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「高齢者施設で介護職のおこなう高齢者看取りケアと在宅で看護職のおこなう高齢者看取りケアの相違点および共通点」

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Academic year: 2021

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(1)公益財団法人. 在宅医療助成. 2013 年 度 ( 前 期 ) 一 般 公 募. 勇美記念財団. 在宅医療研究への助成. 完了報告書. 高齢者施設で介護職のおこなう高齢者看取りケアと 在宅で看護職のおこなう高齢者看取りケアの 相違点および共通点. 北摂総合病院訪問看護ステーション 所長. 野口. 忍. 在宅看護専門看護師. 2014.8.18.

(2) 研究の目的と背景. 近年、医療費抑制、エンドオブライフ充実のため在宅死が推進されているが、いま だ 在 宅 死 は 全 体 の 13% に と ど ま る ( 総 務 省 統 計 局 ,2012) 。 在宅死の中でも終末期がん患者に対する在宅終末期ケアの研修等が各地で開かれて いる。調査でも、終末期がん患者に訪問看護師が介入した際の在宅看取り率は 4 割で あ り ( 日 本 訪 問 看 護 振 興 財 団 ,2008) 、 今 後 、 終 末 期 が ん 患 者 の 在 宅 死 率 は 上 昇 し て いくと思われる。 一方、増加する高齢者の老衰での在宅看取り率の調査報告は少なく、体系的な高齢 者 看 取 り ケ ア の 研 修 等 も 日 本 健 康 科 学 学 会 の ELNEC-G プ ロ グ ラ ム ( 2013 年 初 開 催 ) でしかみられない。 老 衰 の 死 の プ ロ セ ス は ゆ る や か で あ り 、 長 谷 川 ら ( 2013) が 、 老 衰 が 原 因 の 自 宅 死 が 96% 、 病 院 死 が 4% と 指 摘 し て い る よ う に 、 家 族 の 覚 悟 と 介 護 力 が あ れ ば 在 宅 で の 看取りは可能である。しかし核家族化で老老介護が増える状況では在宅看取りは困難 を伴う。 よって在宅死以外の選択肢が必要であり、入所施設での死(施設死)もそのうちの ひとつである。 2 0 0 6 年 の 診 療 報 酬 改 定 で 、施 設 で の 看 取 り 介 護 加 算 が つ く よ う に な り 、看 取 り に 取 り組む施設も増えつつある。特養の看護師は、自分自身が看取りケアに取り組んでい き た い か に つ い て 、 と て も そ う 思 う 、 や や そ う 思 う と 81.1% が 答 え て い る が 、 特 養 看 取 り ケ ア の 経 験 者 は 施 設 で の 看 取 り ケ ア を 6 7 . 3 % が や や 難 し い 、非 常 に 難 し い と 回 答 し て い る ( 日 本 看 護 協 会 , 2013) 。 こ れ ら か ら 、 特 養 の 看 護 師 が 施 設 看 取 り に 積 極 的 とは言いがたい。 看 取 り 介 護 加 算 は 、 常 勤 の 看 護 師 を 一 名 配 置 す る か 病 院 等 の 職 員 と 24 時 間 連 絡 体 制がとれることが算定条件で、特に利用者にとっては住居となる、老人福祉施設(別 称 : 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム 、 以 下 、 特 養 ) の 92.6% は 24 時 間 連 絡 体 制 で 対 応 し て い る ( 日 本 看 護 協 会 , 2013) 。 特 養 で の 実 際 の 看 取 り に は 介 護 職 が 中 心 に 関 わ っ て い る と 推測される。 特養の介護職は、看取りは特養として当然提供すべきサービスのひとつとし(北村 ら , 2009) 、 特 養 は 利 用 者 に と っ て 最 終 的 な 生 活 の 場 と し て 捉 え て い る 。 ま た 特 養 の 死 亡 者 割 合 の う ち が ん は 4.8% に 過 ぎ ず 、 老 衰 が 49.4% を 占 め て い る ( 全 日 本 病 院 協 会 , 2012) 。 1.

(3) そこで今回、施設死を推奨し、特に介護職が中心に看取りをおこなっている特養を 対象に、介護職のおこなう高齢者看取りケアを調査する。比較検討のため、在宅死率 が 6 割を越える訪問看護ステーションで、在宅で看護職がおこなう高齢者看取りケア を調査する。 本研究の目的は介護職と看護職の高齢者看取りケアの共通点および相違点を明らか にし、高齢者の施設死、在宅死を増やすための看取りケア教育方法の示唆とすること である。. 研究方法. 1). 研究対象者 研究協力施設は便宜的抽出法で選んだ、関東圏の特別養護老人ホーム 1 ヶ所、関. 西圏の訪問看護ステーション 1 ヶ所。高齢者看取りケアを積極的におこなっている 施設とした。介護職、看護職共にケア経験年数 5 年以上でがん以外の高齢者看取り ケア経験が 1 名以上ある。研究の趣旨について理解が得られ、研究参加の同意が得 られた者. 2). 定義 高齢者看取りケア が ん 以 外 の 65 才 以 上 高 齢 者 が 、 余 命 2, 3 か 月 以 内 と 診 断 さ れ て か ら 、 死 亡 す る. までに行われる介護福祉士もしくは訪問看護師のおこなうケア 介護職 特養の介護福祉士 看護職 訪問看護師. 3). データ収集期間 2013 年 9 月 ~ 2014 年 3 月. 4). データ収集法. ① インタビューガイドを作成 ② 有識者にスーパーバイズを受ける ③ インタビューガイドの完成. 2.

(4) ④ 対象施設の責任者に説明し了承を得る ⑤ 対 象 者 1 人 あ た り 45 分 を 限 度 に イ ン タ ビ ュ ー を お こ な う ⑥ 面接終了後、速やかに録音記録を基に逐語録を作成 ⑦ 逐語録から、必要な部分を抽出、意味内容が損なわれないよう簡潔な一文で表 現し、コード化する ⑧ コードを比較し、意味内容が類似したものを集めて名称をつけてカテゴリー化 する. 面 接 デ ー タ は 常 に 「高 齢 者 看 取 り ケ ア 」の 視 点 か ら 分 析 を お こ な い 、 二 人 目 以 降 は一人目の参加者との共通点と相違点を考えながら、継続比較分析を行い、類似 する概念をまとめカテゴリーを生成した。分析の過程において、グランデットセ オリーアプローチ法に熟練した研究者からスーパーバイズを受けた。. 5). 面接法 介護と看護の高齢者看取りケアの共通点、相違点を明らかにするために、研究依. 頼者が作成した半構成的質問用紙を用いて面接を行った。質問項目は、「高齢者を 看取った経験について」「高齢者を看取った経験からの学びについて」などした。 面接は、研究参加者に著しい心身の苦痛がないことを確認し、研究参加者の業務の 妨げにならないような時間帯にプライバシーが保てる個室で行った。面接時間は 1 回 45 分 を 限 度 と し た 。 面 接 内 容 は 研 究 参 加 者 の 同 意 を 得 て 録 音 し た 。. 6). 倫理的配慮 本研究は、高齢者施設で介護職のおこなう高齢者看取りケアと在宅で看護職のお. こなう高齢者看取りケアの共通点および相違点を調査で明らかにするために、プラ イ バ シ ー や 過 去 の 経 験 に 関 わ る 内 容 を 質 問 し 、心 理 的 負 担 感 を 与 え る 可 能 性 が あ る 。 したがって、本研究を遂行するにあたり、以下に挙げる点について十分な倫理的配 慮を行う。 (1). 研究協力施設への研究協力依頼に関する倫理的配慮. ① 研 究 協 力 施 設 の 責 任 者 に 対 し 、研 究 の 趣 旨 と 倫 理 的 配 慮 に つ い て 文 書 で 説 明 し 、 研究協力の同意を得た。 ② 研究への協力は自由意志に基づくものであり、介護職、看護職の研究への協力 の有無や協力状況は、今後の関係性等になんら影響がないことを保証した。 ③ 聞 き と り 調 査 を 行 う に あ た り 、対 象 者 の 日 々 の 業 務 に 支 障 を き た さ な い 日 時 を 設定できるよう配慮した。. 3.

(5) ④ 本研究は、在宅医療研究報告書としてまとめ、学会等の発表や投稿を行うこと の承諾を得た。 ⑤ 研究結果に関しては、報告書の提出後、研究協力施設の責任者に報告書の提出 をもって報告とする。. (2). 研究対象者への研究協力依頼に関する倫理的配慮. ① 研 究 協 力 を 依 頼 す る 対 象 者 に は 、文 書 に よ り 研 究 の 趣 旨 と 倫 理 的 配 慮 に つ い て 説明し、同意書へのサインをもって同意を得た。 ② 研究への協力は自由意志に基づくものであり、研究の協力を断った場合、ある い は 研 究 へ の 協 力 を 中 断 し た 場 合 に 、人 事 考 課 査 定 等 な ん ら 不 利 益 が 被 る こ と はないことを説明した。 ③ 責任者に対して調査への強制力を行使しないことを依頼した。 ④ 本研究は、在宅医療研究としてまとめ、学会等の発表や投稿を行うことの承諾 を得た。. (3). 質問紙調査に関する倫理的配慮. ①. 調査票には個人名を記入しない。. ②. 調査後の調査票は、鍵のかかる所で厳重に保管した。. (4)個人情報に関する配慮 ① 収集したデータは、匿名化を保持するために、個人が特定されないように数値 化して厳重に管理した。 ② デ ー タ の 保 存 に は 認 証 つ き USB フ ラ ッ シ ュ メ モ リ を 使 用 す る 。 デ ー タ の 保 存 に 使 用 す る パ ソ コ ン は 、院 内 の L A N に 接 続 せ ず 、使 用 者 認 証 に よ る 管 理 を 行 っ た 。 ③ 収集したデータは、本研究目的のみに使用することを保証した。 ④ 研究結果について課題研究発表会や学会等において発表する際に、個人・施設 が特定できないように十分配慮した。 ⑤ 収集したデータに関する記録物及び調査票は、研究の全てのプロセスが終了し た時点で処分した。. 4.

(6) 結. 1). 果. 研究協力者 研 究 協 力 者 は 8 名 、 性 別 は 男 性 3 名 、 女 性 5 名 、 平 均 年 齢 は 41.1 歳 で あ っ た 。. 介 護 福 祉 士 は 5 名 、 訪 問 看 護 師 は 3 名 、 平 均 ケ ア 経 験 年 数 は 12 年 で あ っ た. 2). 研究結果の概要 データ分析の結果、3つのカテゴリーが抽出された。以下、本文中カテゴリーは. 【】、サブカテゴリーは[]、コードは『』で示す。なお一覧は表 1 に示す。 表 1. カテゴリ-、サブカテゴリー、コードの一覧. カテゴリー 家族ケア. サブカテゴリー 家族への意思決定支援. *は 看 護 職 か ら 抽 出 コード. 家族への延命処置の意思確認 家族と本人との日ごろの会話から最期の希望を 推し測る 本人の延命処置への意向を家族に伝える 家族間の意向のすり合わせを含めた意思決定支援* 現状を説明し家族の意向を支える*. 看取る家族へのケア. 最近の食事・トイレの様子を家族に伝える ターミナル臨死期に家族に連絡し臨終まで一緒に 過ごす時間を作る 家族の実際の最期の対応を見届ける 本人のいないところで家族の体調を気遣い休息を 促す* 家族への在宅看取りについての説明* 週単位日にち単位の変化がある時に家族に最期の 時に備えてもらうよう状態変化について説明*. 生活活動ケア. 食事介助. 本人の残存能力に合わせた食事介助 食事形態の工夫. (睡眠 の該 当な し). 食事摂取の工夫. 清潔援助. 利用者の状態に合わせた清潔援助の工夫 タ ー ミ ナ ル 期 の 最 低 限 の ケ ア と し て 口 腔 ケ ア 、基 本. 5.

(7) 的な清拭、洗髪、陰部洗浄を徹底する 重要な生活活動ケアは状態に合わせた清潔援助*. 排泄介助. 残存能力に合わせた排泄介助. 活動支援. 外出支援. 合併症への. 老衰による合併症への. 合併症への対応. ケア. 対応. 効果の上がらない褥創ケア 工夫しても悪化する褥創へのケアを模索 褥創予防を兼ねた最小限の陰部洗浄* 苦痛軽減のための排便処置* 排便処置による腹部苦痛症状の軽減*. 3). 介護職、看護職の高齢者看取りケア. (1)家族ケア ①. 家族への意思決定支援. 介護職では入所時に事前指示書を作成しており、[家族への意思決定支援]として 『家族への延命処置の意思確認』『家族と本人との日ごろの会話から最期の希望を推 し測る』『本人の延命処置への意向を家族に伝える』が挙がった。 看護職では『家族間の意向のすり合わせを含めた意思決定支援』『現状を説明し家 族の意向を支える』をおこなっていた。 ②. 看取る家族へのケア. 介護職は『最近の食事・トイレの様子を家族に伝える』『ターミナル臨死期に家族 に連絡し臨終まで一緒に過ごす時間を作る』『家族の実際の最期の対応を見届ける』 があがった。 看護職は『本人のいないところで家族の体調を気遣いかい休息を促す』『家族に在 宅看取りを説明』『週単位日にち単位の変化がある時に家族に最期の時に備えてもら うよう状態変化について説明』していた. (2)生活活動ケア 【生活活動ケア】の中で[清潔援助]だけが共通してあがっていた。 介護職の[清潔援助]は『ターミナル期の最低限のケアとして口腔ケア、基本的な 清拭、洗髪、陰部洗浄を徹底する』としていた。 看護職は『重要な生活活動ケアは状態に合わせた清潔援助』としていた。. (3)合併症へのケア. 6.

(8) [老衰による合併症への対応]は、主に褥創、便秘があった。 介護職では『効果があがらない褥瘡ケア』『工夫しても悪化する褥瘡へのケアを模 索』としていた。 看護職では、褥創発生はなく『褥創予防を兼ねた最小限の陰部洗浄』をおこなって いた。また便秘には『苦痛軽減のための排便処置』『排便処置による腹部苦痛症状の 軽減』といった医療処置をおこなっていた。. 7.

(9) 考. 1). 察. 高齢者看取りケアの相違点. 特養で介護職が、在宅で看護職がおこなう高齢者終末期ケアは、場や関係性の違い から、高齢者看取りケアに違いが生じていることが明らかになった。. 表2. 職種別相違点一覧 特養介護職. 在宅看護職. 利用者と関わった期間. 年単位. 月単位. ケアを提供する時間. 24 時 間. 多くても 1 日 1 時間. ケア対象. 利用者. 利用者と家族. 生活活動ケア内容. 食事介助、清潔援. 清潔援助. 助、排泄介助、活 動支援 生活活動ケアを家族と共におこなう. なし. あり、もしくは指導. 合併症へのケア. 褥創ケア. 褥創予防、排便処置. 利用者の認知機能低下. あり. なし、あっても軽度. 利用者の延命処置についての意思表示. なし. あり. 利用者の意思の確認方法. 入所以降の様子か. 本 人 に 尋 ね る か 、家 族. ら類推する. に利用者の意思を類 推してもらう. 家族への意思決定支援. 主に延命処置につ. 家族の意向のすり合. いての意向の確認. わせや現状の説明. 特養の場の特徴として、利用者の認知機能低下が多く見られ、年単位で関わってき た 介 護 職 に よ っ て 24 時 間 の 【 生 活 活 動 ケ ア 】 と 【 合 併 症 へ の ケ ア 】 が お こ な わ れ て いた。 在 宅 は 利 用 者 の 認 知 機 能 低 下 は 少 な く 、月 単 位 で 関 わ る 看 護 職 が 多 く て も 1 日 1 時 間程度の【生活活動ケア】と【合併症へのケア】を利用者におこない、家族に対して も【生活活動ケア】を指導していた。 また、インタビューの際、「高齢者を看取った経験について」を尋ねたところ、介 護 職 は 5 名 全 員 が 、ま ず【 生 活 活 動 ケ ア 】を 挙 げ て い た 。介 護 職 は 利 用 者 の 老 衰 で 徐 々 8.

(10) に低下していく身体機能に合わせながら【生活活動ケア】行なうことを高齢者看取り ケアと認識していたといえる。 看 護 職 は 3 名 共 に 、高 齢 者 看 取 り ケ ア で は【 家 族 ケ ア 】が 重 要 で あ る と 答 え て い た 。 利用者への直接的なケアではなく、 【 家 族 ケ ア 】を 高 齢 者 看 取 り ケ ア と 認 識 し て い た 。. 2). 高齢者看取りケアの共通点. 施設の高齢者看取りでは、本人の認知症や意識障害によって本人の意向が確認でき ないケースが多く、看取り介護加算の算定要件にもあるように、意思確認のできない 本人の代わりに家族に説明し、合意を得て看取りケアをおこなっている。 百 瀬 ( 2011) は 、 家 族 は 意 思 決 定 の プ ロ セ ス に お い て 戸 惑 い や 不 安 が 大 き く 、 施 設 で看取ることを決定した場合でも、その思いが揺れ動く家族も多いとしている。よっ て介護職であっても、事前指示を聞いておくことや、その都度、家族と話し合うこと を重要視している様子が伺える。在宅においても家族の思いには同様の傾向がある。 これらが介護職、看護職双方で高齢者看取りケアとして【家族ケア】が多くあがった 要因と考えられる。 【家族ケア】で、看護職の[家族への意思決定支援]が、『家族間の意向のすり合 わせを含めた意思決定支援』『現状を説明し家族の意向を支える』といった直接介入 をするのに対し、介護職は、『家族への延命処置の意思確認』『家族と本人との日ご ろの会話から最期の希望を推し測る』『本人の延命処置への意向を家族に伝える』と いった意向の確認に留まる。 介 護 職 で は 、福 祉 分 野 で は 対 人 援 助 に か か わ る 援 助 者 の 行 動 規 範 と し て 知 ら れ る「 バ イスティックの7原則」(アメリカの社会福祉学者バイスティックが定義した相談援 助技術の基本)が反映されていると思われる。受容(クライエントのあるがままの現 実《思想・態度・行動を含む》において、そのまま無条件に受けいれること)や非審 判的態度(自分の価値観や倫理的判断によって、クライエントの行動や態度を批判し た り 、 問 題 の 発 生 原 因 に つ い て 有 罪 を 審 判 ・ 非 難 し な い ) ( 山 縣 ら , 2013) で あ る 。 看 護 職 の 行 動 規 範 と し て は 、「 看 護 者 の 倫 理 綱 領 」が あ り 、第 4 条 で 看 護 者 は 、人 々 の 知 る 権 利 及 び 自 己 決 定 の 権 利 を 尊 重 し 、そ の 権 利 を 擁 護 す る と さ れ 、対 象 と な る 人 々 の理解度や意向を確認しながらわかりやすく説明し、意思表示をしやすい場づくりや 調整、 他の保健医療福祉関係者への働きかけを行う役割がある。 両者の役割の違いが高齢者看取りケアにおける[家族への意思決定支援]の違いに 現れている。 3). 高齢者看取りケア教育 9.

(11) 施設の終末期ケアに関する職員教育として、終末期の身体、心理的変化に対応する ための知識・技術、死生観、家族支援、倫理的課題のへの判断、解決能力がある(百 瀬 ,2011) 。 本研究の結果を踏まえ、高齢者看取りケアについて、合同で教育をおこなうとすれ ば、家族への意思決定支援を含めた家族ケアである。各職種の役割の違いはあるが、 施設や在宅において、生活の延長上にある死を支えていく視点は共通している。具体 策 と し て 「 緩 和 ケ ア マ ニ ュ ア ル 」 ( 淀 川 キ リ ス ト 病 院 , 2007) に あ る 「 終 末 期 の プ ロ セス表現」の検査データにたよらない予後予測などを活用した意思決定支援の方法の 研修を検討している。. 結. 論. ① 特養で介護職が、在宅で看護職がおこなう高齢者終末期ケアは、場や関係性の違 いから、高齢者看取りケアに違いが生じていることが明らかになった。 ② 介 護 職 は【 生 活 活 動 ケ ア 】行 な う こ と を 高 齢 者 看 取 り ケ ア と 認 識 し 、看 護 職 は【 家 族ケア】を高齢者看取りケアと認識していた。 ③ 介護職と看護職の[家族への意思決定支援]の違いは、職種の役割の違いからく ると考えられる。 ④ 高齢者看取りケアに必要な合同教育の内容は、家族への意思決定支援を含めた家 族ケアである. おわりに. 高齢者の終末期にあっては、高度で特殊な医療よりも、日々繰り返される丁寧なケ アこそが重要であり、高齢者にとって快適で、“大切にされている”と実感できるケ ア こ そ 、 目 指 す べ き も の ( 日 本 看 護 協 会 看 護 倫 理 検 討 委 員 会 ,2010) で あ る 。 生 活 を 支え、ケアを重視する特養の介護福祉士と訪問看護師が、合同でケアの共有や教育を うけることで、よりよい高齢者看取りケアが実践できるようつなげていきたい。. 謝辞 本研究にあたり、お忙しい業務の中を快く研究にご協力をいただいた両施設のみな さまに心より感謝申し上げます。 本研究は公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の在宅医療研究助成金を受けたも のである。ここに記して謝意を表する. 10.

(12) 引用文献. ・ 長 谷 川 潤 、 榎 裕 美 、 井 澤 幸 子 、 廣 瀬 貴 久 、 葛 谷 雅 文 ( 2013) : 在 宅 療 養 要 介 護 高 齢 者 の 死 亡 場 所 な ら び に 死 因 に つ い て の 検 討 ,日 本 老 年 医 学 会 雑 誌 5 0 巻 7 9 7 - 8 0 3 ・ 北 村 育 子 、 牧 洋 子 、 石 井 京 子 ( 2009) : 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム で 働 く ケ ア ワ ー カ ー な ら び に 看 護 師 の 終 末 期 ケ ア に 対 す る 考 え 方 と そ の 課 題 ,日 本 福 祉 大 学 社 会 福 祉 論 集 第 120 号 75- 88 ・ 百 瀬 由 美 子 ( 2011) 特 集 高 齢 者 終 末 期 の 医 療 と ケ ア , 4.病 院 お よ び 高 齢 者 施 設 に お け る 高 齢 者 終 末 期 ケ ア ,日 本 老 年 医 学 会 雑 誌 48 巻 3 号 227-234 ・ 日 本 看 護 協 会 看 護 倫 理 検 討 委 員 会 ( 2010) : 看 護 職 の た め の 自 己 学 習 テ キ ス ト , 高 齢 者 の 意 思 決 定 の 支 援 ,( http://www.nurse.or.jp/rinri/basis/shien/ ( 2014.8.16) ) ・ 日 本 看 護 協 会 (2013): 平 成 24 年 度 高 齢 者 ケ ア 施 設 で 働 く 看 護 職 員 の 実 態 調 査 ・ 総 務 省 統 計 局 ( 2012) : 政 府 統 計 の 総 合 窓 口 ,人 口 動 態 統 計 ( h t t p : / / w w w . e - s t a t . g o . j p / S G 1 / e s t a t / N e w L i s t . d o ? t i d = 0 0 0 0 0 1 0 2 8 8 9 7( 2 0 1 4 . 7 . 2 5 )) ・ 淀 川 キ リ ス ト 教 病 院 ( 2007) 終 末 期 プ ロ セ ス 表 現 ,緩 和 ケ ア マ ニ ュ ア ル 第 5 版 ,最 新医学社 ・ 山 縣 文 治 ・ 柏 女 霊 峰 編 集 ( 2013) 社 会 福 祉 用 語 辞 典 第 9 版 ,ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 ・ 全 日 本 病 院 協 会 ( 2012) : 終 末 期 の 対 応 と 理 想 の 看 取 り に 関 す る 実 態 把 握 及 び ガ イドライン等のあり方の調査研究報告書. 11.

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