津波避難のための時間表示システムの設計と開発
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(2) Vol.2015-IS-132 No.8 2015/6/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report がある地震では,地震発生前に緊急地震速報が届くことが. . 訓練用の津波警報を発信するサブシステム. 期待できる.さらに,気象庁では,地震計ネットワークか. 前者は,スマートフォン用のインタフェースと据え置き. らの情報を集約し,地震発生から 3 分以内に津波警報を発. 型電光掲示板のインタフェースの 2 種類を実装している.. することとなっている.これらの情報を組み合わせて使う. スマートフォンインタフェースは WebSocket の機能が利用. ことで津波避難に有効が作れると考えた.. できることが必須であり,そのため,RFC 6455(すなわち Sec-WebSocket-Version 13)に対応している Web ブラウザで. 3. 時間表示システムの開発 (1) システム設計. あることを動作環境の制約とした.具体的には,Windows 環境下での Internet Explorer,FireFox,Google Chrome,Google Android 環境下での Google Chrome,Apple iOS 環境下での. 津波到達までの時間を事前に知っておき,地震発生から. Safari がサポート対象となる.スマートフォンインタフェ. の時間と比べることで避難の精度を向上させることを目的. ースの画面イメージを図1に示す.このタイマーは津波警. として,それを支援するシステムの設計を行うことした.. 報をトリガーに動くため,地震発生から津波警報が届くま. 検討課題と設計指針を下記に示す.. での時間は,特にカウントは行われず,津波警報が届くと,. [課題1]. 地震発生からの経過時間を初期値としてカウントアップが. カウントダウンにすべきか?カウントアップにすべきか?. 行われる.. 到達時間が事前にわかっていれば,あと何分後に津波が 到達するというようにカウントダウン型の時間提示が考え られるが,到達時間にも不確定性が含まれていること,残 り時間が短くなると,避難者の心理に影響し,冷静な行動 がとれなくなる可能性があると考えた.そこで,純粋に地 震発生からの経過時間のみを提示するカウントアップ方式 を採用することとした. [課題2] システム動作のきっかけは何にすべきか? 地震発生からの経過時間ということで,緊急地震速報を システム動作のきっかけとすることが考えられるが,南海. 図1. スマートフォンインタフェースの画面イメージ. トラフ地震に代表されるような巨大地震の場合,本震に伴 って複数回にわたる余震が発生することとなる.一般向け. 後者は,本番の巨大地震・津波時のみでなく,訓練でも. の緊急地震速報は, 「地震波が2点以上の地震観測点で観測. 利用できるように開発したサブシステムである.図2に画. され,最大震度が5弱以上と予測された場合」に発表され. 面イメージを示す.地震発生時間と警報コード(大津波警. ることとなっているため,多くの余震でも,緊急地震速報. 報:53,津波警報:50 など)を設定し,送信ボタンを押すこ. が発表されることとなる.さらに,プレート型地震の場合. とで,訓練用の警報を発しすることができる.. は,東日本大震災のようにほぼ同時に複数個所で地震が起 こる場合もあるが,これらが時間差で起こる場合もあり, 最初に緊急地震速報を発表した地震が津波の原因とはなら ない場合も存在する.そこで本システムでは,緊急地震速 報ではなく,津波警報を利用することとした.気象業務支 援センターは「気象庁防災情報 XML」3)を民間事業者へ配 信する事業を行っているが,この情報には,津波発生の起 因となった緊急地震速報電文の地震識別番号が含まれてお り,この識別番号を手繰れば,原因地震の発生時刻を求め ることができることを利用することとした. (2) システムの実装 本システムは,以下の2つのサブシステムからなる Web アプリケーション(Tsunami KUR Timer(仮称))として実 装した. . タイマーインターフェースへの初期値設定とカウン トアップ開始のトリガーを引くサブシステム. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 図2. 訓練用津波警報送信サブシステムの画面イメージ. 2.
(3) Vol.2015-IS-132 No.8 2015/6/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 4. 防災訓練での適応. ブシステムの地震発生時間をセットする.次に町役場から. 2015 年 4 月 4 日に高知県黒潮町万行地区で行われた「抜き 打ち避難訓練」で利用された.この訓練は,訓練日と訓練 を行う時間帯(13:00~13:30)は,事前に告知するものの, いつ訓練が始まるかは告知せず,地域の防災行政無線や, 地域の全世帯に配布されている屋内告知端末を通じて,行 政からの発せられるサイレンを合図に,参加者が,合図を 受けた場所から,自分が想定している避難場所に避難する. サイレンは,緊急地震速報を示すものと,津波警報を示す ものの 2 回が発せられ,その間隔は 2 分 40 秒とした.ス マートフォン版のシステムは,当日午前中に行われた勉強 会で紹介され,利用方法が説明された(図3).. 津波警報を意味する情報が発信される.これと同時に訓練 用津波警報が送信され,スマートフォンインタフェース, 電光掲示板インタフェースの時計がカウントアップを始め る.避難者は,これらの情報を聞き,自分の判断で避難を 開始することとなる. 訓練参加者は,58 名であった.システムの稼働要件を満 たすスマートフォンを所有しているユーザが少なかったこ とと,地震発生の情報で避難を開始した人が多かったため, 提案した Tsunami KUR Timer を見ながら,避難した人は少 なかったが,訓練後に感想を聞いてみると,地震発生から の時間を知ることができることには好意的な意見が大半で あった.. 5. おわりに 本研究では,津波避難を支援するカウントアップタイマ ー(Tsunami KUR Timer(仮称))の設計・開発と,高知県 黒潮町万行地区での防災訓練での利用について報告した. 開発したシステムの特徴は,津波警報発表時にのみ動作し, 原因となる地震発生からの経過時間を示すことである.こ の情報と,事前に知らされた津波到達までの時間を組み合 わせることで,安心を求める避難(山への避難)から安全 を確保する避難(タワーへの避難)への切り替えを支援す ることを実現可能とした. 今後の課題として,スマートフォンでの利用を考える際 図3. スマートフォンインタフェースの説明の様子. また,電光掲示板は,畑山ら. 4)で行われた避難シミュレ. ーションの結果,山側に行くか,タワーに引き返すかを判 断するポイント(地区の出口にあたる場所)に設置した(図 4).. に,スマートフォンを通じて受け取る緊急地震速報や津波 警報をトリガーとしてスマートフォンで利用できるように することが考えられる. 謝辞. 本研究は,文部科学省からの支援を受けた「巨大. 地震津波災害に備える次世代型防災・減災社会形成のため の研究事業-先端的防災研究と地域防災活動との相互参画 型実践を通して-」,内閣府戦略的イノベーション創造プロ グラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」に おける研究課題「津波避難訓練および支援ツールの開発研 究」,科研費基盤研究(A) (一般) 「新しい津波避難支援ツ ールの開発に関するアクションリサーチ-巨大想定に挑む -の成果の一部である.. 参考文献. 図4. 設置された電光掲示板システム. この際の各端末と人の動きは図5に示すシーケンス図 のようになる.まず,町役場から緊急地震速報を意味する 情報が発信される.これをうけて,訓練用津波警報送信サ. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 1) “中央防災会議防災対策推進検討会議南海トラフ巨大地震対 策検討ワーキンググループ:南海トラフ巨大地震対策について (最終報告),内閣府防災情報のページ, http://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taisaku_wg/pdf/20130528_honbu n.pdf, 2013(2015 年 5 月 15 日確認) 2) 藤縄幸雄,目黒公郎(監修):緊急地震速報―揺れる前にでき ること,東京法令出版,2007. 3) 気象庁:気象庁防災情報 XML フォーマット,平成 22 年 8 月 6 日,http://xml.kishou.go.jp/jmaxml_20100806_format_v1_1.pdf (2015 年 5 月 15 日確認) 4) 畑山満則,中居楓子,矢守克也:地域ごとの津波避難計画策定. 3.
(4) Vol.2015-IS-132 No.8 2015/6/13. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report を支援する津波避難評価システムの開発,情報処理学会論文誌, 55 巻,5 号,1498~1508,2014.. Tsunami KUR Tsunami KUR Timer Timer イベント 黒潮町役場 送信設定 受信スマホ (防災無線) 端末 0’00” 緊急地震 緊急地震速報 地震発生 速報発表 訓練開始の アナウンス. 時間セット. 2’40” 3’00”. 津波警報 発表. 町民館 (町民). 町内 (町民). 音を聞く. 音を聞く. 身を守る. 身を守る. 音を聞く. 音を聞く. 電光掲示板. 避難所. Timer開始 津波警報 避難のアナウンス. 経過時間受信. 避難. 表示板 カウント 開始. 避難. スマホを見ながら避難 個人のスマホで見れる人は 見ながら避難 表示板を通る人は 避難先選択 個人のスマホで見れる人:Timerの時刻を記録 個人のスマホで見れない人:時計の時刻を記録. 22’00”. 図5. ⓒ 2015 Information Processing Society of Japan. 到着者と 時刻記録. 防災訓練時のシーケンス図. 4.
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