著者
峰尾 美也子
著者別名
Miyako MINEO
雑誌名
経営論集
号
89
ページ
89-101
発行年
2017-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00008577/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja小売構造変化の再考察
―全体的動向を中心に―
Re-examining the Changes in Retail Structure:
A Focus on General Trends
峰 尾 美也子
1. はじめに
2. 商業統計調査について
3. 小売構造の時系列的変化
(1) 店舗密度の推移
(2) 店舗数・従業者数・年間販売額・売場面積の推移
(3) 1 店舗あたりの推移
(4) 従業者規模別構成比の推移
(5) 売場面積規模別構成比の推移
(6) 大規模小売企業の年間販売額構成比の推移
(7) 経営組織別店舗数構成比の推移
(8) 本支店別構成比の推移
4. おわりに
1. はじめに
2015 年 6 月 30 日に、7 年ぶりに実施された 2014 年商業統計調査の速報集計
が公表されたのを皮切りとして、
2015 年末から 2016 年末にかけ、各種確報集計
が発表された。
拙著(2010)などにおいて、日本の小売構造変化に関する様々な角度からの時
系列の分析を行ったが、
2002 年ないしは 2004 年までの商業統計調査のデータを
用いたものであった。
直近のみでも、かつて日本最大の小売業であったダイエーが大型総合スーパー
事業をイオンリテールに移管し、ダイエーの店名が消えるという話題以外にも、
イトーヨーカ堂が
2020 年 2 月期までに全店舗の 2 割に相当する 40 店を閉鎖す
る方針が発表されたり、ユニーグループ・ホールディングスが最大
50 店の総合
スーパーの閉店や事業縮小を検討する方針が発表されるなど、総合スーパーの苦
戦が続いている。また、そごう・西武や三越伊勢丹なども数店舗を譲渡・閉店す
ることが発表されるなど、総合スーパーのみならず、百貨店の苦戦も続いている
のが現状である。これらの実態からも、この約
10 年間に、日本の小売構造に変化
が生じていることは明白である。
かくして本論文は、最新の
2014 年商業統計調査までの時系列データを用い、
店舗レベルと企業レベルの双方から、小売構造変化の再考察を行うものである。
2. 商業統計調査について
1952 年の調査開始以降、1976 年までは 2 年ごとに、1979 年以降は 3 年ごと
に調査が実施されている。
1997 年以降の調査からは 5 年ごとに実施され、その
中間年(調査の
2 年後)に簡易な調査が実施されている。2007 年の本調査実施
後、全国すべての企業・事業所を対象とする経済センサスが創設されたことに伴
い、商業統計調査(本調査)は経済センサス
-活動調査実施年の 2 年後に実施する
こととなった。
本論文で用いる商業統計調査のデータにおいては、
1999 年と 2004 年は簡易調
査(2009 年の簡易調査は経済センサスの創設に伴い中止)、2012 年は経済センサ
ス-活動調査より算出されたものとなる。
そして、2014 年商業統計調査は、経済センサス-基礎調査との同時調査(一体
的)によって実施されたものである。
ただし、
「平成
26 年調査は、日本標準産業分類の第 12 回改定及び調査設計の
大幅変更を行ったことに伴い、
前回実施の平成19 年調査の数値とは接続しない」
と
2014 年商業統計調査の利用上の注意に示されているよう、2014 年商業統計調
査は、本調査の調査間隔が
7 年に延びたのみではなく、拙著(2010)などで行っ
てきた時系列での一貫した分析が困難なものとなっている。
2014 年商業統計調査の利用上の注意には、『第 1 巻 産業編(総括表)』の集計
対象に関しても、以下のように記されている。
調査結果のうち、産業大分類が「I-卸売業、小売業」に格付けられた事業所
について、以下のとおり、集計したものである。
① 『第
1 巻 産業編(総括表)』の第 1 表
産業大分類「I-卸売業、小売業」に格付けられた事業所(調査対象事業
所)を全て集計しているが、年間商品販売額及び売場面積は、数値が得ら
れた事業所について集計した。
② 『第
1 巻 産業編(総括表)』の第 2 表~第 21 表、第 25 表及び第 26 表
産業大分類「I-卸売業、小売業」に格付けられた事業所のうち、以下の
全てに該当する事業所(集計対象(有効回答)事業所)について集計した。
・管理,補助的経済活動のみを行う事業所ではないこと
・産業細分類の格付に必要な事項の数値が得られた事業所であること
このため、上記①各表と事業所数、従業者数は一致しない。なお、年間
商品販売額と売場面積については、当該調査項目の数値が得られた事業所
が同じであることから、同値となっている。
このことから、時系列の分析のみならず、
2014 年調査の各表の集計対象には注
意が必要であり、単純に各表間での数値を比較することができないという限界も
ある。
また、鈴木(
2016)において、
悉皆調査(センサス:
census)であるはずの商業統計調査の捕捉率が大幅
に低下しているだけでなく、各種指標の根拠が過去のそれと性格を異とする
ものになっていることは、一貫性のある分析を行ううえで大きな障壁となる
(鈴木,
2016,p.ⅱ)。
商業統計調査の制度変更による影響により、複数店舗を経営する企業に対
する本部一括調査の実施などによる捕捉率の低下、産業分類の変更、商業統
計で捕捉する(しない)事業所タイプの見直しなどを反映し、
2014 年の商業
統計調査のデータは、これまでに実施されてきた時系列で一貫した分析を行
うことが困難なものとなり、統計そのものの制約により、望ましい形で時系
列による構造分析に支障をきたしている(鈴木,
2016,p.ⅵ)。
と指摘されているとおり、本論文における時系列的分析も制約を抱えたものとな
っている。
1999 年と 2004 年は簡易調査、2012 年は経済センサス-活動調査より算出され
たデータであり、2014 年は 2007 年調査の数字とは接続しないものであるなど、
本論文においては、これらの制約が存在することを前提として、調査結果を考察
する。
3. 小売構造の時系列的変化
(1) 店舗密度の推移
1985 年から 2014 年までの図表 1
(1)に示される店舗密度の推移を見るなら、1
㎞
2あたりの店舗数は一貫して減少し、1 店舗あたりの人口および 1 店舗あたり
の世帯数は一貫して増加している。このことから、日本の小売構造の特性として
指摘されていた過多性は徐々に薄れる傾向にある。
図表
1 店舗密度の推移
1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 1 ㎞2あたり店舗数(店) 4.3 4.3 4.2 4.0 3.8 3.7 1 店舗あたり人口(人) 73.7 75.2 77.4 82.9 88.2 89.5 1 店舗あたり世帯数(戸) 23.6 24.7 26.3 29.1 32.0 33.3 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 1 ㎞2あたり店舗数(店) 3.4 3.3 3.0 2.7 2.7 1 店舗あたり人口(人) 97.3 102.4 111.7 122.6 123.4 1 店舗あたり世帯数(戸) 37.4 40.3 45.4 52.4 53.2 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」「国勢調査」「全国都道府県市区町村別面積 調」「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」より算出。(2) 店舗数・従業者数・年間販売額・売場面積の推移
1970 年から 2014 年までの店舗数・従業者数・年間販売額・実質年間販売額・
売場面積の推移は図表
2 である。
商業統計調査で示される年間販売額のデータは名目であり、これらの増減は物
価指数の変動による影響を受けるため、そのままでは正しく判断することができ
ない。そこで、物価指数の変動による影響を削除するため、
「
2015 年基準消費者
物価指数」の長期時系列データ(品目別価格指数・全国・年平均・持家の帰属家
賃を除く総合指数)をもとに、
1970 年を 100 としてデフレートし、実質年間販
図表
2 店舗数・従業者数・年間販売額・売場面積の推移
1970 年 1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 店舗数(1000 店) 1,471 1,496 1,548 1,614 1,674 1,721 伸び率(%) 1.3 0.8 1.7 2.1 1.2 0.9 従業者数(1000 人) 4,926 5,141 5,303 5,580 5,960 6,369 伸び率(%) 3.0 2.2 1.6 2.6 2.2 2.2 年間販売額(100 億円) 2,177 2,829 4,030 5,603 7,356 9,397 伸び率(%) 14.8 14.0 19.3 17.9 9.5 8.5 実質年間販売額(100 億円) 2,177 2,558 2,621 2,978 3,368 3,699 伸び率(%) 7.8 8.4 1.2 6.6 4.2 3.2 売場面積(万㎡) 5,472 6,111 6,741 7,497 8,574 9,543 伸び率(%) 7.2 5.7 5.0 5.5 4.6 3.6 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 店舗数(1000 店) 1,629 1,620 1,591 1,500 1,420 1,407 伸び率(%) -1.8 -0.2 -0.6 -1.9 -1.8 -0.5 従業者数(1000 人) 6,329 6,851 6,937 7,384 7,351 8,029 伸び率(%) -0.2 2.7 0.4 2.1 -0.2 4.5 年間販売額(100 億円) 10,172 11,484 14,064 14,333 14,774 14,383 伸び率(%) 2.7 4.1 7.0 0.6 1.0 -1.3 実質年間販売額(100 億円) 3,767 4,224 4,747 4,685 4,766 4,626 伸び率(%) 0.6 3.9 4.0 -0.4 0.6 -1.5 売場面積(万㎡) 9,451 10,205 10,990 12,162 12,808 13,387 伸び率(%) -0.3 2.6 2.5 3.4 1.7 2.2 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 店舗数(1000 店) 1,300 1,238 1,138 1,033 1,025 伸び率(%) -2.6 -2.4 -2.8 -1.9 -0.4 従業者数(1000 人) 7,973 7,762 7,579 7,404 7,686 伸び率(%) -0.2 -1.3 -0.8 -0.5 1.9 年間販売額(100 億円) 13,511 13,328 13,471 11,485 12,218 伸び率(%) -2.1 -0.7 0.4 -3.1 3.1 実質年間販売額(100 億円) 4,476 4,429 4,476 3,852 3,949 伸び率(%) -1.1 -0.5 0.4 -3.0 1.2 売場面積(万㎡) 14,062 14,413 14,966 13,292 13,485 伸び率(%) 1.7 1.2 1.3 -2.3 0.7 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.86 に加筆。 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」「2015 年基準消費者物価指数」より算出。売額を算出した。また、年平均伸び率は、
CAGR(年平均成長率)の計算式を用
いて算出した。
前章で述べた
2014 年商業統計調査の制度変更以外にも、集計基準の細かい変
化はあるが、図表
2 を見るなら、1980 年代に至るまで小売店舗数は一貫して増
加し続けているが、
1982 年をピークとして減少に転じ、その減少傾向は 1990 年
代からは極めて顕著に現れ、
2014 年まで続いている。その反面、一部例外はある
ものの、従業者数は
2002 年
(2)、実質年間販売額は
1997 年、売場面積は 2007 年
まで増加傾向を示している。
前述のとおり、1999 年と 2004 年は簡易調査のデータ、2012 年は経済センサ
ス-活動調査より算出されたデータ、2014 年は制度変更がなされたデータである
ため、特に
2007 年以降の傾向を断言することは困難であるが、零細性および過
多性という特性は弱まっている。
しかしながら、従業者数、実質年間販売額、売場面積が減少傾向に転じている
可能性が最新のデータからは確認できる。
2014 年のデータでは、年間商品販売額
及び売場面積に関しては、集計対象となる事業所が異なるため注意が必要である
が、特に実質年間販売額が減少傾向に転じていることは、小売業の苦戦・低迷を
反映した数値なのかもしれない。
(3) 1 店舗あたりの推移
図表
3 を見るなら、1 店舗あたりの従業者数、年間販売額、実質年間販売額、
売場面積は全て
1970 年に比べて増加傾向にあることから、零細性の弱まりと、
大型化の進展を読み取ることができる。ただし、
2014 年調査の制約から断言する
ことはできないが、
1 店舗あたり実質年間販売額が 2007 年から 2014 年にかけて
減少しているのは注目に値する。
(4) 従業者規模別構成比の推移
図表
4 より、従業者規模が 1 人~2 人の店舗数の割合は、2014 年に至るまで低
下し続けているが、2014 年時点でも 40.8%を占めている。
零細規模(
1 人~4 人)・小規模(5 人~9 人)・中規模(10 人~49 人)・大規模
(
50 人以上)という店舗規模の 4 区分で図表 4 を見るなら、零細規模小売店舗の
店舗数の割合は、
2014 年時点でも 60%以上を占めているものの低下し続けてい
る反面、小規模小売店舗・中規模小売店舗・大規模小売店舗の店舗数の割合は増
加している。
年間販売額の割合では、零細規模小売店舗は、
2014 年時点では約 10%と低下
し続けている反面、中規模小売店舗が約
40%を占め、大規模小売店舗は、店舗数
の割合では
1%に満たないが、年間販売額では約30%を占めるなど増加している。
図表
3 1 店舗あたりの推移
1970 年 1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 従業者数(人) 3.35 3.44 3.43 3.46 3.56 3.70 指数(1970=100) 100.0 102.7 102.3 103.3 106.4 110.5 年間販売額(万円) 1,480 1,892 2,603 3,471 4,395 5,459 指数(1970=100) 100.0 127.8 175.9 234.6 297.0 368.9 実質年間販売額(万円) 1,480 1,710 1,693 1,845 2,012 2,149 指数(1970=100) 100.0 115.6 114.4 124.7 136.0 145.2 売場面積(㎡) 37.19 40.86 43.54 46.45 51.23 55.44 指数(1970=100) 100.0 109.9 117.1 124.9 137.7 149.0 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 従業者数(人) 3.89 4.23 4.36 4.92 5.18 5.71 指数(1970=100) 116.1 126.3 130.2 147.0 154.6 170.4 年間販売額(万円) 6,246 7,090 8,838 9,555 10,407 10,223 指数(1970=100) 422.0 479.1 597.2 645.7 703.2 690.8 実質年間販売額(万円) 2,313 2,608 2,983 3,123 3,357 3,288 指数(1970=100) 156.3 176.2 201.6 211.1 226.8 222.2 売場面積(㎡) 58.03 63.00 69.07 81.09 90.22 95.15 指数(1970=100) 156.0 169.4 185.7 218.0 242.6 255.8 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 従業者数(人) 6.13 6.27 6.66 7.16 7.50 指数(1970=100) 183.2 187.3 199.0 214.0 224.0 年間販売額(万円) 10,393 10,765 11,839 11,114 11,921 指数(1970=100) 702.3 727.4 800.0 751.0 805.5 実質年間販売額(万円) 3,443 3,577 3,934 3,728 3,853 指数(1970=100) 232.6 241.7 265.8 251.9 260.4 売場面積(㎡) 108.16 116.42 131.53 128.63 131.58 指数(1970=100) 290.8 313.0 353.6 345.8 353.8 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.86 に加筆。 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」「2015 年基準消費者物価指数」より算出。図表
4 従業者規模別構成比の推移(単位:%)
1970 年 1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 店舗数 1 人~2 人 63.9 62.0 62.5 61.9 61.1 60.2 3 人~4 人 22.5 23.3 23.3 23.7 24.0 24.0 5 人~9 人 9.6 10.5 10.2 10.3 10.5 10.9 10 人~49 人 3.7 3.9 3.7 3.8 4.1 4.6 50 人以上 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.4 年間販売額 1 人~2 人 15.5 14.8 15.1 14.8 14.5 14.0 3 人~4 人 18.9 19.1 19.1 19.3 19.0 18.9 5 人~9 人 21.2 21.6 21.1 21.5 20.8 22.0 10 人~49 人 24.1 24.9 23.6 23.9 25.0 25.1 50 人以上 20.3 19.6 21.2 20.5 20.8 20.1 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 店舗数 1 人~2 人 57.7 54.0 53.2 51.0 49.9 48.7 3 人~4 人 25.1 26.1 26.2 24.7 24.7 22.5 5 人~9 人 11.7 13.2 13.4 14.8 15.0 16.1 10 人~49 人 5.1 6.3 6.6 8.8 9.6 11.6 50 人以上 0.4 0.5 0.5 0.7 0.8 1.0 年間販売額 1 人~2 人 12.7 11.2 10.8 9.3 8.5 7.5 3 人~4 人 18.4 16.8 16.4 14.0 13.2 10.8 5 人~9 人 21.6 21.0 20.5 20.2 19.3 18.3 10 人~49 人 26.6 29.6 30.3 33.3 34.7 36.7 50 人以上 20.6 21.5 22.0 23.2 24.3 26.7 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 店舗数 1 人~2 人 46.4 45.9 44.3 44.8 40.8 3 人~4 人 22.9 22.9 22.2 22.0 21.8 5 人~9 人 16.8 16.8 17.7 17.0 18.8 10 人~49 人 12.7 13.1 14.4 14.4 16.8 50 人以上 1.1 1.2 1.4 1.7 1.8 年間販売額 1 人~2 人 6.5 6.3 5.4 5.0 4.6 3 人~4 人 10.0 9.5 8.8 7.8 7.6 5 人~9 人 18.1 17.6 17.8 16.0 17.1 10 人~49 人 37.5 38.0 38.9 38.8 41.0 50 人以上 27.9 28.6 29.1 32.4 29.8 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.87 に加筆・修正。 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」より算出。(5) 売場面積規模別構成比の推移
零細規模(
100 ㎡未満)、小規模(100 ㎡以上 500 ㎡未満)、中規模(500 ㎡以
上
1000 ㎡未満)、大規模(1000 ㎡以上 3000 ㎡未満)、超大規模(3000 ㎡以上)
の
5 区分で図表 5
(3)を見るなら、店舗数の約
60%が零細規模小売店舗に集中して
いる一方で、大規模小売店舗および超大規模小売店舗は
3%にも満たないが、零
細規模小売店舗のみが減少傾向を示している。
年間販売額の割合でも、零細規模小売店舗が大幅な減少傾向を示している。特
徴的であるのは、売場面積が「なし・不詳」の小売店舗の割合が、店舗数、年間
販売額ともに増加していることである。2014 年商業統計調査の利用上の注意に
よれば、
「売場面積については、当該項目について調査をしていない牛乳小売業
(宅配専門)
、自動車(新車・中古)小売業、建具小売業、畳小売業、ガソリンス
タンド及び新聞小売業(宅配専門)に属する事業所並びに訪問販売、通信・カタ
ログ販売、インターネット販売等で売場面積の無い事業所は不詳となる。
」と記載
されていることからも、インターネット小売の進展などを反映していると捉える
ことができる。
(6) 大規模小売企業の年間販売額構成比の推移
図表
6 の年間販売額構成比を見るなら、資本金規模と従業者規模ともに、大規
模小売企業への集中度が非常に高まっていることが明白である。
しかし、資本金
1000 万円以上の大企業(商業企業)の企業数は、1985 年:
28,671 社、1988 年:35,142 社、1991 年:44,576 社、1994 年:63,028 社、1997
年:
105,375 社、2002 年:99,400 社、2007 年:87,535 社、2014 年:67,186 社、
従業者数
50 人以上の大企業(商業企業)の企業数は、1985 年:7,252 社、1988
年:8,355 社、1991 年:8,592 社、1994 年:10,344 社、1997 年:10,241 社、
2002 年:10,160 社、2007 年:9,442 社、2014 年:9,314 社である。資本金 1000
万円以上の大企業(商業企業)の企業数が
1997 年、従業者数 50 人以上の大企業
(商業企業)の企業数が
1994 年をピークに減少していることは、本論文の冒頭
に述べた変化を反映しているといえよう。
(7) 経営組織別店舗数構成比の推移
図表
7 より、法人商店の割合の上昇、個人商店の割合の低下が顕著であり、法
人化が進展している。
また、常時雇用者なしの個人商店を生業店として捉えれば、これら生業店の割
合が高いことから、日本の小売構造の特性として生業性が指摘されてきたが、
2014 年時点では 20%を下回るまで、その割合は大幅に低下し、全体の 40%を占
める個人商店の半数以下となっている。このことからも、生業性が薄れてきてい
ることは明白である。
図表
5 売場面積規模別構成比の推移(単位:%)
1970 年 1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 店 舗 数 100 ㎡未満 93.7 91.9 90.0 88.0 86.0 84.3 100 ㎡以上 500 ㎡未満 4.7 4.3 5.4 5.2 6.2 7.1 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 0.8 0.5 0.4 0.4 0.5 0.5 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 0.3 3000 ㎡以上 ‐ ‐ ‐ ‐ 0.1 0.1 なし・不詳 0.4 3.0 3.9 6.2 6.9 7.7 年 間 販 売 額 100 ㎡未満 54.7 51.8 48.4 43.7 40.7 38.1 100 ㎡以上 500 ㎡未満 20.3 17.4 17.7 14.4 15.2 16.0 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 6.6 5.0 4.4 4.2 4.7 4.7 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 16.4 17.1 18.3 18.1 5.6 5.7 3000 ㎡以上 ‐ ‐ ‐ ‐ 13.5 13.7 なし・不詳 2.0 8.7 11.2 19.5 20.3 21.7 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 店 舗 数 100 ㎡未満 81.1 78.4 75.5 73.5 70.8 69.7 100 ㎡以上 500 ㎡未満 7.7 8.9 10.4 12.4 13.9 14.2 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 0.5 0.5 0.6 0.8 0.7 0.8 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 0.3 0.4 0.4 0.6 0.6 0.7 3000 ㎡以上 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.3 なし・不詳 10.3 11.7 13.0 12.6 13.7 14.3 年 間 販 売 額 100 ㎡未満 35.3 33.2 29.9 27.8 24.5 23.5 100 ㎡以上 500 ㎡未満 17.5 18.8 19.9 21.7 22.4 22.6 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 4.6 4.2 3.9 4.5 4.5 4.9 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 5.8 6.0 5.9 6.7 7.5 8.2 3000 ㎡以上 14.1 14.5 15.0 15.3 16.2 16.6 なし・不詳 22.6 23.3 25.4 24.0 24.9 24.2 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 店 舗 数 100 ㎡未満 67.5 66.5 63.3 59.2 56.3 100 ㎡以上 500 ㎡未満 14.9 15.3 16.6 17.7 19.3 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 1.7 2.0 2.5 3.4 3.8 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 0.9 1.0 1.2 1.9 2.0 3000 ㎡以上 0.4 0.4 0.5 0.7 0.7 なし・不詳 14.7 14.9 15.9 17.1 17.9 年 間 販 売 額 100 ㎡未満 21.9 20.3 18.6 14.6 14.5 100 ㎡以上 500 ㎡未満 20.1 19.7 18.4 16.6 17.7 500 ㎡以上 1000 ㎡未満 7.3 8.0 8.4 8.9 8.9 1000 ㎡以上 3000 ㎡未満 9.1 9.6 10.5 13.3 12.1 3000 ㎡以上 17.2 17.7 17.7 19.4 16.4 なし・不詳 24.4 24.6 26.5 27.3 30.5 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」より算出。 (注)1976 年までは 1000 ㎡以上という集計基準であったため、1970 年~1976 年の 1000 ㎡ 以上3000 ㎡未満の数値は、1000 ㎡以上の店舗全てを表している。図表
6 大規模小売企業の年間販売額構成比の推移(単位:%)
1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 資本金1000 万円以上 30.6 20.2 39.1 33.0 45.4 従業者数50 人以上 31.2 19.0 37.5 30.0 41.5 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 資本金1000 万円以上 47.7 51.9 53.4 64.2 69.9 従業者数50 人以上 43.6 47.6 47.8 56.7 56.9 2002 年 2007 年 2014 年 資本金1000 万円以上 72.0 73.4 85.7 従業者数50 人以上 59.7 66.1 78.1 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.87 に加筆・修正。 (資料)「商業統計調査」より算出。 (注1)個人商店はすべて中小企業とした。 (注2)従業者別は法人商店、資本金別は法人商店の会社組織の大企業の比率である。図表
7 経営組織別店舗数構成比の推移(単位:%)
1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 1985 年 法人商店 17.8 19.0 20.6 22.8 25.3 27.6 個人商店 82.2 81.0 79.4 77.2 74.7 72.4 (常時雇用者なし個人商店) 66.2 65.4 63.6 56.4 58.8 54.5 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 2002 年 法人商店 31.1 35.5 38.7 41.3 43.2 44.9 個人商店 68.9 64.5 61.3 58.7 56.8 55.1 (常時雇用者なし個人商店) 41.4 42.9 43.4 37.2 34.4 - 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 法人商店 46.7 49.7 56.3 59.5 個人商店 53.3 50.3 43.7 40.5 (常時雇用者なし個人商店) 29.3 30.4 21.3 17.6 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.87 に加筆。 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」より算出。 (注)2002 年の常時雇用者なし個人商店のデータは未掲載のため算出できず。(8) 本支店別構成比の推移
商業統計調査では、他の場所に同一経営の本店、支店、支社、営業所などを持
たない事業所(
1 企業 1 事業所)を「単独事業所」(図表 8 では単独店と表記)、
他の場所に同一経営の支店、支社、営業所などがあり、それらのすべてを統括し
ている事業所を「本店」
、他の場所にある本店などの統括を受けている事業所(支
店、支社の名称をもつ事業所のほか、営業所、売店、出張所、企業組合の販売所
などの名称で商品の売買を主として行っている事業所、上位の本店などの統括を
受ける一方、下位の事業所を統括している中間的な地域本店なども含む)を「支
店」と定義している。
図表
8 より、単独店の比率が低下する反面、支店の増加率が大きいことは、小
売業の多店舗展開(チェーン化)が進展していることを意味する。法人企業のみ
のデータとなるが、
50 店舗以上を展開する企業数も、1972 年には 51 社しかなか
ったが、
1985 年:220 社、1988 年:326 社、1991 年:368 社、1994 年:463 社、
1997 年:503 社、2002 年:596 社、2007 年:646 社、2014 年:790 社と年々増
加し続けている。
図表
8 本支店別構成比の推移(単位:%)
1970 年 1972 年 1974 年 1976 年 1979 年 1982 年 店舗数 単独店 91.8 88.3 87.0 85.5 83.2 81.2 本店 2.1 3.3 3.5 3.8 4.5 4.7 支店 6.1 8.4 9.4 10.6 12.4 14.2 単独店の年間販売額 57.4 54.5 51.5 49.3 46.2 44.0 1985 年 1988 年 1991 年 1994 年 1997 年 1999 年 店舗数 単独店 80.1 78.1 75.8 74.4 72.8 73.1 本店 4.8 4.8 5.2 5.0 4.9 3.7 支店 15.2 17.1 19.0 20.6 22.2 23.2 単独店の年間販売額 42.3 39.3 35.5 35.3 32.3 31.2 2002 年 2004 年 2007 年 2012 年 2014 年 店舗数 単独店 71.8 69.0 67.4 67.2 61.7 本店 3.7 4.5 3.9 4.3 4.5 支店 24.5 26.5 28.7 28.5 33.9 単独店の年間販売額 29.4 25.4 24.2 19.8 18.0 (出所)鈴木・関根・矢作(1997),p.87 に加筆。 (資料)「商業統計調査」「経済センサス-活動調査」より算出。4. おわりに
商業統計調査における様々な変更から生じる制約のため、時系列の分析を厳密
に行うことは不可能であったが、最新の
2014 年商業統計調査までのデータを用
い、小売構造変化を様々な視点から検討をした結果、日本の代表的な構造的特性
として指摘されてきた零細性、過多性、生業性などは、年々その傾向が弱まり、
構造変化が生じていることを再度確認することができた。
小売業の全体的動向としては、大型化が進展、大規模小売企業への集中度の上
昇、法人化の進展、多店舗展開(チェーン化)の進展なども時系列データから明
らかとなったが、さらなる構造分析として、業種別、業態別、地域別など視点か
らの検討を次稿以降に続けておこなう。
【注】
(1) 1 ㎞2あたりの店舗数を算出するにあたり、1985 年の面積のみ「国勢調査」のデータを 使用し、その他は「全国都道府県市区町村別面積調」の該当年データを使用した。また、 「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」では、2012 年 7 月 9 日から外 国人住民が住民基本台帳法の適用対象となったため、2013 年調査から「外国人住民」の区 分が追加され、これに伴い、「日本人住民」と「外国人住民」の計を「総計」として記載し ている。2016 年調査では、日本人住民のデータのみを用いた。 (2) 現実に事業所で働いている人数を意味する就業者数も、2002 年:8,440,574 人、2004 年:8,376,735 人、2007 年:8,062,196 人、2012 年:6,055,186 人、2014 年:6,193,355 人と減少傾向にある。 (3) 1970 年から 2014 年までの間では、売場面積の取扱い範囲の変更や売場面積の計上とし て除く対象となる小売業も変更されている。また、2014 年の調査からは、売場面積規模別 データとして発表される集計対象が変更されている(2012 年も同様)。【参考文献】
鈴木安昭・関根孝・矢作敏行編(1997).『マテリアル流通と商業 第 2 版』有斐閣. 鈴木安昭(2016).『新・流通と商業 第 6 版』有斐閣.(東伸一・懸田豊・三村優美子 補訂) 峰尾美也子(2010).『小売構造変化―大型化とその要因―』千倉書房.【新聞記事】
日本経済新聞「イオン「脱・総合」へ転換、スーパー350 店、5 年で改装、地域ごとに専門売り 場」『日本経済新聞』2016 年 1 月 4 日,朝刊,1. 日本経済新聞「岐路に立つ総合スーパー ①日本独特の店舗形態」『日本経済新聞』2016 年 3 月 14 日,朝刊,21. 日本経済新聞「百貨店、大量閉鎖時代に、三越千葉店、営業終了へ、インバウンド失速で暗転、 新業態や海外戦略…力不足」『日本経済新聞』2016 年 9 月 8 日,朝刊,15. 日本経済新聞「「選択と集中」事業効率重視、グループ構造改革案を公表、百貨店、首都圏に集 中(揺れるセブン&アイ)」『日本MJ(流通新聞)』2016 年 10 月 10 日,5. 日本経済新聞「企業再生成功の条件(2)総合スーパー、変われぬ経営―ダイエー60 年「消える 看板」、個性表せぬ商品、トップに権限集中」『日本経済新聞』2016 年 12 月 4 日,朝刊, 11.【使用データ】
国土交通省国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調」 過去の面積調 平成16 年~平成 26 年 http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/OLD2-MENCHO-title.htm(2016 年 12 月 20 日参照) 過去の面積調 昭和63 年~平成 15 年 http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/OLD-MENCHO-title.htm(2016 年 12 月 20 日参 照) 総務省統計局「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」 調査の結果(年次)https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020102.do?_toGL080201 02_&tclassID=000001028704&cycleCode=7&requestSender=estat(2016 年 12 月 20 日参照) 総務省統計局「2015 年基準消費者物価指数」 長期時系列データ 品目別価格指数 全国 持家の帰属家賃を除く総合指数(1947 年 ~最新年)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001074279&cycode=0 (2016 年 12 月 20 日参照)
株式会社アイ・エヌ情報センター 経済統計データサービス INDB Economic Web Library 大規模統計Finder(オンライン・データベース)
「国勢調査(人口等基本集計)」(2016 年 12 月 20 日参照) 「商業統計表」(2016 年 12 月 20 日参照)
「経済センサス」(2016 年 12 月 20 日参照)