1
研 究 論 文】 UDC :624.
02 ;624.
042.
7 :620.
1:691.
7:624.
Oア8.
014.
5:624.
078
.
3 日本建 築学会構造系論文報告集 第 351 号・
昭和 60 年 5 月鋼 材
お よ
び
突 合
せ
溶 接 接 合 部
の
エネ
ル
ギ
ー
吸収 能
力
に
つい
て
正 会 員 正 会 員金
甲
多
津
功
潔
*夫
* * §1
序 鋼 構 造骨組の耐 震 安 全 性を論ずる う えで,
構成部 材や 接合 部の保 有し得る履 歴 吸 収エ ネルギー
量 を定量 的に把 握 して お くことは,
激 震 時にお け る低サイクル疲労 損傷 論に立 脚した部 材や接 合 部の ダクティリ ティ フ ァク ター
応 答の性 質を知ること と と もに重要で あ る。
すで に故 棚 橋 諒 博士Oは,
激 震を受け る場 合の建 築 構 造物の耐 震 性を,
材 料の非 弾 性 域にお けるエ ネルギー
吸 収能 力の優位性に よ る もの で あると提 案し,
特に鉄骨 構 造 物がエ ネルギー
吸 収 能 力の優れて いる点で耐 震 性 能を 高め得る構 造 体である こと を指摘してい る。
そ して早く も1939年に,
柱 梁 溶接 接 合 部の正負 曲げ試 験を行っ て そ の ヒ ステ リ シ スルー
プ形状の特 徴につい て, 鋲 接 接 合 部を 有す る構 造 物と の比 較の下に検 討 を行っ て いる2} 。 それ以 降,
鋼 部 材や骨 組の塑 性 域に お け る いわ ゆ る復 元力 特 性 やエ ネル ギー
吸 収 能 力に関 する研 究は非 常に盛 んに な り,
特に鋼 部 材の保 有し得るエ ネル ギー
吸 収 能力 の大き さ が,
骨 組の非 線 形 振動時の応 答を減じ得るい わ ゆ る履 歴 減 衰 効 果につ い て の考察が多く な さ れ てい る。一
方, 鋼 材のエ ネルギー
吸 収 能 力は その ヒ ステ リ シス ルー
ブ形状と と もに低サイク ル疲 労 特 性と密接に関 連づ け ら れ るこ と につ いて,Fel
しner,
Morrow,
Martin が 指 摘し,
ま た,
国 内におい て も 白鳥,
小 幡 谷,
飯 田ら,
棚 橋らに よっ て研 究さ れ て き た。 Morrow3 ) は,
平 行部 分 を有する シ リン ダー
形 試 験 片を用い て疲 労実験を行 い,
塑性ひずみエ ネル ギー
(応 カー
ひずみ履 歴 曲 線で囲 ま れ る面積 )の 消 費 が 疲 労 寿 命と密 接に関 係づけられる こと を, 提案し た繰 返し応 カー
ひずみ 関 係 式を 用いて誘 導して い る。
白 鳥,
小 幡 谷41は,
ニ ッ ケル クロ ム鋼の砂時 計形試験 片 を 用い た両 振り定ひずみ, 定 荷重 お よ び部 分 両振 り定 荷 重 試 験 を行い,
破 断に至る までの 総 塑 性 仕事と繰返 し 時の応 力との関 係を調ぺ た。
そ し て,
繰返 し載荷に よ る 破壊モー
ドを, 断 面 収縮 破 壊と疲れ破 壊に分 離し,
静 引 ’ 京都 大 学 教 授・
工博 牌 京 都 大 学 助 教 授・
工博 (昭 和 59 年 4月Z3 日原 稿 受 理日,
昭 和 60年1月11 日改 訂 原 稿受 理 日,
討 論期 限昭 和 60年8月 末日} 張 試 験 結 果か ら得 られる塑 性 仕 事 量 と特 定の応 力 値 と を 用い て実 験 結 果を整 理し て い る。 す な わ ち断 面 収 縮 破 壊 を呈す る場 合に は,
不 安 定 現 象を呈 するまで の塑 性 仕 事 の和を静 引 張 試 験にお け る く び れ発生 まで の塑 性 仕 事で 除 し た無 次元塑 性 仕 事 量と、 繰 返し試 験 時の不 安 定 変 形 応 力 を静 引 張 試 験におけ る く び れ発 生 時の応 力で無 次 元 化し た応 力との間に指 数 式が成 立する と述べて い る。
ま た疲れ破壊を呈する場合に は, 破壊まで の累積塑性仕事 を静 引 張 試 験に お け る破 壊ま での総 塑 性 仕 事で無 次 元 化 し た塑 性 仕 事 量 と,
疲れ試 験に おける最 大 引 張 応 力 を静 引 張 試 験に お け る真 破 断 応 力で除し た無 次 元 化 応 力との 間に指 数 関 係 式が成 立 する と して い る。 飯田らs〕は,WELTEN
60
鋼の砂 時計形試験体を周い て,
サ イン波,
三 角 波 お よ び 2種の台 形 波 を 入 力 し た 径 方 向ひずみ制御の疲 労 実 験を行い, 制 御 波 形の違いに か か わ らず,
軸 方 向 塑 性ひずみ振 幅 と1サイクル の ヒステ リシス エ ネル ギー
間に は指 数 関 係が成 立する ことを示し て い る。
棚 橋 らfi)は ,SS
41H
形 鋼の繰 返し変 位 制 御 曲 げ試 験 を実 施 して,
エネル ギー
消 費 能 力につ い ての考 察 を行っ ている。 実 験結果か ら,
いずれ も初載荷か ら数サイクル で ほ ぽ定常 状態に達す ること に注目 し,
第3
サイクル 目 の エ ネル ギー
消 費 量 と 塑 性 変 位 振 幅 との 間に指 数 関 係が 成 立する ことを示し て い る。
また, 破 断に至るまで の全 履 歴 吸 収エ ネルギー
量 と塑 性 変位 振 幅の間に もほぼ指 数 関 係が成 立す ると報 告し て い る。 な おこ の研 究に使 用さ れ た鋼 種はSS 41鋼で あ る が,
その製造単位と炭 素量 は2
種類で あ り, 求め ら れ た関 係 式に おいて も その違い が観 察さ れ ること を示して いる。
さ らに棚 橋ら7 )は,SS
41H 形 鋼フ ランジか ら切 削 加工 した板 状 試 験 片 を 用い て, ひずみ制 御 両 振り引 張・
圧 縮 繰 返し試 験 を行っ て,
文 献 6) と 同 様に,
塑 性ひずみ振 幅と 3サ イク ル目の エ ネルギー
消 費 量との間に指 数 関 係が成 立する こ とを示し てい る。
以 上の既往の研 究は鋼素材のエ ネル ギー
吸収 能 力に着 目 した もの で あっ て,
高 張 力 鋼 を含む種々の構造用鋼素 材お よ び その突合 せ 溶 接接 合部のエネル ギー
吸 収能 力に つ い て 明らか に し た研 究は非 常に少な く, 藤 本ら 8 }に よ一
94
一
る欠 陥を含む柱は り溶 接接合 部のエ ネル ギ
ー
吸 収 能 力に 閧す る実験的研究や立 川 ら9}に よ るHT
80鋼溶接 接合部 の実 験 結 果が報 告さ れてい る程 度であ る。 本研究では, 各種構造 用鋼素材と突 合せ溶接接 合部の 履歴 吸 収エ ネルギー
量な らびに ヒ ス テリ シス ルー
プ形状 の特徴を明ら か にする た め の基 礎 的 研 究と して,
先に発 表し た突 合せ溶 接 接 合 部の低 サ イクル疲 労試験結果10〕・
11) か ら得ら れ たデー
タに基づい て,
その特性につ いて考察 す る。繰返 し時の鋼素材や接 合 部のエ ネルギ
ー
吸収 能 力の特 徴 を,
その静 的 載 荷 時における力 学 的 性 質 (降伏点,
降 伏ひずみ, 絞り, ひずみ硬 化 開始点ひず み,
引張 強 さ,
伸 び等)との関 係におい て論じた研 究は非常に少な く, 文 献4)で示さ れたように,
静引張試験 時に お け る特 定 の応 力と塑性仕 事量 と を用い て,
総 塑 性仕 事と鞣
返し時 の特 定の応 力との 関係を求め た もの が知 られ る程 度で あ る。一
方,
繰返 し時のエ ネル ギー
吸 収 能 力は,
静 的 載 荷 時 を 初 載 荷 時 と し た 場合,
その ビス テ リシ ス ルー
プ形 状 と も密接に関連づ け られ る か ら, 文 献6),
7)に示 さ れ る よ う に ヒス テ リ シス ルー
プ形 状の定 式 化 (繰 返し時の 応 カー
ひずみ関係の構 成 則の定 式 化 )を初載 荷時か ら精 度よ く行うこと が で きれば, 即座に計 算す ること がで き る。 し か し,
本研究では定 常 時における各 種 鋼 素 材 突 合 せ溶接接合 部のエ ネルギー
吸収 能 力の特 徴につ い て明らに
かにす ること を 目的とし て いる た め, 静 的 載 荷 時に観 察 さ れ る力 学 的 性 質 との対 応につ い て は特に詳し く ふ れ ず,
今 後の研 究 課 題と し た い。
§2 実 験の概 要 本 研 究で用い た試 験 体お よ び実験 方 法, 結 果に対す る 詳 細な記述は,
すで に文献 10 ),
ll)で示 し た通りで あ る の で,
こ こで は 簡 単に 述べ る こ と にする。
(1
) 各種 構造 用鋼 素 材と その突 合せ溶 接 接 合 部の実 験SS
41か らHT
80
鋼に至る 5種 類の鋼 素 材と,
表一
1 に示す溶 接方法を用いて溶 接 接 合さ れ た鋼 板 を 用い て,
図一 1に示す よ う な平行 棒 状に切 削 加 工さ れ た材 料 試 験 片の材 軸 方 向に正負の繰 返 し引 張・
圧 縮 力 を加え て実 験 を行っ た。 溶接接 合部試験体について は, 溶 接 金 属 部 分 と熱 影 響部 (た だ し,HT
70溶 接 接 合 部 試 験 片では そ の溶 接 方 法,
開 先 形 状か ら溶 接 金属部の み〉の繰返 し荷 重 下で の力学 的 特 性 を把 握する ために,
試 験 片平行 部 中 央に当 該 個 所が一
致する よ うに切削 加工 した。
繰返 し実 験は試 験 片の平 行 部 分の ひずみ量 (差 動 トラン ス の変 位 量に基づ く.
換 算 値 )を制 御 する形 式で行っ た。
(2) 理 想化さ れ た柱は り溶 接 接 合 部の実 験 鋼 構 造 骨 組の柱は り溶 接 接 合 部 を念 頭におき,
特にH
形 鋼 柱は り か ら な る柱 貫 通 方 式の接 合 部 を対 象としたモ デル に よ る繰 返し載 荷 実 験を行っ た。
試 験 体は, ダイア フ ラムー
柱フ ラ ンジー
は りフランジか ら なる接 合 部の一
部 を抽 出 した形 状 とし,
鋼 板の力 学 的 異 方 性とラ メアテア 感受
性が問 題とな る柱フ ラ ン ジ板 厚 方 向部 分を
含む こと によっ て,
接 合 部のエ ネル ギー
吸 収 能 力が鋼 素 材 圧 延 方 向部のそ れと比 較し てどの程 度 変 化す る か を明ら かにす る ために実 験を行っ た。
試 験 体 形 状は 図一
2に示 す よ う に,
平 板 形,
十 字 形の 2種 類で あ る。
試 験体の材質は 2R 1SR R門
N 窺寸
尸
o 剛 ,_ 、,_ 旨纂⊥
、, _ 1,.
.
一 (mm } 図一
1 鋼 素 材お よ び突 合せ溶 接 試 験 体 O 塁 脈 1D9ド
コ
6R h 黔 s :… ::s 駒 Iso 緇 5] 表一
1 溶 接 方 法およ び条 件 (SS 41−
HT se) co 創8 認 皿』 亅」o 鄲,
co置
oム88HIR ▲RC1
.
8 RG図D 榔 騨.
”IG 賢.
事
▲r【89 嘔 )← co1 {20励 85疊18 圏50唱 8圏噂尠◎ 即 0 囲 o 四780 冒1田 ■ 鼠跖瑚 い} 鴨叮A68 〔▼) 鬯.
‘o /h ) 7 胴 o¢ ) ▼ α 8皿5冒
168 膿「冒
15 650 38 1.
7一
▼ “ 呂一
1駄 膩「−
36凸 650 36 1、
7一
罵88巳 圏7−
38 350 400.
巳 ▼脚曽
70嶝一
370 37 18 100 口8曽
70一
翼7−
38 700 3518・
31 Loo 圏5日_
80−
320 38 12 135P
t
一
(a ) 平板形 試 験体 σ 曽 :⊃ 5R P鳶
、R 嵩9 c: 5e.
胴 肌P,
1賀館 瓩 幽.
幽
一
200 ℃螺
= ::= :二里
ゴ
登 縄●
●●
●
2Z 〔b) 十 字 形 試 験 図一
2 理 想 化 され た柱は り溶 接 接 合 部 試 験 体一
95
一
SS 41規 格品で あ り
,
溶 接 方 法 は炭 酸ガス ァー
ク半 自動 溶 接とノ ンガス アー
ク半 自動 溶 接法 を採 用し た。
載 荷は,
現 実の架 構の は り端 部に加 わ る繰返 し曲げ を等 価なフラ ンジ軸方向力に置換し た状 態 を想 定して,
試 験 体の長 軸 方 向に繰 返 し軸 方 向 力 を加える形 式と し た。
制 御 方 式は, 試験体 中央部に取り付け ら れ た1
対の差動トラン ス によ る変位制 御方式 とし た。
溶 接接合部試験体は,
平板 形 (A
type),
十 字 形 (B
type ),
十字形で柱一
定 軸 圧 を考 慮し たもの (Ctype
)の3
種類であ る。 §3
実験 結 果の整理 と考 察 エ ネル ギー
吸 収 量 を 求 め る 場 合に 対 象 と する繰 返 し数 は, 繰返 し反転 点 応 カー
回数関係の形 状か ら履 歴 曲 線 が 定 常 状 態に達す るの は破 断 回 数の約 20% である ことに 着 目し,
こ の時 点で の履 歴 曲 線に基づい て,
エ ネル ギー
吸 収 能 力 を 求める1°,・
m 。エ ネルギー
吸 収 量は,
ずラニ メー
ター
を用い て実 験結果の定 常 履 歴 曲線で囲ま れ る面積を 実測 す ることに よ り求め た。
鋼 素 材の エ ネルギー
吸 収 能 力の表現にあ た り, エ ネル ギー
吸 収 量は塑 性ひずみ振 幅の指数 式で近 似で き る とい う既 往の研究を考 慮して,
本 研 究で も塑性ひずみ振 幅と 1サ イク ルあた り のエ ネル ギー
吸 収量 との関 係につ い て 実 験 結 果を整理 する方 法を採る。
し か し,
塑 性ひずみ振 幅や履 歴 吸 収エ ネルギー
量を直接 的に用い れば,
鋼 材の 製 造 単 位や溶 接 方 法お よ び試 験 体の採 取 位 置 な どの違い に よっ て,
結 果に ばらつ き を生じ やすい ことを 考慮に入 れて,
無 次 元 化を行う 必要が ある。
履 歴 吸 収エ ネル ギー
量の無 次 元 化 手 法に つ い て,Popov らL2[は
,
Wide FlangeSection
か ら な る柱は り接 合 部の繰 返し実 験 結 果を整 理す る にあた り, 各 繰 返し 荷 重
一
変 形 関 係にお け る残 留 塑 性 変 位 (各 履 歴 曲 線に お け る荷重 0で の 変位幅 )を初 載 荷 時の塑 性 荷 重 Pp (材 端が全 塑 性モー
メ ン トに達 す る 時の 作 用 荷重)に対応 す る変 位Ap
で無 次 元 化 し たplasticity ratio πd
と半サ イ クル あた りのエ ネル ギー
吸 収 量W
を,
初 載 荷 時の弾 性 限エ ネル ギー
Pρ・
Ap/2で無 次 元 化し た 量 e を計 算し, 両 者の 関 係につ い て考 察 を行っ てい る。
本 実 験結果に 0層
eO 2 100 50 20 10 12 510 εわ’εv o aAsckETAL SS 41 囗 WELD 鼎
6
H.
AZ (a )0
舂0
2
100 50 20 100
百0
2
100 50 20 10 12 510 εp’εy ゆ トETN.
SM 50B。
w 臥D ME 趾 凸 HAZ (b> o 2HT 70 5 10 εP崎:
蠶
澱
(9JBNEPGED ec W.
)凸
WELDMETAし にo●Anc W } (d) 0
一
eO 2 100 50 20 10O
一
eO2
100 50 20 10 o 1 2SM 58Q 5 10 εP’ εy o aqsE 旧 ALロ
粗 DMErA し 4 Hム.
Z,
(c ) 1 2HT 805
10
ε9佗r o 巳廠 METAし o w匸LD 旧 Aし 凸 H
.
A,
z.
(e) 図一
3 エ ネルギー
吸収 量一
塑性ひずみ関係 (SS
41〜
HT 80)一
96
一
Popov
らの手 法 を適 用 し,
1サ イクルあ たり の履歴吸 収 エ ネル ギー
量 を,
初 載荷時の弾 性エ ネル ギー
量 σy’
εy/2
で無 次 元 化し て ?で表 現 する。 (1) 各 種 構 造 用 鋼 素 材と その突 合せ溶 接 接 合 部 塑 性ひずみ振 幅 εp を 各 試 験体の初 載荷 時にお け る降 伏ひずみ (又 は0.
2%オ フ セ ッ ト ひずみ}Ey で無 次元 化 する と ともに,
初 載 荷 時に おける弾 性 限エネル ギー
を 降 伏ひずみ εy と対 応す る降 伏 応 力 度 ay とを用い て σジ ε。/2
で表 現 し,
定 常 時に おけ る 1サ イクル 当りのエ ネ ルギー
吸 収量W
を初 載 荷 時の弾 性 限エ ネルギー
で無 次 元化・,
・一叫
嚥 と・俵 す・
上 記の手 法で整 理され た各 鋼 種の素 材と その突合せ溶 接 接 合 部 分の実 験 結 果 を,
無 次 元 化 塑 性ひずみ振 幅 εp /Ey を横 軸に, 1サ イク ル当りの無次元化エ ネル ギー
吸 収 量百 を縦 軸に した両 対 数グ ラフ上にプロ ッ トす る と, 図一3
の よ うにな る。
いず れの鋼 種において も,
鋼 素 材 と その溶 接 接 合 部 分の実 験 値と を分 離せずに一
つ の近 似 式で表 現でき るもの と す る と,
各 鋼 種の実 験 値に最 小 自 乗 法を適用 し て,
?
一
・・
(
εPEy)
β…
:…・
…・
・
……・
……・
……・
……・
(1) の係 数α, 指数βを求め る と表一2
の よ うにな る。 こ の 結 果か ろ,
定 常 時の 1サイクルあ たり の無 次元化エ ネル ギー
吸収 量は素 材と その突 合せ溶接接 合 部の間で大 き な 差は ない もの と す る と, いずれも各 鋼 種ご と に無 次 元 化 塑性ひずみ振幅の 指数式で表現できる こと が わか る。
(2
)理 想化さ れ た柱はり溶 接 接 合 部柱フランジ
板
厚方向部を含む溶 接 接 合 部の繰 返し実 験 結果 を整理 す る 場合に も,
(1 )と同 様に しセ
無 次 元 化 塑性ひずみ振幅と 1サ イ クル 当 りの無 次 元 化エ ネル ギー
吸 収 量との関 係 を 求め る。
た だ し, 無次元 化基 準量 と な る降 伏ひずみ epa と塑 性ひずみ振 幅 εpa は , 板 厚 方 向 部 お よ び溶 接 接 合 部を含む標 点 距 離50mm 間の変 位か ら 計 測さ れ た値を使 用し,
柱 軸圧 が 0の A,
Btype 試 験 体の降伏ひずみ ePtは初載荷 時に お け る柱フランジ板 厚 方 向 部のO.
2% オフセッ トひずみ Ey に対応 する荷 重を 読み取り, これに対 応す る変 位を荷 重一
変 形 曲 線から読 み取っ て Evo を決定す る。 ま た,
C
type試 験 体では柱一
定軸圧 が作用して いる か ら,
異 方 性を考慮 し た降 伏 条件 式に基づ い て異 方 性の主 軸 方 向の一
っ である板 厚 方 向の 表一
2 (2>式の係 数,
指 数 (SS 41〜
HT 80) α β SS弓工 5.
711.
24 SM50B5.
ユ01.
20 SM58Q5.
301 ユ9 HT705.
621.
18 HT805.
631.
19 降 伏 応 力 度を計 算し た 後に,
初 載 荷 時の荷 重一
変 形 曲 線 か ら直接 読み取っ た値を修 正し て降伏ひずみ Ey。を計 算 する11) 。 i) 鋼 素 材およ びA ,B
type試験 体 図一
4は,
本 実 験で用い られ た鋼 素 材と,A
お よ びB
type 試 験 体の実 験 結 果 をプロ ッ トし たもの を示 して い る。
本 実験で使 用さ れた溶 接 方 法・
条 件の違い が,
結果 に大き な影 響をもた らさないこ と が明らかで あ るの で, 鋼 素材とA ,Btype
の実 験 結 果につ い てそ れ ぞれ (1 ) 式の近似式が成立する もの とし て最 小 自乗 法 を適用 する と,
α,
βは表一
3のよ うにな る。ii
)Ctype
試 験 体 図一
5に は,
各 設 定 柱 軸圧比 (図中の’
n で示す)に対 δ’
200 100 50 20 10 壱 200 100 50 20 10 12 510 εpo’Ey。
BASE METAL (a ).
12510
εpo’Eyo o−.
−
ATYP 匚 b−.
・
・
BTYPE (b) 図一
4 エ ネルギー
吸 収量一
塑 性ひずみ関 係 〔SS 41鋼 素 材,
A,
B type)●
表一
3 〔1)式の係 数,
指 数 (SS 41鋼素材,
』
A〜
C type) α β BASE M.
A7B 七ype C type、
6。
095.
65,
5,
82 工.
221,
20L21さ 00 2 100 50 20 10 12 510 εP
卩
’匚y。 C−
TYPE o一
冂
≒a2 ムー
nta4 0−
n≒a5 70 め5
α 2、
O 】.
0 al ( 50 2.
O 図一
5 エ ネルギー
吸 収 量一
塑 性 ひずみ 関 係 (Ctype> 1.
0 する接 合 部のエ ネルギー
吸収 量と塑 性ひずみ振 幅の無 次 元 化量 が示さ れて い る。 同 図から,
軸 圧 比の違い に か か わ らず,
エ ネルギー
吸収 量 と 塑性ひずみ振 幅の無 次元 化 量との 関 係は両対 数 軸 上で ほ ぼ同一
直線一
ヒに あ る も の と見う け られ る。
し たがっ て,
柱軸圧 によ る影 響 を無 視し,
実 験 値 を最 小 自乗 近 似して (1 )式の α, βを 求め る と,
表一3
の よ うにな る。
定 常 時にお け る各 鋼 素 材 とその溶接 接 合 部の エ ネルギー
吸 収 量と対応す る塑性ひずみ振 幅の 各 無 次 元 量の 関 係を,
(1
)式の近 似 式で表 現 で きる もの とする と,
指 数はユ.
19〜
1、
24,
係 数は 5.
10−
6.
09の範 囲で得られ た。
特に (1) 式で与え ら れ る近似式の指数は鋼 種の違い にほ と ん ど影 響さ れず,
ほぼ一
定の値と なっ て いる こ と が わ か る。
既往の研 究で は,
文 献 6),
7) に お け るSS
41鋼 素 材に対 してそ れ ぞれ 1.
23,1.
18
とい う近 似 値が与え ら れ,
ま た,
文 献5) の WELTEN 60鋼で は Ll5 とい う結果 が 得 られ て い る。 本 研 究 結 果と 既往の研 究 結 果と を 総 合 する と (1
)式の指数の第一
近 似は L2 に 非常に近い こ と が わ か る。
§
4
定 常 時の繰 返 し応カー
ひずみ関 係 定 常 時にお け る反転点応 力と対 応す る ひずみ 振 幅で決 定さ れ る曲 線は繰返 し応 カー
ひずみ曲 線 (あ るい は skeleton 曲 線 )と呼ばれ, 履歴 ー.
SS41
0 BAsEMETAL o WELD 庵 仏 し
ム
H,
△.
Z 恥1 σ,・
Q89(鉢 ノε,) °22凸
9畠
o 3 10 2.
O5.
0 10.
0 20.
0 50.
O (a) 鉤εy レSM
50B
o 日AsE ト罰EいL o WEしDM ∈Tムし 畠 H.
A.
Z α1 吶・
。84
(鉢1・,ヂ
17ム
o口
1.
0ZO 50 1QO 20.
0 50.
0 εP1εy ai ( 5.
0 2.
0 1.
0 al (5、
0
2.
0 1.
0 (b) 5M 58Q。
BASし MErAL o WELD 圃:1ALム
H,
A,
z 馳 ノ防・
08駁・・た,f15
11
1
.
0 20501QO
2α0
5QO
εφ1Ey (c) i HT70 0 BASE
METAL
目
WELDMErAL lsUBMERGED ARCW
,
,ム
WELDEDMETAL (CO置W
.
} 馳1 ・,・
Q91( ε・1 ・,ヂ
1z 190 al (み 50 2
.
0 1.
0
1.
0 2.
050 100 200 50.
0 (d> EPIEy HT80 0 BA5匚ME仏 し o WELDME 仏 L
ム
H.
ハ.
Z 鴨・
09αら’ε,冊
1° 岬 も 働1
o 曲線形状やエ ネル ギー
吸収 特 性な ど と関連づけて考 察さ れ る 場合が多い。
9
こで は, 本 実 験 結果にお け る各 種の 鋼 材の繰 返し応 カー
ひずみ関係の特 徴につ い て述べる。
(1) 各 種 構 造 用 鋼素 材と その突 合 せ溶接 接 合 部 無次元化反転 点 応 力 (正 負の 反転 点 応 力の平 均 値 σ。
を 降 伏 応 力 度 ay で除 し て無 次 元 化し たもの 〉と無 次 元 化 塑 性ひずみ振 幅の実 験 結 果 を 両 対 数グ ラフ上にプロ ッ ト した もの が図一
6である。
鋼 種によっ て素 材と溶 接 接 1.
0 2.
05.
0 10.
0 20,
0 500 (el 図一
一
一
一
6 反 転点 応カー
塑 性 ひずみ関係 (SS 41〜
HT 80) b1Ev 合 部の実験 点で多少の ば らつ き が 見 ら れ る が,
いずれ も 指 数近 似式で表現で き る ものと す る と,
次式の指 数,
係 数は表一
4のよ うに な る。
篝
一
・(
εP εy)
‘……・
……・
……・
………・
…幽
・
…・
(・) 係 数 γは,
鋼種の違い にか か わ らずほ ぼ一
定の値 と なっ て い る が,
指数 ζは 明 ら か に鋼種の引張強さ の大き さ に応 じて減少する傾 向に ある。
各 鋼 種の引 張 強さσu と一
98
一
表
一
4 (2〕式の係 数,
指 数 (SS41〜
HT 80> Y ζ SS410.
89 0,
22 SM50B0.
84 0.
17 SN58Q0.
85 0.
15 HT700.
91 0.
12 HT800.
90 0.
10 、、9,藷
100
.
0
500
20
.
0
\
、 σu;16
.
7
ち一
〇.
700
.
1
0
.
2
.
0
.
5
ろ
図一
ア ζ一
σ u関係 (SS41・
−
HTSO ) 指 数 ζを 図一
7の よ うに片 対 数グ ラフ上に プロ ッ トする と, 指 数 ζは引 張 強さ の 関 数とし て表せ る こと が わ か るt「) 。 この ことは,
繰 返し応 カー
ひずみ曲線の形 状は静 的試 験に お け る降 伏 点や降伏ひずみ に の み依 存する の で は な く,
引 張 強さ等の静 的 試 験 結 果か ら求め られ る他の力 学 的性 質の影 響を受 けるもの と推 察さ れ る。 し た がっ て,
繰 返し応 カー
ひずみ曲 線の形 状を鋼 種の違い に か かわ ら ず一
意 的に表 現 するた めに は, 静 的 引張 試 験 時における 力学 的性 質の各 因子に関する詳 細な検 討 を行 う必 要が あ るもの と考え ら れ る。
し か し,
こ の こ と は本 研 究の範 囲 内で は困 難である た め, こ こで は慣 用 的な無 次 元 化 表 示 による表 現 式と し,
その指 数 部の みが鋼 種の引 張 強さ に 依 存 する傾向が ある点を 述べ る に止 め る。
・
(2) 理 想 化された柱は り溶 接 接 合 部 平 板 形および十 字 形 試 験 体の実 験 結 果に対し て も,
同 様に無 次 元 化 反 転 点 応 力と無 次 元 化 塑 性ひずみ振 幅を両 対 数グ ラフ上に プロ ッ トす る が,
板 厚 方 向 部 を含むA,
Btype
試験体と 圧延方 向部 試 験 体との違い を見る た め に,
図一8
に示す よ うに分けてプロ ッ ト し,
その近 似 式 を求め る と次 式の よ うにな る。 [鋼 素栩詈
一 ・・
97・
(
εP εy)
°”9…
・…・
・
…
(・) 注 ) 定 常 時の繰 返 し応 カー
ひずみ曲 線の近 似 を行 う 場 合,
静 的載 荷 時の降 伏 点と降 伏ひずみ (あるい はこれ らに対応す る特 定の値 }のみで無 次元 化す る手 法は数 多く行わ れて い て, タく知ら れ た Rambef9.
Osgood形の数 式で近 似で き るこ と が指摘さ れて いる。
し か し,
本研究で行っ た軟鋼か ら高 張 力 鋼に至る各 鋼 種に対す る繰 返し応 カー
塑 性ひず み 曲 線の指 数 近 似 値を観 察すると,
明らかに鋼種の強 度が増 大す る の に伴いその指数 が低 下す る傾 向が観 察さ れ る。
σ ajσy2
ρL5
1.
00、
7 1.
oOa10y201
.
5 1.
0
O.
7 1.
0
2.
0
5.
0
(a ) 10.
o20
・
。εP・’εy
・』
A & BTYPE STEADY STATE o一
覘2.
0
〔b) 5.
0 10・
° εP・iεil
・ 図一
8 反転 点 応 カー
塑 性ひずみ関係 (SS 41鋼素材,
A,
B type )[・
・
B ・y・・]舞
一
・・
87・
(
舞
)
°’
IT・
・
……一
(・) 圧延 方 向部 鋼素材試 験体の実験 値か ら求め ら れ た 近似 式 (3 )は,
前 項 〔1
)のSS
41 鋼 素 材 と 突 合せ溶 接 接 合 部の試 験 体の実 験 結果に比 較 的 近い が,
板 厚 方 向 部 を含むA
,Btype
試 験 体の結 果 ((4)式 )は,
その指 数お よ び係 数が前 者と較べて低 下し てい て,
鋼 材の異 方 性や溶 接 方 法・
条 件などの違いが,
定 常 時に お ける繰 返 し応 カー
ひずみ曲 線 形 状に影 響 を与え るの で はないかと 推 察さ れ る。
.
§5
エ ネルギー
吸 収 能 力に基づく履歴曲線 形 状の特 徴 §3
で は定常時に お け る履 歴 吸 収エ ネルギー
量の定 量 化 表現を行い, 特に (1)式で近 似する場 合の指 数は鋼 種の違い や鋼 材の異 方性な らびに柱 軸圧の有 無に特に大 きな影 響 を受 けな い こ と を述べ た。 し か し な が ら,
§4 図一
9 W と△IVの定 義で明らか な よ うに繰 返し応 カ
ー
ひずみ曲線は鋼 種の違い に よっ て顕 著に異な る か ら, 無 次 元 化履歴吸収エ ネル ギー
量がほぼ同 程 度であっ て もその履 歴 曲 線 形 状が異な る こ とが予 想さ れ る。
こ こ で は そ の特性を調べ るた めに 次の定 義に基づ くエ ネルギー
比 ψ を計 算する。
すな わ ち,
繰 返し応 カー
ひずみ 曲線 と 除 荷 曲 線 (本 実 験 結 果では直 線で近 似で きる)お よ び横 軸 (ひずみ軸) とで 囲まれ た面 積をW
(図一9
参 照 )と し,
履 歴 曲 線 の正ま た は負の反転 点を原 点と す る 図一9
の斜 線で示さ れ た面 積 を△W と しエ ネル ギー
比 ψ を,
AW・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
一・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
…
一
・
・
・
・
…
(5
) ψ=
と し て定 義す る。
曜 はw
一
广
・Cd
・.)・
・
……・
・
……t・
………・
・
・
・
……
(・) と し,
(2 )式を (6 )式に代入してi
−!
!
(一
・・
(9
. 、)獻
一…・
……一
・
…
(・)百σ・ε・ と し て求め るこ と がで き る。 ま た
,AW
は 〔1) 式を 用いて,
AW
一
亙+ 2σ・ε・ 12
1 百 a・Ey2
a・εy・
「
詈
・
(
葺
)
f’ +4
γ(
舞
)
t’1・
一 …一
(・) と して計算で き る。
し た がっ てエ ネルギー
比 ψ は,
・
一
(1
+ζ)・
i
・+肴
・
(
EpEy)
「
・
…・
…・
・
…・
・
(・) とし て与えられる。
(9 )式
の指 数,
係 数に各鋼 種に対 す る実 験 結 果か ら計 算さ れ た近 似 値を代 入すると, (各 種 鋼 素 材と その突 合せ溶 接 接 合 部 )SS・41
・
・
…一
ψ一
・・
44+1・
95・
(
εPEy)
…・
M
・・B ・
・
…
ψ一
・・
3・+1・
78・
(
Eρ Ey)
… ・M
・89・
・
…
・=
:
・・
3・+1・
79・
(
舞)
°’
°4 HT ・・一 …・
ψ一
・24 +1・
72・
(
ερ Ey)
… HT ……一
ψ一
・… +・72・
(
εPEy)
………
(10) (理想化 された柱は り溶 接 接 合部 )SS
41鋼 素 材ψ
一
2・
38
・1・
87・
(
εPt εyO)
°’
°3溶 接 駘 部 ψ
=
=
・34
+1・
9
・・
(
ε凶 εyO)
…Jenningsi2
]は定 常 時の履 歴 曲 線を ,・
skeleton 曲線 (ま た は繰 返し応 カー
ひずみ曲 線,
繰 返し荷 重一
変形曲線 )を2
倍に拡 大 し た近 似 式で表 現する, い わ ゆ るMassing
一
100
一
type の数 式 を提 案 してい る。
このこと は,
(10)式で示 さ れ るエ ネルギー
比 ψが 4に一
致 す ることを 示して い る。
し か し花 井, 黒羽ら 13 〕は 軟 鋼の 定ひずみ振 幅繰 返し 実験 結 果か ら,
Jhansale
とTopper
」4) は定常,
非 定 常 履 歴曲線 形 状の考 察か ら,
履歴 曲線は Massing type で近 似 し難い こ と を報 告 し て い る。
本研究で実験に供さ れ たすべ て の鋼 種に対して も
,
(10 )式で明らか な よ うに,
無 次 元 化 塑 性ひずみ 振 幅 が 1.
0前 後で はそのエ ネルギー
比 が 4に近い けれ ども,
大 ひずみ振 幅下の繰返 しで は そのエネル ギー
比が ひずみ振 幅 (塑 性ひずみ振 幅 )の大き さに依存す る傾 向がある。
こ の傾 向は特に高 張 力 鋼にな る程 顕 著に な る ことが わ か る。
ただし, 本実験結果の範 囲 内で は,SS
41鋼やSM
50B 鋼の定 常 時の 履歴曲 線 形状は,
エ ネル ギー
比 ψの 塑 性ひずみ振 幅に対す る依 存 度が低い ことか ら, その第一
近 似と し て繰 返し応 カー
ひずみ曲 線 形 状に依存す る も の と考えて も よい ものと思わ れ る。
ま た・
轍 元 化工 初 ギー
吸 収 範 と w /毒
晒 と の 比 で 表 され るSpecific
Damping
Capacity
gbclfi}(
ew)
も(・)式右 辺 第 ・項の み で表され る か ら,壱
贓 各 鋼 種にお け る ψの特 徴は 上に述べ た傾 向 を有する こ と が わか る。 §6
結 論 構 造 用 各 種 鋼 素 材とそ の突 合せ溶 接 接 合 部 試 験 体お よ び板 厚方向を含む理 想 化さ れ た柱は り溶 接 接 合 部モ デル の試 験 体を用い た繰 返し実 験 結 果か ら,
そ の定 常 時に お けるエ ネル ギー
吸 収 能 力 と繰 返し応 カー
ひずみ曲線形状 なら びに履 歴 曲 線 形 状の特 徴につい て考 察を行っ た。
本 研 究の結 論とし て,
(1 )定 常 時における 1サ イク ルあた りの履 歴 吸 収エ ネル ギー
量 を その 初載 荷 時 弾 性 限エ ネルギー
で除し た無 次元 化 量 は, いずれの鋼 種におい ても 対応す る 無 次 元化 塑 性ひずみ量の指 数 式で表現 で き る も の と す る と,
そ の 指 数 近 似 式は鋼 種によ る影 響 を大き く受け ない。
(2) 定 常 時の繰 返 し応 カー
ひずみ 曲 線は,Ramberg
Osgood
typeの指 数 式で近 似で き るが , その指 数は鋼種 の引 張 強 度が大 きく な るにつ れ て低 下す る傾 向が あ り,
引 張 強 度の関 数とし て表現でき る。
(3
)上 述の結論か ら, 定常 時の履歴曲線形状は鋼種 の違い に応 じて異な るこ とが 予 想され るか ら,
履歴 曲線 の正 ま た は負の反転点 を原点 と す る応 カー
塑 性ひず み曲 線 下 部の面 積と繰返 し応カー
塑性ひずみ曲線下部の面積 との比 を求 め, その特 徴 を調べ た。
得られた近 似 式か ら,
SS41
鋼お よ びSM50B
鋼 並びに他 鋼 種で設定歪振 幅 が比 較 的 小 さい場 合に は,
そのエ ネルギー
比は塑 性ひずみ振幅に依 存す る割 合が低く, 履 歴 曲線は繰 返 し応 カ
ー
ひずみ曲線 形 状に依 存すると考え てよいが,
高 張 力 鋼で は 設定ひずみ振 幅が大き く なる につ れ て,
そ のエ ネル ギー
比 が設 定ひずみ振 幅に大き く依存す る傾 向に あるこ と を示し た。
本 研 究で行わ れ た 各 鋼種の定 常 時に お けるエ ネル ギー
吸 収 能 力や繰返 し応 カー
ひずみ曲 線 形 状 を定 量 的に表 現 す る手法は,
既 往の慣用 的な方 法 を踏 襲し たもの であり, 本文 §4(1)項 注).
で述べ た よ うに,
鋼 材や突 合せ溶 接 接 合 部の履 歴 載 荷 時の挙 動は,
それ ら が本 来 有 し て い る力 学 的 性 質 と 密 接に関 連づけ られ るもの と推 察さ れ る。
したが っ て,
上 述の慣 用 的な表 現で は影 響を及ぼす 因子の ごく一
部 を考 慮し た に過ぎず,
エ ネルギー
吸収 能’
力や履 歴 応 カー
ひずみ曲 線を統一
的に表現す る た め に は,
静 的 載荷試験で得られ る よ う な その他の力学的性 質 などの及 ぼ す影 響 を詳 細に検 討 する必 要が あ り,
この点 を今 後の研 究 課 題と した い。 参考文 献 1) 棚 橋 諒 ;材 料の靭 性による構 造 物の耐 震 的 終 極 強 度の 高め.
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15−
27SYNOPSIS
UDC:624.02:624. 042. 7 :620. 1 :
ENERGY691.
7 :624. 078. 014.5 :624.078. 3
ABSORBHNG
CAPACITY
OF
BASE
METALS
AND
THE
BUTT
WELDED
JOINTS
byDr.KiYOSHI KANETA, Prof.of KyotoUniv.,and Dr, ISAO KOHZU, AssociateProf.of KyotoUniv.,Members
of A.I,
J,
The energy absorbing capacity
is
one of the most significantfactors
to assess aseismic safety of the member and the subassemblage inthe steel structure.This
paperdeals
with theene[gy absorbing capacities of severalgrade
base
metals and theirbutt
weldedjoints
at thesteady state$ which aredefined
as thestateswhen thenum-beT
of cycles arriye at about20
%
cycles tofailure,
'
From the quantitativeexpression of energy absorbing capacity per cycle,
it
has
made clear that the energyabsorbing capacity in the nondimensional
form
does
notindicate
distinctive
differences
among the structuTal steels and theirbutt
weldedjoints,
although the cyclic stress-strain curves are affectedby
the tensile strength ofindividualbasemetals.
Also, thecharacteristics of the
hysteresis
loops
are examinedin
comparison with the cyclic stress-strain curvesfrom
the viewpoint of the energy absoibing capacity.It
has
been
concLuded that thehysteresis
leop
shapes of thehigh
strength steels and theirbutt
weldedjeints
aredifficult
to estimatedirectly
from
the cyclic stress-straincurves.