毎月5日・15日・25日発行(ただし1月5日、5月5日は休刊) ISSN 1347−9814
ロ シ ア
東 欧
経 済 速 報
(社)ロシア東欧貿易会 2003年(平成15年)9月5日号 No.1271好 調 を持 続 するロシアの乗 用 車 市 場
...坂口 泉 1 −2003年上半期のデータを中心に− キーパーソン ... 10 サハリン州知事選は12月7日投票/10 エトセトラ ... 10 日本企業との取引を希望するハバロフスク企業のリスト/10 お薦めサイト“Caspian World”/10 新刊案内『携帯版ロシア語会話とっさのひとこと辞典』/10 ロシア東欧貿易会関連の行事予定 ... 11 CIS・中東欧諸国通貨の為替レート ... 11好 調 を持 続 するロシアの乗 用 車 市 場
−2003年上半期のデータを中心に−はじめに
ロシアでは、昨年に引き続き2003年上半期も輸入新車の販売は好調で、日本、韓国、米国 のメーカーを中心に、大幅な販売増を記録するメーカーが続出した。また、売れ行き不振で 過剰在庫に苦しんでいた国内メーカーでも、7年落ちの中古車の輸入関税引き上げの効果が 出始めたのか、若干ではあるが在庫調整が進み始めた。本稿では好景気に沸いた2003年上半 期のロシア乗用車部門の状況を、数字を中心に紹介する。1.国内生産状況
全般的状況 2001年後半ごろより、ロシアの純国産車の主要ライバルである7年落ちの輸 入中古車の輸入関税引き上げ(正確には自然人向け輸入関税の引き上げ)の噂が断続的に出 るようになった。そして、その噂に牽引されるような形で外国製中古車の輸入量が急増し始 め、その傾向は、実際に7年おちの中古車の輸入関税の引き上げが実施された2002年秋まで続いた。その結果、2002年の国産新車の売れ行きは大きく落ち込み(第1図)、同年後半以降、 純国産メーカーの大半が在庫調整のための減産を余儀なくされている。2003年に入ってから も多くの純国産メーカーで減産傾向が続いており、2003年上半期のロシアの乗用車生産量は 前年同期比9.9%減の45万9,500台にとどまった(ロシア統計国家委員会発表の数字)。 なお、以下で紹介する主要企業別の生産動向の数字は、ASMホールディングと各生産者発 表の数字であり、ロシア統計国家委員会発表の数字とは若干食い違う。 純国産メーカー ロシアの乗用車生産量の約70%を占める最大手「AvtoVAZ(ヴォルガ自動 車工場)」の上半期の生産量は前年同期比14%減の32万395台にとどまった。これは、在庫の 削減を目的とする減産を実施したためである。 生産量第2位の乗用車メーカー「イジマシ・アフト」は、小売価格3,000∼4,000ドルの乗用 車を主力としているが、地方部での販売が好調だったこともあり、2003年上半期の生産量は 前年同期より約20%も伸び、4万4,990台に達した。 生産量第3位のGAZ(ゴーリキー自動車工場)では、前年から大幅な減産が続いており、 2003年上半期の乗用車の生産量は前年同期比42.3%減の2万1,201台にとどまった。同社の場 合、マイクロバスやトラックの生産量は大幅に伸びており、生産の主力を商用車の方に意識 的に移行させつつあると考えてよいであろう。 生産量第4位のZMA(軽乗用車製造工場)では、AvtoVAZから部品供給を受け、小売価格 2,500ドル前後の軽乗用車「オカ」の生産が行われている。同工場では、ここ数年連続して増 産が続いていたが、2003年上半期の生産量は前年同期比3.8%減の1万8,632台にとどまった。 生産量第5位のロスラーダは、サマラ州のスィズランに所在し、AvtoVAZから部品供給を受 けVAZ-2104、-2107、-21093等の生産を行っているが、2003年上半期の生産量は前年同期比約 10%減の1万7,119台にとどまった。なお、この工場は、上記の「イジマシ・アフト」同様、 SOKという企業グループの傘下に入っている。 生産量第6位のUAZ(ウリヤノフスク自動車工場)でも、トラックの生産は好調であった が、乗用車(四輪駆動車)の生産はやや不振で前年同期比3.6%減の1万5,887台にとどまった。 生産量第7位のSeAZ(セルプホフ自動車工場)も「オカ」を主力としており、やはりここ 数年増産傾向を維持してきたが、2003年上半期の生産量は前年同期比3.7%減の9,286台にとど まった。 外国車の現地生産を行っているメーカー 現在、ロシアでは、GM-AvtoVAZ、フォード、Avtotor、 TagAZ(タガンログ自動車工場)、アフトフラモスの5社が外国車1)の現地生産を行っている。 GM-AvtoVAZは、その名前からもわかるとおり米国GMとロシアのAvtoVAZの合弁企業で、 AvtoVAZ側が開発したVAZ-2131をベースにGMの技術支援を受けて完成されたオリジナル車 「Chevy-NIVA」を生産している。生産は2002年9月より開始されており、2003年上半期の生
産量は5,044台に達した。8月からは3交代制が導入されており、通年の生産量は3万5,000台 に達することが見込まれている(設計生産能力は7万5,000台)。その他、同社では、今秋から のオペル・アストラT3000の生産開始も検討しているようである。 フォードは、レニングラード州のフセヴォロジスクの工場で2002年夏よりフォーカスの生 産を開始しており、2003年上半期には6,158台のフォーカスが生産された。 カリニングラードのAvtotorでは韓国の起亜車とBMW車の生産が行われており、2003年1∼ 7月期には合計で4,753台が生産された(商用車含む)。これは、前年同期を約43%上回る数字 である。とくに、起亜車の生産が好調で前年同期比約77%増を記録した。一方、BMWの生産 量は大幅に減少した模様である。その他、同社では、今秋からGMのHummer2というオフロー ド車の生産を開始することを検討しているようである。 TagAZでは韓国の現代アクセントの生産が行われており、2003年上半期には2,326台が生産 された。 アフトフラモスはルノーとモスクワ市との合弁企業で、2003年上半期には820台の乗用車を 生産した(うち541台はルノー・シンボルであった:アフトフラモス側発表の数字)。
[第1図]ロシアの乗用車市場の規模(台数ベース)
(単位 1,000台) 640 714 865 750 890 869 923 820 892 20 35 72 72 45 46 79 110 150 250 355 525 520 185 224 360 450 360 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003輸入中古車
輸入新車
国産車
( 注 ) 2003年 は 予 測 。 「 輸 入 新 車 」 は ロ シ ア で 現 地 生 産 さ れ た 外 国 車 を 含 む 。 ( 出 所 ) 『 コ メ ル サ ン ト 』 紙 、 2003.5.13。2.販売状況
全般的状況 ロシアの乗用車市場の規模に関しては諸説があるが、第1図で2003年5月13 日付けの『コメルサント』紙に掲載された数字を紹介しておく。この図からもわかるとおり、 経済危機後の1999年、2000年と2年連続で販売が低迷したが、2001年以降、主として輸入中 古車および輸入新車に牽引される形で市場規模が急激に回復している。一方、国産新車の売 行きは、よく言えば安定、悪く言えば停滞していることがわかる。 金額ベースの市場規模も諸説があるが、2003年7月28日付けのautonews.ruによれば、2002 年時点で新車市場(輸入中古車含む)が約120億ドル、中古車市場が約50億ドルとされている。 2003年上半期の国産新車の販売状況 国産新車の売行きは2002年後半ごろより低迷が続い ている。2003年に入ってから回復の兆しは見えてきているものの、まだその足取りはそれほ ど確かなものではない。 ASMホールディング発表の数字によれば、2003年上半期の国産新車(外国車の現地生産分 含む)の販売台数は48万9,715台で、前年同期比で3.5%減となった。ただ、先にも述べたとお り上半期のロシアの乗用車生産量は約46万台なので、在庫数は減少していると言える。 ロシア最大の乗用車メーカー「AvtoVAZ」の販売量は約35万台で前年同期比6%減となって いる2)。ただ、同社の1∼3月期の販売実績が前年同期比13.6%減だったことを勘案すると、 4月以降売行きがかなり回復してきているといえる。生産量第2位のイジマシ・アフトは、 ロシア純国産メーカー中唯一2003年上半期に増産を記録したが、販売も好調で、前年同期比 17.5%増の約3万7,000台を販売した。GAZは生産同様に販売も不振で、販売台数は前年比 42.5%減の約2万1,000台にとどまった。その他、ZMA、SeAZ、UAZにおいても、前年同期比 で約2∼3%販売量が減少した。 各外国メーカーの販売状況 2003年上半期の外国新車の販売台数は8万1,000台3)に達した。 昨年の通年の販売台数は約11万台であるから、半年間で前年の販売実績の約75%に達したこ とになる。このまま販売の好調さが続けば、年間販売台数が20万の大台にのる可能性もある。 ほとんどの外国メーカーが販売実績を伸ばしたが、ドル安ユーロ高の傾向が顕著だったこ ともあり、ドル建てで輸入・販売を行っている日本、韓国、米国メーカーが顕著に販売実績 を伸ばしたのに対し、ユーロ建てで輸入・販売を行なっている欧州メーカーは追い風に乗り 切れなかったとの印象が強い。たとえば、VWの販売量は前年同期比13.5%減、シュコダに至 っては約40%減となった。その他、アウディとBMWでもそれぞれ10%程度販売量が減少した。 その他の主要メーカーの2003年上半期の販売実績は以下のとおりである(順不同: autonews.ruより)。 トヨタ:同社の販売量は前年同期の約3倍の9,182台に達した。最も売れた車種はカローラで、 販売量は2,946台に達した。その他の主な車種の販売台数は、カムリ−2,354台、ランドクルーザー100−1,417台、アベンシス−778台、RAV4−889台、ランドクルーザープラド−321台、レ クサス−370台となっている。 三菱:前年同期比99%増の7,082台の販売を記録した。最も売れた車種はカリスマで、その 販売台数は4,035台に達した。その他の主な車種の販売台数は、パジェロ−647台、パジェロ・ スポート−622台、スペーススター−597台となっている。 日産:前年同期比7%増の4,233台の販売を記録した。最も売行きが良かったのはプリメー ラで、1,447台の販売を記録した。その他の主な車種の販売台数は、アルメーラ−1,117台、 X-Trail−726台、マキシマQX−558台となっている。 スズキ:前年同期の866台から1,957台へと販売量を大幅に伸ばした。最も売れたのはGRAND VITARA(エスクード)で942台の販売を記録した。 ホンダ:同社も前年同期の507台から1,342台へと大幅に販売量を伸ばした。最も人気の高い 車種はCR-Vで805台を売り上げた。その他、新型アコードの人気も急激に高まっており、あ る情報によれば(『ヴェードモスチ』紙、2003.6.9)、5月だけで299台売れたとのことである。 マツダ:2003年上半期の販売量は701台であった。車種別の販売実績は、Mazda6−410台、 Mazda323−218台等となっている。 大宇:第1四半期は税関とのトラブルもあり販売が伸び悩んだが(ロシアで販売される大 宇車の大半はウズベキスタン製である)、第2四半期が非常に好調だったこともあり、上半期 の販売台数は、結局、前年同期を48%上回る1万24台に達した。主力は従来どおりネクシア で6,783台の販売を記録した。年初不振であった軽乗用車「マティス」の売行きも4月以降急 激に回復し3,241台を売った。 起亜:前年同期比約150%増の5,384台を販売した。最も売れた車種はリオで、販売台数は 2,575台に達した。その他、四輪駆動車のスポーテージが1,214台、シューマが844台、Magentis が309台売れた。 現代:前年同期の約5倍の5,708台の販売を記録した。主力車種はロシア国内で生産が行わ れているアクセントで、販売台数は2,590台に達した。その他の主要車種の販売台数は、Gets −1,408台、エラントラ−759台、サンタフェ−395台等となっている。 GM:前年同期の約2.4倍の3,150台の販売を記録した。最も販売が好調だった車種はオペル・ アストラで1,516台の販売を記録した。 フォード:前年同期比160%増の7,375台の販売を記録したが、そのうちの約70%をフォーカ スが占めた。その他、モンデオが1,378台、エスケープが378台、トランジットが255台売れた。 ルノー:前年同期比47.5%増の5,290台を販売した。最も売行きが良かったのはクリオで、 2,623台の販売を記録した。その他、メガーヌが1,895台、セニックRX4が767台、ラグナ2が 405台、カングーが327台売れた。 ボルボ:前年同期比56%増の2,238台を売り上げた。車種別の販売台数は、S60−895台、S80 −512台、S40−535台等となっている。
(第1表)2003年上半期に最も売れた上位20車種(外国新車限定) 車種名 2003年上半期 販売台数 参考:2002年 通年販売台数 価格1) (ドル)2) 1.大宇ネクシア 2.フォード・フォーカス 3.三菱カリスマ 4.大宇マティス 5.トヨタ・カローラ 6.ルノー・クリオ/シンボル 7.現代アクセント 8.起亜リオ 9.トヨタ・カムリ 10.シュコダ・ファビア 11.ルノー・メガーヌ 12.プジョー307 13.オペル・アストラ 14.VWパサート 15.日産プリメーラ 16.ランドクルーザー100 17.現代Gets 18.フォード・モンデオ 19.シュコダ・オクタビア 20.起亜スポーテージ 6,783 5,244 4,035 3,241 2,946 2,623 2,590 2,575 2,354 2,000 1,895 1,721 1,516 1,482 1,447 1,417 1,408 1,378 1,300 1,214 6,954 3,572 4,493 4,354 2,319 4,417 3,174 1,766 1,956 3,851 2,904 2,596 1,722 3,603 2,041 1,635 … 1,698 5,129 … 7,400∼ 11,200*∼ 13,650∼ 6,000∼ 13,900∼ 8,990*∼ 9,490∼ 9,700∼ 28,400∼37,400 9,439*∼ 13,390*∼ 13,200*∼ 11,599∼ 23,700*∼ 20,012*∼ 39,900∼69,900 9,790∼ 18,050*∼ 12,496*∼ 16,550∼ (注) 1)販売価格は、『コメルサント』紙(2003.8.14)の付録を参照とした。ただし、トヨタ・カ ムリとランドクルーザーの価格はwww.toyota.ruを、日産プリメーラの価格は日産のディーラー のひとつであるオート・プラネータ社のHP(www.autoplaneta.ru)を、VWパサートの価格は www.volkswagen.ruを、フォード・モンデオの価格はフォードのディーラーのネザービシマス チ社のHP(www.fordcenter.ru)を、それぞれ参照した。2)*のついたものはユーロ建てとな っている。 (出所)『コメルサント・ジェーニギ』誌(2003.8.4-10)等より作成。 車種別販売状況 第1表からもわかるとおり、ロシア市場で売れている乗用車の大半は価 格が1万5,000ドル未満から購入可能な車である。さらに、上位10車種に限定すれば、トヨタ・ カムリ等一部の例外を除き、ほとんどすべてが、1万ドル前後から購入可能な車で占められ ている。 2002年通年の数字と2003年上半期の数字を比較して目立つのは、トヨタの3車種およびフ ォード・フォーカスの躍進振りと、シュコダの2車種の不振である。 トヨタの場合、2002年には13位だったカローラが5位に食い込んでいる他、高価格帯の車 種であるにも関わらず、カムリとランドクルーザー100の2つも大幅に順位を伸ばし、前者は 10位以内、後者は20位以内に食い込んだ。 フォード・フォーカスは、2002年夏より現地生産が開始された車種であるが、現地生産開 始後価格が大幅に引き下げられ割安感が生じたこともあり(それまでは輸入車が販売されて
いた)、売行きが急増している。2002年には第8位だったものが、2003年上半期の実績では第 2位に食い込んでおり、この勢いが続けば、恐らく、年内中にネクシアから売行きトップの 座を奪うことになるだろう。 一方、フォーカスと競合関係にあると思われるシュコダの2車種(オクタビア、ファビア) は、ユーロ高の結果、割高感が生じたこともあり売れ行きが激減した4)。たとえば、2002年 には2位の座を占めていたオクタビアは19位にまで順位を落としてしまった。また、ファビ アの方も6位から10位に順位を落としている。
3.今後の市場動向に影響を及ぼす可能性の高い事象
以下では、2003年上半期に観察された自動車市場での動きのうち、今後の市場動向に影響 を及ぼす可能性がとくに高いと思われる2つの事象について紹介しておく。 3∼7年の中古車の輸入関税引上げ 昨年10月に7年落ちの中古車の輸入関税が大幅に引き 上げられたのに続いて5)、2003年6月24日に製造後3∼7年の中古車の個人による輸入の際 の関税の引上げを規定した政府決定が出され、同年7月24日より施行された。具体的には、 それまで、2,500cc以下の車は1ccあたり0.85ユーロ、2,500ccを超える車は1ccあたり1.4ユー ロとされていた個人向け輸入関税が、以下のように改定された:1,000cc以下−0.85ユーロ、 1,001∼1,500cc−1ユーロ、1,501∼1,800cc−1.5ユーロ、1,801∼2,300cc−1.75ユーロ、2,301∼ 3,000cc−2ユーロ、3,001cc以上−2.25ユーロ。 一見してわかるとおり、昨年10月に実施された7年落ち中古車の関税引上げと比較すると (当会『調査月報』2003年4月号の拙稿参照)、引き上げ幅は小さなものとなっている。たと えば1,400ccの乗用車を例にとれば、7年落ちの中古車は約1,600ユーロも輸入関税が増加した のに対し、3∼7年の中古車の場合は増加幅が210ユーロにとどまった。輸入中古車の購入者 は全般的に価格変動に非常にセンシティブなので、この程度の引き上げでもある程度の影響 は出るであろうが、7年落ち中古車ほど深刻なものとはならないと判断される6)。 7年落ちの中古車の輸入関税の値上げは、主として純国産メーカーに恩恵をもたらすとい われているが7)、3∼7年の中古車の輸入関税の値上げは、主として、ロシア国内で外国車 の現地生産を行っているメーカーや、低価格帯の車種を主力とする外国メーカーに(それほ ど大きなものでないにせよ)恩恵をもたらすものと予測される。 排ガス規制(ユーロ2、3、4の導入) 現在、ロシアの純国産車のエンジンはユーロ1の基準 の段階にあるが、2002年に採択されたロシア政府のロシア自動車産業発展構想によれば、今 後、ユーロ2、ユーロ3(2006年導入予定)の段階を経て、2008年までにユーロ4の基準を 満たすことが目標とされている。そして、その第1歩として、2004年初頭より生産される純 国産車にユーロ2の基準の適用を義務付けることが政府レベルで検討されているようである。 ロシアの純国産車のうち比較的価格帯の高い車はユーロ2の基準をすでに満たしているが、価格帯の低い車種、たとえばVAZでいえば2107以前の車種、イジマシ・アフトの乗用車、オ カ等は、当該の基準を満たしていない。ユーロ2の基準を満たすには、1台あたり200∼500 ドル程度の値上げが不可避といわれており(車種によっては1,000ドル程度の値上げが不可避 という説も存在する)、もし本当にユーロ2の基準を満たすことが義務付けられるようになれ ば、低価格を武器とするそれらの車種の売行きに否定的影響が出る可能性が高い。 また、ユーロ3の基準を満たすためには、少なくとも1,000ドル以上の値上げが必要とされ ている。さらに、ユーロ4に至っては、ロシアの純国産メーカーの現在の技術水準から見て、 自動車産業の構造自体を抜本的に見直さない限り達成は不可能で、2008年にユーロ4の基準 を満たすという目標は非現実的であるとの見方が大勢を占めている。 技術面での後進性が深刻で低価格を武器とせざるを得ない純国産メーカーにとって、ユー ロ2∼4への移行は命取りにもなりかねない難問であり、今後の各メーカーならびにロシア 政府の対応が注目される。