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(シンポジウム 悪性リンパ腫)悪性リンパ腫の骨髄移植

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シンポジウム

悪性リンパ腫

〔東女医大誌 第63巻 第4号頁389∼393平成5年4月〕

悪性リンパ腫の骨髄移植

東京女子医科大学 血液内科学  オシ    ミ     カズ    ォ

 押 味  和 夫

(受付 平成4年12月28日) Bone Marrow Transplantation for Ma咀gnant Lymphoma

        Kaz腿00SHIMI

Department of Hematology, Tokyo Women’s Medical College   Bone marrow transplantation(BMT)offers one way to circumvent treatment resistance by increasing the dose of available cytotoxic agents and radiotherapy while ameliorating myelotoxicity by infusion of hematopoietic stem cells. Because a dose response to therapy truly exists, BMT is effective in Hodgkin’s disease and non・Hodgkin’s lymphoma, Regarding the optimal timing of BMT, most hematologists consider BMT a reasonable therapeutic option in patients who re監apse from complete remission and show chemotherapy sensitive. The preferable source of hematopoietic stem cells is autologous bone marrow because there is no clear superiority for autologous or allogeneic BMT. Although the need for purging contaminating tumor cells from bone marrow before reinfusion in autologous transplants is controversial, a recent study strongly supPorts the superiority of purging・ The optimal cytotoxic regimens before BMT are still uncertain.          はじめに  骨髄移植(bone marrow transplantation: BMT)は,種々の難治性疾患に行われている治療 法で,この治療法がとり入れられたことにより治 癒率が大幅に上った疾患も多い.悪性リンパ腫も 例外ではない.本稿では,まずBMTとは何か簡 単に述べ,次いで悪性リγパ腫に対するBMT療 法の現状について述べる.          BMTとは  BMTは,血液系悪性腫瘍をはじめとする諸疾 患(表1)に対する治療法で,放置すれぽ死亡す るような大量の化学療法や放射線療法を行ったの ち,致死的造血障害をBMTにより乗り越え,疾 患の治癒をめざす方法である.大量の化学療法や 放射線療法による副作用で最も強いのは骨髄毒性 である.BMTにより骨髄毒性を軽減することで, 表1 BMTが適応となる疾患 1.急性白血病 2.慢性白血病 3.悪性リンパ腫 4.その他の悪性腫瘍 5.重症再生不良性貧血 6.免疫不全症特に重症複合免疫不全 7.サラセミアその他の先天異常 患者は他の副作用(消化管粘膜傷害など)を乗り 越え,回復することが可能になる.適応となる悪 性腫瘍は,化学療法や放射線療法の投与:量を増や すことで縮小,消失するような腫瘍でなけれぽな らない..したがって血液系の腫瘍は最もふさわし い対象となる.  BMTには, HLAが完全にあるいはほぼ一致し た兄弟や非血縁者からの骨髄を移植する同種骨髄

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30,000 25,000 20,000 症 fラ唖15,000 数 10,000 5,000 累積患者数

        5,529       4,916  3,6873,9644・300 3,236    2,225 2,400  ・ 875   1,45G二宍’∵   ・.., 患者数/年  ↓ % 100 90 80 70 60 50 40 30 20 工0   O    l      O     1982     1984     ユ986     1988     1990 図1 世界で行われているallo・BMT症例数の推移 移植(allogeneic BMT:allo−BMTと略す),患 者自身の骨髄を保存しておいたのち移植に用いる 自家骨髄移植(autologous BMT:auto・BMTと 略す),末梢血中を流れている造血幹細胞を移植す る方法(peripheral blood stem cell transplanta・ tion:PBSCT)がある. PBSCTは厳密にはBMT とは言えないが,BMTの1つとして論じられる ことが多い.  allo−BMTを施行することが多い.図1に世界 中で行われてきたallo−BMT症例数を示す.最近 になっても施行例数は増える一方であり,非常に 効果的な治療法である.国内でのalloBMT症例 数を表2に示す1).やや古いデータだが,本邦でも 年々BMTが盛んになってきている状況が理解で きる.通常白血病などの治療にはallo−BMTが行 われることが多いが,悪性リンパ腫ではauto− BMTが圧倒的に多い2)(ヨーロッパの統計では約 8倍).PBSCTはここ数年注目されるようになっ た方法で,施行例数はまだ少ない.

 allo−BMTとauto−BMTの具体的な方法を図

2に示す3).allo−BMTでは, HLAの一致した同 胞の骨髄を用いることが多い.たとえHLAが一

致していても同胞間ではminor his−

tocompatibility complexが異なることもあるた め,これにより移植片が生着しないのを避ける目 的と患者の腫瘍細胞を根絶する目的のために,致 死量の放射線照射や抗癌剤投与を行う.さらに移 植後はドナーから移植したリンパ球が宿主(患者) 表2 本邦のallo・BMT症例数の推移1)

ALL

ANL

CML

MDS

ML

Solid

SAA

SCID Total

1975 1 0 0 0 1 0 0 0 2 76 0 1 0 0 0 0ド 0 0 1 77 1 2 1 0 0 0 0 0 4 78 2 0 0 0 1 0 1 0 4 79 4 4 0 0 3 0 1 0 12 80 5 6 2 0 3 2 1 1 20 81 5 12 3 0 2 5 2 0 29 82 12 11 7 0 5 0 6 0 41 83 22 18 6 0 4 2 9 0 61 84 30 27 10 0 2 0 13 1 83 85 34 29 17 0 11 5 14 3 113 86 32 31 21 3 9 8 15 1 120 87 36 39 28 7 16 11 22 1 160 88 45 72 48 12 26 24 26 4 257 89 5G 65 53 12 20 37 29 2 264 279 317 196 34 103 94 135 13 1171 P ALL;急性リンパ性白血病, ANL;急性非リンパ性白血病, CML;慢性骨髄性白血病, MDS:骨髄異形 成症候群,ML;悪性リンパ腫, Solid;固型腫瘍, sAA;重症再生不良性貧血, scID:重症復合免疫不全.

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患者

同種骨髄移植 移植前処置= 拒絶防止±  腫瘍根絶 自家骨髄移植

笏骨髄血 移植前処置= 腫瘍根絶 単核球の分離 腫瘍細胞の除去 図2 BMTの方法(文献3を改変) の組織を認識し攻撃することにより起こる移植片 対宿主病(graft−versus−host disease:GVHD)を 防ぐため,シクロスポリンやメソトレキサートを 投与する.無菌室内で2∼3週間耐えると,移植 した造血幹細胞が宿主の骨髄で増え造血能が回復 するため,正常状態に戻る.auto−BMTでは,腫 瘍細胞が含まれてないと考えられる患者骨髄を採 取し,これを凍結保存したのち,大量の放射線や

抗癌剤を投与し,BMTを行う.PBSCTでは,末

梢血中の造血幹細胞が化学療法後に一過性に増え るため,この時期をねらって末梢血単核細胞を採 取し,凍結保存する.auto・BMTと同様の前処置 (放射線照射や化学療法)を行ったのち,BMTを 施行する.

    悪性リンパ腫に対するBMT

 1.allo・BMTとauto・BMTのどちらがいいか

 図3にallo−BMTとauto・BMTを比較検討し

た成績を示す4).両者間で無病生存率に差を認め ない.再発率はauto−BMTで高く,再発により死

亡する症例が多い.一方alloBMTではGVHD

の発症と同時に,移植ドナーリンパ球が宿主の腫 A  1.0  0.9  0.8・ 鉦0・7 病0・6    。ll。.BMT 生0.5 「鳳一⊥一」一L一 望・.・ 1書 ::1 auto−BMT 0   10  20  30  40  50  60  70  80  90  100 110 B  1.0  0.9  0.8  0.7 再  0.6 発  0.5 率  0.4’  0.3   ロ   o,1 」  o.o i     auto−BMT allo−BMT  G   10  20  30  40  50  60  70  80  90  100 110 図3 sensitive relapse症例でのalloとauto・BMT の治療成績の比較) 瘍細胞をも傷害するgraft−versus−tumor effect が起こるため再発で死亡する率は低い.しかし GVHDなどが原因で死亡する率が高い.これらの

結果が相殺されて,alloとautoのBMTで生存

率に差がなくなる.同様の結果は他の報告でも認 められる2).  allo−BMTを行う利点は,①移植後の血球回復 がauto−BMTに比べて速やかである,②移植骨髄 に腫瘍細胞が混入している可能性がない,③上述 のgraft−versus−tumor ef6ectが働く可能性があ ること,などである.一方allo−BMTの欠点とし て,GVHDなどの合併症により死亡することがし ぼしばある,HLAの一致した兄弟が少ないなど があげられる.  以上の理由から悪性リンパ腫のBMTにallo− BMTを積極的に選択する理由は少ない. allo・ BMTを積極的に行う場合として,腫瘍細胞の浸 潤や骨盤腔への放射線照射の既往などによって, 自家骨髄の採取が不可能な場合に限られる.勿論

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HLAの一致したドナーがいなけれぽならない.

最近PBSCTも積極的に行われるようになって

いる.詳しいデータはまだ得られてないが,少数 例での報告からは,骨髄に腫瘍細胞が浸潤してい

たり放射線で線維化していたりしてもPBSCT

は可能とのことであり5),今後さらに適応が広が ることが予想される.  2.auto・BMTの適応について  進行期のHodgkin病,進行期の中等度ん高度 悪性群の非Hodgkinリンパ腫が適応となる.初

期のHodgkin病や低悪性度群の非Hodgkinリ

ンパ腫は予後が良好のため,すぐにはBMT.の適 応とはならない6)耐.  BMTを行う時期についてであるが,未治療例

に初めからBMTを行うことの是非を論じた論

文は少ない.おそらく通常の化学療法が第1選択 となるであろう.初回の化学療法で部分寛解まで 到達しない症例に対してauto・BMTを行っても, 再発率が高く通常のBMTの適応とはならない. 後述するpurging(腫瘍細胞の除去)などを行った のちの骨髄液を移植する方法は考えられる.初回

化学療法で部分寛解が得られた症例はauto−

BMTの成績が良く,適応と考えられる.第一寛解

期の症例はすべてがBMTの適応というわけで

はなく,おそらく予後不良と考えられる症例(例 えばリソバ芽球性リンパ腫などの高悪性度群のリ ンパ腫や,bulky tumorやLDHの高値を初診時 に認めた症例)ではauto・BMTの適応となろう. 再発例ではsensitive relapseカミBMTの絶対的 適応である9).sensitive relapseとは,再発時に通 常量の化学療法で部分寛解以上の反応が得られた 再発例を言う.一方resistant relapseはBMTの 適応とはならない.resistant relapseとは,再発 時に化学療法を行っても部分寛解に至らない,あ るいは進行性の経過をとる症例のことである.こ のような症例では,たとえBMTを行って’ 焉C寛 解に至らないか,再発して死亡する場合がほとん どである.  以上の方針をまとめたのが図4である3).  3.前処置をどうするか  前処置(conditioning)とは, BMT前に悪性リ   悪性リンパ腫     /      進行期Hodgkln病      進行期非Hodgkinリンパ腫       (中等度,高度悪性群)    初回化学療法に対する反応

/  /\

完全寛解      部分寛解    治療抵抗性

  \sen、iti》。  /     relapse resistant relapse

\.

    または新しい方法による       auto−BMT 図4 悪性リンパ腫に対するauto−BMTの適応(文献  3を一部改変) 100 80 無 病60 生 存 率40 20 Negati▽e(57;4relapses) p〈0.00001 Positive(57;26 relapses) 0 2  4      6 BMT後の年数 8 図5 B細胞性非Hodgkinリンパ腫でpurgingした  あとの残存リンパ腫細胞の有無(PCR法による検  出)と予後10) ンパ腫細胞を根絶する目的で行う治療法である. 超大量のシクロホスファミドと全身照射(total body irradiation:TBI)を併用する方法とか,さ らにこの方法にシタラビンを追加する方法,ブス ルファンとシクロホスファミドを併用する方法な どがあるが,どの方法が最も優れているかという 点については,まだ結論がでていない.

(5)

 4.purgingは必要か  auto−BMTでは移植する骨髄液中に腫瘍細胞 が混入している可能性は十分考えられる.そこで 造血幹細胞は残して,腫瘍細胞を選択的に取り除 く試み(purging)がいろいろ行われている.最近 の論文では,図5に示すように,purgingした残り の骨髄液中に腫瘍細胞がPCR(polymerase chain reaction)沫でも検出されない骨髄を移植すると 予後がいいとの報告がある10).簡単で効率のよい purging法が必要とされる.  5.造血の回復を促進させる方法

 BMT後の2∼4週間は白血球が少なく,重篤

な感染に罹患する機会が多い..白血球減少の時期 を短縮する目的で,顯粒球コロニー刺激因子(G− CSF)や穎粒球・マクロファージコロニー刺激因 子(GM−CSF)を投与すると,白血球の回復が有 意に促進される11).しかもリンパ腫細胞の増殖は 促進しない.現在G・CSFやGM−CSFは悪性リン

パ腫のBMT後には必ずといっていい程使用さ

れている.       おわりに

 以上auto−BMTを中心に,悪性リンパ腫の

BMTについて述べた.悪性リンパ腫が死に肥る 可能性のある悪性の疾患であることには間違いな いが,BMTの導入により,著しく予後が改善され てきている.しかし,前処置をどうするか,どの ような時期にBMTを施行するか, purgingを行 うべぎか,行うとすれぽどのような方法がいいか 等々,まだ解決されてない疑問点も多い.なお, より詳しく知りたい読者は,文献3,6,7,8. の総説を参照して欲しい.       文  献  1)正岡 徹:白血病骨髄移植の現状と将来.血液・    腫瘍科 22:352−358,1991 2)Chopra R, Goldstone AH, Pearce R et al:   Autologous versus allogeneic bone marrow   transplantation for hon−Hodgkin’s lymphoma:   Acase−cohtrolled analysis of the European   Bone Marrow Transplant Group registry data.   JClin Onco110:1690−1695, 1992・ 3)岡本真一郎:悪性リンパ腫の骨髄移植の現状と問   題点.医学のあゆみ 162:64−68,1992 4)Jones RJ, Ambinder RF, Piantadosi S et al:   Evidence of a graft−versus・lymphoma efFect   associated with allogeneic bone marrow trans−   plantation. B至ood 77:649−653,1991 5)Dreyfus F, Leblond V,8elanger C et al:   Peripheral blood stem cell collection and auto・   grafting in high risk lympho血as. Bone.Marrow   Transp110:409−413,1992 6)Armitage JO:Bone marrow transplantation   in the treatment of patients with lymphomas.   Blood 73:1749.一1758,1989 7)Williams SF:The role of bone marrow trans.   plantation in the non・Hodgkin’s lymphomas.   Sem Oncol 17:88−95,1990 8)Vose JM, Bieman PJ, Armitage JO:Hodg−   kin’s disease:The role of bone marrow trans,   plantation. Sem Oncol 17:749−757,1990 9)Philip T, Armitage JO, Spitzer G et.al:   High−dose therapy and autologous bqne mar・   row transplantation after failure of conven−   tional chemotherapy in adults with   intermediate−grade or high・grade non−   Hodgkin’s lymphlma. N Engl J Med 316:   1493−1498, 1987 10)Gribben JG, Freedman AS, Neuberg D et a亘:   Immunologic purging of marrow assessed by   PCR before autQlogous bone marrow trans−   plantation for B−cell Iymphoma. N Engl J Med   325:1525−1533, 1991 11)Nemunaitis J, Rabinowe SN, Singer JW et   a豆:Reco血binant granulocyte−macrophage   colony−stimulating factor after autologous   bone marrow transplantation fof lymphoid   cancer。 N Engl J Med 32411773−1778,1991

参照

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