1.はじめに 日本国内では,若年層を中心に,スマートフォン(以下,スマホ)の普及率は上昇を続け ている。2017 年には,20 代のスマホ個人保有率は 94.5%,30 代で 91.7%,40 代でも 85.5% となり(総務省,2018),この年代においては,スマホは 1 人 1 台必ず持つものとなったと いえる。それに伴い,スマートフォンでゲームアプリを利用する人(以下,スマホゲームユ ーザー)も増加しており,2017 年における,スマホゲームユーザーの週間プレイ人数は全 体で 2803 万人に達し,前年比 5.4% の増加であったという(ファミ通 .com,2018)。そのう ち,男性は 1443 万人,女性は 1360 万人で,男女比もほぼ同率,年代別に見ると 30 代・40 代が横並びで多いという。このように,かつては,子ども,特に男子の遊びと考えられてい た電子ゲームが,スマホの普及とともに,男女問わず若い大人の趣味へと変化しているとい える。 また,スマホゲームは,現在,フリーミアムモデルが主流となりつつある。フリーミアム とは,「Free」と「Premium」をかけあわせた造語であり,基本サービスを無料で提供する ことで顧客を広く集め,付加価値をつけたサービスを有料で提供して一部のユーザーに移行 してもらうビジネスモデルである(新井,2013)。App Annie と IDC が 2015 年に公開した 「アプリ広告と収益化の最新動向レポート(2013~2018 年)」では,ゲームに限定したもの ではないが,モバイルアプリのうち,「フリーミアム」の売り上げが 2014 年に 70% 以上伸 びた一方,売り切り型の有料アプリは 19% 減,「ペイドミアム」(ダウンロード有料,アプ リ内課金あり)は 24% 減となったことが示されている。また,カドカワ株式会社の調査に よると,スマホゲームユーザー全体の課金に関する調査では,1 年間で何らかのスマホゲー ムに課金したユーザーの割合は 9%,さらにその課金額の内訳としては,1 週間で「1 円~ 1,000 円」と回答したユーザーが約 7 割であったという(ファミ通 .com,2017)。 このように,インターネット機能を備えた電子ゲームであるスマホゲームが幅広く大人の 中で普及し,さらに無料で楽しむ人が主流となる中,これまで青少年への影響を中心として 論じられてきた電子ゲームやインターネットゲームをめぐる諸課題についても,より幅広い
スマートフォンゲームプレイヤーのゲーム内および
現実世界での対人行動と課金との関連について
山 下 玲 子
議論が求められる段階に入っている。本稿では,20 代~40 代を対象とした調査の結果より, 成人のスマホゲームユーザーの実態や,ゲーム内における対人行動,現実世界における性格 特性の違いについて,一事例としてデータを提供することを目的とする。その際,無料で楽 しめる環境がある中で,あえてゲームに課金をする人(課金者)と,課金をせずに楽しむ人 (非課金者)との違いに着目し,ゲームをする目的やゲーム内での対人行動が課金者と非課 金者とでどのように違うか,それらが現実世界での社交性や対人関係とどのように関連性し ているか,検討を行う。 2.スマホゲームをめぐる諸課題 2. 1 スマホゲームと対人関係 電子ゲームが対人関係に及ぼす影響については,主に青少年への影響を中心に,活発な議 論がなされてきた。いわゆるテレビゲームがゲームセンターだけでなく家庭でも利用できる ようになった 1980 年代には,「電子的友だち仮説(electronic friend hypothesis)」(Selnow, 1984)に代表されるように,テレビゲームへの接触が,現実の友達との遊びよりもテレビゲ ームでの遊びを優先することにつながり,それが社会的不適応を導くことを懸念した仮説が 提唱された。
その後に行われた欧米での調査からは,この仮説を支持するもの,支持しないもの,両方 の結果が得られてきた(eg. Lin & Lepper, 1987, McClure & Mears, 1986, Colwell, et al., 1995, Colwell & Payne, 2000, Lemmens et al., 2009)。
日本の調査結果に目を向けると,欧米と同様に,この仮説に対する支持・不支持は一貫し ていない。たとえば Colwell & Kato(2003)では,テレビゲームへの接触と対人関係より もゲームを優先させる傾向との間に正の相関がみられるが,テレビゲーム接触と友達の数と の関連はみられないという結果が報告されている。他の研究でも,社会性,引きこもり的傾 向に関しては,テレビゲームへの接触がそれらに影響を及ぼすという因果の方向は見られず, もともと社会性が低い青少年がテレビゲームに接触するという逆の因果の方向がパネル研究 により示唆されている(Sakamoto, 1994)。さらに,テレビゲームで遊ぶことがポジティブ な影響を及ぼしていることを示した調査もみられており,梅原ら(2002)では,中学生を対 象としたパネル調査で,テレビゲームで遊ぶことによりシャイネスが改善されたことを示し ている。また木村(2003)では,高校生の間でテレビゲームがコミュニケーションツールと して機能し,共感性を高めたり,社会的不安を軽減したりすることを示している。 上記の結果は,主にオフラインで行うテレビゲームを対象とした研究であるが,電子ゲー ムのポジティブな影響は,インターネットを通じてゲーム内で他のプレイヤーと交流を行う オンラインゲームでも見られている。たとえば,鈴木ら(2004)は,専門学校の男子学生を
対象にした縦断調査の結果,オンラインゲームで遊ぶことで 2 か月後の社会的スキルが高ま るという影響が見られたことを報告している。他方,平井・葛西(2004)によるインターネ ット調査では,オンラインゲームが与えるポジティブ,ネガティブな影響の双方の存在が明 らかにされており,ポジティブな影響は「交流」と「気分転換」で,オンラインゲーム上の ふれあいが対人関係の練習となると考えられる一方,オンラインゲーム上の「人間関係上の 束縛」により,現実世界でやることを「後回し」にした結果,「生活リズム」「学業」「仕事」 にネガティブな影響を与えるとしている。この悪影響には,「睡眠不足」や「食生活の乱れ」 といった身体的な影響だけでなく,「現実逃避」による「人間関係の悪化」や「現実感覚の 薄れ」といった精神的な影響も含まれる。さらに,藤・吉田(2009)による成人対象の研究 では,オンラインゲームでの対人関係の利用時間の長さと社会性とが負の相関を示す一方, 利用時間は社会性を抑制するだけではなく,オンラインゲーム上での親和的なコミュニケー ションを促進し,これを媒介する場合には社会性および攻撃性を促進することが示されてい る。特に,見知らぬ他者とのオンライン上での交流が脱束縛的交流につながり,現実社会で の社会性を促進し,攻撃性を抑制するという効果も見られている。 このように,電子ゲームの利用が,オフライン,オンラインも含め,現実世界の対人関係 や社会性におよぼす影響については,一貫した知見が得られていない。また,スマホゲーム に限れば,新規のメディアゆえに,研究の蓄積はまだ十分とはいえない。スマホゲームはオ ンラインゲームと同様に,インターネット接続を前提としたものがほとんどで,その携帯性 からパソコンを利用したオンラインゲーム以上に,日常的なコミュニケーションツールとし て機能することが予想される。他方,利用に関する時間,空間的な制約の小ささから,ゲー ムに没頭しやすい環境が常に準備されているとも考えられ,それゆえに,従来のテレビゲー ムやオンラインゲーム以上に社会生活に支障を来たすような利用がなされる可能性もある。 さらに,オンラインゲームやスマホゲームの場合,オフラインでの電子ゲームと異なり,ゲ ーム内でも他者とのコミュニケーションが存在し,そこでのコミュニケーションのあり方, さらにはそれと現実世界でのコミュニケーションとの相互作用の違いが,現実世界での対人 関係や社会性を左右しているとも考えられる。 2. 2 スマホゲームと課金の問題 日本におけるスマホゲーム市場の成長は著しいものがある。2017 年度の国内のスマホゲ ーム市場の規模は,前年度比 8.9% 増の 1 兆 290 億円と拡大していることが報告されるなど (矢野経済研究所,2019),堅調な成長ぶりがうかがえる。その成長を支えているのが,課金 システムである。 電子ゲームへの課金システムは,1990 年代後半にオンラインゲームの誕生により生み出 されたものであり,導入当初は「月額課金システム」が主流であった。売り切り型のパッケ
ージ型ゲームと異なり,オンラインゲームはゲームの開発費用だけでなく,ゲームを提供す るためのサーバの運用やサービス改善のためのコストが発生し続けるため,それをまかなう ために継続的な収入源が必要であった。そこで登場したのが,毎月定額で課金を行うことで サービスを受け続けられる「月額課金システム」である。しかし,「月額課金システム」は, ゲーム内で新サービスが提供されなくても定額を払い続ける必要があり,サービスの更新の 遅いゲームからはユーザーが離れることにつながった。それを防ぐために,新たなサービス やアイテムなどが提供されたときだけ,それを入手するために課金する「アイテム課金シス テム」が引き続いて導入された。その結果,オンラインゲームでは,「月額課金システム」 と「アイテム課金システム」が主流となっていった(浮谷,2015)。 その後,2000 年代に入り,日本のゲーム業界では続々と「アイテム課金システム」を導 入したソーシャルゲームが登場した。「アイテム課金システム」は,フリーミアムモデルを 基本としながら,ユーザーが利用しているうちに,有料のアイテムが自然と購入したくなる ように誘導される仕組みである。課金することで得られるメリットは,希少なアイテムの入 手からゲーム内でのレベルアップ,有料でしかプレイできないステージの解放,利用可能な ゲーム時間の延長からクリアに要するゲーム時間の短縮など,無料では決して得られないも のから,時間をかければ入手・達成できるものまで,さまざまなタイプのものが用意されて いる。 「アイテム課金システム」を導入したゲームの増加により,オンラインゲームへの課金は, 無料から始めたユーザーが気軽な気持ちで有料へと移行し,希少なアイテムや有利な条件を 求めるうちに,知らず知らずに高額課金をしてしまうという課金へのハードルの低さが問題 視されるようになった。オンラインゲームへの課金の方法は,直接現金で支払うのではなく, ゲーム内通貨をクレジットカードなどであらかじめ購入してから使用する仕組みとなってい るものがほとんどであり,スマホゲームの場合には,端末内の決済システムで簡単に課金が 可能である。したがって,この問題についても,その仕組みに無防備な未成年による支払能 力を超えた課金がクローズアップされがちである。しかし実際には,消費者庁がソーシャル ゲームに注意喚起を行った 2013 年に数百万円を超える高額課金でのトラブルの相談を寄せ ていたのは,いずれも 40 代男性であった(ケータイ Watch, 2013)というように,スマホ ゲームに課金をしている人たちの主流は,実は 20 代以上の成人である。成人の課金者は, 自身に安定した収入がある,もしくは自身の可処分所得をある程度理解したうえで,課金を しながらスマホゲームで遊ぶという選択を行っている人たちと考えられる。もちろん,先に も述べたように,近年実施されたソーシャルゲームの課金者の実態調査では,このような高 額課金者は少数であることが示されており,多くの課金者は,健全な範囲で課金をしながら ゲームを楽しんでいる。しかしながら,無料で遊ぶ選択肢が広がる中,自身の所得をあえて スマホゲームに配分しようと考える課金者と非課金者,さらに課金者の中でも高額課金者と
低額課金者とでは,スマホゲームに対するコミットメントやモチベーションが量・質ともに 異なっていることが予想される。その違いが,スマホゲーム内でのコミュニケーションや現 実世界における対人関係とも関連している可能性は十分にあると考えられる。さらに,新井 (2013)がソーシャルゲーム内でのコミュニケーションの目的と,課金の有無や課金額の多 寡との関連性を指摘しているが,コミュニケーションツールとしての機能がさらに強化され たスマホゲームにおいても同様の傾向がみられるのか,検討する価値があると思われる。 2. 3 リサーチクエスチョン 上記の問題意識から,本稿では,以下のリサーチクエスチョンを設定した。 RQ1:課金者の属性はどのような特徴があるか。 RQ2:課金者が課金する目的はどのようなものが多いか。また,課金する目的の違いにより, 課金額は異なるか。 RQ3:課金者と非課金者,課金額の違いによるゲーム内での対人行動や情報行動はどのよう に異なるか。 RQ4:課金者と非課金者とでは,現実世界で性格特性の違いが見られるか。 3.調査方法 3. 1 調査の概要 本調査は,株式会社マクロミルのモニターを用いて,インターネット上の調査サイトにて 実施した。日本国内の 20~49 歳の男女(学生を除く)のうち,調査対象日の 1 ヶ月以内に スマホゲームをプレイした人のうち,1 年以内に 10 円以上スマホゲームに課金した人 206 名,1 年以内にスマホゲームに課金をしなかった人 206 名を対象とした。回答者の性別の内 訳は,女性 260 名,男性 152 名であった。調査は,2019 年 1 月 30 日~31 日に実施した。 3. 2 調査項目 調査項目は,1 日あたりのスマホゲームでのプレイ時間,最近 1 年間でプレイしたスマホ ゲームの数,スマホゲームを一緒にする相手とその頻度(現実世界での友人,兄弟・姉妹, 親,親・兄弟・姉妹以外の親戚,オンライ上で友人になった人,オンライン上のまったく知 らない人,4 件法:「1. よく遊ぶ」~「4. まったく遊ばない」),スマホゲームに課金する目 的(6 項目:「1. よくする」~「4. まったくしない」),最近プレイしたスマホゲームの具体 的名称(3 つまで),スマホゲームをする際の対人行動や情報収集行動に関する設問 16 項目 (5 件法:「1. よくあてはまる」~「5. まったくあてはまらない」),スマホゲームに対するイ メージ 10 項目(5 件法:「1. よくあてはまる」~「5. まったくあてはまらない」),特性シャ
イネス尺度(相川,1991)16 項目(5 件法:「1. よくあてはまる」~「5. まったくあてはま らない」),賞賛獲得欲求(小島ら,2003)より抜粋した 7 項目(5 件法:「1. よくあてはま る」~「5. まったくあてはまらない」),ソーシャル・サポート尺度(岩佐ら,2007 を参考 に独自に作成)8 項目(4 件法 : 「1.「たくさんいる」~「4. まったくいない」),幸福感・適 応感に関する項目(伊藤ら,2003 および大久保,2005 を参考に独自に作成)20 項目(5 件 法:「1. よくあてはまる」~「5. まったくあてはまらない」),ゲーム依存尺度(Lemmens et al., 2009, 渋谷,2017 を参考)7 項目(5 件法:「1. とてもよくあった」~「5. まったくなか った」)であった。選択肢の都合上,全設問で,数値が小さいほど,よくあてはまる/頻度 が高くなっている。 なお,本稿では,上記の調査項目のうち,課金者の基本的属性,ゲーム内での行動パター ンと課金との関係,および現実世界における賞賛獲得欲求,特性シャイネスとゲーム内での 行動パターンとの関連を中心に報告する。 4.結果と考察 4. 1 スマホゲームの課金者の基本的な属性 まず,課金者と非課金者の性別の構成は表 1 の通りである。回答者数は女性が男性を上回 っており,スマホゲームが女性にも広く普及したことが伺えるが,課金者に占める割合は男 性が高かった。また,課金額を男女別にみると,女性は男性に比べ 1000 円未満の課金をす る人が多い一方,男性は女性に比べ 1 万円以上の課金をする人が多いことが示された(表 2)。このことから,男性は女性に比べ,高額課金をしながらスマホゲームをプレイする人が 多いことが示唆される。 表 1 性別による課金者の割合 課金者 非課金者 合計 男性 92 60 152 女性 114 146 260 合計 206 206 412
表 2 性別による課金額 男性 女性 合計 10~99 円 1 0 1 100~999 円 12 34 46 1000~2999 円 18 28 46 3000~9999 円 23 30 53 10000~29999 円 21 14 35 30000~49999 円 7 4 11 50000~99999 円 5 2 7 10 万円以上 5 2 7 合計 92 114 206 課金者の年齢構成を示したものが表 3 である。新井(2013)では,課金者の平均年齢は非 課金者の平均年齢より有意に若かったが,今回の調査では各年齢層で課金者の割合はほぼ同 じであった。また,課金者の課金額を年齢別に示したものが表 4 である。50000 円を超える 高額課金者は 30 代以上にしかいない一方,1000 円未満の課金者の比率は 20 代とほぼ変わ らなかった。 表 3 課金者の年齢構成 20 代 30 代 40 代 合計 課金者 43 83 80 206 非課金者 41 78 87 206 合計 84 161 167 412 表 4 年代別課金額 20 代 30 代 40 代 合計 10~99 円 0 1 0 1 100~999 円 9 23 14 46 1000~2999 円 13 15 18 46 3000~9999 円 10 20 23 53 10000~29999 円 9 10 16 35 30000~49999 円 2 6 3 11 50000~99999 円 0 4 3 7 10 万円以上 0 4 3 7 合計 43 83 80 206
4. 2 課金者と非課金者のゲームへの関与の違い 課金者と非課金者の 1 日あたりのスマホゲームプレイ時間と 1 年以内のプレイしたゲーム の個数は,表 5,6 の通りであった。一般に考えられるように,課金者の方が非課金者より もゲームプレイ時間が長い傾向があった。また,スマホゲームのプレイ個数についても,非 課金者は 40% 弱が 1 個のみ,65% 以上が 2 個以内しかプレイしていないのに対し,課金者 は 60% 以上が 3 個以上プレイしており,プレイ個数も課金者の方が多いことが示された。 表 5 課金の有無とスマホゲームプレイ時間 課金者 非課金者 合計 10 分未満 4 40 44 10 分以上 30 分未満 26 68 94 30 分以上 1 時間未満 54 51 105 1 時間以上 2 時間未満 70 30 100 2 時間以上 3 時間未満 30 11 41 3 時間以上 4 時間未満 11 4 15 4 時間以上 11 2 13 合計 206 206 412 表 6 課金の有無とスマホゲームのプレイ個数 課金者 非課金者 合計 1 個 33 77 110 2 個 45 60 105 3~5 個 80 54 134 6~10 個 29 11 40 11 個以上 19 4 23 合計 206 206 412 さらに,課金者と非課金者との間で,ゲーム依存尺度得点に差があるか,平均値の差の検 定を行ったところ,有意水準 0.1% で有意な差が見られた(課金者:m=26.33, n=206, 非課 金者:m=30.25, n=206, t=7.36, df=410, p<.001, d=.724)。課金者の方が非課金者よりも, ゲーム依存度が高いことが示された。ただし,課金者であっても,ゲーム依存尺度得点の平 均値は理論的平均値よりも依存度が低いことを示す得点であり,今回の調査対象者のゲーム に対する依存度は全体的にはあまり高くないことが示唆される。
4. 3 課金者の目的 課金者がどのような目的で課金をしているかを示したのが表 7 である。もっとも多くの人 が行っているのが「ゲームのアイテムを得るため」で,課金者全体の 4 分の 3 以上が比較的 行う(よくする,または,ややする)と答えている。その他の目的では,「新しいステージ を解放するため」に行うと答える人がやや多いものの,それ以外の目的で課金を比較的行う 人は 3 分の 1 程度にとどまっていた。今回の回答者は,ゲーム時間の短縮や延長,経験値な どゲームの進行に必要とされることよりも希少なアイテムを求めることがゲームの目的であ る人が多いことが示された。 表 7 課金者の課金目的 ゲーム アイテム アバターの カスタマイズ 経験値獲得 プレイ時間 短縮 プレイ時間 延長 新ステージ 解放 よくする+ややする 158 70 84 67 72 94 あまりしない+まったくしない 48 136 122 139 134 112 さらに,課金額の分布から,課金者を「1000 円未満」「1000 円以上 3000 円未満」「3000 円 以上 1 万円未満」「1 万円以上」の 4 カテゴリーに分類した上で,課金目的と課金額カテゴ リーとの間でクロス集計を行った。その結果,「アバターをカスタマイズするため」と「経 験値を獲得するため」の 2 つの目的で有意な関連が見られた。アバターのカスタマイズでは, 1 年以内の課金額が 1000 円未満の人は,「よくする」が有意に少ない一方,「まったくしな い」が有意に多かった。「経験値を獲得するため」では,1 年以内に 10000 円以上課金した 人は,「よくする」が有意に多く,また「まったくしない」は 3000 円以上課金した人で有意 に少なかった。他方,1 年以内の課金額が 1000 円未満の人は,「まったくしない」が有意に 多く,「ややする」が有意に少なかった(表 8-1~2 参照)。いずれも,課金額の多い人のほ うが,当該の目的でよく課金をしているという結果であった。課金をするかしないかが課金 額の多寡で分かれる目的が,ゲームのプレイにおいて周辺的ともいえるアバターに対するも のや,よりプレイのレベルをあげるための経験値の獲得であることは,高額の課金がゲーム の中で他のプレイヤーから承認されたり,プレイヤーの中で高い地位を確立したいという欲 求を反映したものであることが示唆される。
表 8-1 アバターへの課金と課金額 1000 円未満 1000-3000 円未満 3000-10000 円未満 10000 円以上 合計 よくする 1 5 11 11 28 ややする 5 12 14 11 42 あまりしない 10 12 12 19 53 まったくしない 31 17 16 19 83 合計 47 46 53 60 206 χ(9)=18.995, p<.052 表 8-2 経験値獲得への課金と課金額 1000 円未満 1000-3000 円未満 3000-10000 円未満 10000 円以上 合計 よくする 4 3 10 15 32 ややする 2 15 16 19 52 あまりしない 12 9 16 12 49 まったくしない 29 19 11 14 73 合計 47 46 53 60 206 χ(9)=29.973, p<.0012 4. 4 課金者と非課金者,課金額別の対人行動・情報収集行動の違い 課金者と非課金者との間で,スマホゲームをプレイする際の対人行動や情報収集行動が異 なるか,平均値の比較を行った。まず,これらを測定する 16 項目に対し,因子分析(反復 主因子法,プロマックス回転)を実施した。固有値 1 以上で 3 因子が抽出されたが,第 1 因 子がゲーム内での社交性の高さと達成動機の高さの両方を含む大きな因子となったため,因 子数を 4 に指定し,4 因子を抽出した(表 9 参照)。第 1 因子は,「ほかのプレイヤーに自ら 積極的にフレンド申請をするほうである」「ほかのプレイヤーからフレンド申請されること が多いほうである」「スマホゲームの協力プレイ機能を好んで利用する」などの項目の因子 寄与率が高く,「ゲーム内社交性」と命名した(6 項目,α=.876)。第 2 因子は,「ゲームに 関して,ほかの人に負けたくない」「もっとゲームがうまくなりたいと思っている」「ゲーム 内において,自分のスキルをアピールしたい」などの項目の因子寄与率が高く,「ゲーム内 競争動機」と命名した(5 項目,α=.875)。第 3 因子は,「ほかのプレイヤーからのフレン ド申請は受け付けないほうである」「基本的に自分からフレンド申請はしないほうである」 「ゲーム内では,ほかの人との交流はしないほうである」の 3 項目から構成されており,「ゲ ーム内交流拒否」と命名した(α=.718)。第 4 因子は,「ゲームに関する情報は一人で収集 するほうである」「スマホゲームは一人プレイのほうが気楽でよい」の 2 項目から構成され ており,「1 人プレイ志向」と命名した(α=.414)。
表 9 ゲーム内の対人行動・情報収集行動に関する因子分析結果 F1 F2 F3 F4 共通性 F1 ゲーム内社交性 ほかのプレイヤーに自ら積極的にフレンド申請をするほうである .829 -.027 -.056 .036 .691 ほかのプレイヤーからフレンド申請されることが多いほうである .706 .062 .024 .165 .543 ほかのプレイヤーからフレンド申請されることはうれしい .670 .035 -.214 .346 .684 スマホゲームの協力プレイ機能を好んで利用する .615 .257 -.010 -.044 .685 同じゲームを利用している人と SNS 上などで情報共有・収集するほうである .523 .282 .036 -.056 .556 欲しいキャラやアイテムのためにゲームマネーをためている .335 .310 -.091 .262 .433 F2 ゲーム内競争動機 ゲームに関して,ほかの人に負けたくない -.123 .879 -.008 .072 .643 もっとゲームがうまくなりたいと思っている -.110 .805 -.161 .249 .636 ゲームの中でスコアやレベルを競っている相手がいる .113 .698 .101 -.137 .614 ゲーム内において,自分のスキルをアピールしたい .281 .590 .099 -.085 .645 協力プレイをする際,自分を目立たせようと頑張るほうである .435 .471 .181 -.068 .655 F3 ゲーム内交流拒否 ほかのプレイヤーからのフレンド申請は受け付けないほうである .127 .061 .814 -.144 .584 基本的に自分からフレンド申請はしないほうである -.220 .136 .615 .138 .554 ゲーム内では,ほかの人との交流はしないほうである .008 -.166 .560 .405 .585 F4 1 人プレイ志向 ゲームに関する情報は一人で収集するほうである .214 .067 .062 .591 .383 スマホゲームは一人プレイのほうが気楽でよい -.114 -.047 .411 .498 .560 これら 4 因子それぞれの平均得点を算出し,課金者と非課金者とで平均値の比較を行った。 「ゲーム内社交性」では,有意水準 0.1% で有意な差が見られ,課金者の方が非課金者より も,ゲーム内での社交性が高いことが示された(課金者:m=2.95, sd=0.94, 非課金者:m =3.98, sd=0.84, t(410)=11.83, p<.001, d=1.16)。「ゲーム内競争動機」でも,有意水準 0.1 % で有意な差が見られ,課金者の方が非課金者よりも,ゲーム内での競争動機が強いこと が示された(課金者:m=3.10, sd=1.04, 非課金者:m=3.98, sd=.840, t(410)=9.46, p<.001, d=.930)。「ゲーム内社交拒否」では,有意水準 1% で有意な差が見られ,非課金者の方が 課金者よりも,ゲーム内での社交を拒否することが示された(課金者:m=2.69, sd=.924, 非課金者:m=2.40, sd=1.16, t(410)=2.82, p<.005, d=.277)。「1 人プレイ志向」では,課金 者と非課金者の間で,有意な差は見られなかった(課金者:m=1.98, sd=.804, 非課金者: m=2.09, sd=.973, t(410)=1.24, n.s., d=.122)。 さらに,課金者の中で,課金額の違いにより,先の 4 因子得点が異なるか,分散分析を行 った。「ゲーム内社交性」では,有意水準 1% で有意な差が見られた(F(3,202)=6.04, p<.001)。多重比較の結果,最近 1 年の課金額が 1000 円未満と 3000 円以上 10000 円未満, 1000 円未満と 10000 円以上の人との間に有意水準 5% で差が見られ,いずれも課金額が高 い人の方が,ゲーム内社交性が高いことが示された。「ゲーム内競争動機」では,課金額に より有意な差は見られなかった(F(3,202)=1.17, n.s.)。「ゲーム内社交拒否」においても, 課金額により有意な差は見られなかった(F(3,202)=1.54, n.s.)。「1 人プレイ志向」も課金
額による有意な差は見られなかった(F(3,202)=1.57, n.s.)。各因子の課金額カテゴリーごと の因子得点は,表 10 の通りである〈表 10 参照〉。 表 10 課金額別のゲーム内での対人行動・情報行動 4 因子の平均値(標準誤差) 1000 円未満 1000-3000 円未満 3000-10000 円未満 10000 円以上 ゲーム内社交性 3.451(.140) 3.243(.142) 2.872(.132) 2.740(.124) ゲーム内競争動機 3.128(.154) 3.190(.156) 2.835(.145) 2.958(.136) ゲーム内交流拒否 2.628(.148) 2.924(.150) 2.792(.140) 3.033(.131) 1 人プレイ志向 2.156(.119) 1.906(.120) 2.094(.112) 2.244(.105) これらの結果から,課金者は,非課金者に比べ,ゲーム内で他者と積極的に交流を求めて いることが示唆される。他のプレイヤーとフレンドになり,他のプレイヤーと協力プレイを 好むことから,ゲーム内でゆるやかな仲間意識を持って行動している姿が見て取れる。また, ゲーム内での競争意識も高く,他のプレイヤーに負けたくない,ライバルがいる,といった ゲームでの勝ち負けに加え,ゲームのスキルをアピールしたいというように,他のプレイヤ ーからの賞賛獲得もゲームの目的となっているようである。課金目的に加え,ゲーム内での 行動からも,課金者がゲーム内で一定の地位を獲得することを目指しており,そのために課 金を行っているということが予想される。さらに,課金者の間での課金額の多寡による違い からも,高額課金者ほどゲーム内での社交性が高い傾向が示されており,課金者にとってゲ ームの世界がひとりで黙々とプレイする場だけでなく,他者と交流する場にもなっているこ とが示唆される。 他方,ゲーム内での他のプレイヤーとの交流を拒否しているのは,非課金者の方であった。 非課金者は,ゲームに費やす時間もプレイするゲームの個数も課金者に比べ少ないため,ゲ ーム内で過ごす時間や場が少ないといえる。そのため,ゲーム内で他者と交流するモチベー ションが低いことが予想される。また,日常生活においてゲームに対する優先順位が高くな いため,物理的・心理的なコストを伴う他者との交流をゲーム内において望まない,という ことも考えられる。 ただし,「1 人プレイ志向」は,課金者と非課金者の間で差が見られないこと,課金者, 非課金者ともに「ゲーム内社交性」よりも「1 人プレイ志向」の方が数値が小さく,その傾 向が強いことが示されていることから,今回の調査対象者の中では,ゲームは 1 人で行うこ との方が主流であるといえる。したがって,課金者が示すゲーム内での社交性の高さについ ては,非課金者と比較した場合の相対的なものであることは記しておく必要がある。
4. 5 課金者と非課金者,および課金額の違いによる現実世界での性格特性の違い 課金者と非課金者で,現実世界での性格特性が異なるかどうか,賞賛獲得欲求および特性 シャイネスの平均値の差の検定を行った。その結果,有意水準 1% で有意な差が見られ,課 金者の方が非課金者よりも,現実世界での賞賛獲得欲求が高いことが示された(課金者:m =23.20, sd=6.47, 非課金者:m=25.28, sd=5.94, t(410)=3.33, p<.01, d=.327)。また,特性 シャイネスについては,両者の間で有意な差は見られなかった(課金者:m=46.37, sd= 12.76, 非課金者:m=44.42, sd=12.80, t(410)=1.55, n.s., d=.152)。なお,平均値は,非課金 者の方がわずかに低かった。 課金者の中で,課金額の違いにより,現実世界での賞賛獲得欲求および特性シャイネスに 差が見られるかどうか,分散分析を行った。その結果,賞賛獲得欲求では,有意水準 5% で 有意な差が見られた(F(3,202)=3.12, p<.05)。多重比較の結果,最近 1 年の課金額が 1000 円未満と 3000 円以上 10000 円未満の人との間に有意水準 5% で有意な差が見られ,3000 円 以上 10000 円未満の人の方が,賞賛獲得欲求が高いことが示された。特性シャイネスについ ては,課金額により有意な差は見られなかった(F(3,202)=.556, n.s.)。各尺度の課金額カテ ゴリーごとの因子得点は,表 11 の通りである。 表 11 課金額別の賞賛獲得欲求,特性シャイネスの 平均値(標準誤差) 賞賛獲得欲求 特性シャイネス 1000 円未満 24.936(.968) 44.596(1.867) 1000 円-3000 円未満 24.109(.979) 45.783(1.887) 3000 円-10000 円未満 21.113(.912) 47.396(1.758) 10000 円以上 23.000(.857) 47.317(1.652) これらの結果から,課金者はゲーム以外の場面においても,他者からの賞賛を求める傾向 が高く,他者とのコミュニケーションに躊躇する傾向があるとはいえないことが示唆される。 一般に信じられているように,課金をするほどゲームにのめりこむ人は,現実世界でのコミ ュニケーションを回避しがちである,というイメージとは若干異なる人物像が示されたとい える。ただし,賞賛獲得欲求については,課金者,非課金者ともに得点が理論的中央値より わずかに大きく,特性シャイネスについては,理論的中央値よりわずかに小さいことから, 今回の調査対象者は平均的に見た場合,ややシャイでやや賞賛獲得欲求が弱い人々であった ということは,記しておく必要がある。
4. 6 スマホゲームのプレイスタイルと現実性格特性によるプレイヤーの分類 先の 4. 1~4. 5 の結果を踏まえ,ゲーム内での行動 4 因子と現実世界の性格特性(賞賛 獲得欲求,特性シャイネス)をクラスター分析(Ward 法,階層的クラスター分析)し,調 査対象者を分類した。距離の計算には,ローデータによるユークリッド距離を用いた。その 結果,3 つのクラスターが抽出された。第 1 のクラスターは,「ゲーム内交流拒否」「1 人プ レイ志向」「特性シャイネス」の得点が低く,「ゲーム内社交性」「ゲーム内競争動機」「賞賛 獲得欲求」の得点が高いことから,「1 人志向」と命名した。このタイプには 127 人が該当 した。第 2 のクラスターは,突出して得点が高いまたは低い変数がなく,いずれの変数の得 点も平均値よりわずかに低いことから,「平均志向」と命名した。このタイプには 138 人が 該当した。第 3 のクラスターは,「特性シャイネス」の得点が高く,「賞賛獲得欲求」の得点 が低く,「ゲーム内交流拒否」と「1 人プレイ志向」の得点がやや高いことから,「賞賛獲得 志向」と命名した。このタイプには 147 人が該当した。 それぞれのタイプを性別および課金の有無とでクロス集計を行った。その結果,性別では, 有意な関連が見られ,男性において有意にタイプ 3 が多く,女性ではタイプ 3 が有意に少な いことが示された。年代では,有意な関連は見られなかった。度数をみる限り,20 代では タイプ 2 が少なく,30 代ではタイプ 2 が多いこと,40 代ではタイプ 3 が多い傾向が見られ た。また,課金の有無では,有意な関連は見られなかった。度数を見る限り,課金者にタイ プ 3 がやや多く,非課金者にタイプ 1 がやや多い傾向が見られた。また,課金額でも,有意 な関連は見られず,度数を見ても,特徴的な偏りは認められなかった(表 12-1~3)。 表 12-1 性別によるプレイヤー分類の度数 男性 女性 合計 1 人志向 40 87 127 平均志向 45 93 138 賞賛獲得志向 67 80 147 合計 152 260 412 χ(2)=6.674, p<.052 表 12-2 課金の有無によるプレイヤー分類の度数 課金者 非課金者 合計 1 人志向 56 71 127 平均志向 71 67 138 賞賛獲得志向 79 68 147 合計 206 206 412 χ(2)=2.289, n.s.2
これらの結果から,賞賛獲得を求めるプレイヤーは男性に多く,女性に少ないこと,年代 が高い方がそのような傾向がある人が多いといえる。そして,課金者の方が,ゲーム内での 社交性や競争意識がやや高いと同時に,特性シャイネスが低く賞賛獲得を求めるプレイヤー である可能性も示唆された。そして,30 代には中庸なゲームプレイヤーが多く,20 代は社 交にも積極的なプレイヤーと 1 人志向のプレイヤーに二極分化しているといえるだろう。 5.全体考察と今後の課題 5. 1 RQ について 本稿で設定した RQ については,まず RQ1 では,課金者は男性が多く,高額課金者にも 男性が多いこと,年代ごとの課金者の比率はほぼ同じであるが,高額課金者は 30 代に多く, 40 代にもややいることが示された。さらに,課金者は非課金者に比べゲーム時間もプレイ するゲームの個数も多く,ゲーム依存傾向も強かった。RQ2 については,全体でみるとも っとも多くの課金者があげていた課金の目的はアイテム入手のためであった。課金額ごとに みてみると,低額課金者はアバターへの課金をしない傾向,高額課金者は経験値獲得に課金 をする傾向が見られた。すなわち,高額課金者はスマホゲームで「強く」なることにより他 者からの賞賛を獲得したいという欲求が強い可能性が示唆された。 RQ3 は,課金者は非課金者に比べ,ゲーム内で社交的かつ競争動機も強かった。そして, 非課金者はゲーム内で社交を拒否する傾向が強かったが,1 人でプレイする志向は課金者, 非課金者とで違わなかった。さらに,課金額の多寡により行動が異なるのは,ゲーム内社交 性のみであり,課金額が高い方がゲーム内での社交性が高かった。ここから,課金者はゲー ム内でコミュニケーションを重視していること,さらに課金額の高さはゲーム内での協力的 なコミュニケーションと関連していることが示唆される。さらに,現実世界での性格特性と の関連についての RQ4 では,課金者の方が非課金者よりも現実世界での賞賛獲得欲求が高 く,特性シャイネスは有意ではないものの非課金者より低いことが示された。すなわち,課 金者は,スマホゲーム内だけ積極的で現実世界ではシャイな「スマホゲーム内弁慶」ではな 表 12-3 年代別のプレイヤー分類の度数 20 代 30 代 40 代 合計 1 人志向 31 44 52 127 平均志向 23 63 52 138 賞賛獲得志向 30 54 63 147 合計 84 161 167 412 χ(4)=3.988, n.s.2
く,現実世界においても他者から賞賛を求める傾向があり,非課金者よりも対人関係に積極 的である可能性も示唆された。これは,課金をするほどスマホゲームにのめりこむ人は社会 性が低く,それゆえに対人関係に支障を来たすのではないかという俗説とは逆の結果であり, 今後,スマホゲームが現実の社会生活におよぼす影響に関して論じる際には,留意しなけれ ばならない点であると思われる。 5. 2 今後の課題 本稿では,成人を対象とした調査により,スマホゲームユーザーの実態について,課金と いう観点から報告したが,最後に,本稿の限界と課題,さらに今後の展望について簡単にま とめておく。 まず,本稿の結果では,課金者はゲーム内での社交性や競争動機が高く,さらに,現実世 界での賞賛獲得欲求が高いことが示された。しかしながら,この結果は非課金者と比較して のものであり,全体的にみると,課金者でも非課金者でもスマホゲームを協力してプレイす るよりも 1 人でプレイする志向が高かった。また,現実世界における賞賛獲得欲求や特性シ ャイネスについては,両者ともに理論的中央値より大きく離れたものではなかった。したが って,今回得られた結果については,課金者の顕著な特徴というよりも,あくまでも,非課 金者と比べた相対的なものとして解釈する必要があると思われる。 第二に,課金者は非課金者に比してゲーム内で交流したり,競争したりすることを好む傾 向が見られたが,本稿では,課金者がゲーム内で「誰」と交流しているのかについては,検 討を加えていない。また,実際に,どのようなゲームでプレイしたかについても,同様であ る。スマホゲームの協力プレイは,ゲーム内でのみ交流のある見知らぬ他者と行う場合もあ れば,現実世界での既知の友人・知人,家族などと行う場合も考えられる。インターネット を通じた相互作用の場合のように,スマホゲームが新たな人間関係形成の場として機能して いるのか,もしくは既知の人間関係の維持・強化のために利用されているのかにより,プレ イヤーの目的やゲーム内の対人行動の志向性も異なることは大いに予想される。また,ゲー ム自体が,協調的な交流を促すものであるか,または競争をあおる性質のものか,さらには 1 人プレイを主とするものかにより,ゲーム内での対人行動の重要性も大きく変わるであろ う。本稿が用いたデータを入手した調査では,本稿で分析した項目のほかに一緒にプレイす る人およびプレイしているゲームについての情報も質問しているため,今後,その点につい ても新たに分析を行い,報告していきたいと考える。 第三に,本稿では,現実世界における対人関係の指標として,その志向性を示す性格特性 について検討を行ったが,現実世界における対人関係の実態を十分に反映できているとはい えない。Domahidl et al.(2018)では,オンラインゲームでのプレイ相手と現実世界でのソ ーシャル・サポートとの関連性を縦断的に研究しているが,結果は「社会的置き換え仮説」
(オンラインでの交流がオフラインでの交流に置き換わることで,現実世界でのソーシャ ル・サポートを阻害する)を支持するものではなかった。このように,スマホゲームでのプ レイが,ソーシャル・サポートといった現実での物理的・精神的な利益を伴うような対人関 係にどのような影響を与えるかについては,未知の部分が多い。今回の調査には,プレイヤ ーの日常生活におけるソーシャル・サポートについての質問も含まれているため,今後の分 析で,スマホゲームのプレイとソーシャル・サポートとの関連性について,ゲームのプレイ 相手とも関連付けたうえで検討を行いたいと考える。そのうえで,現実世界での対人関係と スマホゲームのプレイとの関連性について,さらに幅広い観点から明確にしていきたいと考 える。 謝辞 本研究は,2018 年度の東京経済大学個人研究助成(研究番号 18-30)を受けた成果の一部 である。ここに記して,深く感謝する。 引 用 文 献 相川充(1991).特性シャイネス尺度の作成および信頼性と妥当性の検討に関する研究 心理学研 究,62(3),149-155. 新井範子(2013).ソーシャルゲームにおけるユーザーの心理特性と課金行動の関連性について 上智經濟論集,58(1-2),277-287.
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