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内因性精神病の長期経過形態 : 感情病症状および分裂病症状の二元評価に基づく調査

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原 著

倭叢誌42第犠,鞘〕

内因性精神病の長期経過形態

一感情病症状および分裂病症状の二元評価に基づく調査一

東京女子医科大学 精神医学教室(主任:       イシ  ハラ       石 原 さ か え 田村敦子教授) (受付平成5年4月20日)       The Long・term Course of Endogenous Psychoses: AStudy on Dual A】dal Eva1胆ation Based o皿A丘ective and Schizopllrenic Synlptoms        Sakae ISHIHARA Department of Psychiatry(Director:Prof. Atsuko TAMURA)         Tokyo W6men’s Medical College    Aretrospective study of long・term course was conducted in 74 patients diagnosed with endogeneous psychoses who had been undergoing treatment in our clinic for nlore than 10 years. From the standpoint Qf long圭tudinal observation, they were classified as 4 groups:monopolar depressive, bipolar affective, schizoaffective and schizophrenic.    The following results were obtained:The courses in the monopo1ar depressive group remained stable, but the courses in the bipolar group were not uniform and showed greater instability. Switches from a monopolar to a bipolar course occur mostly in the early stage. During protracted courses, a considerable proportion of the bipolar affective and schizoaffective groups exibited shifts in polarity and a predominance of mania over depression. The changes in course in the affective axis of the schizoaffective group were similar to those in the bipolar affective group, and the former displayed more marked shifts in polarity than the latter. While 20%of the patients in the schizoaffective group were monopolar manic, there were no monopolar manic cases amQng the pure affective cases. On the other hand, there were no monopolar depressive patients in the schizoaffective group. Schizophrenic symptoms combine mainly with the manic pole, to the extent that they are related to affective symptoms. In the late stage of some cases in the sch玉zoaffective group, schizophrenic symptoms separated from the affective sylnptoms. AIthough the schizophrenic groups exibited no definite affective symptoms, they often reveal mild affectivity.    These findings demonstrate that the 4 groups are interrelated and suggest the spectrum−concept of endogenous psychoses.       序  精神分裂病や躁うつ病などの内因性精神病の領 域では,大規模集団を用いた長期経過研究が1970 年代から世界的に盛んに行われている.ドイツ語 圏の研究だけを振り返って見ても,M. Bleuler1), Huberら2)の精神分裂病研究に始まり,Angstら3) の躁うつ病すなわち感情病研究を経て,近年の Marnerosら4)の分裂感情病研究に到り,ようやく 内因性精神病の全分野をほぼ一巡したと言える. これらの研究の積み重ねによって,旧来の二分法 的な予後設定,すなわち「分裂病の予後は悪く, 感情病の予後は良好である」といった絶対的な予 後の差異化は,最終的に維持し得なくなった.今 日では,Angst3)の確認のように「分裂病の予後は

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これまで言われているほど悪くなく,感情病の予 後もそう良くはない」という方向に予後は相対化 され,より臨床の現実に近付いた感がある.また 近年,分裂感情病という二分法の中間領域が注目 されるようになってから,経過研究も,この中間 型を含めて三分割で呈示されるのが半ば習慣化さ れてきた.経験的視点からの長期経過研究こそが, Kraepelin5)から現在まで受け継がれてきた体系 の見直しの道を開いたと言える.  カテゴリーの改訂に本質的な貢献を果たしたの は,二分法の中間領域を扱った分裂感情病研究で ある.その際,Angst6)やMarnerosら7)}9)は,この 第3のカテゴリーを分離したのみならず,その経 過にみられる精神病像の形態変遷についても言及 している.すなわちここには,「今の横断面豫は経 過中の病像と必ずしも一致せず,横断面病像は変 化し,類型的にも交代し得るかもしれない」とい う,臨床経験からは当たり前のことながら,これ まで論じられる機会が少なかった設問が真正面に 出されている.そのような視点をもてぽ,これま での改革に貢献した経過研究の成果すらも,批判

や疑念を向けられずには済まなくなる.M.

Bleuler1)の労作である,分裂病の病勢の軌跡を描 いた曲線や,それに基づいた経過類型の区分すら も,この例外ではない.すなわち,果たして彼の 対象は,今日の三分法的な枠組みでの精神分裂病 とどの程度一致しているのか,あるいはまた,そ もそも精神病という多面的な現象変化を一本の線 の動きで表し得るものなのかという疑問が生じて くる.精神病の経過研究では,研究対象のとり方 ぽかりでなく,どのような二方で捉えるかによっ ても,新たな結像が生まれてくる.その意味で, 汲み尽くされることのない課題である.  ここでは,精神病形態の経過的推移を新たな視 点で観察する.大規模経過研究はいくつか出され たものの,長期経過を継時的に追跡した形で,い わぽ丸ごと捉えた研究はまだ少ない.ちなみに, 当教室では下浜lo)が1977年目1950年から1965年の 入院患者130名を対象に躁うつ病の長期経過を論 じている.今回われわれは,別の方法で検討を行っ た.われわれは,類型化された二三の交代を論ず る前に,内因性精神病に等しく共通する次元に基 づいて,経過を観察してみる必要があると考えて いる.その際,対象は,個別カテゴリーに限定さ れぬことも重要である.本研究では,以上の方針 を次のように具体化させた.すなわち調査対象は, 二分法では一義的に規定できない中間領域をも含 んだ内因性精神病圏全体からとり,この広い領域 を術逸しつつ,各例の長期経過形態を調査するこ と.そして横断面像評価の要素として,二分法の 基盤となっている感情病性要素と産出性の分裂病 性要素に注目し,それぞれの次元について縦断的 に観察し,かつ次元相互の脈絡を追跡することで ある,        対象および方法  1.対象  対象は1965年から1974年の間に,東京女子医大 病院神経精神科に内因性精神病圏の診断の下に初 回入院した症例の中から,5∼7年後に再入院試 を持ち,かつ10年以上の経過観察が可能であった 74例である.調査方法はretrospektiveな病歴調 査を用いた.調査期間は初診から1987年12月31日 迄とした.症例の内訳は男性33例,女性41例.観 察開始時年齢は10∼58歳,平均31.7歳(中央値27。5 歳).観察終了時年齢は25∼84歳,平均48.7歳.観 察;期間は10.2∼25.4年,平均17.0年,観察期間中 の精神科入院回数は2∼14回,中央値4回.  対象の選択法は,得られる結果に影響を与えず には置かない.病歴上での密度の濃い経過追跡は, 最低2回転入院という基準や,10年の観察期間と いう採択条件があってこそ,可能になったもので ある.しかし一方では,選択された症例が,内因 性精神病の患者群のうち,日常診療に接する患者 の平均抽出像から偏俺した集団になってしまった ことは否めない.すなわち,軽症で入院を要さな かったもの,長期経過をとらなかったもの,病勢 が動かぬもの,他院に継続入院したものなどは, この選択法によって対象からは脱落する.調査の 主眼は,あくまで精神病性の動きとその変化を追 うことに置き,この目的に沿って,個別カテゴリー を超越した内因性精神病圏全体に及ぶ展望が遮ら れぬ範囲で,対象を切り出したことになる.

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 2.方法  対象例の病歴から,逐次横断面の病像評価を下 し,これを蔵書的に累積した.横断面像は,分裂 病と感情病の二つの次元で,相互に独立に評価し た.評価の基本は,K, Schneider11)の分裂病と循 環病の鑑別類型に置き,具体的な病像評価に際し てはResearch Diagnostic Criteria12)(以下, RDC と略す)の診断基準に準拠した.すなわち,分裂 病軸では,1級症状を範としたRDcr精神分裂病」 A項目にまとめられた陽性症状に,更に妄想知覚 を加えて基準とし,これらのうち一項目でもあれ ぽ,横断面像における「分裂病症状」とみなした. また感情病軸については,RDcr定型うつ病」,「準

定型うつ病」のA項目およびB項目を満たす病

像をそれぞれ「うつ状態」,「軽うつ状態」,また RDC「躁病」,「軽躁病」のA項目およびB項目を 満たす病像を,「躁状態」および「軽躁状態」とし て評価した.74例の観察経過は図1のように二元 的に描記される.  対象例の経過をみると,二元的に捉えた精神病 性現象は,それぞれ初期経過においては,概ね相 期的な経過としてエピソード(ないし二相)に区 切って眺めることができる.しかし晩期段階では, たとえ感情病の範囲でも,エピソードとして区切 りをつけることが必ずしも容易でな:くなってく る.すなわち,時期的に相接する二つの現象を, 独立した二つのエピソードとするか,多少の空白 はあっても一つのエピソードとするかが問題にな る.本調査の中で,類型化や計量化のために経過 をエピソード的に扱わざるを得ないときには,次 のような基準を採用した,すなわちRDCの間歓 期の基準に準じて,感情病軸では軽うつ状態ある いは軽躁状態に満たない状態,また分裂病軸にお いては分裂病症状が存在しない状態,あるいは両 軸に症状が見られるエピソードでは,これらいず れをも欠いた状態が,2ヵ月持続した場合をエピ ソードのきれめとして扱った.なお,本論文では, 感情病群や分裂感情病群の感情病軸に注自して論 ずる際には,これまでの慣例から病相という名称 を用いていることをお断りしておく.  また経過中には,軽うつ状態や軽躁状態にも満 たない感情病性の個別症状が観察されることがし .ぼしぼあった.これらは今後の研究のために,図 の中では基線の上下部に各々若干の幅を持たせて 表し,その存在を示した.  なお,ここで観察している長期経過は,自然経 過ではない.我々の下で実際に観察された病像で あることは,治療下の病像であることを意味して いる.精神科治療,特に向精神薬が,病像および 経過に影響を及ぼしていることは,当然考慮すべ き要件である.これについては,調査の際に注目 を置いたが,系統的な向精神薬の使用方法が取ら れておらず,従って個々の薬物療法が精神病の長 期経過に与える影響については,纒まった所見を あげるに至らなかった.そのため今回は深く立ち 入らない. 観察期間 双極感情病群

一蝋画

0 5 10 15 20年 ↓ ↑ 分裂感情病群 分裂病軸 魑  ■ 目 111  川 ■旧1璽開塵 繧旧鳳目■■匿1照■置 図1 調査方法

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表1 症例の内訳 群 (症例数 j:女) 症例比率

@%

観察開始時 N齢(歳) @(平均) 観察終了時 N齢(歳) @(平均) 観察期間(年) @(平均) 入院回数 i中央値) 全 対 象  74i33:41) 100 10−61 i31.7) 25−84 i48,7) 10.2−25.4 i17.0) 2−14 i4)

単極うつ病群  10i3:7) 13.5 i45.6)24−58 i63,4)41−84 12.0−25.4i17.8) 2−7i3)

双極感情病群  28i13:15) 37.8 i32.4)10−61 i49.9)25−75 13.5−23.0i17.3) 2−14i4)

分裂感情病母  29i12:17) 39.2 i27.9)14−46 i44.4)31−69 10.2−23.8i16.7) 2−16i7)

分裂病群

 7i5:2) 9.5 21−32 i25.0) 34−53 i40.7) 11.3−21.9 i16.1) 2−8 i3,5)          結  果  1.各経過群の概観的比較  経過概観のために,74例を単極うつ病群(以下, 単極群と略す)10例,双極感情二三(以下,双極 群と略す)28例,分裂感情病群29例,分裂病群7 例の4群にわけて呈示する.各回毎の該当症例数 および全体に占める比率,性別,初回入院時年齢, 観察終了時年齢,観察期間,精神科入院回数は表 1のようになった.  なお各々の群は以下のように定義づけている. 即ち単極群とは,観察;期間全体を通して,定型う っ病エピソードないし準定型うつ病エピソードの みが観察された純感情病経過である.双極群とは, 観察期間中に一度でも,準定型うつ病および軽躁 病レベル以上の躁,うつ両病極の病像が認められ た経過群を指している.また分裂感情病群とは, 定型うつ病あるいは躁病のエピソードと分裂病エ ピソードとが,それぞれ全経過を通じて少なくと も一度観察された症例群,すなわち広義の中間領 域に属する経過群である.最後に分裂病群とは, 全観察期間を通して分裂病エピソードは認められ たが,感情病軸は準定型うつ病から軽躁病の範囲 に留まった症例である.  4群を比較すると,観察開始時年齢は単極群が 平均45.6歳と他藩に比較して圧倒的に高く,同じ く純感情病性経過にあたる双極群に比べても相違 は顕著である(p〈0.05).逆に分裂病群は,7例 中5例が既に他院での治療歴を有するにも拘ら ず,観察開始時年齢は最も低かった(対双極群お よび分裂感情病群n.s,対単極群p<0.005).平均 観察期間は単極群で最:も長く,分裂病群で最も短 期であったが,顕著な相違ではない.双極群,分 裂感情二二は,観察開始時年齢,平均観察期間と もに単極群,分裂病群の中間に位置していた.し かし入院回数については,単極群,双極群,分裂 病群の3群は全体の中央値4回の付近にあるのに 対し,分裂感情病群は中央値7回と群を抜いて多 かった(対単極群p〈0.005,他n.s.).  なお観察終了時点での各症例の転帰について は,単極群10例中7例が通院治療継続,2・例(症

例7,9)が通院終了,1例(症例3)が内科疾

患で病死した.双極群では28例中22例が,通院治 療中であり,4例(症例31,34,36,38)が転居 等の都合により他院紹介となった.通院終了は1 例(症例30)のみに留まり,躁病相の頻発化の中 で1例(症例37)が自殺を遂げた.他施設への長 期入院に到った症例はなかった.分裂感情病群で の外来通院継続例は29例中20例,通院終了となっ た症例は2例(症例62,63),他施設への長期入院 に到った症例は5例(症例45,51,53,57,58) 見られた.その他自ら通院中断した症例が2例(症 例56,64)あった.分裂病群では7例中1例(症 例71)が自殺に到り,1例(症例69)が他院転院 となった他は外来通院を続けている.  2.経過の概観  群別に経過全体を概観してみる.  1)単極群(症例番号1∼10:10例,図2)  単極群のうち,症例1∼5は経過中に一度でも

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0 5 10 15 20 25年 症例1 ↓ 男24歳 ↑ 症例2 ↓

女36歳T−TT−一一一一『一「一 一[「

症例3 ↓ † 症例4 ↓

女54歳「「一一一一一一一「−一『一■「一一一一「

症例5 ↓ 症例6 ↓ 女34歳 ↑ 症例7 ↓ 男41歳 ↑ 症例8 ↓ 女49歳 ↑ 症例9 ↓ 女55歳 ↑ 症例10 ↓ 女56歳 ↑ 図2 単極うつ病群 定型うっ病像を呈し,症例6∼10は全観察期間を 通じて準定型うつ,すなわちここでの定義では卜 うつ病像のみが観察された症例群である、うつ状 態で発病した症例にも,その後の経過では軽うつ 状態に留まる傾向,即ち軽症化の傾向が見てとれ る.これには,治療の影響も考慮する必要がある が,感情病の長期的な特性そのものである可能性 も存在しよう.10年以上の長い間歓期をもつ例が

2例(症例5,8)あり,特に症例8では,二度

の軽うつ病相のあと,再び軽うつ病相が発現する まで15年余という長い間歎期をみた.  群全体を概観して,単極群の病田生起は次の双 極群よりも,比較的穏やかで単調でありつづける ことがわかる.  2)双極群(症例番号11∼38:28例,図3,4)  双極群では,躁うつ両極の強さは,症例毎にさ まざまである.症例11∼14は,経過を通して極性 が軽躁と軽うつに留まった症例である.また症例 15,16,17,19,22,29,30,34は,うつ病と軽 躁病の組み合わせ,症例23∼26は,軽うつ病と躁 病の組み合わせに留まった.残り12例の経過中に は,うつ病と躁病の両極が見られている.  双極群は経過は症例毎に多種多様の感がある. 間歓期の長さは様々で,変化に富んでいるが,概

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0 5 10 15 26

蛮擁+一一一一一「↑

難寺r⊥」}一一一一一一=一

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盤→一一一一一LL・一丁

虚心{一一一一一一一一一一}

↑ 図3 双極感清病群(1) 25年

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0 5 10 15 20 25年

雛十ゴ「「占竹一一一r』T

黎一』T一・「一一¶一一一「

魏叢≒一一一一一「↑

    ↓ 図4 双極感情病群(2)

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    0         5        10        15     ロ じ 20 25年 ■ 1■  8 ■ 腫 1■[ ↓ 嗣■ 魔■   咀 闘 ↑ ↑      ロ       ロ       き  ロリココロリロロコロ ロコ

雛一叫山』一一一一L⊥+

監    1   慢 l   I 暑 1 量 量 9     け       ほ   コじ  ロロ

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    一       5■層蹴1111 1屠    Il     馴■■匿lIIIII  唖■■1■■■ 颯  一■■■圃圏疇■■ ■幽  ■  1 1   I ●   1 ●■ . 膠 耶1■ 日 1 ■

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國 l   l  l   l ■   ■ l  Il I 置  I   l ■巳   ■1ロ    ロ  巳   艦 日 口“   艦 塁   ll 嘗 1雷 図5 分裂感情病群(1)

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    0      5         10         15      ロ      ロ         コ コ   コ    コ  ロ ロコ     コ

雛十ヤヰ⊥L−T

    ロ   ロ  ロ  ロ   ロ    ロロ コロ    ロロコ  コ   ロ    コ       ロ      コ      コ

雛+「一+一一一一⊥ド

        ロ  コ コ          コ     コ      ほロ   ロ     I      ■       1 症例6τ 女45歳        コ

症例62_L_⊥」L__」一

男14歳 ↑       ↑     ロ       コ ロ   ロ     ユ

症例63⊥_⊥_⊥山L⊥_

女21歳 ↑       ↑       ロ   ロ         ロ

症例64一L_一」』1L上_一__

女26歳 ,       ↑     ロ       

症例65」L____LL一_

男33歳 ↑      ↑     コ コ      ロ

症例66」__」___」一_____」

    ↑       ↑ 男34歳     1      6 20 ↑ 男46歳 ↑ 図6 分裂感情病群(2) ↑ 25年

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回目,単極群より病相数が多い.また単極群に見 られた経過の安定さに比較しようもない不規則性 が如実にあらわれている.広瀬13)が指摘している ように,躁病極の参加は個々の経過特徴をより複 雑にしていると言える.躁うつ病経過に通例想定 される三期の定型性,すなわち同じ波の形を反復 していくというパターン性は,双極病の場合は見 られない.  初発年齢,間歓期からの類型化を試みた広瀬の 分類に準拠して,ここでは間三期のみに注目して 双極群の経過を論ずる.頻発型(間二期1年未満) に該当するものは,症例33の1例であるが,・経過 の一時期に比較的持続する頻発傾向を持つものは 症例12,20,21∼26,29,32,33,35,36,38の 14例が挙げられる.一方,周期型(同1∼15年未 満)には,症例28の!例のみが該当する.間敏型 (同15年以上)の症例はここには存在せず,症例19 の100ヵ月が間二期の最長期間であった.移行型 (周期型から頻発型への移行)に属するのは症例19 のみであった.本症例の双極群には,周期型と頻 発型が経過中に相互に移行し合い,二相生起にお けるパターン性を見出せないものが殆どである.  1年間に4回以上の躁,またはうつ病相を持つ, いわゆるrapid cycler14)(病相頻発型患者)には, 症例12の中期段階(観察開始より69ヵ月目,持続 約20ヵ月間),症例20の中期以降(45ヵ月目以降か ら観察終了迄の約167ヵ月間),症例25の中期段階 (59カ,二目から15ヵ月間)の3症例が該当する.何 れもrapid cycle化の時期には両病極を備えてい ることが,経過図から認められる.  躁うつ両極をもつに至るまでの経過を見てみる と,症例16,17,19,29,30,34,37は最初から 躁病相で始まっているが,症例31,33,35はうつ 二相で始まり続いて躁転.症例11,13,18,21, 36,38は,うつ三相から間二期を挟んで次に躁病 相を持ったものである.症例12,14,15,20,22∼26, 32はうつ三相を何度か重ねた後に躁病相を持った 症例である.一方症例27,28のように,病三期性 にうつ三相を繰り返しつつ,晩期に到って初めて 躁状態の発現を見る例外的な経過も存在はする. 双極化は総じて観察経過の早い時期であることが 解る.  経過における躁うつの極性の比重に注目してみ ると,症例29∼38の10例では,経過前半は躁うつ 両極の均衡が保たれているが,経過を経るに従い その比重が躁病極に移行して行く傾向が窺われ た.  なお,単極および双極群計38例の純感情病群, つまり分裂病症状を持たずに経過した症例群の中 に,躁病単極型の経過は存在しなかった.これは, 単極躁病の病型が統計的に比較的稀であることの 反映とも思われる.しかし,次の分裂感情病群に は,感情二軸が単極躁病型であったものが数例存 在する.  双極化,極性の比重の偏筒については,本群と 次の分裂感情病群について,別項で論じる.  3)分裂感情病群(症例番号39∼67;29例,図5, 6).  分裂感情病群には,全経過を通じて一度でも, うつあるいは躁を満たす感情病症状と分裂病症状 とを呈したものを選んだ.  23例の感情病軸は双極型に経過し,6例は単極 躁病型であった.また個別エピソードを見ると, 症例43,49,50,58は,分裂病症状に軽うつない し軽躁の感情病症状が重畳したエピソードはある が,うつ或いは躁の感情病症状は経過の別の時期 に見られた.すなわち,エピソード的に見れば, 分裂感情病エピソードは見られず,分裂病エピ ソードと感情病エピソードとを経過で交代した. 残りの24例は,うつないし躁レベルの感情病症状 と分裂病症状が重畳ないし交代した形の分裂感情 病エピソードを経過中に呈した.  感情病軸に着目して概観してみると,双極型を 呈した23例の感情病性要素の経過は,双極群のそ れと大きく異なった特徴は認められず,多様性, 不安定性が,単一性,安定性を凌駕している.ま た,双極群で見られた長期経過上の躁病極への三 二は,分裂感情病群では,症例45∼58にみられる ように,より優勢な傾向として確認される.一方, 症例59,60では,感情病症状が早期に二言し,分 裂病症状が独立化し,また症例61では,単極性躁 病像と分裂躁病像を長期に亙り繰り返し,晩期経

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過に至って初めて明瞭なうつ病相が出現するとい う例外的な経過も存在した.  症例62∼67の6例では,先に述べたように,純 感情病群では存在しなかった単極躁病型経過が観 察された.一方,単極うつ三型の分裂感情病は1 例も見られなかった.  次に,分裂病性要素に注目すると,症例52∼56, 6ユ∼65に顕著であるように,分裂病症状と感情病 性要素のつながりは,躁極を通じて成立している ことが分かる.逆にうつ病と直接関係をもってい たのはごく少数である.すなおち,この連関は症 例43,48,49の部分経過に見られる.いずれにせ よ大半の例では,分裂病性要素は,経過はじめは 感情病症状と連関して出現している.しかし,こ の傾向は必ずしも経過を一貫して存在するのでは なく,症例45,47,48,51,53,60に顕著なよう に,経過後半には分裂病症状が感情病性要素から 独立して出現するものがある.これらの症例では, 分裂病症状が独立していくのと平行して,感情病 軸がうつ二極を失い,躁病極へ偏碕することが見 られた.両者の連関については,別の論文15)で詳し く論じた.  4)分裂病群(症例番号68∼74;7例,図7)  分裂病群の経過図は,双極群や分裂感情病群と は異なり,比較的おだやかな経過形を示している, エピソードは一部持続的になるものの,総じて稀 である.しかし,分裂病性経過と命名はしても, 経過に軽うつ軽躁レベルの感情病性要素を全く欠 いている症例はない.このことから,分裂感情病 を含めて分裂病圏に含まれる経過すべてにも,感 情病性要素は多少とも関与していると言える,感 情病症状と分裂病症状との連関は分裂感情病群に 比べて総じて薄いものの,症例69,70以外では観 察初期には,主に軽躁性の感情病症状と分裂病症 状の連関が見られる.また一方では,先に述べた 分裂感情病群の一部の晩期経過は,この分裂病群 0 ■ 5       10 1  1 引 目  ll l l博 II■ 旧[■■■■ 15 20 25年

   』.

症例70 男24歳 一  1 111 8    1■■■1 症例71_」_一______一一一一一一一 男24歳↑ ■   ■ ∼

婆難一一一」一「

蛋羅「一↓}一一一一一一一一一一L一一「

置    瞥 症例74

秩m一』∼一一一一一一一「・一→」一一ト「

男32歳↑ 図7 分裂病随

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の経過と酪正してくることがわかる.  なお分裂病群7例の中には,観察されていない 初期経過をもつものが5例と,群としては例外的 に優位を占めている(単極群1例/10例,双極群3 例/28例,分裂感情病群9例/29例).これらの初期 エピソードには,感情病性要素の関与がより明瞭 であった可能性も否定はできない.長期経過を二 元的に見ると,分裂病群は,分裂感情病群とは全 く異なった経過特性を示しているのではなく,前 者は後者と経過の特徴を部分的に共有していると 見なせる.  3.感情病性要素と分裂病性要素の関係  分裂感情病群の経過図から,分裂病性要素に対 する感情病性要素の連関は,主に躁病側が直接の つながりをもっていることを指摘した.ここでは, 双極性感情病を呈した23例について,分裂病症状 を含むエピソードを取り出し,分裂病症状と同時 期に出現した感情病性要素の極性を調査した.な お,感情病症状と分裂病症状との出現は,必ずし も同期するものではなく,出現および消裾の時期 にずれがあるのが常である.そのためここでは, 分裂病症状が存在する間にもっとも目立った感情 病症状を取り出した.  極性の比重を計量的に相対化し,躁状態=+ 1.0,軽躁状態=+0.5,軽うつ状態=一〇.5, うつ 状態=一1.0として点数化を試みた.その結果,1 エピソードの平均値は,0.546±0.384,95%信頼 区間は0.4∼0.692となり,明らかに躁極側に偏っ ていることがわかる.  23例中極性の比重がマイナス,すなわちうつ極 に偏ったものは症例43(一〇.10),症例49(一〇.19) の2例であり,何れも軽うつ状態と分裂病症状の 組合せであった.ここで検討した対象23例の他に, 単極躁病性に経過する分裂感情病群6例が存在し ていることを考え合わせても,分裂病症状と親和 性の強い感情病極は躁病極であるといえる.  4.経過上の変化  次に4群のうち,最も多様で変化に富んだ経過 形態を示している双極群と分裂感情病群につい て,経過の変遷に注目する.  1)双極化について(図8,9) 症例累積百分率 100% 一双語群    28例 鰍分裂感情病群 23例 80 60 40 20 o    讐ヒ=.ビ,F @・κ, G‘嘱r ,’罵諄国署.寓 =罵胃冨” y讐「.腫,「望「 マ▼w▼ ==冨誕==冤7富K=

。.12468101214161820裂

症例累積百分率  10D% 80 60 40 20 o  1 2  4  6  8  10 12 14 16       病相 図8 双極化までの年数と病相数  双極群,分裂感情他出共に双極化迄の病相数は ほぼ等しく,第5病相迄に各々92.9%,91.3%と 両群共に9割を越える.しかしその年数を比較す ると,観察開始半年の時点では分裂感情病群は 43.5%,双極群は28.6%と分裂感情病群が先行し, この傾向は以後も続き,経過5年の時点では分裂 感情病群91.3%,双極群82.1%に達する.躁病相 とうつ同相の各々の発現について両群を比較する と,うつ嫡子は年数,病相数字に双極群が先行し, これとは逆に躁病相では分裂感情病群が先行す る.また同一経過群内で躁,うつ両三相の発現時 点を比較すると,双極群ではうつ病相が先行し, 分裂感情一群でもやはりうつ病相が先行するもの の,経過2年で躁病相も同等の比率を持つに到る. つまり分裂感情晶群では,双極群に比較して早期 に双極化する傾向があると言える.  2)長期経過中の「マニーへのシフト」について  双極群と分裂感情病冠に共通して認められた躁 病極への極性偏俺の現象を,我々は「マ一一への シフト」と名付けた.「この観点から双極群を,軽

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表2 観察開始期病相の極性と経過における極性偏侮との関係 双  極  群

分裂感情病群

観察開始期の病 @相の極性 計(%) 均衡群 シフト

Q

その他 計(%) 均衡群 シフト

Q

単極躁 @群 その他 うつ i64.3)18 9 3 6  6 i20.7) 4 2 0 0 単極 躁  3i10.7) 1 2 0 12 i41.4) 1 4 6 1 双  極  7i25。0) 2 5 0 1ユ i37.9) 1 8 0 2 計  28 i100.0) 12 10 6  29i100.0) 6 14 6 3 躁軽うつに留まった4例(症例11∼14)を除く24 例で再度眺めてみると,10例(症例29∼38)にこ の傾向が認められた.一方12例(症例15∼26)で は,長期経過を経ても躁うつの均衡が保たれてい た.分裂感情平群では躁病極への極性偏筒が更に 顕著に認められた.すなわち,29例中14例(症例 45∼58)に,同じシフトの現象が認められたのに 対し,極性の均衡を保ち続けた症例は6例(症例 39∼44)のみであった.更に詳細な検討は別論文15) で行った.  3)観察開始時病相と極性四壁の関係について (表2)  双極群では発病当初は圧倒的にうつ病が優勢 で,64.3%を占めるが,分裂感情病群では躁病相 で初発するものと労うつ両病相が連続する双極初 発型が多く,両者を併せると79.3%に及ぶ.つま り双極群に比べ,分裂感情四型は初発時から躁病 極の出現率が高い.これには,双極群では観察さ れなかった単極躁病型が分裂感情病群の20.7% (6例/29例)で見られることも関係している,ま た双極群,分裂感情病群に共通して見られるのは, 均衡群に分類される症例は,観察開始時うつ病像 が優勢であり,シフト群に分類される症例は,均 衡群に比べ経過当初から双極型を含め躁病像の出 現する割合が優位なことである.なお,経過型の 群分けで,「その他」に属するのは,双極群では全

経過を通じて軽躁軽うヒ)に留まった4症例

(11∼14)と,晩期双極化のためにその後の極性偏 崎が判別できなかった2症例(27,28),および分 裂感情病群では特異な経過形態のために,同じく 双極群   28例 ェ裂感情病群23例 O一 双極群躁病相 怦黶@双極群うつ病相 香c 分裂感情病群躁病相 ケ一 分裂感情病群うっ病相 累積百分率 ,圃▼「「 @1「「〉鯉い層_圃誌…___門一  _1 「「解,’》「, .7   〆=凋胃旨「富冨= @ 1 ”ご 喧カ 100% W0 U0 S0 Q0 @0    01 2 症例累積百分率   100% 80 60 40 20

46810121416182021

       年

 0

    124.6 810121416

      病相 図9 躁およびうつ病期の初回発現までに要する年数  と病相数 極性が均衡しているか,シフトしたかを区分でき なかった3症例(59∼61)である.  4)初発エピソードから見た類型分布の変遷(図 10).  次に双極性分裂感情病23例を対象に,分裂病症

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      感情病エピソードで開始         症例数=6  区間該当症例数=4 4 4 4 4 区間総エピソード数= 8 9 1110 8 エ ピ ソ 1 ド の 類 型 比 率 100% 80% 60% ’40% 20% 0% 観察開始 中間エピソードで開始  症例数=12

10101074

15 3奪 23 1814 分裂病エピソードで開始   症例数=5 5 4  5 3 3 9 8 9 4 4

□饗癖.,

  中間類型 ロ エピソ_ド

■聾岱.,

から各3年 図10 初発エピソード型で分けた分裂感情病群の類型分布の経過変遷 状と感情病性要素の連関を調査した.観察開始の 病像から,感情病エピソードで初発する群,中間 領域エピソードで初発する群,分裂病エピソード で初発する群に3分して,以後3年毎に出現した 全エピソードの占有比率を15年経過まで図示し た.感情病エピソードで初発する群は,他の2群 に比較して,15年の経過を通して感情病エピソー ドの比率が良く保持され,次いで中間領域に相当 するエピソードも比較的高率である.分裂病エピ ソードは3年目迄の経過中には出現せず,4年目 以降には,比率にかなりの変動は見られるものの, 出現し続けた.間歓期に相当する症例も,各3年 経過毎に2例ずつ存在した.次に中間領域エピ ソードで初発する群における中間領域エピソード のその後の出現率は,感情病群におけるそれとほ ぼ等しい.しかし,感情病エピソードで初発する 群に比べて,分裂病エピソードが増加している. 分裂病エピソードで初発する群では,他の2群に 比べ分裂病エピソードの出現率が初期から圧倒的 に高い.しかし,その後の経過には中間領域エピ ソードのみならず,分裂病症状とは無縁な感情病 性エピソードの出現も見られており,分裂病エピ ソードで初発した場合も,その後の経過は感情病 性要素と無関係ではない.すなわち初期段階の横 断面像をひとつみて,経過全体の病像の有り方を 均質と予測するのは,やはり無理と言わざるを得 ない.          考  察  本研究の調査対象となった74例は,該当期間中 に当科に初回入院した全症例1,858例の4.0%にあ たる.このことは,本調査の結果が内因性精神病 の経過の全体像や平均像を輪郭づけるものであり えないことを明瞭に物語っている.本調査はあく まで,経過推移に焦点づけた研究として位置づけ られる.内因性精神病の予後の研究報告に比べ, 形態推移を扱った報告はまだ少ない.本研究では, 操作化された横断面像の二元評価を縦断的に徹底 させるという独自の方法でこれを試みた.  二元評価の利点のひとつは,二分法的なカテゴ リー枠から経過を眺めた時には見落とされがち な,別の要素が忠実に拾い上げられることにあろ う.特に分裂病圏では,感情病性要素への注目が 希薄になりがちだが,Huberら2)は,かれらの対象 であるK.Schneiderの基準に基づく分裂病の長 期経過に,内因性うつ病像が表われることを自然 なものと見高している.一方Winokurら16)は,分 裂感情病経過に見られる感情病性要素の主導性を 指摘している.本研究の分裂感情病群では,感情 病性要素の経過傾向が双極感情病群のそれと平行 したものと捉えられた.逆に躁うつ病圏と診断さ

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れた時に無視されがちな,短期に出現する妄想知 覚や被影響体験などり分裂病症状も忠実に評価で きる.ここでの分裂感情平群の分裂病症状を縦断 的にみれぽ,ごく短期に出現するものから,長期 的に持続するものまでさまざまな出現形態をとっ ていることがわかる.  調査は,感情病性症状と分裂病症状という二つ の要素に集約された結果,他の要素,たとえぽ「陰 性症状」と呼ばれる,精神分裂病の欠陥ないし残 遺症状への考慮はされなかった.すなわち,内因 性精神病の総合的な病態評価がなされたのでな く,精神病の影干特徴的な症状のみが追跡された ことになる.もし陰性症状を評価に含めるならぽ, これも全体に等しく適用せねばならない.残念な がら個人の性格,環境要因を豊富に含んだ陰性症 状に一次元を与えることは,今回は断念せざるを 得なかった.  内因性精神病の長期経過の実態とその推移につ いて,以上のように限定された枠組みから切り出 された所見をまとめてみる.  各群を概観的に比較すると,単極群と分裂病群 に比べ,双極群と分裂感情病群は経過の動きが特 に激しい.内因性精神病圏の中核に双極性の分裂 感情病をおき,単極うつ病と分裂病とをそれぞれ 両翼に振り分けるJanzarik17)の見方は,決して思 弁的な図式には留まらない現実性を帯びてくる. 双極病と分裂感情病とには,内因性精神病におけ る精神病的な動きの本質が最も活発に表われてお り,これに対比すれぽ,単極うつ病群と分裂病群 とは経過形態の中の特殊なバリエーションとすら 捉えられよう.更に,単極うつ病の双極化や,双 極病群と分裂感情病群との感情病的親密性,そし て分裂感情病群の一部と分裂病群の経過の類似と を考えてみると,群の区分に転用したカテゴリー 的枠組みは,流動的かつスペクトラム的に相対化 される。二分法的な呪うつ病と分裂病とめ区分は, 単極うつ病と分裂病とを対比している限りは,今 後も相異なる性質をもった単位として対置させる ことが可能であろう.両者はそれぞれ安定した雛 型として,内因性精神病の全体像から浮かびあが る.しかしながら,この対置は,両端それぞれに 関係する双極性の感情病および分裂感情病によっ て相対化される.またこれらの特性である高度な 不安定性によって,二分野の概念的な安定性は, 常に脅かされ,破綻を迫られているのである.  スペクトルの両端よりも中央部に注目した時, 精神病の横断面現象は,経過の中で十分な頻度で 変化しうるものであることを見てきた.二元評価 のなかでは,精神病の経過の動き,即ち「経過力 動」は,うつから躁うつ双極へ,また双極均衡状 態から躁病優勢化へと推移する感情病領域の推移 として,また分裂病性要素に関しては,躁病症状 に依存して分裂病症状が出現する状態から,躁病 から独立して分裂病症状が出現する状態への変化 として捉えることができた.このような流れは, Kraepelinの二分法5)に先だつZeller, Griesinger の単一精神病の段階学説18)によく合致するもので ある.すなわち,前者の動きは,単一精神病の「一 次性感情障害」内部の形態変遷として,また後者 は,「一次性感情障害」から「二次性衰弱状態」へ の推移としてである.なお,単極うつ病から精神 分裂病に至るスペクトルの中で,分裂感情病的中 間領域自体がスペクトル的に捉えられることを, われわれは分裂感情病の経過力動を扱った別論文 で呈示した19).  しかしながら,躁極上で分裂病症状を一度も呈 さない双極群の症例が多数あることからわかるよ うに,精神病をカテゴリー的にも一元化して統括 するわけには行かない.双極群と分裂感情病群に は分裂病症状の有無という相違があり,また単極 うつ病と分裂病とは,一元的な軸の両端として捉 えられたものではないからである.  われわれは感情病と分裂病との二元評価を試み たが,実際には分裂病軸は分裂病症状の有無に留 まり,一つの次元として扱うにはまだ未熟な段階 に留まっている.この研究では分裂病軸に,通常 の操作的診断基準では除外されている妄想知覚も 含めて定義し,K. Schneiderの精神分裂病の分裂 病性が評価から脱落しないようにしてある.もな みに,このように定義された分裂病症状にも,経 過中に形状の推移が見られることは,別論文で論 じた20).もし,妄想知覚を越えて更に,分裂病の診

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断特徴性に乏しい体験症状をも捉え得る体験軸を 設定できれぽ,この種の体験軸と感情三軸との相 互連関性は更に緻密で,双極群全般に及ぶものに なった可能性はある.他方,感情病軸にも,さら に病二巴特徴的な感情病性要素,たとえぽ不安・ 緊張な:どが捉えられれぽ,諸経過の相貌に依然見 られる二分法的な断裂は,より一層縮まるのかも しれない.本研究では,診断特徴的なふたつの症 状を独立して評価することで切り出された範囲 で,内因性精神病圏の内部の連関性を経過的な視 点から提示した.          ま と め  1)東京女子医大精神科で内因性精神病の診断 を受け,2度の入院歴を持ち10年以上観察された 74例について,感情病症状および産出性分裂病症 状に注目して,その長期的形態変遷を病歴上で追 跡した.  2)単極うつ病群,双極感情病群,分裂感情病群, それに分裂病群の4群にわけて経過を概観した.  3)単極うつ勢州は,単調で比較的安定した経過 を保つ.  4)双極群の経過は,症例毎に多様でかつ不安定 である.単極うつ病弊に準じた定型パターン性を 見出すことはできなかった.  5)双極化は早い時期に起こる.即ち,双極群, 分裂感情病群共に第5病相学に約90%が,観察5 年以内に各々約80%および90%が双極化する.  6)双極群の一部に,経過途中にうつ野相が軽症 化し,躁病相のみが残留し,その結果双極均衡が 躁病側に偏僑する「マニーへのシフト」を見た.  7)双極感情病群と分裂感情病群は感情病軸上 の経過は相似している.躁病極へのシフトは後者 に優勢であった.  8)単極躁病型経過は分裂感情病群の約20%に 見られたのに対し,純感情病例には1例も認めら れなかった.一方分裂感情病群に単極うつ病型は 見出せなかった.  9)分裂病症状が感情病性要素との連関を持つ 限りは,その出現は躁病極との親和性が強い.  10)分裂感情病の一丁目,経過後半に分裂病性 要素が感情病から独立し,経過の相貌が分裂病化 する傾向が認められた.  11)分裂病群も軽度の感情病性要素とは無縁で ない.  12)経過的にみると,各群は孤立したものでは なく,単極うつ病,双極性感情病,分裂感情病, 分裂病などの臨床単位は相互に連関したスペクト ルとして眺めるのが妥当である.  13)本研究で行った二元評価でみる限り,経過 中の変動がもっとも強いのは,双極群と分裂感情 病群である.スペクトルはこれらを中核として, 両端に単極群と分裂病群が各々位置づけられる.  14)二分置ないし三分法的カテゴリー区分と単 一精神病的視点の妥当性と限界について論じた.  稿を終えるにあたり,懇切な御指導と御検閲を賜り ました田村敦子主任教授および岩井一正助教授に深 謝致します.また長年にわたり貴重な病歴の記載にあ たってこられた当教室の諸先輩方ならびに同僚の皆 様にお礼を申し上げます.  本論文は,1988年第84回日本精神神経学会(大阪), 1989年第85回同学会(金沢),1990年第86回同学会(鹿 児島),および1989年第8回世界精神医学会(アテネ) での発表の基盤となった研究である.          文  献  1)Bleuler M:Die schizophrenen Geistesst6run−   gen. Georg Thieme, pp267−275, Verlag, Stutt・   gart (1972)  2)Iluber G, Gross G, Sch亜tt翌er R:Shizo・   phrenie. Eine Verlaufs−und Sozialpsychiatris−   che Langzeitstudie. Springer−Verlag, Berlin・   Heidelberg・New York (1979)  3)Angst J: Verlauf unipolar depressiv, bipolar   manisch−depressiver und schizo・affektiver Er・   krankungen und Psychosen. Ergebnisse einer   prospektiven Studie. Fortschr Neurol Psychiat   48:3−30, 1980  4)Mameros A, Tsuang MT:Schizoaffective   Psychoses. Springer・Verlag, Berl量n。Heidelber   g・New York・London・Paris・Tokyo(1986)  5)Kraepelin E: Psychiatrie.8te AuH 3, Band   Barth, Leipzig(1915)  6)Angst J: Course of schizoa{fective psychoses.   勉Schizoaffective Psychoses.(Mameros A,   Tsuang MT eds)pp63−93, Springer・Verlag,   Berlin・Heidelberg・New York・London・Paris。   Tokyo(1986)

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7) ]MI.ar轟eros A, Deister A, Rohde A et a墨:   Long・term course of schizoaffective disorders.   Part I:De丘nitions, methods, frequency of epi・   sodes and cycles。 Eur Arch Psychiatr Neurol   Sci 23フ:264−275, 1988 8)Mameros A, Rohde A, Deister A et al=   Long−te㎜course of schizoa仔ective disorders.   Part II:Length bf cydes, ep三sodes, and inter−   vals. Eur Arch. PsychiatでNeurol Sci 237:   276−282, 1988 9)Mameros A, Rohde A, Deister A et a董:   Long−term course of schizoaffective disorders   Part III:Onset, type of episodes and syndrome   shift, precipitating factors, suicidality.,   seasonality, inactivity of illness, and.outcome.   Eur Arch Psychiatr Neurol Sci 237:283−290,   ユ988 10)下浜紀子:長期観察による内因性躁うつ病の経過   形態について.東女医大誌 47:1311−1327,1977 ユ1)Schneider K:1∼1inische Psychopatologie.   Thieme, Stuttgart(197!) 12)Spitzer R, Endicott J, Robins E: Research   Diagnostic Criteria(RDC).「精神医学研究用診断   マニュアル」(本多 裕,岡崎祐士監訳),国際医   書出版,東京(1981) 1.3)広瀬徹也:.躁うつ病の経過に関する研究一治療と   の関連において一」.精神神経誌.69:19−38,1967 14)Dunner DL, Patrick V, Fieve RR; Rapid   cychng manic depressive patients, Co血pr Psy・   chiatry 18:561−565, 1977 15)石原さかえ,岩井一正:双極病の長期経過にみら   れる躁病極へのシフトー内因性精神病.の経過力動   に関する研究一そめ1.精神医学  (印刷中) 16)Winokur G, Scharfβtter C, Angst J:Stabil−   ity of psychotic sylnptomatology(delusions,   hallucinations), affective syndromes, and   schizophrenic symptomes(thOught disorders,   in・congruent affect)over episodes in remitting   psychoses. Eur Arch Psychiatr Neurol Sci   234:303−307, 1985 ユ7)Janzarik W:St痴kturdynamische Grund・   lagen der Psychiatrie;5. Prinzipien im Aufbau   idiopathischer Psychosyndrome;5。.1 Die ein・   heitspsychotische Basis. pp195−203. Enke,   Stuttgart (1988) 18)千谷七郎:内因性単一精神病一A.Zellerの精神   医学について.「躁うつ病」(飯田 真編)pp20−44,   国際医書出版,東京(1983) 19)岩井一正,石原さかえ:長期経過からみた中間領   域の位置づけ一内因性精神病.の経過力動に関する   研究一その3.精.神医学(印刷中) 20)岩井一正,石原さかえ:分裂病症状の長期変遷   一内因性精神病の経過力動に関する研究一その   2.精神医学(印刷中)

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