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Academic year: 2021

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(1)

Mercado de

consumo

消費傾向

¦所得水準

ブエノスアイレス市財務省によると、 2016年第1四半期のジニ係数は0 .378 であった。一般的に所得階層は上から、 高所得層(5%)、上位中間層(18%)、 中間層(30%)、下位中間層(32%)、 低所得層(15%)の5つに分けて語られ ることが多い。高いインフレ率に伴って 所得額も年々増加しているため、収入 額で所得階層を定義づけるのは困難で あるが、同市財務省発表の資料と前述 定義を合わせてみると、2016 年第 1 四半期の所得階層区分別収入額は右の 図のようになる 2001 年末の経済危機以降、雇用創出 や補助金の交付などにより、経済的不 平等には一定の改善が見られていた。 しかし、2010 年代に入ると、インフレ や雇用の悪化によって再び格差が広が りつつある。ただし、ブエノスアイレス 市の平均所得は、2016 年第1四半期に 前年同期比で 40 .6%上昇し、インフレ 率の35%を上回ったという報告もある。

¦世帯の消費支出内容

リーマンショックに端を発した 2000 年代後半の世界的な経済不況のなか、アルゼ ンチンは賃金の値上げと各種融資プログラムによって、内需を活性化して国内消費 を促進した結果、中間層の財やサービスの購入が増加した。しかし、近年はインフ レ、通貨ペソの切り下げ、雇用の悪化などにより、アルゼンチン人の購買力と消費 意欲は減退していた。昨年末に発足した新政権は、市場機能重視の経済改革を始動。 現在は「産みの苦しみ」のような状況だが、今後消費市場の回復が見込まれる。

¦小売・外食市場規模

INDEC によると、ブエノスアイレス市内のスーパーマーケットの総売上高は、 2016 年6月に 3,984,039 ペソとなり、前年同期比で 28 .9%増加した。また、商 業施設(ショッピングモール)の総売上高は、2,179,049 ペソと前年同期比で 27 .7%増加した。 世帯月収 (ペソ) 所得層区分 200 ~ 4,000 低所得層 (15%) 4,000 ~ 6,000 下位中間層 (32%) 6,000 ~ 8,000 8,000 ~ 9,000 9,000 ~ 10,000 中間層 (30%) 10,000 ~ 12,000 12,000 ~ 15,000 15,000 ~ 18,000 上位中間層 (18%) 18,000 ~ 25,000 25,000 ~ 150,000 高所得層 (5%) 出所:ブエノスアイレス市財務省 (2016 年第1四半期) 一 般 的 に 所 得 階 層 は、

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露天商とコピー製品

アルゼンチンでは、 映画、 音楽、 ソフト ウェアの DVD、スポーツ用品などのコピー 製品が、 路上で堂々と売られている光景 を頻繁に目にする。これらの露天商は「マ ンテーロス」 と呼ばれ、 セントロ地区、 レティーロ地区、 オンセ地区を中心に増 加傾向にある。2001 年の経済危機以降、 失業者がインフォーマル経済で活動を始 めたこと、 購買力が低下した消費者がよ り割安な商品を買い求めるようになったこ とが要因として挙げられる。アルゼンチン 中企業連盟 (CAME)によると、 露天商 は約 6 万人にのぼり、 彼らを仕切る反社 会的勢力も存在し、 月 22 億ペソの大金 が動くビッグビジネスとなっている。 政府 も、 知的財産権を保護する措置を講じて いるが、コピー製品を販売する店舗が集 まった商業施設が出現するなど、 対応に 苦慮している。 1990 年のオープン以来、主に女性を顧客ター ゲットとしている。 2007 年から 2008 年にか けて改装が行われ、 近代的なモール内には 国内・海外のブランドの店舗が並ぶ。

❸ アルト・パレルモ

19 世紀の建造物を改装して、1992 年にオー プンした。総面積 11,000m²、店舗数 150 軒、 入場者数は月に 90 万人。 利用者はビジネス マンや外国人観光客が多い。

❷ ガレリアス・パシフィコ

最も伝統と格式のあるショッピングモール。 オークションハウスを改装して、 1988 年に オープンした。 高級ブランドの店舗が並び、 利用者は外国人観光客や富裕層が多い。

❶ パティオ・ブルリッチ

パティオ・ブルリッチ アバスト・ショッピング

エリア別商業施設情報

主な商業施設(ショッピングモール)の紹介

(3)

2009 年にオープンした市内で最も新しい ショッピングモール。 環状道路ヘネラス・パ ス大通沿いに位置するため、ブエノスアイレ ス郊外北部に住む富裕層も足を運ぶ。

❻ ドット・バイレス・ショッピング

青果市場だった建物を改修し、1998 年にオー プンした。 最上階に広大なフードコート、ゲー ムセンター、 映画館などがあり、 中間層の家 族連れが主な客層となっている。

❺ アバスト・ショッピング

1992 年にパセオ・アルコルタとしてオープン。 2013 年に改装が行われ、アルコルタ・ショッ ピングに生まれ変わった。 最新の流行を扱っ た店舗が並び、 富裕層が多く利用する。

❹ アルコルタ・ショッピング

ガレリアス・パシフィコ アルコルタ・ショッピング

外資系サービス産業の進出状況

2010 年以降、前政権の輸入制限措置や外貨規制により、お よそ 40 社の外資系企業がアルゼンチンから撤退した。外資 撤退の動きは、2001 年末に固定相場制から変動相場制に移 行した時から始まっていたが、2010 年代に入ってさらに加速 した。撤退した企業には、アルマーニ、ラルフローレン、カルティ エなどの有名ブランドに加え、日系企業も含まれていた。 しかし、新政権が輸入制限措置を撤廃、外貨規制を緩和したこ とから、少なくとも 40 社の外資系企業が、アルゼンチンへの 復帰・参入を検討中という。特に動きが顕著なのが、アパレル 業界と外食産業である。規制の完全撤廃にはまだ時間を要する 見込みだが、ブエノスアイレス市は海外ブランドに対する需要 も高く、各社とも市場としての魅力を感じているようだ。

分割払いを好むアルゼンチン人

度重なるインフレを経験してき たアルゼンチン人は、 自国通 貨に対する信用が低い。 その ため、 経済的に余裕が生まれ ると、 外貨、 不動産、 車な どのモノやサービスを購入す る傾向にある。また、食料品、 生活用品、 衣料品、 家電製 品などを購入する際も、 分割 払いを好むことが特徴として 挙げられる。 近年、 政府は カード会社や商業施設と提携 して 「アオラ・ドセ」という融 資プログラムを実施している。 2014 年9月に始まった同プロ グラムは、消費と雇用の促進、 国内産業と経済の活性化を目 的に、 12 回の無利息分割払 いを提供している。 全国 15 万軒を超える商業施設が参加 し、対象も家電製品、衣料品、 履物、建築材、家具、バイク、 自転車、 旅行、 寝具、 書籍、 眼 鏡、 文 房 具、 携 帯 電 話、 玩具と非常に幅広いが、 伝統 的な 「借金体質」 に拍車を かける要因ともなっている。

(4)

小売業者の店舗形態

¦ハイパー・スーパーマーケット

カルフール

コト

ベア

ウォルマート

ジュンボ

ディスコ

オートレジの登場

アルゼンチンのレジ係は対応が遅いた め、 混雑時に 30 分以上並ぶのはも はや当たり前となっている。これには、 効率性を問わず定額賃金を受け取る ため、 仕事を単なるお金を稼ぐ手段と 捉える労働者側と、 分割払いができる クレジットカードでの支払いを好む消 費者側、 双方の事情が背景に存在す る。そんな中、一部のハイパーマーケッ トでは、 2011 年よりオートレジ (もし くはセミオートレジ)が導入され、 設 置台数は年々増加する傾向にある。 当 初、カードに限定されていた支払い方 法も、 現在は現金でも可能。 レジ渋 滞が解消されたため、 消費者側の評 価は上々のようだ。しかし、 労働者の 権利が手厚く保護されているアルゼン チン。 現在はオートレジとレジ係が共 存状態にあるが、 いずれ機械が人間 の仕事を奪うようになると、 大きな反 発は免れないだろう。

売り上げランキング

順位 店名 2015 年 2014 年 (百万ペソ) 変動率(%)

1 Grupo Carrefour Argentina 38,800 30,658 26.56

2 Jumbo Retail Argentina 33,400 28,000 19.29

3 Wal-Mart 23,015 17,481 31.66

4 Coto 22,842 17,061 33.88

5 Imp. y Exp. de la Patagonia 18,742 13,422 39.64

6 Supermercado Día Argentina 16,600 23,000 -27.83

7 Cencosud Argentina 12,700 13,000 -2.31

8 Falabella 5,613 4,923 14.02

9 Grupo Casino (Sup. Libertad) 5,197 4,129 25.87

10 Interbaires 2,887 2,443 18.17 出所:経済誌メルカード 2016 年 6 月号 ブエノスアイレス市内には、ハイパーマーケット (超大型スーパー)とスーパーマーケットが存 在する。両者とも、広大な敷地やショッピング モール内に店舗を構え、食料品から日用雑貨・ 家電製品まで、生活必需品がひと通り揃うよう になっている。外資系チェーンには、カルフー ル(フランス)、ウォルマート(アメリカ)、セン コスド(チリ)などがある。ちなみに、センコ スドはジュンボ、ディスコ、ベアといった複数ブ ランドのスーパーを所有している。アルゼンチ ン資本の代表的なチェーンとしてはコトが挙げ られる。一般的に、ジュンボやディスコは富裕 層や上位中間層、ベアやコトは中間層や下位中 間層が主な客層となっている。

主なハイパー・スーパーマーケットの

(5)

¦ミニスーパー

ディア

カルフール・エキスプレス

中国人経営の個人スーパー

エコバッグの普及

ブエノスアイレス市政府は、 環境保護 の観点から、 2012 年より通常のポリ エチレン製ビニール袋の配布を禁止 し、 生分解性の袋の使用を各商業施 設に義務付けている。以前は、ハイパー マーケット等で買い物すると、ビニー ル袋は何枚でも無料でもらえたが、 現 在 は 有 料 (1 枚 0.25 ペソ)。 また、 新たに登場した袋には、 緑と黒の 2 種 類あり、 家庭内のゴミ分別に活用して もらう狙いがあるという。 エコバッグや 買い物かごを使用する人の姿は確実に 増えており、 市民の環境に対する意識 も変わりつつある。

政府による生活必需品の価格統制

アルゼンチン政府は 2014 年より、 インフ レ対策の一環として 「プレシオス・クイダー ドス」 というプログラムを実施している。 同プログラムは、 政府が商業施設や生産 者と協定を結ぶことで、 食料品をはじめと した生活必需品の価格を統制するもので ある。 対象品目とプログラムに参加する商 業施設のリスト、 その価格 (ホームペー ジ上からダウンロード可能)は数か月ごと に更新され、 2016 年7月現在、 約 400 品目が対象となっている。 政府はモニタリ ングも定期的に行っており、 合意価格を 守っていない場合は罰金が科される。ただ し、リストの見直しを機に価格も上昇する など、 完全に凍結するには至っていない。 また、 将来インフレが抑制されれば、 同 プログラムも終焉を迎える可能性がある。 ちなみに最近では、各商品の価格を地域、 商業施設、 店舗ごとにインターネット上で 比較できる「プレシオス・クラロス」とい うプログラムも登場している。

¦市場

昔ながらの市場も市内にいくつか存在 する。大きな建物の内部には、肉、野菜、 果物、魚、乳製品をはじめ、あらゆる 食料品を販売する店舗が数多く集まって いる。 以前はハイパーマーケットで数週間・数 か月分の食料品や日用雑貨を大量に買 いだめするスタイルが主流だったが、近 年は購買力の低下などによって、近所 のスーパーマーケットで一日・数日分を 購入する市民が増加している。代表的 なチェーン店として、フランス資本のカ ルフールが展開するカルフール・エキ スプレス、アルゼンチン資本のディアが 挙げられる。カルフール・エキスプレス は、富裕層や上位中間層が主な客層で、 日本のコンビニのような雰囲気。品ぞ ろえも豊富だが、精肉は扱っていない。 これに対して、ディアは中間層と下位中 間層が主な客層で、より庶民的な雰囲 気。肉や野菜などの食料品も手に入る。 ブエノスアイレス市内のスーパーマーケット は、 チェーン店を除いて中国人の個人経営が 多い。そのため、「中国人=スーパーマーケッ ト」というイメージが定着している。

(6)

輸入食品市場

¦日本食品(輸入品に限らず)を扱っているアルゼンチン・欧米系スーパー

ハイパーマーケットの中には、輸入品の 醤油、わさび、海苔、味の素、カップラー メンなどを取り扱う店舗もあったが、近 年は輸入規制の影響で目にする機会が 減少した。その代わり、アルゼンチン国 産の醤油や豆腐が、ハイパーマーケット のみならず、スーパーマーケットでも手 に入るようになった。

¦日本食品を扱う日系・アジア系スーパー

● カサ・ハポネサ

日系人が経営する店舗で、食 料品、調味料、アルコール類、 日用雑貨などを取り扱ってい る。また、店内にはレストラ ンがあり、ラーメンやうどん などの麺類を提供している。

● 中華街

日本人駐在員が多く住むベル グラーノ地区にある。日本や 他のアジア諸国の商品を販 売する店舗が数多く並ぶ。レ ストランも数軒あり、アルゼ ンチン人も多く訪れる。

● 韓国人街

韓国の食料品、調味料、ア ルコール類、日用雑貨を中心 に取り扱っているが、日本食 品も手に入る。韓国料理レス トランも数軒あるが、利用す るアルゼンチン人は少ない。

(7)

地下鉄の駅構内で無料 WiFi 接続

ブエノスアイレス市内には合計6路線の地下鉄が走っているが、 2016 年より、 利用者はすべての駅構内で WiFi への無料接続 が可能となった。これは、ブエノスアイレス地下鉄公社(SBASE) が実施する「近代化プラン」 の一環。 すでに同プランでは、 駅ホームに設置されたモニターに次の電車が到着するまでの 待ち時間を表示するシステム「Próximo subte」 が導入され、 200 冊以上の書籍が無料でダウンロードできるバーチャル図書 室、 近代的なイスに座りながらのネットサーフィンや、 携帯端末 の充電もできるスペース「Subte Digital」(写真)が設置され ている。 また、 将来は WiFi エリアを地下鉄の車内やトンネル にも拡大し、 利用者が移動中にインターネットを利用できるよう にする計画も進行中という。ちなみに、 地下鉄以外にも、 商店 街や病院・保健所、 図書館、 公園・広場、 博物館をはじめ、 無料で WiFi を利用できるスポットが市内には数多く存在する。

インターネット通販市場

アルゼンチン電子商取引会議所(CACE)によると、2015 年の電子商取引の総売上高は 685 億ペソであった。同年の 年間成長率は 70 .8%を記録し、2016 年の成長率は 64% と 予測されている。地域別にみると、売上高に占める割合が最 も多いのがブエノスアイレス市で 47%、これにブエノスアイ レス州を合わせると 68%にも達する。 取り引きの内訳をみると、うち 79%が B2C(企業と個人消 費者)、16%が C2C(個人消費者同士)、5%が B2B(企業 同士)。また、最も売上高が多かった品目は、航空券などの 旅行商品(28%)で、これに電子・IT・通信機器と付属品(13%)、 食品・飲料・清掃用品(6%)が続く。 スマートフォンの普及とともに、すでに企業の 77%がモバイ ルコマースを導入しており、総売上高の 10%を占めている。 スマートフォンからの購入は全体の 26% であったが、18 歳 から 29 歳の層に限定すると 42%に増加する。 電子商取引が近年拡大した背景には、受け取り方法や配送に 要する日数などのロジ面が改善されたこと、クレジットカード を利用する購入者が増えたこと(10 人中9人)、分割払いを 提供する販売業者が増えたこと(全体の約 70%)等もある。 また、以前は前政権の輸入制限措置により、インターネット上 で海外の商品を購入した場合、レティーロ地区の国際郵便局 まで受け取りに行かなければならなかった。しかし、新政権が 同規制を緩和したことにより、一部の商品は宛先まで配送さ れるようになった。ただし、その条件は郵送方法によって異な る。民間の宅配便を利用した場合、1年間に5梱包まで(1梱 包あたり 1000ドル以下・50 キロ以下で、同じ商品は3品ま で)。オフィシャル「コレオ・アルヘンティーノ」の場合、梱包 数に上限はないが、1梱包あたり 200ドル以下・2キロ以下と なっている。

(8)

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:「

アル

インタビュー ENTREVISTA

O S A M U M U R A T O

会社の概要について教えてください。 主な業務は、日本や中国からの食料品の輸入卸で す。取引先は、レストラン、中華街・韓国街の商店、 アルゼンチンの健康食品店です。設立当初は、船 に食料品や雑貨を積む仕事をしていました。本格 的に輸入卸を始めたきっかけは、1992 年に行わ れた国際フードフェアへの参加です。自然にマッチ した日本食の良さ、バランスのとれた健康食でア ルゼンチンの肉食文化に一石を投じたいと思いまし た。他にもサッカーグッズ、革のバッグ、ワインの 輸出業務をやっています。 当時の日本食を取り巻く状況は? 最初に就職した会社では、輸入した食料品をスー パーやレストランに販売していました。醤油をはじ め、日本食材へのある程度の認識はアルゼンチン 人の間でもあったと思いますが、日本食にまったく 関心がありませんでした。寿司バーができ始めた のは、ごく最近の話です。 現在取り扱っている商品は? 醤油、みそに加えて、ラーメン、そば、そうめん、 うどんなどの麺類を扱っています。寿司バーやデリ バリー向けの海苔、割り箸、わさびなども多いです。 最近特に人気の商品は? エスニック料理がかなり普及してきており、ナンプ ラーやオイスターソースといった、東南アジアの食 品・調味料に対する需要が増えています。 日本酒はいかがでしょう? コンスタントに出てはいますが、ブラジルのような 爆発的な売れ方はしていません。ブラジルでは、 日本酒を使ったカクテルですごくヒットしたようです が、アルゼンチンではカクテルを飲む習慣があまり ないんです。 ビールはどうでしょう? 日本のビールが珍しくて買う方はいますが、圧倒 的に地場ビールが売れています。地場ビールは、 値段が安くて、味も美味しいです。日本のビール は酒税抜きでも高いので、値段の格差は相当ある と思います。 ブエノスアイレスの市場としての魅力について教え てください。 食に関してアルゼンチン人は非常に保守的でした が、徐々に「世界にはいろいろな食べ物があるんだ」 という認識に変わってきました。とくにヨーロッパ や北米に行って、そこの食文化に触れた富裕層が、 火付け役になっているのでしょう。多様性を理解し ようという柔軟性が出てきたので、アルゼンチン人 もバランスの取れた食生活に次第に移行していくと 思います。そこで日本食は伸びる要素があると思

アルゼンチンの

日本食品

多様性を理解しようという柔軟性が出

てきたので、アルゼンチン人もバラ

ンスの取れた食生活に次第に移行し

ていくと思います。

(9)

インタビュー ENTREVISTA

います。 食品の安全規制について教えてください。 アルゼンチンは、食品関連の許可を取るのに非常 に時間と経費が掛かります。メーカーの分析結果 や製造工程表などを厚生省に提出して、輸入食品 の登録をしなければなりません。自国の産業保護 の観点があるのかもしれませんが、この国の輸入 規制は非常に障害が多いです。 今後期待している商品は? アルゼンチンは寿司ネタがないので、魚関係を含 めた日本の冷凍食品を検討しています。富裕層を 相手に、日本酒も考えられます。日本向け輸出では、 ワインやオリーブオイルに可能性があると思ってい ます。肉もやり方次第では、日本は大きなマーケッ トになります。 アルゼンチンならではの苦労は? 取引先が支払い期限を守らないケースが少なから ずあります。倒産して回収できず、裁判に至った ケースを何度も経験しています。なお、アルゼン チンはインフレ率が高いので、たとえば2年後に回 収できたとしても、目減りしています。インフレは 以前に比べると収まっていますが、一方で電気代、 ガス代、固定資産税、水道代、社会保障費など 固定経費がものすごく値上がりしています。また、 労使の問題もあります。労働者の権利が強く守ら れており、労働組合が強いため、ストライキやデ モが頻発しています。 昨年の政権交代で変わってきたところは? 個人レベルでは、まだまだ実感がないですね。前 政権の最後の方は、外貨の流出をだいぶ懸念した 輸入規制が非常に厳しかったため、自由に輸入で きませんでした。新政権に期待するところは大きい のですが、公共料金の値上げや集団解雇で国民は かなり厳しい締め付けを感じています。効果が出て くるのは来年以降ではないでしょうか。 プロフィール:富山県富山市出身。小学生の時にア ルゼンチンに移住したいという夢を抱き、東京農業 大学在学時に1年間休学して、南米での海外実習・ 実地研修・調査を経験。卒業後の 1979 年、日系 商社の呼寄せでアルゼンチンへ移住。同社で日本食 品の輸入業務に携わった後、1982 年に退職・独立。 1985 年に東亜商事を設立して現在に至る。

村藤修

さん

東亜商事社長

(10)

日本文化(J ポップ)

ブエノスアイレス市で絶大 な影響力を誇る日本文化は、 間違いなくアニメ・マンガだ ろう。ケーブルテレビのアニ メ専門チャンネルでは、最 近の作品に加え、ドラゴン ボール、キャプテン翼、聖 闘士星矢、セーラームーン、 ポケモンといった昔懐かしの アニメが放送され、子ども たちだけでなく、日本のア ニメを見て育ったという根強いファンも多い。また、スペイン 語に翻訳されたマンガの単行本、アニメキャラクターのフィ ギュアなどを取り扱う店舗も市内に存在する。コスプレファン や同人誌作家のイベントなども市内各地で開催されており、 子供から大人まで幅広い年齢層のファンが集結する。ちな みに、ブエノスアイレス市では日本アニメ・マンガの愛好家を 「OTAKU」と呼ぶのが一般的。一方、日本の音楽はまだま だなじみが薄いが、THE BOOM の「島唄」は地元の人気歌 手アルフレド・カセーロスが カバーしたために、ポ ルテーニョなら誰も が知っている。

¦

〈アンケート企画〉

ブエノスアイレス市内の商業施設にて、ア ルゼンチン人 100 人を対象としたアン ケート調査を実施。「メイド・イン・ジャ パン」というと、自動車、バイク、電 化製品を連想する人が多いようで、上 位には各業種の有名メーカーが並ぶ。ち なみに、「知っている日本人」も聞いてみたが、大多数は「誰 も知らない」と回答。個人となると、知名度はまだまだとい うのが現実のようだ。

順位

メーカー名

人数

1位

トヨタ

19 人

2位

ホンダ

16 人

3位

ヤマハ

11 人

4位

スズキ

9人

5位

東芝

7人

6位

三菱

6人

カワサキ

6人

7位

ソニー

5人

日立

5人

8位

三洋

4人

9位

日産

2人

ユニクロ

2人

10 位

資生堂

1人

ミズノ

1人

富士フィルム

1人

パナソニック

1人

任天堂

1人

コナミ

1人

ケンゾー

1人

ムラマツフルート

1人

アルゼンチン人

100人に

聞きました

日本の格闘技と武道への憧れ

アルゼンチンでは、 空手、 柔道、 剣道、 合気道をはじめとする日本の武道が大人気。ブエノスアイレス 市にも数多くの道場があり、老若男女を問わず、アルゼンチン人の弟子たちが稽古に汗を流している。 彼らの多くは、 映画やテレビ番組の影響を受け、 武道や格闘技に興味を抱いて入門した者たち。 な かには、 武道のみならず、 その裏に存在する日本人特有のメンタリティーに魅せられ、日本語などの 文化講座を並行して受講するケースも多い。 最近では、 それほどメジャーと言えない弓道、 相撲、 居合道などを教える道場も登場している。 なかでも、日本人になじみが薄いのが忍術。 かつて忍者 が使用していた護身術としての意味合いが強いが、 なかには本場日本で数か月修行する弟子たちもい るほど。アルゼンチン人の日本への関心はますます高まっている。

(11)

1 月 9 日 ラプラタ盆踊り 20 日~ 2 月 29 日 展示会:日本カレンダー展 23 日 サルミエント盆踊り 2 月 3 日~ 7 日 第 9 回アルゼンチン国際交流 「Dale2016」 16 日~ 17 日 ワークショップ 「子供向け日本文化紹介」 25 日 ワークショップ 「日本語で遊ぼう」 26 日 プレスリリース「日本、 新たな旅」 3 月 3 日 ワークショップ 「指圧」 6 日 第 1 回囲碁大会 「日本大使カップ」 6 日 第 5 回ブルサコ祭り 8 日 2016 年ピナマル映画祭 「3 丁目の夕日」 13 日 コンサート「日本ブランド:実験音楽」 (安永哲郎) 19 日 ~20 日 ワークショップ 「和太鼓」(渡辺薫) 27 日 コンサート「和太鼓」(渡辺薫)

4 月 9 日 Buenos Aires celebra Japón 10 日 ピアノコンサート(フジコ・ヘミング) 11 日 講演会 「恐山」 15 日 日本映画上映 「遠き落日」 18 日 講演会 「コケ球」 21 日 日本映画上映 「ハッピーフライト」 30 日 茶道レク・デモ:日本 DAY (丸岡宗陽) 5 月 9 日 講演会 「俳句」 16 日 講演会 「松島」 18 日~ 20 日 秋の展示会:生花 20 日 日本映画上映 「瀬戸内少年野球団」 26 日 日本映画上映「ハッピーフライト」「ヒノキオ」 6 月 3 日~ 7 月 24 日 日本版画展 「アイレス・デ・歌舞伎」 6 日 講演会 「神風という言葉の意味論」 13 日 講演会 「俳人小林一茶」 24 日~ 10 月 31 日 展示会 「ドリームカムトゥルー」 30 日 日本映画上映 「ふるさと」 30 日 ディスカバー・ジャパン 7 月 12 日~ 8 月 15 日 書道展示会 「宝」(浜崎龍峰) 15 日 レク・デモ・ワークショップ 「指圧」 21 日 日本映画上映 「遥かなる山の呼び声」 22 日~ 24 日 日本映画上映 「新海誠監督特集」 27 日 邦楽コンサート「WASABI」 28 日 邦楽ワークショップ 「WASABI」 8 月 26 日~ 28 日 総合日本文化紹介イベント 「ハポン・エン・フォルモサ」 9 月 日本文化新進芸術家・研究者フェスティバル 日本映画上映 10 月 日本産ウィスキー 11 月 第 8 回日本文化コンベンション 総合日本紹介展:日本マニア アルゼンチン独立 200 周年記念日祭り 12 月 14 日 Shiatsu Argentina25 周年記念日イベント 出所:日本大使館広報文化センター

¦日本文化に関連する年間イベント

2016 年の主な年間行事

●ブエノスアイレス市内および近郊で開催されたイベント

(12)

ンタ

:「

アル

N

IP

-インタビュー ENTREVISTA

日亜学院について教えてください。 日亜学院は 1927 年に設立されました。1938 年 にアルゼンチン文部省から公認校に認可されまし たが、第二次世界大戦中に閉鎖されてしまいまし た。戦後は日本語学校として再開し、1984 年に 再び公認校として認可されました。幼稚園から小 学校4年生まで、全校生徒 64 名からのスタートで した。現在は、幼稚園が 160 名、小学校が 310 名、 中高等部が 130 名です。これ以外に、日本語を 勉強するために土曜日だけ通っている生徒が、幼 稚園生から中高校生まで合わせて 205 名います。 また、成人コースの生徒が 530 名います。 文化センター設立の経緯について教えてください。 以前も日本文化を伝える活動を行っていました。 外部の方に参加いただける文化祭もあったのです が、どちらかというと内部の方が集まるものでした。 しかし、日本文化への関心の高まりから、2010 年 に文化センターが創設されました。 講座の内容と生徒数は? 大人向けには、お寿司、生け花、マンガ、書道、 歴史などがあります。子供向けには、和太鼓、沖 縄舞踊、折り紙があります。 生徒数は、大人が 200 名弱、子供が 100 名ぐらいで、80% は非日 系アルゼンチン人の方々です。 日亜学院と文化センターが開催しているイベントに ついて教えてください カラオケ大会、バザー、ニッポン・マニア、年に3 つのイベントを行っています。カラオケ大会は、5 月か6月で、約 1,000 人の方がいらっしゃいます。 バザーは9月で、2,000 人ぐらいの方がいらっしゃ います。ニッポン・マニアは 11 月で、2,000 人か ら 3,000 人の方が集まります。あと、今年の 10 月には和食フェスティバルを開催する予定です。 生徒が日本文化に興味を持つきっかけは? もともと日本に対してすごく良いイメージがあっ て、その後メディアやインターネットを通じて情報 が入ってきます。生け花や折り紙、そしてマンガな どは、皆さん受講される前からご存知で、実際ス ペイン語の単語として存在します。他のジャンルは、 展示会などのイベントに参加して出会うようです。 マンガ講座について教えてください。 マンガは特に人気があって、毎年受講者数が多い 講座のひとつです。現時点で 60 名の生徒が学ん でいます。年齢層は 10 歳から 20 代で、年齢に 関係なくレベル分けします。アルゼンチン人のイラ ストレーターが、絵の描き方の技術を指導してい ます。背景の描き方や、顔の輪郭や目の位置とか です。

D E L I A

M I T S U I

アルゼンチンの

NIPPON

MANIA

最近は子供たちがアニメを見て、日

本語を勉強したいというケースが増え

てきました。学習者の年齢層が低く

なっています。

(13)

インタビュー ENTREVISTA

プロフィール:パラグアイで生まれ、7歳の時にアル ゼンチンへ。1980 年より日亜学院で日本語教師と して勤務。その後アルゼンチンの教員免許を取得し、 84 年からは一般教員として勤務。小学校日本語部 の校長を経て、現在は同学院学院長と文化センター 長を務める。両国の友好と親善に貢献したことが評 価され、2016 年に外務大臣賞を受賞。

三井デリア

さん

日亜学院文化センター長 受講料はいくらぐらいですか? 4回コースで 500~600 ペソです。でも、お寿司 の場合は、3回コース、合計9時間から 10 時間で 2,200 ペソです。マンガは月 330 ペソです。 アルゼンチンでの日本文化ブームについて教えて ください。 日本語を学びたい人たちが 2000 年ぐらいから現 れました。日本文化についても、そのころからでしょ うか。、日本語をちゃんと勉強して、日本に行きたい、 日本で働きたい、住みたいという人たちも出てき ています。または、アルゼンチンの日本企業で働 きたいとかです。最近は日本語能力試験1級の合 格者も出てきています。 ブームについて、最近の変化や傾向は? 日本語の場合、以前はエキゾチックさから大人が 勉強し始めるケースが多かったのですが、最近は 子供たちがアニメを見て、日本語を勉強したいと いうケースが増えてきました。今はもう小学生、7 歳ぐらいの子供でも日本語を習いたいという子供 が出てきています。 日本人がアルゼンチン人と文化交流をする際に留 意すべき点は? 海外経験の少ない方が、アルゼンチンに限らず中 南米に来られると、中南米の「なんとかなるさ」と いうアバウトな文化にストレスがたまるのですが、 そこで寛容な気持ちを持てないと苦労すると思い ます。アルゼンチンはこうなんだと受け入れる気持 ちです。 日本文化ブームの今後の展望について教えてくだ さい。 和食が普通のアルゼンチン人の家庭でも食べられ るようになると思います。日本の食事は健康面も 考慮している点が注目されていますし、どんどん生 活に取り入れられるのではと思います。あと、若い 人たちが日本文化に興味を持つようになっていま すので、だんだん年齢層が下がって、ますます広 がっていくと思います。 、

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日本語による観光サービス(二階建てバス・観光警察)

アルゼンチンを訪れる日本人観光客は決して多いとは言えないが、 最近では日本語による観光サービスも提供されるようになった。 ま ずは、 主に同市を訪れる外国人観光客を対象に、 2009 年より運行 されている二階建てバス「Buenos Aires BUS」。 約 20 分ごとに 運行されており、 約3時間をかけて市内の観光名所を巡る。 車内 では 10 か国語のアナウンスを聞くことができるが、 なかには日本 語も含まれている。 そして、ブエノスアイレス市警察の観光部に属 し、 各観光名所に配置された観光警察。 専門的な教育訓練を受け た彼らのなかには、日本語を話す警察官も在籍しており、日本人観 光客の強い味方となっている。 使用可能な言語は、 制服のバッジ に表記されているので、 一目で分かる仕組みになっているのもあり がたい。

外国人観光客の消費動向

アルゼンチン観光省によると、2015 年にアルゼンチンを訪れ た外国人観光客(外国人居住者を除く)は約 574 万人にの ぼる。ラテンアメリカ諸国からの訪問者が最も多く、全体の約 8割を占める。なかでも近年 “ お得意さん ” となっているのが ブラジル人だ。実際、セントロ地区の歩行者天国フロリダ通 りを歩くと、ポルトガル語を耳にする機会が多い。両手に多く の買い物袋を下げたブラジル人観光客に加えて、彼らをター ゲットにしたツアーの客引きで溢れかえっている。ただし、近 年のブラジル経済の減退とレアル安によってブラジル人観光 客はやや減少傾向にある。また、外国人観光客の支出額は約 42 億2千万ドルで、同様に減少傾向にある。 ブエノスアイレス市は、市内にアエロパルケ空港、郊外にエ セイサ空港があることから、外国人観光客の玄関口となって いる。アルゼンチンを訪問する観光客の約半数はいずれかの 空港から入国しており、その約8割はブエノスアイレス市に1 泊以上している。アルゼンチン全体と同様、外国人観光客の 数は減少傾向にあるが、同市にとって観光業は重要な産業で あるため、将来に向けた様々な取り組みを行っている。

とても便利なキオスコ

ブエノスアイレス市内で最も多く見かける商店、 それ は 「キオスコ」 だろう。 キオスコとは、 日本の 「キ オスク」に近いが、 電車の駅構内のみならず、 街中 のあらゆる場所に存在する。 2014 年時点では、 約 10 万店のキオスコがアルゼンチン全土に存在すると いう。 店舗形態としては、 歩道に移動式の店舗を構 え、 主に新聞、 雑誌、 書籍などを販売するもの、も しくはテナント内でタバコ、 お菓子、 飲料、 軽食な どを販売するものの二つがある。 なかには、 生活必 需品や食料品を販売する店舗もあり、 大半の品物は キオスクに行けば揃ってしまうほど便利である。しか も、 24 時間営業している店舗もあり、 日本のコンビ ニのような役割も果たしている。なお2016 年時点で、 アルゼンチンにチェーン展開しているコンビニはなく、 仮に将来アルゼンチンに上陸した場合、キオスコとの 競争に勝てるかがカギとなるはずである。 コ

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