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博士(工学)飯島 進 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)飯島   進 学位論文題名

軸方向非均質高速増殖炉の炉物理特性の研究 学位論文内容の要旨

  軸方向非均質高速増殖炉は、炉心を非均質化することにより炉心性能の向上を図る新型 の高速炉である。炉心の非均質化は、高速炉が高速中性子と原子核との核反応により核分 裂連鎖反応を維持する原子炉であることと深い関わりがあり、非均質高速炉に関する研究 は、世界各国が高速原型炉や実証炉の開発を競いあっていた1970年代から1980年代にか けて活発におこなわれた。これらの研究では内部ブランケットの配置を変えた数多くの炉 型が提唱され、増殖性能の向上やナトリウムボイド反応度価値の低減を中心課題として、

原子炉の特性に関する様々な検討がなされた。日本では、軸方向非均質高速炉が高速実証 炉の候補炉心となり、炉心設計がおこなわれた。その設計では、原子炉出カの平坦化やナ トリウムポイド反応度価値の低減などが、軸方向非均質高速炉のすぐれた性能として注目 された。一方、炉心燃料が溶融し落下する事故を想定した場合、上部炉心の燃料が落下し 下部炉心の燃料と合体するとぃう事故シナリオが考えられ、炉心崩壊事故にっながる危険 が ある として 、炉 心概 念の 成立性 を左 右す る重要 な安 全上 の問 題と考 えら れた。

  本研究では、世界で最初の軸方向非均質高速炉模擬実験を日本原子力研究所・東海研究 所の高速炉臨界実験装置(FCA:Fast Critical Assembly)において実施し、軸方向非均質 高速炉のすぐれた炉心性能や安全上の特性を実験データに基づき評価した。さらに、高速 炉の炉心性能の向上に関する基礎的な研究として、炉心の非均質化が炉物理特性におよぼ す影響を究明した。この研究では、軸方向非均質高速炉模擬実験と均質高速炉模擬実験の 実験値を直接比較し、軸方向非均質高速炉の炉物理特性をさらに明確に評価した。また、

軸方向非均質高速炉模擬実験および均質高速炉模擬実験の実験解析をおこない、両炉心の 解析結果の比較をもとに、軸方向非均質高速炉の炉物理特性の計算精度を評価した。実験 解析では、核データとしてJENDL―3.2を使用し、著者が開発した炉物理特性計算コードシ ステム EXPARAM を使用した計算をおこなった。以下に、各章の概要と主な成果につ いて述べる。

  第2章では、臨界実験をおこなったFCAの構造、実験体系の形状や燃料組成および実 験体系の基本性能を確認する臨界特性試験について述べた。

  第3章では、軸方向非均質高速炉模擬実験と均質高速炉模擬実験の実験結果を比較し、

それを基に軸方向非均質高速炉の炉物理特性を評価した。軸方向非均質高速炉の中性子束 空間分布は中性子エネルギーとともに変化する特徴をもち、このエネルギー依存中性子束 空間分布を評価する方法として、様々な核種の反応率の測定値をもちいる新たな手法を提

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案した。この手法により、軸方向非均質高速炉では、高いエネルギー領域の中性子束空間 分布が、炉心から内部ブランケットにかけて急激に減衰することを確認した。そして、数 100 keV以下のエネルギー領域では中性子束は均質高速炉と似た空間分布となり、さらに 数10 keV以下のエネルギー領域では、中性子束は炉心で凹みをもつ空間分布となること を確認した。核分裂率分布を用いた出力分布平坦化の評価では、高工ネルギー領域の出力 成分により軸方向出力分布の平坦化および径方向出力分布の平坦化がもたらされることを 明らかにした。随伴中性子束は、原子炉における中性子の生成や中性子の吸収が、原子炉 の反応度変化に及ぽす度合を示す指標であるが、この随伴中性子束の特性をボロン反応度 価値およびプルトニウム反応度価値を測定することにより評価した。軸方向非均質高速炉 では、内部ブランケットのボロン反応度価値(絶対値)が炉心の値の80%まで低下する ことを確認し、随伴中性子束が炉心から内部ブランケットにかけて減少することによルボ 口ン反応度価値が低下することを明らかにした。軸方向非均質高速炉のナトリウムボイド 反応度価値の低減効果に関する実験では、内部ブランケットに隣接する炉心部においてナ トリウムボイド反応度価値が低減されることを確認した。そして、炉心でボイドが発生す ると高エネルギー領域の中性子の炉心からの漏洩が増加し、これによる負の反応度効果に よルナトリウムボイド反応度価値が低減されることを明らかにした。さらに、炉心を非均 質化したことによるナトリウムボイド反応度価値の低減は、内部ブランケットに隣接する 炉心部に限られるとの結論を得た。

  第4章では燃料スランピング反応度効果模擬実験について述べた。軸方向非均質高速炉 では、溶融した燃料が内部ブランケットの燃料と合体することにより反応度の上昇が抑制 されることを実験により確認した。そして、軸方向非均質高速炉における燃料スランピン グによる反応度の増加が、均質高速炉の値以上になる可能性は小さいことを明らかにした。

  第5章では軸方向非均質高速炉模擬実験および均質高速炉模擬実験の実験解析について 述べた。そして、軸方向非均質高速炉での炉心から内部ブランケットにかけて急激に減衰 する高工ネルギー領域の中性子束空間分布や内部ブランケットで減少する随伴中性子束の 空間分布を、JENDL―3.2および EXPARAM による計算では精度良く評価できないこと を確認した。また、燃料スランピング反応度効果については、計算は燃料密度の増大によ る反応度効果を精度良く評価できていないことを確認し、軸方向非均質高速炉の炉心設計 における今後の検討課題を明らかにした。

  第6章では、本研究で得られた成果をまとめた。本研究により、炉心の非均質化と炉物 理特性および軸方向非均質高速増殖炉の炉心性能の関連性を、実験データに基づき系統的 に評価することができた。これらの結果は、炉心を非均質化することによる高速炉の高性 能化を検討する基礎データとして利用できるとともに、非均質炉心における炉心設計の計 算精度を検証するデータとして利用できる。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    成田正邦 副 査    教授    大橋弘士 副 査    教授    熊田俊明 副 査    教授    板垣正文 副査   助教授   澤村晃子

学 位 論 文 題 名

軸方向非均質高速増殖炉の炉物理特性の研究

ナ ト リ ウ ム 冷 却 型 高 速 増 殖 炉 の 原 子 炉 物 理 上 の 最 も 重 要 な 問 題 の ー っ は 、 炉 心 中 心 部 に 発 生 し た ナ ト リ ウ ム 蒸 発 に よ る ポ イ ド が も た ら す 正の 反 応 度の 添 加 で ある 。 増 殖 性 能 を 低 下 さ せ な い で 、 こ の ナ ト リ ウ ム ボ イ ド に よ る正 の 反 応度 効 果 を 軽減 す る た め に 、 多 く の 高 速 炉 炉 心 の 形 状 と 組 成 が 研 究 さ れ て き た 。 本 研 究 で 取 り 上 げ ら れ た 軸 方 向 非 均 質 高 速 増 殖 炉 も そ の ー っ で 我 が 国 の 高 速 実 証 炉 の 候 補 と し て 取 り 上 げ ら れ た も の で あ る 。

  軸 方 向 非 均 質 模 擬 炉 心 は 、 円 柱 形 で 軸 方 向 の 中 心 部 に 円 盤 上 の内 部 ブ ラ ンケ ッ ト を も ち 、 そ れ を 取 り 囲 ん で 炉 心 が 構 成 さ れ 、 さ ら に 外 側 に通 常 の ブラ ン ケ ッ トを も っ て い る 。

本 論 文 は こ の 炉 心 に 対 す る 申 請 者 の 研 究 成 果 を 述 べ た も の で 、 以 下 の5点 に 要 約 さ れ る 。

  1) ナ 卜 リ ウ ム ボ イ ド 効 果 に 直 接 影 響 を 与 え る エ ネ ル ギ ー 別 の 炉 心 中 性 子 束 を     申 請 者 の 考 案 し た い く っ か の 方 法 で 測 定 し 、 均 質 炉 心 と の 比 較 を 行 っ た 。     ま た 中 性 子 束 と と も に 基 本 的 炉 物 理 量 で あ る 随 伴 中 性 子 束 の 特 性 を 反 応 度     価 値 の 測 定 か ら 評 価 し た 。

  2) 中 性 子 束 分 布 の 測 定 結 果 か ら 、 非 均 質 炉 心 で は 内 部 ブ ラ ン ケ ッ ト 近 傍 の 炉     心 出 力 分 布 の 平 坦 化 が 達 成 さ れ る こ と が わ か っ た 。 こ の 平 坦 化 に よ ル ナ ト     リ ウ ム ボ イ ド 効 果 の 低 減 が 期 待 さ れ る 。

  3) 実 際 に 実 施 し た 反 応 度 価 値 の 測 定 結 果 か ら 、 ボ イ ド 効 果 に よ る 正 の 反 応 度     添 加 が 低 減 さ れ る こ と が 確 認 さ れ た 。

  4) 非 均 質 炉 心 で は 、 事 故 時 に 燃 料 が 溶 融 し て 、 炉 心 中 央 部 で 合 体 す る い わ ゆ     る 燃 料 ス ラ ン ピ ン グ に よ り 、 当 初 、 大 き な 正 の 反 応 度 添 加 が 起 こ る こ と が     懸 念 さ れ て い た 。 こ れ に 対 し て 軸 方 向 非 均 質 模 擬 炉 心 の 実 験 で は 、 内 部 ブ

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    ランケットと合体することにより、反応度添加が抑制されることを明らか     にした。

(5)以上の模擬炉心に対し現在使われている解析法と核データの精度を評価し、

    今後の改善の課題を示した。

  以上のように本論文は、軸方向非均質高速増殖炉の炉物理特性を実験により評価 し、さらの安全上重要な燃料スランピング実験では反応度添加が抑制されることを 示したものであり原子炉物理学及び原子炉工学の進歩に寄与するところ大なるも のがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認め る。

参照

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