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農薬製剤・施用技術の最新動向⑫

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Academic year: 2021

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― 66 ―

植 物 防 疫  第71巻 第4号 (2017年)

278

は じ め に

農薬製剤の一つの剤型として,従来から水で希釈・分 散させて散布する高濃度固形製剤として水和剤がある。

水和剤は水に素早く湿潤して,可能な限り泡立ちも少な く,安定した懸濁液状態ができるように,処方中に湿潤 剤・分散剤・消泡剤等を配合して微粉砕工程を経て製品 化される。しかしながら,形状が微粉末であるため薬剤 調製時に飛散しやすく,作業者への安全性・ハンドリン グ面・環境への影響,また容量で計量できない等の問題 を抱えている剤型である。この問題を解決すべく水和剤 を水溶性フィルムに包んだ製品が開発されているが,水 溶性フィルムの劣化・散布液調製量に柔軟性がない等の 問題があり,上述の水和剤の問題をすべて解決するもの ではない。このような背景の下,使用者への安全性向上,

環境への負荷削減を目指して水和剤を粒状にした顆粒水 和剤が注目され,現在既に多くの剤が商品化されている。

顆粒水和剤は粒状で水和剤同様希釈・分散させて使う 製剤であり,ドライフロアブル,WGあるいは

WDG

(Water Dispersible Granule)とも呼ばれている。

顆粒水和剤の製剤化に際しては,薬剤の水中投入時に おける崩壊性,自己分散性,さらには輸送時に粉化が発 生しない粒そのものの硬度等の物理化学性が重要とな る。これらの物理化学性を満足させるべく多くの研究が なされており,この物理化学性は製剤の処方のみならず 製造方法・プロセスで大きく異なってくるという数多く の報告がなされている。

顆粒水和剤の特徴として,粉立ちによる使用者への被 爆がなく,容器内への付着が少なく,また流動性がよい ことから計量が容易であり,また排出性がよい点が挙げ られる。さらに,高濃度の製剤化が可能であり,包装サ イズの小型化も可能となる。

I

 希釈・分散させて使用する製剤

希釈・分散させて使用する剤型には乳剤(有機溶剤ベ ース)

,水和剤(微粉末) ,フロアブル剤(水ベース懸濁

剤)

,顆粒水和剤(水和剤を顆粒化) ,EW

剤(オイルを 水に乳化)

,OD

剤(オイルベース懸濁剤)等がある。

各剤型にはそれぞれ長所・短所があり,原体の物理化学 的性状によっても適する剤型が異なるため,製品開発に

顆粒水和剤〜その特徴と今後の展望〜

農薬製剤・施用技術の最新動向⑫

バイエルクロップサイエンス株式会社

開発本部 製剤開発部 北垣 憲一(きたがき けんいち)

リレー連載

表−1 希釈・分散させて使用する代表的な製剤

乳剤 水和剤 フロアブル剤 顆粒水和剤

性状 液体 液体

密度・かさ密度 0.91.2 0.10.5 1.01.1 0.50.9

水和時間 2 10

自己分散性 △〜○

流動性 ×

有効成分濃度 70% 80% 50% 80%

有機溶剤 使用 なし なし なし

容器 多層ボトル 防湿袋 PEボトル 防湿袋/多層・

PEボトル

容器への付着 あり あり あり 極僅か

(2)

― 67 ―

顆粒水和剤〜その特徴と今後の展望〜 279

向けて製剤タイプを決める際にはこれらが大きな要素と なる。顆粒水和剤の大きな利点の一つは高濃度製剤化が 可能な事である。

代表的な製剤(乳剤・水和剤・フロアブル剤・顆粒水和 剤)の種々特徴の比較表を参考として表―1に記載する。

II 水に希釈時の希釈液の状態

図―1に希釈時の希釈液中の状態を模式化した図を示す。

図−1 水に希釈・分散した状態の模式図 水和剤

顆粒水和剤

フロアブル剤 乳剤

=水, =油or原体in溶剤, =固体 原体.

水に希釈・分散後は水和剤・顆粒水和剤・フロアブル 剤は同じ状態である(固体の懸濁)。

III 顆粒水和剤の長所・欠点

長所: 粉立ちがない。容量で計量が可能。ハンドリン グが容易。

包装資材への主薬残留が少ない。高濃度製剤化 が可能。

欠点: 製造が複雑(粉砕工程+造粒・乾燥工程)。製 造コストが高い。

IV

 顆粒水和剤の物理化学性および使用時の留意点 水中での崩壊性,自己分散性,希釈・懸濁液の懸濁安 定性,粒の硬度等が製剤化を検討するときの重要な要素 となる。主に下記の

CIPAC

メソッドおよびそのメソッ ドの組合せで各物性の評価を行い製剤処方の最適化が図 られている。

CIPAC Methods

MT 47:

残泡性

MT 53:

水和性

MT 167:

顆粒水和剤の分散液の湿式篩試

MT 168:

顆粒水和剤の懸濁安定性の測定

MT 169:

顆粒水和剤のタップ密度

MT 170:

顆粒水和剤の乾式篩試験

MT 171:

粒状品の粉塵

MT 172:

加圧熱処理後の顆粒水和剤の流

動性

MT 174:

顆粒水和剤の分散性

MT 178:

粒剤の硬度(耐摩耗性,崩壊率)

また,このように物理化学性を担保した製剤処方で製 品化されているため,他の薬剤と混用使用の場合,とき には物性の劣化(凝集など)を生じる場合があるので,

混用可否の情報を十分考慮して使用する必要がある。

V

 一般的な顆粒水和剤の製剤処方 一般的な製剤処方を表―2に記載する。

一般的に,他の製剤タイプはそれほど多くの製造方法 はないが,顆粒水和剤の場合,種々の製造方法(押出し 造粒法,流動層造粒法,攪拌造粒法,噴霧乾燥造粒法,

転動造粒法等)があり,同一処方でも製剤物性は製造 法・製造条件に大きく依存する。

VI 顆粒水和剤の製剤化検討時の留意点 1

原体の特性

固体原体で融点が高いほうが好ましい。融点が高いと 粉砕が容易であり,融点が高くないと粉砕工程のみなら ず製品保管時の物性安定性に問題が生じる場合もあるか らである。この特性は水和剤と同じである。

また,造粒後,乾燥工程があるので乾燥熱に対する耐 性が必要となる。液体原体の場合は吸油性物質(ホワイ トカーボン,珪藻土等)が必要となり高濃度製剤化は困 難である。原体の粒子径が薬効・薬害に影響を与える可 能性があるので,この点も考慮して製造方法などを選択 する必要がある。

2

製造方法

顆粒水和剤の製造法には,押出し造粒法,流動層造粒 法,攪拌造粒法,噴霧乾燥造粒法,転動造粒法等がある。

日本においては押出し造粒法が主流となっている(図―2,

3)。

表−2 顆粒水和剤の一般的な製剤処方

処方 含有量(重量%)

農薬原体 1080

湿潤剤 35

分散剤 515

消泡剤 0.20.5 結合剤 1.02.0

増量剤 残り

(3)

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日本においては,一般粒剤にはほとんどが押出し造粒 法よって製造されており,この技術をそのまま使うこと ができる。しかし,造粒工程で圧力がかかることから,

再分散性が他の造粒法で製造された顆粒より劣る傾向が ある。押出し径を小さくする(粒径

1 mm

以下/生産性・

物理化学性のバランスを考慮して粒径

0.8 mm

で多く製 品化が行われている)ことによって再分散性の改善を図 れるが,処方上の工夫が必要である。また,押出し造粒 機には他にバスケット型,前押出型,ドーム型等が一般 的に使用されている。

お わ り に

上述したように顆粒水和剤は希釈後の希釈液では水和 剤・フロアブル剤と同じ状態となる(水に固体が懸濁し た状態)。最近フロアブル剤ではアジュバント(機能性 展着剤)を配合したり,耐雨性を付与することにより,

効率的な植物体への薬剤の取り込みが可能な製品が開発 されてきている。欧米ではフロアブル剤において水ベー スではなくオイルをベースにした

OD

剤も多く市販化さ れており,より効率的に安定した効果の製品が商品化さ れている。顆粒水和剤においても今後同様の検討が必要 と考える。

ただし,このようなアジュバントやオイルを含む製剤 の場合は散布水量が大きく効果に影響を与える。希釈水 量が多いと製剤設計されたアジュバントの効果が減少 し,場合によってはなくなってしまうこともある。今後 は製剤設計と同時に少水量散布も考慮することが大変重 要な側面であるが顆粒水和剤の処方にオイルやアジュバ ントを組み込んで製剤設計する事は技術的ハードルが高 い。少水量散布への対応は希釈散布製剤全てに言える事 であるが,多水量散布の

run-off

で地面に薬液が不要に 流れるのを防止し,適切な薬量を適切に散布することに よって,効果はもちろんのこと環境に与えるインパクト の削減も大きく期待される。日本において今後取り組む べき大きな課題の一つと考える。

引 用 文 献

1)北垣憲一(2013): 応用が広がるDDS―人体環境から農業・家 電まで―,2編 DDSの産業利用,1章 農薬製剤と施用 法,第1節 農薬製剤,9 顆粒水和剤,NTS,東京,p.469 473.

2) (2004): 第24回農薬製剤・施用法シンポジウム 講演 要旨,p.8.

3) (1997): 農薬製剤ガイド,日本農薬学会 農薬製剤・

施用法研究会 編,日本植物防疫協会,東京,p.2024.

図−3  横押出し造粒機で製造されたペレット状の顆粒 水和剤の拡大写真(押し出し径<0.8 mm)

1 mm

図−2 横押出し造粒機

参照

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