産業組織論(企業経済論)
第12回 井上智弘
注意事項
次回(7/7)は小テストを行う. » 範囲は価格差別. 第1種~第3種の分類 単一の独占価格を設定する場合と比べて,価格や利潤,余 剰がどう変わるのか. 講義の資料は,授業終了後にホームページにアッ プしている. http://tomoinoue.web.fc2.com/index.html前回の復習
第1種価格差別 » 消費者を財・サービスに対する留保価格の違いで個人 別に分け,それぞれに対して留保価格に等しい価格で 販売する. → 完全価格差別 » 消費者の留保価格=企業の限界費用となるまで生産 が行われるため,総余剰が最大となる. » 企業が消費者余剰をすべて利潤として吸い上げること で,生産者余剰は最大となるが,消費者余剰はゼロに なる.MC D O Q P QPD E A C
前回の復習
MR MC D O Q P QM PM M E F A C 通常の独占 第1種価格差別前回の復習
第3種価格差別 » 消費者のグループごとに需要の価格弾力性に応じて異 なる価格で販売する. 各グループ市場ごとに,MR = MC が成立するように価格を設 定する. » ラーナー指数と需要の価格弾力性の関係から,弾力性 が低いグループであるほど高い価格で販売する. MCはどの市場も同じなので,需要の価格弾力性が高いほど, 価格は低くなる. MC 1 1 P 1 MC Pi = − → = −第1グループ市場 第2グループ市場 M 1 P M 2 P M 1 Q O QM2 Q 2 Q1 P MC MC 弾力性が相対的に高い 相対的に低い価格を設定 弾力性が相対的に低い 相対的に高い価格を設定 D1 D2 MR1 MR2
M 1 P M 2 P M 1 Q O QM2 Q 2 P MC D2 MR1 MR2 Q1 MC D1 M Q M P 集計された需要曲線 集計された 限界収入曲線
前回の復習
第2種価格差別 » 購入量ごとに異なる価格を設定して,消費者に自己選択 させることで,価格差別を行う. » その1つの例として,二部料金制がある. 支払額=固定料金(基本料金)+従量料金(使用料金)二部料金制
あるスポーツジム(企業)は,非会員は1日1,000 円で施設が利用できるが,会員であれば1日500 円で利用できる.ただし,会員になるには年会費 60,000円を支払わなければならない. 年会費が固定料金,1日の使用料金が従量料金 である. 消費者は,会員・非会員を選択する.二部料金制
会員の場合 » 年間支払額(Tc) = 60000 + 500Q » 一日当たりの平均料金(Tc/Q) = 60,000/Q + 500 非会員の場合 » 年間支払額(Tn) = 1000Q » 一日当たりの平均料金(Tn/Q) = 1000二部料金制
会員になった場合,利用日数が増えれば増えるほ ど,平均料金は安くなる. たくさん利用する消費者ほど,会員になろうとする. スポーツジムは,需要の高い消費者に対しては, 相対的に低い従量料金を課している.二部料金制
需要の高い消費者に低い従量料金を課すことで, 企業にメリットはあるのか? 消費者は,留保価格が従量料金と等しくなる点ま で消費するため,従量料金を低く設定すると,需要 量が増え,消費者余剰が大きくなる. この消費者余剰を固定料金によって吸い上げるこ とで,高い利潤を得ることができる. 消費者の逆需要関数が P = 2000 - 10Q,企業の限界 費用が MC = 500 で,会員の1日の利用料金を限界費 用に等しい500とする場合. 消費者余剰 従量料金=MC D Q P 500 150 2000 消費者は留保価格が利用料金と 等しくなるまで消費を増やすので, Q = 150 となり,年会費がゼロで あれば,消費者余剰は112,500 となる.
消費者余剰 企業は,利用料金に加えて年会費60,000を設定すること で,消費者余剰を吸い上げて利潤とする. 消費者余剰 + 利潤 従量料金=MC D Q P 500 150 2000 このとき,利潤は60,000となり,単一の 独占価格をつける場合の利潤56,250 よりも高い. また,年会費を消費者余剰と等しい 112,500に設定すれば,消費者余剰を すべて吸い上げることができる.
二部料金制
単一の独占価格を設定する場合よりも総余剰が増 加する. » 従量料金が独占価格よりも低く設定されるため,限界 費用との差が小さくなり,生産量が増加する. » 消費者余剰が固定料金として企業に吸い上げられたと しても,総余剰は変わらないため,総余剰は増加する.二部料金制
購入量ごとに異なる料金設定を行うことで,企業は 利潤を高めることができる. » それぞれの消費者に,自身の需要に合った料金プラン を選ばせることで,消費者のタイプを識別する. » そのためには,それぞれの消費者がその料金プランを 選ぶことによって,他の料金プランを選ぶよりも,平均料 金が安くなるように設定しなければならない.設定
需要の高い消費者(A)の需要関数 → Q = 200 - (1/10)P 需要の低い消費者(B)の需要関数 → Q = 150 - (1/10)P それぞれ1人ずついるとする. 料金プランは次の2つ. » プランX:固定料金60,000,従量料金500 » プランY:固定料金0,従量料金1,000 独占企業の限界費用を500で一定とする 需要の高い消費者: » 相対的に高い固定料金 » 相対的に低い従量料金 » 消費量が多いため,消費1単位当たりの固定料金が安 くなる. 需要の低い消費者: » 相対的に低い固定料金 » 相対的に高い従量料金 » 消費量が少ないため,消費1単位当たりの固定料金が 高くなる.
価格差別まとめ
独占企業は,すべての消費者に対して単一の価 格で財を販売するよりも,何らかの方法で消費者を 分断し,異なる価格で販売することで,より大きな 利潤を獲得できる. この分断の方法として, » 個別の消費者の留保価格に基づく価格設定(第1種価 格差別) » 消費者の購入量に応じた価格設定(第2種価格差別) » 消費者のグループごとに,需要の価格弾力性に応じた 価格設定(第3種価格差別)残りの講義内容
自然独占
コンテスタブル市場
自然独占
電気・ガス・水道・通信・鉄道などの事業では,国 営・公営企業による独占事業化や参入規制による 独占権の付与が行われていた(行われている). これらの事業では,産業の設立費用が非常に大き く,巨額な初期投資を必要とする. → 設備投資費用としての固定費用が大きい. 固定費用が大きいほど,生産量が増えたときに平
均費用が減少する範囲が広い.
» 平均費用が減少する範囲=規模の経済が働く範囲
AC,MC MC