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2 ビジネスコミュニケーション 2018 Vol.55 No.6

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近年、脳の構造を模倣した「ニュ ーラルネット」を使った AI 技術の 研究開発が活発に進められている。

例えば、多層的な構造を持つディー プニューラルネットワークを使った 深層学習によって物体認識をする技 術などが盛んに研究されている。

従来のニューラルネットは主に

「大脳」を模倣するものだった。深 い学習によって、多少時間がかかっ ても良いので多数の要素が関係する 高度な処理を実現しようとするもの である。これに対し、浅いが速い学 習をする「小脳」を模した新しいニ ューラルネットの利用方法が 2000 年代に考案された。これを「リザー

バ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ 」( 図 1)

という。

ニューラルネッ トでは、各ノード

(神経細胞に相当)

において、そのノ ードに入力された 信 号 に 重 み を 付 け、適当な非線形

関数を通して出力して次のノードに 伝播させる。この重み付けを、入力 信号に対して適切な出力信号が得ら れるように変更することが学習に相 当する。従来のニューラルネットで は基本的にすべてノードで重み付け を変更していた。リザーバコンピュ ーティングでは中間層=リザーバ層 では重み付けを変更せず、出力層の

みで重み付けを変更することで学習 を行う。イメージとしては、リザー バ層では、多種多様な出力信号のみ を発生させて、この部分はあえて固 定的なものとし、出力層で、それら の信号に重み付けを行うことで必要 な信号をピックアップして重ね合わ せ、期待する出力を得る、という仕 組みである。

「ディープニューラルネットワー クにおける学習は非常に複雑で、適 切な学習をするには職人芸が必要で した。それに対してリザーバコンピ ューティングの学習は、目的の出力 が得られるように出力層のパラメー タを変化させるだけなので簡単で す。ディープニューラルネットワー クで実現していたような深い学習に よる高度な判断は得意ではありませ んが、リザーバ層のノードを増やす などして生成する出力信号の多様性

小脳を模すニューラルネットを光回路で実現 高速・低消費電力なAI処理に道拓く

NTT 先端集積デバイス研究所は、光通信に関する研究開発で培った技術を「リザーバコンピューティング」と呼ばれる新しい AI シ ステムに応用する取り組みを進めている。光リザーバコンピューティングを実現できれば、従来ディープニューラルネットワークな どで実現していた AI 処理を高速化・低消費電力化できる。2018 年 5 月開催のレーザーと電子光学に関する国際会議「CLEO」にお いて同研究所が発表した光リザーバコンピューティングについての最新の研究成果を紹介する。

NTT 先端集積デバイス研究所 光電子融合研究部

[左から]主席研究員 

重松 智志

氏、研究員 

中島 光雅

主幹研究員 

橋本 俊和

光リザーバコンピューティング 光リザーバコンピューティング

リザーバ層 入力層

入力信号 出力

信号 出力層

固定部分・ノードでの重み付けは固定

・ノード間はランダムに結合

可変部分(学習を反映させる部分)

・出力層のみ重み付けを変更

(学習の計算や変更の処理が簡易)

信号の流れ ノード

図 1 リザーバコンピューティングの概要

新たなAI方式として注目される

リザーバコンピューティング

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3 ビジネスコミュニケーション 2018 Vol.55 No.6

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を向上させていけば、複雑な処理に も対応できると考えています。」(光 電子融合研究部 研究員 中島 光雅氏)

このリザーバコンピューティング を光回路で実施することで、電子回 路を超える高速かつ低電力での演算 処理を実現できる。

リザーバコンピューティングでは 入力層とリザーバ層の処理は固定的 で、光回路によって比較的容易に実 装できる。また、リザーバ層で多様 な信号を生成するための「演算」は 光をループ中に伝播させることで実 現できるため、超高速処理が可能で ある。また、波長や位相、偏波方向 に情報を並べることで、同一の光回 路内で大規模な並列演算ができる。

加えて、光回路には抵抗がないため に配線電力が原理的にゼロであり、

演算もすべて光の干渉によってなさ れるので、超低電力での演算処理が 可能である。これらは、通信用の光 デバイス技術の適用によって、大規 模かつ小型に実装できる。

NTT 先端集積デバイス研究所は、

2017 年度から光リザーバコンピュ ーティングの研究開発に本格的に取 り組み始めた。

最初のステップとして、単一波長 光で動作する装置(図 2)を試作し た。試作装置のポイントは 3 つある。

1 つめは、コヒーレント送受信機を 使うことで、複素空間での光リザー バコンピューティングを実現したこ と。これによって、位相空間に情報 を並列化させることが可能である。

今後は、波長や位相、偏波を利用す

準問題( NARMA 10)を用いて試作 装置を評価した(図 3)。「過去のデ ータから予測を行い、平均二乗誤差 0 . 18 という比較的良好な近似をナ ノ秒オーダーで実現できました。こ れは従来の光リザーバコンピュータ や CPU での処理に比べて約 3 ~ 4 桁 速い結果で、大きな可能性を示した ものだと言えます。」(中島氏)

今後は、光リザーバコンピューテ ィングの高速性・低電力性を生かし た実用化を目指すという。「展開の 1 つとして、高速光通信の信号歪み の補償に適用することを考えていま す。現段階ではシミュレーションの みですが、良好な結果が得られてい ます。」(中島氏)

ることで、更なる大規模並列化が可 能になる。2 つめは、光のフィルタ を採用して入力層で電気回路を使わ ずに済むようにしたこと。「従来の 光リザーバコンピューティングで は、入力層で電気回路を併用してい ました。これを不要にしたことで、

さらに高速かつ低消費電力な処理を 実現できます。」(中島氏)

3 つめのポイントは、リザーバ層 をループ状の光回路用い、その中に 半導体光増幅器( SOA )を入れたこ と。これにより、巡回する光信号の 間に非線形な相互作用を発生させ、

リザーバ層に求められる多様で複雑 な信号を生成するという機能を、シ ンプルな構成で実現している。

時系列データ予測の性能評価の標

電気信号

光変調器 入力層

非線形素子

リザーバ層

(=学習)重み付け

受信機 電気回路

ポイント①

光で信号を多重化⇒リザー バーコンピュータの信号処理 能力を倍増(更に拡大も可能)

ポイント②

光のフィルタで電子回路 では困難な超高速・低消費 電力な処理を実現

ポイント③

多種多様な信号生成を非 線形素子を入れた単純な 光ループ回路で実現

出力層

リザーバコンピュータ出力 目標とした出力

実部の信号 虚部の信号

図 2 試作した光リザーバコンピューティング実験装置の構成とポイント

図 3 標準問題を用いた試作装置の評価結果

(複素平面〔位相と振幅〕上の信号として計算=実部・虚部2系統の信号を処理)

時系データの高速な予測を実証

今後は信号補償などに展開

参照

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