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購買時の重視点からみた携帯情報機器の商品特性--PHSを一例として---香川大学学術情報リポジトリ

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第71巻 第 1号 1998年 6月 157-168

研究ノート

購買時の重視点、からみた携帯

情報機器の商品特性

一一一

PHS

を一例として一一 I . は じ め に

義雄*(1)

馬 淵 キ ノ エ 村

岡 内 雄 司 *

商品の品質論は商品学の主要なテーマの 1つである。商品の品質には科学的に測定 可能な,客観的に評価できる部分と消費者の晴好が反映され,客観的に評価できない 部分とがあり,商品の品質はこれらの集合体であると言う捉え方が商品学における商 品の品質に対する共通認識である。しかし,この捉え方は,商品そのものの性質ある いは商品と消費者意識との関係を研究対象とする捉え方であり,携帯電話や

PHS

な どの携帯情報機器では,商品の品質だけではなしその商品の背後にあるネットワー クの優劣が商品選択に大きな影響を与えていることは明らかであり,携帯情報機器は これまでの商品学の知識では把握できない商品特性を有していることが予想される。 従って,携帯情報機器の商品特性は商品学にとって極めて興味深いテーマである。 通信サービス市場が急成長し,それにともない,携帯情報機器の顧客獲得のための (2) 価格競争が激化している。このような急激に市場が成長している成長商品は現在の物 質的に豊かな日本では珍しい商品である。従って,成長商品の商品特性を明らかにす (1) ・香川大学経済学部。“四国大学経営情報学部。

(

2

)

日本消費者協会「加入者獲得競争サービス競争で乱売状態の

PHS

Jr月刊消費者J,第 452号, 1997年, 4 -18ページ。

(2)

158 香川大学経済論叢 158 る点、からも興味深い商品である。著者らはこれまで典型的な成熟商品である衣料品の 商品特性を購買時の重視点から明らかにしており,衣料品と携帯情報機器の購買時の 重視点を比較することにより,成長商品としての商品特性が見いだせる可能性がある。 このような観点から,本研究では,携帯情報機器の中でもPHS(パーソナル・ハンディ フォン・システム)を取り上げ,商品属性,販売会社の庖舗属性およびサービス会社 の属性を考慮しながら消費者の重視点を明らかにし,その商品特性について検討を 行った。 II. PHSの購買時の重視点、の構成要素 消費者トがPHSを購入する時,どのようなネットワークに繋がっているのかは重要 な判断材料である。従って,重視点の構成要素については商品属性,

J

吉舗属性だけで なくサービス事業者属性を考慮しなければならない。商品属性,庖舗属性については 庖舗イメージの先行研究に準拠し,さらに,消費者インタビュー,携帯電話やPHSの 先行研究などに基づき具体的な項目を作成した。商品属性項目が10項目,庖舗属性項 目が12項目,サービス事業者属性が 11項目である。以上の 33項目について,アンケー (5) ト調査で回答を求めた。分析はSPSSfor Macintoshによる。 (3 ) 庖舗イメージの先行研究については,以下の論文に詳しい。 堀啓造「ファッション底イメージの内容分析JW香川大学経済論叢J,第62巻 4号, 1990年, 23-47ページ。 l古舗イメージの研究の多くはその構成要素として商品とサービスの両方を考慮している。 たとえば,庖舗イメージの先駆的研究者として知られるMartineauは,底舗イメージの 構成要素として, (1)レイアウトと装飾, (2)シンボルと色彩, (3)広告, (4)庖員の4つをとり あげている。また,小島は,先行研究を整理したうえで,(1)商品, (2)価格, (3)立地,(4)庖 舗雰囲気, (5)顧客サービス, (6)販売促進の6つをとりあげている。 (4 ) 東京サーベイ・リサーチによる NiftyServe上の「携帯電話に関するアンケートJ1997 年 9 月 26 日 ~10 月 2 日実施。財団法人郵政国際協会,電気通信政策総合研究所による「携 帯電話とPHSの利用実態に関するアンケートJ1996 年 11 月 15 日 ~11 月 21 日実施など カtある。 (5 ) アンケート調査では, rpHSの購入を考えたとき,どんな点を重視して商品(底,サー ビス会社)を選びますか。次にあげる各項目の中から重視する項目に

O

をつけてくださ い。」という質問をしている。データ分析では

O

のついた項目には r2J を,

0

のつかな い項目にはr1 Jを与えた。サンプルは,香川県高松市に居住する20歳以上 60歳未満の 市民を対象とし,選挙人名簿より等間隔法で1043人を抽出し郵送法で行った。実施期聞 は 1996 年 6 月 ~7 月。有効回答者数 439 名。回収率は 42% である。

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(3)

159-購買時の重視点からみた携帯情報機器の商品特性

1

5

9

図表

1

PHS

の重視点、を少数の次元で説明するため,

2

9

項目について主成分分析 8つの主成分が抽出 を行った結果を示している。固有値が

LO

以上の主成分として, された。解釈を容易にするためパリマックス回転を行っている。固有値は

1

4

.

.

8

5

,累積 寄与率は

4

9

.

.

6

%

である。 第1主成分に高い負荷を示す項目は r信 頼 で き る 底j,rアフターサービスが良い 庖j,rアフターサービス(サービス会社)j, r耐久性j,rサービス会社の信頼性j,r底 員の専門知識がある庖j,r機能」などである。これらは主に商品購入後のメンテナン スにかかる項目であることから,第1主成分は「メンテナンス」と解釈される。また, 信頼性にかかる項目とアフターサービスにかかる項目との関連が高いことから,商品 -d ,

l

i

-やサービスを提供する企業が消費者から信頼性を勝ち取るためには,優れた品質の商 これは商品を売った後がいか 品を売ること以上に商品のメンテナンスが重要であり, に重要であるかを示唆している。 第2主成分に高い負荷を示す項目は r月額基本料金j,r 3分当たりの通話料金j, 「価格j,r新規加入料j,r仲間が加入しているサービス会社」などである。これらは主 にイニシャルコストやランニングコストであることから「コスト」と解釈される。

PHS

ランニングコストを自覚せざ るを得ない。また,

PHS

は使えば使うほど使用価値は増大するが,それとともにコス (7) トも増大する。そのためコストが独立した次元になったものと考えられる。 は他の商品と異なり通話料金が単独で請求されるため, 第3主成分に高い負荷を示す項目は r連続使用時間j,rサービスエリアj,r通 話 品 (6) r仲間と同じ商品」,「おしゃれなl古J,i安い商品を置いている底j,iサービスカウンター の1苫舗数」の4項目については,サンプルの反応数が少なかったため,主成分分析では除 外している。 (7) 著者らのこれまでの研究では,衣料品の外出着では「商品選択J,i庖の信頼性J,i商品 の品質J,i庖の顧客向けサービスj,rバーゲンセールJ,i利便性j,i支払サービス」の7 つの次元から構成されている。実用衣料ではiJ苫の信頼性J,i商品選択j,i庖の顧客向け サービスj,i地理的利便性j,i時間的利便性J,i支払サービス」の6つの次元から構成さ れている。いずれも価格は「商品選択」と結びついており,独立した次元とはなっていな 関 義雄・馬淵キノエ・川本和明「庖舗属性の重視度から見た衣料品の特性j r商品研 究J43巻 1・2号, 31-40ページ。

(4)

160 香川大学経済論叢 -16(}ー 質」などである。これらは商品の客観的品質とネットワークの形成にかかる品質であ

PHS

は機能が重視され ることから第3主成分は「ネットワーク品質」と解釈される。 ると思われる商品であるが r耐久性j,r使いやすさj,r機能j,r通話品質j,r軽さ」 などの客観的品質にかかる項目が独立した次元を形成しておらず,客観的品質の一部 である「通話品質」や「連続使用時間」と「サービスエリア」というネットワーク事 業者の提供するサービスとが関連した「ネットワーク品質」という従来の商品には見

!

i

(

j

i

l

l

j

られない独立した次元を形成している。これは

PHS

という商品が,商品単体では使用 価値を持たず,商品がネットワークによって使用価値をもっという特異な商品特性に 由来していることを示している。 第4主成分に高い負荷を示す項目は r駐車場がある庖j,r買い物に便利な庖」など である。これらは庖舗の利便性にかかる項目であることから r利便性」と解釈される。 第5主成分に高い負荷を示す項目は r転送電話,留守番電話等のサービスj,r買う 前に試用できる庖j,r軽さj,r品揃えが豊富な庖」などである。これらは主に商品選 択にかかる項目であることから r商品選択」と解釈される。 第

6

主成分に高い負荷を示す項目は r有名メーカーj,r色・デザインj,rケース, 電池のサービスがある庖」などであることから r商品の主観的品質」と解釈される。

PHS

は携帯性という特質ゆえに,人前で使用される商品であることから主観的品質が 意識されやすい。そのため,主観的品質が独立した次元を形成したのであろう。 第7主成分に高い負荷を示す項目は rサービスカウンターの対応j,r庖員の接客態 度が良い庖」などであることから r庖員の接客サービス」と解釈される。 第

8

主成分に高い負荷を示す項目は r現在のシェアj,r気軽に入れる」などである ことから rシェア」と解釈される。 以上のように

PHS

の購入時における消費者の重視点は rメンテナンスj,rコス トj,rネットワーク品質j,r利便性j,r商品選択j,r主観的品質j,r庖員の接客サー ( 8 ) 水野は商品の品質を測定方法の客観性の観点から客観的品質と主観的品質の2つに大 別している。客観的品質は一応科学的に計測する方法の裏付けがあり,その測定結果には 再現性がある。主観的品質は人々の志向や主観によって良否や好き嫌いが判定され,共通 の尺度が本来定められないものである。 水野良象『商品学読本第2版』東洋経済新報社, 1990年, 31ページ。

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(5)

161 購買時の重視点からみた携帯情報機器の商品特性 -161ー ビスJ,rシェア」の

8

つの次元から形成されていることが明らかとなった。また,

PHS

という商品の特異性として rネットワーク品質」という他の商品には見られない

PH

S固有の品質が存在すること,また「コスト」および「主観的品質」が独自の主成分 を形成している点などが明らかとなった。 図表 PHS購入における重視点の主成分分析 主 成 分 3 4 6 7 8 質 問 項 目 メンテ コスト ネットワ 利便性 商品選択 客の シェア 共通性 ナンス 1ーク品質 信頼できる庖 686 527 アフターサービスが良い盾 655 561 アブターサービス(サービス会社) 543 368 549 耐久性 521 315 491 サービス会社の信頼性 515 -.312 319 579 使いやすさ 472 469 487 底員の専門知識がある庖 431 363 機能 383 337 313 月額基本料金 653 575 3分間の通話料金 644 302 579 価格 573 495 新規加入料 570 459 仲間が加入しているサービス会社 485 363 333 -342 647 連続使用時間 645 577 サービスエリア 618 494 通話品質 413 607 568 駐車場がある庖 580 433 良い物に便利な庖 563 .365 蹴鞠,留守醗話等のサービス 755 604 買う前に試用できる底 312 485 392 軽さ 345 383 389 品揃え豊富な庖 361 311 326 435 有名メーカー 683 636 色・デザイン 621 523 ケース,電池町サービスがある庖 390 308 .366 サービスカウンターの対応 744 .578 底員の接客態度が良い底 314 302 486 526 現在のシェア 783 675 気軽に入れる 318 .358 443 閤有値 5.64 1 93 1 51 132 1.18 1 15 1.11 1. 02 累積寄与率 188 25 3 30 3 34..7 38 7 42 5 46 2 49.6

(6)

162- 香川大学経済論叢 162

I

I

I

.

PHS

購入時における重視度 次に

PHS

の構成要素である

8

主成分の中でどのような要素が重視されているかを 明らかにするため,各主成分ごとに,因子負荷量の最大を示した変数の重視度の平均 値および標準偏差を求めた。その結果を図表 2に示す。重視度の最も高い主成分は 「ネットワーク品質」であり,次いで rメンテナンスj,rコストj,r商品選択j,rシェ アj,r庖員の接客サービスj,r主観的品質.j,r利便性」の順であった。 携帯電話や

PHS

は機能が重視される商品と考えられるが,商品それ自体がどんな に優れた機能をもっていようとも,商品単体ではその機能を発揮することができない。 サービス会社と契約し,ネットワークで結ばれ,ユ!ーザーが目的を持って働きかけ, 双方向的に情報の受発信が行われて初めてその機能を発揮する。つまり,これらの商 品はネットワークによってはじめて使用価値が実現される商品であり,冷蔵庫のよう に電源を入れるだけで使用価値を実現する商品とは決定的に異なっている。

PHS

で は「ネットワーク品質」が最も重視されるという結果は,この商品の特性を示してい る。

PHS

は「メンテナンス」や「コスト」の重視度が高いという点も特徴的である。「メ ンテナンス」の重視度が高いのは,

PHS

の構造が複雑で消費者自らが修理することは 困難であり,これは機能が重視される商品の特徴を反映したものと言えよう。また, 「コスト」の重視度が高いのは,

PHS

は消費者にとってランニングコストが目に見え る商品だからである。使い方によっては 1カ月の使用料がイニシャノレコストt以上の 場合もある。一般に

PHS

は使えば使うほど使用料が上昇する。つまり,使用価値に比 例してコストが増加する商品である。ところが,いわゆる家電製品ではそれぞれの電 気代を他の電気製品と区別して知ることができないだけでなく,使用価値とコストは 極端には関連しない。サービス会社;から小売底への販売インセンティブ戦略によって

(

9

)

一般に家庭では家電製品ごとの電気料金を把握することは困難である。一般家庭にお ける家電製品の電気消費量を比較すると,最も電気消費量が大きいのはエアコンで 22. 2%を占め,次いで,冷蔵庫が 18.2%,照明器具が 15..9%,テレどが 96%と言われてい る。(平成8年度電力需要の概要,資源エネノレギー庁)

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163 購買時の重視点からみた携帯情報機器の商品特性 163

PHS

販売価格が

O

円という織烈な企業間競争をもたらせているのも

PHS

のこのよ うなコストの特殊性によるものと考えられる。 現在の

PHS

は商品のライフサイクノレで言えば成長期の商品に相当する。「ネット ワーク品質」の要索、である通話エリアの拡大あるいは多機能化がサービス会社の差別 化戦略の核となっている。一般に,成熟期商品はコストが競争の核になると言われて いる。従って,将来

PHS

が成熟期商品となれば Iネットワーク品質」は各社とも有 意差が少なくなり,その結果,消費者の「コスト」の重視度がより高まることが予想 3 1 2 5 8 7 6 4 図表 2 PHS購入における重視度 主 成 分 平 均 標準偏差 ネットワーク品質 1 46 36 メ ン テ ナ ン ス 1 42 29 コ ス ト 1 37 ..26 商 品 選 択 1 29 27 シ ニコ ア 1.20 29 庖 員 の 接 客 119 30 主 観 的 品 質 1..15 ..24 平 日 便 性' 1 12 25 される。現時点では「商品選択」や 「利便性」に対する重視度は低く, 成熟期商品である衣料品とは全く異 なった結果となっている。また I主 観的品質」に関しては現在の重視度 は低いが,すでに,購入後に自分な りの色やデザインを施す若者も登場 していることから,成熟期商品へ移 行するにつれ重視度が高まることが 予想される。

I

V

.

PHS

の重視点と消費者特性との関連 消費者行動は様々な要因によって規定されるが,とりわけ,性,年齢の影響力が大 きいとされる。そこで性差と年齢差で重視度がどのように異なるかを2次元配置分散 (10) 脚 注 (2)参照。 料金面においても, DDIポケット電話クゃループが発信直後の10秒10円の料金体系を 導入し,これによって文字メッセージ・サービスの経済的な利用が可能となった。また, 複数閉線割引やローコーlレ型プランも登場し,自動車・携帯電話と同様に料金プランも多 様化されている。 情報通信総合研究所『情報通信ハンドブック明年版』情報通信総合研究所, 1997年, 136ページ。 (11) 関義雄・馬淵キノエ・川本和明「庖舗属性の重視度から見た衣料品の特'性Jr商品研究』 43巻1・2号, 39-40ページ。

(8)

-164- 香川大学経済論叢 164 分析により明らかにした。独立変数である性は2水準(男性,女性),年齢は 3水準 (20-29歳, 30-44歳, 45-59歳)である。年齢区分についてはPHSの所有率,購買 意向の違いを考慮して設定した。従属変数は重視度の

8

主成分である。図表

3

は性別, 年齢別の因子得点の平均値および分散分析の結果を示している。また,性の主効果, 年齢の主効果,性と年齢の交互作用が認められたものをグラフ化している。 消費者の重視度の最も高い「ネットワーク品質」は性の主効果が認められたが(F= 17..51 Pくゆ01),年齢の主効果および性と年齢の交互作用は認められなかった。次い で重視度の高い「メンテナンス」は性の主効果 (F=2402P < Ol)および年齢の主 効果 (F=544P<01)が認められたが,性と年齢の交互作用は認められなかった。 この結果は rネットワーク品質」は男性の方が女性より重視しているのに対し rメ ンテナンス」は女性の方が男性より重視している。さらに,加齢するほど「メンテナ ンス」を重視している。「メンテナンス」と「ネットワーク品質」ではまったく逆の結 果を示している。「ネットワーク品質」とは前述したように,商品の客観的品質とネツ トワーク事業者が提供するサービスとが結びついたPHS独自の品質に関する次元で ある。これはPHSという商品のハードな要素である。一方 rメンテナンス」は専門 知識を持つ庖員がいたり, アフターサービスの行き届いた庖やサービス会社,信頼の

ω

おける庖などであり, ソフトな要素である。総理府の世論調査によると,商品の品質 を見極める自信は男性と女性で大きく呉なり,生鮮食料品, 日用雑貨品および衣料品 では女性の方が男性より自信家が多く,家電製品では逆に男性の方が女性より自信家 が多いことが明らかとなっている。女性に自信家が多い商品は買物頻度の高い商品分 野であることから, この差異は男女の質物経験の差に起因するものと考えられる。 PHSの場合,女性が「メンテナンス」を重視するのは,買い物経験に根ざした商品知 (12) 各セルのサンプル数が異なる点を考慮し, MANOVAでは SSTYPE=SEQUEN-TIALを用いている。 (13) 商品の品質を見極める自信があると答えた人の割合は,女性では生鮮食料品が87%,日 用雑貨品が77%,衣料品が71%,家電製品が29%であるのに対し,男性は生鮮食料品が 39%,日用雑貨品が38%,衣料品が35%,家電製品が54%である。家電製品のみ男性が 女性を上回っている。 総理府広報室編『月刊世論調査J1988年9月号, 43-45ページ

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購買時の重視点からみた携帯情報機器の商品特性 識がないため,専門知識を持つ底員などに頼る傾向が高いものと理解される。一方, 男性は家電製品と同様に

PHS

に関する商品情報を集めて判断するため,メンテナン ス」よりも,商品のハードの部分である「ネットワーク品質」を女性よりも重視する ものと恩われる。 「商品選択」および「主観的品質」は年齢の主効果が認められたが(それぞれ, F= 4..06 P

<

..05, F = 13..41 Pく 01),性の主効果および性と年齢の交互作用は認めら れなかった。すなわち,商品選択」および「主観的品質」に関しては若年齢層ほど震 U~ 視している。先行研究は,若年齢層の方が高年齢層より買い物に時間をかけたり,い ろいろな商品から選びたいと考える人が多いことを明らかにしている。若年齢層ほど 「商品選択」を重視するのはこのような差異に起因するものと考えられる。また,著者 がすでに報告した衣料品においても若年齢層ほど「主観的品質」を重視していること

u

日 を明らかにしている。 '1古員の接客」は性の主効果が認められたが (F=4,06

P<

,,05),年齢の主効果お よび性と年齢の交互作用は認められなかった。すなわち,庖員の接客」は女性の方が 男性より重視している。一般に女性の方が男性よりも買い物経験が多く,買い物時聞 が長い。その結果,必然的に!苫員との接触時間の長くなるため,庖員の接客態度の善 し悪しが買い心地を左右すると考えられる。「利便性」は性の主効果および年齢の主効 果ともに認められなかったが,性と年齢の交互作用が認められた(F = 415

P

<

05)。 すなわち, 44歳以下と45-59歳では全く逆の結果となっており, 44歳以下では女性 の方が「利便性」の重視度が高いが, 45-49歳では男性のほうが「利便性」の重視度 が高い。この理由を説明するのは困難であるが,一つには, 44歳以下の既婚女性は仕 事,室長事,趣味などで多忙な生活をしているため買い物の利便性を重視するが,45-59 歳は比較的時間のゆとりがでてくる世代であることから買い物の利便性の重視度が低 くなるのではないかと考えられる。今後,さらに他の消費者特性を考慮した分析によ る解明が必要である。「コスト」および「シェア」に関しては,性の主効果,年齢の主 (14) 地域小売商業消費者関連事業』志度町商工会, 1989年, 45-48ページ。 (15) 外出着では若い世代ほど商品選択を重視し,高年齢層ほど商品の品質を重視している。 脚 注 (ll) 参照。

(10)

-166- 香川大学経済論議 166 効果および性と年齢の交互作用のいずれも認められなかった。従って rコスト」や 「シェア」は性や年齢を超えた共通の要因であると理解される。 以上の結果から,

PHS

という携帯情報商品に対して男性や若年齢層は主に商品の ハードな要素を重視し,女性や中年齢層は主に買いやすさや使いやすさといったソフ トな要素を重視していることが明らかとなった。調査の時点では

PHS

は成長期商品 であり,企業の差別化戦略の中心はネットワーク品質のようなハ}ドな要素におかれ ていた。しかし,

PHS

は携帯され人前で使用されることが多いことから衣料品と同様 に個性化の傾向が強まっていく商品であると予想される。従って,今後成熟商品に移 行するとともに,衣料品と同様に

PHS

のハード的な要素からソフト的な要素を重視 するようになることが推察される。 消費者の購買行動においては,ほとんどの商品はサービスと結びついて購買され, サービスもまた商品と結びついて購買される。そして両者は相互に影響している。従っ て,消費者の視点からの商品研究においては,有形財の商品と無形財のサービスを切 り離すことはできず,全ての商品は両者を包括した「システム商品」として捉える必 ネットワーク品質 メ ン テ ナ ン ス コ ス ト 商 品 選 択 シ ニコ ア 庖 員 の 接 客 主 観 的 品 質 利 使 件 P<..Ol * P <“05 性 図表 3 性と年齢がPHSの重視度に及ぽす影 因子得点の平均値 二元配置分散分析 (F値) 20-29歳 30-44歳 45-59歳 男性 女性 男性 女性 男性 女性 性の 年齢 性と年齢の 主効果 主効果 交互作用 N=40 N=63 N=63 N=l15N=73 N=85 0.42

o

00 0..21 一0..14 0.18 -0 29 17..51** 2..26 0..14 -0 56

01 -0..33 0..16 -0.06 0.31 24.02** 5..44** 0..39 0..05 0..02 -0 05 0.03 -009

.01 0..25 0..17 0..14 0.04 0..24 -0.04

..12 -0.28 -0.12 3..01 4..06ホ 0..02 -0 17 -0.06 0..12 0..08 0..02 -0.08 0.01 1.48 0.34 -0..09 0..27 -0.14 0..09 -0..10 -0.09 406* L02

o

99 0..29 056 -0.14 -0.05 -0.29 -0.11 3..32 13 ..41** 0..27 一0.20 020 -0..13 0..13 0..07 -0 18 1.80

o

14 4.15*

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(11)

質 口 口 円 H 均 ノ ワ k l y 、 ネ 彼 6420246 ﹂ j t 斗 叶 リ ハ U A υ ハ υ ハ u n u n u -d 除 去 -一 -一 メンテナンス 商品選択 30-44匡国 重視度 06 0.4 0.2 0 -02 -0.4 -0.6 重視度 応員の接客 重視度 主観的品質 重視度 手JI便

i

06 06 06 0.4 04 04 02 02 02

-F

2

-02 -02 20-29 30-44 45-59 ー04 匡国 ー0.4

4 -0.6 0.6 -0.6 要がある。 PHSにおいて「ネットワーク品質」という次元が見いだされたのは, PHS が極めてシステム的な部分,つまり通信ネットワークという商品の背後に形成されて いる部分が競争力を規定していることを示している。このような視点で, PHSの現状 を考えてみると最近のPHS市場の停滞が理解できる。 PHSの累計加入数は, 1997年 3月末で 602万台に達し,前年比で約 4倍と急成長を 遂げたが, 1997年 7月末では 697万台に留まり,成長は止まってしまった。最近では (16) 商品学における商品概念は,有形財である物だけを扱う伝統的商品概念から,有形財だ けでなく無形財であるサービスを含めた商品概念やさらに「物プラスサービスの複合体」 概念というように,社会・経済環境の変化に対応してその範囲を拡大している。本稿にお けるシステム商品という考え方は「物プラスサービスの複合体」概念に近い。「物プラス サービスの複合体」については,以下の論文に詳しい。 岩津孝雄「商品設計における流通特性の研究JW商品研究~ 34巻, 1. 2号, 1983年, 1-9ページ。マーケティングにおいても,コトラーは製品概念について r製品とは欲 求やニーズを満足させるため注目され,入手され,使用され,あるいは消費されるのを目 的として市場に出されるすべてのものを指す。その中には有形財,サービス,人,場所, 組j織,アイデアなどが含まれる」と定義している。そのうえで,マーケティング担当者は 商品の持つベネフィットまたはサービス,品質,スタイル,特性,ブランド,パッケージ ング,取り付け,アフターサービス,配送と信用供与,保証などを含む消費システムを見 ることの重要性を指摘している。 フィツリップ・コトラー著,宮津永光・十合・浦郷義郎訳『マーケティング・エツセン シャルズ』東海大学出版会, 1986年, 229-231ページ。

(12)

168- 香川大学経済論叢 168 解約率の上昇により,累計加入者ト数が停滞し始めている。この要因として,

PHS

の競 合 関 係 に あ っ た 携 帯 電 話 市 場 が

PHS

の 参 入 に 刺 激 さ れ , 価 格 を 下 げ る こ と に よ り

PHS

の成長を阻止したとも考えられる。 携帯電話も

PHS

と同様「ネットワーク品質」という商品特性を持つものと予想され る。

PHS

は利用範囲が都市部などに限定され,また高速移動中は通話できないなど携 帯電話に比べて「ネットワーク品質」が劣っている。本研究結果から携帯情報機器の 重視度は「コスト」より「ネットワーク品質」の方が高い。従って,携帯電話が価格 を下げれば,コストが安いというメリットが失われ,

PHS

の市場は「ネットワーク品 質」の優れた携帯電話に浸食されるのは明らかであろう。従って,

PHS

が今後再び成 長軌道に乗るためには「ネットワーク品質」を携帯電話並に引き上げるか「コスト」 以外の部分で利用者に訴えていくものが必要となる。 (17) 日本の移動通信市場は急速に加入数を伸ばしており,単純計算では日本人の約4人に 1人が移動電話をもっていることになる。また, 1997年に入ってからページング(ポケベ ルなどの無線呼び出し 一般的には「ページャー」という)から

PHS

へ,

PHS

から携帯'道 話へ,またページングから携帯電話へのユーザーの移行が徐々に明らかとなっている。 情報通信総合研究所『情報通信ハンドフ・ツク '98年版』情報通信総合研究所 1997 年。急速に拡大する移動通信携帯電話は2兆4000億円市場に。『日経コミュニケーショ ン』日経BP社, 1997年7月, 152-160ページ。

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

参照

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