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甲状腺疾患に対する分子生物学的アプローチ

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Academic year: 2021

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89 症における心筋ミオシン重鎖DNA遺伝子の制限 酵素による切断部位の多型.Jpn Circ J 55:183, 1991 特別講演 赤血球酵素異常による遺伝性溶血性貧血    本学輸血部客員教授    沖中記念成人病研究所所長    日本人類遺伝学会理事長   三輪 史朗  赤血球形態に特別な異常を認めない,遺伝性非球状 性溶血性貧血と呼ばれる1群の中から,ピルビソ酸キ ナーゼ欠乏(異常)症をはじめ,十数種の赤血球酵素 異常症が見出され,現在ではその病態が遺伝子レベル で論じられるようになってきた.ここでは,人類遺伝 学の立場から,これら疾患の発見と歴史,臨床,病態, 診断について述べるが,近年の病態の遺伝子レベルで の解析にも焦点を当ててみたい.

第2回東京女子医科大学遺伝医学研究会

日 時 1992年11月21日(土)PM 2

会場第II臨床講堂

00∼5:00

開会挨拶       学長 吉岡 指定講演      座長  (血液内科)溝口  甲状腺疾患に対する分子生物学的アプローチ      (第二内科)磯崎  ニューロン細胞種決定のメカ.ニズム       (第二生理学)三谷  ヒトアデノウイルス12型誘発マウス腫瘍におけるE1領域遺伝子の   組み込みと発現,及び樹立細胞株の特徴       (第一病理学)森川 特別講演       座長  (消化器内科)小幡  遺伝子治療研究の現状と展望:血友病モデル

      〔謙器鑑聯犠諭翻〕

閉会挨拶       (病院病理科)河上       司会  (第二内科)磯崎        世話人代表   (小児科)福山        当番幹事 (病院病理科)河上       (第二内科)磯崎        (第二生理学)三谷 守正 秀昭  収 昌平 智子  裕

Koutoku KURACHI

       牧夫         収        幸夫        牧夫         収        昌平 (小児科)斎藤加代子  甲状腺疾患に対する分子生物学的アプローチ        (第二内科)磯崎  収  バセドウ病や橋本病の患者にはTSH受容体に対す る抗体である甲状腺刺激抗体,甲状腺ペルオキシダー ゼ(TPO)に対するマイクロゾーム抗体,甲状腺ホル モンの前駆体であるサイログロブリン(Tg)に対する 自己抗体が存在し,疾患の発症や進展に関与している と考えられる.よってこれらの抗原遺伝子解析は発症 の機構を解明するうえで重要と考えられた.  著老のグループもバセドウ病患者lgGおよび部分 純化したTSH受容体に対する抗体を用いて甲状腺の cDNA libraryをスクリーニングし,両者が認識する 一つのクローンを得た.この遺伝子産物は甲状腺に発 現され,バセドウ病患者に高頻度に抗体が検出された. しかし,この遺伝子産物はDNA結合蛋白である自己 抗原であるKu抗原と同一であることを判明した.そ の後,TSHと極めて相同性の高い下垂体ホルモンで あるLHの受容体のcDNAがクローニングされ,その 受容体の細胞膜貫通部位をプローブとし,甲状腺の cDNAライブラリーをスクリーニングし, TSH受容

体のcDNAが得られた.ヒトTPOは精製蛋白のアミ

ノ酸配列より木村らが遺伝子構造を決定した.著者ら もこの配列を用いラットのcDNAを決定すると共に マウスにおける染色体上の局在を同定した.また,ラヅ 一1083一

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90 ト甲状腺における発現調節機構の検討を行い,Tgの 遺伝子発現機構とは異なることを明らかにした.また これらの研究を通して抗甲状腺剤であるメルカゾール がTgの遺伝子発現を促進することを発見した.  これらの3つの自己抗原の遺伝子を用いて甲状腺疾 患の遺伝子診断が可能かどうかをrestriction frag− ment length polylnorphisms(RFLP)を用いて検討 した.日本人におけるTPO遺伝子解析では米国人と は異なるRFLPsのパターンを示し,人種差が示唆さ れた.また,抗体陽性者,バセドウ病,橋本病におい てRFLPのパターンとの連鎖を検討したが特に有意 な関連性は認められなかった.次に自己免疫性甲状腺 疾患を多発する家系において検討を行ったが,特定の 傾向を示すものの,家系の構成員が少ないため統計学 的には有意とはならなかった.Tg遺伝子においても 疾患および抗体との直接の関連性は認められなかった が,家系により特異的なパターンを示す事が判明した. TSH受容体遺伝子においてはRFLPは認められず, TSH受容体遺伝子は変異を受けにくいことが示唆さ れた.  次にreverse transcription−polymerase chain reac− tion(RT−PCR)を用いて甲状腺以外の組織における TSH受容体の遺伝子発現を検討した.まず,リンパ球 におけるmRNAの存在が確認された.しかし,定量的 RT−PCRを用いた解析では患者および正常人の差は 認めなかったが,その遺伝子発現の調節機構は甲状腺 と異なることが判明した.  甲状腺疾患においても悪性腫瘍が少なからず認めら れることより,その進展における成長因子の関与につ いて検討を行った.甲状腺乳頭癌,およびその周辺の 正常部よりmRNAを抽出し, basidbroblast growth factor(bFGF)およびinsulin−like growth factor (IGF)一1のmRNAをノーザンブロットおよびRT−

PCRで測定したところ腫瘍部で正常部と比較して

bFGF mRNAが多いことが判明した.次に甲状腺乳頭

癌より得られた細胞株(TC)においてもbFGFの

mRNAが多量に発現し,外因性に添加したbFGFが

この細胞の増殖を促進することが判明した.これらの 結果よりbFGFがいわゆるautocrine factorとして この腫瘍細胞の増殖を促進していることが判明した. 次にこのような成長促進因子の遺伝子発現抑制による

治療法の可能性を検討するためbFGFのmRNAに対

するantisense oligonucleotide(AO)を作製した,10

μMの濃度AOはPNA合成を抑制し, AOによる甲

状腺腫瘍増殖の抑制の可能性が示唆された.  ニューロン細胞内決定の分子メカニズム        (第二生理学)三谷 昌平  脳は膨大な数のニューロンにより構成されている, どのようにして複雑な脳が形成されるかという問に対 して先ず,線虫(二6‘郷ηsという比較的単純な実験系 で基本原則を見出す試みを行ってきた.C.♂噌α郷の 全ニューロン(雌雄同体で302個)は形態学的に同定さ れており,受精から成虫に至るまでの全細胞分裂が記 載されている.一方,このような簡単な構造を持つ線 虫においても,幾つかの特徴的な行動をとることがで きることも知られている.弱い機械的刺激に対する感 覚受容もそのうちのひとつであり,6個の触覚受容 ニューロン(ALML/R, AVM, PVM, PLML/R)に より行われている.Chalfieらは触覚受容の異常な変異 体を分離することにより,この細胞の分化に必要とさ れる遺伝子を同定した.即ち,伽一32,%ηo−86,規εo−3 遺伝子が触覚受容ニューロンの分化決定に必要であ り,階層的に作用していることを明らかにした.しか しながら,これらの遺伝子は触覚受容ニューロン以外 でも発現しており,これらの遺伝子の作用のみでは触 覚受容ニューロンの分化決定は達成し得ないことも示 唆されていた.  そこで,触覚受容ニュ一八ツの分化決定に関与する 他の遺伝子を同定する目的で,分化になんらかの変化 を来す約50種類の遺伝子についての変異株での触覚受 容ニューロンの分化決定の変化の有無を検索した.先 ず,耀ひ7遺伝子(触覚受容ニューロンの機能に必要 とされるベータ・チューブリンをコードしている)産 物を,抗体と勿s吻ハイブリダイゼーション法を用い て,野生株動物で染色し,発現パターンを調べた。そ の結果,6個の触覚受容ニューロンが特異的に標識さ れることを明らかにした.さらに,伽一32蹴。−86お よび〃z66−3変異体動物においては,機能で推定されて いたような発現の消失が観察された.また,検索した うちの約5分目1の変異株において彫θ07遺伝子の 発現パターンに変化が認められた.  ヘテロクロニック遺伝子は線虫の発生段階によって 異なる細胞分化を差次的に制御する生体時計のような 役割をしている遺伝子である.これらの遺伝子のうち, 伽一4変異体と1勿一14変異体でAVM/PVM分化が変 化していた.  産卵異常を呈する変異体のうちの¢gμ4と¢g庭6 一1084一

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