体外受精‐胚(受精卵)移植に関する説明
乾マタニティクリニック TEL:024-925-0705 説明者( )はじめに
1978年、イギリスの Edwards 博士と Steptoe 医師によって、最初のヒト体外受精‐胚移植による出産例が報告されました。日 本では1983年、最初の体外受精児が誕生しました。 当時は、全身麻酔を用いて腹腔鏡下で卵胞液を穿刺吸引していましたが、現在では経膣超音波断層法の進歩により、静 脈麻酔下で比較的侵襲性が低く卵子を採取することが可能となりました。また卵巣刺激法や培養液・器具の改良などにより、 急速に治療技術が向上しました。 2016年7月、日本産科婦人科学会による体外受精‐胚移植の実施登録施設数は608施設にのぼり、2014 年に生殖補助 医療技術により出生した児は47,322人と報告されています。これは2014年の全出生児数100万1000人(厚生労働省ホー ムページ発表)の約4.7%を占め、新生児 21 人のうち1人が体外受精児ということになります。 一般不妊治療(タイミング指導、タイミング療法、人工授精)では体内で精子と卵子が受精したかを確認することはできませ んが、体外受精の場合は体外に取り出した卵子と精子が受精したことを確認できた胚(受精卵)を子宮に移植しています。 最近では体外受精関連の治療費用を助成する制度があります。お住まいの地域、ご夫婦の収入、治療内容などにより申請 できないことがあります。手続きの仕方などご不明な点がありましたらスタッフにご相談ください。医学的適応
①子宮卵管造影や腹腔鏡検査などにより、卵管に異常が認められ、卵管機能の回復が困難であると判断された場合。 ②精液検査において、精子の数が少ない、精子の運動性能が乏しいなど自然妊娠や人工授精などによる妊娠が困難である と判断された場合。ただし受精が困難であると判断されるような重症精液所見の場合は、顕微授精の適応になります。 ③反復して人工授精を実施したが、なかなか妊娠に至らない場合。 ④血液中の抗精子抗体検査陽性で、精子を不動化させる抗体を奥様が保有している場合。 ⑤御夫婦のスクリーニング検査で、異常が発見されないのに妊娠に至らない原因不明不妊症(機能性不妊)を疑う場合。 ⑥子宮内膜症の一部において、卵管周囲や腹腔内で癒着が強い場合があります。また卵巣にチョコレート嚢腫があり、受精 障害や排卵障害を疑う場合。 ⑦排卵障害、子宮因子、年齢因子、受精障害などで、一般不妊治療が無効であると判断された場合。 上記以外の理由でも体外受精の治療をお勧めすることがあります。方法
体外受精‐胚移植は、実施前検査→卵巣刺激→採卵→受精卵培養→胚移植→黄体補充と進んでいきます。 ご夫婦で体外受精の治療を希望される場合、まず医師にその旨をお伝え下さい。実施前検査
卵子の採取手術をお受けいただく前に実施前検査を行なっています。挙児を希望するご夫婦で心身ともに妊娠・分娩・育 児に耐えうる状態にあり、成熟卵の採取、着床および妊娠維持が可能であるか確認しています。 心電図 血液検査による慢性感染症の有無 (B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)結果が分かるまで数日掛かります。 超音波検査による残存卵胞の有無 (前周期に排卵しなかった卵胞が残っていないか調べます。) 血液中の基礎ホルモン値測定 (生理2日目または3日目の血液中エストラジオール、プロゲステロンの量を調べます。) ※血液中のホルモン値を測定する時は、結果が出るまで1時間ほどお待ちいただくようになります。 ※午前 11 時以降に採血した場合、結果のご報告が午後の診療時間内になることがあります。 ※土曜日は午前中の来院をお願い致します。 ※実施前検査の結果により、治療が中止になることがあります。卵巣刺激法
性周期が正常であれば、自然周期では通常1~2個の卵子が排卵します。しかし、当院で体外受精‐胚移植をお受けいた だく治療周期には、複数の卵子が得られるよう薬(排卵誘発剤)を使い卵巣刺激を行ないます。 体外受精の治療をご希望される周期が決まりましたら、事前に医師と卵巣刺激法の打ち合わせをお願い致します。 血液中のホルモン値や年齢、これまでの既往歴などに応じて卵巣刺激法は異なります。 飲み薬、注射、点鼻薬等の使用方法も個人ごとで異なります。 卵子採取日を卵巣刺激の前に予測することは困難です。 平日は夜9時まで、日曜日と祝日は午前中のみですが2F ナースステーションで注射を受付けています。 かかりつけの施設での卵巣刺激および黄体補充の注射をご希望される場合は医師へご相談ください。 hMG(FSH)製剤を上腕部、臀部に注射することによって、赤く腫脹することがあります。 天災による影響、長期停電、火災、事故などにより治療を中止することがあります。 上記内容により治療が中止された場合の払い戻し等は対応していません。 体外受精関連の料金精算は私費扱いになり、原則的には治療を受けた当日のお支払いになります。(休診日除く) 排卵誘発剤使用に関する内容 排卵誘発剤である hMG(FSH)製剤は、直接卵巣を刺激し卵胞発育を促す作用があります。 hMG(FSH)製剤は、内服薬で卵胞の発育が思わしくない比較的重症の排卵障害や体外受精-胚移植のように多くの卵子 の発育を促す必要がある場合に使用します。 主な副作用は多胎妊娠と卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。 *多胎妊娠 卵巣機能が正常であれば hMG(FSH)製剤を使用することにより多数の卵胞が発育します。その中に入っている卵子が 排卵後に精子と受精、複数の受精卵が子宮に着床することがあります。2個だと双子、3個だと三つ子(品胎)です。多胎妊 娠の場合、単胎妊娠に比べ早産の割合が高くなり、低体重児の赤ちゃんが産まれてくることが多くなります。また分娩時の 出血増加など産科的合併症が増加します。多胎妊娠は単胎妊娠より母児ともにリスクが高くなります。 生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解 日本産科婦人科学会会告(2008年4月) 『生殖補助医療の胚移植において、移植する胚は原則として単一とする。ただし、35 歳以上の女性、または 2 回以上続けて妊 娠不成立であった女性などについては、2 胚移植を許容する。治療を受ける夫婦に対しては、移植しない胚を後の治療周期 で利用するために凍結保存する技術のあることを、必ず提示しなければならない。』と定められています。*卵巣過剰刺激症候群 Ovarian Hyperstimulation Syndrome (OHSS) OHSS とは排卵誘発剤の投与によって起きる副作用で、通常拇指頭大の卵巣が OHSS では 5~6cm 以上に腫れ、重症例では 腹水が溜まり、お腹の強い張りや尿量の減少、血液の濃縮等を認めます。 hMG(FSH)製剤を使用した場合、超音波検査または血液検査を受けていただくことがあります。 OHSS の発症を早期発見、早期治療をおこなっていますが、入院治療を含め重症化することもあります。 重症 OHSS 発症が予想される場合、 hMG(FSH)製剤の注射を中止することがあります。 重症 OHSS 発症が予想され採卵中止の際、 妊娠で症状が悪化するため排卵時期の夫婦生活も 避けていただきます。 hMG(FSH)製剤の注射を医師の指示なく一時的 または継続的に休止した場合、卵胞発育が得られ ないことがあります。 体外受精‐胚移植をお受けいただく際の hMG(FSH)製剤の注射は保険外診療になります。 この時に hMG(FSH)製剤の種類、注射量により料金は異なります。
診察日
血液中のホルモン値測定 (血液中のエストラジオール、プロゲステロン、必要に応じて LH の量を調べます。) 超音波検査による発育卵胞の計測 (卵胞の大きさと個数を調べます。) 血中ホルモンの LH が卵巣刺激中に上昇した場合、採卵する前に卵子が排卵することがあります。状況に応じて採卵日を 早めるまたは中止することがあります。 血中ホルモンのエストラジオール値が高い場合、身体の症状によっては治療を中止することがあります。 卵巣刺激をしても卵胞が発育しないことがあり、その周期の治療が中止になることがあります。 夜間特別診療になった際、血中ホルモン値の測定結果は後日の報告になります。 ※午前 11 時以降に採血した場合、結果のご報告が午後の診療時間内になることがあります。 特に水曜日と土曜日は午前10 時 30 分までに来院ください。 ※血液中のホルモン値を測定する時は、結果が出るまで1時間ほどお待ちいただくようになります。 ※卵胞発育が小さい時は、ひき続き卵巣刺激を継続またはその周期の治療をキャンセル致します。 卵胞が成熟し血液中のホルモン値も良好であれば、手術で卵子を採取する『採卵』の日程が決定致します。採卵
卵子を卵胞から穿刺吸引する操作を『採卵』といいます。静脈麻酔または局所麻酔下において経膣超音波を用いて卵胞や 血管の位置を確認しながら行われます。 採卵時間は、発育した卵胞数により異なりますが、5~10分ほどで終了します。 軽麻酔のため身体的負担は軽く、採卵に伴う多量の出血がない場合、その日の診察後に帰宅することができます。 超音波検査で確認された卵胞の数だけ 卵子が得られるとは限りません。 採取された卵子が未熟卵子または過 熟卵子、変性卵子の場合があります。 採取する前に排卵してしまい卵子が得 られないことがあります。 卵巣の位置によっては卵胞液の吸引 が行なえないことがあります。 採卵手術時間が変更になることがあり ます。 採卵しても卵子が得られない時の費用は80,000円(税込86,400円)になります。 卵子が得られなかった場合、卵胞壁に卵子が残っている可能性があるので人工授精を実施しています。 採取された卵子全てが受精卵、胚盤胞、赤ちゃんに発育するわけではありません。 小さなお子様がいらっしゃる場合は、当日はお子様を他の方に預けられるようお願い致します。 採卵された卵子は生物由来製剤(ヒト血清アルブミン)を添加した培養液中で発育させます。 培養液にはタンパク成分が必要であり、FDA(アメリカ食品衛生局)の認可を受けた製品を使用しています。 ヒト血清アルブミンは肝炎、梅毒、HIV 等の検査済みですが、未知の感染症を完全に否定することはできません。 ヒト血清アルブミンを使用した際、製品の LOT 番号を控えてあります。 *採卵時の合併症に関する内容 卵胞穿刺による腹腔内出血及び多臓器(大腸・小腸等)損傷が極まれに発生します。その際は麻酔科医、外科医、その他 の医師と連携しながら対応致します。 採卵後、腹腔内感染症を起こすことがまれにあります。消炎剤・抗生物質を投与して対応致します。しかしながら、重篤にな る際は開腹手術もありえます。 麻酔は基本的に静脈麻酔で行いますが、ご本人の状態により局所麻酔、あるいは両方の麻酔を併用して行います。 麻酔による合併症として、呼吸の障害や不整脈などの循環器系の障害が起こることがまれにありますが、内科医等の連携 により十分な対応を致します。 採卵当日の入浴は、浴槽に入るのはご遠慮下さい。(シャワーを浴びる程度にしてください。) 採卵後に体調の不良を感じた場合、医師またはスタッフへ申し出てください。 採卵手術後、ご帰宅の際は車の運転は避けていただきます。 (麻酔の影響により判断力が低下することあります。)*精液採取 精液の採取は採卵当日に行なっていただきますが、日程が合わない時は事前に精子の凍結保存をご利用ください。 専用容器に奥様の氏名(カタカナ)を記入したラベルを必ず容器に貼っていただきます。 禁欲期間が短いと、精子の数が少なくなります。また、禁欲期間が長すぎても、精子の運動率が低下します。 3~7日間の禁欲期間が良いとされています。 直接容器にマスターベーションで採取していただきますが、コンドームを使用しないでください。また容器の口が狭くて採取 しにくいと感じた場合、広口のシャーレをお渡ししています。精液をシャーレに採取後、容器に移してお持ちください。 容器の蓋をきちんと閉め、保温に気をつけてなるべく採取後3時間以内に来院してください。 奥様がお持ちいただく場合は、容器が低温にならないよう胸の間に挟んでお持ちください。その際に、容器が逆さまになら ないようにお気をつけください。容器をバッグなどに入れておきますと、寒い季節は精子の状態が低下することがあります。 来院しましたら2F のナースステーションの看護師に容器を渡してください。 *精子凍結を希望される場合 御主人様には、凍結希望日より 2 週間前までに感染症の有無確認のため採血に来院していただきます。 (結果が出るまで1週間程かかります。) 御主人様の感染症の結果が陰性であれば、精子凍結の予約が可能となります。 ※御主人様のB型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIVなどの慢性疾患や感染症を疑うときは凍結保存ができません。 御主人様の禁欲期間が3~7日間で、御夫婦の希望する精子凍結日が決まりましたら、当院受付窓口または電話にてご予 約ください。 乾マタニティクリニック TEL:024-925-0705 *ご予約いただいた凍結日前日までに「精子凍結及び凍結保存継続に関する同意書」と精液採取容器をお持ち帰りくださ い。 *精子凍結のために保存を行なっている日時 月曜日・火曜日・木曜日・金曜日の 午前 8:30~11:00、 午後 2:00~4:00 受付 水曜日は 午前 8:30~11:00 受付 土曜日は 午前 8:30~11:00、 午後 2:00 受付 になります。 *日曜日、祝日は行っていません。 *精子凍結料金 凍結技術料金は18,000円(税込19,440円)になります。 3本目以降は、追加凍結料金として3,000円(税込3,240円)が加算されます。 保存料金は、1年間 24,000円(税込25,920円)(保存料金は前納でお願いします)かかります。 凍結精子が不要になり廃棄が必要な場合は、「凍結精子の廃棄同意書」に必要事項を記入して提出していただきます。 凍結精子の継続保存を希望される場合は、保存満了日の 3 か月前から保存満了日当日までの間に手続きをしていただき ます。 精子を凍結保存した当日に料金の精算を行います。また保存料金のお支払いは前納制度になっています。 ※詳しくは別紙『精子凍結保存に関する説明書』を参照ください。