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「住民発意による土地利用規制が及ぼす影響の分析」

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住民発意

住民発意

住民発意

住民発意による

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による土地利用規制

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土地利用規制

土地利用規制が

土地利用規制

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分析

分析

分析

<要 旨> 地域における様々な住民ニーズを土地利用規制に的確に反映するため、建築協定や地区計画 などの詳細な上乗せ規制の活用や、住民等の発意による規制の策定が推進されている。詳細な 上乗せの土地利用規制の策定は外部性コントロールに効果があるとされる一方、住民発意によ る上乗せ規制の策定は必ずしも社会的効用を高めるとは言い切れないという指摘もある。 本稿では、建築協定と地区計画制度が当該地域及びその周辺の地価にどのような影響を及ぼ しているかについて、横浜市の住居系用途地域の区域を対象に実証分析を行い、住民発意によ る土地利用規制がかけられた地区内はおおむね地価が上昇するものの、取引費用の存在や規制 による土地利用の硬直化によって地価が下がる可能性があることを示した。また、規制手法に よっても地価への影響は異なり、壁面後退、最高高さ規制については地価が最大化する規制水 準が存在する可能性がある一方、最低敷地規模については、結果として地区の効用を高めてい ない可能性があることを示した。 これらの結果から、既存の規制について定期に見直す機会を設けることや、住民発意で土地 利用規制を策定する場合であっても、その策定過程においては、地域における外部性コントロ ールの適正水準や住宅市場動向の調査を行うことが必要であると考えられる。

平成 24 年 2 月

政策研究大学院大学 まちづくりプログラム

MJU11011 杉 浦 美 奈

(2)

第 第 第 第 1111章章章章 はじめにはじめにはじめにはじめに... 1 第 第 第 第 2222章章章章 住民発意住民発意による住民発意住民発意によるによるによる土地利用規制土地利用規制土地利用規制の土地利用規制のの現状の現状現状現状 ... 2 2.1 2.1 2.1 2.1 土地利用規制 土地利用規制土地利用規制土地利用規制のののの概要概要と概要概要ととと根拠根拠根拠根拠 ... 2 2.2 2.2 2.2 2.2 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制ののの現状現状現状現状 ... 3 第 第 第 第 3333章章章章 住民発意住民発意住民発意住民発意によるによる土地利用規制によるによる土地利用規制土地利用規制に土地利用規制にに関に関する関関するするする理論分析理論分析理論分析 ... 5理論分析 3.1 3.1 3.1 3.1 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制ののの根拠根拠根拠根拠 ... 5 3.2 3.2 3.2 3.2 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制ののの非効率性非効率性非効率性非効率性 ... 5 3.3 3.3 3.3 3.3 仮説仮説仮説仮説 ... 7 第 第 第 第 4444章章章章 実証分析 実証分析実証分析実証分析のののの方法方法方法方法 ... 7 4.1 4.1 4.1 4.1 実証分析実証分析実証分析実証分析のののの対象対象対象対象 ... 8 4.2 4.2 4.2 4.2 推計推計推計推計モデルモデルモデルモデル ... 9 4.3 4.3 4.3 4.3 使用使用使用使用するするするするデータデータデータデータ ... 10 第 第 第 第 5555章章章章 分析結果 分析結果分析結果分析結果とととと考察考察考察考察 ... 12 5.1 5.1 5.1 5.1 推計 推計推計推計モデルモデルモデルモデル 1111の結果ののの結果結果結果ととと考察と考察考察考察 ... 12 5.2 5.2 5.2 5.2 推計 推計推計推計モデルモデルモデルモデル2222のの結果のの結果結果結果とととと考察考察考察考察 ... 15 第 第 第 第 6666章章章章 まとめまとめまとめまとめ ... 18 6.1 6.1 6.1 6.1 政策提言政策提言政策提言政策提言 ... 18 6.2 6.2 6.2 6.2 今後今後今後今後のののの課題課題課題課題 ... 19

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1

はじめに

はじめに

はじめに

はじめに

我が国の都市における土地利用については、都市計画法に基づく地域地区の指定や建築基準 法の集団規定による規制を根幹の制度としつつ、建築協定や地区計画などの詳細な上乗せ規制 制度が設けられている。また、今日の成熟化した社会において、住環境への関心の高まりや建 築様式の多様化を背景に、地域における様々な住民ニーズを的確に反映するためのシステムと して、都市計画等の策定過程における住民参加機会の充実や、詳細な上乗せ規制を住民等の発 意により策定する手続きが整備されてきている。 これまで、土地利用規制における詳細な上乗せ規制については、ヘドニック・アプローチに より地価関数を推定して規制による地価上昇効果を計測することにより、規制による外部性の コントロール効果を予測し、立証しようとする研究がなされてきている。肥田野・亀田(1997)

iにおいては、緑や建築物の外部性について、また Gao and Asami(2001)iiにおいては、日照時

間や公園に接していることなどの外部性について、東京都世田谷区を対象とした計測を行い、 外部性コントロールによる地価への影響を実証している。また、谷下雅義ほか(2009)iiiにおいて は、同じく東京都世田谷区を対象に建築協定や地区計画等による土地利用規制が戸建て住宅価 格に与える影響について計測し、規制策定によって長期的に地区の物的な住環境の維持改善に 寄与するならば、住宅価格を引き上げる可能性があると結論付けている。 土地利用規制の策定過程における住民参加や住民発意による上乗せ規制の策定については、 その手法や定性的な効果についての事例研究が多数なされている。一方、日本よりも分権化が 高度に進んだアメリカにおいては、住宅モラトリアムによって住宅価格が高騰し、結果的に中・ 低所得階層の世帯が規制コストを負担させられていることがミラー他(1995)ivにおいて指摘さ れている。また Glaeser 他(2009)vは、ボストンにおける住宅価格の向上は規制によって引き起 こされたものであり、地域住民は自らの資産価値の向上のため最低敷地規模規制やその他の規 制を厳しくかけようとする傾向にあること、Zabel 他(2011)viは、その地域の持つコミュニティ・ ゾーニング・パワー(地域住民の力の強さ)によって、最低敷地規模規制による住宅価格の上 昇の効果が異なり、その効果は地区内だけでなく隣接する地区にまで及ぶ可能性があることを 指摘している。また日本においても、瀬下(2010)viiは、地方自治体が既存住民の利益を最大 化しようとする結果、開発抑制的な政策がとられる可能性があることについて、理論分析によ り指摘している。 このように、詳細な上乗せの土地利用規制の策定は外部性コントロールに一定の効果が認め られることが指摘される一方、土地利用規制の策定過程における住民参加や住民発意による上 乗せ規制の策定は経済学的な観点からみた場合に必ずしも社会的効用を高めるとは言い切れな いことが指摘されており、後者について日本において実証した研究はあまり見当たらない。 そこで、本稿では、横浜市の住居系用途地域の区域を対象とし、住民発意による土地利用規 制手法である建築協定と地区計画制度に焦点を絞り、これらの規制が当該地域及びその周辺の 地価にどのような影響を及ぼしているかについて分析を行った。その結果、住民発意による土 地利用規制がかけられた地区内はおおむね地価が上昇すること、しかしそれらは面積や区画数 が増えると減少する傾向にあることから、取引費用の存在に大きく依存している可能性がある

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2 ことを示した。また、規制が策定されてからの経過年数が長くなるほど地価が下がる傾向にあ ることから、ある時点で固定された規制内容が将来にわたる効用については必ずしも高めてい るとは限らない可能性があることについても示した。さらに周辺の地価についても変動をもた らすことものの、その影響は地域の状況によっても異なる可能性があることを示した。 また、規制手法によっても地価への影響は異なり、建蔽率や容積率については、規制値が大 きいほど地価が高いことから上乗せ規制としての効果は確認できなかったが、壁面後退、最高 高さ規制については、地価が最高となる規制水準が存在する可能性があることを示した。一方、 最低敷地規模については、ほとんどの地域で現状以上の敷地分割を防止するために設定される ものの、結果として地区の効用を高めていない可能性があることを示した。 本稿の構成は以下のとおりである。まず、第 2 章において政策の背景を整理し、第 3 章にお いて理論分析を試みる。第 4 章では理論分析を踏まえた仮説を検証するための実証分析の方法 を提示し、第 5 章で実証分析の結果とそれに基づいた考察を行い、第 6 章ではまとめとして政 策提言と今後の課題について整理している。

2

住民発意

住民発意

住民発意

住民発意による

による土地利用規制

による

による

土地利用規制

土地利用規制

土地利用規制の

の現状

現状

現状

現状

本章では、まず、日本の土地利用規制制度の概要とその政策根拠について、経済学的な観点 から整理する。その上で、住民発意による土地利用規制が必要とされるに至った背景から、現 在の導入状況までを概観する。 2.1 土地利用規制 土地利用規制土地利用規制土地利用規制ののの概要の概要と概要概要ととと根拠根拠根拠根拠 現在、建築物に関する規制は主として建築基準法において定められており、大きく分けて構 造等の安全性確保を目的とした「単体規定」と、周辺環境との調整、つまり外部不経済の抑制 対策を目的とした「集団規定」がある。集団規定については、都市計画法に基づき地域地区等 を都市計画として決定し、具体の建築制限については建築基準法に基づいて執行される形式と なっている。 浅見(1994)viii によれば、土地利用規制の手法としては、地区の詳細な計画を提示し敷地ご とにその利用の仕方を規定する計画規制手法と、裁量性を許さない方法で最低限の条件を一律 に規定する一般規制手法があり、地域地区は後者にあたるとされている。この一般規制手法の 長所は、計画策定に要する時間が短く、変化の激しい市街地にも適用可能であることであるが、 短所は、策定地区内の住民等の権利者の意向を十分に反映させることができないことであると されている。また一般規制手法は、その運用上、比較的大きな地区を一つの用途地域として設 定することとなるが、大きな地区には様々な土地利用が含まれている可能性が高く、現状の土 地利用をほぼ追認することになれば、規制自体は比較的緩やかなものにならざるをえなくなる。 そのため、日本の土地利用規制は、土地の利用方法に対する規制力が緩やかなことが指摘され ている。それに対し、形態制限の方が土地利用規制として大きな影響力を持つと考えられるも のの、その数値の妥当性については確固とした根拠があるわけではないとも指摘されている。

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3 そもそも、土地利用に対する公的介入の根拠については、金本(1997)ixによれば、騒音や大 気汚染等の外部不経済の制御や、街路等の地方公共財に関する近隣外部性や地方公共サービス の負担に関する外部性にあるとされている。これらの外部性対策としては、ピグー税を課すこ とが最も効率的であると考えられるものの、日照や美観といった近隣外部性については人によ ってその価値の評価が異なることから、ファースト・ベストのピグー税を課すことは不可能で あろうとされている。 ピグー税による対策が不可能であった場合の方法としては、当事者間の交渉にまかせる方法 や直接的な土地利用規制を課す方法がある。このうち前者が機能するための前提を定義したの が、コースの定理である。コースの定理とは、権利の配分が明確であれば、どのような配分で あるかにかかわらず当事者間の交渉によって「パレート最適」な状態が達成できるというもの で、交渉の当事者が合理的であり、 ・交渉費用がかからない ・双方が完全な情報を持っている ・交渉によって達成された合意を双方が守ることを保証できる という仮定がみたされていれば、コースの定理が成立することはほぼ自明であるとされている。 むしろ、福井(2007)xにおいては、直接規制やピグー税によらねばならないのは、コースの定 理の前提となるような当事者による交渉で解決を図ることが困難である場合に限るべきである とされている。そのため、もし当事者の交渉によって建築紛争などの外部性に起因する問題を 事前に解決できるのであれば、当事者間の交渉に委ねる方が社会的な便益は大きくなると考え られる。しかし現実には、交渉費用がかからないということはなく、また双方が完全な情報を 持っているということも、さらには合意を双方が守ることを保証することは難しい。そのため、 現時点においては直接的な土地利用規制によらざるを得ないものと考えられる。 2.2 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制のの現状の現状現状現状 (1) 土地利用規制における住民参加の経緯 従来、日本における土地利用規制は地域地区による一般規制手法が採用され、その発案主体 については政府とされてきた。しかし、政府は地域ごとに異なったニーズを正確に把握するこ とはできないため、政府による一般規制によっては地域の外部性を適切にコントロールするこ とは困難であると考えられる。このような地域地区による土地利用規制制度の短所を補うため、 一般規制手法に上乗せする計画規制手法として地区計画制度が整備されるとともに、住民の意 見を反映させるためのシステムの整備や、規制の発案主体に係る分権化が図られてきた。今日 では、都市計画区域マスタープランや市町村マスタープラン、都市計画道路等の都市計画区域 や市域全域にわたる方針等の作成にあたって広く住民からの意見を募るなど都市計画の策定過 程において住民参加の機会が設けられる他、住民自身が発案主体となって土地利用規制の案を 策定できるよう制度が整備されている。 そもそも都市計画法は 1968 年の制定当初から、都市計画の案の作成の際の公聴会の開催等 (第 16 条)、都市計画案の公告・縦覧と意見書の提出(第 17 条)を規定していたが、1980 年 改正において地区計画制度が創設される際に、地区計画等の案作成における土地所有者等利害

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4 関係者の意見聴取と手続きの条例委任(第 16 条 2 項)が規定された。その後、1992 年改正に おいては、市町村の都市計画に関する基本的な方針が創設と住民意見の反映(第 18 条の 2 第 2 項)が義務づけられ、第一次地方分権改革によって 1998 年に都市計画が自治事務と整理される とともに市町村決定の都市計画が拡大し、1999 年には市町村都市計画審議会が都市計画法に位 置づけられ、同年の政令改正によって都市計画審議会の委員を「住民」から任命できることと された。さらに、2000 年改正においては、地区計画等の決定・変更、案の内容の申し出制度(第 16 条第 3 項)が創設されるとともに、2002 年改正においては、都市再生特別措置法の制定と併 せて、都市計画提案制度(第 21 条の 2)が創設されるに至っている。 (2) 地区計画の概要と現状 地区計画は、都市計画法第 12 条の 4 に基づき定められる計画で、当該地区計画の目標、当該 区域の整備、開発及び保全に関する方針のほか、地区整備計画において道路等の地区施設や建 築物等の用途の制限、容積率の最高限度又は最低限度、建蔽率の最高限度、敷地面積又は建築 面積の最低限度、壁面の位置の制限、高さの最高限度又は最低限度等について定めることがで き、地区計画の定められた区域においては、同法第 58 条の 2 に基づき建築等の届出等の義務が 生じる他、建築基準法第 68 条の 2 に基づき、条例において地区計画で定められた内容を制限と して定めることができることとされている。また、地区計画の特徴として、都市計画法第 16 条第 2 項に規定する手続条例に基づき住民等が地区計画等の決定・変更、案の内容の申し出が できることとされており、地域住民の参加により規制を策定することを想定した仕組みとなっ ている。なお、全国における地区計画の策定件数は 5,508 地区、面積は 133,652ha1に至っており、 手続条例は全国 943 市町村で制定済み2である(いずれも平成 20 年度末時点)。 (3) 建築協定の概要と現状 一方、規制によらず、土地所有者等による契約により、外部不経済を制御しようとする制度 として、建築協定がある。建築協定は、建築基準法第 69 条に基づき、土地の所有者等が建築物 の敷地、位置、構造、用途、形態、意匠等について協定を契約を締結することができるもので、 その締結に際し、公的主体である特定行政庁がこれを認可することにより、契約に通常の契約 には発生しない第三者効を付与して、その安定性・永続性を保証し、住民発意による良好な環 境のまちづくりを促進しようとする制度であり、建築基準法制定当初から規定されている。こ の建築協定の法的性格については、長谷川(2005)xiによれば、私法上の契約の一種とみる説(通 説・判例)と、準条例的な性格をもつ制度とみる説とに大別できるとされているが、建築協定 の運営については、住民の主体的・自発的な取り組みが必要となり、ほとんどの地区において、 
区域内の住民による「建築協定運営委員会」を設け、建築計画の審査や建築工事中・完了後の 物件のチェック、違反があった場合の措置、啓発活動
等を自律的に行われている。
 1 都市計画年報による。 2 社会資本整備審議会都市計画・歴史的風土分科会都市計画部会第 11 回都市計画制度小委員会資料 2-参考 2 による。

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5

3

住民発意

住民発意

住民発意

住民発意による

による

による

による土地利用規制

土地利用規制に

土地利用規制

土地利用規制

に関

関する

する

する理論分析

する

理論分析

理論分析

理論分析

ここまで、現在、ピグー税ではなく直接的な規制として土地利用規制が運用されている一方、 策定主体の分権化が進みつつあることについて述べてきた。これからは、住民発意により土地 利用規制が策定されることの効率性について、考察することとする。 3.1 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制のの根拠の根拠根拠根拠 まず、一般的には、住民は外部性を受ける側・及ぼす側の双方になり得、それぞれに異なっ た効用水準を有しているものと考えられる。 もし住民が同じような効用水準を有していれば、多くの住民にとって効用が最大化されるよ うな水準に規制を設定することが地域の効用水準を最も高めることから、最も効率的に外部性 がコントロールされている状態となり、市場でも評価され地価が最も高くなると考えられる。 そのため、図 1 に示すとおり、規制水準がより緩く設定されても、また逆により厳しく設定さ れても、地価も下落すると考えられる。 図 図図 図 1 規制強度規制強度規制強度規制強度とととと地価地価地価の地価ののの関係関係関係関係 政府が規制の発案主体である場合、地域住民の効用水準を正確に把握できないことから、地 価を最大化する水準に規制値が設定されない可能性が高い。一方、地域住民が規制の発案主体 である場合、地域住民は自らの外部性については情報を完全に把握していることから、地価を 最大化する水準に規制値が設定される可能性が高いと考えられる。 このような場合においては、地域住民が効用最大化行動を取ることが地価の最大化、すなわ ち地域全体の効用最大化につながることから、地域住民どおしの合意が成立していれば、わざ わざ規制として設定する必要性は特段考えられない。しかし、中には少数の違った効用を持つ 住民が存在する可能性や、合意が完全に履行される保証がないことから、合意が破られること を防ぐことが規制として設定することの根拠となると考えられる。 3.2 住民発意 住民発意住民発意住民発意によるによるによるによる土地利用規制土地利用規制の土地利用規制土地利用規制のの非効率性の非効率性非効率性非効率性 上述のとおり、住民発意による土地利用規制は、地域全体の効用を最大化できる規制である 地価 規制の強さ 最も効率的な規制水準

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6 可能性が高いと考えられる。しかし、実際の運用にあたっては、以下のような非効率が生じて いることから、必ずしも地域全体の効用最大化にはつながらないものと考えられる。 (1) 合意形成に係る取引費用の存在 厳密には、住民一人ひとりの効用が最大化する規制水準は異なるため、合意形成などに係る 取引費用が存在し、地域住民全員にとって最適な水準の実現は難しいと考えられる。しかし、 建築協定では全員の、地区計画でも一定割合以上の合意が必要とされることから、住民どおし の意見が対立した場合には、話し合い等による妥協によって全員または一定の合意の得られた 水準で規制値は決定されることとなる。 このようにして定められた規制水準は、地域の効用を最大化する水準よりも緩くなる可能性 が高い。そのため、取引費用が存在しない場合に比べ、地価が低下する可能性がある。 (2) 詳細な直接規制による土地利用の硬直化・最有効利用の阻害 直接的な土地利用規制は、ピグー税と異なり物理的限界値を詳細かつ直接的に定めることに よって、外部不経済の発生を抑える手法である。そのため、将来的に当該外部不経済を他の方 法で取り除けたとしても、引き続き規制として機能し、土地利用を硬直化させる可能性がある。 また、住民発意による規制の策定には、規制策定時点に当該地域に居住する既存住民しか参 加することができない。既存住民は、自らが置かれている状況に即したニーズは把握できるも のの、当該地域に将来居住する可能性のある潜在的な住民のニーズについては十分な情報はな いことから、潜在的住民のニーズは規制に反映されない可能性が高い。 そのため、規制の策定によって、土地利用の硬直化や将来的な土地の最有効利用が阻害され、 市場における評価が下がり、地価の下落につながる可能性も考えられる。 (3) 既存住民による供給制限インセンティブの可能性 既存住民は現時点において地域における唯一の土地供給者であることから、当該住宅地が密接 な代替財が存在しないような住宅地である場合には、図 2 に示すように、住宅の需要曲線が垂 直に近い形状をしていると考えられるため、供給制限を行うことで大幅な地価の上昇による効 用の増大を図ることができる可能性がある。このため、既存住民には、直接的な土地利用規制 が供給制限として機能することを利用し、あえて供給制限を行うことで地域の地価を上昇させ ようとする、一種のカルテルのような状況を作り出そうとするインセンティブが存在する可能 性も考えられる。 その結果、密接な代替財が存在しない住宅地においては規制の強度を緩める方が将来的な最 有効利用の可能性は高まるような場合であっても、潜在的住民ニーズを把握していない既存住 民は規制の強度を強めて供給制限を図ろうとする可能性があると考えられる。

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7 図 図 図 図 2 供給制限供給制限供給制限による供給制限によるによるによる既存住民既存住民既存住民の既存住民の効用のの効用効用効用のののの変化変化変化 変化 (4) 規制のスピルオーバーの可能性 ある地域に限って土地利用規制を変えることが、周辺地区にも影響を与え、周辺の市場を歪 める可能性が考えられる。具体的には、外部性コントロールの効果がスピルオーバーし、周辺 地域の環境改善にも寄与している可能性がある一方、ある規制地区内にとって効用を最大化す る行為によって、周辺に負の外部性をもたらし、効用を下げている可能性も考えられる。 3.3 仮説仮説仮説仮説 このように、住民発意による土地利用規制が上乗せされた地域は、行政が定めた規制だけが かかっている地域よりも地価が高くなる可能性が高いものの、必ずしも最大化が図られている とは限らないと考えられる。そこで、以下の仮説を設定し、実証分析を行うこととする。 ① 面積が広い地域や区画数が多い地域の方が、合意形成にかかる取引費用が大きくなるこ とから、地価が下落するのではないか。 ② 規制策定からの経過年数の長い地区の方が、外部性コントロールの効果よりも直接規制 による土地利用の硬直化や将来的な最有効利用の阻害などの弊害の方が大きくなり、地 価が下落するのではないか。 ③ 規制地区の周辺地区にも影響を及ぼすことで、社会的効用を低下させている場合がある のではないか。

4

実証分析

実証分析の

実証分析

実証分析

の方法

方法

方法

方法

本章では、住民発意による土地利用規制が必ずしも効用を最大化しないことを示した前章の 理論分析を検証するための実証分析の方法について述べる。 価格 価格 住宅供給量 住宅供給量 P* P’ Q* Q’ P* P’ Q* Q’ 密接な代替財が存在する場合: 住宅供給量を Q*か Q’に制限することで価格 は P*から P’に上昇するものの、既存住民の 効用(斜線部分)は減少する可能性が高い。 密接な代替財が存在しない場合: 住宅供給量を Q*か Q’に制限することで価格 は P*から P’に上昇し、既存住民の効用(斜 線部分)も大幅に増加する可能性が高い。 D D S S

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8 実証分析にあたっては、資本化仮説に基づき、環境改善の便益は地価の上昇に反映される3 とを前提としたヘドニックアプローチによる地価関数の推計に基づいて行うこととする。 4.1 実証分析実証分析実証分析実証分析のののの対象対象対象対象 まず、対象としては、横浜市の住居系用途地域の定められている地域において、平成 23 年 1 月時点で定められている建築協定と地区計画とする。 横浜市における建築協定の策定経緯については、前述の長谷川(2005)によれば、1957 年(昭 和 32 年)にすでに建築協定条例が制定されていたものの、建築協定の認可件数が伸び始めたの は 1970 年代以降であり、横浜市に大量の人口が流入し、様々な住環境の悪化などの都市問題が 発生した時期と一致する。1992 年(平成 4 年)にピークを迎え、以降は微減となっており、現 在は 184 地区(平成 23 年 1 月時点)となっているが、それでも全国の都市の中で策定数が最も 多い4。協定の内容については、用途規制が最も多く、次いで最低敷地面積や敷地分割の禁止、 高さ規制、外壁後退が続いている。 地区計画の策定状況については、昭和 59 年に第 1 号が策定されて以降、地区数は増え続けて おり、現在 94 地区(平成 23 年 1 月時点)となっている。市は地域主体による地区計画案の策 定を推進しており、94 地区のうち 21 地区が住民発意によるもの、そのうちの 14 地区が住居系 用途地域におけるものとなっている5。長谷川(2005)によれば、近年では、建築協定の代わり に地区計画を定めようとする地区も増えているようであり、その理由として、建築協定には住 民による自律的な組織が運用せねばならないために財政不足等の弱点があるものの、地区計画 は市町村が策定・運用することから、建築協定の弱点を補うことができることを挙げている。 また、1998 年の建築基準法改正によって建築確認・検査業務の民間開放が行われたことによっ て、これまで行政指導に依存していた建築協定の運用が不可能となるため、地区計画に移行し ようとする地区が増えていることが挙げられている。 図 図図 図 3 横浜市横浜市横浜市横浜市におけるにおけるにおけるにおける地区計画策定件数地区計画策定件数地区計画策定件数地区計画策定件数のののの推移推移推移推移 3 金本(1997)による。 4 横浜市都市整備局(2009)による。 5 地区数については、横浜市都市整備局ホームページによる。 0 2 4 6 8 10 12 S59 S61 S63 H2 H4 H6 H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 地区数 地区数 地区数 地区数 年度 年度年度 年度 策定された地区計 画数(旧再開発地 区計画、旧住宅地 高度利用地区計画 を含む) うち住民発意によ るもの

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9 4.2 推計推計推計推計モデルモデルモデルモデル 地区計画・建築協定の策定による効果を実証するにあたって、単年度の地価を被説明変数と した分析を行った場合、その結果は規制による効果なのか、公示地価の各地点がもともと有し ている特性によるものであるのかの分別が難しいという問題が生じる。今回の分析の焦点はあ くまで規制がかけられたことによる効果を見ることにあるため、規制実施後の効果を抽出する 必要がある。規制実施後の効果を抽出する方法としては、DID 分析を用いることも考えられる が、今回対象とする建築協定及び地区計画は地区ごとに策定年度が異なるため、横浜市域全体 を対象とする場合には、明確にいつの時点を政策実施前とし、いつの時点を政策実施後とする かの定義が難しい。そこで今回は、平成 9 年以降平成 23 年までの 15 年間のパネルデータを作 成し、固定効果モデルによる推計を実施することとした。固定効果モデルの採用により、公示 地価の各地点が有する観察できない特性の影響を除去した上で、DID 分析と同様に規制実施の 効果を抽出することが可能となる。 推計モデルについては、以下の2つのモデルを設定した。推計モデル 1 は建築協定または地 区計画の区域内及びその周辺の地価について、取引費用や規制の硬直化がどのように影響する かを分析することを目的とし、推計モデル 2 は特に規制手法に違いによる効果に着目して、地 区計画において定められている規制ごとの影響を分析することを目的としている。 ①推計モデル 1      _    _     :公示地価の対数値 :コントロール変数 :建築協定区域内ダミー _:建築協定から lm 以内ダミー :建築協定の特性 :地区計画区域内ダミー _:地区計画から lm 以内ダミー :地区計画の特性 :固定効果 :誤差項 i:公示地価ポイント t:年次 ②推計モデル 2      _ _ _ ! _! _"#   :公示地価の対数値 :コントロール変数 :建築協定区域内ダミー _:地区計画・建蔽率 _:地区計画・容積率 _ !:地区計画・最低敷地規模 _!:地区計画・壁面後退 _"#:地区計画・最高高さ :固定効果 :誤差項 i:公示地価ポイント t:年次

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10 4.3 使用使用使用使用するするするするデータデータデータデータ (1) 推計モデル 1 被説明変数については、公示地価(円/㎡)の対数値()とした。 説明変数については、建築協定の区域内であるかどうかを表す建築協定区域内ダミー()、 建築協定区域からの距離を表した建築協定から lm 以内ダミー(_)のほか、建築協定の 特性による違いをみるため、区画数、面積、公告日からの年数や青葉区ダミーなど()と建 築協定区域内ダミーの交差項を作成して用いた。なお、青葉区は建築協定の数が市内の 4 分の 1 を占めるほか、平成 19 年度より区役所に住民発意のまちづくりの支援機能が設置るxiiなど行 政の執行体制にも違いがあることから、選定したものである。また、地区計画についても同様 に、地区計画区域内ダミー()、地区計画から lm 以内ダミー(_)のほか、地区計画 の特性を表す住民発意ダミー、面積、公告日からの年数、青葉区ダミーなど()と地区計画 区域内ダミーの交差項を作成して用いた。 (2) 推計モデル 2 被説明変数については、モデル1と同様、公示地価(円/㎡)の対数値()を用いた。 説明変数については、地区計画で定められている建蔽率(_)、容積率(_)、最 低敷地規模(_ !)、壁面後退(_!)、最高高さ(_"#)のそれぞれを説明変数と して用いた。 なお、通常のヘドニックアプローチにおいては、都心からの距離や前面道路幅員などの様々 な説明変数を入れるものの、今回採用した固定効果モデルでは時間を通じて変化しない要因に ついては変数に加えることができないため、時間を通じて変化のあった変数のみコントロール 変数( )として採用した。そのうち、用途地域ダミーについては、横浜市では平成 8 年に用 途地域の一斉見直しが行われ、その後はごく一部の区域における変更がなされたのみであるた め、第 1 種中高層住宅専用地域ダミーのみが変数として採用できたものである。 また、景気変動など全国的な経済社会情勢の変化の地価に対する影響を除外するため、公示 地価の公表年次を表す年次ダミーを用いたほか、横浜市域内の地域ごと開発動向などの影響を 除外するため、地域ダミーと年次ダミーとの交差項を作成し用いた。地域ダミーの分類につい ては以下の 4 区分6を採用した。 地域区分1:鶴見区、神奈川区、西区、中区、南区、保土ヶ谷区 地域区分2:港北区、青葉区、都筑区 地域区分3:旭区、泉区、緑区、瀬谷区 地域区分4:磯子区、港南区、戸塚区、栄区、金沢区 変数の説明を表 1 に、基本統計量を表 2 に示す。 6 横浜市都市整備局(2009)によれば、横浜市域を、環状 2 号線より臨海部側を「既成市街地」と、北部を「主に区画整理事 業による郊外市街地」と、中部を「主に小規模な開発によるスプロールした郊外市街地」と、南部を「主に民間の大規模開発 が行われた郊外市街地」と分類しており、今回採用した 4 区分とおおむね一致する。

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11 表 表 表 表 1 説明変数説明変数説明変数説明変数のののの説明説明説明説明 変数 説明 予想される 符号 出典・ 作成方法 ln(公示地価(円/㎡)) 公示地価の対数を用いた。 ― A 建築協定区域内ダミー 建築協定の区域内であるかどうかを表すダミー変数。 正 B 建築協定からl以内ダミー 建築協 定区 域か らの 距離 につ いて 100m刻 みで エリ アを 設定 し、 そのエリアに属しているかどうかを表したダミー変数。 正 B 一人協定ダミー 建築協定が一人協定であるときに1を取るダミー変数。 正 C 区画数 建築協定の参加区画数を表す変数。 負 C 協定面積(㎡) 建築協定の面積を表す変数。 負 C 建築協定の公告日からの年数 建築協定公告日からの年数を表す変数。 負 C 地区計画区域内ダミー 地区計画の区域内であるかどうかを表すダミー変数。 正 B 地区計画からl以内ダミー 地 区 計 画 の 区 域 か ら の 距 離 に つ い て 100m刻 み で エ リ ア を 設 定 し、そのエリアに属しているかどうかを表したダミー変数。 正 B 地区計画面積(ha) 地区計画の面積を表す変数。 負 B 地区計画の公告日からの年数 地区計画公告日からの年数を表す変数。 負 B 青葉区ダミー 地区計画が青葉区にあることを表すダミー変数。 正 A 地区計画・建蔽率(%) 地区計画 ごと に定 めら れて いる 建蔽 率に つい て、 地区 内で 一律 に一つの 規制 値が 定め られ てい る場 合に はそ の値 を、 地区 内で 区域を分 けて 複数 の規 制値 が定 めら れて いる 場合 には 、そ の平 均値を算出し、その地区の代表値として採用した。 負 D 地区計画・容積率(%) 地区計画 ごと に定 めら れて いる 容積 率に つい て、 地区 内で 一律 に一つの 規制 値が 定め られ てい る場 合に はそ の値 を、 地区 内で 区域を分 けて 複数 の規 制値 が定 めら れて いる 場合 には 、そ の平 均値を算出し、その地区の代表値として採用した。 負 D 地 区 計 画 ・ 最 低 敷 地 規 模 (㎡) 地区計画 ごと に定 めら れて いる 最低 敷地 規模 につ いて 、地 区内 で一律に 一つ の規 制値 が定 めら れて いる 場合 には その 値を 、地 区内で区 域を 分け て複 数の 規制 値が 定め られ てい る場 合に は、 そ の 平 均 値 を 算 出 し 、 そ の 地 区 の 代 表 値 と し て 採 用 し た 。 な お、敷地 規模 につ いて は想 定す る建 物用 途に よっ て著 しく 規制 値が異な って くる こと から 、こ こで は、 地区 の整 備方 針に おい て、低層 住宅 地の 住環 境保 全を 目指 して いる 地区 の値 に限 って 採用している。 正 D 地区計画・壁面後退(cm) 地区計画 ごと に定 めら れて いる 壁面 後退 距離 につ いて 、地 区内 で一律に 一つ の規 制値 が定 めら れて いる 場合 には その 値を 、地 区内で区 域を 分け て複 数の 規制 値が 定め られ てい る場 合に は、 その平均値を算出し、その地区の代表値として採用した。 正 D 地区計画・最高高さ(m) 地区計画 ごと に定 めら れて いる 最高 高さ につ いて 、地 区内 で一 律に一つ の規 制値 が定 めら れて いる 場合 には その 値を 、地 区内 で区域を 分け て複 数の 規制 値が 定め られ てい る場 合に は、 その 平均値を算出し、その地区の代表値として採用した。 負 D 地積(㎡) 公示地価ポイントの地積を用いた。 正 A 水道ダミー 公示地価 ポイ ント に水 道が 通っ てい る場 合に 1を 取る ダミ ー変 数。 正 A ガスダミー 公 示 地 価 ポ イ ン ト に 都 市 ガ ス が 通 っ て い る 場 合 に 1 を 取 る ダミー変数。 正 A 下水道ダミー 公示地価 ポイ ント に下 水道 が通 って いる 場合 に1 を取 るダ ミー変数。 正 A 第 1 種 中 高 層 住 宅 専 用 地 域 ダ ミー 第1種低層 住居 専用 地域 を基 準と し、 第1 種中 高層 住宅 専用 地域 である場合に1を取るダミー変数。 正 A 最寄り駅からの距離(m) 公示地価ポイントの最寄り駅からの距離とした。 負 A A: 平成9年〜23年公示地価 B: 横浜市建築局都市計画基本図データをもとにArcGISにより作成 C: 横浜市建築局提供データより作成 D: 横浜市都市整備局ホームページより作成

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12 表 表表 表 2 基本統計量基本統計量基本統計量基本統計量

5

分析

分析結果

分析

分析

結果

結果

結果と

と考察

考察

考察

考察

5.1 推計推計推計推計モデルモデルモデルモデル1の結果ののの結果結果と結果ととと考察考察考察考察 推計モデル 1 の推計結果を、それぞれ表 3 及び表 4 に示す。 変数 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 ln(公示地価) 9983 12.3571 0.2291761 11.21182 13.33747 地積 9983 201.9107 128.0592 69 2671 水道ダミー 9983 0.9994991 0.0223752 0 1 ガスダミー 9983 0.8571572 0.34993 0 1 下水道ダミー 9983 0.9896825 0.101055 0 1 第1種中高層専用住宅地域ダミー 9983 0.0542923 0.2266049 0 1 最寄り駅からの距離 9983 1299.831 828.8441 150 6200 建築協定区域内ダミー 9983 0.0655114 0.2474384 0 1 建築協定から100m以内ダミー 9983 0.0445758 0.2063808 0 1 建築協定から200m以内ダミー 9983 0.0591005 0.2358245 0 1 建築協定から300m以内ダミー 9983 0.0758289 0.2647374 0 1 建築協定から400m以内ダミー 9983 0.0677151 0.251269 0 1 建築協定から500m以内ダミー 9983 0.055895 0.2297304 0 1 一人協定ダミー 9983 0.0023039 0.0479462 0 1 区画数 9983 195.3828 413.282 0 9885 建築協定面積 9983 7974.417 44063.36 0 675054.9 建築協定公告日からの年数 9983 1.8825 7.350754 0 41 建築協定*青葉区ダミー 9983 0.0062106 0.0785659 0 1 建築協定から100m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0166283 0.1278804 0 1 建築協定から200m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0111189 0.1048636 0 1 建築協定から300m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0153261 0.1228523 0 1 建築協定から400m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.010017 0.0995876 0 1 建築協定から500m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0117199 0.1076277 0 1 地区計画区域内ダミー 9983 0.0203346 0.1411491 0 1 地区計画から100m以内ダミー 9983 0.0319543 0.1758873 0 1 地区計画から200m以内ダミー 9983 0.0287489 0.1671083 0 1 地区計画から300m以内ダミー 9983 0.0442753 0.2057163 0 1 地区計画から400m以内ダミー 9983 0.036462 0.1874461 0 1 地区計画から500m以内ダミー 9983 17.12912 90.95043 0 500 地区計画面積 9983 1.062737 8.343093 0 93.2 地区計画公告日からの年数 9983 0.3502955 2.640104 0 27 地区計画*青葉区ダミー 9983 0.0026044 0.0509696 0 1 地区計画から100m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0030051 0.0547392 0 1 地区計画から200m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.000601 0.0245096 0 1 地区計画から300m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0031053 0.0556412 0 1 地区計画から400m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 0.0029049 0.0538218 0 1 地区計画から500m以内ダミー*青葉区ダミー 9983 1.151958 23.9731 0 500 地区計画・建ぺい率 9983 0.3885606 3.90002 0 47 地区計画・建ぺい率の2乗項 9983 15.35961 156.241 0 2209 地区計画・容積率 9983 0.9774617 10.25531 0 186 地区計画・容積率の2乗項 9983 106.1162 1345.808 0 34596 地区計画・最低敷地規模 9983 2.482721 19.85305 0 200 地区計画・最低敷地規模の2乗項 9983 400.268 3240.037 0 40000 地区計画・壁面後退 9983 0.032913 0.3042127 0 7.5 地区計画・壁面後退の2乗項 9983 0.0936194 1.80738 0 56.25 地区計画・最高高さ 9983 0.3032004 2.438802 0 34.6 地区計画・最高高さの2乗項 9983 6.039091 63.392 0 1197.16

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13 表 表 表 表 3 推計推計推計推計モデルモデルモデル1モデル111のの結果のの結果結果結果((((111)1)) まず、表 3 についてみると、建築協定については、地区内の地価を上げる方向であるものの、 単独では有意ではなく、区域面積との交差項を入れた場合は有意となった。また地区計画につ いては地区内の地価を 3%程度上げる傾向が見られた。 一方、一人協定は建築協定の平均よりも 8%程度地価が上がる傾向があり、逆に区画数が多 いほど地価が下がる傾向が見られた。また、地区計画・建築協定ともに、区域面積が大きくな るほど、公告日からの経過年数が長くなるほど地価は下がる傾向が見られた。 これらの結果から、まず、建築協定・地区計画の策定区域において地価が上がる傾向にある ことから、地域ごとの詳細の規制策定によって、平均的には、地区内の効用は高められている 可能性が考えられる。 一方、区域面積が広く、また、区画数が増えるほど地価が下がる傾向にあることから、区域 面積や区画数が多いほど合意形成に係る取引費用が高まり、最適な規制水準の実現が困難とな ることが影響している可能性があると考えられる。特に建築協定については全員の合意が必要 であることから、取引費用の発生しない一人協定の場合とその他で大きく差が生じた可能性が あると考えられる。 また、公告からの年数については、長くなるほど地価が下がる傾向にあるという結果となっ 被説明変数 推計モデル1 (1)基本モデル (2) (3) (4) 係数 係数 係数 係数 説明変数 [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差]

地積(㎡) -5.17E-05 -5.21E-05 -5.25E-05 -5.16E-05

[0.0000383] [0.0000381] [0.0000381] [0.0000383] 水道ダミー -0.0118541 -0.0119943 -0.0123998 -0.0119211 [0.0239984] [0.0239082] [0.0238969] [0.023987] ガスダミー -0.0048981 ** -0.0049063 ** -0.0047454 ** -0.0048841 ** [0.0022006] [0.00219245] [0.0021914] [0.0021996] 下水ダミー -0.0166509 *** -0.0166804 *** -0.0164757 *** -0.0166011 *** [0.0058145] [0.0057927] [0.0057899] [0.0058118] 1種中高層ダミー 0.0412273 * 0.0404647 * 0.0409736 * 0.0412154 * [0.0216981] [0.0216167] [0.0216062] [0.0216878] 最寄駅からの距離 -2.07E-05 *** -0.0000207 *** -0.0000205 *** -0.0000205 ***

[ 1.78e-06] [1.77e-06] [1.77e-06] [ 1.78e-06]

建築協定ダミー 0.0061152 0.0292197 *** 0.0237974 ** 0.050043 ** [0.0102201] [0.0113481] [0.0105418] [0.0255431] 建築協定ダミー*一人協定ダミー 0.0792375 *** [0.013049] 建築協定ダミー*区画数ダミー -0.0001052 *** [0.0000227] 建築協定ダミー*協定面積 -3.36E-07 *** [5.25e-08] 建築協定ダミー*公告からの年数 -0.005913 * [0.0031524] 地区計画ダミー 0.0286827 *** 0.0284622 *** 0.0933928 *** 0.0784205 *** [0.0057197] [0.0056983] [0.0118511] [0.0195105] 地区計画ダミー*計画面積 -0.0015133 *** [0.0002434] 地区計画ダミー*公告からの年数 -0.0073372 *** [0.0027538] コントロール変数(省略) 年次ダミー(省略) 地域*年次ダミー(省略) 観測数 9983 9983 9983 9983 自由度調整済み決定係数 0.956 0.9563 0.9564 0.956 ln(公示地価) ※***、**、**は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。

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14 表 表 表 表 4 推計推計推計推計モデルモデルモデル1モデル111のの結果のの結果結果結果((((222)2)) た。これは、地域住民は規制策定時点で自らが置かれている状況にとって効用が最大化するよ うに規制を定めるものの、将来的な最有効利用は変化するため、過去に定めた規制水準が現時 点または将来のニーズと合わなくなってきていることが影響している可能性が高いと考えられ る。また、住民発意で策定される建築協定・地区計画は、現状維持することを目的に定められ ることが多く、また合意形成の過程で既存不適格建築物を出さないよう、規制に合わない建築 被説明変数 推計モデル1 (5) (6) 係数 係数 説明変数 [標準誤差] [標準誤差] 建築協定ダミー 0.0081233 0.0056849 [0.0101051] [0.0120282] 建築協定から100m以内ダミー -0.0093883 0.0052349 [0.0089406] [0.0105818] 建築協定から200m以内ダミー -0.0305166 *** -0.02834 *** [0.0064232] [0 .0071159] 建築協定から300m以内ダミー 0.0015179 -0.0122939 [0.0095287] [0.018925] 建築協定から400m以内ダミー 0.0066933 0.0085567 [0.0063002] [0.0062847] 建築協定から500mダミー 0.0067126 0.0087584 [0.0053923] [0.0057176] 建築協定ダミー*青葉区ダミー 0.0088409 [0.02193] 建築協定から100m以内ダミー*青葉区ダミー -0.0489045 ** [0.0195536] 建築協定から200m以内ダミー*青葉区ダミー -0.0039288 [0.0161987] 建築協定から300m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0139017 [0.0218853] 建築協定から400m以内ダミー*青葉区ダミー (omitted) 建築協定から500m以内ダミー*青葉区ダミー -0.0322537 * [0.017019] 地区計画ダミー 0.0307105 *** 0.0197681 *** [0.0056571] [0.0066831] 地区計画から100m以内ダミー 0.0348815 *** 0.0220983 *** [0.004032] [0.0044996] 地区計画から200m以内ダミー 0.0423209 *** 0.0400123 *** [0.0049482] [0.0051554] 地区計画から300m以内ダミー 0.0212742 *** 0.015605 *** [0.0039658] [0.0043185] 地区計画から400m以内ダミー 0.0172517 *** 0.0129057 *** [0.0035734] [0.0037151] 地区計画から500mダミー 0.0000304 *** 1.36E-05 [7.58e-06] [8.81e-06] 地区計画ダミー*青葉区ダミー 0.0392198 *** [0.0123848] 地区計画から100m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0626121 *** [0.0099521] 地区計画から200m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0215844 [0.0176804] 地区計画から300m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0319268 *** [0.0107756] 地区計画から400m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0498371 *** [0.0127585] 地区計画から500m以内ダミー*青葉区ダミー 0.0000719 *** [0.0000177] コントロール変数(省略) 年次ダミー(省略) 地域*年次ダミー(省略) 観測数 9983 9983 自由度調整済み決定係数 0.957 0.9575 ln(公示地価) ※***、**、**は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。

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15 物や敷地については特例規定をおいていることから、将来的に環境改善が図られる可能性が低 いことも影響していると考えられる。 次に、表 4 について、周辺地域との関係を見ると、建築協定については周辺 200m 以内の地 価が下がる傾向が見られ、100m~200m 以内の地価については 3%程度下がる傾向が有意に得ら れた。一方、地区計画については、周辺 400m 以内の地点の地価について上がる傾向が見られ、 200m 以内では 3~4%程度と地区計画区域内とよりも上昇し、それ以上の距離になると地区計 画区域から離れるほど小さくなる傾向が見られる。 これら原因としては、まず、周辺 200m 以内の地域において地区計画区域内よりも地価が上 昇するのは、外部性コントロールの効果がスピルオーバーしている可能性が考えられる。しか し、外部性コントロールの効果が規制地区内よりも大きいことや、規制区域から 400m 以内の エリアまで及んでいるとは考えにくい。そのため、外部性コントロール以外の要因が影響を与 えている可能性も考えられる。すなわち、地区計画等の規制がかけられることによって、その 区域をとりまく住宅地における全体の住宅市場における評価が上がり需要が増えるものの、規 制地区内においては規制による供給制限が生じる結果、需要は周辺地域へと流れ、結果として 周辺地域の地価がより引き上げられた可能性が高いと考えられる。なお、建築協定の場合に規 制地区の隣接地の地価が下落しているのは、もともとは協定区域にだったものの、更新の際に 協定区域から外れた地区で、外部性コントロールがされていないことが顕在化しているためで はないかと予想される。 また、青葉区との交差項を入れた場合、地区計画区域内外において、他の地区計画の平均よ りも地価の上昇の程度が大きく、地区内では 6%程度、100m 以内のエリアでは 8.5%程度上昇す るという傾向が見られた。 これは、そもそも青葉区が住宅地としてブランド力が強いと言われる東急田園都市線沿線エ リアであり、住宅需要が比較的非弾力的であることから、規制の策定に伴う供給制限による地 価上昇効果が他の地区よりも強く表れたためと考えられる。つまり、密接な代替財が存在しな い住宅市場である可能性が高く、そのような地域においては特に供給制限を行おうとするイン センティブが働き易い可能性がある。さらに、区役所に住民活動支援の機能が設置されている ことから取引費用についても低減され、より地価上昇が図られやすい環境にあることも影響し ていると考えられる。 5.2 推計 推計推計推計モデルモデルモデルモデル222の2の結果のの結果結果結果とととと考察考察考察考察 推計モデル2の結果を、表 5 に示す。なお、地区計画の各規制どおしの相関係数が高かった ことから、全ての規制を同時に推計した場合には多重共線性の問題が生じる可能性があるため、 相関係数の低い規制の組み合わせについてのみ推計することとした。その結果、比較的どの規 制とも相関の低い最低敷地規模規制とその他の規制との組み合わせによる四通りの推計を行っ ている。また、各説明変数について、1 乗項のみの場合と 2 乗項を入れた場合の両方を推計し た結果、2 乗項を入れた場合の方が決定係数が高く、t 値も有意であったことから、2 乗項を入 れた場合を採用している。

(18)

16 (1) 建蔽率及び容積率について まず、表 5 から、建蔽率については、26%付近を最小として規制値が大きくなるほど地価が 上がる傾向が見られたが、有意な結果ではなかった。容積率については、1乗項、2乗項とも 有意な結果が得られ、容積率 45%付近を最小に規制値が大きくなるほど地価が上がる傾向が見 られた。つまり、最低でも建蔽率は 30%、容積率は 50%であることから、これらについては規 制値が大きいほど地価が高くなるため、規制の効果は確認されなかったと言える。これは、そ もそも横浜市においては住居系地域においては用途地域による建蔽率、容積率において厳しく 制限がされているため、上乗せして建蔽率や容積率の規制をかけることが外部性のコントロー ルの手法としては効果をもたらしていない可能性が考えられる。 (2) 壁面後退及び最高高さについて 次に、壁面後退については、1乗項についてはプラスの、2乗項についてはマイナスの符号 で有意な傾向が得られており、1.3m 付近で地価の変化率がプラスからマイナスに転じる結果と なった。また、最高高さについては、1乗項についてはプラスの、2乗項についてはマイナス の符号で有意な傾向が得られており、10.8m 付近で地価の変化率がプラスからマイナスに転じ る結果となった。これは、壁面後退と最高高さについては、地価の変化率が転じる付近の値で 効用が最大化される可能性があることを示していると考えられる。 表 表 表 表 5 推計推計推計推計モデルモデルモデル2モデル222ののの結果の結果結果 結果 被説明変数 推計モデル2 (1) (2) (3) (4) 係数 係数 係数 係数 説明変数 [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] 建築協定ダミー 0.0061039 0.0061077 0.061605 0.0061692 [0.010222] [0.0102194] [0.0101755] [0.101668] 最低敷地規模 0.0005575 * 0.0005276 * -0.0362842 *** -0.0318955 *** [0.000321] [0.0003075] [0.0068446] [0.0032753] 最低敷地規模の2乗項 2.21E-06 2.03E-06 0.0001133 *** 0.000097 *** [0.00000192] [0.00000183] [0.0000228] [0.0000102] 建蔽率 -0.0023246 [0.0028008] 建蔽率の2乗項 0.0000504 [0.0000624] 容積率 -0.0027216 ** [0.0012013] 容積率の2乗項 0.0000303 ** [0.0000133] 壁面後退規距離 0.0466542 *** [0.0084144] 壁面後退規距離の2乗項 -0.0001774 *** [0.0000337] 最高高さ 0.4920465 *** [0.0512748] 最高高さの2乗項 -0.0226461 *** [0.0026831] コントロール変数(省略) 年次ダミー(省略) 地域*年次ダミー(省略) 観測数 9983 9983 9983 9983 自由度調整済み決定係数 0.956 0.956 0.9564 0.9565 ※***、**、**は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。 ln(公示地価)

(19)

17 これらの結果について、他の条 件を一定と仮定してグラフに表し たのが図 4 及び図 5 である。この ように、効用が最大化される値が 存在する場合には、住民間で合意 形成する場合にも意見調整が比較 的行われやすいものと考えられる。 しかし図 4 及び図 5 にプロットし たとおり、必ずしも住民発意で策 定された地区計画は効用を最大化 する値に規制値が定められている とは限らない。これは、合意形成 に係る取引費用が存在することに 加えて、地域住民は外部性コント ロールの適正水準や市場動向等に 関する十分な情報を得ていないこ とが要因となっていると考えられ る。 (3) 最低敷地規模について 最低敷地規模については、建 蔽率または容積率との組み合わ せにおいては有意な結果は得ら れなかった。壁面後退または最 高高さ制限との組み合わせにお いては、1乗項についてはマイ ナスの、2乗項についてはプラ スの符号で有意な傾向が見られ、 160 ㎡付近を最小に地価の変化 率がマイナスからプラスに転じ ることが確認された。これは、 規制値が小さい方が効用が高く なる住民と、規制値が大きいほ 150000 170000 190000 210000 230000 250000 270000 290000 310000 330000 100 120 140 160 180 200 220 地価 地価 地価 地価((((円円円円////㎡㎡㎡㎡)))) 最低敷地規模 最低敷地規模 最低敷地規模 最低敷地規模(((㎡(㎡㎡)㎡))) 最高高さ 12 最高高さ 10 最高高さ 9 最高高さ 8 150000 170000 190000 210000 230000 250000 270000 290000 310000 330000 7 8 9 10 11 12 地価 地価 地価 地価((((円円円円////㎡㎡㎡㎡)))) 最高高 最高高 最高高 最高高ささささ規制規制規制規制((((mmmm)))) 最低敷地 100 最低敷地 110 最低敷地 120 最低敷地 130 最低敷地 140 最低敷地 150 最低敷地 160 最低敷地 200 50000 100000 150000 200000 250000 300000 350000 0.5 1 1.5 地価 地価 地価 地価((((円円円円////㎡㎡㎡㎡)))) 壁面後退距離 壁面後退距離壁面後退距離 壁面後退距離((((mmmm)))) 最低敷地 110 最低敷地 120 最低敷地 130 最低敷地 140 最低敷地 160 最低敷地 180 最低敷地 190 最低敷地 200 図 図図 図 6 最低敷地規模規制最低敷地規模規制最低敷地規模規制による最低敷地規模規制によるによる地価による地価地価地価ののの変化の変化変化変化 ( ( ( (最高高最高高最高高最高高ささささ規制規制規制規制のののの組組み組組みみみ合合合わせの合わせの場合わせのわせの場合場合)場合)) 図 図 図 図 4 壁面後退規制壁面後退規制壁面後退規制壁面後退規制によるによるによる地価による地価地価地価のののの変化変化変化変化 図 図 図 図 5 最高高最高高最高高さ最高高ささ制限さ制限制限による制限による地価によるによる地価地価の地価ののの変化変化変化 変化 ×住民発意によ る地区計画で定め られた規制水準 ×住民発 意によ る地区計画で定 められた規制水 ×住民発意によ る地区計画で定め られた規制水準

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18 ど効用が高くなる住民の両者が存在する可能性を示していると考えられる。 この結果について、他の条件を一定としてグラフに表したのが図 6 である。実際、住民発意 による地区計画の多くは、売却等に際し敷地分割が発生したのを契機に、現状以上の敷地分割 を食い止めるために策定されるケースが多く、将来的な売却等を視野に入れた住民と住み続け る住民との間の合意形成が難しい場合が多い。しかし、図 6 にプロットしたとおり、実際に住 民発意で定められた地区計画の多くは最低敷地規模の規制値を 160 ㎡付近で定めていることが 多い。つまり、相反するニーズを持つ住民の妥協による合意形成の結果、両者にとって効用が 高くない水準に規制水準が定められ、市場においても低く評価されている可能性が高いと考え られる。

6

まとめ

まとめ

まとめ

まとめ

6.1 政策提言政策提言政策提言政策提言 (1)住民発意による土地利用規制について 住民発意による上乗せ規制によって、平均的には地価の上昇がもたらされると考えられる。 しかし、それらは、外部性のコントロールが適切になされた結果というだけではなく、住宅需 要の多い地域において供給制限が行われた結果である可能性も考えられることに留意する必要 がある。 また、上乗せ規制の策定によって地価が上昇することから、地域住民には規制を策定しよう とするインセンティブが存在するものの、その策定過程には合意形成などの取引費用が存在し、 規制水準に影響を与えると考えられる。つまり、効用水準が同じような住民が集まって住んで いる場合には、取引費用が小さいため効用を最大化する水準に規制を設定することが可能とな るが、地域住民の効用水準にバラつきがある場合にあっては、取引費用が大きいため効用を最 大化する水準に規制を設定することは難しくなる可能性が高い。そのため、住民発意による土 地利用規制は、そもそも合意形成費用が低い地域において実現可能であり、かつ地価の上昇を もたらすものと考えられる。 一方、地域住民は規制策定時点における効用を最大化する水準に規制を設定するため、長く 同じ規制をかけることによって、将来的な最有効利用を阻害し効用を低下させる可能性がある。 このような規制の硬直性に起因する効用の低下を防ぐためには、定期に見直しを行う機会を設 けることも必要と考えられる。 (2)具体の規制手法について 建蔽率や容積率については、今回のケースでは、規制効果が確認できなかった。 壁面後退や最高高さ規制については、直接外部性をコントロールしうる手法と考えられ、い ずれも市場における評価が最も高くなる水準が存在する可能性が高いものの、取引費用が大き かったり、住民の合意形成過程において適切な情報が与えられなかったりする場合にあっては、 必ずしもその水準を実現することはできないと考えられる。

(21)

19 また、最低敷地面積については、市場における評価が分かれることから、合意形成を図るの が最も難しい規制手法といえる。そのため、妥協によって規制値が定められる結果、小規模宅 地のニーズのある地区においては供給戸数の減少をもたらし、大規模宅地を維持している地区 においては敷地分割を許容することとなるため、地価の上昇をもたらさない可能性が高い。ま た供給される住宅の戸数に直接に影響を与えることから、供給制限による価格上昇のインセン ティブをまねき易く、結果的に社会的効用を高めない可能性が高い。このため、最低敷地面積 規制の策定は規制の弊害の方が大きくなる可能性が高く、外部性コントロールについては、壁 面後退や最高高さ規制などの他の規制で行う方が望ましいとも考えられる。 これらの考察から、住民発意で土地利用規制を策定する場合であっても、その策定過程にお いては、地域における外部性コントロールの適正水準や住宅市場動向の調査を行うことが必要 と考えられる。 そこで、地区計画の提案にあたっては費用便益分析を実施して提出することを義務づけ、そ の内容を都市計画審議会等の公開の場で審議するようにすべきと考える。 6.2 今後今後今後今後のののの課題課題課題課題 本稿では、住民発意による土地利用規制が及ぼす影響について、経済学の観点からの理論分 析を行うこととともに、その代表的な手法である建築協定と地区計画について実証分析を行う ことで、取引費用の存在により効用最大化が実現できないことや、規制の硬直化による非効率 性を示すとともに、規制手法ごと合意形成の実現可能性や効用最大化する水準が存在する可能 性を示した。しかし、外部性コントロールによる効果と、供給制限による弊害の区分について は、明確に切り分けることはできなかった。そのため、外部性をコントロールする変数を入れ た推計モデルにより分析する他、地価を被説明変数とした推計だけでなく、供給量を被説明変 数とした推計を行うことなどにより、規制による外部性コントロールと供給制限の効果を切り 分けることが今後必要と考えられる。 また、地域の住宅需要の弾力性の違いによって住民発意による土地利用規制の効果が異なる 可能性については示せたものの、今後、効率的な政策の展開にあたっては、地域の住宅需要の 弾力性の違いをもたらす要因を具体的に突き止めるなど、住宅市場構造について更に掘り下げ ていくことも必要と考えられる。

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