職務評価基準の
作成法
人事制度
Ⅰ 非正社員の積極的活用が急がれる日本の労働市場
1.労働力人口減少に対応するために、非正社員の積極的な活用が必要 2.非正社員の均衡待遇改善を促すパートタイム労働法の改正ポイントⅡ 職務内容の客観的比較が可能となる職務評価手法
1.職務の客観的な比較が可能となる要素別点数法 2.職務と待遇を連動させることができる職務評価手法Ⅲ 職務評価表を活用した処遇改善法
1.職務(役割)ポイントと時間賃率にてパートタイム労働者と正社員の待遇格差を改善 2.正社員への登用も可能な等級制度の策定法Ⅳ 非正社員の待遇改善を実現させた導入事例
1.職務評価の導入を図り、等級ごとの役割を基本給に反映させたA社 2.機能別職種と習熟度に基づく等級をベースに賃金制度を改定したB社人事制度
職務評価基準の
作成法
少子高齢化が進み、労働力人口が減少する中、就業構造の変化や働き方の多様化に伴い、 非正社員数は年々増加し、雇用労働者全体の3分の 1 以上を占める等、我が国の経済活動 に重要な役割を果たしています。また、雇用形態が多様化する中で、従来の補助的とされ た仕事に限らず、役職に就くなど基幹的な働き方をする非正社員も増加するなど、非正社 員の働き方がより多様化する傾向が見られます。 ■正規雇用労働者と非正規雇用労働者数の推移【図 1-1-1】 (資料出所)平成 11 年までは総務省「労働力調査(特別調査)」(2 月調査)長期時系列表平成 16 年以降は総務省 「労働力調査(詳細集計)」 その一方で、非正社員の待遇がその働き・貢献に見合ったものになっていない場合もあ り、正社員との不合理な待遇の格差を解消し、働き・貢献に見合った公正な待遇を確保す ることが重要な課題となっています。 平成27年のパートタイム労働法の改正では、正社員と差別的取扱いが禁止されるパー トタイム労働者の対象範囲の拡大や、「短時間労働者の待遇の原則」が新設されました。 労働力人口減少に対応するために、パートタイム労働者と正社員の均等処遇を行い、パⅠ
1
非正社員の積極的活用が急がれる日本の労働市
労働力人口減少に対応するために、非正規社員の積極的な活用が必要
人事制度
職務評価基準の
作成法
パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにするため、 平成 27 年 4 月 1 日から、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関す る法律)や施行規則、パートタイム労働指針が変りました。主な改正ポイントは次の通り です。 ■パートタイム労働法の主な改正ポイント(1)パートタイム労働者の公正な処遇の確保
・正社員と差別的な取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象が拡大 ・パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、職務の内容、人材活 用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない(2)パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
パートタイム労働者を雇い入れたときは、雇用管理の改善措置の内容について、事業主 が説明しなければならない(3)パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
雇用管理の改善措置の規定に違反している事業主が、厚生労働大臣の勧告に従わない場 合は、厚生労働大臣は事業主名を公表することができるパートタイム労働者とは
◆パートタイム労働法の対象となる(短時間労働者)とは、「1週間の所定労働時間 が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い 労働者」のことです。 ◆「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、 呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、「パートタイム労働 者」としてパートタイム労働法の対象となります。2
非正規社員の均衡待遇改善を促す
パートタイム労働法の改正ポイント
人事制度
職務評価基準の
作成法
(1)パートタイム労働者の公正な処遇の確保
①正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大<法第9条> 有期労働契約を締結しているパートタイム労働者でも、職務の内容、人材活用の仕組み が正社員と同じ場合には、正社員との差別的取扱いが禁止されます。 ②「短時間労働者の待遇の原則」の新設<法第8条> 事業主が、雇用するパートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、そ の待遇の創意は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理とみ とめられるものであってはならないとする、広く全てのパートタイム労働者を対象とした 待遇の原則の規定が創設されました。 こうしたパートタイム労働者の処遇に関する考え方も念頭に、パートタイム労働者の雇 用管理の改善を図ることが求められることになりました。 ③職務の内容に密接に関連して支払われる通勤手当は均衡確保の努力義務の対象に <施行規則第3条> 「通勤手当」という名称であっても、距離や実際にかかっている経費に関係なく一律の 金額を支払っている場合のような、職務の内容に密接に関連して支払われているのもは、、 正社員との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者の職務の内容、成果、意欲、能力、経 験などを勘案して決定するよう努める必要があります。 【正社員と差別的取扱いが禁止されているパートタイム労働者の範囲】 <現行> (1)職務の内容が正社員と同一 (2)人材活用の仕組みが正社員と同一 (3)無期労働契約を締結している 例えば、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者が、職務の内容も人材活 用の仕組みも正社員と同じであるにもかかわらず、正社員には支給されている各種手 当の支給対象となっていない場合には、改正後は、正社員と同様に支給対象となるこ とが考えられます。 <改正後> (1)(2)に該当すれば、賃金、教育訓 練、福利厚生施設の利用をはじめすべての 待遇について、正社員との差別的取扱いが 禁止される人事制度
職務評価基準の
作成法
(2)パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
①パートタイム労働者を雇い入れたときの事業主による説明義務の新設<法第 14 条第 1 項> パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容を事業主 が説明しなければなりません。 パートタイム労働者から説明を求められたときの説明義務(法第 14 条第 2 項)と併せ て、パートタイム労働者が理解できるような説明をしていく必要があります。 ②説明を求めたことによる不利益扱いの禁止<指針第3の3の(2)> パートタイム労働者が法第 14 条第 2 項に基づく説明を求めたことを理由に、不利益な 取扱いをしてはなりません。不利益な取扱いを恐れて、パートタイム労働者が説明を求め ることができないことがないようにすることが求められます。 ③パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備の義務の新設<法第 16 条> 事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を 整備しなければなりません。例えば、相談担当者を決めて対応させる、事業主自身が相談 担当者となり対応する、などです。 ④相談窓口の周知<施行規則第2条> パートタイム労働者を雇い入れたときに、事業主が文書の交付などにより明示しなけれ ばならない事項に「相談窓口」※が追加されます。 ※相談担当者の氏名、相談担当の役職、相談担当部署など 【雇い入れ時の説明内容】 ・賃金制度はどうなっているか ・どのような教育訓練があるか ・どの福利厚生施設が利用できるか ・どのような正社員転換推進措置が あるかなど 【説明を求められたときの説明内容の例】 ・どの要素をどう勘案して賃金を決定 したか ・どの教育訓練や福利厚生施設がなぜ使え るのか(また、なぜ使えないのか) ・正社員への転換推進措置の決定に当たり 何を考慮したか など 【文書などのよる明示事項】人事制度
職務評価基準の
作成法
⑤親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由とする解雇などのについて <指針第3の3の(3)> パートタイム労働者が親族の葬儀などのために勤務しなかったことを理由に、解雇など が行われることは適切ではありません。(3)パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
①厚生労働大臣の勧告に従わない事業主の公表制度の新設<法第 18 条第 2 項> 雇用管理の改善措置の規定に違反している事業主に対して、厚生労働大臣が勧告をして も、事業主がこれに従わない場合は、厚生労働大臣は、この事業主名を公表できることに なりました。 ②虚偽の報告などをした事業主に対する過料の新設<法第 30 条> 事業主が、パートタイム労働法の規定に基づく報告をしなかったり、虚偽の報告をした 場合は、20 万円以下の過料に処せられます。人事制度
職務評価基準の
作成法
パートタイム労働者と正社員の均等・均衡を図るためには、パートタイム労働者の処遇 が職務(役割)によって 規定されていることが多いことから、パートタイム労働者の仕事 の大きさと正社員の仕事の大きさを比較する「職務(役割)評価」を活用することが有益 と考えられます。 職務(役割)評価とは、社内の職務内容を比較し、その大きさを相対的に測定する手法 であり、人事管理上、よく用いられている人事評価とは異なるものです。大別すると、次 の 4 種類が挙げられます。 ■職務(役割)評価の手法【図 2-1-1】 手法 内容 単純比較法 社内の職務を 1 対 1 で比較し、職務の大きさが同じか、あるいは、異 なるかを評価します。比較の際に、職務を細かく分解せず、全体とし て捉えて比較します。 分類法 社内で基準となる職務を選び、詳細な職務分析を行った上で、それを 基に「職務レベル定義書」を作 ります。「職務レベル定義書」に照ら し合わせ、全体として、最も合致する定義はどのレベルかを判断し、 職務の大きさを評価します。 要素比較法 あらかじめ定めておいた職務の構成要素別に、レベルの内容を定義し ます。職務を要素別に分解し、その要素ごとに最も合致する定義はど のレベルかを判断することにより、職務の大きさを評価します。分類 法のように、職務全体として判断するよりも、客観的な評価が可能で す。 要素別点数法 要素比較法と同様に、職務の大きさを構成要素ごとに評価する方法で す。評価結果を、要素比較法 のようにレベルの違いで表すのではな く、ポイントの違いで表すのが特徴です。要素別にレベルに応じたポ イントを付け、その総計ポイントで職務の大きさを評価します。Ⅱ
1
職務内容の客観的比較が可能となる職務評価手法
職務の客観的な比較が可能となる要素別点数法
人事制度
職務評価基準の
作成法
■職務(役割)評価の手法(イメージ図)【図 2-1-2】
人事制度
職務評価基準の
作成法
「単純比較法」は、簡便である反面、違いの程度まで把握することができません。「分類 法」は、丁寧な評価が可 能ですが、詳細な職務分析を行う必要があるため、手間のかかる 手法です。「要素比較法」や「要素別点数法」は、 簡易にも精緻にも実施可能であり、よ り客観的な評価を行うことができます。 そこで、本書では、やり方次第では、簡易にも精緻にも実施可能であり、かつ、職務の 大きさを定 量的に把握でき、結果を様々なことに応用できる「要素別点数法」について記 載します。 要素別点数法による職務(役割)評価は、「職務(役割)評価表」を用いて職務(役割)評価ポイ ントを算出して行います。職務(役割)評価表は、評価項目、ウェイト、スケールの 3 つの 要素から構成されています。 ■職務(役割)評価の手法【図 2-1-3】 要素 内容 評価項目 要素別点数法で用いられる職務内容の構成要素を示します。 例えば、以下のような 8 つの項目から職務の大きさを測定します。 ウェイト 会社の事業特性等に応じた構成要素の重要度を示します。 重要な「評価項目」であれば、ウェイトを大きく設定します。 ウェイトを大きく設定することで、職務(役割)評価ポイントが大きく 変化します。 スケール 構成要素別にポイントを付ける際の尺度の基準を示します。 本書の例では、5 段階の尺度の基準を設定していますが、より精緻な 評価を行う場合であれば、段階を増やすことも有用です。人事制度
職務評価基準の
作成法
評価項目別のポイントは、「ウェイト」×「スケール」で計算され、全ての評価項目のポ イントを総計したものが当該職務の大きさです。 下記の例では、職務の大きさは 18 ポイントとなります。この値を「職務(役割)ポイン ト」と呼びます。 ■職務(役割)評価表【図 2-1-4】 (資料出所)厚生労働省 要素別点数法による職務評価の実施ガイドライン 上記のように、要素別点数法では、評価項目、ウェイト、スケールの 3 つ要素に、レベ人事制度
職務評価基準の
作成法
職務と待遇を連動させるためには、次の2つを確認して合わせる必要があります。 ①パートタイム労働者と正社員の職務の大きさ ②パートタイム労働者と正社員の均等・均衡待遇の状況 ①を図式化すると、【図 2-2-1】のようになります。 【図 2-2-1】は、パートタイム労働者のAさん、Bさんと正社員のCさんについて、職務 (役割)評価を実施した結果です。職務(役割)ポイントは、各々Aさん 18 ポイント、Bさん 22 ポイント、Cさん 22 ポイントとなりました。BさんとCさんは、同じ 22 ポイント なので、職務全体の大きさが同じであることが分かります。 価項目別に見てみると、「③専門性」でBさんが 6 ポイントと高く、Cさんが 4 ポイン トと低くなっていますが、「②革新性」や「④裁量性」では、CさんがBさんより高くなっ ている、というように職務(役割)評価を用いると、各人が担当している職務の大きさや構 成要素のどこに違いがあるのかが分かります。 ■パートタイム労働者と正社員の職務の大きさ【図 2-2-1】2
職務と待遇を連動させることができる職務評価手法
人事制度
職務評価基準の
作成法
②を図式化すると、【図 2-2-2】のようになります。 【図 2-2-2】では、賃金(時間賃率:1 時間当りの時間単価)について、パートタイム労 働者のBさんと正社員 のCさんの間で均等・均衡待遇の状況を検証した図です。 BさんとCさんの間では、職務(役割)ポイントが同じですから、同程度の処遇が望まし いと言えます。 ところが、実際にはCさんの時間賃率 1,200 円に対して、Bさんの時間賃率は 800 円 と大きく開きがあり、均等・均衡待遇が図られていない可能性があります。 均等・均衡待遇が確保されているかを判断するには、「人材活用の仕組みや運用など」を 考慮する必要がありますが、これらが同じ場合はBさんの時間賃率を正社員のCさんと合 わせます。 ■パートタイム労働者と正社員の均等・均衡待遇の状況【図 2-2-2】 (資料出所)厚生労働省 要素別点数法による職務評価の実施ガイドライン人事制度
職務評価基準の
作成法
(1)職務(役割)ポイントの算出
職務(役割)評価を適用してみたいパートタイム労働者や正社員を数名リストアップし、 それぞれが担当する職務(役割)を評価します。ここでの作業で使用する職務(役割)評価表は、 次ページ【図 3-1-1】のとおりです。また、パート労働ポータルサイトから IT ツールを ダウンロードすることも可能です。 注:IT ツールは「パート労働ポータルサイト」【URLhttp://part-tanjikan.mhlw.go.jp/)】より、ダウンロ ード可能です。 まず、「評価項目」と「定義」を 1 つ 1 つ確認します。 次に、「ウェイト」と「スケール」です。「ウェイト」は、職務 (役割)評価の作業に慣れ るまでは、全て「1」に設定します。「職務(役割)評価表」 の「ウェイト」欄に、「1」 を書き込んでください。 「スケール」は、【図 3-1-3】の「職務(役割)評価の評価項目別のスケール」を参考に します。スケールは 5 段階となっており、数字が大きいほど、高度な職務と判断されます。 このスケールに照らし合わせて、「職務(役割)評価表」の「スケール」欄に該当する定義 のポイントを書き込んでください。 最後に、「ポイント」欄です。この「ポイント」欄には、「ウェイト」に「スケール」を 掛け合わせた値を記入してください。全ての「評価項目」について「ポイント」の計算が できたら、集計して一番下の欄に総計を記入します。 この値が「職務(役割)ポイント」になります。当該職務の職務(役割)ポイントを算 出する際は、労働者の個人の特徴ではなく、職務(役割)そのものを評価します。Ⅲ
1
職務評価表を活用した処遇改善法
職務(役割)ポイントと時間賃率にて
パートタイム労働者と正社員の待遇格差を改善
人事制度
職務評価基準の
作成法
■職務(役割)評価表【図 3-1-1】