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知ってびっくり!大阪湾の海岸生物の多様性

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「生物的自然からみた大阪湾

の環境とその変遷」

大阪市立自然史博物館

山西 良平

平成25年9月11日 CIFER・コア セミナー

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大阪湾の生い立ち

• 大阪湾の元になる凹地ができはじめたのは約300 万年前 • 大阪湾の場所に海が入ってくるのは時代がずっと 下ってからの約120万年前 • その後、氷期・間氷期が繰り返すごとに、海が入 ったり陸地になったりを繰り返していた。 • 約2万年前の最終氷期の最盛期には、海面は今 より約120mも低く、大阪湾だけでなく、瀬戸内海 もすべて陸地になっていた。

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縄文の海

• その後、今から5500〜6000年前の縄文時代前期 には、海面が今より2〜3m高くなり、大阪平野の 奥深くまで海が広がった。海は淀川沿いを枚方・ 高槻付近までさかのぼるとともに、上町台地を回 り込んで八尾から生駒山のふもとまで達し、河内 湾と呼ばれる内湾を形成した。 • その後、海面の低下や淀川や大和川からの土砂 により河内湾は埋め立てられ、河内潟・河内湖の 時代を経て陸地になり、現在の大阪平野を形作っ ている。

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河内湾が広がっていた 時代の大阪(約5,500 年前)

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湾口幅(km) 面積(km2) 平均水深(m) 最大水深(m) 閉鎖度指標 備考 噴火湾 30.2 2,485 57 107 1.90 陸奥湾 14.0 1,668 38 75 2.92 東京湾(広義) 20.9 1,380 40 700 1.78 浦賀水道を含む 東京湾(狭義) 7.0 922 17 70 4.34 浦賀水道を含まない 富山湾 66.7 2,120 610 1,250 0.69 富山トラフから連続 駿河湾 56.0 2,300 500 2,245 0.85 駿河トラフから連続 伊勢湾・三河湾 34.7 2,130 20 49 1.52 大阪湾 3.6 + 11.0 1,450 28 100 (2.61) 有明海 4.5 1,700 20 165 12.89 鹿児島湾 11.0 1,040 117 237 6.26 姶良カルデラ起源 「閉鎖度指標」 内湾や内海などの水域内の水の交換あるいは停滞の程度を地形のデータに基づいて示すために考案され た指標(國松・村松、1989)。 閉鎖度指数=(S1/2/W)×(D1/D2) S:面積(km2 W:湾口幅(km) D1:湾内最大水深(m) D2:湾口最大水深(m) この数値が高いと、海水交換が悪く富栄養化のおそれがあるとされ、水質汚濁防止法では、この指標が1以 上である海域を排水規制対象としている。

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大阪湾の地形と環境

• 胃袋の形に似た閉鎖的な内湾 • 北東方向に深く湾入。淀川の河口付近がもっとも 湾奥。 • 明石海峡と紀淡海峡を通じて、それぞれ瀬戸内 海、紀伊水道とつながっている。 • 長径約60km、短径約32km、面積は約1450km2 湾内の平均水深は28m、約44km3の海水をたた えている。

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広大な集水域と大量の流入河川水

• 大阪湾には周辺の36河川から平均毎秒約300m3 という大量の水が流入(年間の流量に換算すると 約9km3=大阪湾全体の水量の約2割) • 主な流入河川は湾奥部に集中 • 淀川水系と大和川・武庫川だけで全体の流入量 の97%以上 • 集水域は、大阪府、滋賀県のほぼ全域と京都府 南部、奈良県北部、兵庫県東部(淡路島東部を含 む)および三重県西北部を合わせた11,200km2

(10)

ふたつの海峡と潮流

• 紀淡海峡と明石海峡を激しい潮流が流れる(毎 秒50cm以上になることもある) • 上げ潮は紀伊水道を北上して紀淡海峡から大阪 湾に入り、明石海峡から播磨灘に抜けていく。下 げ潮時、これらの向きは逆になる。 • 潮の満ち引きは1日に2回繰り返される、潮流もこ れに合わせてめまぐるしく向きを変える。 • ふたつの湾口のあることが大阪湾の海水の交換 をうながしている。

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差し引きの流れ(恒流)

• 往復する潮流を差し引きしてみると、海水は海底 地形や河川水などの影響で少しずつ一定方向に ずれて移動している。 • このような差し引きの水の動きを恒流あるいは残 渣流と呼ぶ。 • 明石海峡の東側には時計回りの大きな恒流(沖 の瀬環流)。海峡の近くでは他にも友ヶ島反流や 須磨沖反流。 • 湾奥では河川水の影響により時計回りの西宮沖 環流が形成されるとともに、大阪府沿いに東岸恒 流帯が南下。

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海底のようす

• 淡路島側は両海峡を抜ける潮流の通りみちと なっているために泥などの細かな粒子はたまりに くく、水深は30~70m。 • 海峡部では海底がさらに深く掘り刻まれ、水深が 100mを超え岩盤がむき出しになっている所も。 • 逆に湾奥側では河川によって運び込まれる堆積 物のために、水深は20mよりも浅く、水の動きが 少ないために泥がたまりやすく、やわらかい海底 になっている。 • 沖の瀬還流の中心部には砂が堆積した浅瀬がで きています

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外洋水と河川水

• 紀伊水道からは塩分の高い外洋水 • 湾奥の河川からは大量の淡水 • 大阪湾は南と北からの正反対の性質の水による せめぎ合いの場になっている。 • 湾奥から南西方向に離れるにしたがって塩分は 上昇し、外海の値に近くなっていく。 • 大阪側では湾奥から南下する東岸恒流帯の影響 によって、塩分は低くなっている。

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河川からの栄養と富栄養化

• 内湾では河川からの水に含まれるリンや窒素が 湾内にたまることによって富栄養化が起こる。 • COD値(化学的酸素要求量)の大阪湾での水平 分布は塩分と同じパターンになっている。 • 富栄養化によって植物プランクトンの発生が盛ん になり、湾内の生きものは豊富になる。 • 過剰な栄養塩類は赤潮や貧酸素などの環境問題 をひき起こす原因にもなる。

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海水の成層と貧酸素

• 比重が小さな河川水は下層の水とは混じりにくく 、海に流れ込むと表層を広がっていく。 • 夏の大阪湾では海水は高温・低塩分の表層と低 温・高塩分の底層という上下二層に分かれる(成 層構造)。 • 成層構造が発達すると表層水に溶け込んだ空気 中の酸素が底層に届かず、海底付近では酸欠状 態に陥ることがある。 • 寒い季節には表層の水が冷やされて比重が大き くなり、上下の混合が進み、成層構造は解消。

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行き過ぎた富栄養化

• 富栄養化が進み過ぎると、生物やその死骸によ る有機物が分解されずに水中や海底にたまり、 逆に赤潮や海底の貧酸素化、さらに青潮などの 環境問題をひき起こす。 • 海水や海底に含まれる有機物量のめやすとされ るCOD値は、排水規制や下水道の普及などにより 1960年代以降、全国的に減少する傾向にあり、 大阪湾でも1980年代まで減少してきたが、その後 横ばい状態が続いている。湾の奥部においては、 依然として表層で5mg/lを超えることがあり、じゅう ぶんに改善されたとは言えない。

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赤 潮

• 富栄養化が進んだ海では、降雨などをきっかけに特定の種類の植物 プランクトンが異常に増殖し、海面を染めることがあり、このような現 象を「赤潮」と呼ぶ。 • 大阪湾での年間の赤潮発生件数は少ない年で10件あまり、多い年で は30件を超えることがある。 • 赤潮プランクトンは魚類の鰓をつまらせて窒息させることがあり、また 原因となるプランクトンの中には有毒な種類もある。

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指標生物

• それぞれの生物がどのような環境を選んで

生活しているかがわかれば、逆に生物の種

類を調べることによってその場所の環境を

推しはかることができる。

• このような推定に用いられる生物は指標生

物と呼ばれる。

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海岸の指標生物

海岸の生物は、それぞれ自分に適した波当りや水 質を選んで場所を決めている。大阪湾のフジツボ4 種について検討した。 クロフジツボ オオアカフジツボ タテジマフジツボ ドロフジツボ

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 オオアカフジツボ

波当りのきわめて強い海岸にのみ生息する。

 クロフジツボ

波が打ち寄せる開放的な海岸に普通に生息す

る。

 タテジマフジツボ

内湾のおだやかで富栄養な環境を好み、塩分

の低下にも耐えることができる。

 ドロフジツボ

塩分の低下に耐える力がとても強く、つねに河

口などの汽水域に生息する。

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(30)

海底の指標生物

底質によって生物の種類は異なる。スピオ科

の多毛類3種について検討した。

・ケンサキスピオ:潮流などによる海水の動きが活発な砂の海底 ・エーレルシスピオ:海水が停滞しない泥または砂泥の海底 ・シノブハネエラスピオ:海水が停滞し、酸素が欠乏することのよくある泥 やヘドロの海底

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酸欠に耐えるシノブハネエラスピオ

• 酸素が不足しやすい有機汚染域は生物にとって 住みにくい反面、食料が豊富で魅力的な環境 • このような場所に生活することができる少数の生 物は有機汚染の指標種と呼ばれ、注目されてき た。 • シノブハネエラスピオはその代表格。大阪湾では 湾奥の沿岸域において異常といってよいほどの 高密度で分布している。 • 本種の幼生は外敵の少ない貧酸素水の中に分 布し、水中の溶存酸素(DO)が1mg/l以下の貧酸 素にも耐えることが明らかにされています。 • 和名には酸欠を“忍ぶ”という意味がある。

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(33)

大阪湾におけるベントスの種数の地点間の比較. 1993・1996年に実施した6回の調査で記録されたベン トスの総種数の地点間の比較.大阪市立自然史博物 館による調査結果から. 大阪湾におけるベントスの個体数密度(平方メートル当 り)の地点間の比較.1993・1996年に実施した6回の調 査の平均値.大阪市立自然史博物館による調査結果 から.

(34)

■紀淡海峡と明石海峡の2ヵ所で開口 明石・紀淡両海峡において開口してい る胃袋形の特異な形状の内湾。北東方 向に深く湾入 。 34 ■主要流入河川が湾奥に局在 湾の東北部に主要河川の河口が集中 し、そこから流入する河川水の量は大 阪湾全体に流入する量の9割以上を占 め る。 ■恒流の影響 時計回りの恒流のために,湾奥からの 河川水の影響は、淡路島側と比べると 大阪側においてよりに大きくなっている。 ■南からは外海系水の影響 瀬戸内海の東端に位置し、紀淡海峡で 紀伊水道とつながっていて、外海系水 が流入 。

大阪湾の地形と水環境の特性

透明度(m) 。2007-2009年、夏季表層平 均値。大阪湾環境データベース http://kouwan.pa.kkr.mlit.go.jp/kankyo-db/data/b3_08kaki.html から引用。

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メリット デメリット 外海 水環境が安定 波浪による撹乱が大 きい 生物間の競争は少 ない 食物が不足気味 内海 波浪は穏やか 水質の変動によるス トレスが大きい 食物は豊富 生物間の競争(すみ 場所など)がきびしい

海岸生物からみた外海と内海

(36)

加 太 小 島 深 日 淡 輪 下 庄 尾 崎 泉 佐 野 汐 見 埠 頭 高 砂 堺 泉 北 港 大 阪 南 港 大 阪 北 港 尼 崎 西 宮 深 江 塩 屋 明 石 岩 屋 浦 仮 屋 野 田 佐 野 塩 尾 炬 の 口 古 茂 江 海綿動物 ダイダイイソカイメン ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ クロイソカイメン ○ ○ ○ ○ ナミイソカイメン ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ムラサキカイメン ○ ○ ○ ○ ○ 腔腸動物 ヨロイイソギンチャクの近縁種 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ タテジマイソギンチャク ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 環形動物 ヤッコカンザシ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ エゾカサネカンザシ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 触手動物 チゴケムシ ○ ○ 軟体動物 ニシキヒザラガイ ○ ヒザラガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ヒメケハダヒザラガイ ○ ○ ○ ○ ベッコウガサガイ ○ ○ ○ ○ ヨメガカサガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ マツバガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ カモガイ ○ ○ コガモガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ コウダカアオガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ クサイロアオガイイ ○ エビスガイ ○ ○ クビクロヅケガイ ○ イシダタミガイ ○ ○ コシダカガンガラ ○ ○ ○ ○ ○ アラレタマキビガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ タマキビガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ オオヘビガイ ○ ○ レイシガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ イポニシ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ イソニナ ○ クロヘリアメフラシ ○ カラマツガイ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ムラサキイガイ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ○ ◎ ○ コウロエンカワヒバリガイ ○ ○ マガキ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ セミアサリ ○ ○ 節足動物 カメノテ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ イワフジツボ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ アカフジツボ ○ ○ ○ ドロフジツボ ◎ ○ タテジマフジツボ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ クロフジツボ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ フナムシ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ イワガニ ○ ○ ○ イソガニ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ケフサイソガニ ○ 棘皮動物 ヒトデ ○ 原索動物 シロボヤ ○ ○ 種数 総計 47 25 22 23 30 21 17 16 13 11 11 8 9 7 11 9 12 17 16 19 14 16 14 19 23 16 調査地 表2:大阪湾の消波ブロックにおける付着動物の出現状況   (1985年5~7月の調査結果;二重丸は優占的な固着性動物を示す). Nature Study 32(2): 18 山西(1986)大阪湾の消波ブロック上の付着 動物について-1985年5~7月の調査結果-. Nature Study 32 . 湾口型 内湾型 河口型

(37)

大阪湾沿岸における潮間帯生物の分布型

 湾口型:南部の岩礁海岸において普通に見られる種類で、大阪湾奥部では、 低塩分、冬季の低温などの環境条件によって分布が制限されていると考え られるもの。湾奥への進入の度合いはさまざまであるが、多くの種がこのタ イプに属す。 37

(38)

湾口型

南部の岩礁海岸において普通に見られる種類で、大阪湾奥部では、 低塩分、冬季の低温などの環境条件によって分布が制限されてい ると考えられるもの。湾奥への進入の度合いはさまざまであるが、 多くの種がこのタイプに属す。

(39)

大阪湾沿岸における潮間帯生物の分布型

 湾口型:南部の岩礁海岸において普通に見られる種類で、大阪湾奥部では、 低塩分、冬季の低温などの環境条件によって分布が制限されていると考え られるもの。湾奥への進入の度合いはさまざまであるが、多くの種がこのタ イプに属す。  内湾型:ムラサキイガイ、マガキ、タテジマフジツボのように湾奥において多 産し、湾口部ではまれにしか見られないもの。これらは内湾の富栄養な環境 に適応し、塩分の低下に対する耐性もある程度備えていると考えられる。 39

(40)

内湾型

ムラサキイガイ、マガキ、タテジマフジツボのように湾奥において多 産し、湾口部ではまれにしか見られないもの。これらは内湾の富栄 養な環境に適応し、塩分の低下に対する耐性もある程度備えてい ると考えられる。

(41)

大阪湾沿岸における潮間帯生物の分布型

 湾口型:南部の岩礁海岸において普通に見られる種類で、大阪湾奥部では、 低塩分、冬季の低温などの環境条件によって分布が制限されていると考え られるもの。湾奥への進入の度合いはさまざまであるが、多くの種がこのタ イプに属す。  内湾型:ムラサキイガイ、マガキ、タテジマフジツボのように湾奥において多 産し、湾口部ではまれにしか見られないもの。これらは内湾の富栄養な環境 に適応し、塩分の低下に対する耐性もある程度備えていると考えられる。  河口型:ドロフジツボのように河口付近の汽水域に限って出現し、沿岸域に は分布しないもの。もっぱらこのような水質の変動幅の大きい環境に適応し ていると考えられる。 41

(42)

河口型 ドロフジツボのように河口付近の汽水域に限って出現し、沿岸域に は分布しないもの。もっぱらこのような水質の変動幅の大きい環境 に適応していると考えられる。 河口型 ドロフジツボのように河口付近の汽水域に限って出現し、沿岸域に は分布しないもの。もっぱらこのような水質の変動幅の大きい環境 に適応していると考えられる。

(43)

海藻の“外洋種”の比率 紀伊水道北部 >40% 紀淡海峡付近 30%前後 明石海峡・播磨灘 10%前後 瀬戸内海中央部 0% (大阪湾海岸生物研究会、1980) 稲葉(1983)は瀬戸内海を備前海域・水島灘・備 後灘・燧灘から成る“内区”と,それらをはさむ東 西の“外区”とに分け,軟体動物の種数が“内区” において相対的に少ないことを明らかにし,外海系 水の影響の差によるものと論じた.

(44)

湾口型

最終氷期以降の海進にともなって紀伊水道 から進入してきた暖海性の生物

内湾型・河口型

氷期を通じて周辺の内湾や河口、海跡湖な どに生息していた冷水性・汽水性の生物(加え て外来種)

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大阪湾海岸生物研究会

45  1981年から大阪府南部~和歌山 市北部にかけての岩礁海岸6か 所を定点とし、会員の目視調査 による潮間帯生物の継続的なモ ニタリング)を開始した。  1980年発足、会員約100名。専門職、教員、博物館友の会会 員、学生など顔ぶれは多彩。

(46)

46

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定点

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田倉崎(和歌山市加太) 城ヶ崎(和歌山市深山) 戎崎(和歌山市大川)

明神崎(岬町小島) 豊国崎(岬町多奈川) 長崎(岬町深日)

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大潮の期間中の昼間の干潮時を 選び、各調査者が目視によって 潮間帯及び潮上帯に生息する生 物を観察し、チェックリストに よってその日の出現種をとりま とめる。

調査方法

49

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50  5年毎にその結果を公表している。 1981-1985 24 165 365 1986-1990 12 121 368 1991-1995 14 201 365 1996-2000 14 236 428 2001-2005 17 305 517 2006-2010 17 359 551 合計 98 1387 (698)

(51)

分類群別内訳 緑藻 21 褐藻 47 紅藻 104 種子植物 1 海綿 14 刺胞 13 扁形 6 紐形 9 触手 9 軟体 214 星口 5 環形 35 節足 96 毛顎 1 半索 1 棘皮 32 脊索(ホヤ) 37 脊索(硬骨魚) 52  30年間で698種の生物を記録。

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(53)
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種 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 調査回数 出現回数 出現率 (湾口)田倉崎 3 0 2 2 3 3 2 0 3 0 3 0 16 5 31.3 城ヶ崎 4 1 2 2 3 3 2 0 2 0 4 2 17 8 47.1 戎崎 3 1 2 2 1 1 2 1 2 0 2 0 12 5 41.7 明神崎 2 2 2 2 2 2 2 1 2 0 10 7 70.0 豊国崎 4 4 2 2 2 2 2 1 3 2 2 0 15 11 73.3 (湾奥)長崎 3 3 4 4 3 3 4 2 5 3 4 2 23 17 73.9 19 11 12 12 14 14 14 6 17 6 17 4 93 53 57.0 (湾口)田倉崎 3 1 2 0 3 0 2 1 3 2 3 3 16 7 43.8 城ヶ崎 4 2 2 0 3 1 2 2 2 1 4 4 17 10 58.8 戎崎 3 3 2 0 1 0 2 0 2 1 2 2 12 6 50.0 明神崎 2 2 2 1 2 0 2 2 2 2 10 7 70.0 豊国崎 4 2 2 0 2 1 2 1 3 2 2 1 15 7 46.7 (湾奥)長崎 3 0 4 0 3 1 4 0 5 4 4 4 23 9 39.1 19 10 12 0 14 4 14 4 17 12 17 16 93 46 49.5 49.5 0.0 28.6 28.6 70.6 94.1 ケガキ (湾口型) 年 2001-2005 2006-2010 42.9 35.3 1996-2000 100.0 100.0 計 52.6 23.5 定点 1981-1985 57.9 ↑ ↓ 出現率(%) 計 出現率(%) 1986-1990 1991-1995 マガキ (内湾型) ↑ ↓ 1981-2010 57.0 大阪湾南東海岸におけるカキ2種の出現頻度

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大阪湾南東海岸におけるカキ2種の出現頻度の経年変化 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 1981 -198 5年 1986 -199 0年 1991 -199 5年 1996 -200 0年 2001 -200 5年 2006 -201 0年 出現頻度( % ) マガキ ケガキ

(56)

淀川汽水域の現状について

淀川の河川水は通常は大川(旧淀川)に放流されており、淀川 本川への流量は確保されておらず、淡水から海水への移行が 不連続となっている。 淀川大堰からの放流量が少ない、あるいはまったくない時期で は、塩分の高濃度化とその停滞、さらに、夏季においては低層 の貧酸素化という問題も生じている。 淀川環境委員会 2002 「自然豊かな淀川をめざして」

(57)

放流量の確保

汽水域の生物に配慮された水環境(水質・低質・流量)の改善 を図る。 放流量の確保については、新淀川や旧淀川への放流量のあり 方について、下記の項目等を中心に検討する。 ・汽水環境の保全からみた新淀川への適正な維持流量の 増加 ・早春から初夏にかけてのアユ溯上の呼び水としての放流 ・塩分の高濃度化とその停滞を防止するための放流 ・夏季の低流量時に生じる低層で貧酸素化を防止するため の放流 淀川環境委員会 2002 「自然豊かな淀川をめざして」

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淀川汽水域基礎環境調査

2004~2005年度、淀川河川事務所が実施 淀川の環境モニタリング調査等を実施把握し今後の水環 境保全の基礎資料にすることを目的とする。 図に示した6本の測線近傍とする。測線は、干潮時に干 出域が拡がる場所、河口から淀川大堰までの環境勾配 等を考慮して配置した。 年4回 春~冬季に実施

(59)
(60)
(61)

藻類, 21 軟体動物, 44 環形動物, 41 節足動物, 100 魚類, 25 その他動物, 13 21種の藻類と223種の動物が記録された。

(62)

記録された動物の中から、分布に関する情報が豊富 で、かつ移動能力が高くないと考えられる 軟体動物 環形動物 多毛綱 節足動物 フジツボ目 十脚目 を検討の対象とする。 これらに属する125種から同定の不確実なもの37 種を除いた88種について、大阪湾内での既往の分 布の知見に基づき、類型化を試みた。

対象の絞込み

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分布型

湾口型:紀淡海峡以南の岩礁海岸において普通に見られる種類で、湾内では、 水質条件によって分布が制限されていると考えられるもの。 内湾型:ムラサキイガイ、マガキ、タテジマフジツボのように湾奥に多産し、湾 口部ではまれにしか見られないもの。これらは内湾の富栄養な環境をうまく利 用するとともに、塩分の低下に対する耐性もある程度備えていると考えられる。 河口型:ドロフジツボのように河口付近の汽水域に限って出現し、沿岸域には 分布しないもの。もっぱらこのような水質の変動幅の大きい環境に適応してい ると考えられる。 広域型:フナムシのように河口部を含めたどの地域にも分布するもの。 山西良平 1986 大阪湾の消波ブロック上の付着動物について-1985年5月~7月の 調査結果-(1), (2). Nature Study,32:4-7, 67-68.

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広域型, 4 湾口型, 5 内湾型, 41 河口 型, 35 回遊型, 1 淡水型, 2 このような手法による類型化を試みたところ、次のように 類別することができた

(65)

汽水型31種(テナガエビを含む)、内湾型・湾口型18種について検討した。 ・汽水型においては調査範囲全体にわたって分布するものが多く、縦断方向の偏りは 明瞭ではない。低鹹水を好むと考えられるイガイダマシ属、カワゴカイ属、アメリカフ ジツボ、テナガエビなどもほぼ全域にわたって出現した。 ・内湾型・湾口型の出現頻度は、明らかに海側で高く、大堰側で低い傾向を示す。流 入河川水の影響の差によるものと考えられる。 ・両年度間において特段の差異は認められない。 各調査地点と種数の関係(H16、H17) 0 5 10 15 20 25 30 St.1 St.2 St.3 St.4 St.5 St.6 (種数) H16 汽水 H17 汽水 H16 内湾・湾口 H17 内湾・湾口 潮間帯における分布傾向

(66)

汽水型19種、内湾型・湾口型39種について検討した。 ・潮間帯と比べて汽水型が少なく、逆に内湾型の卓越することが特徴的である。 ・汽水型においては、潮間帯と同様に全体にわたって分布するものが多いが、全体として、 大堰側に遡るに従って減少する傾向が認められる。 ・内湾型・湾口型の分布において縦断方向に見られる偏りは潮間帯より一層著しい。 ・両年度間では、平成16年度より平成17年度において明らかに出現種数が多く、頻度も 高い。潮下帯を中心として平成17年度には相対的に海水の影響の大きかったと推測さ れる。 各調査地点と種数の関係(H16、H17) 0 5 10 15 20 25 30 St.1 St.2 St.3 St.4 St.5 St.6 (種数) H16 汽水 H17 汽水 H16 内湾・湾口 H17 内湾・湾口 潮下帯における分布傾向

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参照

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