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東京湾の水環境
2011年 3月
千葉県環境研究センター
目 次
ページ
1.東 京 湾 の概 要
東 京 湾 の衛 星 画 像 東 京 湾 の諸 元2.東 京 湾 内 湾 中 央 部 の水 質 経 年 変 化
3.平 面 分 布 で表 した東 京 湾 の水 質
4.赤 潮 発 生 状 況 の経 年 変 化
5.東 京 湾 に出 現 する赤 潮 プランクトンと出 現 状 況
富 栄 養 化 による水 質 汚 濁 /東 京 湾
赤 潮 の発 生
富 栄 養 化 による水 質 汚 濁 /東 京 湾
青 潮 の発 生
参 考
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○表 紙 の写 真 :Noctiluca scintillans (夜光虫)の顕微鏡写真
1.東 京 湾 の概 要
(1) 宇 宙 から見 た東 京 湾 東 京 湾 (ランドサットの画 像 2001 年 6 月 4 日 ) 千 葉 大 学 環 境 リモートセンシング研 究 センター提 供 東 京 湾 諸 元 面 積 1380km2 (内 湾 部 960km2) 平 均 水 深 : 湾 全 体 45m, 内 湾 域 15m (出 典 : 小 倉 紀 雄 編 「 東 京 湾 - 100 年 の 変 遷 - 」, 恒 星 社 厚 生 閣 , 1993) 三浦半島南東端の釼崎(神奈川県三浦市)と房総半島南西部の洲崎(千葉県館山市)を結ぶ線以北 を東京湾と定義します。観音崎と富津岬を結んだ線より内側を内湾,外側を外湾と呼び,内湾を狭義の 東京湾とすることもあります。 海 岸 線 が直 線 的 で,ほとんど人 工 的 な護 岸 に改 変 されていることがはっきり示 されています。 自 然 のままの海 岸 線 が残 っているのは,内 湾 部 では盤 洲 干 潟 と富 津 岬 だけです。 湾 の西 側 からは多 摩 川 ,鶴 見 川 ,隅 田 川 ,荒 川 など,東 側 (千 葉 県 側 )からは江 戸 川 ,養 老 川 ,小 櫃 川 などの河 川 が湾 に注 ぎ込 んでいます。(2) 東 京 湾 の流 域 (流 域 面 積 7549km2) 降 った雨 が流 れていく領 域 を「流 域 」といいます。下 水 道 に入 る水 は流 域 外 に放 流 する場 合 もあるので,この流 域 に発 生 する汚 濁 負 荷 がすべて東 京 湾 に流 入 するわけではありませんが, 逆 に流 域 外 の排 水 も流 域 内 の下 水 処 理 場 に集 められて東 京 湾 に流 れ込 みます。 東 京 湾 流 域 に は 2800 万 人 の 人 が 住 ん で い ま す 。 実 に 日 本 全 体 の 5 分 の 1 に あ た り ま す 。す な わ ち ,東 京 湾 に は 日 本 の 汚 れ の 5 分 の 1 が 流 れ 込 ん で い る と い う こ と で す 。
(3) 東 京 湾 に流 入 する汚 濁 の量 の変 化 東 京 湾 の 水 質 を 改 善 す る た め に , こ れ ま で 多 く の 努 力 を 重 ね て き ま し た 。 下 水 道 を 普 及 さ せ , 工 場 に つ い て は 濃 度 規 制 ( 排 水 の 濃 さ だ け で 規 制 す る ) で は 限 界 が あ る の で , 総 量 規 制 ( 濃 度 ×排 水 量 ) や , 富 栄 養 化 対 策 と し て 窒 素・り ん を 規 制 す る よ う に な り ま し た 。 こ の 結 果 , 右 図 に 示 す よ う に , 工 場 や 家 庭 で 発 生 す る 汚 れ の 量 は 着 実 に 減 ら す こ と が で き ま し た 。 出 典 :東 京 湾 再 生 会 議 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TB_Renaissance/AboutEnv/PollutionLoad.htm 東京湾流域における発生汚濁負荷量の推移(1979~2004 年度)
(4) 東 京 湾 に流 入 する汚 濁 (COD)の内 訳 (千 葉 県 分 )
東 京 湾 に流 れ込 む汚 濁 物 質 (千 葉 県 分 )の内 訳 は,平 成 16 年 度 現 在 で上 のグラフのように なっています。 一 番 たくさんの汚 れを出 しているのは,流 域 に住 んでいる人 たちの家 庭 です。まだ下 水 道 が できていない地 域 からの生 活 系 の汚 れが全 体 の 46%と,半 分 近 くを占 めています。下 水 道 地 域 からも,下 水 処 理 場 を経 て東 京 湾 に流 入 する汚 れが 22%にもなっています。下 水 処 理 をしたか らといって,汚 れがゼロになるわけではないのです。 下 水 道 と生 活 系 を合 わせると,東 京 湾 に流 入 している有 機 物 (COD)の 68%にもなっています。 工 場 からの汚 れは 25%,そのほか,市 街 地 などからの汚 れが 7%あります。
2.東 京 湾 内 湾 中 央 部 の水 質 経 年 変 化
東 京 湾 内 湾 部 にある千 葉 県 の水 質 調 査 定 点 の中 で,最 も代 表 的 と考 えられる St.8(湾 中 央 ) の水 質 について,1976 年 度 から 2009 年 度 までの経 年 変 化 をグラフで示 します。 St.8 (N35°33’16” E139°54’20”) 水 深 17m グラフでは毎 月 1 回 ,計 12 回 の調 査 結 果 を, 年 度 平 均 値 (▲),夏 (6 月 ~8 月 の平 均 値 )(♦), 冬 (11 月 ~1 月 の平 均 値 )(■)として表 しています。東 京 湾 の COD 負荷 量 ( 平 成 16 年 度 )
22%
46%
25%
7%
下水道 生活系 計 産業系 計 その他系 計 出 典 : 「アユを育 む東 京 湾 をめざして」 ( 千 葉 県 環 境 生 活 部 水 質 保 全 課 み ん な で 東 京 湾 を き れ い に す る 行 動 計 画 パンフレット)(1) 透 明 度 透明度 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 数 値 が大 きいほど水 は透 明 です。夏 (6 月 ~8 月 の平 均 値 )と冬 (11 月 ~1 月の平 均 値 )を 較 べてみると,夏 のほうが透 明 度 が低 いことがわかります。 経 年 的 には,夏 も冬 も少 しずつ透 明 度 が改 善 されているようです。 (2) COD(化 学 的 酸 素 要 求 量 ) COD 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 有 機 汚 濁 の指 標 として使 われています。水 の中 に酸 素 を消 費 してしまうもの(通 常 ,海 域 で はほとんどが有 機 物 )が多 いほど数 値 が高 くなります。陸 域 から排 出 される有 機 物 のほかに,海 の中 で生 産 される有 機 物 ,すなわち植 物 プランクトンが多 い場 合 も COD が高 い値になります。 夏 が冬 よりも高 い値 なのは,夏 のほうがプランクトンがたくさん発 生 している(赤 潮 )からです。 (3) 全 窒 素 (T-N) T-N 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 有 機 態 窒 素 と無 機 態 窒 素 (亜 硝 酸 性 窒 素 ,硝 酸 性 窒 素 ,およびアンモニア性 窒 素 )の合 計 です。無 機 態 窒 素 は肥 料 成 分 なので,プランクトンが増 殖 しやすくなります。 全 窒 素 は夏 と冬 とで大 きな違 いはありませんが,経 年 的 には減 少 傾 向 にあります。
(4) アンモニア性 窒 素 (NH4-N) NH4-N 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 年 平 均 値 と 冬 の 値 は 1989 年 を ピ ー ク に 減 少 に 転 じ , 最 近 は 年 間 を 通 じ て 低 い 値 が 続 い て い ま す 。 (5) 硝 酸 性 窒 素 (NO3-N) NO3-N 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 年 平 均 値 は1990 年 代 初 め を ピ ー ク と し て ,そ の 後 は わ ず か に 減 少 傾 向 に あ り ま す 。 特 に 夏 の 減 少 が 大 き く ,2000 年 以 降 は ほ と ん ど が 植 物 プ ラ ン ク ト ン に 消 費 さ れ て し ま う よ う に な り ま し た 。 (6) 全 りん (T-P) T-P 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 有 機 態 りんと無 機 態 りん(りん酸 性 りん)の合 計 です。りん酸 性 りんも肥 料 成 分 です。夏 のほう が少 し高 めで,2000 年 度 くらいまでは減 少 傾 向 でしたが,その後 は横 ばいのようです。
(7) りん酸 性 りん (PO4-P) PO4-P 0.000 0.020 0.040 0.060 0.080 0.100 0.120 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 m g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 夏 の り ん 酸 性 り ん は 1994 年 に 大 き く 減 少 し , そ の 後 は 低 濃 度 レ ベ ル で 推 移 し て い ま す 。 年 度 平 均 値 は こ れ を 反 映 し て 1994 年 度 ま で 減 少 し , そ の 後 横 ば い 状 態 が 続 い て い ま す 。 (8) クロロフィル a クロロフィルa 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 1 9 7 6 1 9 7 8 1 9 8 0 1 9 8 2 1 9 8 4 1 9 8 6 1 9 8 8 1 9 9 0 1 9 9 2 1 9 9 4 1 9 9 6 1 9 9 8 2 0 0 0 2 0 0 2 2 0 0 4 2 0 0 6 2 0 0 8 μ g/ L 6-8月平均値 11-1月平均値 年度平均値 ク ロ ロ フ ィ ル a は 植 物 が も っ て い る 色 素 で ,植 物 プ ラ ン ク ト ン の 量 を 化 学 的 に 測 定 す る 指 標 と し て 使 わ れ て い ま す 。 夏 の ク ロ ロ フ ィ ル a 濃 度 は ,赤 潮 発 生 の 有 無 に よ っ て 大 き く 変 化 し て い ま す が , 冬 は 減 少 傾 向 , 年 度 平 均 値 で も 少 し ず つ 濃 度 が 減 少 し て い ま す 。 富 栄 養 化 ―水 質 に影 響 を与 えるしくみ― ・ 海 の 中 の 植 物 プ ラ ン ク ト ン は 光 合 成 で 増 え ま す 。 ・ 栄 養 が 十 分 な と き は , 光 の 量 が 多 い ほ ど , 光 合 成 は 盛 ん に な り ま す 。 ⇒ 通 常 , 夏 は 日 射 量 が 多 い の で , 夏 に た く さ ん 増 え て 赤 潮 状 態 に な り ま す 。 ・ 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 細 胞 は 有 機 物 で も あ る の で , こ れ が 増 殖 す る と い う の は , す な わ ち COD が 増 え る と い う こ と で す 。( 海 の 中 で 作 ら れ る 有 機 物 な の で , 内 部 生 産 と か , 二 次 的 に で き る 汚 濁 物 質 な の で , 二 次 汚 濁 と も い わ れ ま す 。) ・ 東 京 湾 の COD は , 生 活 排 水 の よ う な 陸 域 か ら 排 出 さ れ る COD(一 次 汚 濁 )と 二 次 汚 濁 の 合 計 を い い ま す 。 ・ 二 次 汚 濁 ( プ ラ ン ク ト ン の 大 量 発 生 ) を 減 ら す に は , 肥 料 と な る 窒 素 や り ん を 減 ら す こ と が 重 要 で す 。 ・東 京 湾 の COD 濃 度 を 低 下 さ せ る た め に は ,プ ラ ン ク ト ン 発 生 を 抑 制 す る こ と が 必 要 で , そ の た め に は 栄 養 塩 類 を 減 ら し て い か な け れ ば な り ま せ ん 。
3.平 面 分 布 で表 した東 京 湾 の水 質
(1) 水 温 (上 層 )の平 面 分 布 の変 化 (1980 年 ~2002 年 の各 年 9 月 ) 上 層 水 温 は大 幅 に上 昇 しています。東 京 湾 の水 温 上 昇 は東 京 湾 以 外 の海 域 に比 べて大 き いといわれています。水 温 (上 層 )分 布 の 推 移
* 季 節 調 整 法 に よ る 42 地 点 の ト レ ン ド 値 を 平 面 補 間(2) 水 温 (下 層 )の平 面 分 布 の変 化 (1980 年 ~2002 年 の各 年 9 月 )
下 層 水 温 は 1984~1986 年 頃に最 低 となり,その後 上 昇 しています。
水 温 (下 層 )分 布 の 推 移
(3) COD(上 層 )の長 期 変 動 (1987 年 ~2007 年 各 年 9 月 ) COD は東 京 湾 全 域 で減 少 しており,水 質 改 善 傾 向 が 見 てとれます。 (4) DO(下 層 )の長 期 変 動 (1987 年 ~2007 年 各 年 9 月 ) COD では明 ら かに改 善 傾 向 が見 られるにも かかわらず,下 層 で溶 存 酸 素 の乏 しい範 囲 が拡 がってい ます。上 層 の 水 質 が改 善 し ても下 層 の環 境 はすぐには 改 善 しないこ とがわかります。 (5) 全 窒 素 (T-N;上 層 )の長 期 変 動 (1987 年 ~2007 年 各 年 9 月 ) 上 層 の全 窒 素 は流 入 する 量 が減 少 した ことを反 映 して 改 善 されてい ます。
(6) 全 りん(T-P;上 層 )の長 期 変 動 (1987 年 ~2007 年 各 年 9 月 ) 全 りんも流 入 汚 濁 負 荷 の減 少 により,かな り改 善 されて います。
4.赤 潮 発 生 状 況 の経 年 変 化
赤潮発生率の推移(1983年度~2009年度) 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 年度 赤 潮 発 生 割 合 ( 発 生 日 数 / 調 査 日 数 ) ( % ) 年間発生割合(%) 発生割合(4月~10月) 発生割合(11月~3月)千 葉 県 では調 査 に出 た日 数のうち何 日 赤 潮 が発 生 していたかの割 合 で赤 潮 発 生 状 況 を評 価 しています。赤 潮 が特 に発 生 しやすい4 月 ~10 月の発 生 状 況 (赤 )は最 悪 の時 期 は 80%の 発 生 率 でしたが,その後 は低 下 し,この 5 年 間 は 30%台 で横 ばいです。一 方 ,11 月 ~3 月 に は 2002 年 度 以 降 は発 生 率 ゼロが続 いています。 平 面 分 布 で 表 し た 東 京 湾 の 水 質 (p.8~ p.11) は 地 方 環 境 研 究 所 ( 千 葉 県 , 東 京 都 , 横 浜 市 ) と 統 計 数 理 研 究 所 と の 共 同 研 究 で 行 っ た 成 果 で , 図 の 直 接 の 出 典 は 以 下 の と お り で す . (1), (2): 安 藤 晴 夫 (2007) 東 京 海 洋 大 学 博 士 論 文 , 22-23 pp (3)~ (6): 安 藤 晴 夫 (2009) 東 京 都 環 境 科 学 研 究 所 第 15 回 公 開 研 究 発 表 会 資 料
5.東 京 湾 に出 現 する赤 潮 プランクトンと出 現 状 況
(1) 東 京 湾 の代 表 的 な赤 潮 プランクトン
① Heterosigma akashiwo ( ヘ テ ロ シ グ マ ・ ア カ シ オ ) ヘテロシグマの赤 潮 は,醤 油 色 です。本 来 は真 っ白 な航 跡 が,モカ・クリームのような色 に なってしまいます。「アカシオ」という名 前 のとおり,代 表 的 な赤 潮 形 成 プランクトンですが,次 ペ ージのグラフにあるように最 近 は出 現 頻 度 が大 きく減 少 しています。このことも東 京 湾 の水 環 境 が改 善 した証 拠 といえます。 ② Skeletonema costatum ( ス ケ レ ト ネ マ ・ コ ス タ ー ツ ム ) 東 京 湾 で昔 も今 も,最 も代 表 的 な種 類 です。ケイ藻 なので,シリカの殻 を持 っていますが,材 料 のケイ酸 が豊 富 な,河 川 水 の流 入 するような沿 岸 域 に生 息 します。長 く直 線 状 につながって いる小 さな四 角 形 が1コの細 胞 です。スケレトネマによる 赤 潮 が発 生 する と,海 はオリーブ 色 になります。 ③ Noctiluca scintillans ( ノ ク チ ル カ ・ シ ン チ ラ ン ス ) 夜 光 虫 という和 名 のとおり,波 などの刺 激 を与 えると光 ります。ノクチルカの赤 潮 は,トマトジュ ースのように鮮 やかな朱 色 なので,ニュースなどでよく話 題 になります。写 真 のように縞 模 様 にな ったり,パッチ状 に発 生 します。動 物 プランクトンなので, 窒 素 やりんを吸 収 して 増 えるわけではなく, 汚 濁 とは直 接 関 係 な いといわれています。 直 径 が約0.1mm と比 較 的 大 型 なので,肉 眼 でもよく見 るとツブツ ブがわかります。 ヘ テ ロ シ グ マ に よ る 赤 潮 (1992.6.3) ス ケ レ ト ネ マ に よ る 赤 潮(2010.8.17 千 葉 中 央 港 ) ノ ク チ ル カ に よ る 赤 潮 (2008.4.30 姉 崎 沖 )④ Coscinodiscus granii( コ ス キ ノ デ ィ ス ク ス ・ グ ラ ニ イ ) 珪 藻 の仲 間 で,薄 い円 筒 形 がハンバーガーのように2枚 重 なった 形 をしています。写 真 には上 (下 )から見 た形 と横 から見 た形 が写 っ ていますが,同 じ種 類 のプランクトンです。 ⑤ Ceratium furca( ケ ラ チ ウ ム ・ フ ル カ ) 渦 鞭 毛 藻 。細 胞 の中 央 あたりに鞭 毛 を持 っており,珪 藻 よりも遊 泳 力 が あるといわれています。春 季 に海 の中 層 に赤 潮 が発 生 することがありますが, このケラチウムの仲 間 が水 深 5,6m くらいの深 さに異 常 発 生 したものです。 ケラチウムの赤 潮 は珪 藻 赤 潮 よりも,やや赤 っぽい茶 色 です。 ⑥ Mesodinium rubrum( メ ソ デ ィ ニ ウ ム ・ ル ブ ル ム ) 繊 毛 虫 の仲 間 の動 物 プランクトンで,飛 び跳 ねるように素 早 く動 き ます。体 内 に藻 類 が共 生 しているので,クロロフィル色 素 を持 ってい るように見 えます。メソディニウム・ルブルムが大 発 生 すると,赤 紫 っ ぽい褐 色 の赤 潮 になります。 ⑦ Chaetoceros affine( キ ー ト ケ ロ ス ・ ア フ ィ ネ ) スケレトネマに毛 を生 やしたようなプランクトンがキートケロスの仲 間 で す。キートケロス・アフィネというのは,両 端 の立 派 な角 のようなヒゲが特 徴 です。東 京 湾 には非 常 に多 くのキートケロスの仲 間 が出 現 します。 ⑧ Protoperidinium oblongum( プ ロ ト ペ リ デ ィ ニ ウ ム ・ オ ブ ロ ン グ ム ) と て も ユ ニ ー ク な 形 を し た 渦 鞭 毛 藻 で , 鞭 毛 を 動 か し て ゆ っ く り 泳 ぎ ま わ り ま す 。 ⑨ Dinophysis acuminate( デ ィ ノ フ ィ シ ス・ア キ ュ ミ ナ ー テ ) 渦 鞭 毛 藻 。体 内 に数 個 の葉 緑 体 を持 ち,独 立 栄 養 (光 合 成 をおこ なう)と従 属 栄 養 (ほかのプランクトンなどを食 べて生 活 する)の中 間 の タイプだといわれています。下 痢 性 の貝 毒 を引 き起 こすこともあります。
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Heterosigma akashiwo 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Skeletonema costatum 0 10 20 30 40 50 60 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Noctiluca scintillans 0 500 1,000 1,500 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Ceratium spp. 0 20 40 60 80 100 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Mesodinium rubrum 0 20 40 60 80 100 1981 1986 1991 1996 2001 2006 Coscinodiscaceae (2) おもなプランクトンの出 現 状 況 (St.8)
①
Heterosigma akashiwo
(ラフィド藻 ) ②Skeletonema costatum
(珪 藻 )③ Noctiluca scintillans (渦 鞭 毛 虫 )
④
Coscinodiscaceae
(珪 藻 )⑤
Ceratium spp. (渦 鞭 毛 藻 )
⑥ Mesodinium rubrum
(繊 毛 虫 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 ) ( 単 位 :1mL あ た り の 細 胞 数 )富栄養化による水質汚濁/東京湾
赤潮の発生
● 赤 潮 と は ,プ ラ ン ク
ト ン が 大 量 に 発 生 し
て ,海 水 の 色 が 変 化 し
た 現 象 の こ と を い い
ま す 。
色 は プ ラ ン ク ト ン の 種 類 に よ り 黄 色 か ら 赤 茶 色 な ど さ ま ざ ま で ,い つ も は
白 く 見 え る 航 跡( 船 の 通 っ た あ と )な ど が ,赤 潮 の と こ ろ で は 色 づ い て い る
の で よ く わ か り ま す 。
2010,6,21 千 葉 中 央 港 航 跡 が 褐 色 に● プ ラ ン ク ト ン と は ,水 中 に 浮 遊 生 活 を し ,遊 泳 力 の な い ,ま た は わ ず か し
か 持 た な い 生 物 を い い ま す 。
赤 潮 の 原 因 / 家 庭 や 工 場 ,下 水 処 理 場 か ら の 廃 水 が 流 入 し ,海 水 中 の 窒 素 や
り ん な ど の 栄 養 塩 類 が 増 加 す る と ,赤 潮 が 発 生 し や す く な り ま す 。( こ れ を
富 栄 養 化 と い い ま す )
東 京 湾 の よ う な 閉 鎖 性 水 域 は ,外 海 と の 水 の 交 換 が 悪 い た め に ,流 入 河 川
か ら 流 れ て く る 汚 濁 物 質 が た ま り や す く , 富 栄 養 化 し や す い 海 域 で す 。
富栄養化による水質汚濁/東京湾
青潮の発
生
青 潮 と は , 海 面 が 乳 青 色 ま た は 乳 白 色 に 変 化 し た 現 象 の こ と を い い ま す 。
青 潮 に な る と ,カ レ イ ,ス ズ キ な ど の 魚 類 が 酸 素 を 求 め て 水 面 近 く に 上 が っ
て き た り , ひ ど く な る と 大 量 に 死 ん だ り し ま す 。
青 潮 の 起 こ り か た
Ⅰ 家 庭 や 工 場 か ら 排 出 さ れ る 有 機 物 や ,東 京 湾 で 生 産 さ れ る 有 機 物( 植 物 プ ラ ン ク ト ン ) が 底 層 に 沈 ん で , そ こ で 有 機 物 を 分 解 す る 細 菌 に よ っ て 分 解 さ れ る 。 こ の と き に 酸 素 を 消 費 し , 底 層 水 中 の 酸 素 が な く な る 。 水 温 が 高 く な る と , 海 水 は 成 層 を つ く り 混 合 し に く く な る の で , 大 気 か ら の 酸 素 の 供 給 が な く , ま す ま す 酸 素 が な く な る 。 Ⅱ 北 東 の 風 が 吹 く と , 表 層 の 水 が 沖 に 流 れ 出 る 。 ( 離 岸 流 ) そ し て , 底 層 に あ っ た 酸 素 の 少 な い 水 が 湧 昇 し て く る 。 Ⅲ 海 水 中 に た く さ ん 含 ま れ て い る 硫 酸 イ オ ン は ,酸 素 の な い 水 中 で ,硫 酸 還 元 菌 に よ り 還 元 さ れ て 硫 化 物 イ オ ン が で き る 。 硫 化 物 イ オ ン が 湧 昇 に よ り , 大 気 中 の 酸 素 と 反 応 し て イ オ ウ が で き る 。 イ オ ウ や 多 硫 化 物 イ オ ン が 光 を 散 乱 さ せ る た め に , 海 面 の 色 が 乳 青 色 や 乳 白 色 に 見 え る 。参 考 : 東 京 湾 の 水 環 境 に 関 す る 情 報 が 掲 載 さ れ て い る ウ ェ ブ サ イ ト (当 セ ン タ ー が 把 握 し て い る も の の 一 部 で す ) ◇ 東 京 湾 岸 自 治 体 環 境 保 全 会 議 http://www.tokyowangan.jp/ ◇ 東 京 湾 環 境 情 報 セ ン タ ー : 国 土 交 通 省 横 浜 空 港 港 湾 技 術 調 査 事 務 所 が 開 設 http://www.tbeic.go.jp/ ◇ 東 京 湾 再 生 推 進 会 議 http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/TB_Renaissance/ ◇ 東 京 港 波 浪 観 測 所 ( 旧 : 東 京 灯 標 ) 海 象 観 測 デ ー タ : 波 高 , 風 向 , 風 速 , 流 速 な ど の オ ン ラ イ ン デ ー タ http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/yakuwari/choui/ ◇ 海 上 保 安 庁 海 洋 情 報 部 モ ニ タ リ ン グ ポ ス ト : 千 葉 灯 標 で の オ ン ラ イ ン デ ー タ http://www4.kaiho.mlit.go.jp/kaihoweb/ ◇ 千 葉 県 環 境 研 究 セ ン タ ー : 年 報 に 赤 潮 , 青 潮 発 生 状 況 を 掲 載 http://www.pref.chiba.lg.jp/wit/ ◇ 千 葉 県 環 境 情 報 (水 質 関 係 ) http://www.pref.chiba.lg.jp/suiho/ ◇ 千 葉 県 水 産 総 合 研 究 セ ン タ ー : 湾 中 央 か ら 奥 部 の 「 貧 酸 素 水 塊 情 報 」 な ど http://www.pref.chiba.lg.jp/lab-suisan/suisan/ ◇ 東 京 の 川 と 海 の 環 境 情 報 :東 京 都 環 境 局 の 調 査 結 果 http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/water/tokyo_bay/news_flash.html ◇ 東 京 都 島 し ょ 農 林 水 産 総 合 セ ン タ ー http://www.ifarc.metro.tokyo.jp/ ◇ か な が わ の 環 境 http://eco.pref.kanagawa.jp/ ◇ 神 奈 川 県 水 産 技 術 セ ン タ ー http://www.agri-kanagawa.jp/suisoken/ ◇ 環 境 省 水 環 境 総 合 情 報 サ イ ト : 水 環 境 情 報 に 関 す る 総 合 的 な 情 報 サ イ ト http://www.env.go.jp/water/mizu.html ※リンク先 URL は平 成 25 年 8 月 現 在 の情 報 です。