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経済学論叢 第63巻 第1号

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Academic year: 2021

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近代経済発展の特徴は、クズネッツ(Simon Kuznets)が指摘したように、 人口増加と一人当たり実質所得の上昇にある(Kuznets( ))。それを可 能にしたのは、主として消費の嗜好の変化等の需要構造の変化と、それらに 対応した生産活動におけるイノベーションによる産業構造変化を伴う経済規 模の拡大である。そこで、このような産業構造が変化する要因を探るととも に、そもそも産業部門をどのように定義すべきかということを、経済発展の 実証分析という視点から国民経済計算(SNA)と投入産出(I-O)分析を用 いて検討する。また、近年の日本の人口減少と少子高齢化やグローバル化の 進展が経済発展に及ぼす影響について若干の考察を試みることにする。この 論文の構成は、次のようになる。 † この論文の出稿に当たって、福岡大学経済学部の高瀬光夫教授に貴重なア ドバイスを頂いた。記して感謝致します。無論、有り得べき誤 の責任は、 全て筆者にあることは言うまでもない。

産業部門概念と経済発展分析について

― 実証経済分析の視点から ―

荒 木 義 明

* *福岡大学経済学部

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まず第 章において、経済発展の実証分析を行おうとする時、経済全体を いくつかの産業に分ける方が有効であるということと、それぞれの産業の特 性について述べる。 次に第 章において、国民経済計算(2008SNA)のデータを用いて、産業 構造と価格構造の時系列変化を観察する。特に主要な産業ごとの粗付加価値 を、それを構成する諸要素(産出価格、産出量等)に分解して指数化し、そ れらの時系列変化を観察する。それによって、産業ごとの粗付加価値を変化 させる要因を探ることにする。 第 章では、経済発展の実証的多部門分析の理論的背景をレビューする。 第 章では、経済発展分析における産業部門とは、どのような概念に基づ いて定義すべきなのかを物理学的(工学的)生産関数の理論に基づいて考察 する。 第 章では、物理化学及び工学的関係に基づいた生産プロセスという概念 に従って、各産業部門を並び替えた投入産出表が、投入係数行列の変化(構 造変化)の要因を実証的に説明するのに有効であることを示す。 第 章では、上記の概念に基づいて基本表を再配列した投入産出表を用い て、住宅部門と電力部門の細分化された生産方法(アクティビティ)ごとの 投入係数の時点間変化の安定性を確認する。また、中間投入係数行列、生産 要素投入係数行列、及び最終需要構成比行列の変化の時点間比較を行い、ど のような要因が産業構造や価格構造を変化させているのかということを観察 する。 そして第 章で、上記の観察結果を踏まえて、投入産出モデルを使って中 間投入行列、輸出入係数ベクトル、最終需要とその構成比行列及び労働係数 ベクトルが、産業構造や価格構造にどの程度影響を及ぼしているかというこ とを理論的に分析する。 最後の第 章では、以上の分析の要約と結論及び今後の経済発展政策の展

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望を行う。イノベーションとグローバル化そして少子高齢化と人口減少が日 本経済に及ぼす影響と今後の採るべき政策について考察する。 .経済発展と産業構造 経済発展の分析を行うとき、経済全体を一部門として観るのではなく発展 段階に応じた特性を持ついくつかの産業群に分けた方が有効であることが知 られている。 経済発展と産業構造の関係で最もよく知られているのが、 クラーク(Colin

Grant Clark)の主張したペティの法則である(Clark( ))。彼が用いた産

業の三部門分割法は、概念や名称の違いはあるもののフィッシャー(Allan G. B. Fisher)やクズネッツの経済発展分析にも見られる。こうした先人の 優れた業績を踏まえながら筆者なりに産業部門概念を経済発展という視点か ら付加再整理してみたい。 まず、 次産業とは人が何らかの道具を用いて自然に働きかけ、ある種の 資源を採掘・栽培・飼育・利用することを目的とする産業である。それらの 資源は、大別すると生物自然系(農林漁業等)と化石鉱物系(石油・石炭・ 鉄鉱石等)に分類できる(分類法は研究者によって多少異なっており、因み にクラークの分類では、後者は 次産業に属している)。戦後の日本の経済 発展の過程では、伝統的な生産方法である前者から大規模採掘が可能な後者 に、より依存する傾向が観られたが、近年の CO 等の環境問題やバイオ技術 の進歩(遺伝子操作等)により今後は再びイノベーションを伴って前者のウェ イトが増すことが予想される。 製造業を中心とする 次産業は、 次産業で得られた資源を加工・組み立 てして目的の製品を生産する産業である。 次産業は、基本的に物質の化学 反応や物理的変形を利用する。鉄鋼・化学工業に代表される前者では、化学 反応を主とするため資本財の大容量化が、他方、組み立て産業の自動車等機

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械工業に代表される後者では、材料の物理的変形を主とするため生産ライン の増設や生産速度の加速化がより重視され、これらによって規模の経済が追 求されて来た( )。建設も 次産業に属すると考えられるが、ただ製造業が同 一空間の工場内で移動可能な財を生産するのに対し、建設は場所の移動を伴 う屋外で不動産(住宅・道路等)に関連した財を主に生産するという違いが ある。また、エネルギー部門(電力・化石燃料等)も物質と密接な繋がりが あり、やはり 、 次同様物質関連産業と考えられる。このように、 、 次産業の共通した特徴は、生産物が有形または物質(エネルギーも含む)で ある点である。 次産業は、上記以外の産業ということになるが、しばしば情報・サービ ス産業とも呼称される。その共通した特徴は、生産物が無形または非物質で ある点にある。 次産業は、日本経済で全体の GDP の 割を超える重要な 産業であるが、その実態は必ずしも明確ではない。そこで筆者は、この産業 を各特性に従ってさらに 部門に分割してみた。すなわち、 、 次産業 (物質関連)と特に密接な関係を持つ部門(商業・運輸)、情報通信金融部 門、その他のサービス部門がそれらである。商業・運輸部門は、物資や人 (人の輸送の場合、生物ないし有機体としての人体が対象になる)の時間的 空間的移動流通を担う故に 次産業だけでなく、多くの分野で 、 次産業 との関係がとりわけ深い。更に、情報通信金融部門を分けた理由は、知識・ 情報とサービスそれ自体は明確に異なる概念であり、それらを峻別する必要 があると考えるからである。サービスの特徴は、無形で蓄積不可能であり、 従って原則として生産と消費が同時に為されることや在庫をすることが出来 ない点にある。また更に、物質財との対比では、所有権の有無に相違点があ り、物質財の購入は、その財に対する所有権の獲得を意味している。従って 所有の問題がなければ、物質財や人体の構成要素として組み込まれ或いは体 ( )筆者は、規模の経済が生ずる要因は、基本的に産出と投入間の次元差に あると考えている。詳細は、Araki( )参照。

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化される財を除いた残りの全ての財は、基本的にサービスとして消費される。 例えば、物質財である TV は本来その所有自体が目的ではなく、放送サービ スの視聴が目的である。また、自動車も人体や貨物の空間移動サービス利用 が目的であり、自動車を所有する代わりにレンタル(サービス業に属する) にすれば、その目的が物質財の直接消費ではなく移動サービスの消費にある ことが明確になる( )。他方、サービスに対して、知識・情報(knowledge or intelligence)は蓄積可能であり、通信によって空間移動も可能である。また、 特許権・著作権等により所有権も主張できる。これに関連して、貨幣も、そ の形体(紙幣、電子マネー等)はどうであれ財貨・サービスと交換する請求 権を示し、その信用に基づいて、高い流動性や決済機能を伴う経済的価値を 表象する一種の数値情報(通常の貨幣単位または物理的単位で表される)と 考えることもできる( )。従って金融とは、資金余剰部門から資金不足部門へ 資金の部門間移動を仲介する言わば貨幣の流通を担う部門であり、当該貨幣 の信用の度合いに応じてその流通の範囲が決まる。通信は、先述したように ( )生産物に組み込まれる原料、人体の一部やエネルギーに変換される食料 を除いて、他の殆どの物質財は最終的にはサービスとして消費される。 例えば、自動車は物質財として購入しなくてもレンタルやシェアリング によって輸送サービスの享受が可能である。サービスのみの購入と物質 財の購入との主な相違点は、当該物質財に対する所有権の有無にある。 ( )貨幣は財貨・サービスの請求権を保証するという、計算単位と数値情報 で表された信用の表象である。その歴史において、形体(商品貨幣、金 属貨幣等)は時代の要請に従って、より便宜性の高いものに変化して来 た。現代でも貨幣には種々の形体があり、その形体の種類によって流動 性の程度は異なっているが、いずれも価値標準や取引媒体、富の蓄積手 段等の機能を持つ。因みに貨幣は、物々交換に較べて単に財貨・サービ スの交換効率をより高めるだけではなく移動の容易さによって市場の空 間的拡大をもたらす。また富の蓄積手段にもなる点で、貯蓄(将来財の 需要)や投資(将来財の供給)を容易にして市場の時間的拡大(成長) の要因の一つにもなっている。

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情報の空間的移動流通をもたらす働きがあり、金融を含め、これらは広義の 知識情報関連産業と考えることができる。最後に、その他のサービスとは、 上記の物質関連サービスと知識・情報関連産業以外のサービスと定義され、 2008SNAでは、更に、宿泊・飲食、保健衛生社会事業サービス、公務、そ の他等に分類されている。不動産部門は、実物資産である不動産の流通や所 有賃貸を担い物質財流通に近い部門ではあるが、SNA では帰属家賃分が含 まれ特殊な取り扱いになっているので、やむを得ず別掲した。これらの 2008SNAの大まかな分類に基づいて、次の章で経済発展と産業構造に関す るいくつかの経済的事実の観察(fact-findings)を試みる。 .国民経済計算(2008SNA)に基づく産業構造と価格構造変化に関する 観察事実 周知のように、過去約 年以上に亘って日本経済の発展は停滞してきた。 その要因を探るために、まず国民経済計算の資料を基にいくつかの観察事実 を提示する。 (図 )に示されているように、日本の国内総生産(GDP)や国民総所得 (GNI)は、後者が前者を若干上回っているが、両者とも約 年間ほゞ横 い状態(実質値は 割強成長している)であった。しかしながら、産業ごと に観察すると粗付加価値の成長は必ずしも一様ではない。そこで、前節で定 義した産業概念に従って、それぞれの粗付加価値の推移を観たのが図 と 図 である。 図 と図 から分かることは、産業別に粗付加価値の推移を観ると、特に 、 次産業が名目では低下傾向、実質でもほゞ横 いであり、それらに付 随して、商業・運輸も停滞していることである。これに対し、知識・情報関 連の伸びが相対的に大きく、また対個人サービスを主とするその他部門も相 対的には伸びている分野があり、これらについて更に子細に観察する。

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300 350 400 450 500 550 600 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 名目GDP 実質GDP(2011年基準) 名目GNI 実質GNI 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 第一次産業 第二次産業 商業・運輸 情報・教育・金融 その他サービス 不動産(含帰属家賃) GDP と GNI の推移 (単位:兆円) 年基準 (資料)国民経済計算(2008SNA)より筆者作成 産業別名目粗付加価値の推移 (単位:兆円) (資料)図 と同じ

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0 20 40 60 80 100 120 140 160 第一次産業 第二次産業 商業・運輸 情報・教育・金融 その他サービス 不動産(含帰属家賃) 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 情報・通信 金融・保険 専門・技術・業務支援 教育 産業別実質粗付加価値の推移 (単位:兆円) 年基準 (資料)図 と同じ 知識・情報関連部門名目粗付加価値推移 (単位:兆円) (資料)図 と同じ

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0 5 10 15 20 25 30 35 40 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 情報・通信 金融・保険 専門・技術・業務支援 教育 0 5 10 15 20 25 30 35 40 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 宿泊・飲食 公務 保健・社会事業 その他サービス 知識・情報関連部門実質粗付加価値推移 (単位:兆円) 年基準 (資料)図 と同じ その他サービス部門名目粗付加価値推移 (単位:兆円) (資料)図 と同じ

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0 5 10 15 20 25 30 35 40 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 宿泊・飲食 公務 保健衛生・社会事業 その他サービス 図 ∼図 から、過去約 年間では、情報通信、専門・技術・業務支援、 更には医療・介護を主とする保健衛生・社会事業部門の成長が名目実質値を 問わず著しいことが分かる。これらの成長している部門の中には、必ずしも 生産性が高くないものもあり、また逆に生産性が高くても成長が停滞してい る部門もあることから、付加価値の成長は供給面だけではなく需要面も影響 していることが推測できるであろう。そこで今度は需要側の国内総支出 (GDE)の主要項目の時系列推移を観ることにする。 その他サービス部門実質粗付加価値推移 (単位:兆円) 年基準 (資料)図 と同じ

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0 50 100 150 200 250 300 350 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 民間消費 政府消費 民間投資 政府投資 輸出 輸入 0 50 100 150 200 250 300 350 民間消費 政府消費 民間投資 政府投資 輸出 輸入 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 最終需要項目別名目国内総支出推移 (単位:兆円) (資料)図 と同じ 最終需要項目別実質支出額推移 (単位:兆円) 年基準 (資料)図 と同じ

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0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 1.耐久財 2.半耐久財 3.非耐久財 4.サービス 図 と図 から分かることは、この期間 かではあるが名目実質とも民間 消費は伸びており、社会保障を中心とした政府消費及び貿易額も同様に拡大 していることである。他方で、民間投資や政府投資は縮小傾向にある。特に 後者はピーク時に比べてほゞ半減している。GDE の約 割を占める民間消 費について更に詳しく形態別目的別に観たものが、図 ∼図 に示されて いる。 図 と図 から、民間消費を形態別に観ると、名目ではサービスのみが成 長し実質では、サービスに加え耐久財が多少伸びている。後者が名目で伸び に欠ける理由は図 に示されている。 つまり、その理由は約 年前に比べて耐久財の物価は 分の 程度に下落 しているということにある。次に目的別最終消費のデフレーターの推移が図 に示されている。 形態別名目最終消費推移 (単位:兆円)帰属家賃を除く。 (資料)図 と同じ

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0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 1.耐久財 2.半耐久財 3.非耐久財 4.サービス 0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0 350.0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 1.耐久財 2.半耐久財 3.非耐久財 4.サービス 形態別実質最終消費推移 (単位:兆円) 年基準 帰属家賃を除く。 (資料)図 と同じ 形態別最終消費デフレーター推移 (注) 年基準 (資料)図 と同じ。

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0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 1.食料・非アルコール飲料 2.アルコール飲料・たばこ 3.被服・履物 4.住居・電気・ガス・水道 5.家具・家庭用機器・家事   サービス 6.保健・医療 7.交通 8.通信 9.娯楽・レジャー・文化 10.教育 11.外食・宿泊 12.その他 目的別に観たデフレーターの推移の特徴は、 .娯楽・レジャー・文化と .家具・家庭用機器・家事サービス及び .通信の価格下落が著しいこと である。この 年間で前二者の価格は約半分、通信料金は約 分の 程度に なっている。そこでそれらの中身のうちとりわけ価格が急落した項目を総務 省の消費者物価指数年報で調べてみた。 中分類の消費者物価指数のうち過去 年間で約 割以上下落した項目をグ ラフにしたものが、図 に示されている。特に、教養娯楽用耐久財と家庭用 耐久財の価格下落が顕著である。前者を品目別に観るとテレビ、オーディオ 機器、パソコン、カメラ等であり 年前の 分の 以下の価格というかなり 極端な下落を示している。また後者の家庭用耐久財は、品目別にはレンジ、 炊飯器、冷蔵庫、洗濯機等が含まれる。ただ、これらの主として耐久消費財 のデフレーター作成には、ヘドニック法等の品質調整が為されている点には 注意を要する( ) 目的別最終消費支出デフレータの推移 (注) 年基準 (資料)図 と同じ。

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0.0 200.0 400.0 600.0 800.0 1000.0 1200.0 C .Y .1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 家庭用耐久財 室内装備品 保健医療器具 通信 教養娯楽用耐久財 ( )ヘドニック法は商品の品質の変化をいくつかの属性に分けて回帰分析に よって商品価格の実質化を測る一方法である。現行消費者物価指数では、 パソコンとカメラに適用されている。ただ通常の指数作成法と較べてグ ラフに観るように教養娯楽用耐久財のデフレーターが極端に低下してお り、このことが教養娯楽費目全体の指数下落に反映されている。因みに それらの 年の品目別物価指数は 年基準(= ) で、デスクトッ プパソコン . 、ノートパソコン . 、カメラ . 、である。な お、他の品目についてもオーバーラップ法やオプションコスト法等で品 質調整を行っているものがある。そのことによって耐久財を中心にかな り大幅な価格急落品目が他にも少なくない。例えば 年基準で、 年の指数が電気冷蔵庫 . 、電子レンジ . 、ビデオカメラ . 等々である。質の変化は認めるとしても電気冷蔵庫の価格がこの 年間 で 分の になったという実感は我々にはあまりない。ヘドニック法を 始めとした品質調整法は、属性の選び方等でかなり恣意性が残るので、 帰属家賃の取り扱い方同様、品質調整を行わないケースの結果も併記す べきである。そうでなければ、マクロ経済スライド同様、政府の年金支 出抑制あるいは賃金抑制策の一環と誤解されかねないであろう。またこ れらの操作によって引き下げられた指数が、 日銀のインフレ目標( %) になっていることには政策の整合性という点で多少の違和感を覚える。 急落消費者物価指数項目推移(中分類) (注) 年基準 (資料)消費者物価指数年報(総務省)より筆者作成

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以上の観察から言えることは、過去 年間においてサービスの価格は比較 的安定しており、パソコン等の情報処理・通信機器やカメラ等の精密機器の 値下がりが著しいということである。つまり自動車を除く耐久消費財や通信 の価格下落が消費者物価を押し下げている大きな要因になっており、これら はイノベーションとグローバル化の相乗作用の結果とも言えよう。 次に、いくつかの産業において粗付加価値を構成する諸要因を分解して、 それぞれの時系列推移と労働及び実質資本ストックの投入指数を同時に観察 する。 各産業の粗付加価値は、数式で表すと次のようになる。 ここで、Vj:j 部門粗付加価値、Pj:j 部門の価格、Pi: i部門の価格 aij:j 部門の i 財投入係数、vj:j 部門付加価値率、Xj:j 部門産出量 この式から、各産業の粗付加価値は生産物価格、中間投入の価格と投入量、 更に生産物産出量の動きによって決められることが分かる。これらに加えて、 主な生産要素である労働と実質資本ストック投入量を指数にして、主要産業 ごとにその動きを観た結果が図 ∼図 に示されている。 図 に示されるこの期間の一次産業の特徴は、産出価格はほゞ横 いであ るが、産出量(需要量)は継続的に低下傾向にある。ただ、粗付加価値デフ レーターは大幅に低下し、資本及び労働投入量はそれ以上に低下して、結果 的にこの期間それらの生産性は多少高まった。つまり産出量、労働投入量と も大幅に低下するなかでの結果的な労働生産性の上昇である。 この期間における製造業の特徴は、いくつかの部門(特に電子・情報関連 機器等)を除き全体的には産出価格・産出量(需要量)ともほゞ横 いに推 移している。一方で、粗付加価値デフレーターは顕著に低下し、労働投入も 継続的に低下して資本労働比率を上昇させた結果、物的労働生産性は上昇し

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0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 180.0 19 94 1995 1996 1997 1998 9919 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 1020 2011 2012 2013 2014 2015 産出価格 中間投入価格 中間投入量 産出量 労働投入量 資本投入量 粗付加価値デフレーター 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 産出価格 中間投入価格 中間投入量 産出量 資本投入量 粗付加価値デフレーター 労働投入量 農林水産業粗付加価値変動要因指数 (注) 年基準 (資料)国民経済計算(2008SNA)から筆者作成 製造業粗付加価値変動要因指数 (注) 年基準 (資料)図 と同じ

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0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 19 85 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 国内生産 海外生産 国内販売 輸出 輸入 ている。産出量一定で粗付加価値デフレーターが大幅に低下した結果、名目 の粗付加価値は低下している。この理由は、供給側の要因もあるが、例外は あるものの各耐久消費財の世帯普及率が上昇した結果、むしろ直接間接的に 需要側の限界効用逓減則が強く作用しているようにみえる。製造業の代表的 部門である自動車について生産・販売・輸出等について数量ベースで観たの が図 である。 この図から明らかなように、自動車の国内生産と国内販売量は 年を ピークとして緩やかな下降傾向にある。輸出も変動はあるものの横 い、も しくは緩やかな下降傾向を示している。これに対して直接投資による海外生 産は飛躍的に伸びて、今や国内生産の 倍近くになっている。その理由は、 貿易摩擦や為替変動のほか普及率上昇による限界効用逓減に基づく国内販売 量の低迷にあり、人口減少や少子高齢化がそれに拍車をかけているようにみ える。自動車に限らず、例外はあるものの他の多くの物質財についても、程 度の差はあれ概して同様の傾向が観られる。ただ、電子機器や情報通信関連 自動車生産・販売・輸出入台数推移 (単位:万台) (資料)日本自動車工業会資料より筆者作成 (但し、輸入は外国製であるが、一部日本メーカーの逆輸入分も含む)

(19)

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 160.0 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 産出価格 中間投入価格 中間投入量 産出量 資本投入量 粗付加価値デフレーター 労働投入量 機器の一部については数少ない例外分野に属している。 次に、粗付加価値が特に成長している分野について、その変動要因を観て みる。 情報・通信分野では、図 からも分かるように産出価格や粗付加価値デフ レーターは大幅に低下しているが、中間投入価格の低下や何よりも産出量 (需要量)の急増が同時に観られるのが特徴である。物質関連産業から知 識・情報を主に利用する分野へと日本経済の産業構造がシフトしていること を示している。 更に図 では、知識・情報を取得応用するサービス分野でも粗付加価値の 成長が著しいことを確認できる。 この図から分かることは、図 の情報・通信産業同様、産出価格や粗付加 価値デフレーターは大きく低下しているにも関わらずそれ以上に産出量(需 情報・通信粗付加価値変動要因指数 (注) 年基準 (資料)図 と同じ

(20)

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 19 94 1995 1996 1997 1998 9919 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 1020 2011 2012 2013 2014 2015 産出価格 中間投入価格 中間投入量 産出量 資本投入量 粗付加価値デフレーター 労働投入量 要量)の急増が観られることである。これらの結果から、基本的に粗付加価 値の成長で最も重要なことは当該市場(需要)の拡大であることを確認でき る。無論、その背景には供給側のイノベーションの存在があるが、重要なこ とは、それが市場の顕在化された或いは潜在的な要求(需要側面)を満たす ものでなければならないということである( )。そのことは、次の図 でより 明確になる。 この産業は、産出価格や粗付加価値デフレーターは横 いか若干の低下傾 向を示すが、他方で産出量(需要量)はかなり大幅な上昇傾向を示している。 加えて労働投入がより一層の増加傾向にある故に、労働生産性は他産業に比

( )かつての発明王エジソン(Thomas Alva Edison)は、「必要は発明の母」 という言葉を残している。どのような発明であってもユーザーの顕在化 された或いは潜在的な要求(demand)を満たすものでなければ、それは イノベーションとは言えない。

専門・技術業務支援粗付加価値変動要因指数

(21)

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 19 94 1995 1996 1997 1998 9919 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 1020 2011 2012 2013 2014 2015 産出価格 中間投入価格 中間投入量 産出量 労働投入量 資本投入量 粗付加価値デフレーター して低いままである。生産性が低く、一部を除いて賃金も低いにも関わらず 粗付加価値が増加しているのは、偏に人口の高齢化に伴う需要量の増加に よっている。これらのことから、この産業のイノベーションが希薄であり生 産性が低いにも関わらず粗付加価値を増やしている最大の要因は、社会保障 を中心とした需要量の増加にあることを確認できよう。 この節の最後に 年と 年の二時点での重要指標の変化を、日本標準 産業分類の大分類(一部中分類)の産業全体で観ておくことにする。 図 ∼図 から分かることは、 次産業の物質財の粗付加価値の成長は、 名目では価格下落や交易条件の悪化によって伸び悩んでいるが実質では部門 によっては伸びている。特に知識・情報関連産業と結び付きが強い電子・情 報・通信関連機器の実質成長は著しい。物質財との関係が強い商業・運輸と いった産業や伝統的なサービス業の成長は、やはり停滞気味である。一方、 保健衛生・社会事業粗付加価値変動要因指数 (注) 年基準 (資料)図 と同じ

(22)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 1994年 2015年 1 .農林水産業 2.鉱     業 ︵ 1 ︶食   料   品 ︵2 ︶ 繊 維 製 品 ︵ 3 ︶パルプ・紙・紙加工品 13.公     務 14.教     育 15.保健衛生・社会事業 16.その他のサービス    産業全体 3. 製  造   業 ︵ 4 ︶化     学 ︵ 5 ︶石油・石炭製品 ︵ 6 ︶窯業・土石製品 ︵ 7 ︶一次金属 ︵ 8 ︶金属製品 ︵ 9 ︶ は ん 用 ・ 生産用 ・ 業務用機械 ︵ 10︶電子部品・デ バ イス ︵ 11︶電気機械 ︵ 12︶情報・通信機器 ︵ 13︶輸送用機械 ︵ 14︶その他の製造業 4 .電気・ガス・水道・廃棄物処理業 5. 建  設   業 6 .卸売・小売業 7.運輸・郵便業 8.宿泊・飲食サービス業 9.情報通信業 10.金融・保険業 11.不動産業 12.専門 ・ 科学技術 、業務支援 サ ー ビ ス 業 118 108 情報通信・専門技術業務支援及び保健衛生・社会事業部門は名目実質共高い 成長を示しており粗付加価値の絶対額も比較的大きいことが観察できる。 以上、観察結果から分かるように過去 年 GDP の停滞の中でも、情報・ 通信や専門・科学技術、更には保健衛生・福祉関係部門の粗付加価値は比較 的高い成長率を示している。また、製造業とりわけ家電や情報通信機器を中 心に実質値と名目値の乖離(価格下落)が顕著な部門も存在する。そこで次 に、産業間の特性に配慮しつつ、こうした現象を引き起こしている要因につ いて投入産出分析を用いて考察する。 産業別名目粗付加価値比較 (単位:兆円) (資料)国民経済計算(2008SNA)より筆者作成

(23)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 1994年 2015年 1 .農林水産業 2.鉱     業 ︵ 1 ︶食   料   品 ︵2 ︶ 繊 維 製 品 ︵ 3 ︶パルプ・紙・紙加工品 13.公     務 14.教     育 15.保健衛生・社会事業 16.その他のサービス    産業全体 3. 製  造   業 ︵ 4 ︶化     学 ︵ 5 ︶石油・石炭製品 ︵ 6 ︶窯業・土石製品 ︵ 7 ︶一次金属 ︵ 8 ︶金属製品 ︵ 9 ︶ は ん 用 ・ 生産用 ・ 業務用機械 ︵ 10︶電子部品・デ バ イス ︵ 11︶電気機械 ︵ 12︶情報・通信機器 ︵ 13︶輸送用機械 ︵ 14︶その他の製造業 4 .電気・ガス・水道・廃棄物処理業 5. 建  設   業 6 .卸売・小売業 7.運輸・郵便業 8.宿泊・飲食サービス業 9.情報通信業 10.金融・保険業 11.不動産業 12.専門 ・ 科学技術 、業務支援 サ ー ビ ス 業 78 104 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 名目粗付加価値 実質粗付加価値 1 .農林水産業 2.鉱     業 ︵ 1 ︶食   料   品 ︵2 ︶ 繊 維 製 品 ︵ 3 ︶パルプ・紙・紙加工品 13.公     務 14.教     育 15.保健衛生・社会事業 16.その他のサービス    産業全体 3. 製  造   業 ︵ 4 ︶化     学 ︵ 5 ︶石油・石炭製品 ︵ 6 ︶窯業・土石製品 ︵ 7 ︶一次金属 ︵ 8 ︶金属製品 ︵ 9 ︶ は ん 用 ・ 生産用 ・ 業務用機械 ︵ 10︶電子部品・デ バ イス ︵ 11︶電気機械 ︵ 12︶情報・通信機器 ︵ 13︶輸送用機械 ︵ 14︶その他の製造業 4 .電気・ガス・水道・廃棄物処理業 5. 建  設   業 6 .卸売・小売業 7.運輸・郵便業 8.宿泊・飲食サービス業 9.情報通信業 10.金融・保険業 11.不動産業 12.専門 ・ 科学技術 、業務支援 サ ー ビ ス 業 9.19 5.59 倍 産業別実質粗付加価値比較 (単位:兆円) 年基準 (資料)図 と同じ。 産業別名目・実質粗付加価値の成長倍数 (注)粗付加価値の倍数= 年/ 年 (資料)図 と同じ。

(24)

ݔଶଵ൅ ݔଶଶ൅࣭࣭࣭࣭൅ ݔଶ௡ൌ ܺଶ ࣭      ࣭ ݔ௡ଵ൅ ݔ௡ଶ൅࣭࣭࣭࣭൅ ݔ௡௡ൌ ܺ௡ = 0 I A X 0 X = D 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij  Xij = Dij / Dii

ܲଵݔଵଵ൅ ܲଶݔଶଵ൅࣭࣭࣭࣭൅ ܲ௡ݔ௡ଵൌ ܲଵܺଵ ܲଵݔଵଶ൅ ܲଶݔଶଶ൅࣭࣭࣭࣭൅ ܲ௡ݔ௡ଶൌ ܲଶܺଶ ࣭        ࣭ ܲଵݔଵ௡൅ ܲଶݔଶ௡൅࣭࣭࣭࣭൅ ܲ௡ݔ௡௡ൌ ܲ௡ܺ௡ = 0 I A X 0 X = D 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij  Xij = Dij / Dii

.多部門経済発展分析における理論的背景 まず、投入産出分析を用いた、より一般的な経済発展の実証分析を試みる 前にその理論的背景をレビューしておきたい。 問題の本質を明確にするため、まず Leontief( )の定式化に基づいて 次の三組の方程式群から成る静学的クローズドモデルを導入する。 ( ) ここで、xij:j 部門に投入される i 財の投入量 Xj:j 部門における産出量 ( )式は、n 部門における数量バランス方程式である。 ( ) ここで、Pi:i 財の価格 ( )式は、各部門の列和である金額バランス方程式を表す。 さらに、生産関数として次式が与えられる。 ݔ௜௝ = ௔೔ೕ ೔㹨ܺ௝ = 0 I A X 0 X = D 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij ( ) ( 24 )

(25)

ここで、aij:初期の投入係数 αij:生産性係数 ( )式におけるαijの変化が、観察される投入係数行列の変化をもたらすこと になる。 以上の方程式群を整理して行列表記すると、 ( )と( )より ሾࡵ െ ࡭ሿࢄ = 0 I A X 0 X = D 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij  Xij = Dij / Dii

( ) ただし、I:単位行列、A:観察される投入係数行列 X:産出ベクトル、0:零ベクトル Xにノントリヴィアルな解が存在するための必要十分条件は、 行列式 = 0 I A X 0 X ȁࡵ െ ࡭ȁ = D = 0 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij  Xij = Dij / Dii

( ) この線形経済体系のランクを、n− とすれば、任意の産業(家計)の投 入係数ベクトルは、他の産業(家計)の投入係数ベクトルの一次結合として 表すことができる。また、より一般的には、この線形経済体系のランクを r とすれば、n−r の産業(家計)の投入係数ベクトルが、r の一次独立な産業 (家計)の一次結合として表現できる。このことは、経済体系の外部から与 えられる要素(労働、土地、資源等)の投入係数ベクトルの一次結合として、 経済体系の他の産業(家計)の投入係数ベクトルを表しうることを意味して おり、産業部門分類基準を決める上で重要な示唆を与えている。 更に、( )式から第 i 財で測られた第 j 財の数量解 Xij は、 = 0 I A X 0 X = D 㹬㸫㸯 㹰 㹬㸫㹰 㹰 Xij

 Xij = Dij / Dii ( ) 但し、Dij、Dii はそれぞれ行列式 D の i 行 j 列、i 行 i 列の要素の余因子で ある。

(26)

同様に、i 財で測った j 財の相対価格 Pij は、( )、( )式よりDij , Dii Pij

 Pij = Ðij / Ðii

ࠊÐij , Ðii … A  㹲㸩㸯 = B Ft 㹲   ( ) 但し、D ˆ ij、D ˆ iiは、それぞれ行列式|I −Ã|(à は、A の転置行列)の i 行 j 列、i 行 i の要素の余因子である。 ( )、( )式より相対数量及び相対価格体系は、究極的には産業(家計を含 む)の投入係数行列に依って決定される。従って、経済発展における産業構 造や相対価格体系の変化は、産業(含家計)の投入係数やそれらに関連した 係数(輸入係数等)の変化が重要な役割を果たしていることが分かる。 Leontief( )は、更に経済発展の特定時点における動学的特性を知る ために動学的オープンモデルを導入した。それは、次のような連立差分方程 式で記述される( ) Dij , Dii Pij  Pij = Ðij / Ðii

ࠊÐij , Ðii … A  ሾࡵ െ ࡭ሿࢄ࣮࡮ ቂࢄ㹲㸩㸯െ ࢄ㹲ቃ = ࡲ࢚ B Ft 㹲   ( ) ここで、A:投入係数行列、Xt:産出ベクトル B:(限界)資本係数行列、Ft:最終需要ベクトル 添字 t は、各時点を示す。 Ft=F (定数)とすると、xt=Xt−X(X は定常均衡解)として ( )式は、 Dij , Dii Pij  Pij = Ðij / Ðii

ࠊÐij , Ðii … A  㹲㸩㸯 = B Ft 㹲 ሾࡵ െ ࡭ሿ࢚࢞൅ ࡮࢚࢞ൌ ࡮࢚࢞ା૚   ( ) ( )式より ( )Leontief( )では、動学モデルは連立微分方程式体系として展開さ れているが、説明の都合上連立差分方程式体系に直している。

(27)

Pij

 Pij = Ðij / Ðii

ࠊÐij , Ðii … A  㹲㸩㸯 = B Ft 㹲  ࢚࢞ା૚ൌ ሾࡵ ൅ ࡮ି૚ሺࡵ െ ࡭ሻሿ࢚࢞ ൌ ۵࢚࢞ ( ) ( )式の一般スカラー解は、 Dij , Dii Pij  Pij = Ðij / Ðii

ࠊÐij , Ðii … A  㹲㸩㸯 = B Ft 㹲   ࢚࢞ൌ σ࢔࢐ୀ૚ ࢐ࢉ ࣋࢐࢚ࢊ࢐ ( ) ここで、ρj:行列 G の固有根、cj:初期条件から決まる定数 dj:ρjに対応する固有ベクトル 初期値 x0を与えて( )式の解 xtの時系列(レオンティエフ軌道)が求め られる。いま、(I −A)B を分解不可能な非負行列とすれば、フロべニウス 定理によりこの行列にはフロべニウス根σiが存在する。これに対応する行 列 G の固有根は、ρi=1+σ1 iとなるが、ここでρi>|ρe|(ρeρiを除く行列 Gの全ての固有根)が成立するとき、レオンティエフ軌道は相対的に安定 であり、全ての産業の成長率は漸近的にρi−1 となり非負の産出量が保証さ れる。上記の条件以外の場合は、レオンティエフ軌道が相対的に不安定にな り、 早晩一部の産業に負の産出量が発生する。 この問題は、 固有根が負であっ たり複素根の場合もあるので、行列 G の一般的性質からは決めることがで きない。また、たとえ相対的安定性が保証されたとしても、経済体系におけ る諸産業の成長率が究極的には均等になるという非現実的な結果になる。そ のような問題を回避するための一つの方法は、構造変化(A や B 行列の変 化)をモデルに導入することである。 その点に関して、Leontief( )は、新たに次のような連立差分方程式 を提示した。 ࢄ࢚െ ࡭࢚ࢄ࢚െ ࡮࢚ା૚ሾࢄ࢚ା૚െ ࢄ࢚ሿ ൌ ࡲ࢚ ( ) 記号の意味は、( )式と同じ。 産業部門概念と経済発展分析について(荒木) − 57 − ( 27 )

(28)

ۉ ۈ ۈ ۈ ۈ ۈ ۇ ܺି௠ ࣭ ࣭ ܺିଶ ܺିଵ ܺ଴ ی ۋ ۋ ۋ ۋ ۋ ۊ ൌ ۉ ۈ ۈ ۈ ۈ ۈ ۇ ܪି௠ିଵǥ ܴି௠ǥ ܴିଷܴିଶܪିଵିଵܴି௠ǥ ܴିଷܴିଶܴିଵܪ଴ିଵ ࣭ ࣭  ܪିଶିଵܴ ିଶܪିଵିଵܴିଶܴିଵܪ଴ିଵ ܪିଵିଵܴିଵܪ଴ିଵ ܪିଵ ی ۋ ۋ ۋ ۋ ۋ ۊ ۉ ۈ ۈ ۈ ۈ ۈ ۇ ܨି௠ ࣭ ࣭ ܨିଶ ܨିଵ ܨ ی ۋ ۋ ۋ ۋ ۋ ۊ , 先の( )式との相違点は、行列 A、B が時間と共に変化することである。こ の論文の中で Leontief は、( )式を後向き逐次法で解いている。すなわち、 各期の産出ベクトル Xtについて−m 期まで解くと ( ) ここで、Ht=[ I −At+Bt+1]、Rt=Ht−1Bt+1(Ht−1は、Htの逆行列を示す。) ( )式の右辺の正方行列は、ダイナミック・インバースと呼ばれる。 ただ、実証的見地からすると構造変化を導入した上記のモデルもいくつか の問題点が存在する。まず、At、Bt両行列は外生的に与えられていることで ある。特に Btは特異行列になる傾向があると共に、単純な投資の加速度原 理が仮定されており、そこには係数の非可逆性の問題が生ずる。また、一般 的に中間投入分の投入係数行列に比較して、限界資本行列は生産規模の変化 と共に変動し易いことが知られている。ストックとフローの関係を示す資本 係数は、中間投入分の投入係数に比較すると自律度の面でも、また資本の機 能を示す質的要因が考慮外にある等測定の面でも極めて問題が多いと言わざ るを得ない( )。また。何より資本ストック行列の公表データに対応する部門 は極めて限定されたものである。以上の理由から、構造変化の基底には、 ( )生産関数における資本は、本来能力や効率といった機能を示すサービス であるが、既存の資本ストックのデータは、主に過去の資本ストックと 累積投資、それに除却分等を除いた価値や累積費用を示すものとなって いる。資本係数行列が特異行列になりやすいといった技術的問題を除い ても、この点に本質的欠陥があると言わざるをえない(脚注( )参照)。

(29)

データ制約や自律度の点からもやはり投入係数行列を置くべきであろう。 従って、この稿での構造変化の分析は、投入係数行列と需要構造に限定して 行うことにする。 実証的視点から経済発展と投入係数・資本係数行列の関係を観るとき、実 際の歴史的期間の取り方や産業の定義によって、それらの数値が大きく影響 されることは容易に想像できる。そこで、次章で特に産業の定義の在り方に ついて、工学的(物理学的)生産関数に基づいて考察する。 .投入産出分析における産業部門概念 投入産出分析に限らず、実際の分析における時空や産業をどのように定義 するかという問題は、生産の経済分析において常に存在する。例えば、理論 において各種の弾力性とりわけ代替の弾力性等は特に重要な役割を果たして いるが、それらを実証的に計測しようとすると時間と空間の設定、それに産 業の定義が必要となる。時空については、静学理論にせよ動学理論にせよ、 歴史的期間の取り方や現実の取引空間の範囲が必ずしも明確ではない。具体 的には、弾力性を 箇月で測るのか其れとも 年か 年かによって、その値 は大きく変わるし、交通・通信技術の進歩による取引空間の時間距離の変化 等の度合いによっても、現実の弾力性の値が変化することは容易に想像でき よう( )。消費の場合と異なり生産活動においては、短期的には技術的理由に よって投入要素間の補完性が強く、投入要素間の代替は、大部分投資活動を 通じてなされる結果、通常長期とされる資本ストックの変動を伴う( )。また、 産業概念についても、多かれ少なかれ商品群や事業所の集計が必要になるが、 どのような基準で集計すべきかということが実証分析の一つの課題になる。 ( )国境を越えて経済的取引が行われるグローバル化の進展は、市場の空間 的拡大を意味している。

(30)

日本の産業分類の基礎である日本標準産業分類一般原則によると「産業分 類における産業とは、財またはサービスの生産と供給において類似した経済 活動を統合したものであり、実際上は、同種の経済活動を営む事業所の総合 体と定義される。」とある。このように、統計的な産業部門概念は、事業所 ベースによるか商品ベースによるかに大別されるが、総務省で纏められてい る投入産出表は、後者に近いアクティビティーベースで作成されている。更 に、先の一般原則によると産業分類の基準として次の 点が記されている。 ( )生産される財または提供されるサービスの種類(用途、機能など) ( )財の生産またはサービス提供の方法(設備、技術など) ( )原材料の種類及び性質、サービスの対象及び取り扱われるもの(商品 など)の種類 以上の一般原則を踏まえて、Chenery( )の理論を参照しながら産業 ( )新古典派の理論では、しばしば生産関数における資本財の可塑性(mal-leability)が仮定されるが少なくとも短期的には、この仮定は科学的根拠 に欠けるものと言わざるを得ない。そのような資本財は、「裸の王様」 の服同様、誰も見たこともなければ触ったこともないものである。また 生産関数のインプットが全て可変的という長期の定義も実証的見地から すると必ずしも現実の歴史的期間と結びつくものではない。何故なら複 数財が存在するとき、例えばポテトチップスの生産と原発による発電を 比較すれば、それらの全てのインプットが可変的になる期間が二財の間 で大きく異なることは明白であろう。更に、現実の歴史的期間で考える と長い期間であってもインプット費用が全て可変費になるとは限らない。 資本財も経年劣化があるので、物理的或いは経済的理由によって常に更 新投資が必要であり、それゆえ定義にもよるが固定費が無くなることは ない。また日本企業の多くは、正社員の人件費は一部例外(残業代等) はあるが固定費とみなしている。アメリカのようにレイオフが制度的理 由で自由にできないからである。更に原発のように廃炉になっても後処 分のための固定費はかかる。最近ではハイテク産業で固定費の割合が上 昇している。それは研究開発費が一層増加しているからである(図 と 図 参照)。なお、新古典派を含む資本概念については、黒田( ) に詳しい。

(31)

部門部類の基本原則を考察する。 Chenery( )工学的生産関数の概念は、すべての生産活動の基本的要 素を生産プロセスとし、それらを特定の対象に対するエネルギー形態変換 (例えば、熱エネルギーを運動エネルギーに変換)の過程として把握する。 ここで定義される生産プロセスが産業部門分類の基底になる。具体的には、 工学的生産関数は三種類の関数によって構成される。まず、原料を生産物に 変換するための設計段階での工学的対応関係を示す原料変形関数(material transformation function)が提示される。  ׎ሺࡽ࢏,ࣆ࢏ǡ ࣈ࢏ǡ ࡱ࢘ሻ ൌ ૙ E㹰  ( ) ここで、Qi:i財産出能力、μi:原料特性変数、ξi:産出財特性変数、 Er:必要エネルギー投入量 μiξiは、工学的変数と名付けられ原料や産出財の質的特性(properties) を示す変数である。 次に提示されるのが、必要エネルギー(Er)を提供するための各種生産要

素の特性(ρi)の組み合わせを示すエネルギー供給関数(energy supply

func-tion)である。  , E㹰  ࡱ࢘ൌ ࡱሺ࣋࢏ሻ ( ) ここで、ρi:各種生産要素の特性変数 各種生産要素とは具体的に資本財、労働力、土地(生産の場)、更にはエ ネルギーをも含み、従ってρiも工学的変数であり、上記生産要素の質的特 性を表している。この( )式を( )式に代入することで、設計(計画)段階 における工学的(物理学的)生産関係が成立する。 ここで重要な点は、この自律度の高い段階でのインプット間の関係とアウ トプット・インプット間の関係は連動的で補完性が強く、アウトプットとイ ン プ ッ ト 間 の 特 性(μiξiρi)に 基 づ い て、そ れ ら が 一 体 と し て 設 計

(32)

(計画)された関数であることである。ただ、原料(物質)が変換の対象に なっているので、どうしてもこの関数は適用範囲が工業部門に限定されサー ビス部門には適用できないのではないかという誤解が生ずる恐れがある。そ こで、筆者は原料の 部 分(μi)を、原 料 を 含 む 対 象(object transformation function)( )とすることで、この概念が 、 次産業部門にも適用可能である ことを示した(因みに工学的生産関数という名称についても、より一般的で 自律度も高い物理学的生産関数という名称の方が誤解を招きにくいのではな いかと思われる)(Araki( )参照)。この概念に基づいて定義される サービスとは、一般的に労働力や、原材料・資本財を含む物質財、空間、情 報等を組み合わせ或いはシステム化して、ある種のエネルギー(人力による 力学的エネルギー、化石燃料による熱エネルギー、電気エネルギー等)を特 定時間供与することで、ユーザーに対して特定の成果や効用をもたらす活動 と定義される( ) ( )ここで、対象(object)とは、生産活動の目標達成のために、何らかの 物理的変化をさせる主な対象になるものを指している。例えば、輸送活 動とは、人や貨物を空間的に移動させることであるが、その際、人や貨 物がその対象となる。また、鉄鋼業において、鉄鉱石から鉄鋼製品に加 工する際、鉄鉱石ないしその低次加工品がその対象になる。 ( )経済活動におけるサービスとは、資本財を含む物質財、空間、情報、エ ネルギー等を組み合わせ或いはシステム化して特定時間投入し、ユー ザーに対してある成果や効用をもたらす(無形で蓄積不可能な)活動と 定義できる。注意を要するのはサービスの提供は、労働だけではなく資 本財や土地、情報等も含まれるということである。労働サービスの場合 は、マン・アワーという比較的わかりやすい統計があるが、資本サービ スを含む他のサービスには残念ながら時間に関する統計が不足している。 そこで、一つの案として操業度(脚注( )参照)から稼働時間を逆算す るか、そのデータも得られない場合、短期的にはサービス量に比例する エネルギー投入量(人的、化石燃料、電力等)がその代理変数になると 考えられる。但し、ここでいうエネルギー投入量には、供給側だけでは なく需要側が投入する分も含まれる(例えば、車のレンタルサービスで は、通常ユーザーが運転し燃料代も負担する)。

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 ࢓࢐ൌ ࢓࢐ሺࡽ࢏ǡ ࣊࢏ሻ ࢟࢏ࢎൌ ࢟࢏ࢎሺࡽ࢏ǡ ࣊࢏ሻ ➼ࡢ⥲య 最後に、アウトプットの生産能力(Qi)とその特性(ξi)(具体的には、 ユーザーの望む製品のデザインや機能性等を指している。一般的には、ユー ザーの効用を増す要素を意味する)及びインプットの特性(μiρi)に基づ いて、必要とされる実際の原料や生産要素の設計上の経済的数量が決められ る。これを原材料や生産要素の投入関数(input function)という。即ち、 ( )

ここで、mij:i財生産に必要な j原料の投入量、yih:i財生産に必要な h

生産要素の投入量、πi:i財生産に必要な全ての工学的(物理学的)特性変 数(ξiμiρi等の総体) この関数は、生産能力と物理的諸特性(properties)及び経済的数量(原料、 労働、資本、土地等の必要投入量)との関係を表している。注意を要するの は、生産要素の投入量は、設計(計画)上の生産能力(Qi)だけでなくアウ トプットやインプットの諸特性全体(πi)で決定されるということである。 例えば、資本の投入量は、生産能力だけでなく資本の特性更にはアウトプッ トや他のインプット(労働等)の特性にも依存する。このように特定の要素 の投入量は、その要素のみならず他の要素や産出特性と技術的に相互依存的 で補完的な関係にある。例えば優れたコンピューターは、優れた労働(シス テムエンジニアーやプログラマー等)なしに円滑に稼働することは不可能で あろう。各生産要素は、少なくとも短期的には技術的補完性が強く、生産要 素の代替は、主として投資活動を通じてなされる。その際、重要な役割を果 たす労働、資本、原材料等及びアウトプットの特性は、個々別々に選択され る訳ではなく相互に連動したπiとして集約される( )。 以上の三種類の関数の総体として、工学的(物理学的)生産関数が成立す る。ここで、経済変数である原料投入量(mij)や生産要素投入量(yih、具体

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的には労働投入量 li、資本投入量 ki等)は、設計(計画)段階における生産 能力(Qi)と工学的(物理学的)特性(πi)に基づいて決められ、少なくと もこの段階においては極めて連動的で強い技術的補完性を持っている。原料 や生産要素間の代替は、自明のことではあるが物理化学法則の許容する範囲 内でなされる。多くの場合、インプット間の代替は基本的に新規の投資活動 によって実施される。重要な点は、原料、労働や資本といった生産要素の投 入量は、基本的に生産能力とアウトプットとインプットの特性によって決め られ、更にそれらは個々別々ではなく連動的補完的な関係を持つということ である( )。ただ、実際の生産量(X i)やインプットの量は生産能力だけでな ( )物質財にせよサービス財にせよ生産活動の設計段階では、アウトプット の特性と量に合わせてインプットの特性と量が技術的補完性に基づいて 決められる。相対価格の変化等によるインプット間の代替も多くは投資 活動を通じてなされるので、かなりの時間を要するのが普通である。ま たその際も、インプット間の技術的機能の諸特性は連動している。即ち、 資本の質・量は労働や原材料更にはアウトプットの質・量とも連動し、 決して個々別々に決められる訳ではない。従って、各インプットの質・ 量は、相対価格等所与の条件の下、基本的に Qiとπiとで決定される。 他方で新古典派の KLEM モデルにおいては、しばしば関数分離可能性 (functional separability)が仮定されるが、こうしたことは現実の物理化

学法則と整合性があるとは言えない(Christensen et. al .( ),Duchin

( )参照)。 ( )物理学的生産関数の立場からすると、生産要素の代替は投資活動を通ず る特定エネルギー源のシステムへの漸進的転換といえる。例えば労働と 資本の代替とは、人的エネルギー源に基づくシステムから電気や化石燃 料をエネルギー源にする機械や建物空間、情報等を含むシステムへの ウェイトの変化を意味する。無論、後者のシステムにも多くの場合人的 エネルギーは必要であるが、その投入割合は低下する。人的エネルギー システムから電気や化石エネルギーシステムへの代替は、その労働が身 体的なものでも知的なものでも起こりうる。類似の考え方がイギリス産 業革命の初期、ワット(James Watt)によって発案された。石炭をエネ ルギー源とする蒸気機関の能力が馬のエネルギー何頭分に当たるかとい う馬力(horse power)という概念がそれである。

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く市場の需要によっても決定されるので、短期的には操業度(Xi/Qi)( )が重 要な役割を果たすことになる。 .経済発展の実証分析における産業分類の基礎概念 先の理論的背景で述べたように、投入産出分析における経済発展の分析で は、各部門の供給量や需要量のみならず、構造変化(投入係数行列の変化) の果たす役割が極めて大きい。それ故、構造変化の分析を行うため、それら の基底にある物理化学及び工学的関係に基づいた部門分類が不可欠である。 そのため既存の投入産出表から上記の基準に従った部門の再配列が必要とな る。ある最終生産物が生産されるまでには、種々の加工工程・流通工程を経 由するのが普通である。経済体系を単純化して線型連立方程式で表現すると、 あらゆる商品の投入係数が究極的には素原材料と本源的生産要素の線型結合 として示し得ることを図 からも推察できよう。 ( )実際の生産活動においては、生産能力(Qi)がそのまま生産量(Xi)に なるわけではなく、市場の需要動向に応じて生産量は操業度(Xi/Qi)で 調整される。それは、必ずしも製造業だけではなく、名称は異なるもの のサービス業等の分野でも行われる。例えば、宿泊業では、客室稼働率 が、あるいは運輸業では、運行効率、更にオフィス賃貸業では、空室率 ( から空室率を差し引くと稼働率になる)が用いられる。操業度の上 昇は、単位当たり固定費を中心に平均費用の低下をもたらすのが普通で ある。また操業度のデータから稼働時間を逆算できる。例えば、宿泊施 設の場合、年間平均客室数 で客室の稼働率 %の場合、労働サービ スのマン・アワーに対応する資本財の年間稼働 日 数 は , 室・日 (室・時間に換算するには、法・制度上の制約がなければ更に を掛け る)となる。

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原材料 一般投入 生産要素 素原材料 i 素原材料 j 素原材料 素原材料 中間財 i ′ 中間財 j ′ エネルギー 補助材料 情報・サービス 全ての生産プロセスに投入される。 最終生産物 (本源的)生産要素サービス 全ての生産プロセスに投入される。 教育・ 研究開発等 (含自然力) 上記のような物理化学及び工学的関係に基づいて、公表されている最も細 分化された投入産出表を多くの時間をかけて組み直した表が、尾崎・石田 ( )に図示されている(図 )( ) ( ) 年接続投入産出表の基本部門分類の行列は、 × 部門数である。 生産プロセスの概略図 (注)素原材料から最終生産物が造られるまでの一般的な生産プロセスを示し ている。最終生産物に近づく程、生産プロセスはより複合的になる。但 し、サービス財の場合は、原材料の部分が無いケースが多い。なお、矢 印は物質財、エネルギーや情報が投入される方向を示している。 (資料)筆者作成

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(イ)最終工業生産物ブロック % & & & & & & ' ( ) 建設・土木系統〕 ( ) 建設用資材〕 ( ) 民生用機器〕 ( ) 産業用機械〕 ( ) その他機械〕 ( ) その他最終工業生産物 (ロ)鉄・非鉄ブロック % '( ) 鉄鋼系統〕( ) 非鉄系統〕 (ハ)食料品ブロック ( ) 食料系統〕 (ニ)窯業土石ブロック ( ) 土石・石綿系統〕 (ホ)その他ブロック ( )織物系統 ( )紡績糸系統 ( )製革・毛革 ( )原木系統 ( )インキ、染料、塗料 ( )化学(Ⅰ)系統 ( )化学(Ⅱ)系統 ( )化学(Ⅲ)系統 基礎的経済構造の概略図 (注)図 は、生産プロセスに従って各部門を並び替えると、素原材料から始めて加工段階を含め て一般投入部分を除いて全経済を(イ)∼(ホ)にブロック化して纏めることができ、しかも各 ブロックは素原材料系統ごとにほぼ独立であることを示している。 (資料)尾崎・石田( )p. より転載 ! #なお、図 の転載に当たって、慶應義塾経済学会と著作権者である尾崎磋瑛子様に御協力いただき深く感謝致します。 "$

(38)

特定の最終生産物が生産されるまでには、種々の加工・流通工程を経由す るのが普通である。図 はそれらを簡略化して図示している。先述したよう に経済体系を簡略化して線型連立方程式で表現すれば、あらゆる生産物の投 入係数が素原材料と本源的生産要素の線型結合として表しうることが、この 図から推察できよう。技術変化等によるこの結合の変化が、構造変化といわ れるものである。部門設定の観点から、相対的に安定した部分を見い出すた めに、図 のような生産プロセスの概念を導入するのが有用である。多くの 生産物において、生産物自体に組み込まれる原料(materials)部分よりも一 般投入や情報・サービス投入部分の投入係数の方が変動しやすいことが観察 によって確認できる。生産工程の最終段階(最終財)に近づく程、プロセス は複合的になり異なる投入係数ベクトルを持つ生産方法(activities)間の選 択肢が広がることになる。基本的に生産プロセスは、物の流れに対し一つの 方向性を持つ故に、費用変化の波及もそれに従う。他方、素原材料の生産に は他の素原材料の生産を直接的には要しないことから素原材料の投入係数ベ クトルは、プロセスのより高次の生産物に対してだけでなく、他の素原材料 に対しても生産技術的に独立している。これらの理由から、素原材料とそこ から出発した補完的な中間段階までの生産物群、及び本源的生産要素が部門 設定の基底になると考えられる。投入産出分析における各部門は、基本的に 行(産出)は生産物の用途(use)を示し、列(投入)は物理化学及び工学 的生産方法(生産関数)によって要求される機能(function)に基づく投入 を表していると考えられる( ) ( )アウトプットが特定の用途を果たすために必要な機能を持つインプット が技術的に選択される。例えば、ジェット機のボディには主に航空力学 に基づいて高価ではあってもアルミやチタン更には炭素繊維等が使用さ れ、たとえ鉄鋼や木材の相対価格が大幅に低下したとしても、それらに 代替されることはない。また、アウトプットが特定の用途に使用される 場合には、それ自体その特定用途を達成するための一定の機能(特性) を満たす必要があるのは言うまでもない。

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(特定)用途 アウトプット1 アウトプット2 ・・・ アウトプットm (特定機能) (特定機能) (特定機能)       アクティビティ1 アクティビティ2 アクティビティm (生産関数1) (生産関数2) (生産関数m) イ ン プ ッ ト (1)   機   能   (1) イ ン プ ッ ト (2)   機   能   (2) イ ン プ ッ ト (m)   機   能   (m) 特定用途とアウトプット及びそのアクティビティとの関係 (注)特定用途とそれを満たす機能を持つ各アウトプットとそれを生産するアクティ ビティとの関係を示している。例えば住空間を提供する(特定用途)ための住 宅のアクティビティとしては、木造や鉄筋コンクリート造等がある。アウトプッ トやインプットの相対価格や特性の変化によって各アクティビティレベルも変 化する。 (資料)筆者作成 一般にレオンテェエフ体系における構造変化は、所与の用途のもとで主と して①投入要素代替 ②技術変化(規模の経済等)③プロダクトミックスに よって起こるとされている。同じ用途を果たす生産物の生産方法は、複数存 在するのが普通である。図示すると次のようになる。 これらの工学的(物理学的)関係を基礎にして、生産プロセスの繋がりか ら投入産出表を組みなおすことが可能であり、それらの表が構造変化の分析 に有用である(図 参照)。工学的(物理学的)生産関数に基づいて各商品 と個別の生産関数(アクティビティ)の関係は次のようになる。 特定の用途(k)とそれを実現するための個別のアクティビティの関係は、 ( ) 但し、 (アクティビティレベルシェア)

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Ak:用途 k部門全体を集計した投入係数ベクトル、akj:k 用途を実現す るための個別(j) アクティビティ、Xkj:各個別アクティビティの生産数量 ここで、特定の用途(k)とは、具体的には住空間の提供(住宅)とか電 気エネルギーの提供(発送電)等を意味する。個別のアクティビティとは、 工学的(物理学的)生産関数から導出される各生産方法(アクティビティ) を指している。例えば特定用途の前者の場合、木造一戸建てや鉄筋コンク リート建て等があり、 後者の場合には、 水力、 火力、 原子力発電等がある( ) 上記のアクティビティをより細分類で定義すればする程、アクティビティ 内のインプット間代替よりもアクティビティレベルの変化による代替の効果 の方がはるかに大きいことが知られている(正確には有形のインプット(原 料等)は、アウトプットに組み込まれる割合が大きいので補完性が強いのに 対し、無形のインプット(情報、サービス等)の投入係数は前者に比してよ り変化し易い(図 、 参照)。 通常、各生産方法の投入係数ベクトルより部門内における各生産方法の ウェイトの変化が相対的に大きく、また投入係数ベクトル中の原料部分より 一般投入部分(情報・サービスを含む)や生産要素(労働、資本財等)の投 入係数の方が変化が大きいことが観察できる。即ち、各生産方法内における 原料部分の要素代替は少ない一方で、一般投入や生産要素の投入は技術変化 (規模の経済等)によって比較的大きく変化し、それらが生産物の特性と相 まってプロダクトミックスを引き起こしていると理解できる。 ( )殆どの特定用途の下では、複数の生産方法(アクティビティ)が存在す る。例えば、繊維では天然繊維と化学繊維、家具では木製家具と金属製 家具、更に輸送では鉄道、自動車、船舶、航空機等による輸送といった アクティビティがある。

図 専門・技術業務支援粗付加価値変動要因指数

参照

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