保育の質的向上に関する研究
‑第三者評価に見られる現場サイドの質的向上の視点を手がかりとして一
学 校 教 育 専 攻 幼 年 発 達 支 援 コ ー ス 高 演 正 文
1 .問題の所在と研究目的
世紀の転換期を前後して 子どもを取り巻く 環境が大きく変貌を遂げ、「子どもの最善の利 益」は脅かされようとしている。様々な政策的 課題は多く取り上げられ、それに伴う制度改革 は対陸ぎ早に行われている。社会福祉基礎構造 改革の流れを受けて、少子化対策や待機児童解 消を目的とした規制緩和は、 保育の市場化"を 進め、その結果、実質、保育環境は劣悪化の一 途を辿り、保育の質の低下を招こうとしている。
2000年に施行された社会福祉法において保 育所保育にサービスの質の向上と評価が要請さ れるようになったO そんな中、 2002年度より全 国保育士養成協議会によって第三者評価事業が 実施された。保育の質の向上を自的として導入 された第三者評価ではあるが、実際に第三者評 価が、保育の質的向上にどうような形で寄与し ているのか、その有用性ははっきりと捉えられ ていなし、。
そこで、本研究では、実際に第三者評価を受審 した園の保育者及び施設長を対象に、質問紙と 聞き取りによる調査を行うこととした。第三者 評価を契機として、保育者や施設長が保育の質 をどのように捉え、意識や実践がどのように変 容し、質的向上に向けた取り組みとなっている
のかを究明する。その上で、保育の質を向上さ せてしだ重要な要因を探ると共に、第三者評価 が果たすべき真の役割を併せて論考してし1くO
指 導 教 員 橋 川 喜 美 代
II. 研究方法
1.質問紙調査:2004 年 6 月 ~7 月
(1)対象者:2002年度第三者言利面受審園 54 閣のうち無作為に抽出した 12圏、計190名の 保育者及び施設長(回収率:55%、有効回答数:
105名)
(2)調査方法:質問紙法。調査内容は受審前 後の5段階評定による回答(1.保育者間の関係、
2.保育者(あなた)の保育姿勢、 3.保育のあり方、
4.子どもの姿、 5.親との関係、 6.保育環境・条件 の6領域67項目)と自由言
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さ(1.第三者評価受 審後の変化、 2.保育の質的向上に重要な要因) 2.聞き取り調査:2004年8月(1)対象者:質問紙調査を行った園より 3園 の施設長及び保育者、計11名
(2)調査方法:聞き取りにより①質問紙調査 の自由言己主に関する質問、②評価結果に関する 質問、③一般的な視点からの質問を行う。
lll.調査結果
1.質問紙調査の分析結果
6領域の項目別に分析を行った結果、受審後 に向上・改善したと評価する保育者数は、(1.
保育者聞の関係〉、 (2.保育者の保育姿勢〉、 (6. 保育環境・条件〉の3領域で多い。また、課題・
問題点となった項目が多いのが、(1.保育者間 の関係)と (5.親との関係〉である。また、 (4. 子どもの姿〉は他領域に比べ、向上・改善、課 題・問題点共に少ない。つまり、保育者が直接、
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関与するものは向上・改善し、人間関係に関す 題点をほとんど挙げていなし1。とはいえ施設長 ることは課題・問題点となる。また子どもへ は自らの思いだけが先行しないよう、保育者個 の影響は第三者斜面が直接、起因するもので、な 人への西白惹に留意しながら向上・改善に取組む
く、二次的な変化となることが考えられる。 姿勢を常に持つべきだと自戒している。
第三者評価がもたらす影響は受ける園によっ C保育園は、変化が最も少ない園であるが、
て異なり、図 1のように分類される。 その背景には、施設長をはじめ、保育者が日々、
子どもを主体した保育を行っているという強し1
確信を持っている。保護者への便宜よりも子ど もの最大限の福祉に、力を注いで、きたという自 負がある。しかし、その一方で、、自園の保育が
「独善的J
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特異Jなものになっていなし1かとし1った不安も抱いていた。第三者評価は、その不 安を払拭した形となり、安全面に力を注ぐとい った課題を認識する機会にもなったO
N. 総合考察 亡望室コ向上・故曹が少ない亡宝窒ゴ
図1質問紙調査による園の類型化
受審以前の各圏の方針や保育者、施設長の意 識、保育者間の状態、抱える課題等によって違 いは大きく現れる。その中で、向上・改善が多 く、課題・問題点が少なし叩群は最も第三者評 価の効果が現れたと思われる。 1群に属するB,
D保育園と、第三者評価の影響が少ないE群の C保育園に対して、より詳細な意識や実践の変 容等と、取り組みが質的向上にどう繋がってい るのかを掌握するため、聞き取りを行った。
2.聞き取り調査の分析結果
受審前の実践や保育者の意識が、施設長の戸 惑いや不安から決して良好なもので、はなかった。
B保育園にとって、第三者評価は、保育者が保 育姿勢を見直し、施設長に安定した保育実践へ の見通しを持たせる契機となったo D保育園は 受審後、施設長の
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齢、リーダーシッフ。を基に、縦割り保育を導入し、職員研修など積極的な取 り組みに、力を注ぎ、保育者の専門性を最重要 課題としてきた。それゆえ、保育者は課題・問
聞き取りを行った3園を見ても、第三者評価 は各園が抱える現状や課題、保育の質によって 与える効果に差異が見られた。そうした変化の 内容や度合い、意味合いに違いはあるが、保育 者や施設長の意識改革をもたらすことによって、
第三者評価は保育実践や人間関係に影響を与え ることがわかった。それは、保育者、施設長が 無意識に行っている偏りのある保育を変革させ、
安定した取り組みによってゆとりを生み出す。
保育の現念や方針を確認し、確証を得る機会と なるだけでなく、課題認識の契機となる。また、
これまで抱いていた不安や戸惑いが、確信や安 心へと変わることによって、信念を揺るぎない ものにし、保育実践をより確固たるものにする。
第三者評価はそうし、った役割を担っている。保 育者や施設長それぞれが持つ、多種多様な目標 や課題を重層的に捉え、自らの姿勢と実践を省 察し、改善する機会を、第三者評価が喚起する ことができるなら、それは保育の質を向上、発 展させていく大きな第一歩となる。
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