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幹線道路の交通規制に係る渋滞対策と社会的合意形成手法 ~大分駅付近連続立体交差事業に伴う跨線橋撤去工事を事例として~ 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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全文

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幹線道路の交通規制に係る渋滞対策と社会的合意形

成手法 ∼大分駅付近連続立体交差事業に伴う跨線

橋撤去工事を事例として∼

著者

二宮 仁志

著者別名

Hitoshi NINOMIYA

雑誌名

工業技術

41

ページ

74-77

発行年

2019-02

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00010949/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

幹線道路の交通規制に係る渋滞対策と社会的合意形成手法

~大分駅付近連続立体交差事業に伴う跨線橋撤去工事を事例として~

A methodology for facilitating consensus-building

to mitigate traffic congestion in public works

二宮 仁志* 1.はじめに 社会基盤整備における合意形成や市民関与に関わる 法改正やガイドライン整備は進んでいる1).その対象は, 新設・改築に係る計画策定プロセスを主眼としており, 熟度や事業の影響度に応じて合意形成手法を検討する ことを推薦している.しかし,その具体的方策は示され ておらず,現場では,事業種別に関わらず,事業用地に 係る地権者や既得権者,工事箇所周辺住民等,事業執行 に影響を与える利害関係者を特定し説明会(以下,「従 来方式」)を開催する手法が多用されている2).また, 供用中の施設の維持補修や解体・撤去など社会基盤サー ビスの利用制限や停止を伴う工事においては,事業に関 心・懸念を抱く人々(以下,「ステークホルダー」)の範 囲が限定されていない状況において,不特定多数の人々 が関わる合意形成(以下,「社会的合意形成3)」が求め られ,従来方式のみでは十分対応できない場合が少なく ない.不特定多数の社会基盤施設利用者(以下,「ユー ザー」)に対して,どのようにコミュニケーションを図 ればよいのか,何からはじめて,どの程度まで対話・対 策を講じればよいか,現場では手探り状態で試行錯誤が 続いている.社会的合意形成の手法やプロセスは,事業 担当者の裁量により相当程度異なっており,必ずしも公 平性が担保されているとは言い難いのが現状といえる. 本研究では,幹線道路の交通規制に係る渋滞対策 の検討・実践プロセスについて事例研究するとともに, ユーザーをはじめ不特定多数の人々を対象とした社会 的合意形成手法について考察することを目的とする.事 例研究では,周辺地区をはじめ,大分県内外から広域的 に利用されている国道 210 号にかかる跨線橋「大道陸橋」 撤去工事4)を選定した. 2.事例研究対象工事の概要と特色 県都大分の中心市街地は,JR 大分駅を中心に都市機 能が集積し発展してきた.一方,中心市街地は,鉄道に より南北に分断され,市街地の一体的発展を妨げられる とともに,踏切での事故や交通渋滞などの問題も指摘さ れてきた.大分駅付近連続立体交差事業では,道路と鉄 道を立体交差化し,全13 箇所の踏切を撤去し,併せて 周辺の街路網を整備することで,安全で円滑な南北市街 地間の交流促進ならびに一体的発展を目指している5) 当該事業での最大の難関は,図1 及び図 2 に示す大 道陸橋(既設跨線橋)の撤去工事であった.交通量は, 約5 万台/日,全面通行止は社会的にも影響が大きい. 図 1 大分駅付近連続立体交差事業と大道陸橋の位置 大道陸橋 図 2 大道陸橋の撤去前の状況4) (着工前 近景)

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幹線道路の交通規制に係る渋滞対策と社会的合意形成手法

A methodology for facilitating consensus-building to mitigate traffic congestion in public works 二宮 仁志 一方,国道10 号との交差点に近接するとともに,沿線 にマンションやホテルが立ち並ぶなど,安全な道路縦横 断線形の確保が困難であり,その移転補償にも莫大な費 用と時間を要するなど,仮橋設置による迂回は技術的に も経済的にも現実的ではないといえる. 大道陸橋は,小規模の橋梁(橋長20m程度の跨線橋 1橋と跨道橋2 橋)と,コンクリート擁壁に囲まれた 盛土から成る.跨線部はJR九州(夜間・機電停止)施 工,その他は大分県(昼間)施工である.撤去工事の主 たる工種は,土工(約30,000m3)と擁壁撤去工(約2,600 m3)であり,それ故,工期を要し,粉塵や騒音など周 辺環境への配慮ならびに天候に左右されやすい特性を 有する.撤去後,JR 高架橋架設工事,道路工事(舗装 工 約 14,000m2等)を施工した. 3.全面通通行止めに係る渋滞対策とマネジメン ト 3.1 ステークホルダーの利害調整プロセス 工事期間中の交通規制によって,市内の交通に多 大な影響を及ぼすことが想定されたため,2005 年から, 国,県,市,県警,JR,バス・タクシー協会,商工会, 自治会等の関係機関で構成される「大分駅付近連続立体 交差事業交通円滑化検討部会」を設置し,交通処理にお ける課題の抽出や効果的な対策等について検討を重ね た.当部会での議論を踏まえ,迂回路整備や交差点改良 等を中心とするハードと,公共交通機関への転換や時差 通勤を呼びかけるソフトの一体的対策,それらの取組に ついて情報発信する広報活動を一体的に推進してきた. 3.2 ハード・ソフト両面からのアプローチ 図 3 に示す南北のピーク時における車両進行方向等 を考慮して迂回ルートを設定した.県では,新たに高規 格道路を,市では,周辺の街路を迂回路として利用でき るよう事業スケジュールを調整・整備した.また,必要 な用地を借地して既設市道を暫定的に拡幅(2 車線→4 車線)するなど,仮設費用を抑えながら交通容量の確保 に努めた.その他,迂回交通の集中が予想される幹線道 路においては,迂回路への誘導を促すため、車線運用の 変更や交差点改良等を実施した.迂回路整備と併せて, 特定の道路への過度な交通集中を抑制・分散し適正に交 通誘導するために,国・県・市・県警と協力して,迂回 路に監視カメラ(11 基)や車両感知器(54 基)を設置 するなど①交通情報を的確に収集し,②情報案内板(3 基新設)等による迅速で正確な情報提供を行うとともに, ③信号制御による交通処理の最適化を推進している.ま た,生活道路への迂回車両の流れ込みを防止するため, 予告看板等(170 枚)により適切な迂回誘導に努めると ともに,通行量の増加が予想される細街路には,小中学 図 3 方面別 迂回ルートの検討4) 図 4 主要迂回路の総交通量と交通容量4) 3000 2500

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選鵡 の 心 2000 1500 1000 【車のビークを分散させるため】 朝の7時め分-8時珀分を避ける 寺差出動の拡大 [車の総量を抑えるため】 公共交遍機関への乗換— 近場への徒歩・自転車利用 環境遍動の促進 6:30 7:00 ~

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校やPTA等(17 校)と安全対策について協議を重ね ながら,交通整理員の配置(28 人),区画線の引き直し (55 路線、延べ 約 13,400m)や注意喚起看板(147 枚) の設置等を行った. 迂回路整備と平行して,通行止めに伴う渋滞緩和のた め,2006 年から 2 つの環境通勤への参加を呼びかけて きた.ラクラク環境通勤は,通勤手段をマイカーから公 共交通機関等へ転換する通勤形態,スイスイ環境通勤は、 マイカーでの通勤時間帯をピーク時(7:30~8:30)から 前後にずらす通勤形態である.第 7 回交通円滑化検討部 会(10/29 開催)では,最新の交通量(図 4 に示す 14 路線の合計)での検証結果をもとに,朝のピーク時間帯 から更に 1,000 台の車を削減・分散する新たな目標を設 定した.通行止開始までに,県職員 320 台,市職員 193 台,民間企業等 547 台、計 1,060 台の協力者を確保した. その他,公共交通への転換促進のため,パークアンドラ イド駐車場を 6 箇所(241 台)整備した. 3.3 戦略的広報活動の展開 早期から横断幕やホームページ等により概ね県内全 域にわたり工事場所や期間について告知し,工事が近づ くに従い,順次,周辺地区へ説明会を行うなど,広域か ら狭域へ,また,広報内容も工事の影響や迂回路等詳細 情報を含むものとするなど戦略的に広報展開した.県内 幹線道路への横断幕設置(40 箇所),医療機関・学校・ 企業・道の駅等でのポスター掲示(7,100 枚),小中学 校等への工事説明会 51 回(2,607 人),現場見学・視察 等 25 回(1,487 人),街頭 PR 6 回、かわら版「駅高架 便り」回覧 4 回(356 地区 7,500 部回覧、最終号 362 地 区 96,000 部配布),テレビ,ラジオ,市報,新聞,各種 情報誌など,広域から狭域に渡り多様な媒体・機会を活 用して周知・PR 活動を行った.また,工事個所の傍に は,気軽に事業や工事に関する情報を入手でき,意見・ 要望を言えるオープンハウスを開設した.パネル展示, ビデオ視聴,各種資料の入手はもとより,事務員を常駐 させ対面での説明に努めるともに,毎週水曜日には,担 当職員との対話機会を設けた.朝の通勤時間帯(7~9 時)には,ケーブルテレビ,電話(自動音声応答),ホ ームページを通じて,主要迂回路の状況(所要時間等) を随時お知らせするなど,混雑を避けて迂回を促す情報 提供に多角的に取り組んでいる. 4.渋滞対策・交通の分散状況等に関する考察 2011 年 1 月 17 日に全面通行止を開始した.通行止 め直後の事故など大きな混乱は無かった.月日の経過に 伴い,交通量増加率の高い路線が少なくなるなど,交通 の分散が図られていることが分かる.また,通行止め直 後(1 週間の平均)の朝の通勤時間帯における迂回ルー トの所要時間変化を図 5 に示す.午前 7 時頃から通勤車 0% 50% 100% ホームページ テレビ・ラジオ広告 新聞広告 ポスター 横断幕 PRバス 駅前広告塔 交通マップ PRステッカー PRチラシ 駅高架便り PRティッシュ・うちわ 封筒用ステッカー クリアファイル 地元説明会 効果あり どちらとも … 効果なし 無回答 図 6 広報活動に関するアンケート調査結果4) 図 5 各迂回ルートの平均所要時間4)

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幹線道路の交通規制に係る渋滞対策と社会的合意形成手法

A methodology for facilitating consensus-building to mitigate traffic congestion in public works 二宮 仁志 両の増加に伴い,一部の迂回路で渋滞は発生したが,8 時半頃にはピークは過ぎ,徐々に解消された.平常時(通 行止前)と比較して最大 5~10 分程度の遅れに収まった. 夕方についても,一部の交差点等で渋滞が発生したが, 19 時頃には解消するなど,大きな混乱や事故等は発生 はみられなかった. 5.社会的合意形成手法に関する考察 通行止解除後,環境通勤協力者を対象に行った広報手 法の効果に関するアンケート調査結果(有効回答 1,024 名)を図 6 に示す.渋滞の発生・状況を知るとともに, 環境通勤に協力するきっかけとして,横断幕,新聞・テ レビ・ラジオ等が効果的であったといえる.通行止開始 日等については,横断幕やラジオなど通勤中の車中で目 や耳にし,迂回ルートなど詳細な情報はリーフレット (紙媒体)よりテレビ放送で確認した人が多かったこと など概ねの傾向が把握できた.一方,クリアファイルや ステッカー等は,効果が薄いとの結果であった.対象者 の特性や対費用効果を勘案した上で導入の検討を行う 必要があるといえる.また,専用ダイヤルやオープンハ ウスなど問合せ窓口の設置など直接対話を基調とした 公聴戦略の展開も試みた.その結果,通行止について知 らなかった等,周知不足についての不満・苦情は極めて 少なく,また,通行止直後に,渋滞情報等の問合せはあ ったが,時間の経過とともに減少するなど,戦略的な広 報公聴活動の展開は,社会的合意形成の一手法として一 定程度の効果を期待できると考えられる.また,広報広 聴戦略の展開については,交通円滑化部会において議 論・検討するとともに,その決定に従い各々のステーク ホルダーがその役割を果たした.例えば,事業者は,迂 回路整はもとより,情報媒体等を駆使して多様なステー クホルダーに向け情報提供に取り組み,バス事業は,迂 回ルートへのバス停移設や車内アナウンスでお知らせ を行い,道路管理者は,情報案内板等に交通情報を提供 し,交通管理者は,信号制御等により安全かつスムーズ な交通流を確保に努めた.本協議会での合意は,各々に 協力行動をコミットさせ,信頼と協働の基盤として機能 していたといえ,社会的合意形成を支援する仕組み(手 法)として重要な役割を果たしていたと思われる. 6.まとめ 本研究では,事例研究を通じて,幹線道路の交通規制 に係る渋滞対策とその執行プロセスに関わる社会的合 意形成手法について考察した.事例研究の範囲内におい て,広報広聴活動の展開を基軸とするコミュニケーショ ン戦略は,社会的合意形成の一手法として有効といえ, その実践は,工事や規制に関する情報提供・周知のほか, 交通分散・削減を促すなど,社会的コスト低減に寄与す る可能性があるといえる.広報公聴戦略・活動内容は, 経験や勘を頼りに試行錯誤している実務担当者が,各現 場で実践可能な合意形成手法を検討する一助(モデル) となると期待される.今後,人々の行動変容に影響を与 えた要因を分析するなどモビリティ・マネジメント6) の視点から考察することで交通システム研究など新た な知見が得られる可能性も期待される. 本研究は,渋滞対策・交通マネジメントを対象とした が,都市計画やまちづくり等においても,不特定多数の ステークホルダーが関わる.対象プロジェクトに応じて その特性は異なるといえるが,合意形成手法や方法論に 共通点は多く適用・応用可能性はあると思われる.その 検証は今後の課題である. 参考文献 1) 国土交通省:公共工事の構想段階における計画策定プロセ スガイドライン,2008.4. 2) 二宮仁志:社会基盤整備の合意形成支援手法に関する研究, 東京大学大学院工学系研究科博士論文,2006. 3) 猪原健弘 編著:合意形成学,勁草書房,2011. 4) 大分県大分駅周辺総合整備事務所:交通円滑化検討部会資 料,ホームページ(http://www.pref.oita.jp/site/eki/) 5) 大分県大分駅周辺総合整備事務所:JR 日豊本線等大分駅付 近連続立体交差事業(事業概要リーフレット) 6) 土木学会:モビリティ・マネジメントの手引き-自動車と 公共交通の「かしこい」使い方を考えるための交通施策,2005.

参照

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