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“子どもを産み育てやすい街”への転換

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Academic year: 2021

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(1)

88 (88’v90)

小児保健研究

㌔β・各支部から

    “小児科医のいない街”から

“子どもを産み育てやすい街”への転換

一過疎地域における小児医療・保健の役割と評価一

    大分県小児保健協会支部長1)

    大分大学医学部小児科学講座2》

    大分大学医学部地域医療支援小児科分野3)

    竹田市立こども診療所4>

達郎1・2),是松 聖悟2・3),高野 智幸2・ 4),秋吉 健介2・ 4)

幽はじめに

 小児医療・保健は教育とともに社会における最も 基本的infrastructuresであり,少子高齢過疎化の 進む街においても大切である。少子高齢過疎化,大 都市集中化の進む日本の縮図として,2次保健医療 圏内に13年間小児科医が不在の状態にあり,この間,

大分県下で最も少子,高齢,過疎化が進行した大分 県竹田市に小児科常勤医を派遣し,この7年間にお ける小児医療,保健活動がその役割と評価法を考え る一助となることを示す。

臨地域の背景と目的

 大分県竹田直入保健医療圏は,平成2年より小児 科医不在の状態が続き,大分県10保健医療圏のなか で最も少子高齢過疎化が進行した1}。この状態に対 し,大分県,竹田市,大分県医師会,大分大学医学 部小児科の協議の下,平成15年10月より小児科医を 派遣し,外来,入院診療の開始,近隣病院との休日,

時間外診療輪番体制の確立,小児科医による乳児健 診,ポリオ集団予防接種:,平成19年4月より5歳児 健診を導入し,注意欠陥多動性障害(AD/HD)や 広汎性発達障害(PDD),軽度知的障害(MR)を 持つ幼児の適切な診断と地元の幼稚園,普通小学校 入学のための就学支援を行うと同時に,就学前の予

防接種歴の確認,接種率の改善強化を行い,任意接 種である水痘,おたふくかぜワクチンの全額公的補 助,無料化,を実施し,その効果を検討した。

墜方法と結果

1.水痘おたふくかぜワクチン無料化による接種率  罹患心立数の推移

 水痘,おたふくかぜワクチン無料化対象者は,竹 田市在住で,水痘とおたふくかぜの罹患歴のない人,

生後12か月から3歳未満を対象とした。それぞれの 予防接種率は,無料化前は25%未満であったものが,

平成20年(2008年)は63.9,60.1%に上昇し,麻疹

/風疹ワクチン接種率は3歳未満児が82%,IV期高 校3年生91%であった。

 罹患健児数は表のように,水痘とおたふくかぜは 従来の10%程度に減少し,15歳以下の麻疹,風疹の 発症はともに,2005年以降は「0」となっている(表)。

2 総人口と合計特殊出生率,出生数の推移

平成12年(2000年〉以降の推移を図示した。竹田

表竹田市15歳以下の小児,患者別の隈患数(人)の推移

大分県小児保健協会

〒879-5593大分県由布市狭間町医大ヶ丘1-1 大分大学医学部小児科内

    年

セ 患 2004 2005 2006 2007 2008

水痘

118 110 192

57

21

おたふくかぜ

10

40 74

13 9

麻 疹

0 0 0 0 0

風疹

No data 0

0

0 0

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70巻記念号 89

      水痘ムンプスワクチン無料化

@        5歳児健康診断導入

蝠ェ大学小児科より        市立こども診療所 ャ児科医派遣開始         として小児科が独立

@     ↓  Ψ   ↓

2.5

Q.0

P.5

      團      ii i      iI I      [

P羅至高羅翻Iiii田田盟翻翻醤  161   170   148   149   131   154   162   151   152       灘

i(総出生数)194

@ 1.0

難欄騰懸懸1田1田,

小児医療、小児保健の重点化により合計特殊出生率と出生数低下が増加傾向

團合計特殊出生率      +総人口

      30,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008     図 竹田市の人口,合計特殊出生率,総出生鮮

27,500

25,000

  22,500

2009(年)

市における総人馬は減少し続けているが,合計特殊 出生率と出生数の年次別推移は平成17,18,19,20 年それぞれ,1、55/131人,1.74/154人,1.94/162人,

1.92/!51人,2.16/152人と平成17年以降,合計特殊

出生率だけでなく,出生数がともに上昇傾向を示し てきた(図)。

3,5歳児健康診査

 竹田市在住の5歳児140~160名全員を対象に,保 健師と協力の下,発達障害スクリーニング質問紙に よるアンケート,聞き取り調査を実施し,保護者の 育児と就学への不安に対応し,希望と期待を持っ て子どもを地元の小学校へ就学させることができ るよう常勤小児科専門医による20~30名程度の1次 健診の後,年2回の小児神経専門医による計10~15 名の2次健診を実施し,毎年5~6名のAD/HD,

PDD,軽度MR,育児不安等の診断を行い,地域に おいて言葉の訓練や療育,教育プログラムが利用で

きる教育支援体制の確立に努めている。

臨考察と結論

 竹田市における13年間の小児科医不在期間を経 て,過疎地域病院小児科の反集約化,一人医長とし てあえて過疎化に対抗すべく小児科常勤専門医を派 遣し,小児医療,保健の役割,その評価法を検討した。

 一人医長の小児科医派遣にあたり,病診連携,大 学小児科による後方支援,研修・研究指導体制,研

究日の設定,1~3年号の派遣医の交代制等を確立 し2),時間外診療,任意予防接種一水痘,おたふく かぜ一の全額公的補助,5歳児健診を実施した。こ の7年間の活動によって,予防接種率は増加し,予 防接種対象疾患の罹患率は低下し,麻疹,風疹はと

もに2005年以降は発症“0”となっている。合計特 殊出生率だけでなく,出生実数も上昇を示した。5 歳児健診は竹田市の5歳児全員を対象とし,予防接 種率の改善に有用であるだけでなく,それにて診断 される発達障害児は各年毎に4~5%で,就学前よ り言葉の訓練,教育プログラムの提供を通して,地 元の普通小学校への就学を目指している。ただ,今 後,この健診の有効性を高めるには,発達障害や発 達心理を理解する幼稚園や小学校教員の配置と,小 児医療・保健と教育相互の更なる協力と連携が必要 である。

 竹田市で開始した任意接種水痘とおたふくかぜ ワクチンの公的補助と予防接種率の改善は,予防接 種対象感染症の罹患率を減少させ,小児の時間外,

救急受診丁丁を減少させるのに有効であることを示 した。大分県の他の市町村でも任意予防接種の公的 補助が開始されつつあり,2011年1月現在,18市町 村中8市町村でなんらかの任意接種の補助を開始し ている。更に,竹田市は水痘とおたふくかぜの他,

b型インフルエンザ桿菌,肺炎球菌,ヒトパピロー マウイルスの5種類の任意予防接種に対しても全額 公的補助を開始した“全国で最初の市17となってい

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る。

 小児の時間外診療や救急,予防接種,乳幼児健診 と5歳児健診など,地域における小児医療と保健 の安定的継続的供給は,社会における基本的infra-

structuresとして,住民に安心感をもたらし,住み やすく,子どもを産み育てやすい街として,少子高 齢過疎化の本質的対策となりうることを示唆した。

 地域小児医療,保健の評価基準として,従来の新 生児や乳幼児死亡率だけではなく,5歳児健診の有 無,予防接種率の向上,感染症罹患率の減少,合計 特殊出生率と出生数の増加がよりよい指標となり,

安心で,住みやすく,子どもを産み育てやすい街の 指標ともなりうる。

         文   献

1)泉 達郎,古城昌展,秋吉健介,他小児科医のいない街:

 少子,高齢,過疎化と小児医療,小児保健研究 2005;

 64 : 441-446.

2)是松聖悟,秋吉健介,高野智幸,他.過疎地域医療小児・

 周産期医療を担う医師確保対策調査日児誌2009;

 113 : 1589-1592.

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