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幼稚園での学びを活用した小学校における学習指導法の一提案-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学教育実践総合研究(Bull. Educ. Res. Teach. Develop. Kagawa Univ.),36:55-63,2018

幼稚園での学びを活用した小学校における

学習指導法の一提案

松下 文夫 ・ 松下 幸司

(名誉教授) (附属教職支援開発センター) 760-8522 高松市幸町1-1 香川大学教育学部

Development of Teaching Methods in Elementary School

Using of Actual Experience in Kindergarten Education

Fumio Matsushita and Koji Matsushita

Faculty of Education, Kagawa University, 1-1 Saiwai-cho, Takamatsu 760-8522

要 旨 本研究は,幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続を図るための授業改善方策を探る ものである。方法は,幼稚園教育で培われたごっこ遊びの精神を活用し,子ども自身に教材 を作らせ,先生ごっこを試みさせた。研究の評価は,教材や仲間などとの関わり方及び敎育 活動の改善・充実を図るために必要な評価の観点(1)を用いた。その結果,ごっこ遊びの精 神を活用することが,小学校への円滑な接続のための授業改善に繋がることが分かった。 キーワード 幼小教育の円滑な接続 授業の改善 ごっこ遊び 教材づくり       主体的・対話的で深い学び

1 はじめに

 幼稚園教育要領及び小学校学習指導要領(以 下,指導要領と称す。)が全面改正され平成29 年3月31日に告示された。改正の主旨を,小学 校指導要領 総則第1では,児童の発達に考慮 しながら,「主体的・対話的で深い学び」を実 現できる授業改善を通して,児童の生きる力の 育成を目指すとある。この生きる力を支えるも のとして,基礎的・基本的な知識及び技能の確 実な習得,また,これらを活用して課題解決す るために必要な思考力,判断力,表現力等を育 成すると共に,主体的に学習に取り組む態度, 他の人々との協働を促す教育の充実をあげてい る(2)  これらを受けて様々な教育研究グループが, 新しい指導要領の実施に向けた教育課程編成の 試案づくりに取りかかっているという現状にあ り,教師個人のレベルでは,一刻も早く具体的 な授業の改善モデルの提示を求めており,本研 究はこれに沿うものである。 1.1 「主体的・対話的で深い学び」とアクティ ブ・ラーニング  指導要領では,「主体的・対話的で深い学び」 という文言が使われているが,アクティブ・ ラーニングの文言は使われていない。しかし, 指導要領の文言から両者は殆んど同じ意味であ るとしている(1) (1)家庭でのアクティブ・ラーニング  幼小の円滑な連携の鍵は,幼稚園教育と家庭 教育との日常的な連携にある。  アクティブ・ラーニングを成功させるために 重視したいのは,幼児期の家庭における体験で

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ある。体験のさせ方によっては,人間関係を円 滑にする能力(以下,人間関係能力と称す。) を育むことができる。  次に,これらの諸能力が如何に形成されてい くかについて,入浴の様子から示す。子どもは 幼い頃から「時間を数で表すこと」を知ってい る。  例えば,湯船に浸かっている時間を数詞で子 どもに唱えさせることは日常的である。「10, 数えるまでは出たらダメだよ!」とか「50まで よ!」など,湯船に浸かる時間が示されると, それを了承するか,代案を提示するかの判断が 要求される。やり取りが何回か繰り返される中 で妥協点が見つかれば合意となる。妥協点を得 るとか,折り合いをつけるというのは,望まし い人間関係を築く上で必要とされる高次の能力 である。  このことから,家庭での体験から得た「知識 及び技能の芽生え」及び「諸能力の芽生え」「人 間関係能力の芽生え」等を学力の前段階として 捉えることは,この研究を推進する上でも重要 であると考え,この知見を,幼小教育の円滑な 接続をねらいとする授業の改善に用いる。 (2)アクティブ・ラーニング設計の要件  指導要領の目指す「主体的・対話的で深い学 び」をどのように具現化すればよいかが,直面 する課題である。そこで,授業を計画する際の 要点を次のように設定する。  一つ目は,教師自らが,アクティブ・ラーニ ングの「イメージ・トレーニング」をすること である。教師自らが,子どもが主体的に学習を 進めている姿や,仲間と話し合っている姿をイ メージすることが大切である。教師が主体的な 活動の,何を,どの時機に,どのように支援す るか,または子どもに任せるかなどを的確に判 断できるかどうかが,その成否を分けるのであ る。  幼児期の教育においても,「思考力,判断力, 表現力等の基礎」を得て,一層の質的な向上を 図りながら,バランスよく成長を重ねるもので ある。  二つ目は,学校教育における授業開始まで に,学習活動に必要な「知識及び技能の基礎」 を習得させておくことである。一般的に,主体 的な学習を目的とする発見学習や創造性を育 成する学習の最初から,「さあ,考えてみなさ い。」といきなり言われてもどう進めればよい かが分からない。無から有が生じることはむず かしい。例えば,発見学習を成立させるには, その前段階で「導かれた発見」と呼ばれる,課 題の分析,解決までの見通し,話し合い,まと めと発表の仕方などの知識や技能を身につける 学習が必要である(3)  三つ目は,「対話を通した学び」である。主 体性,創造性,探究心等の高次の能力を育成す る際に重要とされる活動は,他者との対話であ る。例えば,創造性の育成を目指す学習を成立 させるには,子ども自らの問題であっても,教 師からの課題であっても,授業の前半で行う学 習活動では,解決への方策を発散的な思考で, 思いつくままにできる限り多くを一人ひとりが 考えた上で,話し合いの場に自らの考えを持ち 込むことが要件である。  次いで,具体的な解決をイメージしながら, 仲間との対話によって絞り込みを行う段階(制 御的思考)を通して,より効果的で現実的な 解決法にまで磨きあげることができるのであ る(4)。本研究では,これらの要件をふまえた 授業設計に取り組むことにする。

2 研究の方法

 円滑な接続を可能にする1つの方法は,幼稚 園教育で培われたごっこ遊びの精神を,幼小双 方の教師が話し合って小学校においてもこれを 継続させることである。先ず,入学後のしばら くの間の授業では,ごっこ遊びの形を取ること とする。言い換えれば,授業は子ども自らの力 で作り上げるものであるという考えに基づくも のとする。そこで,自分たちが使う教材は自分 たちで作らせる。次いで役割分担の後,交代で 先生ごっこをさせる。なお,ここで設計した授 業モデルは,全てマイクロティーチングの手法 (以下,μ-Tと称す。)(5)で試行する。

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 以上のことを基に,研究は次の手順及び方法 により推進する。 (1) 幼稚園教育要領に基づく幼稚園教育にお いて,研究対象の子どもたちが遊びの体 験を通して得た「知識及び技能の基礎」, 言い換えれば,「何が身に付いているか」 をカリキュラムから把握する。 (2) 幼児期の家庭において体験した内容,方 法を調べる。 (3) ごっこ遊びの体験から得た「知識及び技 能の基礎」を基に,小学校の教科の授業 に沿った教材づくりをさせる。 (4) 指導要領に示す「主体的・対話的で深い 学び」の実現に向けた小学校の授業の改 善モデルを設計し,模擬授業をμ-Tで 試行する。 (5) 事後に,教育活動の改善・充実を図るた めに必要な評価事項4 「何が身に付いた か」の観点(1)から子どもの変容を調べ, 授業改善モデルの良否を判断する。

3 研究の具体的内容

3.1 研究対象等  (1)研究対象者:平成29年3月に幼稚園を 修了した女児3名(研究当初は全て6歳 児)で従姉妹にあたる。担任の教師が大 好きで,帰宅後には,園でのその日ので きごとを3人が交互にもの真似で再現し ている。  (2)調査期間:平成29年2月初旬から4月 末日までの約3ヶ月間  (3)研究協力機関:幼稚園側は高松市内の 私立幼稚園(なお,小学校側は新指導要 領の移行期前のために協力依頼はできな かった。)  (4)対象教科:小学校生活,国語,算数等  (5)本研究の評価項目     作成した教材自体の有効性は,μ-T を実施したときの子どもの教材を扱う姿 勢から評価する。    学習の成果は,指導要領のねらい「主体 的・対話的で深い学び」への変容の実態か ら評価する。 3.2 幼小の円滑な連携ための資料収集 (1)幼稚園のカリキュラム  「幼児期の最後までに学んでほしい姿」を把 握するための資料として,高松市内の比較的規 模の大きい私立幼稚園に依頼し,カリキュラム に関する冊子の提供を受けた。冊子は,平成29 年度保育計画年間計画表,4月から翌年3月ま での指導計画及び平成29年度食育カリキュラム であり,3,4,5歳の冊子とも同様の内容,構 成である。なお,平成28年度のカリキュラムも 全て同じ内容であることが確認できた。 (2)遊びの体験  小学校教育の教科の学習に活用し易い遊びの 体験を次にあげる。  ① サイコロ遊び,②時計(うでどけい)・ 時計遊び・時計台づくり,③粘土細工, ④絵本読み聞かせ・紙芝居,⑤絵を描く (鉛筆・クレヨン・色鉛筆・水彩画)・色 塗り・絵の具・型押し・自画像・落ち葉 貼り絵,⑥文具(はさみ切り・糊付け), ⑦パソコンでウチワの絵柄・クリスマス カードづくり,⑧折り紙(バッタ・ボッ クス),⑨地図色付け・園庭マップづく り・公園マップづくり,⑩ゲーム・コマ 回し・積み木,ブロック遊び,⑪ごっこ 遊び(お家ごっこ・お店ごっこ・劇ごっ こなど)  などであった。

4 授業の改善を目指す実践例

4.1 学習活動の基本的な姿勢  新たな気づきが生じることによって円滑に接 続できると考えた。そこで,幼稚園での遊びの 体験から得た「知識及び技能の基礎」を生かし て,小学校生活,国語,算数などの教材づくり を授業前にさせた。自らが作ったその教材に触 れ,操作しながら,自由な雰囲気の中で仲間と の話し合いをさせた。

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4.2 教材づくりの学習の試行 図1 手作りのカエルと舟 (1)第1学年生活・算数 題材名:「数の概 念の学習用教材づくり」  1) 利用できた幼稚園での体験で得た「知識 及び技能の基礎」には:  ①「絵の具の使用」の体験により,水彩絵の 具で着色できる。  ②「粘土細工」の体験により,事物を油粘土 で形作ることができる。  ③「折り紙細工(箱づくり,ヨットづくり) 四角い箱やヨットを折ることができるな ど。  2)学習目標:教材作りを通して算数「数の 概念の学び」の動機づけに活用する。  ①製作過程:「教材を作る カエル(ストー ンアート)と舟(折り紙)」  ②幼稚園の領域「表現」の体験から,油粘土 でものづくりをする技能を習得している が,ここでは,作り上げるカエルの個数が 多いので時間短縮のため,小石に着色する ストーンアートで作らせた。併せて,カエ ルを乗せて運ぶための舟を折り紙で作らせ た(図1)。  3)製作の手順   ① カエルづくりでは,金魚鉢の底石(大 きさ15~20mm)20個(一人分)の上 の面に,アクリル絵の具を用いて緑色 に着色させた。   ② アクリル絵の具は速乾性なので,その 後,石の下面を白色絵の具で塗らせ た。このときカエルの手足の筆書きは 省略させた。   ③ 最後の仕上げに,手芸店から入手した 目玉(直径4mmのもの)を,速乾性 接着剤で貼付けさせた。     ・ 話し合いの項目として,目玉が小さ いので,どのようにすれば定位置へ 貼付けることができるかを考えさせ た。   ④ なお,この教具「カエル」の活用の事 例としては,算数 題材「とけい」の 文字盤(60分または,60秒の目盛)と して利用できる。  4) 教材づくりで得た事項:「最終的にこの 学びで何が得られたか」については,  ①絵の具は,小石の表面がツルツルやザラザ ラの違いで,色が剥がれること。  ②接着剤で貼付けた目玉が絵の具と一緒に剥 がれること。  ③接着剤を使うときは,割り箸の先を尖らせ て使うこと。  ④手,指などに着いた接着剤は,水をつけた 布で拭くこと。  ⑤折り紙で舟を折ることができること。 などがあげられる。 (2)第1学年生活 題材名:「もけいの時計 づくり」  1)利用できた家庭での体験で得た「知識及 び技能の基礎」には:  時間(1時間,1分,1秒など)の長さを体 感させること。そのためには,生活の様々な場 面で時計を指差しながら,「時計の針がどの文 字を指すまでに,○○しようね!」とか,「20 まで数えたら○○だよ!」など,活動の始めと 終わりを,時との関係として意識づけるように する。  2)利用できた幼稚園での体験で得た「知識 及び技能の基礎」には:  ①時計(うでどけい),時計遊び,時計台作 り等の体験から,生活リズムを身に付けて いる。  ②園生活には時間という区切りがあることを

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知っている。  ③生活の中での昼夜のちがい,季節と行事, 季節と生き物の変化などに気づくことがで きる。  3)授業改善上の重点事項: 数直線から円 周を周回できる形にしたものが時計の文字 盤である。  (例)時計の秒針は,1分という時間なら「1 秒,2秒,3秒,と・・・60秒」が来るま で,徒競走のスタート地点から一秒ごと に目盛を刻みながらゴール地点まで走る よう,スタートとゴール地点を結んで輪 をつくり,60秒で一周できるようにと, 円形の文字盤が考え出されたこと。これ を示してから時計の文字盤づくりに取り かからせる。  4)「もけいの時計づくり」の準備物:  時計の台紙(約25cm×25cmの段ボール), 凧糸(約70cm),円形に貼付けるための治具と して,ボール紙(約3cm×65cm),長針・短 針用ボール紙,割りピン,巻き尺(金属製で1 m以上のもの)  5)「もけいの時計づくり」は,次の手順及 び方法で行った。  ① 巻き尺を60cm以上伸ばし,それに沿わ せて凧糸(60cm)をセロテープで仮止 めする。 凧糸に黒色マジックペンで,巻き尺の 1cmごとの目盛に沿って,印を付ける。 (このとき,5cmごとに赤色でマークを 入れると,その後の作業が容易になる。)  ② 台紙の中心から半径19.55cm の円を描 く。  ③ 描いた円周に合わせて治具を置き,そ の外側に1cmごとに印をつけた凧糸 (60cm)を待ち針で仮止めする(図2)。  ④ 仮止めした凧糸(60cm)を接着剤で貼 付ける(このとき,輪になっている凧糸 のつなぎ目が12時の位置になるようにマ チ針で修正しながら固定する。)。  ⑤ 台紙に凧糸がしっかりと張り付いたこと が確認できれば,待ち針を外す。  ⑥ 凧糸の一目盛りは,直線上では1cmで あったものが,今は円周上の1cmと なっていることを絶えず確認させること がこの学習の最重点重要である。  ⑦ 凧糸上の赤色のマークに合わせて,時刻 を表示する1,2,3,・・・の数字を貼る。  ⑧ 台紙の中央に時針,分針の順に重ねて割 りピンで止める(図3)。 図2 凧糸を待ち針で仮止め 図3 完成した手作り時計  6)μ-Tで得られた授業改善のための留意 事項:  ① 作業時間が長くなりすぎて,子どもたち の集中力がとぎれた,対策として,作業 にあたっては,接着剤か,セロテープで 止めることに限定した方が良い。  ② 時計づくりでは,子どもたちがこれまで

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経験したこともない多くの部品から構成 されているので,作業を手順よく進める ための助言や手助けが必要であった。  ③ もけいの時計とはいえ,自らの手で完成 できたという喜びを感じていた。指針を 動かしながら,「後,3分でアンパンマ ン電車が通るよ!」,「じゃあ,夕ご飯ま で40分やね!」など,時刻と事象を結ん だ会話が聞こえた。 4.3 教材を使った学習例 (1)第1学年算数 題材名:「たしざん」「ひ きざん」「おおいかず,すくないかず」  1)利用できた幼稚園での体験で得た「知識 及び技能の基礎」には:   ①百までの数詞を正しく唱えることができ る。   ②前から何番目,後ろから何番目かが分か る。   ③ものを対比させ,どちらが多いか少ない かが分かる。  2)学習目標:足し算及び引き算の考え方を 知る。数の大小を比べて同じ数,大きい数 と小さい数,その差を知ることができる。  3)μ-Tで得られた授業改善のための情報:  3月中旬には教材のカエル作りが終わり,そ れを用いた足し算及び引き算の学習のねらいを 説明した。最初に先生ごっこの仕方として,数 匹のカエルを2つの舟に分乗させて,島へピッ クニックに行くという場面をホワイトボード (以下,ボードと称す。)上で示し,状況を語り ながらカエルや舟を操作して見せた。  次いで,先生役がカエルや舟を移動しなが ら,「合わせて何匹?」とか,「残っているカエ ルは何匹?」などの問いを投げかけて答えを求 めた。稚拙な問いもあったが10分ほど続いた。 先生ごっこという遊びの世界に魅力を感じたの か,突然,「みんなが先生になって足し算か, 引き算の問題を物語のように作って,ボードに 貼ることにしょうよ!」「誰が答えてもいいよ ね!」などの提案が出された。一人が問いを書 くと必ずそれに追従する子どもが現れた(資 料1)。子どもたちは正答であることのみを評 価したが,それ以上に学習意欲の高まりが確認 できた。 資料1 先生役から出された文章問題  4月中旬,子どもたちが揃って引き算の練 習問題をしていたとき,A子が,突然,次のよ うに話し出した,「引き算の答えと引いた数を 足したら,元の大きい数になるんよ!」。「な に?」と思わず聞き返してしまった。引き算の 式を指さしながら,「差」と「減数」を合わせ ると「被減数」になるということを回答したの である。「誰かに教えてもらったの?」「誰に も!でもこの間は,B子とC子には教えてあげ たけれど。」という答え,B子とC子もその通り だと頷いた。これは,A子の繰り返しの学びの なかで法則性を見いだしたことになる。これこ そ指導要領のいう「深い学び」に達した瞬間だ と思った。 (2)第1学年算数 題材名:「なんじなんぷん」  1)利用できた幼稚園での体験で得た「知識 及び技能の基礎」には:  ①給食の時刻,お帰りの時刻など園生活の区 切りが,時計の針の位置でわかる。  ②教師が指定する針の位置によって,行動を 開始または終了できる。  2)学習目標:  ①模型の時計を使って,時刻を読むことがで きる。  ②時刻が変わることによって,くらしが変わ

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ることに気づく。  ③小グループでの対話的な学びを体験させ る。  3)μ-Tで得られた情報:  模型の時計を操作して時刻を決める。他の子 どもは,昨日のその時刻に何をしていたかを思 い出して発表した。自分と異なる行事や内容で あれば,どこが違うのか,なぜ違いができたの かを話し合わせた。話し合いで時刻によっても 変わらない事柄と,変わる事柄があることに気 づいていた。他人の家族にはそれぞれの生活が あって,その中で時間を使っていることが分 かったようだ。その後の話し合いで,時刻とく らしについてまとめた。  4)授業改善上の留意事項:  クラス全員でまとめる機会は,学校教育の大 きな利点である。異なったものの見方や考えを もつ他者の存在を認めることの大切さが分か り,経験を積んでいる他者からの情報を受け取 り,異なる考えや意見を聴く中から,妥協点を 目指し知恵を出し合ってまとめていくという, 貴重な場に自分も参加しているという事実を認 識することができる。  このためには前段階として,一人ひとりが先 ず,自分の考えをもつことから始めなければな らない。その考えを小グループの中で磨き,さ らに全体討議の場で一般化できるまで磨き込ま せることが追体験に結びつくものである。 4.4 コンセプトマップ(6)を利用した学習例 (1)第1学年 生活・国語 題材名:「物語『は じめてのおつかい』をつくろう」  1)学習のねらい:  物語「はじめてのおつかい」の作品づくりを 通して,よい人間関係の在り方を子どもなりに 考え,仲間と一緒に行動することができる。  2)利用できた幼稚園での体験で得た「知識 及び技能の基礎」には:  絵本の読み聞かせ(3歳児4月から5歳児12 月)の中でも,「ももたろう」の物語が引き金 になった。  3)学びの進め方:  ・ 学習形態:A子,B子,C子による小集団 (等質集団)をつくる。  4)μ-Tで得られた授業改善の情報:  物語を作っていく上で,ボードに話しの展開 を可視化する一つの方法として,思考を活性化 するコンセプトマップの使い方を示した。その 上で子どもたちに,いつ・どこで起きたのか, だれが,何のためにしたのか,仲間(友だち) はどうか,困ったことはなにか,どのように頑 張ったのか,最後はどうなったのか,などの問 いを一つ一つステップごとに投げかけた。その 問いごとに子どもたちは次々と考えを出した (図4)。ときには対立した考えが出されたり, 次へのつながりや,時制が一致していないもの も見受けられた。そこで,文章を読み易くする ためには,音読することで不完全な箇所を抽出 しながら,随時,訂正した。 図4 コンセプトマップで考えが広がる  5)学習評価:創作学習で何を得たか  模擬授業後からの自主活動には:  ① 物語のグレードアップが話し合われたこと  ・この物語を基に絵本を作ることになった。 そこで,どの部分の絵を描くかを分担し た。その内容は,一人が2つの場面を担当 すること。A5版の用紙にイメージスケッ チし,色鉛筆で着色すること。吹き出しを つかって台詞を入れてもよいこと,などで ある。その後,随時,描画を続けている (図5)。  ・『はじめてのお使い』を映像化することを

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決めた。しかし,この実行には家族間の同 意が必要であることから,未だに進んでい ない。  ② 学びの成否を図る自己評価の視点を作っ たこと   円滑な接続の可能性を調べる評価の視点に は,・教材に対して愛着を示す表現が示され る。・教材の操作に没頭する,・教材の新たな 使い方を見いだす,・教材に対する適否の評 価を示す。などが使われた。  6)授業改善上の留意事項・その他  幼児期は無論のこと児童期になっても遊びは 大好きである。大切な学びをその大好きな遊び に包むことで深い学びにまで高めることができ る。ごっこ遊びとして,子どもが先生役になり きることは,教える経験を通して学びは一層確 実なものになる。そのためには,先生ごっこに 真剣に取り組むような仕掛けを作ることが教師 の役割である。 図5 「初めてのおつかいできたね!」の挿絵  さらに,一歩進めて学習指導案を一緒に作る こと,質問ボードを設置する,誰もがいつでも 使えるボードもあれば良い。「○○さんへの問 題だよ!解いてみてよ!」など問答ができれば, それは深い学びとして結果にあらわれる。柔軟 な考えで回答できれば,KR情報をボードに書 いて賞賛することも活性化に繋がるものであ る。

5 研究の結果及び考察

 幼小の円滑な連携のために計画した授業モデ ルを用いてμ-Tによる試行を行った。この時 の音声及び画像記録を基に学習活動を再現して 分析した。その結果,子ども自らが作成した教 材への愛着やこだわりは,教材を違和感なく取 り入れたり,躊躇なく操作をすることにつな がっていることが分かった。自由に操作できる ことは,幼児期の遊び込む体験に基づくと考え る。  無我夢中で取り組むことは,算数のμ-Tで 見られた新たな発見,新たな方策を見いだす源 泉となり,深い学びを導くと捉える。最後に模 擬授業の結果から,教材づくりを核とした先生 ごっこは,幼小教育の円滑な接続を可能にする 方策の一つであると提言する。

6 おわりに

 円滑化のためには,先ず,幼稚園と小学校の 教師が教育課程を持ち寄って,相互に俯瞰しな がら,協同して教育課程を合目的的に再編成す ることが大切である。そして,本研究の成果と して,幼稚園のごっこ遊びを継承することの有 効性をあげることができる。ごっこ遊びの本質 とは,遊びは元来平等な学びの場であって,遊 び込むことでものの見方の拡大や,多様な思 い,さらに豊かな感性の世界が開かれる。仲間 とのせめぎあいから,折り合いをつけること, ルールづくりから約束事の大切さを学ぶ。その 場に居合わせた子どもにも,仲間が深い学びを 得た瞬間を共に味合うことで学びへの意欲が喚 起されるのである。  今後の課題としては,先生役でもの真似が得 意な子どもほど,役に成りきることができる。 このことから,経験豊かな教師の言動を真似る ことによって,教える技術が向上できるか否か の調査を試みる。 謝 辞  本研究の実施にあたり,教育課程及び年間行

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事等の資料についてご協力くださいました,認 定こども園やしま幼稚園長坪井洋子先生に心よ り謝意を表する。 参考文献等 (1)文部科学省『初等教育資料5月号』特集Ⅰ論 説②学習指導要領改訂のポイント総則(2017) (2)文部科学省 『小学校学習指導要領』第1章総 則第1小学校の基本と教育課程の役割(1),文 部科学省(2017) (3)藤井悦雄・水越敏行『教科の特質と発見学習』 ぎょうせい(1972) (4)香川大学教育学部附属坂出中学校『創造性を 開発する授業』明治図書(1967) (5)D.アレン・K.ライアン著/笹本正樹・川合治男 共訳『マイクロティーチング~教授技術の新し い研修法~』共同出版(1975) (6)永田敬/林一雅編 『アクティブラーニングの デザイン』第1章アクティブラーニングの理論 と実践,東京大学出版会(2016)

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