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豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成 利用統計を見る

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(1)

豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成

著者名(日)

生沼 郁

雑誌名

東洋大学紀要. 自然科学篇

47

ページ

127-136

発行年

2003-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002483/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成

生  沼  郁*

Clay Mineral Compositions of the Sediments

in Southwestern Part of Bungo Suiodo, Japan

Kaoru OINUMA

      Abstract  The clay mineral compositions of 60 surface sediment samples collected from southwestern part of Bungo Suido, Japan were investigated by X-ray diffraction method. Illite, chlorite, smectite and kaolinite were confirmed in the clay fractions of the samples. The distributions of amounts of these clay minerals in the studied area are indicated and discussed in this paper.

1.まえがき

 日本の周辺の海底の堆積物の粘土鉱物の分布について多くのデータが出されつつある. 豊後水道の一部の海底の堆積物について,10数年前に粘土鉱物の定量分析を行った.これ は昭和58年度科学研究費補助金「豊後水道の海底堆積物中の構成鉱物と粘土鉱物の分布」 (代表者:岡村三郎)の研究の一部であり,海上保安庁水路部から提供を受けた試料につ いて分析したものである.特に粘土鉱物の分析結果をここに改めて報告する.

2.試  料

 本報告に使用した海底堆積物試料は豊後水道西南域の佐伯湾付近の38個と,その南の 芹埼~蒲江の沖の海域の22個であった.これ以外にこの地域の主要河川の番匠川の河川 から採集した河川堆積物試料1個を使った.その海域と試料採取地点をFig.1に示す. 採集地点の水深は120m以浅である. *東洋大学自然科学研究室 〒351-8510埼玉県朝霞市岡2-11-10  Natural Sclence Laboratory, Toyo Umversity,11-10,0ka 2, Asaka-shi, Saitama 351-8510, JAPAN

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128 生 沼 有U    奉』 ○さ t31°55’ 132000’ 132eo5’ 3300e「 32055 32°50’ 32e45」

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Fig.1 Studied area and locations of samples.

3.粘土鉱物の分析手順

 本試料の粘土鉱物の分析は次の手順で行った.  粘土粒度部分の回収:1000mlビーカー中に試料を適当量入れて蒸留水を加え,撹拝, 超音波で十分分散させて,通常の沈降法により2μm以下の粒度部分を分離し,それらを 遠心分離器で回収した.これを以下の粘土鉱物分析の試料とした.  X線回折用試料調整:ガラス板上に2μm以下の粒度部分をペースト状のまま塗布し, 自然乾燥したものをX線回折用の試料とした.なお,粘土鉱物判定のために,以下に述 べる各種の処理をほどこしX線回折分析を行った.

4.X線回折による粘土鉱物の判定方法

 無処理の2μm以下の粘±部分の試料のX線回折では各種粘土鉱物のX線回折線が重 複するため,それら粘土鉱物を厳密に判定することができない.そのため各種の薬品処理, 加熱処理をして後,X線回折分析を行うことにより,これら重複した回折線を移動,分離 消滅させて,粘土鉱物の判定,さらに定量を行った.

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豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成 129  エチレングリコール処理:スメクタイトまたはハロイサイトの底面反射を他の粘土鉱物 の反射と分離させるため,ガラス板上に塗布した試料にスプレーでエチレングリコールを 吹き付けて十分に浸し,X線回折分析を行う.  塩酸処理:クロライトにカオリナイトの回折線が重複している場合,カオリナイトの判 定やクロライトとカオリナイトの定量が難しいが,本処理によりクロライトが壊れその回 折線が消滅するため,カオリナイト回折線が残り,カオリナイトの回折線をクロライトの 回折線から分離できる.本処理の方法は,試料を6N塩酸で30分間加熱(約95℃)する. それを遠心分離器を使い水で3回洗浄し,沈殿物をガラス板に塗布するものである.  X線回折の条件:X線ディフラクトメーター(リガク製ガイガーフレックスRAD-IIA) の使用条件はCuKα線(モノクロメーターによる),管球電圧35KV,管球電流20 mA, スリット系一発散・散乱スリット1°,受光スリット0.3mmで行った.

5.試料に含まれる粘土鉱物の種類

 本地域の海底堆積物試料に含まれている粘土鉱物の種類は無処理のX線回折曲線と各 種処理後のX線回折曲線にあらわれている回折線の比較から判定した.その結果,本地 域の試料にはイライト,クロライト,カオリナイト,スメクタイトの4種類の粘土鉱物が 含まれることが判った.その判定は次のようになされた.  イライト:無処理のX線回折曲線に10A,5.01 A,3.34 Aの回折線があり,これがエ チレングリコール処理および塩酸処理で変化しないことからイライトの存在が判定される.  クロライト:無処理の試料に他の鉱物の回折線と重複しない4.7Aの回折線,また他の 鉱物と重複する可能性のある14.5A,7A,3.55 Aの回折線が見られる.エチレングリコ ール処理で14Aに重複していたスメクタイトの回折線が17 Aの位置に移動するので,ク ロライトの示す14.5Aの回折線が明瞭となる.また塩酸処理では7A,3.56 Aのカオリ ナイトの回折線を残し,クロライト特有の回折線が消滅する.これらのことからクロライ トを判定できる.  スメクタイト:エチレングリコール処理において17~18Aに回折線が認められること から判定される.  カオリナイト:塩酸処理により7Aと3.54 Aが残っていることから判定した.

6.X線回折による粘土鉱物の定量方法

 定量の方法:本試料中の粘土鉱物の定量はX線回折線強度から結晶質粘土鉱物の量を 求める方法(Sudo他,1961;Oinuma,1968)により行った.これは絶対量の定量法で はなく,量比を求める方法である.X線回折による定量法では粘±鉱物に結晶度・化学 組成などの違いがあるため厳密な定量は難しいが,一連の試料中の粘土鉱物の量的変化を 検討するには十分可能である.  本研究では塩酸処理,エチレングリコール処理後の試料のX線回折曲線の変化から, 無処理試料の回折曲線で重複する回折線を分離して,イライトの10A回折線,クロライ トの7A回折線,スメクタイトの15A,カオリナイトの7A回折線の強度を求めた.こ

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130 生 沼 有 β れらにある係数(各粘土鉱物が等量存在する時のこれら回折線の強度の逆数比;Oinuma, 1968)を掛けて,これら粘土鉱物の総量を100として各粘土鉱物の量を百分率で表現した.

7.粘土鉱物の定量結果

 本地域の各試料の2μm以下の粘土部分の粘土鉱物の定量の結果はFig.2~5に示す. 本地域に分布する粘土鉱物としてはイライトが最も多く(全試料平均42%),次いで多い のはクロライト(平均30%)である.カオリナイト(平均15%)とスメクタイト(平均 13%)の量は少ないが,これらの鉱物の試料による量の変化は比較的大きい.比較検討の ため本地域の主要河川で佐伯湾に注ぐ番匠川の河川底土(河口から5km上流地点で採集) についても同様の定量を行った.その結果はイライト53.1%,クロライト24.3%,カオリ ナイト18.8%,スメクタイト3.8%であった.

8.本海域海底の粘土鉱物の分布

 海底堆積物表層の各粘土鉱物の量的な分布の特徴は次の通りである.  イライト(Fig.2):イライトは佐伯湾付近よりも芹埼~蒲江沖の海域の方が多い.芹 埼~蒲江沖の海域では南部にイライトが多く分布し,特に岸に近い試料においてその量が 非常に多い.  クロライト(Fig.3):クロライトは全域に多く分布するが,その量的な分布に特に顕 著な傾向は見られない.  カオリナイト(Fig.5):カオリナイトはイライトの分布の傾向とは逆で,佐伯湾付近 の方が南の芹埼~蒲江沖の海域よりも多く分布し,佐伯湾では内側の方が多い傾向がある.  スメクタイト(Fig.4):スメクタイトはカオリナイトと同様に佐伯湾付近の方が南の 芹崎~蒲江沖より一般に多く分布する.しかし佐伯湾付近でのスメクタイトの分布はカオ リナイトとは逆に湾内河口付近では量が少なく,湾外の外洋において特にその量が多くな る傾向がある.

9.粘土鉱物の分布の考察

 本地域の堆積物には粘土鉱物としてイライト,クロライト,スメクタイト,カオリナイ トが存在している.各試料の2μm以下の粘土部分におけるこれら鉱物の量比を求めた結 果,本調査地域の北部の佐伯湾付近と南部の芹崎~蒲江沖とでは明らかに粘土鉱物組成の 特徴が異なることが判った.  A.南部の芹崎~蒲江沖  南部の芹崎~蒲江沖ではイライトとクロライトが多く,カオリナイトとスメクタイトが 非常に少ないのが特徴である.特に湾や岸に近いところではこの傾向がより強い.この南 部の海域には近接陸地から直接多量の物質を供給するような大きな河川はないので,湾や ごく岸に近いところでしか,近接陸地からの物質供給の影響は受けないと考えられる.イ ライトが岸に近いところに特に多いのは近接陸地からの供給によると思われる.…方スメ

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豊後水道南西部の海底堆積物の粘士鉱物組成

  ILLITE

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    ‖

イライト

<2μm

O      IOIくm 52055’ 32°50’ 52“45e 131 t3t●55’      t32●O◎,      S52.05’      S32●to’ Fig. 2 111ite concentrations of clay fractions of samples.

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132 生 沼  郁

CHLORITE

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   佐伯市

大分県

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      <2μm

O       IO}くm 53°OO’ 32●55’ 32・50’ 52●4S「 t31●55’      132.0()t      132.05’      132・ld Fig.3 Chlorite concentrations of clay fractions of samples.

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豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成

SMECTITE

     O     IOkm

r31●55’         132●0σ       132●05’      132 10 Fig. 4 Smectlte concentrations of clay fractions of samples, 53°oσ 133

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134 生 沼  郁

KAOLINITE

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印寧印

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     <2μm

O      IOI《m 55000’ 32・55’ 32●50’ 52°4si 13t.55’         t32.OO’         152●05’         t32.10’ Fig.5 Kaolmlte concentratlons of clay fractions of samples,

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豊後水道南西部の海底堆積物の粘土鉱物組成 135 クタイトが他の場所に比べて非常に少ないのは,近接陸地からの供給が少ないことによる と思われる.北部の湾に流入する河川の堆積物中にはイライトが最も多く,スメクタイト が微量であることから推測しても,陸地からのイライトの供給が大で,逆にスメクタイト の供給が非常に少ないことは十分考えられる.しかし,南部海域では近接陸地からの影響 は少ないので,沖における粘土鉱物組成はむしろ遠くから海流で運ばれてきた物質の影響 が強いと考えられる.  B.北部の佐伯湾付近  一方,北部の佐伯湾付近では湾に流入する大きな河川(番匠川)があり,それによる粘 土物質の供給の影響を強く受ける可能性がある.河口付近の試料ではイライト(40~ 50%)とクロライト(20~40%)が多く,次いではカオリナイト(14~22%)が多く,ス メクタイト(6~8%)はごく少量である.これは番匠川河底堆積物の粘土鉱物組成(イラ イト53.1%,クロライト24.3%,カオリナイト18.8%,スメクタイト3.8%)と酷似して おり,佐伯湾堆積物の粘土鉱物組成は河川からの供給物質の粘土鉱物組成を明らかに反映 している.佐伯湾付近の堆積物に含まれている粘土鉱物の中で量的変化が顕著なのはスメ クタイトであり,河口付近では量が少ない(6~8%)が,河口から遠ざかり湾外の沖の方 ほどその量が増す(20%)傾向が認められる.またカオリナイトはその逆の傾向があり, 湾内で多く湾外の沖ほど少ない.スメクタイトのこのような分布の傾向は本鉱物と他の鉱 物との性質の違い(微細で浮遊し易い,また海水ヰでも比較的分散が良いなど),および 本地域の海水の動き(海流・潮流など)や海底地形に関連して,沖の方に他鉱物よりも多 くスメクタイトが供給され堆積した結果ではないかと考えられる.  C.本地域の南部と北部の比較  本地域の南部と北部を比較すると,粘土鉱物組成の特徴に明らかな差異が認められる. 特に北部の佐伯湾においてカオリナイトが比較的多いことが指摘でき,これは・番匠川から 陸上風化生成物としてのカオリナイトの供給が多いことに起因していると思われる.

10.ま と め

 海底堆積物中の粘土鉱物の分布には,河川からの物質供給や,近接陸地の物質供給また 海流・潮流など海水の動きによる粘土物質の運搬,さらに堆積作用,それに各粘土鉱物の 特性など多くの因子が関係する.本報告の豊後水道の南西部の地域に見られた上述の粘土 鉱物の分布の特徴はこれらの因子が関与した結果を良く示している.

謝  辞

 最後に,本報告で使った試料を提供頂いた海上保安庁水路部,また協同研究で粘土鉱物 の分析を分担させて頂いた当時東京学芸大学教授の岡村三郎先生に心から感謝致します.

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参考文献

Oinuma, K.(1968)Method of quantitative estimation of clay minerals in sediments by X-  ray diffraction analysis, Jour. Toyo Univ., General Education(Nat, Sci.),(10),1~15, Sudo, T., Oinuma, K. and Kobayashi, K.(1961)Mineralogical problems concerning rapid  clay mineral analysis of sedimentary rocks, Acta Univ, Carolinae, GeoL Suppl.1:189~   219.

参照

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