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学位論文内容の要旨 噴火湾内表層流の観測 HF 海洋レーダと NOAA/AVHRR による

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水産 科学 ) 日u野 克尚

学 位 論 文 題 名

HF 海洋レーダとNOAA/AVHRR による      噴 火 湾 内 表 層 流 の 観 測

― 沿 岸 親 潮 流 入 期 に お け る 物 理 過 程 と そ の ホタ テ ガ イ幼 生 分布 解 析 への 応 用―

学位論文内容の要旨

【はじめに】  .

  冬季噴火湾において沿岸親潮が表層から流入してくることが知られて いる。沿岸親潮は噴火湾内の植物プランクトンブルーミングに影響を与え ている。これまで船舶観測により沿岸親潮は密度流として流入すると考え られていた。しかし数値モデルにより湾内の流速場は風によって誘起され る渦対が支配的であることが示唆されている。湾内の流速場と沿岸親潮の 流入または流入後の分布・輸送過程との関係は明らかになっていない。そ の理由として流入の発生を予測することが困難であるため、船舶観測では 流入や流入後の移流過程を捉えること,ができなかったからである。そこで 本研究では湾内表層流の空間構造を長期間連続して観測することができ る陸上設置型リモートセンシングセンサであるHF海洋レーダをもちいて 観測をおこない、湾内表層流において支配的な流速成分を明らかにするこ と 、 観 測 さ れ た 表 層 流 と 衛 星 リ モ ー ト セ ン シ ン グ デ ー タ で あ る NOAA/AVHRR熱赤 外画像とを組み合 わせて解析をおこな い沿岸親潮の分 布 ・ 輸 送 と 湾内 表 層流 との 関 係を 明ら か にす るこ と を目 的と す る。

  HF海洋レーダの水産生物資源管理への応用例として、近年大きな問題 となっているホタテガイ幼生の採苗不良を取り上げる。HF海洋レーダに より観測された表層流をもちいてホタテガイ幼生の輸送実験をおこない、

不良要因のーっと考えられている幼生の湾外または採苗場所以外への移 流により採苗不良が発生するのかどうかを明らかにすることを目的とす る。

【 使用データ】

(2)

@HF海洋レ―ダ

  HF海洋レーダは陸上設置型の表層流観測装置である。観測諸性能はレ ン ジ 解像 度1.5km、2時 間で40X40kmの 海域を観測するこ とができる。

本 研 究 で は1999年12月24日 か ら2000年5月27日 にか け て噴 火湾 内 の 豊 浦とハ雲に設置し 表層流の観測を行っ た。観測された表 層流から3x 3km格子データセットを作成し解析にもちいた。

@NOAA/AVHRR

  HF海 洋 レ ー ダ 観 測 期 間 内 に お い て NOAA衛 星 AVHRRセ ン サ 4 channel(10.3ー11.3ハm)により観測された熱赤外画像データをもちいた。

◎風向風速データ

  室蘭 のAMeDASによ って 観 測さ れた1時間毎の 風向風速データをも ち いた。

@ホタテガイ幼生分布データ

  ホタ テガイ幼生の輸送 実験の検証データと して5月15日か ら5月17日 にかけて噴火湾内各漁協がおこなったホタテガイ種苗調査データから幼 生分布データをもちいた。ホタテガイ幼生は海底からの鉛直曳きネットに より採集された。

【解析方法】

@湾内表層流に含まれる各流速成分の評価

  潮流成分、慣性振動流、北西風によって誘起される渦対などの吹送流を 分離するために次の解析処理をおこなった。4大分潮流(Kl,M2,01,S2)を 分離するために調和解析、慣性振動成分を分離するためにバンドパスフィ ルタ処理、吹送流成分をそれぞれ分離するためにEOF解析をおこなった。

なお、潮流 ・慣性振動などの 短周期成分を除去す るために24時間タイ ド ・キ ラー ・ フィ ルタ 処 理を おこ なった 後、EOF解析をお こなった。

@沿岸親潮の流入と流入後の移流過程

  噴火湾内に流入する沿岸親潮の分布・移動を連続的に判読することので きる熱赤外画像の選別をおこなった。3月2日から、3月4日にかけて観測 された熱赤外画像によって沿岸親潮の湾内への流入、流入後の湾内での分 布を連続的に判読することが可能であった。そこで該当期間内の熱赤外画 像にHF海洋レーダで観測された表層流ベクトルを重ね合わせた合成画像 を 作 成 し 、 沿 岸 親 潮 の 分 布 ・ 移 動 と 表 層 流 と の 関 係 を 解 析 し た 。

◎ホタテガイ幼生分布解析

  ホタテガイ幼生が湾内表層流によりどの様に輸送されているのかを検証 するためにHF海洋レーダにより観測された表層流をもちいて幼生の輸送 実 験 を お こ な っ た 。 実 験 期 間 は4月1日 か ら5月10日 ま でと し、4月1

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日 から5月1日 に かけ て1日1回幼 生に 模した モデル 粒子を 湾内 沿岸よ り投入し、オイラー・フグランジェ法をもちいてモデル粒子の追跡をおこ なった。

【結果と考察】

◎湾内表層流に含まれる各流速成分の評価

  平均流は南西流が卓越しており、その平均流速は6.71cm S'lであった。

主 に エ クマ ン吹送 流を 捉えて いると 考えら れる。 潮流 はKl分 潮流とM2 分潮流が潮流の卓越成分であり、噴火湾内表層流における潮流の影響は約 3%である。しかし大潮時の強流時において潮流の影響は25%に及び、大 潮時の上げ潮、下げ潮時には潮流の影響が無視できない。慣性振動流は湾 内表層流の20‑45%を占めており、胆振側で比率が小さく、渡島側で比率 が 大きくなる傾向があった。EOF解析の結果、第1モードは風下に向かう 吹 送流、第2モードは反時計回りの循環流、第3モードはエクマン吹送流 であると考えられる。数値モデルにより冬季噴火湾において支配的である と 示唆した北西風によって誘起される渦対は第4モードで寄与率は5.0% であり表層流において支配的ではたかった。

@沿岸親潮の流入と流入後の移流過程

  沿岸親潮の分布と表層流ベクトルの空間構造とを解析することにより、

沿 岸 親 潮の 噴火湾 ーの 流入を 引き起 こして いる流 速成 分は大 島・三 宅

(1990)らが数値モデルで示した北西風により誘起される湾北側に時計回り の循環流、南側に反時計回りの循環流をもつ渦対であることが明らかにな った。北西風が強く吹いている場合1こ渦対が誘起しており、湾口中央部に 形 成された北西流により湾口部外側に分布する沿岸親潮が渦対に取り込 まれるように湾内に流入していた。流入した沿岸親潮水塊は渦対内におい て2っ の循環 流によ ルマ ッシュ ルーム 型に分布していた。HF海洋レーダ が 観測した表層流データは北西風が弱まると渦対が反時計回りに回転し ていることを明瞭に示した。この結果は北西風が弱まると渦対が地形性ロ ス ビー波として湾内を反時計回りに回転するという数値モデルの結果を 支持している。さらに、流入した沿岸親潮は渦対内においてマッシュルー ム型の分布域を広げながら、渦対の回転とともに湾北側に輸送され分布す   ることが明らかとなった。

◎ホタテガイ幼生分布解析

    ホタテガイ幼生輸送実験により、ホタテガイ幼生の約85%が湾内に滞 留し、渡島沿岸と湾奥沿岸に集積することが明らかとなった。この結果、

  ホタテガイ幼生の表層流による湾外への流出は採苗不良の主要因とはな   り得ないと考えられる。実験結果と実測データとを比較した結果、相違点     ―1369ー

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は胆振沿岸に全く分布していないことと、湾奥において高濃度に分布する ことであった。胆振沖に分布しなかった理由はHF海、洋レーダで捉えた表 層流ではエクマン吹送流の影響が大きいため渡島沿岸に輸送されてしま うと考えられる。また湾奥で高濃度に分布した理由は本研究のモデル粒子 では幼生の死亡・沈降を考慮していないため、輸送中に死んでしまう幼生 が含まれているためと考えられる。より精度の高い輸送実験をおこなうた めには、幼生の死亡率や沈降率を明らかにし実験条件に組み込む必要があ る。

【おわりに】

  本研究では、HF海洋レーダにより観測された表層流ベクトルの空間構 造とNOAA熱赤外画像による 水塊分布とを組み合 わせて解析するこ とに より、沿岸親潮の噴火湾への流入と流入後の移流における物理過程を明ら かにすることができた。この成果は空間構造を連続的に観測できる陸上設 置型リモートセンシングと衛星リモートセンシングを組み合わせるマル チリモートセンシング手法をもちいた解析により得られた。沿岸域におけ る海洋環境モニタリングにおいて陸上設置型リモートセンシングと衛星 リモートセンシングを組み合わせたマルチリモートセンシングの有効性 を示した。さらに,水産生物への応用としてHF海洋レーダで観測された表 層流をもちいたホタテガイ幼生輸送実験を行い、集積する海域を明らかに し、今後の水産海洋学的応用の方向性を示した。

(5)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授 助教授

齊 藤 誠 一 三 浦 汀 介 飯 田 浩 二 三 宅 秀 男 米田國三郎 磯 田

  

     学位論文題名

HF 海洋レーダとNOAA/AVHRR による

噴 火 湾 内 表 層 流の 観 測

―沿 岸親 潮流 入期 におけ る物 理過程と そのホタテガイ幼生分布解析への応用―

  近 年 、 エ ル ニ ー ニ ュ な ど 地 球 規 模 の 環 境 変 化 が 沿 岸 域 へ ど の よ う な 影 響 を あ た え て い る か 、 グ ロ ーバ ル な 視点 で 解 明す る 国 際的 な プ ロジ ェ ク トLOICZ(Land‑Ocean Interactions in the CoastalZone)が実施 されてい る。沿 岸域は、 陸域・ 海域の境 界領域 として、 また陸 圏 ・ 水 圏 ・ 大 気 圏 に お け る い ろ い ろ な 変 動 の 相 互 作 用 の 場 と し て 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 認 識 さ れ る よ う に な っ て き た 。 こ の 沿 岸 域 に お け る 環 境 評 価 や 持 続 的 な 資 源 利用 が 人 類の 生 存 にと っ て 重要 な 課 題で あ る 。

  本 研 究 の 対 象 と し た 噴 火 湾 は 北 海 道 南 西 部 に 位 置 し 、 西 部 亜 寒 帯 循 環 を 形 成 す る 親 潮 を 起 源 と す る 沿 岸 親 潮 が 流 入 す る 。 噴 火 湾 は 、 東 京 湾 、 伊 勢 湾 、 大 阪 湾 な ど と 同 規 模 の 半 閉 鎖 系 湾 で あ る が 、 他 の 湾 は 暖 流 の 黒 潮 の 影 響 を 受 け て い る の に 対 し て 、 唯 一 、 寒 流 で あ る 親 潮 の 影 響 を 直 接 受 け て い る 。 寒 流 で あ る 沿 岸 親 潮 が 噴 火 湾 周 辺 の 沿 岸 域 に ど の 様 な 影 響 を 与 え て い る か を 明 ら か に す る こ と は 西 部 亜 寒 帯 循 環 流 と 沿 岸 域 と の 相 互 作 用 を理 解 す る上 で 重 要で あ る 。

  近 年 、 リ モ ー ト セ ン シ ン グ を 用 い た 海 洋 環 境 観 測 技 術 が 進 歩 し 、 そ れ ら を 応 用 し て 沿 岸 域 の 流 動 場 、 物 質 循 環 、 生 産 性 、 健 康 度 を モ ニ タ リ ン グ す る こ と に 関 心 が 高 ま っ て き た 。 噴 火 湾 に お い て 、 こ れ ま で の 観 測 は 断 続 的 、 も し く は 定 点 だ け に よ る た め 親 潮 系 水 の 湾 内 へ の 流 入 条 件 、 流 入 時 の 流 動 構 造 、 流 入 後 の 湾 内 で の 流 動 構 造 な ど 、 そ の 物 理 過 程に っ い てす べ て は明 ら か にさ れ て いな い 。

  本 研 究 は 、 こ れ ら の 流 動 構 造 を 解 明 す る た め に 、 広 く2次 元 的 な 流 れ や 水 塊 配 置 を 連 続 し て 捉 え ら れ るHF海 洋 レ ー ダ と 衛 星 を 同 時 に 用 い て 、 流 動 構 造 の 総 合 的 な 解 析 を お こ

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なった。さらに、HF海洋レーダにより観測された表層流をもちいてホタテガイ幼生の輸 送実験をおこない、採苗不良発生への物理的要因を解析しその影響を考察したものであ る。

  特に審査員一同が評価した点は以下の通りである。

1.過去の数値モデルで示された北西風により湾北側に時計回りの循環流、南側に反時     計回、りの循環流をもつ渦対が誘起されることを海洋HFレーダ観測で確認できた。

    さらに、その渦対に沿岸親潮が引き込まれていく過程をはじめて明らかにした。

2.渦対は北西風が弱まると地形性ロスビー波として湾内を反時計回りに回転するとい     う数値モデルの結果を、HF海洋レーダを用いることによりはじめて確認できた。

3.ホタテガイ幼生輸送実験により、ホタテガイ幼生の約85%が湾内に滞留し、渡島沿     岸と湾奥沿岸に集積することを明らかにした。この結果、ホタテガイ幼生の表層流     に よ る 湾 外 へ の 流 出は 採苗 不良の 主要 因と はな り得な いこ とを 示唆し た。

4.沿岸域における海洋環境モニタリングにおける陸上設置型リモートセンシングと衛     星リモートセンシングを組み合わせたマルチセンサーリモートセンシングの有効性     を示した。

  以上の諸点は、噴火湾内表層流の動態とそのホタテガイ幼生分布への影響に関する重 要な知見を得たものと認め、.さらにHF海洋レーダデータを解析してその結果を輸送実 験 へ 応 用 す る 新 し い 手法 に よ る 水 産 科 学 研 究 で あ ると し て 高 く 評 価 で き る 。   よって審査員一同は、申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるもの と判定した。

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