福岡教育大学教職大学院における教員の資質能力の高度化に向けた取組方策について (答申)
平成27年12月16日
平成27年12月16日 福岡教育大学長 寺 尾 愼 一 殿 教員養成の質向上に関する諮問会議 議長 吉 田 法 稔 福岡教育大学教職大学院における教員の資質能力の高度化に向けた取組方策について (答申) 本会議は,平成27年7月29日に寺尾愼一学長から「本学教職大学院における教員の資質 能力の高度化に向けた取組方策について」の諮問を受けた。 本会議では「専門委員会」を設置し,「本学教職大学院が今後果たすべき役割,育成す べき資質能力と人数規模について」及び「教員志望者や現職教員が学び続けるための環境 づくりについて」の審議事項について,さまざまな観点から検討・議論を重ねてきた結果, このたび以下のとおり最終的な結論を得たので答申する。
Ⅰ はじめに 福岡教育大学大学院教育学研究科教職実践専攻(以下「福教大教職大学院」という。) は平成21年度に設置され,これまでに97名の修了者を輩出し,各地域の学校現場で活躍し ている。 今後の各地域では,これまでに経験したことがないグロ-バル化,少子・高齢化に対応 した社会づくりや経済活動の創出・推進が必要である。これらの変化の中で子供たちが将 来にわたって生き抜いていけるよう,学校教育では,学校組織や教育内容・方法を絶えず 見直し,充実させていくことが重要である。 福教大教職大学院では,各地域・学校で,これらの取組の中核となる高度な資質能力を 持つ管理職,教員を育成していくため,各教育委員会や学校との連携・協働により,高度 専門職業人養成機関としての役割,取組をさらに充実,発展させていくことが期待される。 Ⅱ 学校教育,教員の資質能力を巡る現状,主な課題 福教大教職大学院修了者の活躍が想定される各地域の学校教育,学校現場の動向や現状, 主な課題に照らして,高度専門職業人養成機関において育成が求められる資質能力として 下記のような事柄があげられる。地域全体の教育力向上に向けて,初任者教員及び採用後 数年の経験の若手教員,中堅教員,管理職の各段階において,これらの資質能力を身に付 けて,率先して対応,解決,改善に向けて取り組めるリ-ダ-が必要であると考える。 ○ 各地域の社会,経済の変化,また,次期学習指導要領を見据え,子供たちが将来活躍 するために必要な資質能力をはぐくむことを目指して,各教科等で基礎的・基本的な知 識・技能,思考力・判断力・表現力等の育成を図るために,知識・技能を活用する学習 活動,課題探究型の学習,協働的な学びなど,新しい学びをデザインできる実践的指導 力 ○ 学校現場での多様かつ複雑化する各教育課題について指導,対応できる力 ○ 子供一人一人の学習状況を細やかに把握し,指導と評価の一体化を図るとともに,「全 国学力・学習状況調査」,「全国体力・運動能力,運動習慣等調査」,「福岡県学力調査」 の各調査結果をはじめとする客観的な数値やエビデンスを活用することにより教育課程 を編成し,指導方法の工夫改善,子供の学習意欲の喚起,学習習慣の確立等を行い,そ れらの取組の成果を評価して改善を図る力 ○ 各種調査等を通じて数値的に明らかになってきている各教科等内での多くの子供がつ
まずきやすい又は苦手な領域・単元についての適確な指導力 ○ 学校内での同僚教員,他教科教員との調整力,学校組織を適確にマネジメントする力, 子供や学校内外の関係者とのコミュニケ-ション力,「チ-ム学校」として学校全体で の取組や地域の関係者と連携・協働した取組を担う力 ○ 全国的に学校における教育の情報化が進む中での一層の ICT 活用による指導力(「平 成26年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」等)。 ○ 福岡県の例では,小中学校の特別支援学級の数,在籍する児童生徒数は,平成19年度 の1,073学級,3,482人から平成27年度には1,925学級,7,953人に増加している(「平成 27年度特別支援教育資料」(福岡県教育委員会))ことにあげられるように,特別な教育 的支援を必要とする児童生徒への適確な指導力 ○ 多様な児童生徒の教育的ニ-ズに的確に対応し,いじめ,不登校,暴力行為等の問題 に対して,学校内外の関係者と連携して組織的に,かつ,理論やデータに基づいた科学 的な方法によって対応する力 福岡県教育委員会等の調査では, ・自尊感情が高い子供の割合:小学生で40%,中学生で20%以下(平成20年度) ・小・中学校の不登校児童生徒数 5,208人,高等学校の不登校生徒数 1,961人(平成26年度) ・いじめの認知件数:小学校 606件,中学校 623件,高等学校 200件(平成25年度) ・刑法犯少年の検挙補導人員 3,488人(全国6位),非行者率 7.3 人(全国3位)(平成26年) なお,福岡県では,50歳以上の教職員が占める割合は,公立小学校の場合,福岡県全体 は42.8%,北九州市で46.4%,福岡市は36.4%,公立中学校の場合,福岡県全体は43.9%, 北九州市で41.8%,福岡市は41.6%(福岡県教育委員会人事給与統計調査(平成26年4月1 日現在))となっている。このことから,児童生徒数の減を踏まえても,今後暫くは新規 採用者数が多い状況が続き,各地域・学校では,教員経験の少ない初任者教員等の割合が 増すことにより,これらの者が教育活動や学校運営において,これまでよりも早期に大き な役割を担っていくことが見込まれる。これらの者が新しい教育理念や方法の普及,学校 文化を創造する担い手となるとも考えられる。 このため,初任者教員等に対して指導的立場にある中堅教員には,これまで以上の多岐 にわたる高い指導力が求められる。 また,初任者教員をはじめとする教職経験が浅い若手教員が採用後早期から否応なしに
各学校の運営や教育活動の主要な担い手となっていくことを考えると,養成段階及び採用 後数年間の段階でのより高い資質能力の育成,確保が重要であり,とりわけこれらの若手 教員の中でリ-ダ-的な役割を果たす者の育成が望まれる。 さらに,福岡県内では地域によっては臨時講師,非常勤講師の確保が困難な状況となっ ており,一定以上の資質能力を有する講師は学校現場で重要な人材となっていることも考 慮することが重要である。 Ⅲ 福教大教職大学院に期待する役割等 1 教職大学院を巡る全国的な動向 全国的に教職大学院の設置が進められ,平成27年4月現在,22都道府県27大学に設置 されている。九州・沖縄地域では本学,長崎大学,宮崎大学に加えて,平成28年度から 佐賀大学,大分大学,琉球大学において設置予定であり,これ以降も熊本大学,鹿児島 大学において設置を計画している。 今後の全国的な教職大学院の改革の方向性としては下記のものがあげられている。(中 央教育審議会教員養成部会答申案「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上に ついて」) ①高度専門職業人養成の中心として,現職教員の再教育の場としての役割に重点を置き つつ,学部新卒学生についても実践力を身につける場として質的•量的充実を図る。 ②大学と教育委員会•学校との連携•協働のハブとなり,大学全体の教員養成の抜本的な 強化や現職教員の研修への参画など地域への貢献の充実を図る。 ③現職教員については教職生活全体のキャリアの中に教職大学院での学びを位置付け, 管理職コ-スの設置や教育委員会との連携による管理職研修の開発•実施を行う。 ④履修証明制度や科目等履修制度の活用等により現職教員が学びやすい環境を整備す る。学校現場を基軸とした教育課程の編成•管理を行い,各大学院の強み•特色を示す。 2 全国的な動向や地域の学校教育の状況を踏まえて福教大教職大学院に期待する役割 福教大教職大学院の「教育実践力開発コ-ス」では,主に学部卒業生を対象として, 学校での即戦力となる実践的指導力,学校づくりの有力な一員として活躍できる力の育 成を,「生徒指導・教育相談リ-ダ-コ-ス」,「学校運営リ-ダ-コ-ス」では,現職 教員を対象として,地域・学校の課題に即して,それらの解決に直接につながる力の育
成を主眼に取り組んできたところである。 《各コ-スで養成を目指す主な資質能力》 【教育実践力開発コ-ス】 ①児童生徒をとらえ理解する力,授業構想づくり・教材づくり,カリキュラム開発の力 ②授業・学級経営における教職プロフェッショナルとしての豊かな指導スキル,保護者や地域 から信頼される対応力 ③教育実践を科学的に分析する力,教育実践評価と実践改善をする力 ④個の課題に応ずる指導,学校適応指導,特別支援教育等 ⑤授業研究コラボレ-ションでの様々な教育研究活動への参画,教職リ-ガルマインドの養成 【生徒指導・教育相談リ-ダ-コ-ス】 ①児童生徒の成長と教師の働きかけについて,学校全体の資料やデ-タの収集・分析を適切に 行い,実践に活用できる力 ②児童生徒の学校適応に関する勤務校の現状分析をもとに,生徒指導・教育相談等における取 組の立案と実践をリ-ドできる力 ③スク-ルカウンセラ-や保護者と連携し,関係諸機関及び地域社会の有効な教育資源を活用 して,予防と治療の両面から成果を蓄積できる力 ④勤務校の実践をもとに,さらに地域の諸学校のネットワ-ク(研究組織など)で,指導的な 役割を果たすことができる力 【学校運営リ-ダ-コ-ス】 ①確かな授業力と実践力をもとにス-パ-ティ-チャ-として,授業実践,学級経営,研究活 動等において他の教員を指導する力と教師の協働を創造するリ-ダ-シップ ②新しい教育課程や学校運営の諸課題に対し,組織的・経営的な視野と戦略を持って学校組織 及び地域との連携・協働を推進する力 ③新しい教育ビジョンと学校組織を開発する変革力とリ-ダ-シップ これらの資質能力の育成を基盤にして,さらに下記のような視点,方向により教育内 容,指導体制や教育環境を充実していくことが期待される。福岡教育大学は教員養成の 広域拠点を目指しているが,このような取組はその実現につながるものと考えられる。 ①教職の各段階での理論と実践の往還の場 ○ 現在,全国の教職大学院は,入学者の4割以上を現職教員が占めており,今後,そ の役割として現職教員の再教育の場としての役割にも重点が置かれるようになるこ と,また,各県に一つは教職大学院が整備されていく見込みであることを踏まえ,福 教大教職大学院も現職教員がより学びやすい仕組みにさらに改善することが望まれ
る。 現職教員の資質向上の場としては,他に福岡教育大学大学院の修士課程,各大学・ 教育委員会が開設する免許法認定講習,免許状更新講習,独立行政法人教員研修セン タ-の「教職員等中央研修」や喫緊の教育課題に関する研修,福岡県の教育センタ- 及び体育研究所での長期研修・専門研修等,福岡市,北九州市及び各市,郡,地区の 教育センタ-や教育研究所での研修,福岡教育大学附属小・中学校での長期研修等が 設けられている。この中で,一定の期間に体系的に理論と実践の往還によって学ぶ場 は福教大教職大学院が中心になると考えられるが,現職教員の就学や教育委員会,学 校の管理職の理解・配慮が得られるよう,福教大教職大学院で身に付けられる資質能 力,その強み・特色をカリキュラム構成やコ-ス設定などで明確に示していくことが 望まれる。その際に,現職教員と学部新卒学生の力量の差を踏まえると,コ-スで明 確に所属分けをすることも考えられる。ただし,教職大学院での学びの特徴として, 教職の各段階の現職教員の学生と学部新卒の学生が協働して学び合うことにより,各 学校内での世代の異なる者の相互理解や指導法等の継承の場,学部新卒の学生にとっ ては教職全体をとおした資質能力の向上のために各段階で必要な学修を直に理解する 場となることが期待されることから,この点に配慮が十分に求められる。 ②初任者教員のリ-ダ-養成の場 ○ 暫くの間,福岡県内全体で新規教員採用数が高い状況が続くことが見込まれること, それに比して低い人数となる中堅教員の状況を踏まえると,初任者教員のうちの1割 程度の数の者は,初任者研修で身に付けるべきものをおおむね修得し,即戦力として 年間を通してひととおりの学校教育活動を円滑に遂行できるとともに,複数の初任者 が配置された学校や初任者教員向けの研修等ではリ-ダ-的な役割を果たせる者とし ての養成が期待される。 ○ 福岡県内を見ると,小学校教諭一種免許状を取得できる教職課程を設ける大学は6 大学あるが,初任者段階での資質能力の高度化の機会を提供できる場は福教大教職大 学院のみである。このため,福教大教職大学院は,福岡教育大学の学部段階も含めた 大学全体の教員養成の抜本的な強化に大きな役割を果たすとともに,国立大学の教職 大学院として他の私立大学卒業者等にも積極的に学びの場を提供することにより,地 域全体でのリ-ダ-的な資質能力を有する初任者教員の養成機関としての役割を果た していくことが望まれる。
③地域の学校教育の充実への貢献 ○ 福教大教職大学院が大学と教育委員会・学校との連携・協働のハブとなり,今後の 各地域での教員育成指標の検討への参画や現職教員向けの研修への参画,協力を積極 的に行うとともに,主体的に研修,セミナ-等の機会を企画,実施していくこと等に より,地域の学校教育の充実,教員の資質能力の体系的な育成に貢献していくことが 望まれる。 ④実践的な教員養成の指導者に必要な資質能力の修得の場 ○ 教員養成の指導者の実務経験や実践的な指導力が求められる中,全国的に今後は教 員養成系の修士課程の縮小が見込まれており,教職大学院の学修が教員養成の指導者 に向けてのキャリアパスにおいて重要な役割を担うことが考えられる。 Ⅳ 福教大教職大学院での新たな「理論と実践の往還による学びの機会」の提供 地域全体の教育の充実に向けて,今後,福教大教職大学院では下記の「理論と実践の往 還による学びの機会」が提供されていくことが期待される。 ①各教科等の指導力の高度化のための学修ができるコ-ス 〈教育行政・学校現場での課題等〉 ○ 各教科等での指導に当たっては,課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現 力や教科横断的に子供の育成すべき資質能力をはぐくむためのアクティブ・ラ-ニング 等の子供の新たな学び,学校や子供の実態に応じた指導,高等学校での「学び直し」の 指導等の多様な方法の展開が必要となっている。 ○ 各種調査結果からの指導上の課題の明確化,多様な教育課題が生じている中で,経験 知だけでなく理論と実践の往還に裏付けられた指導力が重要である。 〈本コ-スで養成しようとする資質能力,人材〉 ○ 各教科等内の各領域全体をとおしての「理論と実践の往還」による高度かつ多様な指 導力を身に付けた教員(初任者教員,現職教員)として,修了後は,教科指導を高度に 実践できる力を身に付けた初任者教員,指導教諭等として活躍を期待する。(平成26年4 月現在,福岡県の指導教諭数148人,うち新規登用者数53人)
②小学校,中学校,高等学校での特別支援教育のコ-ディネ-ト力を促進させるス-パ- バイザ-としての学修ができるコ-ス 〈教育行政・学校現場での課題等〉 ○ 全国の公立小・中学校の通常の学級に在籍する「学習面又は行動面で著しい困難を示 す」とされた児童生徒の割合は6.5%(平成24年文部科学省調査)となっており(高等 学校については,文部科学省の「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等 学校ワーキング・グループ報告」(平成21年8月)において,平均すると生徒総数の約2 %程度の割合で発達障害等困難のある生徒が在籍していることが推計されている。),各 学校での体制整備と児童生徒の状況を踏まえての適切な支援が重要となっている。 〈本コ-スで養成しようとする資質能力,人材〉 ○ 自らの学校での特別支援教育を推進し,児童生徒の状況を踏まえての適切な支援のた めに,学校内や関係機関・関係者との間を連絡・調整し,協同的に対応できるとともに, 各地域内で中核となって各学校の特別支援教育を推進し,各特別支援教育コ-ディネ- タ-を助ける特別支援教育のス-パ-バイザ-として活躍することを期待する。 ③学校の円滑な経営・運営のための学修ができるコ-ス 〈教育行政・学校現場での課題等〉 ○ 各地域・学校の教育改革,円滑な学校運営,教育課程及び教科等指導の充実には,幅 広い視野と専門的な知見によって先導的な取組を推進する人材が不可欠である。このよ うな人材の中でも特に指導主事の職を務める者は,地域の教育改革の鍵となる者として, 全国を俯瞰しながら地域や学校の課題を適確に把握・分析し,解決に向けての適確な理 論と実践方法を提案できる力が求められることから,必要な資質能力を体系的・組織的 に育成する機会を新たに設けることが有意義と考えられる。 〈本コ-スで養成しようとする資質能力,人材〉 ○ 高度な学校運営,カリキュラム・マネジメント等に係る知識,実践力,提案力を身に 付けた人材育成の場として,修了後は指導主事,教頭等としての活躍を期待する。 Ⅴ 福教大教職大学院での学びやすい環境づくり 福岡教育大学は教員養成の広域拠点を目指していることから,福教大教職大学院では, 福岡教育大学のみならず多くの大学の卒業者や福岡県をはじめとする広域の地域からの現
職教員が多数学び,それらの者が切磋琢磨,交流することで新たな刺激を受けつつ,最新 の知見を得られる場となることが期待される。このため,下記のような学びやすい環境づ くりを一層進めることにより,様々な大学の卒業者,現職教員では各地域の公私立学校や 大学附属小・中学校の教員の円滑な就学を実現し,修了者が新任校又は現任校でのリ-ダ -的な教員,あるいは新たに大学附属小・中学校や教育委員会等での活躍につながること が期待される。 《期待される取組①…夜間や休日等での開講により勤務と学びの両立を支援》 現職教員の就学の場合,現在,福教大教職大学院の授業科目は平日の昼間に開講してい る。このため,現職教員が福教大教職大学院で学ぶ場合は,教育委員会の長期研修制度に よる派遣又は大学院修学休業制度を利用して履修している。 将来のリ-ダ-的な管理職や教員として意欲,適性,能力がある現職教員が就学しやす いよう,福教大教職大学院では,夜間や休日,長期休業期間中も学べる環境を整備するこ とが期待される。なお,各学校では,将来が期待される一方で,現在の担当する校務分掌 や部活動の顧問の業務から,管理職が配慮してもなお,夜間や休日等において学外での学 習がなかなか難しい状況もあるため,フルタイム学生としての入学までにはいたらなくて も科目等履修生等の形で一定科目又は科目群を系統的に集中的に学べる環境の整備も期待 される。 《期待される取組②…柔軟な受講形態により「中核教員」の学びを支援》 福岡県内の学校の状況では,各学校の教育活動の中核となるべき,採用後の教員経験年 数が10 年~ 20 年程度の中堅教員の数,割合が低いことから,これらの者が勤務する学校 を離れて教職大学院等で長期間履修することが困難な状況がある。 教職大学院全体としては,短期間での集中的な学びの方途として,1年程度の修業年限 のコ-スの設定,履修証明プログラムの開設,科目等履修生との各制度が設けられている が,福教大教職大学院でも,多岐にわたって資質能力を高めるべき時期にある中堅教員が 必要な資質能力の獲得又は向上させられるように,多様な受講形態を可能とする取組の実 施が望まれる。
《期待される取組③…研修歴の「マイレ-ジ」により効率的な学修を支援》 現職教員の就学の場合,これまでにも各教育委員会の教育センタ-等において現職研修 が行われており,現職教員によっては,これらでの学修により福教大教職大学院で育成さ れる資質能力の一部は既に身に付けられていることが考えられる。 福教大教職大学院で各教員が身に付けたい資質能力を効果的,効率的に修得できるよう, 入学前の教育センタ-等での研修の成果を教職大学院での学修として積極的に評価する方 策を設けることが望まれる。 《期待される取組④…サテライト教室開設により通学負担を軽減》 現在の福教大教職大学院の学生は,大学キャンパスを中心にして履修することとなって いるが,福岡県内の各地域の公立学校に勤務する教職員の状況をみると(平成26年4月現 在 福岡県教育委員会「平成26年度教育調査報告書」),小学校教員では福岡市(24.9%), 北九州市(17.3%),北筑後地区(10.7%),中学校教員では福岡市(24.4%),北九州市 (18.1%),北筑後地区(10.0%)のとおり,現職の教員は福岡市,北九州市等の大都市 圏に通う者が多く,これらの地域に勤務する者が通学,履修しやすいように学びの場を設 定,工夫することが必要と考えられる。 平成27年度から整備される附属小倉中学校,福岡小学校,久留米小学校でのサテライト 教室を活用し,ここで各種授業での指導及び遠隔授業システムでの授業受講を可能にする ことが望まれる。 《期待される取組⑤…講師としてのインタ-ンシップにより理論と実践の往還機会を拡大》 大学新卒学生の就学の場合,自ら学ぶ意欲,実践力の一層の向上のために福教大教職大 学院での学修以外にも理論と実践の往還を行えることが有意義と考えられる。 福教大教職大学院における必要な指導,授業時間割の工夫,各教育事務所等との連携体 制の整備により,希望する学生が非常勤講師として勤務しやすい環境づくりを行うことが 望まれる。これは,福岡県内での教員不足の地域への貢献や学生の学費確保にも資するも のと考えられる。 《期待される取組⑥…他大学との「連合」により地域全体の高度専門職業人養成を拡大》 福岡教育大学は,そのミッションとして教員養成の広域拠点としての役割を果たすこと
を掲げている。学部新卒学生の就学の場合,現在も福岡教育大学教育学部卒業生以外の者 が多く進学しており,また,福岡県内唯一の国立大学の教職大学院であることから,公私 立大学の学部新卒学生も高度専門職業人を目指して学びやすくすることが必要と考えられ る。 他の教職大学院で行われている事例も参考のうえ,地域の公私立大学との組織的な教育 研究の連携,カリキュラムの調整,教員や学生間の交流等の拡大が望まれる。 《期待される取組⑦…小学校免許取得機会の提供により新たな資質能力を育成》 福岡県では,暫くの間,多くの小学校教員が必要となっている中で,社会で多様な経験 を積み重ねた者,学校教育以外の分野で専門的知見を高めてきた者,現職の中学校教員等 が新たに小学校教育に関わることが有意義と考えられる。 このため,福教大教職大学院において,中学校や高等学校教員免許状を持ち,今後,小 学校教育に関わることを希望する者が在学中に小学校教員免許状を取得できるプログラム を開設することが望まれる。 《期待される取組⑧…学び続ける教員を継続的に支援》 福教大教職大学院修了者は在学中に経験した学び方を教職生活の中でさらに継続してそ の資質能力を高めるとともに,福教大教職大学院もそれらの学びの継続を支援することが 有意義であると考えられる。 修了者の学校現場での悩み・課題に引き続き助言等を行ったり,実践・研究上の課題等 を持ち寄り,学び,発表することができる研究会や学会のような場,機会を福教大教職大 学院を中心にして新設又は発展させていくことが望まれる。