澤 : 〒770-8506 徳 島 県 徳 島 市 南 常 三 島 町

2-1

徳 島 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 エ コ シ ス テ ム 工 学 専 攻

Tel 088-656-7612

Fax 088-656-7341

E-mail [email protected]

住民自らが災害から逃れて安全な場所に避難する といった「自助」や,互いに助け合う「共助」を 支援するソフト的な施策が重要であると言われて いる(兵庫県,

2006).そして,より効果的な

ソフト的施策を把握するためには,施策効果をわ かりやすい指標を用いて計測する必要があると考 えられる.そのためには,避難行動の形で,ソフ ト的施策を評価できるようなモデルが必要である と考えた.

そこで本研究では,自然災害の中でも特に地震 津波災害を対象とし,津波避難シミュレーション モデルの開発を行う.さらに開発したモデルを用 いて,研究対象地域におけるシミュレーションを 行い,避難行動の予測結果からソフト的施策の評 価を行うことを本研究の目的とする.

本稿は,その過程である津波避難シミュレーシ

ョンモデルの考え方について述べる.

(2)

2.マルチエージェントシステム

マ ル チ エー ジ ェ ン トシ ス テ ム とは , 自 律 した 個 々 の 主 体が 相 互 に 依存 し あ う シス テ ム で あり

「エージェント」と「環境」から構成される.エ ージェントは自律した行動主体であり,環境はエ ージェントに影響を及ぼす対象である(大内ほか,

2002).

避難行動においては,個々の避難者が持つ行動 特性により,様々な避難行動が出現する.それら の相互作用により,全体的な避難行動が決定され ると考えられる.そこで,避難者をエージェント,

周辺の空間を環境と考え,マルチエージェントシ ステムでモデル化することによって,避難行動全 体に及ぼす影響を把握することができると考えら れる.そこで本研究では,マルチエージェントシ ステムを用いて津波避難行動をモデル化する.

3.研究対象地域

本研究では,徳島県海部郡海陽町鞆浦地区を対 象とする(図1).海陽町は徳島県の最南端に位 置し,鞆浦地区はその東端の海部川河口部に位置 する.この地区は,県内でも有数の歴史のある漁 村集落であるが,海部川流域一円の物流拠点とし て,古くから阪神間との交易が行われていただけ でなく,阿波水軍の連絡港としての役割も担って い た . ま た, 県 南 部 の漁 村 集 落 に多 く 見 ら れる

「ミセ造り」を有する民家が多く残っており,独 特な景観を醸し出している.「ミセ」(図2)と は,昼間は下におろして濡れ縁となり,夜間は引 き上げて雨戸の代用として利用する,民家の柱間 装置である(徳島県建築士会,1995).

この地区は,過去幾度となく南海地震津波の被 害を受けており,近い将来の発生が危惧されてい る東南海・南海地震発生時には,最大で4mの津 波が予測されている(徳島県,2005).その対 策として,地区内には現在,7箇所の避難所が設 置されているが,狭隘な街路空間や密集した古い 木造建築物,避難所までの急峻な階段など,避難 を阻害する要因が多数存在している.今後は,ハ

ード面での整備にはある程度の限界があること,

高齢化率の高い地区であることから,自主防災組 織の育成など,住民の防災意識を高めるようなソ フト的な対策が重要になると考えられる.

図1 海陽町と鞆浦地区の位置

図2 ミセ(左側:収納時,右側:使用時)

4.津波避難シミュレーションモデルの開発 4.1.開発ツール

本研究では,開発ツールとして(株)構造計画 研 究 所 が 開 発 し た

KK-MAS

Multi-Agent

Simulator

)を用いる.

KK-MAS

は,簡易でメジ

ャーなプログラミング言語であるVisual Basicに 準拠した言語体系を持ち,日本語も使用すること ができる.また,グラフや2次元マップ上での結 果表示が可能であるなど,プログラム経験があま りない人にとっても,比較的わかりやすいツール となっている.

4.2.モデルの考え方

本モデルは,エージェントである避難者と,エ ージェントが行動する市街地空間から構成される.

4.2.1.空間のモデル化

エージェントである避難者が移動する市街地空 鞆浦地区

海部川

国道55号 海部駅

徳島市

海陽町

徳島県

(3)

間は避難開始地点である住戸前,目的地である交 差点と避難所,道路,その他の避難者が移動不可 能な地域から構成される.避難者が移動する道路 はさらに,閉塞していない道路,閉塞した道路,

避難所までの階段・坂道から構成される.

4.2.2.避難者のモデル化

避難者は,年齢,避難速度,混雑度,防災意識 を属性として持ち,いくつかの交差点を経由して 避難所に向かう.本研究において,避難者は地元 住民と想定しているため,避難所の位置を把握し ているものとする.

まず,避難者の行動アルゴリズムを図3に示す.

こ の ア ル ゴ リ ズ ム は , ( 株 ) 構 造 計 画 研 究 所

(2004)による歩行者モデルを参考にしている.

避難者はまず,目的地の設定を行う.最初の目的 地には,避難所に向かう経路の中で,出発点から 最も近い交差点を設定する.そして,その目的地 の方向,次に行く場所の空間情報,周囲の人数を 取得し,避難速度を決定する.さらに,現在地と 目的地の座標を比較することによって,移動方向 を決定し,速度に応じた距離を移動する.目的地 に到達すると,避難所までの最短経路をたどるよ うな次の交差点を新たに目的地に設定する.この ように,交差点を選択しながら避難所に向かい,

最終的に,避難所に到達すると避難完了とする.

避難者には高齢者と高齢者以外を設定し,表1 に示すように,それぞれに属性を与えた.避難速 度は,閉塞していない箇所を避難する場合,高齢 者以外は0.8m/sとし,高齢者は

0.4m/sとした.

閉塞した箇所,階段・坂道を避難する場合は,共 に避難速度を半減させるとした.本来なら,閉塞 した箇所の通行は不可能であると考えられるが,

この地区の場合,老朽木造住宅が密集しており,

後述する手法で道路を評価すると,ほとんどの道 路で閉塞が発生し避難所に到達することが不可能 となる.また,津波からの避難時には一刻も早く 避難所に到達したいという心理から,小規模の瓦 礫であれば乗り越えて避難するであろうと考え,

今回は閉塞した箇所の通行には,避難速度を落と すことで対応した.さらに,疲労の影響を考慮す るため,高齢者は避難開始5分後から移動速度が 半減するものとする.

混雑度は,避難者周辺の避難者数で評価すると した.避難者の周辺1m以内の避難者密度が50%

を超えると,避難速度を半減させるとした.この 方法により,混雑現象を再現する.防災意識は,

避難開始時間と避難経路選択に関係するものとし た.防災意識が高い避難者は,地震発生直後に避 難を開始し,混雑度が高い避難路を避けて避難所 に向かうが,防災意識が低い避難者は,避難開始 時間が遅れるとともに,混雑度に関係なく避難所 までの最短経路を通行すると考える.

図3 避難者の行動アルゴリズム

表1 避難者の属性 高齢者(65歳以上) 高齢者以外 移動速度 0.4m/s 0.8m/s

疲労 5分後速度半減 考慮しない 避難開始

Yes No

No

Yes

目的地の設定・更新

避難完了 目的地の方向取得

空間の情報取得

周囲の人数取得

避難速度の決定

移動方向の決定

速度に応じた距離を移動

目的地に到着?

その目的地は避難所?

(4)

4.3.道路閉塞の考え方

図4に示すように,対象地域内の倒壊危険建築 物 に つ い て, 倒 壊 に 伴う 瓦 礫 の 幅だ け ゾ ー ンを

GISで作成し,そのゾーンが道路幅員を覆ってい

る箇所で道路閉塞が発生しているとした.倒壊危 険建築物は,建築基準法が改正される以前の昭和

56年までに建てられた旧耐震基準の木造住宅と

すべきであるが,建築年数の資料が入手できなか ったため現地調査による目視で判断している.瓦 礫の幅D(m)は市川ら(2004)の建物個々の倒 壊モデルと,新階ら(

2001

)の建蔽率に対する 道路側への瓦礫流出率Uを考慮し,式(1)のよ うに求めた.本研究では,平均階高を3mと設定 し,建蔽率に対する道路側への瓦礫流出率Uは,

表2に示す値を用いた.

D

m

)=建物階数×平均階高×

U

(1)

図4 建物倒壊による道路閉塞の様子

表2 建蔽率に対する道路側への瓦礫流出率

5.おわりに

本稿では,マルチエージェントシステムを用い た津波避難シミュレーションモデルの考え方につ

いて述べた.今後は,ここで述べた考え方に基づ

いて,

KK-MAS

を用いてプログラミングを行い,

津波避難シミュレーションモデルの開発を行う予 定である.さらに,開発したモデルを研究対象地 域である徳島県海部郡海陽町鞆浦地区に適用させ,

避難シミュレーションを行う.

付記

本 研 究 は 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 若 手 研 究

B

No.18760463

,H18-19,代表;渡 辺公次郎) の

助成研究の関連研究である.

参考文献

市 川 聡 子 ・ 阪 田 知 彦 ・ 吉 川 徹 (

2004

) 建 物 倒 壊 お よ び 道 路 閉 塞 の モ デ ル 化 に よ る 避 難 経 路 の 危 険 度 を 考 慮 し た 避 難 地 へ の 到 達 可 能 性 に 関 す る 研 究 , 「

GIS

- 理 論 と 応 用 」 ,

12

(1) ,

47-56.

大 内 東 ・ 山 本 雅 人 ・ 川 村 秀 憲 (

2002

) 『 マ ル チ エ ー ジ ェ ン ト シ ス テ ム の 基 礎 と 応 用 』 , コ ロ ナ 社 .

構 造 計 画 研 究 所 (

2004

) 『 創 造 工 学 部

MAS

コ ミ ュ ニ テ ィ サ ン プ ル モ デ ル 』 , 構 造 計 画 研 究 所

http://mas.kke.co.jp/.

新 階 寛 恭 ・ 家 田 仁 ・ 長 瀬 龍 彦 ・ 篠 恭 彦 ・ 近 藤 慶 太

2001

) 都 市 内 地 区 施 設 の 震 災 時 に お け る 防 災 効 果 の マ ク ロ 的 な 評 価 手 法 - 避 難 行 動 に 着 目 し た 地 区 内 道 路 の 防 災 性 評 価 手 法 に つ い て - , 「 土 木 計 画 学 研 究 ・ 論 文 集 」 ,

18

4) ,691-697.

徳 島 県 (

2005

) 『 徳 島 県 津 波 浸 水 予 測 調 査 の 結 果 に つ い て 』 , 徳 島 県 .

徳 島 県 建 築 士 会 阿 波 の ま ち な み 研 究 会

1995

) 『 漁 村 集 落 の 〈 景 〉 徳 島 県 南 漁 村

「 ミ セ 造 り 」 の 街 並 み 調 査 報 告 書 』 . 兵 庫 県 (

2006

) 『 ひ ょ う ご 治 山 ・ 治 水 防 災 実 施

計 画 』 , 兵 庫 県 . 避難場所

倒壊危険建築物 倒壊に伴う瓦礫域

建蔽率 道路側への瓦礫流出率

40%未満 20%

40%以上50%未満 40%

50%以上60%未満 60%

60%以上70%未満 80%

70%以上80%未満 90%

80%以上 100%

参照

関連したドキュメント

Firstly, in these classes, NTs and NNTs played distinctive roles by making use of each other s expertise toward the common goal: NNTs provided students with

This study tries to develop tsunami evacuation simulation under mixed traffic of pedestrians and cars and give evaluations to some policies dealing with evacuation using

Whentakingrefugefromtsunamioccurredbyamassiveearthquake,therefugeessometimesuseasmall

避難ゲームによる地震・津波防災対策へ の効果

S-3 避難路(照明) S-3 街灯の新設及び LED 化に対する補助(短期対策) ソーラー式照明の設置については、地区の要望を踏まえて検討します。 S-4

第4章 開発した避難モデルを用いた人的被災リスク評価 第6節 津波対策の効果 第6節 津波対策の効果 第1項

The share area in the taking refuge place which classified the direction of the taking refuge into the danger side and the safety side showed that it was different from the share

GIS(ジーアイエス)は、Geographic Information System の略であり、 「地理情報システム」といわれてい