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はじめに 栄養とは 1 日必要量をその日のうちに補給 ( 摂取 ) する すなわち 1 日必要量を毎日補給する ことが原則であり 微量元素も同様です 通常私達は毎日の食事とともに微量元素を摂取しています 1 日に排泄した微量元素は補うべきであり 当然ながら 排泄分を補わなければ微量元素は不足していき

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(1)

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微量元素読本

監 修

大 阪 大 学  名誉教授

阪和第一泉北病院 顧問

髙木 洋治

2016年6月改訂 EPD2615B01 (08501)MQ

(2)

 栄養とは、「1日必要量をその日のうちに補給(摂取)する」すなわち 「1日必要量を毎日補給する」ことが原則であり、微量元素も同様です。 通常私達は毎日の食事とともに微量元素を摂取しています。1日に排泄し た微量元素は補うべきであり、当然ながら、排泄分を補わなければ微量 元素は不足していきます。特にTPN*患者の全身状態は一般的に不良で あり、TPN施行以前の微量元素摂取量も少ないため、短期間で容易に欠 乏状態を引き起こす可能性があります。  著者らは、1975年TPN施行中に世界で初めての亜鉛欠乏症を発見し て以来、微量元素の栄養学的重要性に注目してきました。大阪大学の院 内製剤としてTPN用微量元素製剤を薬剤部の協力を得て作成し、市販化 するに至りました。そして現在ではこれらの微量元素があらかじめ配合さ れたTPNキット製剤も販売されています。   本 書 で は 、T P N 用 微 量 元 素 製 剤 に 含 ま れる 5 種 類 の 微 量 元 素 (Zn,Cu,Fe,Mn,I)を中心に総論と各論に分け、微量元素について分かりや すくまとめました。  本書が、多くの方々に読まれ、患者さんにとって最適な栄養療法を実 践するための一助になれば幸いです。 ●

微量元素について

………

微量元素の機能

………

微量元素の投与量

………

微量元素の過剰症・欠乏症

…………

微量元素の代謝

………

亜鉛

………

銅 ………

………

マンガン

………

ヨウ素

………

Q&A

………

2

3

4

6

8

10

12

14

16

18

20

C O N T E N T S

は じ め に

総 論

各 論

*TPN:total parenteral nutrition 中心静脈栄養

髙木 洋治

大 阪 大 学  名誉教授 阪和第一泉北病院 顧問

(3)

 栄養とは、「1日必要量をその日のうちに補給(摂取)する」すなわち 「1日必要量を毎日補給する」ことが原則であり、微量元素も同様です。 通常私達は毎日の食事とともに微量元素を摂取しています。1日に排泄し た微量元素は補うべきであり、当然ながら、排泄分を補わなければ微量 元素は不足していきます。特にTPN*患者の全身状態は一般的に不良で あり、TPN施行以前の微量元素摂取量も少ないため、短期間で容易に欠 乏状態を引き起こす可能性があります。  著者らは、1975年TPN施行中に世界で初めての亜鉛欠乏症を発見し て以来、微量元素の栄養学的重要性に注目してきました。大阪大学の院 内製剤としてTPN用微量元素製剤を薬剤部の協力を得て作成し、市販化 するに至りました。そして現在ではこれらの微量元素があらかじめ配合さ れたTPNキット製剤も販売されています。   本 書 で は 、T P N 用 微 量 元 素 製 剤 に 含 ま れる 5 種 類 の 微 量 元 素 (Zn,Cu,Fe,Mn,I)を中心に総論と各論に分け、微量元素について分かりや すくまとめました。  本書が、多くの方々に読まれ、患者さんにとって最適な栄養療法を実 践するための一助になれば幸いです。 ●

微量元素について

………

微量元素の機能

………

微量元素の投与量

………

微量元素の過剰症・欠乏症

…………

微量元素の代謝

………

亜鉛

………

銅 ………

………

マンガン

………

ヨウ素

………

Q&A

………

2

3

4

6

8

10

12

14

16

18

20

C O N T E N T S

は じ め に

総 論

各 論

*TPN:total parenteral nutrition 中心静脈栄養

髙木 洋治

大 阪 大 学  名誉教授 阪和第一泉北病院 顧問

(4)

・生体内含有量が体重1kgあたり1mg以下または鉄(Fe)よりも少ないもの。 Feが主要元素と微量元素の境に当たる元素である。 ・組織中濃度がppm(μg/g)オーダーより低いもの。 ちょうど、血清鉄、亜鉛、銅の濃度は1ppm前後である。 ・1日の摂取量が100mg以下の無機物。

微量元素とは?

微量元素の定義

多量元素  一般的に体内において鉄あるいは鉄よりも含量が少ない元素を指し、微量元素全体でも体組 成の0.02%にしかならない。微量元素の量の増減は生体の酵素機能や酸化還元機能に影響を 与える。ヒトでの必須微量元素は9種類あげられている。  微量元素は生体内にあって多様な働きを担っている元素であり、たん白質、脂質、糖が機能す るための多くの酵素活性や代謝機能と密接な関係にある。 主要元素 O,C,H,N 96.6% 準主要元素 Ca,P,S,K,Na,Cl,Mg 3~4% 微量元素 0.02% 可能性の あるもの Ni,F,Br,As,V,Cd,Be, Sr 高等動物 (ヒト) Fe,Zn,Cu,Mn,I, Co,Cr,Se,Mo,Sn

微量元素について

多量元素 微量元素 H Li Na Be Mg K Rb Cs Fr B Al Ca Sr * Y Ba Ra ランタノイド* アクチノイド** ** Sc Zr Ti Hf Nb V Ta Cr W Tc Mn Re Ru Fe Os Rh Co Ir Pd Ni Pt Ag Cu Au Cd Zn Th Ce Pa Pr U Nd Pm Np Sm Pu Eu Am Gd Cm Tb Bk Cf Es Fm Md No Lr Dy Ho Er Tm Yb Lu Hg In Ga Tl C Si Ge Pb N P Sb As Bi O S Te Se Po Br At Ac La Cl F I Kr Rn He Ar Ne Xe Sn Mo 和田 攻: 微量元素に関する研究と臨床の現状について, JJPEN. 1987; 9: 507-528

微量元素の機能

元素

関連するたん白質・酵素

生理機能

亜鉛

(Zn)

炭酸脱水酵素(カルボニックアンヒドラーゼ), アルカリホスファターゼ,カルボキシペプチダーゼ A&B, アルコールデヒドロゲナーゼ,RNA ポリメラーゼ, DNA ポリメラーゼ たん白代謝,遺伝情報, 脂質代謝,糖代謝,骨代謝

(Cu)

セルロプラスミン,モノアミンオキシダーゼ, シトクロムCオキシダーゼ,アスコルビン酸オキシダーゼ, ドーパミンβ-ヒドロキシダーゼ,スーパーオキシドジスムターゼ, リジルオキシダーゼ,チロシナーゼ 造血機能,骨代謝, 結合織代謝,神経機能, 色素調節機能

(Fe)

ヘモグロビン,ミオグロビン,ヘム酵素 酸素運搬・添加,酸化, 電子伝達

マンガン

(Mn)

アルギナーゼ,ピルビン酸カルボキシラーゼ, スーパーオキシドジスムターゼ,グリコシルトランスフェラーゼ GSH-Px,5-ヨードサイロニン脱ヨウ素化酵素(タイプⅠ), チオレドキシンリダクターゼ,セレノプロテイン P,W

耐糖能因子(glucose tolerance factor:GTF), 低分子クロム結合物質(LMCr:クロモデュリン) キサンチンオキシダーゼ,キサンチンデヒドロゲナーゼ, アルデヒ ドオキシダーゼ,亜硫酸オキシダーゼ 骨代謝,糖代謝, 脂質代謝

ヨウ素

(I)

甲状腺ホルモン 細胞酸化過程, 甲状腺ホルモンの合成 抗酸化作用,T4→T3, 抗ウイルス作用,糖代謝

コバルト

(Co)

ビタミンB12 メチル化,造血など 糖代謝, コレステロール代謝, 結合織代謝,たん白代謝 アミノ酸代謝,尿酸代謝, 硫酸・亜硫酸代謝

モリブデン

(Mo)

クロム

(Cr)

セレン

(Se)

髙木 洋治: 疾患とミネラル 10. 静脈・経腸栄養. ミネラルの事典, 糸川 嘉則編, 朝倉書店, 東京, 2003: p658-659 木邑 道夫: 薬局, 2004; 55(2): 1347-1351 生体を構成する元素 必須微量元素 周期表からみた必須元素

(5)

・生体内含有量が体重1kgあたり1mg以下または鉄(Fe)よりも少ないもの。 Feが主要元素と微量元素の境に当たる元素である。 ・組織中濃度がppm(μg/g)オーダーより低いもの。 ちょうど、血清鉄、亜鉛、銅の濃度は1ppm前後である。 ・1日の摂取量が100mg以下の無機物。

微量元素とは?

微量元素の定義

多量元素  一般的に体内において鉄あるいは鉄よりも含量が少ない元素を指し、微量元素全体でも体組 成の0.02%にしかならない。微量元素の量の増減は生体の酵素機能や酸化還元機能に影響を 与える。ヒトでの必須微量元素は9種類あげられている。  微量元素は生体内にあって多様な働きを担っている元素であり、たん白質、脂質、糖が機能す るための多くの酵素活性や代謝機能と密接な関係にある。 主要元素 O,C,H,N 96.6% 準主要元素 Ca,P,S,K,Na,Cl,Mg 3~4% 微量元素 0.02% 可能性の あるもの Ni,F,Br,As,V,Cd,Be, Sr 高等動物 (ヒト) Fe,Zn,Cu,Mn,I, Co,Cr,Se,Mo,Sn

微量元素について

多量元素 微量元素 H Li Na Be Mg K Rb Cs Fr B Al Ca Sr * Y Ba Ra ランタノイド* アクチノイド** ** Sc Zr Ti Hf Nb V Ta Cr W Tc Mn Re Ru Fe Os Rh Co Ir Pd Ni Pt Ag Cu Au Cd Zn Th Ce Pa Pr U Nd Pm Np Sm Pu Eu Am Gd Cm Tb Bk Cf Es Fm Md No Lr Dy Ho Er Tm Yb Lu Hg In Ga Tl C Si Ge Pb N P Sb As Bi O S Te Se Po Br At Ac La Cl F I Kr Rn He Ar Ne Xe Sn Mo 和田 攻: 微量元素に関する研究と臨床の現状について, JJPEN. 1987; 9: 507-528

微量元素の機能

元素

関連するたん白質・酵素

生理機能

亜鉛

(Zn)

炭酸脱水酵素(カルボニックアンヒドラーゼ), アルカリホスファターゼ,カルボキシペプチダーゼ A&B, アルコールデヒドロゲナーゼ,RNA ポリメラーゼ, DNA ポリメラーゼ たん白代謝,遺伝情報, 脂質代謝,糖代謝,骨代謝

(Cu)

セルロプラスミン,モノアミンオキシダーゼ, シトクロムCオキシダーゼ,アスコルビン酸オキシダーゼ, ドーパミンβ-ヒドロキシダーゼ,スーパーオキシドジスムターゼ, リジルオキシダーゼ,チロシナーゼ 造血機能,骨代謝, 結合織代謝,神経機能, 色素調節機能

(Fe)

ヘモグロビン,ミオグロビン,ヘム酵素 酸素運搬・添加,酸化, 電子伝達

マンガン

(Mn)

アルギナーゼ,ピルビン酸カルボキシラーゼ, スーパーオキシドジスムターゼ,グリコシルトランスフェラーゼ GSH-Px,5-ヨードサイロニン脱ヨウ素化酵素(タイプⅠ), チオレドキシンリダクターゼ,セレノプロテイン P,W

耐糖能因子(glucose tolerance factor:GTF), 低分子クロム結合物質(LMCr:クロモデュリン) キサンチンオキシダーゼ,キサンチンデヒドロゲナーゼ, アルデヒ ドオキシダーゼ,亜硫酸オキシダーゼ 骨代謝,糖代謝, 脂質代謝

ヨウ素

(I)

甲状腺ホルモン 細胞酸化過程, 甲状腺ホルモンの合成 抗酸化作用,T4→T3, 抗ウイルス作用,糖代謝

コバルト

(Co)

ビタミンB12 メチル化,造血など 糖代謝, コレステロール代謝, 結合織代謝,たん白代謝 アミノ酸代謝,尿酸代謝, 硫酸・亜硫酸代謝

モリブデン

(Mo)

クロム

(Cr)

セレン

(Se)

髙木 洋治: 疾患とミネラル 10. 静脈・経腸栄養. ミネラルの事典, 糸川 嘉則編, 朝倉書店, 東京, 2003: p658-659 木邑 道夫: 薬局, 2004; 55(2): 1347-1351 生体を構成する元素 必須微量元素 周期表からみた必須元素

(6)

微量元素の投与間隔

微量元素の最適濃度

 微量元素の最適濃度を見積もることは大変難しい。生体反応と元素濃度との関係を簡単に 表すと下図のようになる。  例えば、ヒトにおけるセレンの最適摂取量は、1日に0.03~0.1mgのごく狭い範囲に限られ ていることが知られている。したがって、セレンを用いるときは、この量的関係を頭に入れてお くことが大変重要である。

経口投与における必要量

 必須性物質には1日必要量がある。摂取量が少なければ欠乏症がみられ、逆に摂取量が多く なれば過剰症がみられるのは、微量元素でも同様である。  経口においてはバランス研究やヒトを用いた欠乏実験から多くの微量元素について1日必要 量が推定されているが、その量は、通常のヒトの食物からの1日経口摂取量とほぼ同じである。

静脈投与における必要量

 静脈投与においては、日本では1日に必要な5種類の微量元素が配合されたTPN用微量元素 製剤が市販化されており、この配合量が必要量と考えられている。 ただし、患者の個々の体内動態等により必要量は変化するため、今後も検討していく必要がある。  1日に排泄した微量元素はその日に補うべきであり、排泄した量を補わなければ、欠乏症状は 出なくても微量元素は不足してくる。  例えば、経口摂取不可能な術後の患者のTPN輸液中に微量元素製剤を隔日しか投与しな かった場合、亜鉛の血中濃度を調べると術後2週間たっても正常域内に戻らない。特にTPN施 行時には短期でも長期でも毎日微量元素を投与し、1日に必要な量を補う必要がある。 生体反応と元素濃度との関係 成長しない 欠乏症 最適濃度 過剰症 死亡 範囲 反応 (たとえば成長など) 元素濃度 欠乏 レ ベ ル 準欠乏 レ ベ ル 栄養 レ ベ ル 過剰 レ ベ ル 準中毒 レ ベ ル 中毒 レ ベ ル セレンの 1 日のとりこみ量と生体反応 正常範囲 微量元素製剤 隔日投与群(n=5) 微量元素製剤 連日投与群(n=5) 術前 術後 1 日目 術後 5 日目 術後 2 週間目 100.0 0.01 0.03 0.1 0.2 1.0 5.0(mg/日) 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 血中亜鉛濃度 (μg/dL) 2016年6月現在製品添付文書 TPN用微量元素製剤の組成 微量元素 1アンプル(2mL中) 鉄(Fe) 亜鉛(Zn) 銅(Cu) マンガン(Mn) ヨウ素(I) 35μmol 60μmol 5μmol 1μmol 1μmol 1.95mg 3.92mg 0.31mg 0.05mg 0.13mg 微量元素(食事摂取基準) 微量元素:日本人の食事摂取基準(成人18~69歳)* 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量 推奨量 鉄(Fe) (mg/日) 亜鉛(Zn) (mg/日) 銅(Cu) (mg/日) マンガン(Mn) (mg/日) ヨウ素(I) (μg/日) セレン(Se) (μg/日) クロム(Cr) (μg/日) モリブデン(Mo)(μg/日) 8 0.7 ー 95 25 ー 20~25 6~6.5 2 7~7.5 2.4 10 0.9~1 目安量のみ:4 130 30 目安量のみ:10 25~30 コバルト(Co) (ビタミンB12として) (μg/日) 6 0.6 月経なし:5~5.5 月経あり:8.5~9 ー 95 20 ー 20 8 0.8 月経なし:6~6.5 月経あり:10.5 目安量のみ:3.5 130 25 目安量のみ:10 20~25 2.4 2 桜井 弘: 金属は人体になぜ必要か, 講談社 1996: p122 提供:筑波大学 医学医療系小児外科 教授 増本 幸二先生 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。 監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342

微量元素の投与量

(7)

微量元素の投与間隔

微量元素の最適濃度

 微量元素の最適濃度を見積もることは大変難しい。生体反応と元素濃度との関係を簡単に 表すと下図のようになる。  例えば、ヒトにおけるセレンの最適摂取量は、1日に0.03~0.1mgのごく狭い範囲に限られ ていることが知られている。したがって、セレンを用いるときは、この量的関係を頭に入れてお くことが大変重要である。

経口投与における必要量

 必須性物質には1日必要量がある。摂取量が少なければ欠乏症がみられ、逆に摂取量が多く なれば過剰症がみられるのは、微量元素でも同様である。  経口においてはバランス研究やヒトを用いた欠乏実験から多くの微量元素について1日必要 量が推定されているが、その量は、通常のヒトの食物からの1日経口摂取量とほぼ同じである。

静脈投与における必要量

 静脈投与においては、日本では1日に必要な5種類の微量元素が配合されたTPN用微量元素 製剤が市販化されており、この配合量が必要量と考えられている。 ただし、患者の個々の体内動態等により必要量は変化するため、今後も検討していく必要がある。  1日に排泄した微量元素はその日に補うべきであり、排泄した量を補わなければ、欠乏症状は 出なくても微量元素は不足してくる。  例えば、経口摂取不可能な術後の患者のTPN輸液中に微量元素製剤を隔日しか投与しな かった場合、亜鉛の血中濃度を調べると術後2週間たっても正常域内に戻らない。特にTPN施 行時には短期でも長期でも毎日微量元素を投与し、1日に必要な量を補う必要がある。 生体反応と元素濃度との関係 成長しない 欠乏症 最適濃度 過剰症 死亡 範囲 反応 (たとえば成長など) 元素濃度 欠乏 レ ベ ル 準欠乏 レ ベ ル 栄養 レ ベ ル 過剰 レ ベ ル 準中毒 レ ベ ル 中毒 レ ベ ル セレンの 1 日のとりこみ量と生体反応 正常範囲 微量元素製剤 隔日投与群(n=5) 微量元素製剤 連日投与群(n=5) 術前 術後 1 日目 術後 5 日目 術後 2 週間目 100.0 0.01 0.03 0.1 0.2 1.0 5.0(mg/日) 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0 血中亜鉛濃度 (μg/dL) 2016年6月現在製品添付文書 TPN用微量元素製剤の組成 微量元素 1アンプル(2mL中) 鉄(Fe) 亜鉛(Zn) 銅(Cu) マンガン(Mn) ヨウ素(I) 35μmol 60μmol 5μmol 1μmol 1μmol 1.95mg 3.92mg 0.31mg 0.05mg 0.13mg 微量元素(食事摂取基準) 微量元素:日本人の食事摂取基準(成人18~69歳)* 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量 推奨量 鉄(Fe) (mg/日) 亜鉛(Zn) (mg/日) 銅(Cu) (mg/日) マンガン(Mn) (mg/日) ヨウ素(I) (μg/日) セレン(Se) (μg/日) クロム(Cr) (μg/日) モリブデン(Mo)(μg/日) 8 0.7 ー 95 25 ー 20~25 6~6.5 2 7~7.5 2.4 10 0.9~1 目安量のみ:4 130 30 目安量のみ:10 25~30 コバルト(Co) (ビタミンB12として) (μg/日) 6 0.6 月経なし:5~5.5 月経あり:8.5~9 ー 95 20 ー 20 8 0.8 月経なし:6~6.5 月経あり:10.5 目安量のみ:3.5 130 25 目安量のみ:10 20~25 2.4 2 桜井 弘: 金属は人体になぜ必要か, 講談社 1996: p122 提供:筑波大学 医学医療系小児外科 教授 増本 幸二先生 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。 監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342

微量元素の投与量

(8)

微量元素の過剰症・欠乏症

元素

過剰症

欠乏症

亜鉛

(Zn)

主症状:顔面、会陰部より始まり漸次増悪する皮疹 随伴症状:口内炎、舌炎、脱毛、爪変化、腹部症状(下痢・嘔吐)、発熱 創傷治癒遅延、成長障害、免疫低下、精神症状(うつ状態)、味覚障害、嗅覚障 害、食欲不振、視覚障害、生殖機能低下、短身、腸性肢端皮膚炎 急性:相対的Fe・Cu欠乏症状、嘔気、嘔吐、腹痛、下血、高アミラーゼ血症、嗜眠状態、低血圧、 肺浮腫、下痢、黄疸、乏尿 慢性:生殖力低下、短身、味・嗅覚低下、貧血 髙木 洋治: 疾患とミネラル 10. 静脈・経腸栄養. ミネラルの事典, 糸川 嘉則編, 朝倉書店, 東京, 2003: p658-659 和田 攻: 日医雑誌, 2003; 129(5): 607-612 木邑 道夫: 薬局, 2004; 55(2): 1347-1351 黒川 峰夫, 半下石 明: 日医雑誌, 2010; 139(2): 281-284

(Cu)

貧血、白血球減少、好中球減少、骨髄白血球系成熟障害 骨変化(小児):骨年齢低下、骨幹端の不整およびspurring、骨の透亮像、        骨皮質の菲薄化 脳症状、神経症状、低体温、色素脱失、血管・毛髪の異常、 免疫低下、骨・動脈異常 嘔気、嘔吐、心窩部灼熱感、下痢、黄疸、ヘモグロビン尿症、血尿、乏尿、無尿、低血圧、昏睡、下血

(Fe)

貧血、易疲労、頭痛、体動時の呼吸困難、動悸、顔面蒼白、舌炎、 爪スプーン状変化

マンガン

(Mn)

血清コレステロール低下、血液凝固能低下、毛髪赤色化、皮膚炎(水晶様汗疹)、 成長障害、長幹骨骨端部X線透過性増加 克山病、筋肉痛、肝壊死(ラット)、筋ジストロフィー症状(仔羊)、浸出性素因 (ヒナドリ)、心筋症(心筋細胞崩壊、線維化)、爪床部白色変化 パーキンソン症候群 慢性初期 :インポテンツ、無気力、傾眠、食欲不振、浮腫、筋肉痛、頭痛、       精神興奮、疲労感          進行症状 :錐体外路系障害

ヨウ素

(I)

甲状腺腫、甲状腺機能低下症 初期は甲状腺機能亢進が起こるが、尿中ヨウ素排泄量に変化なし 甲状腺ホルモンの分泌低下に基づく甲状腺肥大、尿中ヨウ素排泄減少 妊婦のヨウ素欠乏で新生児がクレチン病に罹患する恐れあり 耐糖能低下、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、呼吸商の低下、 体重減少、末梢神経障害、遊離脂肪酸増加、窒素平衡の異常、代謝性意識障害 成長遅延、尿酸クリアランス障害(ヒナドリ)、頻脈、多呼吸、夜盲症、視野暗点、 易刺激性、嗜眠、失見当識、昏睡 ビタミンB12欠乏症:悪性貧血、メチルマロン酸尿症、動悸、息切れ、軽度の黄疸を伴う蒼白な皮膚、舌の発赤、          知覚障害

コバルト

(Co)

コバルト中毒(甲状腺機能低下症、心不全、呼吸機能低下、血管拡張、血圧低下) 嘔気、嘔吐、消化管潰瘍、中枢神経障害、肝・腎障害、成長障害 急性(動物):異常な動作・姿勢、水様性下痢、呼吸困難、体温上昇、頻脈、疲労 慢性(動物):セレノーシス(脱毛・爪剥離、中枢系障害)     ヒト:慢性皮膚炎、脱毛、毛髪の色素脱失、爪剥離 甲状腺腫、甲状腺機能低下症 肝機能障害(肝酵素の上昇、肝の線維化、肝硬変、肝細胞がん)、不整脈・心筋症、 インスリン分泌の低下、糖尿病、下垂体機能不全、甲状腺機能不全、皮膚の色素沈着 高尿酸血症、痛風

モリブデン

(Mo)

クロム

(Cr)

セレン

(Se)

亜鉛欠乏時の顔面の皮疹 (提供: 大阪大学 名誉教授 髙木 洋治先生) セレン欠乏時の爪床部の白色変化 増本 幸二, 他: 静脈経腸栄養, 2007; 22(2): 88

(9)

微量元素の過剰症・欠乏症

元素

過剰症

欠乏症

亜鉛

(Zn)

主症状:顔面、会陰部より始まり漸次増悪する皮疹 随伴症状:口内炎、舌炎、脱毛、爪変化、腹部症状(下痢・嘔吐)、発熱 創傷治癒遅延、成長障害、免疫低下、精神症状(うつ状態)、味覚障害、嗅覚障 害、食欲不振、視覚障害、生殖機能低下、短身、腸性肢端皮膚炎 急性:相対的Fe・Cu欠乏症状、嘔気、嘔吐、腹痛、下血、高アミラーゼ血症、嗜眠状態、低血圧、 肺浮腫、下痢、黄疸、乏尿 慢性:生殖力低下、短身、味・嗅覚低下、貧血 髙木 洋治: 疾患とミネラル 10. 静脈・経腸栄養. ミネラルの事典, 糸川 嘉則編, 朝倉書店, 東京, 2003: p658-659 和田 攻: 日医雑誌, 2003; 129(5): 607-612 木邑 道夫: 薬局, 2004; 55(2): 1347-1351 黒川 峰夫, 半下石 明: 日医雑誌, 2010; 139(2): 281-284

(Cu)

貧血、白血球減少、好中球減少、骨髄白血球系成熟障害 骨変化(小児):骨年齢低下、骨幹端の不整およびspurring、骨の透亮像、        骨皮質の菲薄化 脳症状、神経症状、低体温、色素脱失、血管・毛髪の異常、 免疫低下、骨・動脈異常 嘔気、嘔吐、心窩部灼熱感、下痢、黄疸、ヘモグロビン尿症、血尿、乏尿、無尿、低血圧、昏睡、下血

(Fe)

貧血、易疲労、頭痛、体動時の呼吸困難、動悸、顔面蒼白、舌炎、 爪スプーン状変化

マンガン

(Mn)

血清コレステロール低下、血液凝固能低下、毛髪赤色化、皮膚炎(水晶様汗疹)、 成長障害、長幹骨骨端部X線透過性増加 克山病、筋肉痛、肝壊死(ラット)、筋ジストロフィー症状(仔羊)、浸出性素因 (ヒナドリ)、心筋症(心筋細胞崩壊、線維化)、爪床部白色変化 パーキンソン症候群 慢性初期 :インポテンツ、無気力、傾眠、食欲不振、浮腫、筋肉痛、頭痛、       精神興奮、疲労感          進行症状 :錐体外路系障害

ヨウ素

(I)

甲状腺腫、甲状腺機能低下症 初期は甲状腺機能亢進が起こるが、尿中ヨウ素排泄量に変化なし 甲状腺ホルモンの分泌低下に基づく甲状腺肥大、尿中ヨウ素排泄減少 妊婦のヨウ素欠乏で新生児がクレチン病に罹患する恐れあり 耐糖能低下、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、呼吸商の低下、 体重減少、末梢神経障害、遊離脂肪酸増加、窒素平衡の異常、代謝性意識障害 成長遅延、尿酸クリアランス障害(ヒナドリ)、頻脈、多呼吸、夜盲症、視野暗点、 易刺激性、嗜眠、失見当識、昏睡 ビタミンB12欠乏症:悪性貧血、メチルマロン酸尿症、動悸、息切れ、軽度の黄疸を伴う蒼白な皮膚、舌の発赤、          知覚障害

コバルト

(Co)

コバルト中毒(甲状腺機能低下症、心不全、呼吸機能低下、血管拡張、血圧低下) 嘔気、嘔吐、消化管潰瘍、中枢神経障害、肝・腎障害、成長障害 急性(動物):異常な動作・姿勢、水様性下痢、呼吸困難、体温上昇、頻脈、疲労 慢性(動物):セレノーシス(脱毛・爪剥離、中枢系障害)     ヒト:慢性皮膚炎、脱毛、毛髪の色素脱失、爪剥離 甲状腺腫、甲状腺機能低下症 肝機能障害(肝酵素の上昇、肝の線維化、肝硬変、肝細胞がん)、不整脈・心筋症、 インスリン分泌の低下、糖尿病、下垂体機能不全、甲状腺機能不全、皮膚の色素沈着 高尿酸血症、痛風

モリブデン

(Mo)

クロム

(Cr)

セレン

(Se)

亜鉛欠乏時の顔面の皮疹 (提供: 大阪大学 名誉教授 髙木 洋治先生) セレン欠乏時の爪床部の白色変化 増本 幸二, 他: 静脈経腸栄養, 2007; 22(2): 88

(10)

微量元素の代謝

元素

体内分布

吸 収

体内の移動・作用

排 泄

亜鉛

(Zn)

亜鉛は、体内に約2,000mg 存在する。主に骨格筋、骨、 皮膚、肝臓、脳、腎臓などに 分布し、ほとんどがたん白 質などの高分子と結合し ている。 経口摂取された亜鉛は、腸管から吸収され、その吸収率は、摂取量によっ て変わり、腸管でのメタロチオネイン*の増加により亜鉛の吸収が調節さ れている。また、吸収の過程で2価の陽イオンである鉄や銅などと拮抗 すること、胃酸分泌の阻害物やフィチン酸塩は亜鉛の吸収を低下させる ことが報告されている。 吸収された亜鉛は、門脈系を経由して肝臓に運ばれた後、 血管系へ戻される。種々の臓器によって取り込まれる速さ や代謝率は異なる。肝、腎、膵、脾臓などでは蓄積、代謝率と もに速く、一方、中枢神経系、骨、筋肉への亜鉛の取り込み は遅く、長期間にわたってとどまる。 亜鉛の排泄は、未吸収の亜鉛や腸管粘膜の脱落、 膵液の分泌などに伴う体内亜鉛(内因性亜鉛)の 糞便中への排泄によって主に行われている。尿中 への亜鉛の排泄量は少なく、摂取量にかかわら ず、ほぼ一定である。 銅 は 、体 内 に 約10 0 ~ 15 0 m g 存 在 す る 。約 50%が筋肉や骨、約10% が肝臓中に分布している。 臓 器 重 量 当 たりで は 肝 臓、脳、腎臓の値が高い。 マンガンは、体内に約12 ~20mg存在する。生体 内組織及び臓器にほぼ一 様に分布している。 鉄は、体内に約3,500~ 4,000mg存在する。60 ~70%はヘモグロビンに 組み込まれ、残りは肝臓、 脾臓、骨髄に貯蔵鉄などと して存在する。 経口摂取された銅は、2つの経路で吸収される。ひとつの経路は、2価の 銅イオンとして吸収されるもので、この経路における吸収は、鉄、亜鉛と 競合する。もうひとつは、十二指腸において2価から1価に還元された銅 イオンが、吸収される経路である。 経口摂取されたマンガンは、胃酸**によって2価に還元され、腸管細胞の 酸化機構で3価となって吸収される。消化管からの吸収率は約3~5% とされており、マンガン化合物間で吸収率の差はない。また、マンガンの 吸収量は食事中の鉄含有量と反比例の関係がある。 経口摂取された鉄は、多くが3価であり、胃酸**によって2価に還元され る。腸管からの鉄吸収は2価の鉄イオンとして吸収される機序と、ヘモグ ロビンやミオグロビンに由来するヘムのまま吸収される機序がある。 吸収された銅は、アルブミンなどと結合して門脈を経て肝 臓へ取り込まれる。肝臓で生成されたセルロプラスミンは 血中へ放出され、各組織への銅輸送を担う。細胞内におい てはメタロチオネイン*が銅貯蔵プールとなっている可能 性がある。 吸収された鉄は、血液中ではトランスフェリンと結合し安定 化しており、その鉄を血清鉄と呼ぶ。血清鉄は骨髄において 赤血球造血に利用されるが、骨髄の赤芽球内でのヘモグロ ビン合成には20mg/日の鉄が必要となる。そのため脾臓で 破壊された赤血球を再利用する半閉鎖的な回路を形成して いる。また、肝臓などにフェリチン***、ヘモジデリンとして貯蔵 され必要に応じて利用される。 銅は、再吸収されない形態となって胆汁へ流出し、 糞便中へ排泄される。吸収された銅の約85%が 肝臓から胆汁を介して糞便へ、5%以下が腎臓を 介して尿中へ排泄される。 吸収されたマンガンは、門脈を経て肝臓に運ばれ、胆汁か ら腸管に分泌され、体内のマンガン量は胆汁排泄によって 調節されている。また一部は血漿中でトランスフェリンと結 合し、肝外組織に取り込まれる。 胆汁から腸管に分泌されたマンガンはそのほとん どが再吸収されることなく糞便中に排泄される。 鉄欠乏がない状態では腸上皮細胞に貯蔵された 鉄の一部は剥離、脱落に伴い便中に排泄される。

(Cu)

(Fe)

マンガン

(Mn)

ヨウ素

(I)

■吸収部位:小腸 ■吸 収 率:20~60% ■吸収部位:十二指腸、近位小腸、呼吸器 ■吸 収 率:3~7% ■吸収部位:十二指腸、一部空腸上部 ■吸 収 率:5~10% ■吸収部位:胃、十二指腸 ■吸 収 率:30~50% ■主たる排泄経路:便 ■主たる排泄経路:胆汁 ■主たる排泄経路:胆汁 ヨウ素は、体内に約15~ 20mg存在する。甲状腺 は体重のわずか0.03% であるが、その中に身体全 体の70~80%のヨウ素 が含まれている。 経口摂取されたヨウ素は、化学形態とは無関係に、消化管でほぼ完全に 吸収される。 *金属結合たん白質。通常、亜鉛を結合した形であるが、銅やカドミウム、水銀などの金属種と置換しうる。 **胃酸の他に食物中のビタミンCや腸管上皮の還元酵素によっても3価から2価に還元される。 ***フェリチンとはアポフェリチンというたん白質と3価の鉄からなる水溶性たん白質。   血清フェリチンは鉄をほとんど含まないが、体内の貯蔵鉄量を敏感に反映するので鉄欠乏の検査マーカーとして用いられる。フェリチンは一定の割合で血中に溶け出し、血清フェリチンとして測定される。 吸収されたヨウ素は、その多くは血漿中でヨウ化物イオン として存在し、能動的に甲状腺に取り込まれる。甲状腺に取 り込まれたヨウ化物イオンは、甲状腺ホルモンの前駆体で あるモノヨードチロシン及びヨードチロシンとなり、甲状腺 ホルモンとなる。 ■吸収部位:小腸 ■吸 収 率:100% ■主たる排泄経路:便(皮膚) 甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素、及び血漿中 ヨウ素は最終的にその90%以上が尿中に排泄さ れる。 ■主たる排泄経路:尿 編  集/鈴木 継美, 和田 攻: ミネラル・微量元素の栄養学, 第一出版 1994: p351-481 翻訳監修/木村 修一, 小林 修平: 最新栄養学[第9版], 建帛社 2007: p429-477

(11)

微量元素の代謝

元素

体内分布

吸 収

体内の移動・作用

排 泄

亜鉛

(Zn)

亜鉛は、体内に約2,000mg 存在する。主に骨格筋、骨、 皮膚、肝臓、脳、腎臓などに 分布し、ほとんどがたん白 質などの高分子と結合し ている。 経口摂取された亜鉛は、腸管から吸収され、その吸収率は、摂取量によっ て変わり、腸管でのメタロチオネイン*の増加により亜鉛の吸収が調節さ れている。また、吸収の過程で2価の陽イオンである鉄や銅などと拮抗 すること、胃酸分泌の阻害物やフィチン酸塩は亜鉛の吸収を低下させる ことが報告されている。 吸収された亜鉛は、門脈系を経由して肝臓に運ばれた後、 血管系へ戻される。種々の臓器によって取り込まれる速さ や代謝率は異なる。肝、腎、膵、脾臓などでは蓄積、代謝率と もに速く、一方、中枢神経系、骨、筋肉への亜鉛の取り込み は遅く、長期間にわたってとどまる。 亜鉛の排泄は、未吸収の亜鉛や腸管粘膜の脱落、 膵液の分泌などに伴う体内亜鉛(内因性亜鉛)の 糞便中への排泄によって主に行われている。尿中 への亜鉛の排泄量は少なく、摂取量にかかわら ず、ほぼ一定である。 銅 は 、体 内 に 約10 0 ~ 15 0 m g 存 在 す る 。約 50%が筋肉や骨、約10% が肝臓中に分布している。 臓 器 重 量 当 たりで は 肝 臓、脳、腎臓の値が高い。 マンガンは、体内に約12 ~20mg存在する。生体 内組織及び臓器にほぼ一 様に分布している。 鉄は、体内に約3,500~ 4,000mg存在する。60 ~70%はヘモグロビンに 組み込まれ、残りは肝臓、 脾臓、骨髄に貯蔵鉄などと して存在する。 経口摂取された銅は、2つの経路で吸収される。ひとつの経路は、2価の 銅イオンとして吸収されるもので、この経路における吸収は、鉄、亜鉛と 競合する。もうひとつは、十二指腸において2価から1価に還元された銅 イオンが、吸収される経路である。 経口摂取されたマンガンは、胃酸**によって2価に還元され、腸管細胞の 酸化機構で3価となって吸収される。消化管からの吸収率は約3~5% とされており、マンガン化合物間で吸収率の差はない。また、マンガンの 吸収量は食事中の鉄含有量と反比例の関係がある。 経口摂取された鉄は、多くが3価であり、胃酸**によって2価に還元され る。腸管からの鉄吸収は2価の鉄イオンとして吸収される機序と、ヘモグ ロビンやミオグロビンに由来するヘムのまま吸収される機序がある。 吸収された銅は、アルブミンなどと結合して門脈を経て肝 臓へ取り込まれる。肝臓で生成されたセルロプラスミンは 血中へ放出され、各組織への銅輸送を担う。細胞内におい てはメタロチオネイン*が銅貯蔵プールとなっている可能 性がある。 吸収された鉄は、血液中ではトランスフェリンと結合し安定 化しており、その鉄を血清鉄と呼ぶ。血清鉄は骨髄において 赤血球造血に利用されるが、骨髄の赤芽球内でのヘモグロ ビン合成には20mg/日の鉄が必要となる。そのため脾臓で 破壊された赤血球を再利用する半閉鎖的な回路を形成して いる。また、肝臓などにフェリチン***、ヘモジデリンとして貯蔵 され必要に応じて利用される。 銅は、再吸収されない形態となって胆汁へ流出し、 糞便中へ排泄される。吸収された銅の約85%が 肝臓から胆汁を介して糞便へ、5%以下が腎臓を 介して尿中へ排泄される。 吸収されたマンガンは、門脈を経て肝臓に運ばれ、胆汁か ら腸管に分泌され、体内のマンガン量は胆汁排泄によって 調節されている。また一部は血漿中でトランスフェリンと結 合し、肝外組織に取り込まれる。 胆汁から腸管に分泌されたマンガンはそのほとん どが再吸収されることなく糞便中に排泄される。 鉄欠乏がない状態では腸上皮細胞に貯蔵された 鉄の一部は剥離、脱落に伴い便中に排泄される。

(Cu)

(Fe)

マンガン

(Mn)

ヨウ素

(I)

■吸収部位:小腸 ■吸 収 率:20~60% ■吸収部位:十二指腸、近位小腸、呼吸器 ■吸 収 率:3~7% ■吸収部位:十二指腸、一部空腸上部 ■吸 収 率:5~10% ■吸収部位:胃、十二指腸 ■吸 収 率:30~50% ■主たる排泄経路:便 ■主たる排泄経路:胆汁 ■主たる排泄経路:胆汁 ヨウ素は、体内に約15~ 20mg存在する。甲状腺 は体重のわずか0.03% であるが、その中に身体全 体の70~80%のヨウ素 が含まれている。 経口摂取されたヨウ素は、化学形態とは無関係に、消化管でほぼ完全に 吸収される。 *金属結合たん白質。通常、亜鉛を結合した形であるが、銅やカドミウム、水銀などの金属種と置換しうる。 **胃酸の他に食物中のビタミンCや腸管上皮の還元酵素によっても3価から2価に還元される。 ***フェリチンとはアポフェリチンというたん白質と3価の鉄からなる水溶性たん白質。   血清フェリチンは鉄をほとんど含まないが、体内の貯蔵鉄量を敏感に反映するので鉄欠乏の検査マーカーとして用いられる。フェリチンは一定の割合で血中に溶け出し、血清フェリチンとして測定される。 吸収されたヨウ素は、その多くは血漿中でヨウ化物イオン として存在し、能動的に甲状腺に取り込まれる。甲状腺に取 り込まれたヨウ化物イオンは、甲状腺ホルモンの前駆体で あるモノヨードチロシン及びヨードチロシンとなり、甲状腺 ホルモンとなる。 ■吸収部位:小腸 ■吸 収 率:100% ■主たる排泄経路:便(皮膚) 甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素、及び血漿中 ヨウ素は最終的にその90%以上が尿中に排泄さ れる。 ■主たる排泄経路:尿 編  集/鈴木 継美, 和田 攻: ミネラル・微量元素の栄養学, 第一出版 1994: p351-481 翻訳監修/木村 修一, 小林 修平: 最新栄養学[第9版], 建帛社 2007: p429-477

(12)

・欠乏症の主な症候は、成長遅延、味覚低下、嗅覚低下、妊娠異常、免疫能低下、暗順応不全、 皮膚炎、うつ状態などである。 ・特にたん白代謝、遺伝情報に重要とされ、その欠乏により種々の欠乏症状がみられる1)。TPN時 の亜鉛欠乏症について髙木らは世界で最初の報告2)を行い、その後同様の報告が多くなされた。 ・血漿亜鉛値は添加しないと漸次低下し欠乏症が出現する。これに対し1日60μmolの投与で 血漿レベルはほぼ健常人値内に保たれる3)。しかし、クローン病や短腸症候群などのように 年余にわたってTPNを必要とする患者では、1日60μmolの投与では血漿レベルは健常人値 より低値を示すものが多く、さらに多くの亜鉛単剤補給(100~160μmol/日:院内製剤) を必要としている。 ・わが国のほとんどの高カロリー輸液基本液に亜鉛は含まれているが十分とはいえない。 1日60μmolの投与で血漿レベルはほぼ健常人値内に保たれる。ただし、クローン病や短腸症 候群などの患者では、低値を示すものもあり、注意が必要である。

亜鉛

日本人の食事摂取基準 Zn投与群および非投与群における 血漿Zn値の推移(消化器疾患)

Zn

亜鉛の摂取推奨量

Zn60μmol/日投与群(n=30) Zn非投与群(n=46) 100 50 μg/dL n=20 n=19 n=21 n=21 n=15 n=12 n=3 n=3 n=32 n=37 n=32 n=25 n=22 n=10 n=3 N ** *** : : : p<0.05 p<0.01 p<0.001 ** *** *** *** 前 1 2 3 4 8 12 over12 週

Takagi, Y. et al.: JPEN. 1986; 10(2): 195-202 髙木 洋治: NST完全ガイド(編集/東口 髙志), 照林社 2005: p169-172 0 牡蠣、かに、ホタテ貝、牛肉、鶏肉、レバー類、 ナッツ類、かぼちゃの種 N:normal range

TPN時Zn投与量(60μmol/日)の根拠

■ 亜鉛について

※日本におけるTPN時のZn投与量

経口摂取の場合

参考

ASPEN(2012)1) ESPEN(Surgery)(2009)2) AMA(1979)3)4) 2.5~5mg/日 2.5~5mg/日 2.5~4.0mg/日

静脈投与の場合

亜鉛の補給源となる食品

血清基準値

80~130μg/dL

3.9mg(60μmol)/日

体内含有量

約2,000mg

市販製剤含有量

2~3(目安量のみ) 2~3(目安量のみ) 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量(mg/日) 推奨量(mg/日) 3~9 3~7 3~10 3~8 8 6 10 8 8 6 9 7 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。  監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342 乳幼児(0~11カ月)* 小 児(1~17歳)* 成 人(18~69歳)* 高齢者(70歳以上)

ジンクフィンガー

たん白質は通常何百個ものアミノ酸からなり、折りたた まれることによって安定でコンパクトな構造になる。 我々の細胞では、このたん白質の折りたたみを簡略化 するために亜鉛イオンがよく使われる。たん白質は、鎖 の中にある2つのシステインと2つのヒスチジンをお互 い接近させて亜鉛イオンをつかみ、その周りに堅く折り たたまれる。このようなたん白質は「ジンクフィンガー」 (zinc finger、亜鉛の指)と呼ばれる。20個から30個 の短いアミノ酸の鎖が、十分堅くて安定な構造を作り出 す。ジンクフィンガーは大変有用なので、我々が持つた ん白質の中に何千種類も見られ、その多くはDNA認識 に重要な役割を果たしている。

RCSB PDB Molecule of the Month by David Goodsell March 2007, doi:10.2210/rcsb_pdv/mom_2007_3 ジンクフィンガーの一例 亜鉛は20~40μmol/日の 投与でも欠乏症は改善する が、血漿レベルが正常に達し ないという症例が多くみられ たため、1日60μmol/日の投 与で検討した。 その結果、非投与群でみられ る低下傾向を防ぎ、ほぼ健常 域内を維持した。 血漿   値Zn

1)髙木 洋治: 静脈経腸栄養, 2003; 18(2): 70-78 2)Bums, DL. et al.: Nutrition. 1996; 12(6): 411-415

3)Takagi ,Y. et al.: JPEN. 1986; 10(2): 195-202

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Braga, M. et al.: Clin. Nutr. 2009; 28(4): 378-386 3)JAMA. 1979; 241(19): 2051-2054

(13)

・欠乏症の主な症候は、成長遅延、味覚低下、嗅覚低下、妊娠異常、免疫能低下、暗順応不全、 皮膚炎、うつ状態などである。 ・特にたん白代謝、遺伝情報に重要とされ、その欠乏により種々の欠乏症状がみられる1)。TPN時 の亜鉛欠乏症について髙木らは世界で最初の報告2)を行い、その後同様の報告が多くなされた。 ・血漿亜鉛値は添加しないと漸次低下し欠乏症が出現する。これに対し1日60μmolの投与で 血漿レベルはほぼ健常人値内に保たれる3)。しかし、クローン病や短腸症候群などのように 年余にわたってTPNを必要とする患者では、1日60μmolの投与では血漿レベルは健常人値 より低値を示すものが多く、さらに多くの亜鉛単剤補給(100~160μmol/日:院内製剤) を必要としている。 ・わが国のほとんどの高カロリー輸液基本液に亜鉛は含まれているが十分とはいえない。 1日60μmolの投与で血漿レベルはほぼ健常人値内に保たれる。ただし、クローン病や短腸症 候群などの患者では、低値を示すものもあり、注意が必要である。

亜鉛

日本人の食事摂取基準 Zn投与群および非投与群における 血漿Zn値の推移(消化器疾患)

Zn

亜鉛の摂取推奨量

Zn60μmol/日投与群(n=30) Zn非投与群(n=46) 100 50 μg/dL n=20 n=19 n=21 n=21 n=15 n=12 n=3 n=3 n=32 n=37 n=32 n=25 n=22 n=10 n=3 N ** *** : : : p<0.05 p<0.01 p<0.001 ** *** *** *** 前 1 2 3 4 8 12 over12 週

Takagi, Y. et al.: JPEN. 1986; 10(2): 195-202 髙木 洋治: NST完全ガイド(編集/東口 髙志), 照林社 2005: p169-172 0 牡蠣、かに、ホタテ貝、牛肉、鶏肉、レバー類、 ナッツ類、かぼちゃの種 N:normal range

TPN時Zn投与量(60μmol/日)の根拠

■ 亜鉛について

※日本におけるTPN時のZn投与量

経口摂取の場合

参考

ASPEN(2012)1) ESPEN(Surgery)(2009)2) AMA(1979)3)4) 2.5~5mg/日 2.5~5mg/日 2.5~4.0mg/日

静脈投与の場合

亜鉛の補給源となる食品

血清基準値

80~130μg/dL

3.9mg(60μmol)/日

体内含有量

約2,000mg

市販製剤含有量

2~3(目安量のみ) 2~3(目安量のみ) 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量(mg/日) 推奨量(mg/日) 3~9 3~7 3~10 3~8 8 6 10 8 8 6 9 7 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。  監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342 乳幼児(0~11カ月)* 小 児(1~17歳)* 成 人(18~69歳)* 高齢者(70歳以上)

ジンクフィンガー

たん白質は通常何百個ものアミノ酸からなり、折りたた まれることによって安定でコンパクトな構造になる。 我々の細胞では、このたん白質の折りたたみを簡略化 するために亜鉛イオンがよく使われる。たん白質は、鎖 の中にある2つのシステインと2つのヒスチジンをお互 い接近させて亜鉛イオンをつかみ、その周りに堅く折り たたまれる。このようなたん白質は「ジンクフィンガー」 (zinc finger、亜鉛の指)と呼ばれる。20個から30個 の短いアミノ酸の鎖が、十分堅くて安定な構造を作り出 す。ジンクフィンガーは大変有用なので、我々が持つた ん白質の中に何千種類も見られ、その多くはDNA認識 に重要な役割を果たしている。

RCSB PDB Molecule of the Month by David Goodsell March 2007, doi:10.2210/rcsb_pdv/mom_2007_3 ジンクフィンガーの一例 亜鉛は20~40μmol/日の 投与でも欠乏症は改善する が、血漿レベルが正常に達し ないという症例が多くみられ たため、1日60μmol/日の投 与で検討した。 その結果、非投与群でみられ る低下傾向を防ぎ、ほぼ健常 域内を維持した。 血漿   値Zn

1)髙木 洋治: 静脈経腸栄養, 2003; 18(2): 70-78 2)Bums, DL. et al.: Nutrition. 1996; 12(6): 411-415

3)Takagi ,Y. et al.: JPEN. 1986; 10(2): 195-202

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Braga, M. et al.: Clin. Nutr. 2009; 28(4): 378-386 3)JAMA. 1979; 241(19): 2051-2054

(14)

血清基準値

68~128μg/dL

0.3mg(5μmol)/日

体内含有量

約100~150mg

市販製剤含有量

・欠乏症の主な症候は、骨や血管の異常、神経・精神発達遅延、貧血、白血球減少、ミエロパチーなどである。 ・セルロプラスミン(ceruloplasmin)、モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase)などの銅 たん白質、銅酵素の構成成分として存在し、鉄とともに造血機能に関与する。 ・TPN時の銅欠乏症はKarpel1)らの報告が最初であり、その後多くの報告がある。特にクロー ン病のような嘔吐、下痢、腸瘻など消化液喪失の多い患者では欠乏がよく見られる。 ・血漿銅値はTPN施行前では健常人値よりもむしろ高値であるが、投与しないと6週間以降に 健常人値を下まわる。これに対し1日5μmolの投与で、ほぼ健常人値に維持できる2)。年余に わたる症例でもこの量でほぼ健常人値に保たれる。 ・銅の排泄は主として胆汁を介して行われるため、胆汁うっ滞のときには過剰投与に気をつけ なければならない。 1日5μmolが推奨維持量と考えられる。ただし、肝障害や胆汁うっ滞をきたす状態下では銅の 排泄が障害され、むしろCuの過剰投与に注意が必要である。

Cu

銅の摂取推奨量

前 2 4 6 8 10 12 14 週 TPN n=27 99±18 mean±SD 健常人値 藤田 宗行: 外科と代謝・栄養, 1994; 28(2): 113-126 150 50 μg/dL 0 100

TPN時Cu投与量(5μmol/日)の根拠

銅欠乏症の症例報告(2011年~2014年)

■ 銅について

※日本におけるTPN時のCu投与量

銅欠乏による貧血

経口摂取の場合

銅は多くの食品に含まれており、健常人が通常の食事をしている限り欠乏することはないといわれているが、長期 間経口摂取ができていない場合、銅欠乏が生じ貧血が生じることを考慮する必要がある。銅欠乏は多くの報告が ある。その中でも2011年から2014年8月の間に栄養療法時における銅欠乏症に関する原著論文をまとめた。 TPN施行時の銅欠乏症は成人では鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、骨髄白血球系の成熟障 害などを惹起する。小児では骨変化が加わるのが特徴である。 銅は5μmol/日でも10μmol/ 日でもTPN施行6週間後にお ける血漿銅値、セルロプラスミ ン値の変動率に差がなかった ので、銅中毒の危険性を考慮し 5μmol/日の投与で検討した。 その結果、非投与群では経過と ともに減 少し、4 週 以 降では TPN施行前値に比べ14週ま で有意に減少した。銅投与群で は高カロリー輸液開始後2週ま でやや減少したもののその後 14週までほぼ横ばい状態の推 移を示した。 a a’ b c d e f g h b’ c’ d’ e’ f’ g’ h’ n=16 n=41 n=15 n=25 n=36 n=15 n=12 n=8 n=7 n=6 n=3 * ** n=22n=10 ** n=10 n=9 ** *** n=13 * 日本人の食事摂取基準 0.3(目安量のみ) 0.3(目安量のみ) 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量(mg/日) 推奨量(mg/日) 0.2~0.8 0.2~0.6 0.3~1 0.3~0.8 0.7 0.6 0.9~1 0.8 0.7 0.6 0.9 0.7 乳幼児(0~11カ月)* 小 児(1~17歳)* 成 人(18~69歳)* 高齢者(70歳以上) Cu5μmol/日投与群 Cu非投与群 髙木 洋治: NST完全ガイド(編集/東口 髙志), 照林社 2005: p169-172 Cu長期投与例における血漿Cu値の推移 血漿   値Cu 牡蠣、ほたるいか、かに、ココア、カボチャの種子、 ブラジルナッツ

参考

銅の補給源となる食品例

1)Karper, JT. et al.: Pediatrics. 1972; 80(1): 32  2)藤田 宗行: 外科と代謝・栄養, 1994; 28(2): 113-126

( )

a’-c’, d’, e’, f’, g’, h’, p<0.001 Paired t検定 e-e’, f-f’, g-g’, p<0.05, h-h’, p<0.001 Student t検定 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 vs 健常人値 栄養管理法 論 題 EN 石丸 啓,他:静脈経腸栄養,2012;27(3):941-944 EN 銅欠乏性貧血の一例 菊永 若江,他:西尾市民病院紀要,2012;23(1):79-80 TPN 短腸症候群にて長期中心静脈栄養管理中に発症した亜鉛、銅欠乏症貧血の1例 久保 孝文,他:日本腹部救急医学会雑誌,2013;33(4):759-762 EN 銅欠乏による汎血球減少症とESA療法低反応性を呈した維持血液透析患者の1例 中野 素子,他:日本透析医学会雑誌,2014;47(1):85-90 TPN 安井 敬三,他:神経治療学,2012;29(6):761-765 TPN 長期中心静脈栄養による銅欠乏により汎血球減少となった1例 岡野 智仁,他:内科,2012;110(5):857-860 EN 長期経管栄養中に発症した、銅欠乏による貧血・好中球減少症の1例 久保 徹,他:防衛医科大学雑誌,2012;37(3):210-214 EN 経腸栄養剤開始後に貧血、白血球減少症を発症した銅欠乏症の一例 ポラプレジンクの関与 旅 佳恵,他:薬事新報,2012;2754:15-18 松田 信作,他:ヒューマンニュートリション,2012;3(4):9-13 EN 経管栄養管理中に亜鉛サプリメントの長期摂取が誘因となり銅欠乏性貧血をきたした1例 稲葉 明子,他:臨床神経学,2011;51(6):412-416 TPN 胃全摘術後23年後に末梢神経障害,脊髄症,小脳失調,潜在的視神経症を呈した銅欠乏の1例 TPN 私のこの一枚 銅欠乏症と血球減少 内藤 健助:血液フロンティア,2011;21(3):381-385 Percutaneous Endoscopic Gastrostomy with Jejunal Extension(PEG-J)による長期

経管栄養中に発症した銅欠乏の1例 亜急性脊髄連合変性症の症状を呈し、MRIで後索と側索にT2高信号病変を認めた銅欠 乏性脊髄症の1例 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。  監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342 ASPEN(2012)1) ESPEN(Surgery)(2009)2) AMA(1979)3)4) 0.3~0.5mg/日 0.3~0.5mg/日 0.5~1.6mg/日

静脈投与の場合

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Braga, M. et al.: Clin. Nutr. 2009; 28(4): 378-386 3)JAMA. 1979; 241(19): 2051-2054

(15)

血清基準値

68~128μg/dL

0.3mg(5μmol)/日

体内含有量

約100~150mg

市販製剤含有量

・欠乏症の主な症候は、骨や血管の異常、神経・精神発達遅延、貧血、白血球減少、ミエロパチーなどである。 ・セルロプラスミン(ceruloplasmin)、モノアミン酸化酵素(monoamine oxidase)などの銅 たん白質、銅酵素の構成成分として存在し、鉄とともに造血機能に関与する。 ・TPN時の銅欠乏症はKarpel1)らの報告が最初であり、その後多くの報告がある。特にクロー ン病のような嘔吐、下痢、腸瘻など消化液喪失の多い患者では欠乏がよく見られる。 ・血漿銅値はTPN施行前では健常人値よりもむしろ高値であるが、投与しないと6週間以降に 健常人値を下まわる。これに対し1日5μmolの投与で、ほぼ健常人値に維持できる2)。年余に わたる症例でもこの量でほぼ健常人値に保たれる。 ・銅の排泄は主として胆汁を介して行われるため、胆汁うっ滞のときには過剰投与に気をつけ なければならない。 1日5μmolが推奨維持量と考えられる。ただし、肝障害や胆汁うっ滞をきたす状態下では銅の 排泄が障害され、むしろCuの過剰投与に注意が必要である。

Cu

銅の摂取推奨量

前 2 4 6 8 10 12 14 週 TPN n=27 99±18 mean±SD 健常人値 藤田 宗行: 外科と代謝・栄養, 1994; 28(2): 113-126 150 50 μg/dL 0 100

TPN時Cu投与量(5μmol/日)の根拠

銅欠乏症の症例報告(2011年~2014年)

■ 銅について

※日本におけるTPN時のCu投与量

銅欠乏による貧血

経口摂取の場合

銅は多くの食品に含まれており、健常人が通常の食事をしている限り欠乏することはないといわれているが、長期 間経口摂取ができていない場合、銅欠乏が生じ貧血が生じることを考慮する必要がある。銅欠乏は多くの報告が ある。その中でも2011年から2014年8月の間に栄養療法時における銅欠乏症に関する原著論文をまとめた。 TPN施行時の銅欠乏症は成人では鉄投与に反応しない貧血、白血球減少、好中球減少、骨髄白血球系の成熟障 害などを惹起する。小児では骨変化が加わるのが特徴である。 銅は5μmol/日でも10μmol/ 日でもTPN施行6週間後にお ける血漿銅値、セルロプラスミ ン値の変動率に差がなかった ので、銅中毒の危険性を考慮し 5μmol/日の投与で検討した。 その結果、非投与群では経過と ともに減 少し、4 週 以 降では TPN施行前値に比べ14週ま で有意に減少した。銅投与群で は高カロリー輸液開始後2週ま でやや減少したもののその後 14週までほぼ横ばい状態の推 移を示した。 a a’ b c d e f g h b’ c’ d’ e’ f’ g’ h’ n=16 n=41 n=15 n=25 n=36 n=15 n=12 n=8 n=7 n=6 n=3 * ** n=22n=10 ** n=10 n=9 ** *** n=13 * 日本人の食事摂取基準 0.3(目安量のみ) 0.3(目安量のみ) 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量(mg/日) 推奨量(mg/日) 0.2~0.8 0.2~0.6 0.3~1 0.3~0.8 0.7 0.6 0.9~1 0.8 0.7 0.6 0.9 0.7 乳幼児(0~11カ月)* 小 児(1~17歳)* 成 人(18~69歳)* 高齢者(70歳以上) Cu5μmol/日投与群 Cu非投与群 髙木 洋治: NST完全ガイド(編集/東口 髙志), 照林社 2005: p169-172 Cu長期投与例における血漿Cu値の推移 血漿   値Cu 牡蠣、ほたるいか、かに、ココア、カボチャの種子、 ブラジルナッツ

参考

銅の補給源となる食品例

1)Karper, JT. et al.: Pediatrics. 1972; 80(1): 32  2)藤田 宗行: 外科と代謝・栄養, 1994; 28(2): 113-126

( )

a’-c’, d’, e’, f’, g’, h’, p<0.001 Paired t検定 e-e’, f-f’, g-g’, p<0.05, h-h’, p<0.001 Student t検定 *p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 vs 健常人値 栄養管理法 論 題 EN 石丸 啓,他:静脈経腸栄養,2012;27(3):941-944 EN 銅欠乏性貧血の一例 菊永 若江,他:西尾市民病院紀要,2012;23(1):79-80 TPN 短腸症候群にて長期中心静脈栄養管理中に発症した亜鉛、銅欠乏症貧血の1例 久保 孝文,他:日本腹部救急医学会雑誌,2013;33(4):759-762 EN 銅欠乏による汎血球減少症とESA療法低反応性を呈した維持血液透析患者の1例 中野 素子,他:日本透析医学会雑誌,2014;47(1):85-90 TPN 安井 敬三,他:神経治療学,2012;29(6):761-765 TPN 長期中心静脈栄養による銅欠乏により汎血球減少となった1例 岡野 智仁,他:内科,2012;110(5):857-860 EN 長期経管栄養中に発症した、銅欠乏による貧血・好中球減少症の1例 久保 徹,他:防衛医科大学雑誌,2012;37(3):210-214 EN 経腸栄養剤開始後に貧血、白血球減少症を発症した銅欠乏症の一例 ポラプレジンクの関与 旅 佳恵,他:薬事新報,2012;2754:15-18 松田 信作,他:ヒューマンニュートリション,2012;3(4):9-13 EN 経管栄養管理中に亜鉛サプリメントの長期摂取が誘因となり銅欠乏性貧血をきたした1例 稲葉 明子,他:臨床神経学,2011;51(6):412-416 TPN 胃全摘術後23年後に末梢神経障害,脊髄症,小脳失調,潜在的視神経症を呈した銅欠乏の1例 TPN 私のこの一枚 銅欠乏症と血球減少 内藤 健助:血液フロンティア,2011;21(3):381-385 Percutaneous Endoscopic Gastrostomy with Jejunal Extension(PEG-J)による長期

経管栄養中に発症した銅欠乏の1例 亜急性脊髄連合変性症の症状を呈し、MRIで後索と側索にT2高信号病変を認めた銅欠 乏性脊髄症の1例 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。  監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342 ASPEN(2012)1) ESPEN(Surgery)(2009)2) AMA(1979)3)4) 0.3~0.5mg/日 0.3~0.5mg/日 0.5~1.6mg/日

静脈投与の場合

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Braga, M. et al.: Clin. Nutr. 2009; 28(4): 378-386 3)JAMA. 1979; 241(19): 2051-2054

(16)

Fe

鉄の摂取推奨量

■ 鉄について

・欠乏症の主な症候は、貧血、倦怠、免疫能低下などである。 ・古くから貧血との関連でよく研究されているが、TPN施行時のルーチン投与に関しては、投与しなくて も容易に欠乏状態には陥らないことや、投与による副作用や製剤の安定性の面より、ASPENガイドラ イン(2002年)では静脈的推奨量を決めていなかった。その後、2012年に、鉄の欠乏症がなく明ら かな出血がない症例には、脂肪を含有しないPNに鉄製剤を1~5mg/日加えるとの見解が示されて いる1)。TPNを必要とする患者では貧血に陥っている患者も多く(成人で29%2)、55%3)、小児で 22%4))、また採血による鉄喪失も無視できない。 ・少量(塩化第二鉄10mg、鉄として2mg/日程度)の鉄投与はとくに副作用の心配はなく、ヘモグロビンの上 昇に有用であり、投与を推奨しているものもある5)。筆者らは成人1日2mg(35μmol)を推奨量としている。 ・鉄過剰の指標のひとつとして血清フェリチンがあるが、腫瘍、肝障害、慢性炎症、感染症、血球貪食症候 群などにおいても高値となる。そのため、血清フェリチンのみで鉄過剰を判断するのではなく、複数回の 測定を行うことと、輸血歴その他の検査所見を加味して総合的に判断することが重要である。

TPN時Fe投与量(35μmol/日)の根拠

(食品の鉄の吸収率はヘム鉄とそれ以外の鉄で異なり、 ヘム鉄の吸収率は2~3倍程高い。)

経口摂取の場合

クエン酸第一鉄ナトリウム (市販薬例:フェロミア) 100~200mg 105~210mg 100mg 12~24mg(1歳未満) 18~60mg(1~5歳) 60~90mg(6~15歳) 硫酸鉄(徐放錠) (例:フェロ・グラデュメット) 含糖酸化鉄(例:フェジン) 40~120mg 微量元素含有高カロリー 輸液(例:エルネオパ) 2mg フマル酸第一鉄(徐放剤) (例:フェルムカプセル) 溶性ピロリン酸第二鉄 (例:インクレミンシロップ) 日本人の食事摂取基準 0~5カ月 6~11カ月 3.5 0.5(目安量のみ) 0.5(目安量のみ) 男性 女性 男性 女性 推定平均必要量(mg/日) 推奨量(mg/日) 3~8.5 3~7 (月経なし) 8.5~10 (月経あり) 4.5~11.5 4.5~10 (月経なし) 10.5~14 (月経あり) 6~6.5 5~5.5 (月経なし) 8.5~9 (月経あり) 3.5 7~7.5 6~6.5 (月経なし) 10.5 (月経あり) 5 4.5 6 5 7 6 小 児(1~17歳)* 乳幼児 成 人(18~69歳)* 高齢者(70歳以上) わが国で使用しうる鉄剤 1日用量(鉄として) 参考 経 口 用 静注用

血清基準値

男:50~200μg/dL

女:40~180μg/dL

2mg(35μmol)/日

体内含有量

約3,500~4,000mg

市販製剤含有量

正常 低下 正球性貧血 大球性貧血 小球性貧血 正常または増加 増加 正常または増加 正常または低下 低下 低下 正常 健常 貧 血 の な い 鉄欠乏 鉄欠乏性貧 血 悪性腫瘍 に 伴 う 貧 血 リ ウ マ チ ・ 炎症 サ ラ セ ミ ア 異常 血 色素 悪性腫瘍 に 伴 う 貧 血 リ ウ マ チ ・ 炎症 溶 血 性貧 血 骨髄異形成症候群 再生不良性貧 血 悪性貧 血 巨赤芽球性貧 血 増加 増加 ヘモグロビン 血清フェリチン 総鉄結合能:TIBC 正常または低下 網状赤血球数 低下 増加 正常または低下 増加正常または低下増加 正常または低下 低下 低下 鉄剤の適正使用による貧血治療指針改定[第2版]より抜粋 各製品添付文書より(2016年6月現在) High:輸液施行前値が健常人値より高値 Nomal:輸液施行前値が健常人値 Low:輸液施行前値が健常人値より低値 髙木 洋治: JJPEN. 1988; 10(3): 374-378 - 炎症性腸疾患のTPN症例において ・7/8例で血清鉄の低値を認めたこと ・TPN施行前にも鉄欠乏性貧血患者が多いこと ・種々の臨床的検査のために頻回の採血を要 すること から鉄投与が必要と考えた。投与量は1日の生理 的損失量と採血量を考慮し、2mg(35μmol)/日 とした。 1日量2mg(35μmol)を毎日投与することにより血中濃度が維持できることが示され、この量を 成人推奨量とした。ただし、鉄が過剰に蓄積しやすいC型慢性肝炎などの患者では注意が必要である。

※日本におけるTPN時のFe投与量

250 200 150 100 50 0 0 1 2 3 4 6 8 10 Weeks High(n=3) Normal(n=9) Low(n=23) 健常域内 μg/dL

鉄欠乏性貧血診断のためのフローチャート

静脈栄養施行(微量元素製剤投与)時の 血漿Fe値の変動 血漿   値Fe レバー、魚介類、肉類

参考

鉄の補給源となる食品例 *各年齢ごとの詳細は、下記でご確認ください。  監修/菱田 明・佐々木 敏: 日本人の食事摂取基準(2015年版), 第一出版: p286-342

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Forbes, GN. et al.: Nutrition. 1997; 13: 941-944 3)Khaodhiar, L. et al.: JPEN. 2002; 26(2): 114-119 4)Michaud, L. et al.: Clin. Nutr. 2002; 21(5): 403-407 5)Okada, A. et al.: Surgery. 1976; 80: 629-635

ASPEN(2012)1) ESPEN(Surgery)(2009)2) AMA(1979)3)4) 1~5mg/日 1.0~1.2mg/日

静脈投与の場合

1)Vanek, VW. et al.: Nutr. Clin. Pract. 2012; 27(4): 440-491 2)Braga, M. et al.: Clin. Nutr. 2009; 28(4): 378-386 3)JAMA. 1979; 241(19): 2051-2054

参照

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